特許第5783556号(P5783556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5783556-熱応動式スチームトラップ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783556
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】熱応動式スチームトラップ
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/10 20060101AFI20150907BHJP
   F16T 1/14 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   F16T1/10
   F16T1/14 C
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-57218(P2011-57218)
(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公開番号】特開2012-193784(P2012-193784A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】浅田 哲夫
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−4790(JP,A)
【文献】 特開平9−222194(JP,A)
【文献】 特開2010−216538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/02
F16T 1/10
F16T 1/14
F16K 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と弁室と出口を形成した弁ケーシングと、弁室と出口を連通する導出路を形成した弁座部材と、壁部材とダイヤフラム部材の間に膨脹媒体を封入しダイヤフラム部材に弁部材を取り付けた温度制御機素を具備し、弁座部材を弁室と出口の間に取り付け、弁部材を弁座部材に対面させて温度制御機素を弁室に取り付け、膨脹媒体の膨脹収縮によるダイヤフラム部材の変位によって弁部材を弁座部材に離着座せしめるものであって、弁ケーシングの内周壁と温度制御機素の外周との間を密封するシール部材を設け、温度制御機素に壁部材とダイヤフラム部材と弁部材を貫通して流体通過孔を形成し、弁部材の弁座部材への着座時に弁座部材の導出路を閉止するシール面を弁部材に形成したものにおいて、収縮している膨脹媒体が膨脹する温度よりも高温で飽和温度よりも低温の所定高温で変形して所定高温よりも低温のときに流体通過孔を開き所定高温よりも高温のときに流体通過孔を閉じる温度応動部材を設けたことを特徴とする熱応動式スチームトラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種蒸気使用機器や蒸気配管で発生する復水を自動的に排出するスチームトラップに関し、特に、蒸気と復水で加熱冷却されその温度に応じて膨脹収縮する媒体を含む温度制御機素を用いて、所定温度以下の復水を系外へ排出する熱応動式スチームトラップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱応動式スチームトラップは、例えば特許文献1に開示されている。これは、入口と弁室と出口を形成した弁ケーシングと、弁室と出口を連通する導出路を形成した弁座部材と、壁部材とダイヤフラム部材の間に膨脹媒体を封入しダイヤフラム部材に弁部材を取り付けた温度制御機素を具備し、弁座部材を弁室と出口の間に取り付け、弁部材を弁座部材に対面させて温度制御機素を弁室に取り付け、膨脹媒体の膨脹収縮によるダイヤフラム部材の変位によって弁部材を弁座部材に離着座せしめるものにおいて、弁ケーシングの内周壁と温度制御機素の外周との間を密封するシール部材を設け、温度制御機素に壁部材とダイヤフラム部材と弁部材を貫通して流体通過孔を形成し、弁部材の弁座部材への着座時に弁座部材の導出路を閉止するシール面を弁部材に形成すると共に弁部材の流体通過孔を閉止するシール面を弁座部材に形成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−004791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の熱応動式スチームトラップは、弁部材のシール面と弁座部材との間に流体中のゴミやスケール等の異物を噛み込むと、導出路が完全シールされる全閉位置に弁部材が変位できず、蒸気を漏出してしまうという問題点があった。
【0005】
したがって本発明が解決しようとする課題は、弁部材のシール面と弁座部材との間に異物を噛み込んでも蒸気を漏出することのない熱応動式スチームトラップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の熱応動式スチームトラップは、入口と弁室と出口を形成した弁ケーシングと、弁室と出口を連通する導出路を形成した弁座部材と、壁部材とダイヤフラム部材の間に膨脹媒体を封入しダイヤフラム部材に弁部材を取り付けた温度制御機素を具備し、弁座部材を弁室と出口の間に取り付け、弁部材を弁座部材に対面させて温度制御機素を弁室に取り付け、膨脹媒体の膨脹収縮によるダイヤフラム部材の変位によって弁部材を弁座部材に離着座せしめるものであって、弁ケーシングの内周壁と温度制御機素の外周との間を密封するシール部材を設け、温度制御機素に壁部材とダイヤフラム部材と弁部材を貫通して流体通過孔を形成し、弁部材の弁座部材への着座時に弁座部材の導出路を閉止するシール面を弁部材に形成したものにおいて、膨脹媒体の膨張収縮温度よりも高温で飽和温度よりも低温の所定高温で変形して所定高温よりも低温のときに流体通過孔を開き所定高温よりも高温のときに流体通過孔を閉じる温度応動部材を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、膨脹媒体の膨張収縮温度よりも高温で飽和温度よりも低温の所定高温で変形して所定高温よりも低温のときに流体通過孔を開き所定高温よりも高温のときに流体通過孔を閉じる温度応動部材を設けたものであるので、弁部材のシール面と弁座部材との間に異物を噛み込んで排出すべきでない所定温度以上の復水を漏出し弁室内が膨脹媒体の膨張収縮温度よりも高温で飽和温度よりも低温の所定高温よりも高温になると、温度応動部材が流体通過孔を閉じることにより、所定高温よりも高温の復水及び蒸気の漏出を防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係わる熱応動式スチームトラップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照して説明する。上ケーシング1と下ケーシング2とをねじ結合して、内部に弁室3を有する弁ケーシングを形成する。上ケーシング1には弁室3に連通する入口4を形成し、下ケーシング2には弁室3から連通する出口5を形成する。弁室3と出口5との間の隔壁6に、弁座部材7をねじ結合する。弁座部材7には弁室3と出口5を連通する導出路8を形成する。弁座部材7の上方に、温度制御機素9を配置する。
【0010】
温度制御機素9は、壁部材10とダイヤフラム部材11と両部材10,11の間に封入した膨脹媒体12とダイヤフラム部材11の弁座部材7側に取り付けた弁部材13とを具備し、壁部材10とダイヤフラム部材11と弁部材13を貫通する流体通過孔14を開けたものである。壁部材10とダイヤフラム部材11の流体通過孔は夫々中央開口により形成する。弁部材13の流体通過孔は中央開口及びこの中央開口から横向きに複数個開けた横開口により形成する。流体通過孔14はダイヤフラム部材11と弁部材13を夫々の中央開口を並べて溶接し、また壁部材10の中央開口の縁とダイヤフラム部材11の中央開口の縁を溶接することにより形成する。膨脹媒体12は、水より沸点の低い液体、或いはそれらの混合物で形成する。膨脹媒体12の膨脹収縮によるダイヤフラム部材11の変位により弁部材13が弁座部材9に離着座して流体通過孔14を開閉する。膨脹媒体12の膨張収縮温度よりも高温で飽和温度よりも低温の所定高温で変形して所定高温よりも低温のときに流体通過孔14を開き所定高温よりも高温のときに流体通過孔14を閉じる温度応動部材としてのバイメタル15を壁部材10に取り付ける。
【0011】
温度制御機素9は、弁部材13を弁座部材7に対面して弁室3内に配置し、下ケーシング2の内周壁に形成した段部にシール手段としてのガスケット16を介して載せ、スナップリング17で保持する。ガスケット16によって下ケーシング2の内周壁と温度制御機素9の外周との間を密封する。弁部材13の下面に弁座部材7への着座時に導出路8を閉止するシール面19を形成する。
【0012】
上記実施例の熱応動式スチームトラップの動作は下記の通りである。弁室3内の温度が所定温度よりも上昇すると膨脹媒体12が膨脹する。膨脹媒体12の膨脹によってダイヤフラム部材11が下方に変位し、弁部材13が弁座部材7に着座する。弁部材13が弁座部材7に着座すると、弁部材13のシール面19が導出路8を閉止する。これにより所定温度以上の復水及び蒸気の漏出を防止する。弁室3内の温度が所定温度よりも低下してくると、膨脹媒体12が収縮してダイヤフラム11が上方に変位して弁部材13が弁座部材7から離座し、弁部材13のシール面19が導出路8を開口する。これにより所定温度よりも低温の復水を出口5から排出する。弁部材13のシール面19と弁座部材7との間に異物を噛み込んで排出すべきでない所定温度以上の復水を漏出し弁室3内が膨脹媒体12の膨張収縮温度よりも高温で飽和温度よりも低温の所定高温よりも高温になると、バイメタル15が流体通過孔14を閉じることにより、所定高温よりも高温の復水及び蒸気の漏出を防止する。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、膨脹媒体を含む温度制御機素を用いて各種蒸気使用機器や蒸気配管で発生する所定温度以下の復水を系外へ排出する熱応動式スチームトラップに利用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 上ケーシング
2 下ケーシング
3 弁室
4 入口
5 出口
7 弁座部材
8 導出路
9 温度制御機素
10 壁部材
11 ダイヤフラム
12 膨脹媒体
13 弁部材
14 流体通過孔
15 バイメタル
16 ガスケット
19 弁部材のシール面
図1