(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウォームギア駆動手段は、前記固定部材において、前記ウォームギアと前記第3の歯部とのバックラッシュが生じない角度に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の歩行支援装置。
【背景技術】
【0002】
近年、介護ビジネスなどを中心に、人の動作(歩行や持ち上げなど)に使われる筋力を補助する装着型ロボット(パワーアシストスーツ)などが開発されている。
装着型ロボットには、アシスト箇所として、上半身の筋力を補助するもの、下半身の筋力を補助するもの、あるいは、全身の筋力を補助するものなど各種のものがある。
また、装着型ロボットの用途も、健常者用から高齢者・障害者の補助用などがある。
【0003】
装着型ロボットは、例えば、装着者の筋電から筋肉の動きを解析したり、関節各部に配置した姿勢センサで検出される装着者の動きを解析することで、当該動きに必要な関節モーメントを算出し、これに応じた必要なアシスト力を発生させている。これによって、装着者は、重量物の持ち上げや歩行を楽に行うことができる。
【0004】
このような技術に、特許文献1の「装着式動作補助装置、装着式動作補助装置の制御方法および制御用プログラム」がある。
この技術は、装着者に設置したセンサによって生体信号を検出し、これを用いて装着者の意思に従った動力をアクチュエータに発生させるものである。
【0005】
ところで、人間の肘関節や膝関節は複雑な構成になっており、装着型ロボットのこれら関節部分を二重関節にすると装着者の関節運動に対する追従性を向上させることができる。
図9の各図は、従来の二重関節駆動機構を説明するための図である。
図9(a)に示したように、装着者の上腿部に装着する上腿連結部材26と下腿部に装着する下腿連結部材27は、連動する歯車54、歯車56を有する二重関節部50を介して接合している。
膝関節アシストアクチュエータ18は、ロッド駆動部64とロッド63を有しており、ロッド駆動部64は、上腿連結部材26の股関節側の股側(上腿の前側)に軸支されている。一方、ロッド63の先端は、下腿連結部材27の脛側(下腿の前側)において上腿連結部材26側に延設された部材100に軸支されている。
【0006】
このように構成された二重関節部50において、膝関節アシストアクチュエータ18を駆動し、ロッド駆動部64がロッド63を押し出すと、二重関節部50によって、上腿連結部材26と下腿連結部材27は、
図9(b)に示したように屈曲する。
更に、ロッド駆動部64がロッド63を押し出すと、
図9(c)に示したように上腿連結部材26と下腿連結部材27は、膝を折った状態となる。
逆に、ロッド駆動部64がロッド63を引き込むと、
図9(a)に示したように上腿連結部材26と下腿連結部材27は、膝を伸ばした状態となり、屈曲が解除される。
【0007】
図10の各図は、従来の二重関節駆動機構の他の例を説明するための図である。
この例では、
図10(a)に示したように、ロッド駆動部64は、上腿連結部材26の股関節側の股の裏側に軸支されており、ロッド63の先端は、下腿連結部材27の脹ら脛側に固定された部材101に軸支されている。
このように構成された二重関節部50において、膝関節アシストアクチュエータ18を駆動し、ロッド駆動部64がロッド63を引き込むと、
図10(b)に示したように、上腿連結部材26と下腿連結部材27が屈曲し、更に、膝関節アシストアクチュエータ18を駆動すると、
図10(c)に示したように、上腿連結部材26と下腿連結部材27が更に屈曲し、膝を折った状態となる。
逆に、ロッド駆動部64がロッド63を押し出すと、
図10(a)に示したように上腿連結部材26と下腿連結部材27は、膝を伸ばした状態となる。
【0008】
従来は、以上のようにして二重関節部50を駆動していたが、この駆動機構では、例えば、膝を伸ばした状態と屈曲させた状態では、膝関節アシストアクチュエータ18を同じ量だけ動作させたとしても関節動作トルクや関節動作速度などが異なる。
即ち、膝の屈曲角度に応じて単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作トルクや関節動作速度が異なる。
しかし、従来の駆動機構では、膝の屈曲角度に応じて単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作トルクや関節動作速度を調整することができないという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)実施形態の概要
二重関節部50(
図4)において、歯車54は、上腿連結部材26の下腿連結部材27に回転自在に軸支されており、歯車56は、下腿連結部材27に回転しないように固定されている。
関節フレーム52は、歯車54と歯車56を回転自在に軸支しており、歯車54と歯車56の歯部がかみ合う位置に歯車54と歯車56を保持している。
歯車54の表面には、連結アーム61が半径方向に固定されており、更に、連結アーム61は、連結軸62によってロッド63に軸支されている。図示しないが、ロッド63は膝関節アシストアクチュエータ18を構成しており、軸方向に移動する。
そのため、膝関節アシストアクチュエータ18を駆動すると、ロッド63によって歯車54が回転し、これに連動して歯車56が回転し、上腿連結部材26に対して下腿連結部材27が屈曲する。
【0015】
図7に示したように、歯車54の表面(回転軸に垂直な面)には、ラックギア67が円状に形成されており、連結アーム61に固定されたウォームギア72がかみ合っている。ウォームギア72は、連結アーム61に固定された連結アームアクチュエータ71(モータ)の回転軸に取り付けられている。
連結アームアクチュエータ71を駆動してウォームギア72を回転させると歯車54に対する連結アーム61の取り付け角度が変化する。このようにして連結アーム61の取り付け角度を調整することにより、膝関節アシストアクチュエータ18の単位動作量当たりの関節動作トルクや関節動作速度、及び関節動作量などの変動過度特性を調整することができる。
また、歯車54とラックギア67がゼロクリアランスとなるように連結アームアクチュエータ71の取り付け角度にオフセット角度を持たせることにより連結アーム61のがたつきを抑制することができる。
【0016】
(2)実施形態の詳細
図1は装着型ロボット1の装着状態を示した図である。
装着型ロボット1は、装着者の腰部及び下肢に装着し、装着者の歩行を支援(アシスト)するものである。
装着型ロボット1は、腰部装着部21、上腿装着部22、下腿装着部23、足装着部24、上腿連結部材26、下腿連結部材27、制御装置2、つま先反力センサ10、踵反力センサ11、つま先姿勢センサ12、踵姿勢センサ13、腰姿勢センサ14、上腿姿勢センサ15、下腿姿勢センサ16、股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19などを備えている。なお、腰部装着部21、制御装置2、腰姿勢センサ14以外は、左右の両足に設けられており、それぞれの検出値が出力されるようになっている。
但し、つま先反力センサ10、踵反力センサ11については、反力の検出が不要である実施例の場合には、両センサに変えてつま先接地センサ、踵接地センサを備えるようにしてもよい。
【0017】
腰部装着部21は、装着者の腰部の周囲に取り付けられ装着型ロボット1を固定する。
腰姿勢センサ14は、腰部装着部21に取り付けられ、ジャイロなどによって腰部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、腰部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0018】
制御装置2は、腰部装着部21に取り付けられ、装着型ロボット1の動作を制御する。
股関節アシストアクチュエータ17は、装着者の股関節と同じ高さに設けられており、腰部装着部21に対して上腿連結部材26を前後方向に駆動する。なお、股関節アシストアクチュエータ17を3軸アクチュエータとして横方向にも駆動するように構成することもできる。
【0019】
上腿連結部材26は、装着者の上腿部の外側に設けられた剛性を有する柱状部材であり、上腿装着部22によって装着者の上腿部に固定される。そして、上腿連結部材26は、股関節アシストアクチュエータ17によって駆動し、上腿部の運動を支援する。
上腿装着部22は、外側が上腿連結部材26の内側に固定されており、内側が装着者の上腿に固定される。
上腿姿勢センサ15は、上腿部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、上腿部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0020】
膝関節アシストアクチュエータ18は、膝関節部に形成された後述の二重関節部50を駆動し、これによって下腿連結部材27を前後方向に運動させて装着者の下腿部の運動を支援する。
下腿連結部材27は、装着者の下腿部の外側に設けられた剛性を有する柱状部材であり、下腿装着部23によって装着者の下腿部に固定される。そして、下腿連結部材27は、膝関節アシストアクチュエータ18によって駆動し、下腿部の運動を支援する。
【0021】
下腿装着部23は、外側が下腿連結部材27の内側に固定されており、内側が装着者の下腿に固定される。
下腿姿勢センサ16は、下腿部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、下腿部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0022】
足首関節アシストアクチュエータ19は、装着者の足首関節と同じ高さに設けられており、下腿連結部材27に対して足装着部24のつま先を上下する方向に駆動する。
足装着部24は、装着者の足部(足の甲、及び足裏)に固定される。一般に、足指の付け根の関節は歩行の際に屈曲するが、足装着部24も足指の付け根の部分が足指に従って屈曲するようになっている。
【0023】
つま先姿勢センサ12と踵姿勢センサ13は、それぞれ、足装着部24の先端と後端に設置され、それぞれ、つま先と踵の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、つま先や踵の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0024】
つま先反力センサ10は、足装着部24の足裏部前方に設置され、つま先の接地を検出すると共に、歩行面からの反力を検出する。
踵反力センサ11は、足装着部24の足裏部後方に設置され、踵の接地を検出すると共に、歩行面からの反力を検出する。
以上のように構成された装着型ロボット1は、股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19を駆動することにより、装着者の歩行を支援する。
【0025】
図2は、装着型ロボット1のシステム構成を示した図である。
制御装置2は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、時間を計測する手段としての時計、記憶部7、各種インターフェースなどを備えた電子制御ユニットであり、装着型ロボット1の各部を電子制御する。
【0026】
制御装置2は、また、CPUで記憶部7に記憶された歩行支援プログラム等の各種プログラムを実行することにより構成される、センサ情報取得部3、各種パラメータ算出部4、歩行動作判定部5、歩行シーン判定部6、歩行アシスト力決定部8、連結アーム角度調整部9を備えている。
センサ情報取得部3は、つま先反力センサ10〜下腿姿勢センサ16の各センサから検出値を取得する。センサ情報取得部3で取得した各センサの検出値は、歩行動作の判定や、歩行シーンの判定や、歩行パラメータの算出等に使用される。
【0027】
各種パラメータ算出部4は、センサ情報取得部3で取得した検出値から、各関節の角度や位置を求めることで歩行パラメータ値(重複歩調と重複歩距離)を算出する。
ここで、1側の踵が接地してから次に同側の踵が接地するまでの動作を重複歩といい、この重複歩における一連の動作を歩行周期という。そして、重複歩における踵の両接地点間の距離を重複歩距離といい、1分間当たりの重複歩数(重複歩数/分)を重複歩調という。
【0028】
歩行動作判定部5は、装着者の動作が屈伸運動や足踏み動作などの歩行以外の動作なのか、それとも実際に歩行している動作なのかを判定する。
歩行シーン判定部6は、センサ情報取得部3で取得した検出値から、装着者の歩行している歩行シーンを判定する。判定対象となる歩行シーンとしては、歩行面種類(平地、上り階段、下り階段、上り坂道、下り坂道)の5種類のそれぞれに対して、前進歩行と後進歩行の歩行方向2種類があり、合計10の歩行シーンがある。
【0029】
歩行アシスト力決定部8は、左右両足のそれぞれに配置されている股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19に出力させるアシスト力を決定し、これに従ってこれらアシストアクチュエータを駆動する。なお、アシスト力とは、装着型ロボット1がアシストアクチュエータを駆動して脚部に作用させるモーメント(トルク)である。
【0030】
連結アーム角度調整部9は、後に詳細に説明するように、二重関節部50(
図4)の連結アーム61に設置された連結アームアクチュエータ71(
図7)を駆動することにより歯車54に対する連結アーム61の取り付け角度を調整する。
これにより連結アーム角度調整部9は、二重関節部50における膝関節アシストアクチュエータ18の単位動作量当たりの関節動作トルクや関節動作速度などの変動過度特性を調整する。
【0031】
図3は、二重関節部50の装着位置を説明するための図である。
図3(a)は、正面図を示しており、
図3(b)は、側面図を示している。
なお、
図3(a)では、図を簡略化するため右足のみ装着しているが、両足に装着するものである。また、膝関節アシストアクチュエータ18は、省略してある。
二重関節部50は、装着者の膝関節の位置に対応して形成されており、上腿連結部材26の下端と下腿連結部材27の上端を接合している。
二重関節部50は、上腿連結部材26の下端側に軸支された円形の歯車54、下腿連結部材27の上端側に固定された円形の歯車56、及び、歯車54、歯車56を軸支する関節フレーム52を有している。
歯車54と歯車56は、歯部(ギア)がかみ合って連動するようになっている。
【0032】
装着者が膝を曲げると、これにともなって二重関節部50も屈曲する。すると、上腿連結部材26に対する下腿連結部材27の回転中心は、上腿連結部材26と下腿連結部材27の軸線の交点となり、膝の屈曲にともなって前方に移動する。この動きが人体の膝の動きによく適合しており、二重関節部50は、膝の前後運動に良好に追従することができる。
【0033】
図4は、二重関節部50の構造を説明するための図である。なお、二重関節部50は、歯車54に対する連結アーム61の角度を調整する機構を備えているが、これについては後に詳細に説明するため省略してある。
上腿連結部材26の下端側(下腿連結部材27側)には、歯車54が固定軸55によって回転自在に軸支されている。
図示しないが、歯車54の全周には歯部が形成されている。なお、歯部は歯車54の全周に形成されている必要はなく、少なくとも歯車56とかみ合う部分に形成されていればよい。
【0034】
一方、下腿連結部材27の上端側(上腿連結部材26側)には、固定軸57、及び固定軸57の周囲で120度おきに設けられた固定具60、60、60によって歯車56が固定されている。なお、図の煩雑化を避けるため、固定具60は、1つのみに符号を付している。
下腿連結部材27に対する歯車56の回転は、固定具60によって規制されるため、歯車56は、下腿連結部材27に対して回転せず、下腿連結部材27と一体となって運動する。
図示しないが、歯車56の全周には歯部が形成されている。なお、歯部は歯車56の全周に形成されている必要はなく、少なくとも歯車54とかみ合う部分に形成されていればよい。
【0035】
関節フレーム52は、板状の部材であり、歯車54の歯部と歯車56の歯部がかみ合って、お互いが連動する位置に歯車54と固定軸55を軸支している。
このため、歯車54が関節フレーム52に対して回転すると、これにともなって歯車56も関節フレーム52に対して回転する。そして、歯車56は、下腿連結部材27に固定されているため、下腿連結部材27は、上腿連結部材26に対して回転することとなる。
【0036】
なお、
図4では、歯車54、歯車56の片面側にだけ関節フレーム52を配設したが、対向する片面側にも関節フレーム52を設け、2枚の関節フレーム52で歯車54、歯車56を挟み込んでもよい。更に、2枚の関節フレーム52を連結して互いに固定すると、二重関節部50の強度を向上させることができる。
【0037】
連結アーム61は、後述のウォームギア72によって歯車54に固定されており、歯車54の半径方向に歯車54の外部まで延設されている。後述するようにウォームギア72を駆動することにより連結アーム61の固定されている角度を調整することができる。
連結アーム61先端部分には、ロッド63の先端部分が連結軸62(アクチュエータピボット)によって軸支されている。
そして、ロッド63が伸縮すると連結アーム61を介して歯車54に力が伝達され、歯車54を回転させるトルクが発生する。
【0038】
ロッド63によるトルクによって歯車54が回転すると、歯車56が連動して回転し、これによって、下腿連結部材27が上腿連結部材26に対して回転する。このようにして、ロッド63を駆動することにより、二重関節部50を駆動し、下腿連結部材27を回転させ、屈曲運動させることができる。
【0039】
図5の各図は、膝関節アシストアクチュエータ18の構成、及び二重関節部50の動作を説明するための図である。
図5(a)は、膝が伸びた状態での二重関節部50を示している。
膝関節アシストアクチュエータ18は、ロッド駆動部64からロッド63を軸線方向に出し入れすることにより伸縮する。
ロッド駆動部64は、例えば、ボールねじ、油圧、空気圧、人工筋肉(例えばマッキベン型)などを用いることができる。
ロッド駆動部64の端部は、連結軸65によって、上腿連結部材26の股側に軸支されている。このため、膝関節アシストアクチュエータ18は、伸縮に従って上腿連結部材26に対する取り付け角度を自由に変化させることができる。
【0040】
膝関節アシストアクチュエータ18を動作させてロッド駆動部64がロッド63を引き込むと
図5(b)に示したように膝関節アシストアクチュエータ18の長さが縮まる。
すると、ロッド駆動部64は、上腿連結部材26に軸支されているため連結アーム61がロッド駆動部64側に引き寄せられて歯車54が回転し、これに連動して歯車56が歯車54と逆方向に回転する。
そして、歯車54は、下腿連結部材27に固定されているため、下腿連結部材27が上腿連結部材26に対して膝を屈する方向に回転する。このようにして二重関節部50は、膝関節アシストアクチュエータ18によって駆動される。
【0041】
更に、ロッド駆動部64がロッド63を引き込むと、
図5(c)に示したように下腿連結部材27が上腿連結部材26に対して膝を折り曲げる角度まで回転する。
逆に、ロッド駆動部64がロッド63を送出すると、
図5(a)に示したように上腿連結部材26と下腿連結部材27は、膝を伸ばした状態となる。
【0042】
図6の各図は、単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作トルクや関節動作速度を説明するための図である。
図6(a)に示したように、固定軸55の中心を原点とし、原点から歯車56の中心方向にx軸、ロッド63の方向(より詳細には、連結軸62がx軸から最も離れる方向)にy軸を設定する。
膝関節アシストアクチュエータ18を駆動してロッド63をx軸方向に移動させると歯車54が原点を中心に回転する。
【0043】
今、図に示したようにy軸と連結アーム61の成す角度をθとする。そして、θの入力可能角度、即ち、人体の膝構造を考えずに二重関節部50を機械的に動かせる角度をβ(−β/2からβ/2まで)とし、必要関節駆動角度、即ち、膝の運動をアシストするのに要する角度をα(−α/2からα/2まで)とする。θ=α/2が膝を伸ばした状態となる。
なお、この入力可能角度と必要関節駆動角度は一例であって、入力可能角度はβ1からβ2まで、必要関節駆動角度はα1からα2まで、というように二重関節部50の構成や連結アーム61の基準取り付け角度によって各種値をとり得る。θが大きいほど関節角度は小さくなり(膝を伸ばした状態になり)θが小さいほど関節角度は大きくなる(膝を屈曲した状態になる。
【0044】
図6(b)は、各θにおける単位アクチュエータ動作量当たりのトルク、即ち、ロッド63を単位量だけ駆動した場合に連結アーム61が歯車54に作用させるトルクの値を各θに渡ってプロットしたものである。
図に示したように、当該トルクは、θが0に近いほど(x軸から離れるほど)大きくなり、θの絶対値が大きくなるほど(x軸に近づくほど)小さくなる。
【0045】
図6(c)は、各θにおける単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作速度、即ち、ロッド63を単位量だけ駆動した場合に連結アーム61が歯車54を回転させる速さを各θに渡ってプロットしたものである。
図に示したように、当該関節動作速度は、θが0に近いほど(x軸から離れるほど)小さくなり、θの絶対値が大きくなるほど(x軸に近づくほど)大きくなる)。
なお、単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作量も同様な特性となる。
【0046】
このようにθに応じてトルクと関節動作速度(及び関節動作量)が変化するため、例えば、ロッド63をより伸ばした位置(θが大きい位置)に連結アーム61及び連結軸62を設置すると、関節屈曲角度が小さい部分では、単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作速度が小さくなるとともに関節動作トルクが大きくなる。また、各節屈曲角度が大きい部分では、単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作速度が大きくなるとともに関節動作トルクが小さくなる。
【0047】
逆に、膝関節アシストアクチュエータ18をより縮めた位置(θが小さい位置)に連結アーム61及び連結軸62を設置すると、関節屈曲角度が少ない部分では、単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作速度が大きくなるとともに関節動作トルクが小さくなる。また、各節屈曲角度が大きい部分では、単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作速度が小さくなるとともに関節動作トルクが大きくなる。
【0048】
このように、二重関節部50は、連結アーム61の取り付け位置によって変動過度特性を持つため、連結アーム61を予め決められた位置に固定してしまうと、例えば、二重関節部50の変動過度特性に合わせて膝関節アシストアクチュエータ18に歩行支援に適した出力特性を持たせる必要が生じたり、連結アーム61に過負荷が作用する可能性が考えられるなどの問題が考えられる。
そこで、本実施の形態では、歯車54の周方向に対する連結アーム61の設置角度を可変とし、単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作トルクや関節動作速度、及び関節動作量を調整できるようにした。
【0049】
図7は、連結アーム61の設置角度の調整機構を説明するための図である。
歯車54は、円周面に歯部(図示せず)が形成されているとともに歯車54の表面に円形のラックギア67が組み込まれ、またはモールドされるなどして形成されている。
一方、連結アーム61には、連結アームアクチュエータ71が固定されている。本実施の形態では、連結アームアクチュエータ71としてモータを用いる。連結アームアクチュエータ71の回転軸にはウォームギア72が取り付けられており、ウォームギア72の歯部はラックギア67の歯部とかみ合っている。
【0050】
連結アームアクチュエータ71が駆動してウォームギア72を回転すると、ラックギア67が連動して回転し、歯車54に対する連結アーム61の設置角度が変化する。
また、このように連結アーム61の設置角度の調整機構にウォームギア72とラックギア67を用いると、バックドライバビリティを排除することができる。
即ち、ウォームギア72を回転させてラックギア67を回転させることはできるが、ラックギア67を回転させてウォームギア72を回転させることはできない。
【0051】
このため、歩行支援に際して歯車54から連結アーム61に負荷がかかってもウォームギア72を回転させることはできず、特にストッパを設けるなどしなくても連結アーム61の設置角度を固定することができる。
このように、連結アーム61の設置角度を調整する機構はバックドライバビリティのないものが望ましい。
なお、実施の形態のウォームギア方式以外にも、超音波モータなどのバックドライバビリティのない動力により連結アーム61の位置を調整する仕組みとしてもよい。
【0052】
このように、二重関節部50では、歯車54の表面に形成された歯部(ラックギア67)を連結アーム61上に配置された連結アームアクチュエータ71に取り付けられたウォームギア72で駆動することで連結アーム61の角度を任意に可変できる。
また、ウォームギア72を用いることでバックドライバビリティを排除し、膝関節アシストアクチュエータ18、あるいは外部からの膝関節への入力に対し、連結アーム61の角度が動かされてしまうことを回避することができる。
【0053】
このように、本実施の形態では、連結アーム61の設置角度によって関節動作トルクや関節動作速度の変動過度特性を変化させることができる。
この調整は、歩行開始前にある角度に調整して固定し、その角度を保ちながら歩行アシストを行ってもよいし、あるいは、歩行アシストを行っている最中にリアルタイムで行ってもよい。
リアルタイムで角度調整する場合は、例えば、膝関節角度や関節に発生しているトルクや膝関節の回転速度などに応じて連結アーム61の角度を歩行アシストに適した角度に変化させる。
【0054】
この場合、関節角度φ、関節に発生しているトルクτとしてθ=f(φ、τ)などと表すことができ、連結アーム角度調整部9がセンサ情報取得部3で得られた値を基にして計算し、連結アームアクチュエータ71を駆動する。
【0055】
また、連結アーム角度調整部9が連結アームアクチュエータ71を駆動して連結アーム61を回転する際には、例えば、連結アーム61を−θ方向に回転する場合には膝関節アシストアクチュエータ18の長さを短く、連結アーム61を+θ方向に回転する場合には膝関節アシストアクチュエータ18の長さを長くする必要がある。
このため、歩行アシスト力決定部8は、連結アーム61の回転に連動して膝関節アシストアクチュエータ18のロッド63を出し入れして膝関節アシストアクチュエータ18の長さを調整する。
【0056】
図8の各図は、歯車54に対する連結アーム61のがたつき防止機構を説明するための図である。
図8(a)に示したように連結アームアクチュエータ71の回転軸は、連結アーム61の中心軸に対してオフセット角度γをもって取り付けられている。これによりウォームギア72の角度もγに調整される。
【0057】
図8(b)は、ウォームギア72とラックギア67の位置関係を示した図である。
ラックギア67に対してオフセット角度を設けることによりウォームギア72を傾けて取り付けると、ウォームギア72の何れかのねじ山73がラックギア67のねじ山と部位74、75にて接触する。オフセット角度γは、このようにウォームギア72のねじ山のうちの何れかがラックギア67のねじ山によって両側から挟持される角度、即ち、ゼロクリアランス(接触するねじ山間に遊びがないこと、つまりバックラッシュがないこと)を保持する角度に設定される。
このようにオフセット角度を設定することにより二重関節部50に対する連結アーム61のがたつきを抑制することができる。
【0058】
以上、本実施の形態の二重関節部50について説明したが、これによって次のような効果を得ることができる。
(1)歯車54に対する連結アーム61の取り付け角度が調整可能となり、二重関節部50における膝関節アシストアクチュエータ18の単位動作量当たりの関節動作トルクや関節動作速度の変動過度特性を調整することができる。
(2)歩行アシスト中においても連結アーム61の取り付け角度を調整することにより歩行状態(関節角度、関節に生じているトルクなど)に取り付け角度をリアルタイムに追従させることができ、これによって二重関節部50の特性を歩行の運動特性に適した値に動的に変化させることができる。
(3)連結アーム61の取り付け角度の調整をウォームギア72とラックギア67の組み合わせによって行うことにより簡単な機構でバックドライバビリティを排除することができる。
(4)連結アームアクチュエータ71のオフセット角γを設定することによりウォームギア72とラックギア67でゼロクリアランスを実現することができ、ギア間のバックラッシュがなくなるため、連結アーム61のがたつきを抑制することができる。
(5)二重関節部50の内部に設置する歯車54を駆動することで、関節動作に必要な膝関節アシストアクチュエータ18のストロークを短小化することができる。そのため、膝関節アシストアクチュエータ18として短いストロークの直動アクチュエータを用いることができる。また、膝関節アシストアクチュエータ18の取り付け位置を大きくオフセットすることがなくなるとともに関節周りの張り出しがなくなる。以上により二重関節部50の駆動機構が小型化できる。
(6)アクチュエータピボットの位置(連結軸62の位置)を最適化することにより単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作トルク、及び関節動作速度の変動過度特性を調整できる。
(7)
図9に示した従来例では、(a)膝関節アシストアクチュエータ18の必要ストロークが長大、(b)単位アクチュエータ動作量当たりの関節動作角度の変動が大きく、屈曲角度が大きくなるにつれて動作角度当たりのアクチュエータ動作量が少なくなり、屈曲角度が大きい部分で関節トルクが出にくい、(c)膝頂点部にアクチュエータピボットが張り出して突起するため、作用点であるピボットが障害物に接触する可能性が高くなる、などの問題があるが、本実施の形態では、これらの問題を著しく軽減することができる。
(8)
図10に示した従来例では、(a)膝関節アシストアクチュエータ18の必要ストロークが長大、(b)屈曲時に関節内側に膝関節アシストアクチュエータ18が張り出し、椅子に座ることが困難になる、などの問題があるが、本実施の形態では、これらの問題を著しく軽減することができる。
【0059】
以上に説明した実施の形態により次のような構成を得ることができる。
(1)上腿連結部材26は、歩行支援対象者の上腿部を支持する第1の支持部材として機能している。そして歯車54の歯部は、第1の支持部材に軸支され、前記上腿部の膝関節に対応して形成された第1の歯部として機能している。
下腿連結部材27は、前記膝関節に接合する下腿部を支持する第2の支持部材として機能している。そして、歯車56の歯部は、第2の支持部材に固定され、前記第1の歯部とかみ合って連動する第2の歯部として機能している。
関節フレーム52は、歯車54と歯車56をかみ合う位置に軸支するため前記第1の歯部と前記第2の歯部を所定の位置関係に軸支する歯部保持部材として機能している。
連結アーム61は、ラックギア67とウォームギア72を介して歯車54に対して固定されるため、前記第1の歯部に対して固定された固定部材として機能している。
膝関節アシストアクチュエータ18は、連結アーム61を駆動して上腿連結部材26に対して歯車54を回転させるため前記固定部材を駆動して前記第1の歯部を回転させる駆動手段として機能している。
連結アームアクチュエータ71、ウォームギア72、及びラックギア67からなる機構は、歯車54に対する連結アーム61の取り付け角度(固定角度)を調整するため前記固定部材の前記第1の歯部に対する前記第1の歯部の回転軸の周りにおける固定角度を調整する角度調整手段として機能している。
(2)前記角度調整手段において、ラックギア67は、歯車54の回転軸に垂直な表面に形成されており、前記第1の歯部の前記回転軸に垂直な面に形成された第3の歯部として機能している。
また、ウォームギア72は、前記第3の歯部とかみ合って前記第3の歯部と連動するウォームギアとして機能している。
また、連結アームアクチュエータ71は、連結アーム61に固定されており、前記固定部材に固定され、前記ウォームギアを駆動して回転させるウォームギア駆動手段として機能している。
(3)連結アームアクチュエータ71は、ラックギア67とウォームギア72にバックラッシュが生じないオフセット角γをもって連結アーム61に固定されているため前記ウォームギア駆動手段は、前記固定部材において、前記ウォームギアと前記第3の歯部とのバックラッシュが生じない角度に固定されている。