特許第5783310号(P5783310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783310
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】カムシャフトの支持構造
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/04 20060101AFI20150907BHJP
   F01L 1/356 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   F01L1/04 E
   F01L1/356 E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-164504(P2014-164504)
(22)【出願日】2014年8月12日
(62)【分割の表示】特願2011-99760(P2011-99760)の分割
【原出願日】2011年4月27日
(65)【公開番号】特開2014-240656(P2014-240656A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2014年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100158528
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】小林 勉
【審査官】 谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−084531(JP,A)
【文献】 特開2011−027083(JP,A)
【文献】 特開2011−027084(JP,A)
【文献】 特開2010−168948(JP,A)
【文献】 特開2010−077910(JP,A)
【文献】 特開2008−101714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00 − 1/46
F01M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフトをハウジングに設けた転がり軸受によって支持するカムシャフトの支持構造において、
前記ハウジングには、前記カムシャフトを支持する支持面に一端を開口した複数のオイル通路が設けられ、
前記カムシャフトには、前記複数のオイル通路に前記カムシャフト内の連通路を連通させるように、外周面に並列に配置された複数の環状溝が形成され、
前記支持面には、前記カムシャフトに圧入された前記転がり軸受を収容する環状の収容溝が、隣り合うオイル通路の間に形成され、
前記転がり軸受は、前記複数の環状溝の油圧の低下を抑えるように、前記カムシャフトの外周面と前記ハウジングの支持面の間に、前記オイル通路間の隔壁部として配置されたことを特徴とするカムシャフトの支持構造。
【請求項2】
前記カムシャフト内の連通路は、可変バルブタイミング装置の作動用のオイル通路であることを特徴とする請求項1に記載のカムシャフトの支持構造。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記カムシャフトの上半部を支持するアッパハウジングと、前記カムシャフトの下半部を支持するロアハウジングとにより構成されて前記ロアハウジングの支持面に一端を開口した複数のオイル通路が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカムシャフトの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VVT(可変バルブタイミング装置)と連結されるカムシャフトを転がり軸受によって支持するカムシャフトの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用のエンジンとして、高出力、低燃費、低排気ガスを目的として、エンジンの運転状態に応じて吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングを制御する可変バルブタイミング装置を搭載したものが増加している。従来、この種の可変バルブタイミング装置において、吸気バルブ及び排気バルブを駆動するカムシャフトを、ハウジングに形成した滑り軸受により支持するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この可変バルブタイミング装置では、ハウジング内のオイル通路とカムシャフト内の連通路とを介してオイルが油圧機器(VVTアッシ)の進角室及び遅角室に供給される。そして、進角室及び遅角室へのオイルの供給によって、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相が変化してバルブタイミングが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−327362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の可変バルブタイミング装置では、ハウジング内に進角側及び遅角側のオイル通路が並んで形成される。このハウジング内の進角側及び遅角側のオイル通路は、カムシャフトの外周面に形成された2つの環状溝を介して、カムシャフト内の進角側及び遅角側の連通路に連通している。互いに隣り合う環状溝はカムシャフトの外周面と軸受面との隙間を介して連通されている。これによって両環状溝間でオイルが流通して油圧機器の作動応答性が鈍くなるため、回転軸方向に十分な間隔を空けて両環状溝を配置することが望まれている。
【0005】
ところで、滑り軸受によってカムシャフトを支持する構成では、摩擦が大きく回転抵抗を十分に下げることができないため、転がり軸受によりカムシャフトを支持する構成が提案されている。しかしながら、転がり軸受によりカムシャフトを支持する構成では、軸受の幅分だけハウジング及びカムシャフトの支持部分(ジャーナル部分)の回転軸方向における幅寸法が増加し、エンジンが大型化してしまっていた。この場合、支持部分全体の幅寸法を小さくするために隣り合う環状溝を近づけると、進角側及び遅角側のオイル通路(環状溝)間でオイルが流通して油圧機器の作動応答性が悪化するという問題があった。
【0006】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、転がり軸受によってカムシャフトを支持する構成であっても、エンジンの小型化を図りつつ、油圧機器の作動応答性を向上させることができるカムシャフトの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカムシャフトの支持構造は、カムシャフトをハウジングに設けた転がり軸受によって支持するカムシャフトの支持構造において、前記ハウジングには、前記カムシャフトを支持する支持面に一端を開口した複数のオイル通路が設けられ、前記カムシャフトには、前記複数のオイル通路に前記カムシャフト内の連通路を連通させるように、外周面に並列に配置された複数の環状溝が形成され、前記支持面には、前記カムシャフトに圧入された前記転がり軸受を収容する環状の収容溝が、隣り合うオイル通路の間に形成され、前記転がり軸受は、前記複数の環状溝の油圧の低下を抑えるように、前記カムシャフトの外周面と前記ハウジングの支持面の間に、前記オイル通路間の隔壁部として配置されたことを特徴とする。また本発明の上記カムシャフトの支持構造において、前記カムシャフト内の連通路は、可変バルブタイミング装置の作動用のオイル通路である
【0008】
この構成によれば、転がり軸受によって隣り合う環状溝間のオイルの流通が抑制され、カムシャフトの回転抵抗を下げつつ油圧機器の作動応答性を向上させることができる。また、両環状溝の間隔を十分に空けることなく両環状溝間のオイルの流通を抑制できるため、両環状溝の間の隔壁部を狭めてハウジング及びカムシャフトの支持部分の幅寸法を小さくできる。また、転がり軸受が両環状溝間に配置されるため、転がり軸受を配置することによる支持部分の幅寸法の増加がない。よって、エンジンの小型化を図ることができる。
【0009】
また本発明の上記カムシャフトの支持構造において、前記ハウジングは、前記カムシャフトの上半部を支持するアッパハウジングと、前記カムシャフトの下半部を支持するロアハウジングとにより構成されて前記ロアハウジングの支持面に一端を開口した複数のオイル通路が設けられた。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、転がり軸受によってカムシャフトを支持する構成であっても、エンジンの小型化を図りつつ、油圧機器の作動応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係る可変バルブタイミングシステムの概略構成図である。
図2】第1の実施の形態に係るバルブタイミング装置の正面図である。
図3】第1の実施の形態に係るカムシャフトの支持構造の周辺部分の断面図である。
図4】比較例に係るカムシャフトの支持構造の周辺部分の断面図である。
図5】第2の実施の形態に係るカムシャフトの支持構造の周辺部分の断面図である。
図6】変形例に係るカムシャフトの支持構造の周辺部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明のカムシャフトの支持構造を四輪車の可変バルブタイミング装置(VVT)に適用した例について説明するが、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、本発明のカムシャフトの支持構造を、自動二輪車、船舶等のエンジンにも適用可能である。また、以下の説明では、比較例、第2の実施の形態、変形例において第1の実施の形態の同一名称の部分について同一の符号を付して説明する。
【0013】
図1及び図2を参照して、第1の実施の形態に係る可変バルブタイミング装置の概略構成について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る可変バルブタイミングシステムの概略構成図である。図2は、第1の実施の形態に係るバルブタイミング装置の正面図である。なお、以下の説明では、吸気側の可変バルブタイミングシステムを説明するが、排気側の可変バルブタイミングシステムも同様な構成である。また、吸気側又は排気側にだけ可変バルブタイミングシステムが設けられていてもよい。
【0014】
図1及び図2に示すように、可変バルブタイミングシステムは、不図示のクランクシャフトに対するカムシャフト1の回転位相を変化させてバルブタイミングを可変するものであり、油圧式の可変バルブタイミング装置2(油圧機器)を有している。カムシャフト1には、クランクシャフトからの動力が不図示のタイミングチェーンによって可変バルブタイミング装置2を介して伝達される。可変バルブタイミング装置2は、カムシャフト1の一端部に設けられており、内部に供給されたオイルを介してカムシャフト1に動力を伝達するように構成されている。
【0015】
可変バルブタイミング装置2のケース21は、タイミングチェーンが掛け渡されたスプロケット22にボルト23で締め付け固定されており、スプロケット22と一体に回転する。スプロケット22は、ケース21とともにカムシャフト1の一端部に回転可能に支持されている。また、カムシャフト1の一端部には、ベーン241付きのロータ24がボルト25で締め付け固定されており、ロータ24はケース21の内側に相対回転可能に収容されている。ケース21の内側には、複数の隔壁部211によって複数の油圧室が形成されており、各油圧室にロータ24の各ベーン241が収容されている。各油圧室は、それぞれベーン241によって進角室S1と遅角室S2とに仕切られている。
【0016】
進角室S1及び遅角室S2は、カムシャフト1及びハウジング7(図3参照)に形成された油路に連通されている。油圧によって進角室S1の容積が拡大すると、ケース21に対してロータ24が相対的に進角側に回転される。これにより、ロータ24に固定されたカムシャフト1が回転して、バルブタイミングが進角側に変化する。一方、油圧によって遅角室S2の容積が拡大すると、ケース21に対してロータ24が相対的に遅角側に回転される。これにより、ロータ24に固定されたカムシャフト1が回転して、バルブタイミングが遅角側に変化する。なお、カムシャフト1及びハウジング7の油路の詳細は後述する。
【0017】
ベーン241には、エンジン始動時等において一定レベルに油圧が達するまで、ロータ24をケース21に連結するロックピン26が設けられている。ロックピン26は、ベーン241に形成された有底の収容孔242に収容され、収容孔242の底面に配置されたスプリング27によってケース21の前面側に付勢されている。ケース21の前面には、ロックピン26に対応してロック孔212が形成されており、このロック孔212にロックピン26が入り込むことでロータ24とケース21とが一体化される。また、ロックピン26は、解除用の油圧によってスプリング27の付勢力に抗して収容孔242内に戻されるように構成されている。
【0018】
可変バルブタイミング装置2は、オイル制御弁3(OCV)からの油圧によって作動される。オイル制御弁3には、エンジンの動力によって駆動されるオイルポンプ4によって、オイルパン5内からオイルが汲み上げられて供給される。オイル制御弁3は、いわゆる電磁式のスプール弁であり、進角ポートP1、遅角ポートP2、入力ポートP3、排出ポートP4等が形成されている。進角ポートP1及び遅角ポートP2は、それぞれカムシャフト1及びハウジング7の油路を介して進角室S1及び遅角室S2に接続されている。入力ポートP3は、オイルフィルタ6を介してオイルポンプ4に接続され、排出ポートP4は、オイルパン5に接続されている。オイル制御弁3は、スプール31を進退させて内部流路を可変することで、各ポート間の連通状態を切り替えている。
【0019】
例えば、進角ポートP1が入力ポートP3、遅角ポートP2が排出ポートP4にそれぞれ連通されると、遅角室S2からオイルが排出された状態で進角室S1にオイルが供給され、バルブタイミングが進角側に可変される。また、進角ポートP1が排出ポートP4、遅角ポートP2が入力ポートP3にそれぞれ連通されると、進角室S1からオイルが排出された状態で遅角室S2にオイルが供給され、バルブタイミングが遅角側に可変される。さらに、進角ポートP1及び遅角ポートP2が入力ポートP3および排出ポートP4から遮断されると、進角室S1及び遅角室S2の油圧が保持されてバルブタイミングが固定される。
【0020】
このように構成された可変バルブタイミングシステムでは、油圧が働かないエンジン始動時にはロックピン26によってスプロケット22とカムシャフト1とを連結する。そして、可変バルブタイミングシステムは、油圧が一定レベルに達した時点でロックを解除し、エンジンの回転数等の運転状態に応じてオイル制御弁3を駆動してバルブタイミングを調整する。
【0021】
ここで、比較例と比較しつつ、本実施の形態に係る可変バルブ装置の特徴部分であるカムシャフトの支持構造について説明する。図3は、第1の実施の形態に係るカムシャフトの支持構造の周辺部分の断面図である。図4は、比較例に係るカムシャフトの支持構造の周辺部分の断面図である。
【0022】
図3に示すように、本実施の形態に係るカムシャフト1は、転がり軸受8を介してハウジング7に回転可能に支持されている。ハウジング7は、カムシャフト1の上半部を支持するアッパハウジング71と、カムシャフト1の下半部を支持するロアハウジング72とにより構成されている。アッパハウジング71及びロアハウジング72には、円筒状の支持面75が形成されている。カムシャフト1は、この支持面75によって形成される円筒状の支持空間に差し込まれる。ロアハウジング72には、進角側及び遅角側のオイル通路724、725がカムシャフト1の回転軸方向に並んで形成されている。
【0023】
進角側のオイル通路724は、一端が支持面75に開口され、他端がオイル制御弁3の進角ポートP1に連通されている。遅角側のオイル通路725は、一端が支持面75に開口され、他端がオイル制御弁3の遅角ポートP2に連通されている。支持面75には、カムシャフト1に圧入された転がり軸受8を収容する環状の収容溝76が形成されている。収容溝76は、ロアハウジング72において隣り合うオイル通路724、725の間に位置しており、転がり軸受8をオイル通路724、725間の隔壁部として機能させる。アッパハウジング71の支持面75には、収容溝76に対してスプロケット22側とは反対側の位置に、カムシャフト1を軸方向に位置決めする半環状のスラスト規制溝717が形成されている。
【0024】
カムシャフト1には、端面18にボルト25を介してベーン241付きのロータ24が固定されている。ロータ24は、カムシャフト1の端面18に圧入されたノックピン28を介して、カムシャフト1に対して位置決めされている。また、カムシャフト1の端面18近傍には、スプロケット22が回転可能に支持されている。カムシャフト1の側方には、スプロケット22に固定されたケース21とロータ24のベーン241とによって進角室S1及び遅角室S2が形成される(図2参照)。カムシャフト1の外周面11には、ロアハウジング72の進角側及び遅角側のオイル通路724、725に対応して進角側及び遅角側の環状溝12、13が形成されている。
【0025】
進角側の環状溝12は、カムシャフト1内を回転軸方向に延びる連通路14を介して進角室S1に連通する。遅角側の環状溝13は、カムシャフト1内を回転軸方向に延びる連通路15を介して遅角室S2に連通する。この隣り合う環状溝12、13間の隔壁部16には、転がり軸受8が圧入されている。転がり軸受8は、外輪81と内輪82との間に複数の転動体83を配置して構成されている。転がり軸受8の回転軸方向の両端部には、外輪81と内輪82との間にシール部材84が設けられ、このシール部材84により転がり軸受8の内部が液密に封止されている。また、カムシャフト1の外周面11には、アッパハウジング71のスラスト規制溝717に挿入されるフランジ部17が形成されている。
【0026】
カムシャフト1は、外周面11と支持面75との僅かな隙間C1を空けてハウジング7に支持されている。このため、オイル通路724、725から環状溝12、13にオイルが流入すると、外周面11と支持面75との隙間C1に一部のオイルが入り込む。このとき、隣り合う環状溝12、13間におけるオイルの流通がシール部材84付きの転がり軸受8によって遮られる。また、収容溝76に入り込んだオイルについては、転がり軸受8の熱膨張を考慮して設計された外輪81の外周面と収容溝76の底面との狭い隙間C2によって流れが抑制される。このような構成により、進角側及び遅角側のオイル通路724、725間のオイルの流通による可変バルブタイミング装置2の作動応答性の悪化が防止される。
【0027】
ハウジング7外に向かうオイルについては、進角側の環状溝12とハウジング7のスプロケット22側の端面73との間の幅寸法L2、遅角側の環状溝13とハウジング7のスプロケット22側とは逆側の端面74との間の幅寸法L3がそれぞれ十分に確保されることで、外部への漏れ量の増加が抑えられる。これにより、ハウジング7外へのオイル漏れの増加による可変バルブタイミング装置2の作動応答性の悪化が防止される。
【0028】
また、両環状溝12、13間の隔壁部16の幅寸法L1と転がり軸受8の幅寸法L4とが略同幅に形成され、この隔壁部16に転がり軸受8が設置されているため、ハウジング7及びカムシャフト1の支持部分(ジャーナル部分)を延長して転がり軸受8用の設置部を新たに設ける必要がない。よって、転がり軸受8用に支持部分の回転軸方向における幅寸法L5を長くとる必要がなく、エンジンの小型化を図ることができる。このように、本実施の形態では、転がり軸受8によってカムシャフト1を支持する構成であっても、エンジンの小型化を図りつつ、可変バルブタイミング装置2の作動応答性を向上させることが可能である。
【0029】
図4に示すように、比較例に係るカムシャフトの支持構造においては、転がり軸受8の設置位置が、本実施の形態に係るカムシャフトの支持構造と異なっている。比較例に係る転がり軸受8は、ハウジング7のスプロケット22側に形成された収容溝76内に配置されており、隣り合う環状溝12、13が所定の幅寸法L1を有する隔壁部を挟んでカムシャフト1の外周面11に形成されている。
【0030】
この比較例に係るカムシャフトの支持構造では、隣り合う環状溝12、13が所定の幅寸法L1を有する隔壁部を挟んで形成されているが、ハウジング7の支持面75とカムシャフト1の外周面11との隙間C1によって連通されている。よって、進角側及び遅角側の環状溝12、13間のオイルの流通を十分に抑制することができず、可変バルブタイミング装置2の作動応答性が鈍くなる。また、ハウジング7及びカムシャフト1の支持部分には、転がり軸受8を配置するために転がり軸受8用の設置部が幅L4にて新たに設けられている。よって、ハウジング7及びカムシャフト1の支持部分の回転軸方向における幅寸法L5が増加し、エンジンの小型化を図ることができない。
【0031】
このように、第1の実施の形態に係るカムシャフトの支持構造は、比較例に係るカムシャフトの支持構造と比較して、エンジンの小型化を図りつつ可変バルブタイミング装置2の作動応答性を向上させることができる。なお、本実施の形態においては、転がり軸受8の回転軸方向の両端部に、外輪81と内輪82との間を塞ぐシール部材84を設ける構成としたが、転がり軸受8を介して隣り合う環状溝12、13間のオイルの流通を抑制できれば、シール部材84を設けない構成としてもよい。
【0032】
以上のように、本実施の形態に係るカムシャフト1の支持構造によれば、転がり軸受8によって隣り合う環状溝12、13間のオイルの流通が抑制され、カムシャフト1の回転抵抗を下げつつ可変バルブタイミング装置2の作動応答性を向上させることができる。また、転がり軸受8が両環状溝12、13間に配置されるため、転がり軸受8を配置することによる支持部分の幅寸法L5の増加がなく、エンジンの小型化を図ることができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0034】
例えば、第1の実施の形態では、隣り合う環状溝12、13間の隔壁部16の幅寸法L1と転がり軸受8の幅寸法L4とが略同幅に形成されたが、この構成に限定されるものではない。図5の第2の実施の形態に示すように、転がり軸受8の幅寸法L4よりも隔壁部16の幅寸法L1が小さく形成されてもよい。この構成であっても、転がり軸受8によって隣り合う環状溝12、13間が仕切られるため、環状溝12、13間のオイルの流通を抑制できる。
【0035】
この第2の実施の形態では、環状溝12、13の間隔を狭めても相互のオイルの流通を抑制できるため、第1の実施の形態と比較してハウジング7及びカムシャフト1の支持部分の回転軸方向における幅寸法L5を更に狭くできる。この場合、アッパハウジング71及びロアハウジング72の支持面75に、カムシャフト1の環状溝12、13に対向するように環状溝77、78が形成されていてもよい。
【0036】
この構成により、支持面75に形成された進角側及び遅角側のオイル通路724、725の出口の一部が転がり軸受8によって遮られても、オイル通路724、725の出口に連なる環状溝77、78を介してカムシャフト1の周囲から環状溝12、13にオイルを流入させることができる。よって、進角室S1及び遅角室S2に対するオイルの供給量を十分に確保でき、可変バルブタイミング装置2の作動応答性が向上される。
【0037】
また、図6の変形例に示すように、進角側の環状溝12の一部と重なるようにハウジング7のスプロケット22側に形成された収容溝76に転がり軸受8を配置してもよい。この構成によれば、カムシャフト1のスプロケット22寄りの部分を転がり軸受8にて支持する構成であっても、ハウジング7及びカムシャフト1の支持部分の回転軸方向における幅寸法L5を第1の実施の形態と同程度に抑えることができる。また、支持面75に形成された進角側のオイル通路724の出口の一部が転がり軸受8によって遮られているため、アッパハウジング71及びロアハウジング72の支持面75には、第2の実施の形態と同様に環状溝77が形成されている。
【0038】
なお、変形例では、隣り合う環状溝12、13間のオイルの流通量は、比較例と略同一となるが、進角側の環状溝12からハウジング7外に向うオイルがシール部材84付きの転がり軸受8によって低減される。よって、可変バルブタイミング装置2の進角側への作動応答性を向上することができる。また、環状溝12からハウジング7外にオイルが流出するのを抑制するように転がり軸受8を配置する構成に代えて、環状溝13からハウジング7外にオイルが流出するのを抑制するように転がり軸受8を配置してもよい。
【0039】
また、上記各実施の形態においては、転がり軸受の回転軸方向の両端部に、内輪と外輪との間を塞ぐシール部材を設ける構成としたが、この構成に限定されない。シール部材は、転がり軸受の回転軸方向の両端部のいずれか一方に設けられていればよい。また、シール部材は、内輪と外輪との間に配置される構成に限定されず、内輪と外輪の端面に貼り付けられる構成としてもよい。
【0040】
また、上記各実施の形態においては、進角側及び遅角側にそれぞれ1つのオイル通路、環状溝、連通路が設けられる構成としたが、この構成に限定されない。進角側及び遅角側にそれぞれ複数のオイル通路、環状溝、連通路が設けられる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 カムシャフト
11 外周面
12、13 環状溝
14、15 連通路
2 可変バルブタイミング装置
7 ハウジング
71 アッパハウジング
72 ロアハウジング
724、725 オイル通路
75 支持面
76 収容溝
77、78 環状溝
8 転がり軸受
81 外輪
82 内輪
84 シール部材
S1 進角室
S2 遅角室
図1
図2
図3
図4
図5
図6