【実施例1】
【0030】
1.ES細胞の調製
GFP発現ベクターにCAGプロモーターを繋いで作製したGreen mouse FM131マウス由来のマウス胚性幹細胞株(mES細胞)であるB6G−2細胞系(理研)を、増殖不活性化処理済みのマウス繊維芽細胞(MEF)上で十分に増殖させた。その後、0.1%ゼラチンをコートした60mmディッシュ上でDMEM(フェノールレッド不含、Invitrogen),15%FBS(ウシ胎児血清、Invitrogen)、100μM NEAA(Non-essential amino acids、Invitrogen)、100μM 2−ME(2−メルカプトエタノール、Invitrogen)、及び1000U/ml LIF(白血病抑制因子、ESGRO、Invitrogen)を含むES培地で継代を行った。MEFの影響が最も少なく遺伝子の変異を抑えられる第2継代後、マイクロスフィアアレイ上にES細胞を播種した。
【0031】
2.ES細胞マイクロスフィアの調製
細胞を培養する環境を制御することは、細胞の挙動の理解や細胞機能を工学的に応用する際に極めて重要である。本研究では、細胞が付着する基板、その付着面の位置と形状、細胞周囲の流動場を全てマイクロメーターの精度でパターニングを行う微細加工技術である(軟性リソグラフィ)を施したデバイスのマイクロスフィアアレイ上でマウスのES細胞の大きさや分化速度の均一化を行い、成熟神経細胞を誘導する3次元的培養法を確立した。本研究で使用した枠分離型マイクロスフィアアレイ(チップ300)の構造は、基板として材質は、アクリル樹脂性であり外形寸法は、24×24mm角、枠樹脂の材質は、PDMS樹脂で出来ており、形状は額縁型の形状で内側に250μlの培地が入る容積として設計されている。この枠はピンセットで容易に取り外しが可能である。更に、枠内(10×10mm)には1020個の均一なウェルが形成されており、ウェルの直径は300μmであり、ウェル間の距離(ピッチ)は330μmであり、ウェルの深さは270μmである。
【0032】
この枠分離型マイクロスフィアアレイ(チップ300)を6ウェルプレートへ移し、ピペットマンで、枠内の滅菌水を全て吸引除去する作業後、直ちにEB培地を入れてPBS(−)と置換した。この作業を3回行った後、250μlずつのEB培地を入れて37℃のインキュベーターに静置した。第2継代のES細胞懸濁液を4×10
5cells/mlになるように調整した。調整後、インキュベーター内のマイクロスフィアアレイを取り出しEB培地を吸引除去し、ES細胞懸濁液を1×10
5cells/250μlずつアレイの枠内に、枠の端から緩やかに注ぎインキュベーター内に4時間程静置した。アレイに播種したES細胞は10分以内には全てウェル内に均一に集積することが確認された。培養6時間後に化学物質を添加したEB培地と培地交換を行い、化学物質での48時間の暴露を行った。
【0033】
3.ニューロスフィア前駆体の調製
化学物質添加48時間後に、10
−8Mのレチノイン酸を含むEB培地と培地交換を行った。培養4日目に、再び、10
−8Mのレチノイン酸を含むEB培地と培地交換を行った。更に、培養6日目にEB培地のみに交換した。培養8日目にマイクロスフィアアレイをピンセットで取り出し、全てのニューロスフィア前駆体を完全に回収するために非接着性の35mmディッシュ内で1mlのピペットで軽くピペッティングを行い、ニューロスフィア前駆体を1.5mlのマイクロチューブに回収した。あらかじめ自作した24ウェルのオルチニン・ラミニンコートプレートに、回収したニューロスフィア前駆体を200マイクロのチップで均一に83個/ウェルになるように200マイクロのチップで播種した。この時のニューロスフィア前駆体の直径の平均は約210μmであった。
【0034】
オルチニン・ラミニンコートの作成方法は、下記のとおりである。Poly−l−オルニチン溶液を蒸留水で2.5倍に希釈した。100μlのラミニンを、12mlのPBSで希釈した。2.5倍に希釈したPoly−l−オルニチン溶液を、24ウェルに500μlずつ分注し、37℃のインキュベーター内で一昼夜静置した。翌日、DWで3回洗浄した。希釈したラミニンを24ウェルに500μlずつ分注し、37℃のインキュベーター内で4〜6時間静置した。アスピレーターでラミニンを完全に吸い取り、1mlのEB培地を加え、37℃のインキュベーター内で静置した。
【0035】
4.神経細胞系モデルの調製
EB培地で24時間培養後、ニューロスフィア前駆体が完全にウェル内で接着し、短い神経突起の伸長を確認後、神経誘導培地(DMEM/F12(1:1)、N2、10μg/ml bFGF)へ培地交換を行った。培地交換は3日おきに行った。オルチニン・ラミニンコート上にニューロスフィア前駆体を播種後、12日間の培養を行った(培養期間の総計は20日間となった。)。培養12日目(培養期間の総計として20日間)の細胞は、下記の条件の全てを満たした。
(1)ニューロスフィア前駆体の平均真円率は、0.49、(2)ニューロスフィア前躯体の平均円周は1551.7μm、(3)ニューロスフィア前躯体の平均総面積は、6654069.2μm
2(4)ニューロスフィア前躯体の平均個数は、84.7個、(5)ニューロスフィア前躯体の平均直径は、492.3μm、(5)ニューロスフィア前躯体から遊走する細胞の総数は、14468.4個、(6)MAP2陽性ニューロスフィア前躯体の平均総面積は、601939.8μm
2、(7)ニューロスフィア前躯体から遊走するMAP2陽性ニューロンの神経突起の平均総伸張は、237214.1μm、(8)MAP2陽性ニューロンの交差点の平均総数は、1284.6個、(9)MAP2陽性ニューロンの分岐点の平均総数は、4615.6個、(10)GFAP陽性ニューロスフィア前躯体の平均総面積は、719544.9μm
2、(11)ニューロスフィア前躯体から遊走するGFAP陽性細胞の細胞質突起の平均総伸張は、43151.3μm(12)GFAP陽性細胞の交差点の平均総数は、227.4個、(12)GFAP陽性細胞の分岐点の平均総数は、1079.5個であった。
【0036】
5.12化学物質での実験結果
マルチチャンネル画像解析装置のIN Cell アナライザー1000により、コントロール群と12種類の選定被験化学物質(それぞれ高用量として、10nMのトリヨードチロキシン、10nMのデキサメタゾン、10nMの17β−エストラジオール、10nMの5α−ジハイドロテストステロン、10nMの2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−パラ−ジオキシン(テトラクロロジベンゾダイオキシン)、100μMのメトプレン酸、10μMのシクロパミン、10μMのサリドマイド、10nMの4(OH)−2’,3,3’,4’,5’−ペンタクロロビフェニル(水酸化ポリクロロビフェニル107)、10μMのペルメトリン、100pMのビスフェノール−A、100μMのビス(2−エチルヘキシル)フタル酸(フタル酸ジエチルヘキシル)の曝露影響の結果を下記に示す。
【0037】
(1)ニューロスフィア前駆体の真円率は、コントロール群は0.49、10nM Dexは0.54、10μM PMTは、0.56、10nM E2は0.56、10nM TCDDは、0.50、10nM DHTは、0.53、100μM DEHPは0.57、100pM BPAは、0.58、10nM PCBは、0.51、10nMT3は、0.52、10μM TMDは0.51、10μM CPMは、0.52、100μM MPAは0.55であった。
【0038】
(2)ニューロスフィア前躯体の円周は、コントロール群は1551.7μm、10nM Dexは1436.7μm、10μM PMTは、1187.8μm、10nM E2は1250.5μm、10nM TCDDは、1429.9μm、10nM DHTは1393.0μm、100μM DEHPは1207.8μm、100pM BPAは1182.6μm、10nM PCBは、1565.8μm、10nMT3は、1362.5μm、10μM TMDは1317.0μm、10μM CPMは1353.6μm、100μM MPAは1269.2μmであった。
【0039】
(3)ニューロスフィア前躯体の面積は、コントロール群は6654069.2μm
2、10nM Dexは6746902.5μm
2、10μM PMTは5540044.2μm
2、10nM E2は4909425.8μm
2、10nM TCDDは5446502.0μm
2、10nM DHTは6109497.7μm
2、100μM DEHPは5031102.7μm
2、100pM BPAは2756341.9μm
2、10nM PCBは、4488292.4μm
2、10nMT3は、6088273.9μm
2、10μM TMDは4142275.1μm
2、10μM CPMは4164921.6μm
2、100μM MPAは4197825.1μm
2であった。
【0040】
(4)ニューロスフィア前躯体の個数は、コントロール群は84.7個、10nM Dexは83.2個、10μM PMTは89.6個、10nM E2は69.5個、10nM TCDDは72.9個、10nM DHTは76.3個、100μM DEHPは73.6個、100pM BPAは42.3個、10nM PCBは、50.1個、10nMT3は、81.7個、10μM TMDは59.2個、10μM CPMは54.6個、100μM MPAは58.8個であった。
【0041】
(5)ニューロスフィア前躯体の直径は、コントロール群は492.3μm、10nM Dexは459.4μm、10μM PMTは、374.8μm、10nM E2は400.9m、10nM TCDDは、455.8μm、10nM DHTは447.8μm、100μM DEHPは383.9μm、100pM BPAは365.0μm、10nM PCBは、501.3μm、10nMT3は、431.8μm、10μM TMDは418.1μm、10μM CPMは429.6μm、100μM MPAは402.4μmであった。
【0042】
(5)ニューロスフィア前躯体から遊走する細胞の個数は、コントロール群は14468.4個、10nM Dexは35288.1個、10μM PMTは33720個、10nM E2は28912.1個、10nM TCDDは13155.1個、10nM DHTは32571.9個、100μM DEHPは33674.4個、100pM BPAは10271.4個、10nM PCBは、10119.8個、10nMT3は、32269.9個、10μM TMDは22190.1個、10μM CPMは20452.1個、100μM MPAは26177.6個であった。
【0043】
(6)MAP2陽性ニューロスフィア前躯体の面積は、コントロール群は601939.8μm
2、10nM Dexは1077594.6μm
2、10μM PMTは1049239.8μm
2、10nM E2は732158.4μm
2、10nM TCDDは471940.7μm
2、10nM DHTは254330.6μm
2、100μM DEHPは570495.2μm
2、100pM BPAは344525.8μm
2、10nM PCBは、354876.3μm
2、10nMT3は、96074.0μm
2、10μM TMDは76430.1μm
2、10μM CPMは100555.5μm
2、100μM MPAは198445.2μm
2であった。
【0044】
(7)ニューロスフィア前躯体から遊走するMAP2陽性ニューロンの神経突起の総伸張は、コントロール群は237214.1μm、10nM Dexは380272.0μm、10μM PMTは、3629334.0μm、10nM E2は250986.2μm、10nM TCDDは、183235.9μm、10nM DHTは1414267.0μm、100μM DEHPは224278.9μm、100pM BPAは125299.8μm、10nM PCBは、137283.3μm、10nMT3は、80916.1μm、10μM TMDは25101.7μm、10μM CPMは26316.2μm、100μM MPAは42969.9μmであった。
【0045】
(8)MAP2陽性ニューロンの交差点の個数は、コントロール群は1284.6個、10nM Dexは1404.3個、10μM PMTは1482.5個、10nM E2は955.6個、10nM TCDDは987.4個、10nM DHTは543.8個、100μM DEHPは869.2個、100pM BPAは664個、10nM PCBは、725.8個、10nMT3は、303.4個、10μM TMDは130.4個、10μM CPMは141.4個、100μM MPAは245.2個であった。
【0046】
(9)MAP2陽性ニューロンの分岐点の個数は、コントロール群は4615.6個、10nM Dexは6548.9個、10μM PMTは6230.7個、10nM E2は43272.5個、10nM TCDDは3525.6個、10nM DHTは2157.3個、100μM DEHPは3630.8個、100pM BPAは2395.6個、10nM PCBは、2573.7個、10nMT3は、1127個、10μM TMDは448.1個、10μM CPMは481.4個、100μM MPAは806.6個であった。
【0047】
(10)GFAP陽性ニューロスフィア前躯体の面積は、コントロール群は719544.9μm
2、10nM Dexは2029240μm
2、10μM PMTは955109.9μm
2、10nM E2は831347.6μm
2、10nM TCDDは569219.1μm
2、10nM DHTは1808531.8μm
2、100μM DEHPは1086888.7μm
2、100pM BPAは1100168.1μm
2、10nM PCBは、1129661.4m
2、10nMT3は、207471.2μm
2、10μM TMDは213093.5μm
2、10μM CPMは109251.6μm
2、100μM MPAは252321.3μm
2であった。
【0048】
(11)ニューロスフィア前躯体から遊走するGFAP陽性細胞の細胞質突起の総伸張は、コントロール群は43151.3μm、10nM Dexは125382.9μm、10μM PMTは、44386.0μm、10nM E2は38771.9μm、10nM TCDDは、34419.4μm、10nM DHTは129023.1μm、100μM DEHPは57664.5μm、100pM BPAは61513.8μm、10nM PCBは、65410.1μm、10nMT3は、40538.4μm、10μM TMDは8267.9μm、10μM CPMは57194.8μm、100μM MPAは49229.4μmであった。
【0049】
(12)GFAP陽性細胞の交差点の個数は、コントロール群は227.4個、10nM Dexは407.9個、10μM PMTは136個、10nM E2は116.1個、10nM TCDDは184.3個、10nM DHTは404.7個、100μM DEHPは169.1個、100pM BPAは302.7個、10nM PCBは、322.6個、10nMT3は、123.2個、10μM TMDは24.8個、10μM CPMは256.1個、100μM MPAは247.4個であった。
【0050】
(13)GFAP陽性細胞の分岐点の個数は、コントロール群は1079.5個、10nM Dexは2616.5個、10μM PMTは886個、10nM E2は774.1個、10nM TCDDは868.2個、10nM DHTは2600.1個、100μM DEHPは1149.7個、100pM BPAは1514.1個、10nM PCBは、1607個、10nMT3は、816.4個、10μM TMDは160.3個、10μM CPMは1365.2個、100μM MPAは1211.2個であった。
【0051】
【表2】
【0052】
コントロール群(237214.07μm)と比較してMAP2陽性ニューロンの神経突起の長さ(1視野における総伸張の平均値)を促進する化学物質は、10nM Dex (380272μm)、10μM PMT(362934μm)、10nM E2(250986.2)、100μM DEHP(224279μm)、10nM T3(80916.1μm)、10μM TMD(25101.7μm)、10μM CPM(26316.2μm)、100μM MPA(42969.9μm)であった。
【0053】
一方で、GFAPグリア陽性細胞の突起の1視野における総伸長の平均値がControl群(43151.3μm)と比して促進するものは、10μMPMT(44386.1μm)、10nM DHT(129023.1μm)、100μM DEHP(57664.5μm)、100pM BPA(61513.8μm)、10nM PCB(65410.1μm)、100nM CPM(597194.8μm)、10μM CPM(57194.8μm)、100μM MPA(49229.4μm)であった。
【0054】
MAP2陽性ニューロンの交差点の1視野における総数は、Control群(1284.6個)と比して多いものは、10nM Dex(1404.3個)、10μM PMT(1404.3個)であった。MAP2陽性ニューロンの分岐点の1視野における総数の平均値に関しては、Control群(4615.6個)、10nM Dex(6548.9個)、10μM PMT(6230.7個)であった。
【0055】
同様にGFAP陽性グリア細胞の細胞質突起の交差点の1視野における総数の平均値はControl群(227.4個)に対して、10nM Dex(407.9個)、10nM DHT (404.7個)、100pM BPA(302.7個)、10nM PCB(322.6個)、10μM CPM(256.1個)、100μM MPA(247.4個)、そして、分岐点の1視野における総数の平均値は、コントロール群(1079.5個)に対して10nM Dex(2616.5個)、10nM DHT (2600.1個)、100μM DEHP(1149.7)、100pM BPA(1514.1個)、10nM PCB(1607個)、10μM CPM(1365.2個)、100μM MPA(1211.2個)であった。
【0056】
さらに、MAP2陽性ニューロンの1視野における総面積の平均値を検討したところ、コントロール群(601940.8μm
2)と比較して、10nM E2(732158.4μm
2)であった。GFAP陽性グリア細胞の1視野における総面積の平均値は、Control群(719544.9μm
2)と比較して、10μM PMT(955110μm
2)、10nM E2(831347.6μm
2)であった。
【0057】
次に、ニューロスフィアの形態に影響を及ぼす化学物質は、(1)ニューロスフィアの1視野における総面積の平均値がコントロール群(601939.769μm
2)と比較して大きい化学物質は、10nM E2(732158.4356μm
2)であった。(2)ニューロスフィアの1視野における総数の平均値がコントロール群(84.6666667個)と比較して多い化学物資は、10μM PMT(89.55555556個)、100nM TMD(86.0555556個)、(3)ニューロスフィアの真円率の平均値は、いずれも化学物質に暴露されるとコントロール群(0.4865)と比較して全て真円に近い値を示した(0.50〜0.57)。
【0058】
(4)ニューロスフィアから遊走する細胞総数(核の総数)の1視野における平均値をコントロール群(14468.3889個)と比較して促進する化学物質は、10nM Dex(35288.11111個)、10μM PMT(33720個)、10nM E2(28912.11111個)、10nM DHT(32571.8889個)、100μM DEHP(33674.44444個)、10nM T3 (32269.8889個)、10μM TMD(22190.0556個)、10μM CPM(20452.1111個)、100μM MAP(26177.55556個)であった。
【0059】
(5)ニューロスフィアの1視野における円周の平均値がコントロール群(1551.69333μm)と比較して大きい化学物資は、10nM PCB(1565.81417μm)のみであった。
【0060】
(6)ニューロスフィアから遊走する1視野における細胞群の総核面積の平均値がコントロール群(2129473.99μm
2)と比較して大きい化学物資は、
10nM Dex (4171362.276μm
2)、10μM PMT(5146900.196μm
2)、10nM E2(3973015.467μm
2)、10nM DHT (4485423.64μm
2)、100μM DEHP(4591409.92μm
2)、10nM T3 (4895906.56μm
2)、10μM TMD(3360761.74μm
2)、10μM CPM(3104536.89μm
2)、10μM MPA(3872487.964μm
2)であった。
【0061】
このように、マルチチャンネル画像解析装置によって得られた数値情報を元にグラフ化は可能であるため、それぞれの化学物質暴露群における比較は可能であるが、形態情報と化学物質の相関性について簡便に明確に示す事は出来ない。そこで、これらの形態情報と神経分化に関連する上記遺伝子セット(集団)の変動情報を類型化するための指標として、一元配置し、各指標間の依存関係を確率的に推定する手法TAO−Genアルゴリズムを用いて、化学物質ごとの指標間ネットワークをマトリックスに表現した。このマトリックスは、化学物質によって、異なる得意な特徴をもつものが得られた(分類ができた)。
【0062】
TAO−Gen(Theoretical Algorithm for Optimal Gene interaction networks)は、最適遺伝子相互ネットワークを作成するための数理アルゴリズムである。この手法は、ベイズの定理に基づいたもので既知であるが、形態情報と遺伝子変動情報との融合による多次元化情報を用いた相互関係への応用は、本発明が初めてである。
【0063】
6.実験結果の評価(対比方法、判断基準、分類方法等)
マルチ情報のネットワーク図として得られた個々の化学物質の特徴は、
図2−
図14に示すとおり、左端列の各指標が最上行頭の各指標に関係性があるとの関係である。黒セルが正の制御関係、網セルが負の制御関係で示している。例えば、DMSO群の1行目に着目すると、AR遺伝子がEsr2と正の制御関係にあることを示し、ARがNetrin1と負の制御関係にあることを示している。このように、20遺伝子と10形態パラメーターを統合した30の指標に基づいて、30×30のマトリックスで表現されるネットワーク図に、化学物質の初期曝露から晩発影響を網羅することが可能となった。このネットワーク図をさらに、サブカテゴリー(遺伝子に関する3種のカテゴリーセットと形態で合計4サブ分類)にわけて、そのなかに配置される関係の類似度の基準を90%においた場合、12種の化学物質に分けることができた。
【0064】
下記のブロックについて、ブロックごとに、各セルを1とした類似頻度を算出し、0.1%DMSOを基準に90%以下を異なるブロックとして識別した(表3参照)。
(AR、Esr1、Esr2、RARa、RARb、RARg)×(AR、Esr1、Esr2、RARa、RARb、RARg)のマトリックスからなるブロック1、
(Cxcl12、Cxcr4、Itgb1、NGL1、NetrinG、Sema7A、Netrin1)×(AR、Esr1、Esr2、RARa、RARb、RARg)のマトリックスからなるブロック2、
(EphB、EphrinB、PlexinA、Robo2、Sema3A、Slit1、Unc5)×(AR、Esr1、Esr2、RARa、RARb、RARg)のマトリックスからなるブロック3、
(EB_Area、EB_FormFactor、EB_Perimeter、EB_count、Nuc_Area、Nuc_count、Posi_Area、Branch_Point、Crossing_Point、Neurite_Length)×(AR、Esr1、Esr2、RARa、RARb、RARg)のマトリックスからなるブロック4、
(AR、Esr1、Esr2、RARa、RARb、RARg)×(Cxcl12、Cxcr4、Itgb1、NGL1、NetrinG、Sema7A、Netrin1)のマトリックスからなるブロック5、
(Cxcl12、Cxcr4、Itgb1、NGL1、NetrinG、Sema7A、Netrin1)×(Cxcl12、Cxcr4、Itgb1、NGL1、NetrinG、Sema7A、Netrin1)のマトリックスからなるブロック6、
(EphB、EphrinB、PlexinA、Robo2、Sema3A、Slit1、Unc5)×(Cxcl12、Cxcr4、Itgb1、NGL1、NetrinG、Sema7A、Netrin1)のマトリックスからなるブロック7、
(EB_Area、EB_FormFactor、EB_Perimeter、EB_count、Nuc_Area、Nuc_count、Posi_Area、Branch_Point、Crossing_Point、Neurite_Length)×(Cxcl12、Cxcr4、Itgb1、NGL1、NetrinG、Sema7A、Netrin1)のマトリックスからなるブロック8、
(AR、Esr1、Esr2、RARa、RARb、RARg)×(EphB、EphrinB、PlexinA、Robo2、Sema3A、Slit1、Unc5)のマトリックスからなるブロック9、
(Cxcl12、Cxcr4、Itgb1、NGL1、NetrinG、Sema7A、Netrin1)×(EphB、EphrinB、PlexinA、Robo2、Sema3A、Slit1、Unc5)のマトリックスからなるブロック10、
(EphB、EphrinB、PlexinA、Robo2、Sema3A、Slit1、Unc5)×(EphB、EphrinB、PlexinA、Robo2、Sema3A、Slit1、Unc5)のマトリックスからなるブロック11、
(EB_Area、EB_FormFactor、EB_Perimeter、EB_count、Nuc_Area、Nuc_count、Posi_Area、Branch_Point、Crossing_Point、Neurite_Length)×(EphB、EphrinB、PlexinA、Robo2、Sema3A、Slit1、Unc5)のマトリックスからなるブロック12、
(AR、Esr1、Esr2、RARa、RARb、RARg)×(EB_Area、EB_FormFactor、EB_Perimeter、EB_count、Nuc_Area、Nuc_count、Posi_Area、Branch_Point、Crossing_Point、Neurite_Length)のマトリックスからなるブロック13、
(Cxcl12、Cxcr4、Itgb1、NGL1、NetrinG、Sema7A、Netrin1)×(EB_Area、EB_FormFactor、EB_Perimeter、EB_count、Nuc_Area、Nuc_count、Posi_Area、Branch_Point、Crossing_Point、Neurite_Length)のマトリックスからなるブロック14、
(EphB、EphrinB、PlexinA、Robo2、Sema3A、Slit1、Unc5)×(EB_Area、EB_FormFactor、EB_Perimeter、EB_count、Nuc_Area、Nuc_count、Posi_Area、Branch_Point、Crossing_Point、Neurite_Length)のマトリックスからなるブロック15、
(EB_Area、EB_FormFactor、EB_Perimeter、EB_count、Nuc_Area、Nuc_count、Posi_Area、Branch_Point、Crossing_Point、Neurite_Length)×(EB_Area、EB_FormFactor、EB_Perimeter、EB_count、Nuc_Area、Nuc_count、Posi_Area、Branch_Point、Crossing_Point、Neurite_Length)のマトリックスからなるブロック16
【0065】
表3 ネットワーク判別手法におけるDMSO群を基準とした場合のネットワークブロックの類似度
【0066】
【表3】
【0067】
12種類の化学物質(2,3,7,8−四塩素化−パラ−ダイオキシン、4(OH)−2’,3,3’,4’,5’−ペンタ−クロロビフェニル、トリヨードチロニン、デキサメサゾン、5α−ジハイドロテストステロン、17β−エストラジオール、サリドマイド、ビス(2−エチルエキシル)、フタル酸、ペルメスリン、シクロパミン、ビスフェノールA、メソプレン酸)について、本発明の方法を適用し、12種の異なるネットワークに分類することができた。このことにより、作用機序が未知の化学物質を試験する場合、未知化学物質について、同様な曝露実験を行い、遺伝子発現データ及び細胞形態データを用いて、今回分類した既存の化学物質のネットワーク鋳型にあてはめて影響を予測することが可能となった。具体的には、未知物質のネットワークマトリックスを作成し、表3に示したネットワークブロックの類似性と同様な判別を行うことによって、未知物質の影響を予測することができる。