【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 発行者名 AGS 刊行物名 AGS Annual Meeting 2010 Poster Abstracts 発行年月日 平成22年3月16日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内部空間から前記外部空間に排出される空気から熱を回収して前記内部空間の空気を加熱するヒートポンプをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の断熱システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る一実施形態の断熱システムが組み込まれた戸建の住宅を、
図1から
図7を参照しながら説明する。なお、本断熱システムは、戸建の住宅に限ることなく、マンションやアパートなどの建造物にも用いることができる。
図1に示すように、住宅1は、水平面に略平行に配置された床部2と、床部2上に立設された壁部3、4と、壁部3および壁部4の上端部とにそれぞれ接続された天井部5とを有している。床部2、壁部3、4および天井部5は、不図示の構造材料と断熱材料とを有している。
床部2、壁部3、壁部4および天井部5は一体に形成されることで、住宅1は、一定の強度を有するとともに、外部空間S1と住宅1内の内部空間S2とを分離している。
【0014】
壁部3には開口3aが形成され、開口3aには窓部10が取付けられている。
窓部10は、上枠11a、下枠11b、および不図示の左右の縦枠を四周枠組みした窓枠11と、上框12a、下框12b、および不図示の左右の縦框を四周枠組みしてガラス板の面材13を2枚組み込んだ障子セット14とを有している。
上枠11aには、内側伝熱部材(伝熱部材)15と、外側伝熱部材(伝熱部材)16とが設けられている。内側伝熱部材15は、カバー17内に配置されていて、一方の端面が外部空間S1側における面材13の上縁部に下方を向くように配置されていると同時に、他方の端面が内部空間S2側において鉛直面とほぼ平行となるように配置されている。
外側伝熱部材16もカバー18内に配置されていて、一方の端面が外部空間S1側において鉛直面とほぼ平行となるように配置されていると同時に、他方の端面が内部空間S2側において鉛直面とほぼ平行となるように配置されている。
【0015】
下枠11bには、内側伝熱部材15、外側伝熱部材16、カバー17、18に対して、間に障子セット14を挟んで、鉛直方向に対称となるように、内側伝熱部材15A、外側伝熱部材16A、カバー17A、18Aが設けられ、さらに、窓部10の左右の縦枠にも、内側伝熱部材15および外側伝熱部材16と同様の不図示の内側伝熱部材および外側伝熱部材が配置されている。これら、下枠11bおよび縦枠に配置された伝熱部材およびカバーの詳しい説明については省略する。
さらに、面材13の両側方にも、内側伝熱部材15、外側伝熱部材16、およびカバー17、18と同様に、不図示の内側伝熱部材、外側伝熱部材、およびカバーが配置されている。内側伝熱部材は、面材13の周囲に合計で4つ、面材13を4方から囲うように配置されている。それぞれの内側伝熱部材の一方の端面は、対応する面材13の縁部に向くように配置され、全体として、面材13の全ての縁部に対して、いずれかの内側伝熱部材の一方の端面が向くように配置されている。
【0016】
次に、外側伝熱部材16について説明する。なお、内側伝熱部材15、15A、および外側伝熱部材16Aは、外形以外は外側伝熱部材16と同一の構成となっている。
図2に示すように、外側伝熱部材16は多孔質材料で形成されていて、一端16aから他端16bまで連通する空間である連通部21を有している。外側伝熱部材16を壁部3の開口3aに配置することで、住宅1の外部空間S1と内部空間S2とが微細な空間により連通する。
本実施形態では、外側伝熱部材16は、たとえば、金属等の粒子22を互いに接続させることにより形成されている。粒子22の外径は約20μm以上1000μm以下、外側伝熱部材16の空隙(ポア)率が10%以上90%以下、そして、外側伝熱部材16のポア径が約20μm以上1000μm以下であることが好ましい。
空隙率が10%未満になると、外側伝熱部材16における圧力損失が大きくなり、ダイナミックインシュレーションにより断熱効果を発揮しにくくなる。また、空隙率が90%を越えると、外側伝熱部材16中の水分拡散係数が大きくなり、外側伝熱部材16の内部で結露が生じる危険性が高くなる。
これらの範囲は、外側伝熱部材16の圧力損失、結露発生の有無、断熱性能などにより、適切な範囲に設定される。
なお、多孔質材料は一定の強度を有するので、外側伝熱部材16を開口3aに取付けたときに、壁部3の強度を高めることができる。
【0017】
面材13は、互いに平行になるとともに鉛直面とほぼ平行になるように配置されている。
2枚の面材13は、互いに一定距離離間して間に空気の層を形成することで、面材13の厚さ方向に対する断熱性能を向上させている。
【0018】
図1に示すように、壁部4の上部には開口4aが形成されていて、開口4aにはダクト23の一端が接続されている。開口4aには、軸流式の送風機(圧力調節手段)24が取付けられている。送風機24は、外部空間S1に対する内部空間S2の圧力を所定の範囲に調節することができる。
以上説明した伝熱部材15、15A、16、16A、および送風機24で、本実施形態の断熱システム25を構成する。
【0019】
壁部4には、公知のヒートポンプ27が取付けられている。ヒートポンプ27は、内部空間S2側に配置された室内側ユニット28と、外部空間S1側に配置された室外側ユニット29とを有している。
室内側ユニット28は、内部空間S2の空気と熱交換を行う熱交換器30と、熱交換器30に空気を送る室内側送風機31と、熱交換器30および室内側送風機31が取付けられたケーシング32とを有している。熱交換器30はケーシング32内に配置されていて、室内側送風機31を運転すると、内部空間S2の空気がケーシング32に形成された吸気口32aから吸い込まれ、熱交換器30との間で所定量の熱を交換した後で、ケーシング32に形成された噴出し口32bから噴き出される。
【0020】
室外側ユニット29は、熱交換器35と、ダクト23を通して排出された空気を熱交換器35に送る室外側送風機36と、熱交換器30および熱交換器35と配管37を介して接続された圧縮機38と、不図示の減圧器および切替え弁と、熱交換器35、室外側送風機36、圧縮機38、減圧器および切替え弁が取付けられたケーシング39とを有している。
熱交換器30、35、配管37、減圧器、切替え弁および圧縮機38内には冷媒が所定の圧力で封入されていて、これらの要素で冷媒回路を構成している。
なお、減圧器は冷媒の圧力を低下させるものであり、切替え弁は冷媒回路を流れる冷媒の向きを切り替えるものである。
【0021】
たとえば、冷媒回路を暖房用として用いる場合には、切替え弁により、配管37内を冷媒が方向D1に流れ、圧縮機38、熱交換器30、減圧器、熱交換器35の順で冷媒が流れるように調節する。また、冷媒回路を冷房用として用いる場合には、切替え弁により、配管37内を冷媒が方向D2に流れ、圧縮機38、熱交換器35、減圧器、熱交換器30の順で冷媒が流れるように調節する。
【0022】
次に、以上のように構成された本実施形態の断熱システム25の動作について説明する。以下では、冬季において冷媒回路を暖房用として用いる場合で説明する。
まず、切替え弁により冷媒回路を暖房用に設定し、送風機24、室内側送風機31、室外側送風機36および圧縮機38を運転させる。このとき、送風機24を第3種機械換気方式で運転させ、ダクト23を通して内部空間S2から外部空間S1に空気を排出させることで外部空間S1に対して内部空間S2の圧力を低下させる。
冷媒は、配管37内を方向D1に流れ、熱交換器30の温度が上昇すると同時に熱交換器35の温度が低下する。内部空間S2の空気は熱交換器30により加熱され、外部空間S1の空気は熱交換器35により冷却される。
【0023】
外部空間S1の空気の温度に対して内部空間S2の空気の温度が高くなるので、
図3に示すように、熱Hは外側伝熱部材16の他端(内側)16bから一端(外側)16aに向けて伝導する。さらに、外部空間S1に対して内部空間S2の圧力が低くなっているので、空気Aは外部空間S1から内部空間S2に互いに連通する微細な空間により構成される連通部21(
図2参照)を通して流入する。
外部空間S1の空気Aの温度は内部空間S2の空気の温度に対して低いので、空気Aは連通部21を通過するときに外側伝熱部材16から熱を伝達される。このため、空気Aが流入する外部空間S1から内部空間S2に向かう方向とは逆方向である内部空間S2から外部空間S1に向かう方向の熱輸送が妨げられ、本実施形態の断熱システムがダイナミックインシュレーションによる断熱効果を発揮して、内部空間S2が暖かく保たれる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の断熱システムによれば、たとえば、冬季などで外部空間S1に対して内部空間S2の温度が高い場合には、送風機24により外部空間S1に対して内部空間S2の圧力を低下させることで、外側伝熱部材16の連通部21の微細な空間を通して空気を内部空間S2に流入させる。このとき、内部空間S2の熱は外側伝熱部材16を通して外部空間S1に移動しようとするが、この熱が連通部21を通る空気に奪われるので、内部空間S2の熱が外部空間S1に移動するのを防止し、外側伝熱部材16の断熱性能を高めることができる。
さらに、一般的に、冬季において外部空間S1の湿度は低下しているので、内部空間S2に外部空間S1の空気を導入することで内部空間S2の湿度を下げ、窓部10の内部空間S2側の面が結露するのを防止することができる。
【0025】
ヒートポンプ27の熱交換器35は、もともと内部空間S2にあり送風機24により排出された空気から熱を回収するので、内部空間S2から外部空間S1に排出される熱を低減させるとともに、ヒートポンプ27が空気から熱を回収する効率を向上させることできる。
また、外側伝熱部材16は多孔質材料で形成されているので、空気に熱を効果的に伝達させることができる。
さらに、内側伝熱部材15、15Aを備えているので、面材13の縁部の断熱性能を高めることができる。
このように、外側伝熱部材16は、壁部3において、面材13の上方の部分の断熱を行い、内側伝熱部材15は、面材13の上部の縁部近傍の断熱を行っている。なお、本実施形態では、内側伝熱部材15および外側伝熱部材16を分離することなく一体に形成してもよい。
【0026】
次に、本実施形態の断熱システムの断熱性能を確認するために熱流体解析によるシミュレーションを行った結果について説明する。
シミュレーションの対象となる形状および空間を単純化するために、
図4および
図5に示すように、障子セット14を、厚さ(X軸方向)が100mm、長さと幅がそれぞれ1000mmの板状とした。外側伝熱部材16、16Aの厚さを100mm、高さを20mmとし、障子セット14の天面および底面にそれぞれ配置した。また、障子セット14の両側面(
図4におけるZ軸方向)にも、厚さ100mm、幅20mmの外側伝熱部材16B、16Cをそれぞれ配置し、4つの外側伝熱部材16、16A、16B、16C(以下、「外側伝熱部材16など」と称する。)が障子セット14をX軸回りに一周囲むように配置した。そして、障子セット14および外側伝熱部材16などに対して、X軸方向の一方側に厚さ500mmの外部空間S1を配置し、X軸方向の他方側に厚さ500mmの内部空間S2を配置した。
なお、このシミュレーションでは、ヒートポンプ27は考慮していない。
【0027】
外部空間S1における障子セット14から離間した位置にあるX軸に直交する面を流入口S11、内部空間S2における障子セット14から離間した位置にあるX軸に直交する面を流出口S21として、流出口S21での圧力を0Paとし、流入口S11での圧力を10Pa、7Pa、3Pa、1Paと変化させた。
障子セット14は熱伝導が生じない断熱体であるとした。
【0028】
流れ場解析は、高Re数型標準k−ε乱流モデルを用い、定常計算を行った。本シミュレーションでは、外側伝熱部材16としてグラスウールからなる多孔質材料を用いた。
多孔質材料の圧力損失特性は、(1)式のErgun方程式で近似し、流入口S11での圧力が10Paの時に熱貫流率が0W/m
2になるように、外側伝熱部材16などの連通部21を流れる空気の平均速度Uを0.002m/sと仮定した。
【0030】
ここで、φ
Cは形状係数、μは分子粘性係数(kg/(m・s))、ρ
aは空気密度(kg/m
3)、D
Pはポーラス粒子直径(m)、εは空隙率である。
今回のシミュレーションでは、ポーラス粒子直径D
Pを0.00033m、空隙率εを0.5、φ
Cを1.0、分子粘性係数μを1.81×10
-5kg/(m・s)とした。
【0031】
ダイナミックインシュレーションを行った場合の外側伝熱部材16の厚さ方向の温度T(x)(K)は、(2)式の熱方程式により求めることができる。ただし、C
Pは空気の比熱(J/(kg・K))である。
【0033】
なお、(1)式および(2)式の詳細は、Oyvind Aschehoug:Annex44 State−of−the−Art Review,vol.1. State−of−the−Art Report,Chapter4.3,pp35−39を参照のこと。
【0034】
図6にシミュレーション結果を示す。
図6の横軸は、外側伝熱部材16の厚さ方向(X軸方向)の位置を表していて、この位置は外側伝熱部材16の外部空間S1側の面を基準とするとともに、外部空間S1から内部空間S2に向かう向きを正としたものである。
図6の縦軸は、外部空間S1、内部空間S2および外側伝熱部材16の温度を表す。
この結果から、流入口S11での圧力によらず、外部空間S1から内部空間S2に流入する空気が、外側伝熱部材16内を通過するにしたがって温められていることが分かった。
また、流入口S11での圧力が1Paから10Paへと高くなるにしたがって、外側伝熱部材16の外部空間S1側の面における温度勾配が小さくなることが分かった。これは、流入口S11での圧力が高くなり外部空間S1から流入する空気が増加するしたがって、外側伝熱部材16から外部空間S1への熱輸送が妨げられたためである。
【0035】
なお、夏季の場合には、切替え弁により冷媒回路を冷房用に設定し、配管37内において冷媒を方向D2に流す。これにより、熱交換器30の温度が低下すると同時に熱交換器35の温度が上昇し、内部空間S2の空気は熱交換器30により冷却され、外部空間S1の空気は熱交換器35により加熱される。
ダクト23の中間部には外部空間S1に連通する不図示の開口が形成されていて、ダクト23にはこの開口を開閉可能とするダンパーが取り付けられている。夏季には、ダンパーを動作させて開口が開いた状態にしておく。なお、この開口は、冬季にはダンパーにより閉じた状態になっている。
送風機24を第2種機械換気方式で運転させ、前述の開口を通して外部空間S1から内部空間S2に空気を流入させることで外部空間S1に対して内部空間S2の圧力を上昇させる。
一般的に、夏季において外部空間S1の湿度は高いので、内部空間S2の圧力を上昇させ、外側伝熱部材16を通して内部空間S2から外部空間S1に空気を流出させることで、結露が発生するのを抑えることができる。
【0036】
外部空間S1の空気の温度に対して内部空間S2の空気の温度が低くなるので、熱は外側伝熱部材16の一端(外側)16aから他端(内側)16bに向けて伝導する。さらに、外部空間S1に対して内部空間S2の圧力が高くなっているので、空気は内部空間S2から外部空間S1に微細な空間からなる連通部21を通して流出する。
内部空間S2の空気の温度は外部空間S1の空気の温度に対して低いので、空気は連通部21を通過するときに外側伝熱部材16から熱を伝達される。このため、空気が流出する方向とは逆方向である外部空間S1から内部空間S2に向かう方向の熱輸送が妨げられ、この場合においても、本実施形態の断熱システム25がダイナミックインシュレーションによる断熱効果を発揮して、内部空間S2が涼しく保たれる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。
たとえば、前記実施形態では、外側伝熱部材16などは多孔質材料で形成されているとした。しかし、伝熱部材はこれに限ることなく、たとえば
図7に示すように、伝熱部材45が一対の櫛歯状部材46、47を有するように構成してもよい。櫛歯状部材46のベース部46aと櫛歯状部材47のベース部47aとは互いに対向する位置に配置されていて、ベース部46aに設けられ板状に形成された複数の歯部46bとベース部47aに設けられ板状に形成された複数の歯部47bとが、互いに接触することなく互い違いとなるように配置されている。本変形例の場合でも、空気は、歯部46bと歯部47bとの間に形成された連通部48を通過するときに伝熱部材45から熱を伝達される。
ベース部46aおよび歯部46bは、ベース部47aおよび歯部47bは、それぞれアルミニウムなどの材料により、たとえば押出し成形により一体に形成される。
伝熱部材45が櫛歯状部材46、47を有するように構成することで、伝熱部材45により空気に熱を効果的に伝達させることができるとともに、伝熱部材45をより安価に製造することができる。さらに、櫛歯状部材は一定の強度を有するので、伝熱部材45を開口3aに取付けたときに壁部3の強度を高めることができる。
【0038】
また、伝熱部材として、グラスウール、連通フォームのウレタン、絨毯など織物を適宜選択して用いることができる。このとき、グラスウールを用いた場合など、伝熱部材で壁部3の強度を高めることができないときには、伝熱部材を覆うカバーに剛性の高いものを用いることが好ましい。
【0039】
上記実施形態では、圧力調節手段として軸流式の送風機24を用いたが、圧力調節手段として、ターボ式やシロッコ式などの送風機を用いてもよい。
また、上記実施形態では、住宅1にヒートポンプ27が備えられていた。しかし、たとえば冬季において、外部空間S1と内部空間S2との温度差が小さく、内部空間S2から外部空間S1に排出される空気の熱が小さい場合などには、ヒートポンプ27は備えられなくてもよい。
【0040】
上記実施形態では、壁部3にさらに送風機を取付けるとともに、内部空間S2の圧力を調節することで、両送風機を第1種機械換気方式で運転させてもよい。この場合、たとえば冬季においては、外部空間S1に対して内部空間S2の圧力が低下するように両送風機を調節する。
また、上記実施形態では、4つの伝熱部材15、15A、16、16Aを備えたが、断熱システムは、少なくとも1つの伝熱部材を備えていればよい。