【実施例】
【0022】
<構成>以下、構成について説明する。
【0023】
図1または
図2に示すように、自動車などの車両1には、車室内の温度調節を行うための空気調和装置(以下、空調装置2という)が設けられている。
【0024】
この空調装置2は、車室の前部に設置されたインストルメントパネル3の内部に設けられた空調装置本体4と、この空調装置本体4から車室の各部に設けられた吹出口5に対して空調用空気を送給するダクト6とを備えている。
【0025】
上記した空調装置本体4は、
図3に示すように、中空の空調装置筐体部11を備えると共に、この空調装置筐体部11には、空気取入口12および空気取出口13が設けられている。なお、特に詳細には説明しないが、空気取入口12は、外気取入口と、内気取入口とを備えている。また、空気取出口13は、複数箇所設けられており、空調装置筐体部11の内部には、複数の空気取出口13に対して空調用空気を分配するための分配機構が設けられている。
【0026】
中空の空調装置筐体部11の内部には、空気取入口12と空気取出口13との間に、風上側から順にエバポレータ15(冷却用熱交換器)と、ヒータコア16(加熱用熱交換器)とが設けられている。エバポレータ15の風下側は、隔壁などによって温風通路17とバイパス通路18とに分けられており、ヒータコア16は、温風通路17の内部に設けられている。この場合、温風通路17とバイパス通路18とは、上下に隔てて設けられており、温風通路17は、バイパス通路18の下側に設けられている。
【0027】
そして、エバポレータ15とヒータコア16との間には、エバポレータ15を通過した空調用空気を温風通路17とバイパス通路18とに対して分配可能なミックスドア19が設けられている。この場合、ミックスドア19は風下側へ突出する円弧状のものとされている。
【0028】
ここで、エバポレータ15は、空調装置2で使用される冷却媒体(以下、冷媒という)の蒸発潜熱を利用して空調用空気を冷却するようにしたものである。また、ヒータコア16はエンジンによって加熱された冷却水(エンジン冷却水)の熱を利用して空調用空気を加熱するようにしたものである。
【0029】
上記したミックスドア19は、
図4、
図5に示すようなものであり、その基本的な構造は、以下のようになっている。即ち、このミックスドア19は、温風側開口部21および冷風側開口部22を有する枠状のスライドドアケース23と、このスライドドアケース23に沿って温風側開口部21と冷風側開口部22との間をスライドすることにより温風側開口部21および冷風側開口部22を開閉または開度調整可能なスライドドア部24と、を有するスライドドアユニット25とされている。なお、温風側開口部21は、温風通路17内に設置され、冷風側開口部22は、バイパス通路18内に設置される。
【0030】
上記したスライドドアユニット25は、スライドドアケース23の(温風側開口部21と冷風側開口部22とを挟んだ)両側部に対してスライドドア部24を取付可能な一対のドア取付壁部26を備えている。また、スライドドアユニット25は、スライドドア部24をスライド自在に支持するスライドガイド部28を備えている。このスライドガイド部28は、スライドドア部24の両側部から側方へ向けて突設されたガイドピンと、ドア取付壁部26に設けられたガイド溝とを有するものとされている。
【0031】
更に、スライドドアユニット25には、スライドドア部24のスライドを駆動可能なスライド駆動部29が設けられている。
【0032】
上記したスライド駆動部29は、スライドドア部24に設けられてスライド方向へ延びるラック部35と、このラック部35に駆動力を伝達するギヤ機構部36とを有している。
【0033】
このギヤ機構部36は、主に、ラック部35に直接噛み合う出力ギヤ41などのギヤ部と、この出力ギヤ41の軸心に取付けられた出力軸42と、この出力軸42をドア取付壁部26に対して軸支させる軸支部43などによって構成されている。
【0034】
そして、スペースに余裕がある場合には、ラック部35を、スライドドア部24の両側部に一対設け、出力ギヤ41を、ラック部35と対応させて出力軸42の両端部近傍に一対設け、出力軸42の両端部を、軸支部43を介してドア取付壁部26に軸支させるようにする。また、出力軸42を、スライド方向に対し、温風側開口部21と冷風側開口部22との間の(境界)位置に設けるようにする。この構造により、ギヤ機構部36を構成する出力ギヤ41に空調用空気が直接当たらないか、或いは、空調用空気が当たり難くなるような構成とすることが可能となる。これにより、風切音の発生を有効に防止することが可能となる。なお、出力軸42には図示しない外部の駆動装置(例えば、DCモータや、ステッピングモータなど)が接続される。
【0035】
更に、この実施例では、空調装置本体4の内部を複数のゾーンに分割して各ゾーン毎に空調をコントロールし得る構成を備えている。例えば、運転席用と、助手席用との2つのゾーンA,Bに分割したり、更に、後部座席用のゾーンCを加えて3つのゾーンA〜Cに分割したりしている。更に、必要があれば、4つ以上のゾーンに分割することも可能である。
【0036】
そして、複数のゾーンA〜Cに分割する場合には、空調装置本体4の内部を隔壁(ゾーン分割用隔壁48)などでゾーンA〜Cの数だけ仕切る必要がある。同時に、ミックスドア19も各ゾーンA〜Cの数だけ分割する必要がある。例えば、各ゾーンA〜Cごとに、独立したスライドドアユニット25を設ける(出力軸42の軸線方向へ並設する)と共に、これらを図示しない連結部で連結して一体化させるようにする。
【0037】
これに伴い、中間に位置された後部座席用のゾーンCのスライドドアユニット25では、温風側開口部21と冷風側開口部22との間の位置に設けられた出力軸42に対して、外部の駆動装置を直接接続することができなくなるので、中間のゾーンCに位置するスライドドアユニット25から最外側のゾーンA(またはゾーンB、以下、ゾーンAの例として説明する)に位置するスライドドアユニット25へ向けて、各ゾーンA、Cの出力軸42と平行な入力軸45を設置することにより、入力軸45を介して間接的に外部の駆動装置へ接続し得るようにする。この際、入力軸45には、中間のゾーンCの出力ギヤ41と噛み合う入力ギヤ44が設けられる。また、必要な場合には、入力ギヤ44や出力軸42に、中間ギヤなどを付設するようにしても良い。
【0038】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0039】
(構成1)
上記した入力軸45を、温風側開口部21を横切るように配置する(設置範囲a)。
【0040】
(構成2)
より好ましくは、上記入力軸45を、温風側開口部21の中央部よりも冷風側開口部22寄りの位置に配置する(最適設置範囲a1)。
【0041】
ここで、温風側開口部21の中央部とは、スライドドア部24のスライド方向の中央部のことである。
【0042】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0043】
空気取入口12から空調装置筐体部11の内部へ取入れられた空調用空気は、エバポレータ15(冷却用熱交換器)で除湿冷却された後、ミックスドア19によって温風通路17またはバイパス通路18に分配され、ヒータコア16(加熱用熱交換器)で加熱されるか、ヒータコア16を通らずにそのままの状態とされるか、或いは、ヒータコア16(加熱用熱交換器)で加熱されたものと加熱されないものとが混合されるかして、空気取出口13から取出され、ダクト6を通して車室の各部に設けられた吹出口5から吹出される。これにより、車室内の温度調節が行われる。
【0044】
そして、空調装置本体4の内部を複数のゾーンA〜Cに分割することにより、車室内の温度調節を複数のゾーン(例えば、運転席、助手席、後部座席の3つのゾーン)に分けてそれぞれ独立して行うことができるようになる。この際、各ゾーンのミックスドア19は、それぞれ独立して温風側開口部21および冷風側開口部22の開閉または開度調整を行うことになる。なお、中間(ゾーンC)のスライドドアユニット25については、両側(ゾーンA、B)に位置するスライドドアユニット25が邪魔になるので、入力軸45を用いて外部からの駆動力を伝達させるようにしている。
【0045】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0046】
(効果1)
上記構成1によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、冷風側開口部22よりも温風側開口部21の方が一般に空調用空気の流量が少ない(即ち、冷やすよりも暖める方が少ない空気量で済む)ので、中間に位置するスライドドアユニット25のための入力軸45を温風側開口部21の側に配置することにより、冷風側開口部22の側に配置する場合と比べて、風切音を抑制することができる。しかも、温風側開口部21の下流側には、通常、ヒータコア16が設置されているので、温風側開口部21で発生した風切音をヒータコア16によって遮音させることが可能となる。
【0047】
(効果2)
上記構成2によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、入力軸45を、温風側開口部21の中央部よりも冷風側開口部22寄りの位置に配置したことにより、温風側開口部21の開度が半分よりも大きい範囲の部分に入力軸45が設置されることとなる。これにより、温風側開口部21の開度が小さくなって空調用空気の流速が早まる位置に入力軸が存在しなくなるので、その分だけ、風切音を低減することが可能となる。
【0048】
また、入力軸45を、温風側開口部21の中央部よりも冷風側開口部22寄りの位置に配置したことにより、入力ギヤ44を小径化して、ミックスドア19や空調装置本体4の小型化を図ることが可能となる。
【0049】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。