特許第5783387号(P5783387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783387
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】磁気接合式コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/639 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   H01R13/639 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-92739(P2013-92739)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-216192(P2014-216192A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2014年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】浅井 清
(72)【発明者】
【氏名】加藤 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】井澤 幸一
(72)【発明者】
【氏名】野中 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】中尾根 海
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−303646(JP,A)
【文献】 実開平01−142174(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合される一方のコネクタ本体の接合部に磁石体を備え、該磁石体が他方のコネクタ本体の接合部に配置された相手側磁石体又は磁性体と吸着することにより前記両コネクタ本体が接合され、一方のコネクタ本体の接合部に配置された接触端子が他方のコネクタ本体の接合部に配置された接触端子に圧接されるようにしてなる磁気接合式コネクタにおいて、
前記コネクタ本体に、接合方向両端に開口し、前記磁石体が挿通される磁石挿通部と、該磁石挿通部の後端縁部に形成された凹状の保持用段部と、該保持用段部の後端側を閉鎖する後端閉鎖部材とを備えるとともに、前記磁石体が前記保持用段部に嵌め込まれるフランジ状の被保持部を後端に備え、
且つ、前記磁石挿通部の内周面部と前記磁石体との間、前記被保持部と前記保持用段部内周面との間及び前記後端閉鎖部材と被保持部後端面との間にそれぞれ揺動用クリアランスが形成され、前記磁石体が前記一方のコネクタ本体に揺動可能に保持されるようにしたことを特徴としてなる磁気接合式コネクタ。
【請求項2】
前記相手側磁石体又は磁性体は、前記他方のコネクタ本体に揺動可能に保持された請求項1に記載の磁気接合式コネクタ。
【請求項3】
前記各コネクタ本体は、複数の前記接触端子が前記磁石体を介して対称配置に備えられてなる請求項1又は2に記載の磁気接合式コネクタ。
【請求項4】
前記磁石体は、磁石の後端に該磁石の接合方向断面より大きな板状のフランジ用板材を固定することにより、後端に前記フランジ状の被保持部が形成されてなる請求項1、2又は3に記載の磁気接合式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のコネクタ本体が磁力により接合されることにより電気的に接続される磁気接合式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機やスマートフォン等の電子機器と充電用ケーブル等の接続ケーブルとの接続には、接続ケーブルの一端に取り付けられた一方のコネクタ本体と、電子機器に内蔵された他方のコネクタ本体とを磁力により接合させる磁気接合式コネクタが広く使用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この磁気接合式コネクタは、互いに接合される一方のコネクタ本体100がその接合部に磁石101を備えるとともに、他方のコネクタ本体102がその接合部に磁石又は磁性体103を備え、両コネクタ本体100,102が磁石の磁力により接合することにより一方のコネクタ本体100の接合部に配置されたポゴピン等からなる可動接続端子104a,104bが他方のコネクタ本体102の接合部に配置された固定接触端子105,105に押当てられ、両コネクタ本体100,102が電気的に接続されるようになっている。
【0004】
このような従来のコネクタ本体100では、絶縁性樹脂からなるハウジング106に接合面部側に開口した凹状の磁石収容部107を備え、この磁石収容部107に磁石101を圧入により嵌め込むことで、磁石101を接合部に露出するように固定するようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4774439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、磁石101が圧入によりハウジング106に固定される構造であるため、ハウジング106に対し磁石101が傾いた状態で固定された場合、図10(a)に示すように、両コネクタ本体100,102を接合させた際に、磁石101と磁性体103との間に隙間108を生じ、磁力の低下を招く虞があった。
【0007】
一方、図10(b)に示すように、ハウジング106に対し磁石101が傾いた状態で固定され、且つ磁石101と磁性体103とが隙間なく吸着した場合、両コネクタ本体100,102が互いに傾いた状態で接合され、それに伴ってコネクタ本体100の一方の端部が他方のコネクタ本体103より離反してしまい、その離反側に配置された可動接触端子104bの移動量(ストローク量)が不足するため、両接触端子104b、105間の接触不良が生じる虞があった。
【0008】
その為、上述の如き従来の磁気接合式コネクタでは、磁石又は磁性体のハウジングに対する圧入作業に高い精度が要求されるところ、現在広く使用されているネオジム磁石等の希土類磁石は、その性質上高精度での成形が困難であるため、公差を大きく取らざるを得ず、ハウジングに対する安定した固定状態を得難いという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、このような従来の問題に鑑み、生産性に優れ、且つ、安定した接合・接続状態を得ることができる磁気接合式コネクタの提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、互いに接合される一方のコネクタ本体の接合部に磁石体を備え、該磁石体が他方のコネクタ本体の接合部に配置された相手側磁石体又は磁性体と吸着することにより前記両コネクタ本体が接合され、一方のコネクタ本体の接合部に配置された接触端子が他方のコネクタ本体の接合部に配置された接触端子に圧接されるようにしてなる磁気接合式コネクタにおいて、前記コネクタ本体に、接合方向両端に開口し、前記磁石体が挿通される磁石挿通部と、該磁石挿通部の後端縁部に形成された凹状の保持用段部と、該保持用段部の後端側を閉鎖する後端閉鎖部材とを備えるとともに、前記磁石体が前記保持用段部に嵌め込まれるフランジ状の被保持部を後端に備え、且つ、前記磁石挿通部の内周面部と前記磁石体との間、前記被保持部と前記保持用段部内周面との間及び前記後端閉鎖部材と被保持部後端面との間にそれぞれ揺動用クリアランスが形成され、前記磁石体が前記一方のコネクタ本体に揺動可能に保持されるようにしたことにある。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記相手側磁石体又は磁性体は、前記他方のコネクタ本体に揺動可能に保持されたことにある。
【0012】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記各コネクタ本体は、複数の前記接触端子が前記磁石体を介して対称配置に備えられてなることにある。
【0014】
請求項に記載の発明の特徴は、請求項1 、2 又は3の構成に加え、前記磁石体は、磁石の後端に該磁石の接合方向断面より大きな板状のフランジ用板材を固定することにより、後端に前記フランジ状の被保持部が形成されてなることにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る磁気接合式コネクタは、上述したように、互いに接合される一方のコネクタ本体の接合部に磁石体を備え、該磁石体が他方のコネクタ本体の接合部に配置された相手側磁石体又は磁性体と吸着することにより前記両コネクタ本体が接合され、一方のコネクタ本体の接合部に配置された接触端子が他方のコネクタ本体の接合部に配置された接触端子に圧接されるようにしてなる磁気接合式コネクタにおいて、前記磁石体は、前記一方のコネクタ本体に揺動可能に保持されたことにより、両コネクタ本体を接合する際に、常に磁石体と相手側磁石体又は磁性体との吸着面同士が全体で吸着し、両吸着面間に隙間が生じないので磁力のロスを抑え、安定した吸着状態を得ることができる。また、磁石体又は相手側磁石体・磁性体の傾きが両コネクタ本体の接触端子どうしの接触ストロークに影響せず、安定した接触状態を得ることができる。
【0016】
また、本発明において、前記相手側磁石体又は磁性体は、前記他方のコネクタ本体に揺動可能に保持されたことにより、より高い自由度を得ることができる。
【0017】
更に、本発明において、前記各コネクタ本体は、複数の前記接触端子が前記磁石体を介して対称配置に備えられてなることにより、磁石体による吸着力に対する反力が分散して作用するので、磁石体が傾いた状態にあっても、両コネクタ本体が互いに平行配置に接合する。
【0018】
更に又、本発明において、前記コネクタ本体に、接合方向両端に開口し、前記磁石体が挿通される磁石挿通部と、該磁石挿通部の後端縁部に形成された凹状の保持用段部と、該保持用段部の後端側を閉鎖する後端閉鎖部材とを備えるとともに、前記磁石体が前記保持用段部に嵌め込まれるフランジ状の被保持部を後端に備え、且つ、前記磁石挿通部の内周面部と前記磁石体との間、前記被保持部と前記保持用段部内周面との間及び前記後端閉鎖部材と被保持部後端面との間にそれぞれ揺動用クリアランスが形成され、前記磁石体が前記一方のコネクタ本体に揺動可能に保持されるようにしたことにより、コネクタ本体に容易に磁石体を揚動可能に組み込むことができる。
【0019】
更に、本発明において、前記磁石体は、磁石の後端に該磁石の接合方向断面より大きな板状のフランジ用板材を固定することにより、後端に前記フランジ状の被保持部が形成されてなることにより、成形が困難な希土類磁石等の磁石部を単純な形状にすることができ安価に製造することができる。また、磁石の接合方向の厚みを変更することで複数の接合高さに対応でき、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る磁気接合式コネクタの使用状態の一例を示す分解斜視図である。
図2】本発明に係る磁気接合式コネクタを示す分解斜視図である。
図3】同上の他の角度から見た分解斜視図である。
図4】同上の断面図である。
図5図1中の一方のコネクタ本体の分解斜視図である。
図6】(a)は図5中のハウジングの正面図、(b)は同背面図、(c)は平面図、(d)は同横断面図である。
図7】(a)は図5中の磁石体を示す斜視図、(b)は同分解斜視図である。
図8】磁石体部分の状態を示す部分拡大横断面図である。
図9】(a)は図5中の可動接触端子を示す斜視図、(b)は同側面図である。
図10】従来の磁力接合式コネクタであって、ハウジングに対して磁石が傾いて固定された場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る磁気接合式コネクタの実施の態様を図1図9に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は充電用ケーブル等の接続ケーブルである。
【0022】
この磁気接合式コネクタ2は、互いに接合される一対のコネクタ本体3,4を備え、充電用ケーブル等の接続ケーブル1の一端に取り付けられた一方のコネクタ本体3と、電子機器に内蔵される他方のコネクタ本体4とを磁力により接合させることにより、各コネクタ本体3,4の接合部に配置された接触端子5,6が互いに圧接され、電子機器と接続ケーブル1とが電気的に接続されるようになっている。
【0023】
一方のコネクタ本体3は、接続ケーブル本体1aの先端に接続され、且つ、インサート成形により接合部を露出させた状態で絶縁性樹脂製の外部カバー7に組み込まれるようになっている。
【0024】
この一方のコネクタ本体3は、絶縁性樹脂製のハウジング10と、ハウジング10に揺動可能に保持された磁石体11と、ハウジング10の接合側端面より押し込み可能に突出した複数のピン状の可動接触端子5,5と、ハウジング10の背面側に配置された接続基板12とを備えている。
【0025】
ハウジング10は、図6に示すように、絶縁性樹脂材により横長に配置された直方体状に形成され、その中央部に接合方向両端に開口した長孔状の磁石挿通部13と、磁石挿通部13の後端縁部に形成された凹状の保持用段部14と、保持用段部14の後端側を閉鎖する後端閉鎖部材15とを備えている。
【0026】
一方、磁石体11は、図7に示すように、直方体状の磁石17の後端に接着テープ等の固定手段18を介して平板状のフランジ用板材19を固定することにより凸状に形成され、磁石挿通部13に挿通される磁石17からなる磁石部の後端に外向きに張り出した形状の被保持部20が備えられている。
【0027】
尚、この磁石体11は、磁石17の後端にフランジ用板材19を固定することにより凸状に形成される構造としたことで、磁石17の形状を単純で成形が容易な形状とすることができ、また、磁石17の接合方向の厚みを変更することで複数の接合高さに対応でき、コストの低減を図ることができる。
【0028】
この磁石体11は、ハウジング10の後端側より磁石17が磁石挿通部13に挿し込まれるとともに、後端の被保持部20が保持用段部14に嵌め込まれ、その保持用段部14の後端側を後端閉鎖部材15により閉鎖することにより、被保持部20が保持用段部14の凹状底部14aと後端閉鎖部材15との間に挟まれ、磁石17をハウジング10の接合側端面より突出させた状態で一方のコネクタ本体1に揺動可能に保持されるようになっている。
【0029】
また、磁石体11の磁力による吸着力は、保持用段部14の凹状底部14aと後端閉鎖部材15との間に挟まれた被保持部20を介してハウジング10に伝達されるようになっている。
【0030】
磁石17は、例えば、ネオジム磁石等の希土類磁石からなる永久磁石をもって構成され、接合方向両端面が平行な直方体状に形成されている。
【0031】
また、磁石17は、磁石挿通部13の内空部接合方向断面より一回り小さい断面が接合方向に連続した形状に形成され、磁石17を磁石挿通部13に挿通させた際に、磁石挿通部13の内周面と磁石体11との間に揺動用クリアランスc1が形成されるようになっている。
【0032】
一方、フランジ用板材19には、加工精度の高いステンレス鋼材等の磁性体材料を使用し、当該磁性体材料により磁石17の接合方向断面より大きな平板材に形成されている。
【0033】
このフランジ用板材19は、外形、即ち接合方向断面が磁石17のそれより大きく、且つ、保持用段部14の接合方向断面より小さく、また、厚みが保持用段部14の凹部底面14aと後端閉鎖部材15前端面との間の距離よりも薄く形成され、このフランジ用板材19を磁石17の後端に固定することにより被保持部20が磁石体11の後端に外向きに張り出した形状に形成されるとともに、被保持部20を保持用段部14に嵌め込んだ際に、被保持部20と保持用段部14内側面との間及び後端閉鎖部材15と被保持部20後端面との間にそれぞれ揺動用クリアランスc2,c3が形成されるようになっている。
【0034】
このように磁石挿通部13の内周面部と磁石部17との間、被保持部20と保持用段部14内側面との間及び後端閉鎖部材15と被保持部20後端面との間にそれぞれ揺動用クリアランスc1,c2,c3が形成されることにより、磁石体11が一方のコネクタ本体3に揺動可能に保持された状態、即ち、磁石体11がハウジング10に対してフローティング構造を形成するようになっている。
【0035】
後端閉鎖部材15は、金属製板材により横長の矩形状に形成され、ハウジング10の上面又は下面に形成されたスリット状の挿し込み孔21を通してハウジング10に圧入することにより保持用段部14の後端側を閉鎖するようになっている。
【0036】
可動接触端子5は、図9に示すように、ハウジング10に接合方向でスライド可能に収容される導電性金属材製のスライドピン22と、スライドピン22の後端側に配置される後端板23aを有する導電性金属材からなるコ字状のターミナル部材23と、スライドピン22と後端板23aとの間に配置される押し出しバネ24とを備え、ハウジング10の両側部に形成された可動端子収容部25,25に磁石体11を介して対称配置を成すように組み込まれている。
【0037】
この可動接触端子5は、後端側に開口した可動端子収容部25,25にスライドピン22、押し出しバネ24を挿入するとともにターミナル部材23を圧入することにより、押し出しバネ24が後端板23aに反力を取ってスライドピン22を接合方向押し出し側に付勢し、スライドピン22の先端部が突出孔26を通してハウジング10の接合側端面より接合方向で押し込み可能に突出するようになっている。
【0038】
ターミナル部材23は、ハウジング10に組み込まれた際に常にスライドピン22の外側面と圧接した状態にある弾性圧触片27,27と、後端板23aの側縁より後方に向けて延出した形状の基板接続端子片28とを備え、基板接続端子片28が接続基板12に形成されたスルーホール29に挿入されるようになっている。
【0039】
尚、図中符号16は、ハウジング10の接合端面部に一体に形成された端子保護部であって、ハウジング10の接合側端面より押し込み可能に突出した可動接触端子5の周囲を囲い、可動接触端子5の先端部を保護するようになっている。
【0040】
接続基板12は、矩形板状に形成され、両端部にそれぞれスルーホール29,29を有するとともに、後端側面部に導電性膜材によりケーブル接続用パターン30,30が形成され、スルーホール29に挿し込まれた基板接続端子片28を半田付けすることにより、可動接触端子5がケーブル接続用パターン30,30に接続されるようになっている。
【0041】
また、この接続基板12は、防水性の接着テープ31を介してハウジング10の後端面部に固定され、この接着テープ31がパッキンとして機能し、ハウジング10の後端外周縁部と接続基板12の固定面側周縁部との間の隙間が密封されるようになっている。
【0042】
このようにハウジング10と接続基板12とを防水性の接着テープ31により固定することで、インサート成型により外部カバー7内にコネクタ本体3を組み込む際に、特別な事前処理を施すことなく、樹脂がコネクタ本体3内部に流れ込むことを防止することができ、インサート成型時の工数及び費用の低減を図ることができるとともに、高い品質を確保することができるようになっている。
【0043】
他方のコネクタ本体4は、合成樹脂製のハウジング40と、ハウジング40の接合端面部に配置された相手側磁性体41と、導電性金属材からなる固定接触端子6,6とを備え、相手側磁性体41及び固定接点端子6,6が一体成形によりハウジング40に組み込まれている。
【0044】
相手側磁性体41は、ステンレス鋼材等の強磁性体材により平板プレート状に形成され、吸着面がハウジング40の接合側端面と略同一平面上に露出するようにハウジング40に固定されている。
【0045】
固定接触端子6は、ハウジング40の接合側端面より突出した凸部42の先端側に露出する圧接部6aを備え、両コネクタ本体3,4が接合した際に、凸部43がコネクタ本体3の端子保護部16内に嵌合され、圧接部6aにスライドピン22が圧接されるようになっている。
【0046】
このように構成された磁気接合式コネクタ2は、両コネクタ本体3,4を接合させる際、磁石体11がハウジング10、即ち一方のコネクタ本体3に対して揺動可能に保持された状態、即ち磁石体11がフローティング構造であるため、磁石体11の吸着面と相手側磁性体41の吸着面とに傾きが生じている場合でも、磁石体11が揺動してその傾きを吸収し、磁石体11と相手側磁性体41とが、常に吸着面全体で吸着し、磁石体11と相手側磁性体41との間に隙間が生じないようになっている。
【0047】
また、一方のコネクタ本体3に磁石体11がハウジング10に対し揺動可能な状態に保持される構造、即ち、磁石体11がフローティング構造であるので、磁石体11がハウジング10に対して傾いた状態であっても、両可動接点端子5,5のストローク量が制限されることがない。
【0048】
更に、両ハウジング10,40間で作用する磁石体11の吸着力に対する反力は、磁石体11を介してコネクタ本体3の両側部に対称配置された可動接触端子5,5部分に分散されるので、磁石体11がハウジング10に対して傾いた状態であっても、両可動接触端子5,5の押し出しバネ24,24の付勢力により、両コネクタ本体3,4が互いに平行配置となる方向に付勢され、安定した接続状態を得ることができるようになっている。
【0049】
尚、上述の実施例では、一方のコネクタ本体3の磁石体11のみを揚動可能に保持させた例について説明したが、他方のコネクタ本体4に相手側磁石体又は磁性体を揚動可能に保持させ、両コネクタ本体3,4の磁石体又は磁性体をそれぞれ揺動できるようにしてもよい。
【0050】
また、上述の実施例では、磁石17を横長の直方体状に形成した例について説明したが、磁石17の形状は、上述の形状に限定されず、円柱状等のその他の同一断面形状が接合方向で連続するような単純形状であってもよい。
【0051】
更に、上述の実施例では、磁石17に固定手段18によりフランジ用板材19を固定することで磁石体11が後端に被保持部20を有する凸状に形成された例について説明したが、磁石を凸状に成形することにより磁石17の後端に被保持部20を一体に備えるようにしてもよい。
【0052】
更にまた、上述の実施例では、磁石体11の両側部に一対の可動接点端子5,5を配置したコネクタ本体3について説明したが、複数の可動接点端子を磁石体11の周方向に並べて配置したものであってもよい。
【0053】
また、上述の実施例では、各コネクタ本体3,4の接触端子をそれぞれ押し込み可能なスライドピン22を有する可動接点端子5と、スライドピン22が押し当てられる圧接部6aを有する固定接点端子6とした例について説明したが、接点端子は上述の如き構成に限定されず、例えば、導電性金属材により接合方向で圧接される板バネ状に形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 接続ケーブル
2 磁気接合式コネクタ
3 一方のコネクタ本体
4 他方のコネクタ本体
5 可動接触端子
6 固定接触端子
7 外部カバー
10 ハウジング
11 磁石体
12 接続基板
13 磁石挿通部
14 保持用段部
15 後端閉鎖部材
16 端子保護部
17 磁石
18 固定手段(接着テープ)
19 フランジ用板材
20 被保持部
21 挿し込み孔
22 スライドピン
23 ターミナル部材
24 押し出しバネ
25 可動端子収容部
26 突出孔
27 弾性圧触片
28 基板接続端子片
29 スルーホール
30 ケーブル接続用パターン
31 接着テープ
40 ハウジング
41 相手側磁性体
42 固定接触端子
43 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10