特許第5783498号(P5783498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783498
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/24 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   B25D17/24
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-65221(P2012-65221)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-193189(P2013-193189A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子
(72)【発明者】
【氏名】山田 英貴
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴啓
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−023653(JP,A)
【文献】 特表2006−520696(JP,A)
【文献】 特開2010−260145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/24
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
該ハウジングに支持されたモータと、
往復運動可能に該ハウジングに支持された往復運動部材と、
該モータの回転力を往復運動に変換し、該往復運動を該往復運動部材に伝達して該往復運動部材を往復運動させる運動変換機構と、
該往復運動部材の往復運動方向に直交する揺動軸心を中心として、該往復運動方向に沿って揺動可能に該ハウジングに弾性的に支持され、該往復運動部材の往復運動に起因して発生する振動を低減するカウンタウェイトと、を備え、
該カウンタウェイトは、該往復運動方向における寸法が反揺動軸心側に向かうに従って小さくなる台形形状を有することを特徴とする電動工具。
【請求項2】
該カウンタウェイトは揺動可能な最大振れ幅を有し、
該往復運動方向における該カウンタウェイト端部は揺動軸心寄りの軸心側部端部と、該軸心側部端部よりも該揺動軸心から離れた位置にある軸心離間端部とを有し、
該ハウジングの一部は、該往復運動方向において該カウンタウェイト端部に対向するウェイト対向平坦面を有し、
該往復運動方向における該最大振れ幅に達したときの、該軸心側部端部から該ウェイト対向平坦面までの距離と、該軸心離間端部から該ウェイト対向平坦面までの距離と、は略同一であることを特徴とする請求項1記載の電動工具。
【請求項3】
該ハウジングは、外殻を構成するアウターケーシングと該アウターケーシング内に配置されたインナーケーシングとを有し、該カウンタウェイトは、一端部が該インナーケーシングに固定され他端部がカウンタウェイトに固定された板バネにより支持されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
ハウジングと、
該ハウジングに支持されたモータと、
往復運動可能に該ハウジングに支持された往復運動部材と、
該モータの回転力を往復運動に変換し、該往復運動を該往復運動部材に伝達して該往復運動部材を往復運動させる運動変換機構と、
該往復運動部材の往復運動方向に直交する揺動軸心を中心として、該往復運動方向に沿って揺動可能に該ハウジングに弾性的に支持され、該往復運動部材の往復運動に起因して発生する振動を低減するカウンタウェイトと、を備え、
該往復運動方向におけるウェイト端部はハウジング対向斜面を有し、
該カウンタウェイトは揺動可能な最大振れ幅を有し、
該ハウジングは、該往復運動方向における該最大振れ幅に達したときに、該ハウジング対向斜面と平行をなすウェイト対向平坦面を有することを特徴とする電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動工具に関し、特に往復運動部材を有し小型化が要求される電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からドリルビットを回転させると共にドリルビットに打撃力を加える電動工具たるハンマドリルが知られている。ハンマドリルは打撃力を発生させるために、モータと、シリンダと、シリンダ内に配置されたピストンと、モータの回転力をピストンの往復運動に変換する運動変換機構と、ピストンにより駆動される打撃子とを備えている。
【0003】
ピストンは、略円筒状部と、略円筒状部の軸方向一端に接続され略円筒状部の軸方向一端を閉塞する蓋部とを有しており、運動変換機構に連結されている。運動変換機構により、ピストンは略円筒状部の軸方向に往復運動する。
【0004】
打撃子は、円筒状ピストン内を円筒状ピストンの軸方向へ摺動可能に設けられている。打撃子は、蓋部の内面及び略円筒状部の内周面と協働して空気室を画成する。
【0005】
また、カウンタウェイトが設けられている。カウンタウェイトは、板バネにより、モータ等を収容するハウジングに弾性的に支持されている。この構成によりカウンタウェイトは、ピストン及び打撃子の往復運動する方向に平行に往復運動し、ピストン及び打撃子の往復運動により発生する振動を低減する。このようなハンマドリルは、例えば特開2007−237304号公報(特許公報1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−237304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
板バネの一端をハウジングに固定し、板バネの他端にカウンタウェイトを固定して、ハウジング固定された板バネの一端を揺動軸心としてカウンタウェイトを往復運動させる構成が考えられる。このようにカウンタウェイトを揺動させると、図6図8に示すように、板バネ136Aの他端に固定されているカウンタウェイト136Dは、往復運動方向に大きく揺動する。カウンタウェイトの一部であって揺動軸心から離間した端部136D−1D、136D−2Dは、特に大きく揺動するため、カウンタウェイト136Dを収容する空間を大きくする必要がある。しかし、ハンマドリル等の電動工具には小型化の要求があり、このような揺動するカウンタウェイト136Dを電動工具に設けることは困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、小型化を図り、且つ揺動するカウンタウェイトが設けられた電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、ハウジングと、該ハウジングに支持されたモータと、往復運動可能に該ハウジングに支持された往復運動部材と、該モータの回転力を往復運動に変換し、該往復運動を該往復運動部材に伝達して該往復運動部材を往復運動させる運動変換機構と、該往復運動部材の往復運動方向に直交する揺動軸心を中心として、該往復運動方向に沿って揺動可能に該ハウジングに弾性的に支持され、該往復運動部材の往復運動に起因して発生する振動を低減するカウンタウェイトと、を備え、該カウンタウェイトは、該往復運動方向における寸法が反揺動軸心側に向かうに従って小さくなる台形形状を有する電動工具を提供している。
【0010】
ここで、該カウンタウェイトは揺動可能な最大振れ幅を有し、該往復運動方向における該カウンタウェイト端部は揺動軸心寄りの軸心側部端部と、該軸心側部端部よりも該揺動軸心から離れた位置にある軸心離間端部とを有し、該ハウジングの一部は、該往復運動方向において該カウンタウェイト端部に対向するウェイト対向平坦面を有し、該往復運動方向における該最大振れ幅に達したときの、該軸心側部端部から該ウェイト対向平坦面までの距離と、該軸心離間端部から該ウェイト対向平坦面までの距離と、は略同一であることが好ましい。
【0011】
カウンタウェイトは、往復運動方向における寸法が反揺動軸心側に向かうに従って小さくなる台形形状をなし、往復運動方向における最大振れ幅に達したときの、軸心側部端部からウェイト対向平坦面までの距離と、軸心離間端部からウェイト対向平坦面までの距離とは略同一であるので、カウンタウェイトが最大振れ幅に達したときに、軸心側部端部及び軸心離間端部をハウジングの一部に近接対向させることができる。このため、往復運動方向において揺動するカウンタウェイトを収容する空間を最小限に留めることが可能となり、電動工具の小型化を図ることができる。
【0012】
また、該ハウジングは、外殻を構成するアウターケーシングと該アウターケーシング内に配置されたインナーケーシングとを有し、該カウンタウェイトは、一端部が該インナーケーシングに固定され他端部がカウンタウェイトに固定された板バネにより支持されていることが好ましい。
【0013】
ハウジングは、外殻を構成するアウターケーシングとアウターケーシング内に配置されたインナーケーシングとを有し、カウンタウェイトは、一端部がインナーケーシングに固定され他端部がカウンタウェイトに固定された板バネにより支持されているため、カウンタウェイトを支持する構成の設計の自由度を高めることができる。
【0014】
また、本発明は、ハウジングと、該ハウジングに支持されたモータと、往復運動可能に該ハウジングに支持された往復運動部材と、該モータの回転力を往復運動に変換し、該往復運動を該往復運動部材に伝達して該往復運動部材を往復運動させる運動変換機構と、該往復運動部材の往復運動方向に直交する揺動軸心を中心として、該往復運動方向に沿って揺動可能に該ハウジングに弾性的に支持され、該往復運動部材の往復運動に起因して発生する振動を低減するカウンタウェイトと、を備え、該往復運動方向におけるウェイト端部はハウジング対向斜面を有し、該カウンタウェイトは揺動可能な最大振れ幅を有し、該ハウジングは、該往復運動方向における該最大振れ幅に達したときに、該ハウジング対向斜面と平行をなすウェイト対向平坦面を有することを特徴とする電動工具を提供している。
【0015】
往復運動方向におけるウェイト端部はハウジング対向斜面を有し、カウンタウェイトの揺動中央位置からハウジング対向斜面までの距離は、揺動軸心から離間するにつれて除々に短くなるため、カウンタウェイトが最大振れ幅に達したときに、ウェイト対向平坦面とハウジング対向斜面とを平行に近い位置関係で近接対向させることができる。このため、揺動するカウンタウェイトを収容する空間を小さくすることが可能となり、電動工具の小型化を図ることができる。
【0016】
ここで、該カウンタウェイトは揺動可能な最大振れ幅を有し、該往復運動方向における該最大振れ幅に達したときに、該ウェイト対向平坦面と該ハウジング対向斜面とは平行をなすことが好ましい。
【0017】
往復運動方向における最大振れ幅に達したときに、ウェイト対向平坦面とハウジング対向斜面とは平行をなすため、カウンタウェイトが最大振れ幅に達したときに、ウェイト対向平坦面とハウジング対向斜面とを平行の位置関係で近接対向させることができる。このため、揺動するカウンタウェイトを収容する空間を最小限に留めることが可能となり、電動工具の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上より本発明は、小型化を図り、且つカウンタウェイトをガイドする構成を有する電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態による電動工具を示す断面図。
図2図1のII−II線に沿った断面図。
図3】本発明の実施の形態による電動工具のカウンタウェイトが初期位置にある状態を示す要部断面図。
図4】本発明の実施の形態による電動工具のカウンタウェイトが最も前方へ移動した状態を示す要部断面図。
図5】本発明の実施の形態による電動工具のカウンタウェイトが最も後方へ移動した状態を示す要部断面図。
図6】従来の電動工具のカウンタウェイトが初期位置にある状態を示す要部断面図。
図7】従来の電動工具のカウンタウェイトが最も前方へ移動した状態を示す要部断面図。
図8】従来の電動工具のカウンタウェイトが最も後方へ移動した状態を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による電動工具の実施の形態について図1乃至図5を参照しながら説明する。電動工具たるハンマドリル1は、互いに接続されたハンドル部10及びモータケーシング20と、ギヤケーシング30とを有するケーシング部2を、アウターケーシングたる外殻として有している。
【0021】
ハンドル部10は、モータケーシング20の一端部から延出しており、ギヤケーシング30は、モータケーシング20の他端部に接続されている。ハンドル部10には、電源ケーブル11が取り付けられ、またスイッチ機構12が内蔵されている。スイッチ機構12には、ハンマドリル1の使用者が操作可能なトリガ13が機械的に接続されている。電源ケーブル11によりスイッチ機構12は図示せぬ外部電源に接続される。トリガ13を操作することにより、スイッチ機構12と電源との接続/遮断が切換えられる。
【0022】
ここで、ハンマドリル1において、ケーシング部2の長手方向たる図1の左右方向においてハンドル部10が設けられている側を後側と定義し、その反対側を前側と定義する。またハンドル部10のケーシング部2からの略延出方向、即ち前後方向と直交する方向たる図1の下側を下側と定義し、図1の上側を上側と定義する。また、図1の紙面の裏から表へ向かう方向を右方向と定義し、その逆の方向を左方向と定義する。
【0023】
ハンドル部10及びモータケーシング20は樹脂成型されて構成されている。モータケーシング20内には電動モータ21が収納されている。電動モータ21は駆動軸である出力軸部22を備え、出力軸部22を介して回転駆動力を出力する。出力軸部22は、後述のインナーケーシング31に配置されたベアリング31Aにより軸支され、その前側先端がギヤケーシング30内に位置している。また出力軸部22のギヤケーシング30内に位置している前側先端部分には、出力軸部22と一体回転する第一ギヤ22Bが設けられている。電動モータ21と第一ギヤ22Bの間には、出力軸部22と一体回転するファン3が設けられている。
【0024】
ギヤケーシング30の内部にはインナーケーシング31が設けられている。インナーケーシング31は、アルミニウム合金を基材として構成されており、モータケーシング20に接続される基部32と、基部32から前側へ向けて延出するシリンダ部支持部33とを備えている。インナーケーシング31は一体成形されて構成されている。インナーケーシング31とアウターケーシングとはハウジングをなす。
【0025】
また、図3等に示すように、インナーケーシング31の基部32の一部であってシリンダ部支持部33に接続されている部分は、後述のカウンタウェイト36Dを収容する空間を画成するウェイト対向平坦面31Cを有している。同様に、インナーケーシング31の基部32の一部であってモータハウジング20内に配置されている部分は、後述のカウンタウェイト36Dを収容する空間を画成するウェイト対向平坦面31Cを有している。
【0026】
また、インナーケーシング31には板バネ36Aの下端部が固定されている。板バネ36Aの下端部は、ベアリング31Aの下方に設けられた保持部材36Bとインナーケーシング31とに挟まれることによりインナーケーシング31に固定されている。保持部材36Bは、板バネ36Aを貫通する2つのネジによってインナーケーシング31に固定されている。また、保持部材36Bとインナーケーシング31との間には一対のゴムからなる弾性部材36Cが設けられており、板バネ36Aの下端部は一対の弾性部材36Cによって挟まれている。
【0027】
板バネ36Aは、板バネ36Aに力が作用していない初期状態のときに、後述のカウンタウェイト36Dの揺動中央位置にあり、その側面は平面状をなし側面の法線が前後方向に指向する位置関係となるように配置されている。板バネ36Aは、上方へ二股に分岐して略U字状をなして延出しており、延出端部には、2つの延出端部を掛け渡すようにしてカウンタウェイト36Dが設けられている。カウンタウェイト36Dは、2つの延出端部にそれぞれネジによって固定されている。また、カウンタウェイト36Dは、側面視において略台形形状をなしている。
【0028】
カウンタウェイト36Dは板バネ36Aの後側に配置された鉄製の後方ウェイト36D−1と、板バネ36Aの前側に配置された鉄製の前方ウェイト36D−2とから構成されている。後方ウェイト36D−1と前方ウェイト36D−2とで板バネ36Aの延出端部を挟む位置関係で、板バネ36Aを貫通するネジにより、後方ウェイト36D−1と板バネ36Aと前方ウェイト36D−2が互いに固定されている。
【0029】
図2に示すように後方ウェイト36D−1は、板バネ36Aの延出端部に固定された下部36D−1Aと、下部36D−1Aよりも上側に位置し左右方向の幅が下部36D−1Aの幅よりも狭い中部36D−1Bと、左右方向における中部36D−1Bの中央から上方へ突出する被ガイド部36D−1Cとを有している。前方ウェイト36D−2は板バネ36Aの延出端部に固定された固定部36D−2A(図3等)と、固定部36D−2Aよりも上側に位置し左右方向の幅が下部36D−2Aの幅よりも狭い中部36D−2B(図3等)を有する。以上の構成によりカウンタウェイト36Dは、後述のピストン54や打撃子56や中間子57等の往復運動部材の往復運動方向に直交する揺動軸心を中心として揺動可能にインナーケーシング31に弾性的に支持され、所定の振動数で揺動する。このことにより、後述のピストン54や打撃子56や中間子57の往復運動に起因して発生する振動を低減する。カウンタウェイト36Dは、板バネ36Aのバネ定数により揺動可能な固有の最大振れ幅を有する。
【0030】
前方ウェイト36D−2の前端部は平坦な前端面36D−2Dを有しており、後方ウェイト36D−1の後端部は平坦な後面36D−1Dを有している。前端面36D−2Dは、揺動軸心から離間するにつれて、初期位置にあるときのカウンタウェイト36Dの揺動中央位置からの距離が除々に短くなるように傾斜している。即ち、前方ウェイト36D−2は、側面視において台形形状をなしている。前端面36D−2Dは、カウンタウェイト36Dが揺動可能な最大振れ幅に達しカウンタウェイト36Dが最も前方に位置したときに、ウェイト対向平坦面31Cに最も接近する。
【0031】
より具体的には、前方ウェイト36D−2の前端面36D−2Dの一部であって、揺動軸心寄りの部分たる軸心側部端部36D−2Eと、前方ウェイト36D−2の前端面36D−2Dの一部であって、軸心側部端部36D−2Eよりも揺動軸心から離れた部分、即ち軸心側部端部36D−2Eよりも上方(図3等において左方)の部分たる軸心離間端部36D−2Fと、に着目する。即ち、軸心側部端部36D−2Eは前端面36D−2Dの一部であって揺動軸心寄りの部分であり、軸心離間端部36D−2Fは軸心側部端部36D−2Eよりも上方に位置する部分である。この場合に、板バネ36Aから軸心離間端部36D−2Fの一部であって前端面36D−2Dの部分までの最短距離は、板バネ36Aから軸心側部端部36D−2Eの一部であって前端面36D−2Dの部分までの最短距離よりも短い。
【0032】
同様に、後面は、揺動軸心から離間するにつれて、初期位置にあるときのカウンタウェイト36Dの揺動中央位置からの距離が除々に短くなるように傾斜している。即ち、前方ウェイト36D−1は、側面視において台形形状をなしている。後面は、カウンタウェイト36Dが揺動可能な最大振れ幅に達しカウンタウェイト36Dが最も後方に位置したときに、ウェイト対向平坦面31Cに最も接近する。
【0033】
より具体的には、後方ウェイト36D−1の後端面36D−1Dの一部であって、揺動軸心寄りの部分たる軸心側部端部36D−1Eと、後方ウェイト36D−1の後端面36D−1Dの一部であって、軸心側部端部36D−1Eよりも揺動軸心から離れた部分、即ち軸心側部端部36D−1Eよりも上方の部分たる軸心離間端部36D−1Fと、に着目する。即ち、軸心側部端部36D−1Eは後面の一部であって揺動軸心寄りの部分であり、軸心離間端部36D−1Fは軸心側部端部36D−1Eよりも上方に位置する部分である。この場合に、板バネ36Aから軸心側部端部36D−1Eの一部であって前端面36D−1Dの部分までの最短距離は、板バネ36Aから軸心離間端部36D−1Fの一部であって前端面36D−1Dの部分までの最短距離よりも短い。シリンダ部支持部33の延出端には軸受保持部35が設けられている。軸受保持部35は環状をなしている。軸受保持部35の内周面には、図5及び図7に示すように、焼結材により構成された環状のメタル軸受34が、かしめにより固定されて設けられている
【0034】
図1に示すように、ギヤケーシング30内のインナーケーシング31の下方には、後述の回転伝達機構を収容する減速室40aが画成されている。減速室40a内には中間軸部41が配置されている。中間軸部41は、出力軸部22と平行に配置されており、ベアリング41B等を介してギヤケーシング30とインナーケーシング31とにより、その軸心を中心に回転可能に支承されている。
【0035】
中間軸部41の後端部となる電動モータ21側の端部には、第一ギヤ22Bと噛合する第二ギヤ41Aが中間軸部41に同軸固定されている。中間軸部41の第二ギヤ41Aよりも前側には中間軸部41と共回りし、かつ中間軸部41の軸方向に摺動可能なクラッチ42が配置されている。またクラッチ42よりも前側には、後述の第四ギヤ44Aと噛合可能な第三ギヤ43Aが設けられている。
【0036】
ギヤケーシング30内の中間軸部41の前部であって上部近傍の位置には、シリンダ44が設けられている。シリンダ44はその軸心が中間軸部41と平行に延び、インナーケーシング31におけるシリンダ部支持部33のメタル軸受34と、ギヤケーシング30におけるベアリング40Dとにより回転可能に支承されている。シリンダ44の外周であって第三ギヤ43A近傍には第四ギヤ44Aがシリンダ44と同軸回転可能に固定されている。第三ギヤ43Aと第四ギヤ44Aとの噛合により、シリンダ44はその軸心を中心として回転可能である。
【0037】
また第四ギヤ44Aとシリンダ44との間には、遮断機構が介在している。遮断機構は、シリンダ44の第四ギヤ44A近傍位置に設けられた鍔部44Bと、第四ギヤ44を挟んで鍔部44Bの反対側に設けられて第四ギヤ44Aを鍔部44Bに付勢するバネ44Cとから構成されている。通常回転時では、バネ44Cにより第四ギヤ44Aを鍔部44Bに付勢し、第四ギヤ44Aとシリンダ44とを一体に回転させる。先端工具15Aが図示せぬ被削材に食い込む等の急激な回転の変化があったときには、バネ44Cの付勢力に抗して第四ギヤ44Aが後方へ動くことによりシリンダ44に対して第四ギヤ44Aが空転し、急激な回転の変化の伝達を遮断することができるように構成されている。
【0038】
シリンダ44の前部には先端工具15Aの装着箇所となる工具保持部15が設けられている。工具保持部15では、シリンダ44の後述の前端の開口から後述するシリンダ44の空間44aの前部内に先端工具15Aを挿入可能であり、当該先端工具15Aを固定可能である。
【0039】
シリンダ44は、内部に空間44aが画成されており、空間44aはシリンダ44の前端及び後端でそれぞれ開口している。シリンダ44内にはピストン54が、シリンダ44の内周面に対してシリンダ44の軸方向及び周方向へ摺動可能に設けられている。シリンダ44後端の開口部分においてはピストン54の一端部が、空間44aよりも後方の空間33a外方から、空間44a内へと出入り可能である。
【0040】
ピストン54は、筒部54Aと蓋部54Cと接続部54Bとから一体に構成されており、筒部54Aは前端が開口し後端が蓋部54Cにより閉塞された略円筒状をなしており、筒部54Aの内周面と蓋部54Cの内面とは一体接続されている。筒部54Aの内周面と蓋部54Cの内面と後述の打撃子56(図1等)とにより空気室54a(図1等)が画成されている。接続部54Bは筒部54Aの後端側に設けられており、後述の腕部52Aと連結されている。
【0041】
ピストン54の空気室54a内には、打撃子56がピストン54に対して往復摺動可能に配置されている。打撃子56は、ピストン54が後側から前側へと移動した際に、空気室54a内の圧縮された空気の圧力により、前側へと移動可能に構成されている。またシリンダ44の空間44a内において、ピストン54と工具保持部15との間の部分には中間子57が設けられている。中間子57は、その後端が打撃子56に当接可能であり、前端が工具保持部15に保持された先端工具15Aに当接可能である。中間子57は、シリンダ44に摺動可能に配置されている。打撃子56が中間子57を打撃した際に、その打撃力は中間子57を介して先端工具15Aに加えられる。
【0042】
中間軸部41の前後方向において、第二ギヤ41Aとクラッチ42との間には、カム部51が設けられている。カム部51は略半球状に構成されており、中間軸部41とは通常非接続となっている。非接続の状態では中間軸部41に対してカム部51は相対的に回転可能である。後述のチェンジレバ45によりクラッチ42が中間軸部41に沿って後方へ移動させられることによりカム部51と係合し、クラッチ42とカム部51とが連結された状態となり、カム部51が中間軸部41と供回りするように構成されている。
【0043】
カム部51は表面に中間軸部41の軸と交差する方向に球面外周全周に亘る溝51aが形成されている。またカム部51には運動変換部材52が設けられている。運動変換部材52は、略環状に構成され、環状の内部に複数のボール52Bを備え、このボール52Bが溝51aと係合してカム部51に取り付けられている。運動変換部材52の上方に位置する部分からは腕部52Aが延出しており、腕部52Aはインナーケーシング31の空間33a内に挿入され、ピストン54の後部たる接続部54Bと連結されている。このカム部51と運動変換部材52とボール52Bとから運動変換機構が構成される。
【0044】
ギヤケーシング30の下部であってクラッチ42近傍位置には、チェンジレバ45が設けられている。チェンジレバ45は、ハンマドリル1の使用者によって操作されることによりクラッチ42を前後に移動させ、クラッチ42とカム部51との連結/非連結を切換える。
【0045】
上記構成のハンマドリル1において使用者が作業をする場合には、先ずチェンジレバ45により、先端工具15Aを回転駆動するか、回転・打撃駆動するか選択する。
【0046】
先端工具15Aを回転・打撃駆動する場合には、クラッチ42とカム部51とを連結する。そしてトリガ13を引き、電動モータ21に電力を供給することにより、シリンダ44を回転させる。このことにより、シリンダ44の先端に取り付けられた先端工具15Aはシリンダ44と一緒に回転する。また、カム部51により、回転運動を往復運動に変換することにより、ピストン54が前後に往復し、先端工具15Aに打撃力が加えられる。
【0047】
このとき、ピストン54や中間子57や打撃子56や先端工具15Aが往復運動することによりハンマドリル1が固有の振動数で振動する。このことにより、ハンマドリル1の固有の振動数と一致する、板バネ36Aが有している固有の振動数でカウンタウェイト36Dが、ピストン54等の往復運動方向に直交する揺動軸心を中心として揺動する。この揺動の方向は、ピストン54等の往復運動方向である前後方向に略一致しているため、ハンマドリル1の振動を低減する。
【0048】
また、揺動に際してカウンタウェイト36Dの前方ウェイト36D−2の前端面36D−2Dを有しており、後方ウェイト36D−1の後端部は平坦な後端面36D−1Dを有しており、板バネ36Aから軸心離間端部36D−2Fの一部であって前端面36D−2Dの部分までの最短距離は、板バネ36Aから軸心側部端部36D−2Eの一部であって前端面36D−2Dの部分までの最短距離よりも短く、また、板バネ36Aから軸心離間端部36D−1Fの一部であって後端面36D−1Dの部分までの最短距離は、板バネ36Aから軸心側部端部36D−1Eの一部であって後端面36D−1Dの部分までの最短距離よりも短い。このため、揺動に伴い、カウンタウェイト36Dが最大振れ幅に達したときに、軸心側部端部36D−1E、36D−2E及び軸心離間端部36D−1F、36D−2Fをウェイト対向平坦面31Cに近接対向させることができ、前端面36D−2D、後端面36D−1Dをウェイト対向平坦面31C、31Cに平行に近い状態で近接対向させることができる。このため、揺動するカウンタウェイト36Dを収容する空間を最小限に留めることが可能となり、電動工具の小型化を図ることができる。
【0049】
また、カウンタウェイト36Dは板バネ36Aによって支持される構成としたため、板バネ36Aの弾性力を利用して、簡単な構成でカウンタウェイト36Dを往復揺動運動させることができる。
【0050】
また、カウンタウェイト36Dは、下端部がインナーケーシング31に固定され上端部がカウンタウェイト36Dに固定された板バネ36Aにより支持されているため、カウンタウェイト36Dを支持する構成の設計の自由度を高めることができる。また、電動工具の製造工程で、カウンタウェイト36Dをハウジングに支持させる構成の組み立てを容易とすることができる。
【0051】
本発明のハンマドリルは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、本実施の形態では、前端面36D−2Dは、カウンタウェイト36Dが揺動可能な最大振れ幅に達しカウンタウェイト36Dが最も前方に位置したときに、ウェイト対向平坦面31Cに最も接近したが、このとき、前端面36D−2Dとウェイト対向平坦面31Cとは平行の位置関係をなしてもよい。ここで「平行」とは完全に平行になっている場合を意味するのみならず、寸法誤差等により若干平行ではない状態となっている場合も含む。
【0052】
より具体的には、前方ウェイト36D−2の前端面36D−2Dの一部であって、揺動軸心寄りの部分たる軸心側部端部36D−2Eと、前方ウェイト36D−2の前端面36D−2Dの一部であって、軸心側部端部36D−2Eよりも揺動軸心から離れた部分、即ち軸心側部端部36D−2Eよりも上方の部分たる軸心離間端部36D−2Fと、に着目する。この場合に、前方向における最大振れ幅に達したときの、軸心側部端部36D−2Eの一部であって後端面36D−2Dの部分からウェイト対向平坦面31Cまでの距離と、軸心離間端部36D−2Fの一部であって後端面36D−2Dの部分からウェイト対向平坦面31Cまでの距離と、は略同一となる。
【0053】
同様に、後方ウェイト36D−1の後端面36D−1Dの一部であって、揺動軸心寄りの部分たる軸心側部端部36D−1Eと、後方ウェイト36D−1の後端面36D−1Dの一部であって、軸心側部端部36D−1Eよりも揺動軸心から離れた部分、即ち軸心側部端部36D−1Eよりも上方の部分たる軸心離間端部36D−1Fと、に着目する。この場合に、後方向における最大振れ幅に達したときの、軸心側部端部36D−1Eの一部であって後端面36D−1Dの部分からウェイト対向平坦面31Cまでの距離と、軸心離間端部36D−1Fの一部であって後端面36D−1Dの部分からウェイト対向平坦面31Cまでの距離と、は略同一となる。ここで「同一」とは完全に平行になっている場合を意味するのみならず、寸法誤差等により若干同一ではない状態となっている場合も含む。
【0054】
また板バネは、本実施の形態の形状の板バネ36Aに限定されない。また、カウンタウェイト36Dは板バネ36Aによって支持されていたが、板バネ36Aに限定されず、弾性的に揺動往復可能に支持される構成であればよい。
【0055】
また、ハウジングは、モータケーシング20と、ギヤケーシング30とを有するケーシング部2をアウターケーシングたる外殻として構成され、内部にインナーケーシング31を有する構成をなしていたが、この構成に限定されない。
【0056】
また、カウンタウェイト36Dは前方ウェイト36D−2と後方ウェイト36D−1とを有する構成をなしていたが、この構成に限定されない。例えば、前方ウェイト36D−2のみ有する構成であってもよい。
【0057】
また、カウンタウェイト36Dは、前端面36D−2D、後端面36D−1Dの両方が、揺動軸心から離間するにつれて、初期位置にあるときのカウンタウェイト36Dの揺動中央位置からの最短距離が除々に短くなるように傾斜していたが、どちらか一方のみがこのように傾斜していてもよい。即ち、カウンタウェイト36Dの前端面又は後端面のいずれか一方のみにおいて、板バネ36Aから軸心離間端部36D−2Fまでの最短距離が、板バネ36Aから軸心側部端部36D−2Eまでの最短距離よりも短い構成をなしていてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では電動工具はハンマドリル1であったが、ハンマドリルに限定されず、往復運動部材を有する電動工具に応用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の電動工具は、往復運動部材により発生する振動の軽減が要求されるハンマドリル等の分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1・・ハンマドリル 21・・電動モータ 22・・出力軸部 31・・インナーケーシング 31C・・・ウェイト対向平坦面 36A・・・板バネ 36D・・・カウンタウェイト 36D−1C・・・被ガイド部 36D−1D後端面 36D−2D・・・前端面 36D−1E、36D−2E・・・軸心側部端部 36D−1F、36D−2F・・・軸心離間端部 51・・カム部 52・・運動変換部材 52B・・ボール 54・・ピストン 56・・打撃子
図1
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図8