特許第5783521号(P5783521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783521
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】錠剤検査装置及びPTP包装機
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   G01N21/85 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-269651(P2009-269651)
(22)【出願日】2009年11月27日
(65)【公開番号】特開2011-112527(P2011-112527A)
(43)【公開日】2011年6月9日
【審査請求日】2011年8月5日
【審判番号】不服2014-25896(P2014-25896/J1)
【審判請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】脇田 隆司
【合議体】
【審判長】 森 竜介
【審判官】 堀 圭史
【審判官】 清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−21805(JP,A)
【文献】 特表2006−501532(JP,A)
【文献】 特開2005−164272(JP,A)
【文献】 特開2008−241424(JP,A)
【文献】 特開昭62−92085(JP,A)
【文献】 特開平10−19534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTPシートの製造過程において、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤を検査する錠剤検査装置であって、
前記ポケット部に収容された錠剤に対し光を照射可能な照明手段と、
前記照明手段により照明された範囲内の錠剤を前記ポケット部の上面又は下面から撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段から出力される画像信号を処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、
前記画像信号から得た画像データに基づき、前記錠剤の領域である錠剤領域を認識する処理と、
前記錠剤領域をその重心を中心に所定角度回転する回転処理と、
前記錠剤域のうち、前記回転の前後で重ならない部分の領域の面積を差分面積として算出する差分面積算出処理と、
前記差分面積又は当該差分面積が前記錠剤において占める割合が許容範囲内か否かを判定する対称性判定処理とを行うことにより、
異種錠混入検査を行うことを特徴とする錠剤検査装置。
【請求項2】
前記所定角度を360°/n(nは3以上の自然数)とした検査を行うことを特徴とする請求項1に記載の錠剤検査装置。
【請求項3】
前記所定角度を360°/2n(nは3以上の自然数)とした検査を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の錠剤検査装置。
【請求項4】
前記画像処理装置は、
前記認識した錠剤の輪郭上の各点と重心との距離を算出する距離算出処理と、
前記算出された距離のうちの最大値と最小値の差又は比を算出する比較処理と、
前記最大値と最小値の差又は比が許容範囲内である否かを判定する大小判定処理とを行うことにより、
第2の異種錠混入検査を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の錠剤検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTPシートの製造に際し用いられる錠剤検査装置、及び、該錠剤検査装置を備えたPTP包装機を含む技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、PTPシートは、錠剤等が充填されるポケット部が形成された樹脂製の包装用フィルムと、その包装用フィルムにポケット部の開口側を密封するように前記包装用フィルムに取着されるアルミニウム製のカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
PTPシートの製造に際しては、ポケット部に錠剤等が充填された後、異種錠の混入を検出する異種錠混入検査が行われる。
【0004】
かかる検査の手法としては、錠剤の色、大きさ、形状など外観の違いを検査するのが一般的である。中でも、形状識別検査では、予め基準となる錠剤の画像を記憶しておき、当該基準画像と検査対象たる錠剤の画像とを比較して、異形状の錠剤を検出するパターンマッチング方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−167640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術は、画像データから検査対象となる錠剤の重心位置を算出し、当該錠剤の重心位置に、予め記憶したパターンマッチング用の基準画像の重心を合わせた上で、当該基準画像を所定角度ずつ回転させていき、両者が一致するか否かをその都度判定するといったもので、非常に処理数が多く、手間のかかるものであった。また、錠剤は、類似形状のものであっても品種毎に多少形状が異なるため、品種毎にパターンマッチング用の基準画像を登録する必要があった。その結果、検査効率の向上が妨げられていた。
【0007】
また、パターンマッチング用の基準画像を登録したとしても、当該基準画像自体が登録時の撮像状況等により適正なものでないおそれがある。さらに、画像データから認識される検査対象たる錠剤の形状にも、製造誤差やポケット部への充填姿勢などにより多少のバラツキが生じるため、適正な錠剤であっても、パターンマッチングが一致しないおそれもある。その結果、検査精度が低下するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、PTPシートの製造過程における異種錠の混入検査に関し、検査効率及び検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.PTPシートの製造過程において、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤を検査する錠剤検査装置であって、
前記ポケット部に収容された錠剤に対し光を照射可能な照明手段と、
前記照明手段により照明された範囲内の錠剤を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段から出力される画像信号を処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、
前記画像信号から得た画像データに基づき、前記錠剤を認識する塊処理と、
前記認識した錠剤をその重心を中心に所定角度回転する回転処理と、
前記錠剤の領域うち、前記回転の前後で重ならない部分の領域の面積を差分面積として算出する差分面積算出処理と、
前記差分面積又は当該差分面積が前記錠剤において占める割合が許容範囲内か否かを判定する対称性判定処理とを行うことにより、
異種錠混入検査を行うことを特徴とする錠剤検査装置。
【0011】
上記手段1によれば、画像データから認識された錠剤自身を回転させて、その回転前後で重ならない領域の面積を求めるといった比較的簡単な処理を基に異種錠の検出を行うことができる。
【0012】
円形錠剤の場合、どのような角度で回転したとしても、回転の前後で錠剤の輪郭は一致し、差分面積は理論的には0となる。但し、実際には錠剤の充填姿勢の傾き等の影響により、小さな差分面積は算出される可能性がある。つまり、任意の角度で回転して常に差分面積が許容範囲内となるものであれば、欠けのない良品の円形錠剤と判定することができる。
【0013】
これに対し、四角形等の非円形錠剤の場合、回転角度によっては、回転の前後で錠剤の輪郭がほぼ一致する場合もあれば、輪郭が一致せず、比較的大きな差分面積が得られる場合もある。例えば正三角形の錠剤であれば回転角度120°、正四角形の錠剤であれば回転角度90°、正五角形の錠剤であれば回転角度72°で、錠剤の輪郭がほぼ一致する。
【0014】
手段1.PTPシートの製造過程において、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤を検査する錠剤検査装置であって、
前記ポケット部に収容された錠剤に対し光を照射可能な照明手段と、
前記照明手段により照明された範囲内の錠剤を前記ポケット部の上面又は下面から撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段から出力される画像信号を処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、
前記画像信号から得た画像データに基づき、前記錠剤の領域である錠剤領域を認識する処理と、
前記錠剤領域をその重心を中心に所定角度回転する回転処理と、
前記錠剤域のうち、前記回転の前後で重ならない部分の領域の面積を差分面積として算出する差分面積算出処理と、
前記差分面積又は当該差分面積が前記錠剤において占める割合が許容範囲内か否かを判定する対称性判定処理とを行うことにより、
異種錠混入検査を行うことを特徴とする錠剤検査装置。
【0015】
このように本手段によれば、パターンマッチング方式のように、基準画像と検査対象との座標位置を合わせたり、1つの錠剤について画像の回転処理を何度も繰り返す必要がない。結果として、1つの錠剤にかかる処理数が格段に減り、検査処理速度を格段に速めることができる。加えて、品種毎に基準画像を登録しておく手間もない。
【0016】
また、本手段は、比較する対象が検査対象たる錠剤自身の回転の前後の画像であるため、個々の錠剤の形状や大きさのバラツキ等による影響が少なく、適切な検査を行うことができる。
【0017】
結果として、異種錠の混入検査に係る検査効率及び検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。
【0018】
手段2.前記所定角度を360°/n(nは3以上の自然数)とした検査を行うことを特徴とする手段1に記載の錠剤検査装置。
【0019】
上記手段2によれば、円形錠剤、及び、正n×m角形(nは3以上、mは1以上の自然数)の錠剤と、それ以外の形状の錠剤とを判別することができる。例えば、正三角形(n=3,m=1)や正六角形(n=3,m=2)の錠剤を120°(360°/3)回転させた場合には、回転の前後で錠剤の輪郭がほぼ一致する。一方、それ以外の形状の錠剤では、回転の前後で錠剤の輪郭が一致しない。
【0020】
なお、ここでいう「正n角形」には、n個の角部が尖った完全な正n角形のみならず、n個の角部が丸みを帯びたものや、n個の各辺が直線形状でなく、やや丸みを帯びたもの等も含まれる。つまり、錠剤の重心からn個の各角部まで距離が均等な形状であれば、ここでいう「正n角形」に含まれる。
【0021】
手段3.前記所定角度を360°/2n(nは3以上の自然数)とした検査を行うことを特徴とする手段1又は2に記載の錠剤検査装置。
【0022】
上記手段3によれば、円形錠剤、及び、正n×m角形(nは3以上、mは2以上の自然数)と、正n角形を含む、それ以外の形状の錠剤とを判別することができる。例えば、正六角形(n=3,m=2)の錠剤を60°(360°/(2×3))回転させた場合には、回転の前後で錠剤の輪郭がほぼ一致する。一方、正三角形(n=3)の錠剤を60°回転させた場合には、回転の前後で錠剤の輪郭が一致しない。
【0023】
手段4.前記画像処理装置は、
前記認識した錠剤の輪郭上の各点と重心との距離を算出する距離算出処理と、
前記算出された距離のうちの最大値と最小値の差又は比を算出する比較処理と、
前記最大値と最小値の差又は比が許容範囲内である否かを判定する大小判定処理とを行うことにより、
第2の異種錠混入検査を行うことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の錠剤検査装置。
【0024】
画像の回転処理は、画像処理装置にかかる負担が大きくかつ時間のかかる処理である。そのため、PTPシートの製造過程においては、画像の回転処理を1つの錠剤につき何度も実行することは困難であり、PTPシートの生産効率を低下させるおそれがある。
【0025】
これに対し、本手段によれば、画像の回転処理を行うことなく、任意の形状の錠剤と、それ以外の異形状の錠剤とを判別することができる。
【0026】
例えば、円形錠剤の場合、重心と輪郭上の各点との距離の最大値と最小値の差は理論的には0となる。但し、実際には錠剤の充填姿勢の傾き等の影響により、小さな差は算出される可能性がある。つまり、重心と輪郭上の各点との距離の最大値と最小値の差が許容範囲内となるものであれば、欠けのない良品の円形錠剤と判定することができる。
【0027】
これに対し、正三角形の錠剤などの場合には、重心と輪郭上の各点との距離の最大値と最小値の差が比較的大きな値となる。
【0028】
手段5.手段1乃至4のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【0029】
上記手段5のように、錠剤検査装置をPTP包装機に備えることで、PTPシートの製造過程において不良品を効率的に除外できる等のメリットが生じる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態におけるPTP包装機等の概略構成を示す模式図である。
図2】(a)はPTPシートを示す斜視図であり、(b)はPTPシートを示す部分拡大断面図であり、(c)は正三角形の錠剤の平面図である。
図3】錠剤検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】「検査ルーチン」を示すフローチャートである。
図5】錠剤の回転処理等を説明するための模式図である。
図6】対称性検査を説明するための模式図である。
図7】凹凸検査を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、錠剤検査装置をPTP包装機に装備することによって、PTP包装機においてPTPシートの不良が検査される。
【0032】
図2(a),(b)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた包装用フィルムとしての容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルムとしての密封用フィルム4とを有している。
【0033】
容器フィルム3は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によって構成され、光透過性を有している(ここでは、透明を呈している)。密封用フィルム4は、アルミニウムによって構成されている。
【0034】
また、各ポケット部2には、錠剤5が1つずつ収容されている。本実施形態の錠剤5は、図2(c)に示すように、3つの角部5aが丸みを帯び、3つの辺5bが直線形状となった正三角形をなしている。また、本実施形態の錠剤5は白色に近い色をしているが、色はこれに限定されるものではない。
【0035】
図1に示すように、PTP包装機7は、錠剤5を容器フィルム3に自動的に包装するものである。具体的には、PP、PVCなどの帯状の樹脂フィルムをフィルム送りロール9とテンションロール10,11とで、加熱装置12及び成形装置13に送り込み、錠剤5充填用のポケット部2を樹脂フィルムに成形する。そして、樹脂フィルムにポケット部2の成形された容器フィルム3が、充填装置14の下まで送られてくると、充填装置14が各ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する。
【0036】
一方、帯状に形成された密封用フィルム4は、テンションロール16,17を介してフィルム受けロール18の方へと案内されている。フィルム受けロール18には、加熱ロール19が圧接可能となっており、該加熱ロール19の外周面には、僅かに凸状に形成された格子状の線(図示略)が設けられている。そして、両ロール18,19間に、容器フィルム3及び密封用フィルム4が送り込まれるようになっている。両フィルム3,4が、両ロール18,19間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着される。これによって、錠剤5が各ポケット部2に充填された長尺状のPTPフィルム20が製造される。
【0037】
さて、前記充填装置14の下流側、かつ、前記フィルム受けロール18及び加熱ロール19の上流側には、容器フィルム3の移送経路に沿って、容器フィルム3の不良を検査するための錠剤検査装置21が配設されている。当該錠剤検査装置21は、錠剤5とは品種の異なる(形状の異なる)異種錠の混入の検出を主目的とする検査を行うものである。
【0038】
上記検査を経て、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着された後、PTPフィルム20は、図示しない打抜装置によってPTPシート1単位に裁断される。なお、錠剤検査装置21によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシートは、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0039】
さて、PTP包装機7の概略は以上のとおりであるが、以下においては図3等に基づき、錠剤検査装置21についてより具体的に説明する。
【0040】
錠剤検査装置21は、照明手段としての照明装置22、撮像手段としてのカメラ23、画像処理装置24、モニタ25、及びキーボード26等を備えている。
【0041】
照明装置22は、容器フィルム3のポケット部2側に設けられており(図1参照)、面発光が可能となっている。
【0042】
また、カメラ23は、容器フィルム3を介して照明装置22とは反対側(図1では上側)に設けられており、照明装置22から照射される光のうち、容器フィルム3を透過した光を撮像可能となっている。本実施形態では、カメラ23として、CCDカメラが採用されている。
【0043】
このように、本実施形態では、照明装置22から照射される光が、容器フィルム3及び錠剤5を照らし、そこを透過した光が、カメラ23によって二次元撮像されるように構成されている。そして、カメラ23によって撮像された画像データは、カメラ23内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で画像処理装置24に入力されるようになっている。
【0044】
画像処理装置24は、図3に示すように、カメラ23に対応する画像メモリ41、二値化手段43、判定用メモリ44、検査結果及び統計データメモリ45、カメラタイミング制御手段46、並びに、CPU及び入出力インターフェース47などから構成され、後述するような画像データの処理や、不良判定(検査)等を実施可能となっている。
【0045】
カメラ23で撮像された二次元画像データは、デジタル信号に変換された後、対応する画像メモリ41に記憶される。また、画像データは、検査時において、二値化手段43により二値化された後、再度画像メモリ41に記憶される。
【0046】
CPU及び入出力インターフェース47は、各種処理プログラムを判定用メモリ44の記憶内容などを使用しつつ実行するとともに、PTP包装機7に制御信号を送出し又はPTP包装機7から動作信号などの各種信号を送受信するためのものである。これによって、例えば、PTP包装機7の不良シート排出機構などを制御することができるようになっている。また、CPU及び入出力インターフェース47は、モニタ25に表示データを送出する機能をも有する。かかる機能により、二値あるいは濃淡の画像データや不良検査結果などを、モニタ25に表示させることができるようになっている。さらに、CPU及び入出力インターフェース47は、キーボード26からのデータを入力する機能をも有する。
【0047】
検査結果及び統計データメモリ45は、画像データに関する座標等のデータ、検査結果データ、及び、該検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。これらの検査結果データや統計データは、CPU及び入出力インターフェース47の制御に基づき、適宜モニタ25に表示させることができる。また、これらの検査結果データや統計データに基づいてCPU及び入出力インターフェース47がPTP包装機7に制御信号を送出することもできる。
【0048】
カメラタイミング制御手段46は、カメラ23が撮像する画像データを、画像メモリ41に取り込むタイミングを制御するものである。かかるタイミングはPTP包装機7に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御され、容器フィルム3を所定量送るごとにカメラ23によるシート単位(例えば打ち抜かれるPTPシート単位)で撮像(撮影)が行われる。
【0049】
次に、上記不良検査(異種錠混入検査)の手順について図4のフローチャート等に従って説明する。なお、本実施形態では、正三角形の錠剤5とは別に、円形及び正六角形の異種錠が混入するおそれのある場合について説明する。
【0050】
同図に示すように、「検査ルーチン」において、まずステップS101では、二値化処理を実行する。具体的には、画像メモリ41に記憶された画像データに対し、二値化手段43にて二値化処理が行われる。
【0051】
ステップS102では、塊処理を実行する。具体的には、ステップS101において得られた二値化データに基づき、錠剤5及び異種錠(以下、錠剤5等という)に相当する錠剤領域の認識を行う。
【0052】
ステップS103では、第1対称性検査を行う。具体的には、まず図5に示すように、ステップS102で認識された錠剤5等をその重心Gを中心に30°回転する(回転処理)。続いて、錠剤5等の領域うち、回転の前後で重ならない部分の領域の面積(図5で散点模様を付した部分)の合計を差分面積Sxとして算出する(差分面積算出処理)。ここで、正三角形の錠剤5及び正六角形の異種錠51に関しては、その輪郭が回転の前後で一致しないため、差分面積Sxとして比較的大きな値が算出される一方、円形の異種錠52に関しては、その輪郭が回転の前後でほぼ一致するため、差分面積Sxとして比較的小さな値が算出されることとなる。
【0053】
ステップS104では、ステップS103において算出した各錠剤5等の差分面積Sxが、予め定められた判定基準値S1以下か否かを判定する(対称性判定処理)。
【0054】
そして、差分面積Sxが判定基準値S1以下の場合には、ステップS108において不良判定を行い、本処理を一旦終了する。一方、差分面積Sxが判定基準値S1よりも大きい場合には、ステップS105へ移行する。これにより、円形の異種錠52が不良判定されることとなる。
【0055】
ステップS105では、第2対称性検査を行う。具体的には、まず図6に示すように、ステップS102で認識された錠剤5等をその重心Gを中心に60°回転する(回転処理)。続いて、錠剤5等の領域うち、回転の前後で重ならない部分の領域の面積(図6で散点模様を付した部分)の合計を差分面積Sxとして算出する(差分面積算出処理)。ここで、正三角形の錠剤5に関しては、その輪郭が回転の前後で一致しないため、差分面積Sxとして比較的大きな値が算出される一方、正六角形の異種錠51に関しては、その輪郭が回転の前後でほぼ一致するため、差分面積Sxとして比較的小さな値が算出されることとなる。
【0056】
ステップS106では、ステップS105において算出した各錠剤5等の差分面積Sxが、予め定められた判定基準値S2以下か否かを判定する(対称性判定処理)。
【0057】
そして、差分面積Sxが判定基準値S2以下の場合には、ステップS108において不良判定を行い、本処理を一旦終了する。一方、差分面積Sxが判定基準値S2よりも大きい場合には、ステップS107において良品判定を行い、本処理を終了する。これにより、正六角形の異種錠51が不良判定されることとなる。
【0058】
なお、上記ステップS101からステップS108の処理は、PTPフィルム20上の各錠剤5等について実行されるとともに、これらの各種検査結果は、モニタ25やPTP包装機7(不良シート排出機構を含む)に出力される。そして、後にPTPシート1となって裁断されたときに同一シート上に一つでも不良判定された異種錠51,52が含まれているときは、そのシートは不良と判断され排出される。
【0059】
以上詳述したように、本実施形態によれば、画像データから認識された錠剤5等自身を回転させて、その回転前後で重ならない領域の面積を求めるといった比較的簡単な処理を基に異種錠51,52の検出を行うことができる。
【0060】
従って、本実施形態によれば、パターンマッチング方式のように、基準画像と検査対象との座標位置を合わせたり、1つの錠剤5等について画像の回転処理を何度も繰り返す必要がない。結果として、1つの錠剤5等にかかる処理数が格段に減り、検査処理速度を格段に速めることができる。加えて、品種毎に基準画像を登録しておく手間もない。
【0061】
また、本実施形態によれば、比較する対象が検査対象たる錠剤5等自身の回転の前後の画像であるため、個々の錠剤5等の形状や大きさのバラツキ等による影響が少なく、適切な検査を行うことができる。
【0062】
結果として、異種錠混入検査に係る検査効率及び検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。
【0063】
以上説明した実施形態において、例えば、次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論、以下において例示しない他の変更例も当然可能である。
【0064】
(a)上記実施形態では、検査対象となる錠剤の態様例として、正三角形の錠剤5、正六角形の異種錠51、及び、円形の異種錠52を例示している。しかし、検査対象とする錠剤の形状はこれらに限定されるものではなく、正n角形の錠剤であれば、回転処理における回転角度を任意に設定することにより判別可能となる。例えば、正四角形の錠剤であれば回転角度90°、正五角形の錠剤であれば回転角度72°で、回転前後における錠剤の輪郭がほぼ一致することとなる。なお、ここでいう「正n角形」には、n個の角部が尖った完全な正n角形のみならず、n個の角部が丸みを帯びたものや、n個の各辺が直線形状でなく、やや丸みを帯びたもの等も含まれる。つまり、錠剤の重心からn個の各角部まで距離が均等な形状であれば、ここでいう「正n角形」に含まれる。
【0065】
(b)上記実施形態では、正三角形の錠剤5、正六角形の異種錠51、及び、円形の異種錠52の3種類の錠剤の判別を行う構成となっている。これに限らず、2種類又は4種類以上の錠剤の判別を行う構成としてもよい。
【0066】
例えば、円形の錠剤と、正n×m角形(nは3以上、mは1以上の自然数)の錠剤の2種類の錠剤の判別を行う場合には、回転角度を360°/(2×n×m)として対称性検査を行うことにより、両者を判別することができる。
【0067】
また、円形の錠剤と、複数種類の正n×m角形(nは3以上、mは1以上の自然数)の錠剤との判別を行う場合には、混入が想定される正n×m角形の錠剤の角数n×mの最大値をkとするとともに、回転角度を360°/2kとして対称性検査を行うことにより、円形の錠剤と、それ以外の錠剤とを1回の対称性検査により判別することができる。例えば、正三角形(n=3,m=1)の錠剤5、及び、正六角形(n=3,m=2)の異種錠51と、円形の異種錠52とを判別する場合には、上記実施形態の第1対称性検査のように、回転角度を30°(360°/(2×6))として対称性検査を行えばよい。
【0068】
(c)上記実施形態では、2種類の対称性検査を行うことにより、正三角形の錠剤5、正六角形の異種錠51、及び、円形の異種錠52を判別している。これに限らず、例えば第1の異種錠混入検査として上記対称性検査を1度行った後、第2の異種錠混入検査として所定の凹凸検査を行うことにより、複数種類の正n×m角形(nは3以上、mは1以上の自然数)の錠剤を判別する構成としてもよい。
【0069】
仮に正三角形(n=3,m=1)の錠剤5、正六角形(n=3,m=2)の異種錠51、及び、円形の異種錠52を判別する場合においては、まず錠剤5等をその重心Gを中心に30°(360°/(2×3×2))回転して、上記実施形態同様に対称性検査を行い、正三角形の錠剤5及び正六角形の異種錠51と、円形の異種錠52とを判別する。その後、認識した錠剤5等の輪郭上の各点と重心Gとの距離を算出するとともに(距離算出処理)、図7に示すように、算出された距離のうちの最大値Zaと最小値Zbの差(又は比)を算出する(比較処理)。そして、最大値Zaと最小値Zbの差(又は比)が許容範囲内である否かを判定する(大小判定処理)。例えば、正三角形の錠剤5に関しては、最大値Zaと最小値Zbの差として比較的大きな値が算出される一方、正六角形の異種錠51に関しては、最大値Zaと最小値Zbの差として比較的小さな値が算出されることとなる。これにより、正三角形の錠剤5と、正六角形の異種錠51とを判別することができる。なお、円形の異種錠52に関しては、最大値Zaと最小値Zbの差が理論的には0となるが、充填姿勢の傾き等の影響により、許容範囲内の小さな差が算出されることもある。
【0070】
画像の回転処理は、画像処理装置24にかかる負担が大きくかつ時間のかかる処理である。そのため、PTPシート1の製造過程においては、画像の回転処理を1つの錠剤5等につき何度も実行することは困難であり、PTPシート1の生産効率を低下させるおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、画像の回転処理を極力少なくして、任意の形状の錠剤と、それ以外の異形状の錠剤とを判別することができる。
【0071】
(d)上記実施形態では、対称性検査により、錠剤5等の領域うち、回転の前後で重ならない部分の領域の面積の合計を差分面積Sxとして算出し、その差分面積Sxが予め定められた判定基準値以下か否かを判定することにより、錠剤5等の判別を行う構成となっている。これに限らず、差分面積Sxが錠剤5等において占める割合を算出し、当該割合が許容範囲内か否かを判定することにより、錠剤5等の判別を行う構成としてもよい。
【0072】
(e)上記実施形態では、照明装置22から照射され、容器フィルム3を透過した透過光をカメラ23により撮像し、錠剤5等の検査を行う構成となっている。これに限らず、錠剤5等から反射した反射光を撮像し、検査を行う構成としてもよい。反射光を利用した検査によれば、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着された後段階においても、錠剤5等の検査を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…密封用フィルム、5…錠剤、7…PTP包装機、21…錠剤検査装置、22…照明装置、23…カメラ、24…画像処理装置、51,52…異種錠、G…重心、Sx…差分面積、S1,S2…判定基準値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7