(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来より衝撃吸収パネルには、パネル表面に複数のリブを立設して、通常の平板パネルよりも剛性を高めて、このリブを座屈変形させることで衝撃エネルギーの吸収量を増加させるものが知られている。前述の特許文献1、特許文献2、特許文献3でも、アウタパネルとインナパネルとの間に複数のリブを立設して、このリブを座屈変形させることで衝撃を吸収する構造が開示されている。
【0008】
もっとも、このようにインナパネルとアウタパネルとの間だけにリブを立設した場合には、アウタパネルからインナパネルに衝撃が伝達される際のエネルギーだけしか吸収することができず、アウタパネルだけが変形する衝撃エネルギーについては、吸収させることができない。すなわち、アウタパネルだけが変形する際の衝撃エネルギーについては、リブを利用して吸収させることができず、大きな衝撃エネルギーについては、十分に吸収さ
せることができないのである。
【0009】
そこで、アウタパネルだけが変形する際の衝撃エネルギーにも、リブを利用して十分な衝撃エネルギーの吸収量を確保するため、さらにアウタパネルの外側、すなわち、アウタパネルの反インナパネル側にも、新たにリブを立設することが考えられる。
【0010】
もっとも、単に、アウタパネルの反インナパネル側にリブを立設しても、十分な衝撃エネルギーの吸収を行うことはできない。なぜなら、仮に、反インナパネル側のリブとインナパネルとアウタパネルの間のリブが、衝撃荷重の入力方向に対して重なっていた場合には、アウタパネルのリブからインナパネル側のリブに対してダイレクトに荷重が伝達されて、アウタパネルとインナパネル側とでリブを分けた意味合いが薄れて、各リブでの座屈変形が十分に生じず、衝撃エネルギーの吸収が十分に行われないからである。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アウタパネルとインナパネルとを備えて衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収構造において、リブの座屈変形を確実に生じさせて、衝撃エネルギーの吸収量を確実に増加させることでき、さらに、効率的に衝撃エネルギーの吸収量を増加させることができる衝撃吸収構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、第1の発明は、インナパネルとアウタパネルとを備えて、
衝突物が衝突する際の衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収構造であって、前記インナパネルとアウタパネルとの間には、同一方向に延びる複数のインナリブを立設し、前記アウタパネルの反インナパネル側には、前記インナリブと同一方向に延びる複数のアウタリブを立設し、前記インナリブと前記アウタリブとが、
衝突物が衝突する際に衝撃が入力される側である衝撃入力方向から見て、
互いに重ならないように該衝撃入力方向と直交する方向にズレて配置されている構成とした。
【0013】
第2の発明は、第
1の発明において、前記インナリブを前記インナパネル側に設け、該インナリブと前記アウタパネルとの間に変形空間を設定している構成とした。
【0014】
第
3の発明は、第
2の発明において、前記アウタパネルを前記インナパネルに対して
、略クランク状に屈曲形成された衝撃吸収変形部を介して固定している構成とした。
【0015】
第
4の発明は、第
2の発明において、前記アウタパネルを前記インナパネルに対して
、段形状に形成されてスライド自在に固定するスライド固定部を介して固定している構成とした。
【0016】
第
5の発明は、第1の発明乃至第
4の発明
のいずれか一の発明において、前記アウタリブの厚みを前記インナリブの厚みよりも薄く設定している構成とした。
【0017】
第6の発明は、第1の発明乃至第5の発明のいずれか一の発明において、前記インナパネルがエンジン下部に設置されるオイルパンであり、前記アウタパネルが該オイルパンを保護するプロテクターカバーである構成とした。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、アウタパネルとインナパネルとの間に立設されるインナリブと、アウタパネルに立設されるアウタリブとが、重なり合わないようにズレて配置されているため、衝突時には、アウタパネルのアウタリブとインナリブの座屈変形とが、互いに干渉し合うことがない。このため、インナリブの衝撃吸収性能を確保しながらも、アウタリブの衝撃吸収性能も確実に得ることができる。
【0019】
また特に、インナリブとアウタリブとがズレて配置されていることで、アウタパネルのアウタリブを設けた部分がインナリブとの間に喰い込むように変形する。このため、アウ
タパネルが略波形に変形して、衝撃エネルギーの吸収量をさらに増やすことができる。
【0020】
よって、アウタパネルとインナパネルとを備えて衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収構造において、リブの座屈変形を確実に生じさせて、衝撃エネルギーの吸収量を確実に増加させることでき、さらに、効率的に衝撃エネルギーの吸収量を増加させることができる。
【0021】
なお、ここで「衝撃入力方向」とは、接触物が衝突してくる方向のことをいい、自動車に搭載されるオイルパンであれば、走行中に路面から飛んでくる飛び石等の飛散方向である自動車の前方方向や自動車の下方方向を意味する。
【0022】
また、ここで「ズレて」とは、アウタリブとインナリブとが重ならなければ、どのようなものであってもよく、直線状でも曲線状でも、さらに、角度がそれぞれ違っていてもよい。また、リブの数についても制限されるものではない。
【0023】
第2の発明によれば、インナリブをインナパネル側に設けて、インナリブとアウタパネルとの間に変形空間を設定したため、アウタパネルが衝突時に押圧されてインナリブの先端に当接するまでは、アウタリブとアウタパネルだけにしか衝撃荷重が作用しない。このため、アウタパネルの変形による衝撃エネルギーの吸収が確実に生じることになる。
【0024】
よって、アウタパネルで効率的に衝撃エネルギーの吸収を行うことができ、全体として衝撃吸収量を増加させることができる。また、入力される衝撃荷重が小さい場合には、アウタパネルのみが変形して、インナパネルにその影響が及ばないため、アウタパネルのみ交換するだけで、衝撃吸収構造を再度利用することができる。
【0025】
第
3の発明によれば、衝撃吸収変形部を介してアウタパネルをインナパネルに固定しているため、アウタパネルは衝撃吸収変形部の変形によっても衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0026】
よって、さらにアウタパネルの衝撃吸収性能を高めることができ、インナパネル側への衝突時の影響を少なくすることができる。
【0027】
第
4の発明によれば、スライド固定部を介してアウタパネルをインナパネルに固定しているため、衝撃荷重を受けた際、スライド固定部でスライド移動することで摺動抵抗を受けて、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0028】
よって、よりさらに、アウタパネルの衝撃エネルギーの吸収量を増やすことができる。
【0029】
第
5の発明によれば、アウタリブの厚みをインナリブの厚みより薄く設定したことで、衝撃荷重を受けた際に、アウタリブの方がインナリブよりも早く変形する。このため、アウタリブで衝撃吸収がなされた後にインナリブで衝撃吸収がなされることになる。
【0030】
よって、確実に、アウタリブとインナリブとで、段階的な衝撃吸収を生じさせることができ、衝撃エネルギーの吸収量を確実に増加させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。また、実施形態ではエンジン下部のオイルパンで説明を行うが、本発明の衝撃吸収構造はこれに限定されるものではなく、変速機のオイルパン、モータのケーシング、蓄電池のケーシング、さらに燃料タンクなど、外部の衝突物(接触物)から内部の内容物を保護する構造体であれば、どのようなものであってもよい。
【0033】
図1は、本発明の実施形態1の衝撃吸収構造を底部に採用したオイルパン1を示す図である。
【0034】
まず、この
図1でオイルパン1の構造について説明する。オイルパン1は、図示しないエンジンのシリンダーブロックの下方に設置されており、周知のようにエンジンオイルEを内部に貯留している。
【0035】
このオイルパン1は、異形の略矩形有底筒体で構成した樹脂製の射出成形品であり、
図1において右側で大きく膨出した底壁部11と、この底壁部11の周縁から上方に立ち上がる前壁部12と、同じく上方に立ち上がる側壁部13と、上方に立ち上がる後壁部14(
図4参照)とをそれぞれ備えて構成している。なお、ここで、前、後及び側方とは、自動車に設置した状態での前、後及び側方を意味する。
【0036】
これら前壁部12、側壁部13、及び後壁部14の上縁には、全周を取り囲むように取付フランジ15を設けている。この取付フランジ15には、オイルパン1を図示しないシリンダーブロックに締結固定するためのボルト挿通穴16を、ほぼ等間隔で複数設けている。
【0037】
オイルパン1の内部には、エンジンオイルEの飛散や片寄りを抑えるための樹脂製のバッフルプレート17を設けている。このバッフルプレート17には、オイルをろ過して不純物を取り除くオイルストレーナ18を一体的に設けている。なお、オイルストレーナ18の詳細な説明については省略する。
【0038】
このオイルストレーナ18を一体化したバッフルプレート17は、取付フランジ15に隣接した段差部19に端部を載置することで、オイルパン1に取り付けている。
【0039】
また、バッフルプレート17には、リターンオイルを受ける凹状樋部6を形成している。そして、バッフルプレート17の中央位置にはリターンオイルをオイルパン1下部に導
くオイル通路部7を設けている。
【0040】
オイルパン1の前壁部12の前面12a(外側面)、及び底壁部11の下面11a(外側面)には、衝撃吸収インナリブ2を、上部から下部に亘って直線状に前後方向に延びるように設けている。この衝撃吸収インナリブ2は、後述するように前方及び下方から大きな衝撃荷重を受けた際に、座屈変形して衝撃エネルギーを吸収するものである。
【0041】
また、この衝撃吸収インナリブ2…を複数設けることで、飛び石等との接触により衝撃を受けた際でも、荷重集中が生じないため、オイルパン1にクラック等の割れが生じるのを防止している。
【0042】
なお、この衝撃吸収インナリブ2は、例えば、左右方向に14条が並列に並ぶように設けている。そして、その間隔(ピッチ)pは、後述のように所定の値に設定している。
【0043】
このように構成されるオイルパン1に対して、その前壁部12の前方から底壁部11の下方にかけて、プロテクターカバー3を取り付けている。次に、このプロテクターカバー3について、
図1乃至
図3を使って説明する。
【0044】
プロテクターカバー3は、
図1及び
図2に示すように、前端3aが、前壁部12上端に設けた取付ボス12bに対して樹脂製クリップピン31によって固定されて、後端3bが、底壁部11下面に設けた断面略T字状のT形係止部11b,11bにスライド自在に差込固定される。
【0045】
このプロテクターカバー3も、射出成形によって形成される樹脂製の射出成形品であり、
図3に示すように、略矩形形状の平板プレート状で形成して、自動車に設置した状態で上側が上方に湾曲して反るように形成している(なお、矢印は自動車に設置した状態での方向を示す)。
【0046】
そして、その表面側(外方側)には、上方から下方に亘って前後方向に延びる衝撃吸収アウタリブ4を設けている。この衝撃吸収アウタリブ4も、所定の間隔(ピッチ)p´で平板プレート状の基部32から突出して、例えば、左右方向(
図1参照)に15条が並列に並ぶように設けている。
【0047】
但し、この衝撃吸収アウタリブ4はプロテクターカバー3全域に設けるのではなく、プロテクターカバー3の前端3aと後端3bには、衝撃吸収アウタリブ4を設けていない平坦領域33,33を設けている。この平坦領域33,33を設けることにより、プロテクターカバー3の前端3aと後端3bの剛性を低下させて、衝撃荷重を受けた際にはこの平坦領域33,33が撓んで衝撃荷重を吸収して、T形係止部11b,11bやクリップピン31に過大な衝撃荷重が作用しないようにしている。こうすることで、T形係止部11b,11bやクリップピン31が破損するのを防止している。
【0048】
また、プロテクターカバー3の前端3aには、前述のクリップピン31を挿通する取付穴34を設けた取付前脚部35を1つ設けている。一方、プロテクターカバー3の後端3bには、前述のT形係止部11b,11bに係合する二股形状の差込後脚部36,36を2つ設けている。
【0049】
取付前脚部35は、第一上下片部35aと水平片部35bと第二上下片部35cとで、略クランク状に屈曲形成されているため、後述するように、飛び石等が衝突して衝撃荷重を受けた際には、この取付前脚部35が変形することで、プロテクターカバー3が後退(オイルパン1側に近接)するようにしている。
【0050】
また、差込後脚部36,36も、第一水平片部36aと上下片部36bと第二水平片部36cとで段形状に形成されており、さらに、前述のようにスライド固定していることから、飛び石等が接触して衝撃荷重を受けた際には、この差込後脚部36,36がスライド移動することで、プロテクターカバー3が後退(オイルパン1側に近接)するようにしている。
【0051】
このように構成されるプロテクターカバー3をオイルパン1に組み付けた状態について、
図4及び
図5を利用して、さらに詳細に説明する。
【0052】
図4に示すように、プロテクターカバー3は、差込後脚部36に形成した溝36d(
図3参照)を底壁部11のT形係止部11bに差し込んで固定した後、取付前脚部35を前壁部12の取付ボス12bにクリップピン31を介して固定することで、オイルパン1に組み付けられる。なお、この溝は36dは、先端部分では開口幅がT形係止部11bの脚部の厚みよりも広く、差し込みやすくなっているが、奥に行くに従ってT形係止部11bの脚部の厚みよりも狭くなっている。このため、差込方向の荷重が作用すると、摺動抵抗が発生して、この抵抗によって衝撃を吸収できるようになっている。
【0053】
この
図4からも解るように、取付前脚部35がクランク状に屈曲して、差込後脚部36もやや段形状に屈曲しているため、プロテクターカバー3は、オイルパン1の前方斜め下方位置で、オイルパン1からやや浮いた状態で組み付けられる。
【0054】
そして、この浮き量Hは、衝撃吸収インナリブ2の高さhと、僅かな空間sとを合算した値に設定される。この僅かな空間sは、後述するように、プロテクターカバー3が衝撃荷重を受けた際に変形する空間、すなわち変形空間sとして設定している。
【0055】
また、衝撃吸収インナリブ2と、衝撃吸収アウタリブ4とは、ほぼ同じ程度の高さh,h´に設定しており、衝撃荷重を受けた際には、この衝撃吸収インナリブ2と衝撃吸収アウタリブ4とが共に座屈変形することで、衝撃エネルギーを吸収するように構成している。なお、例えば、これらのリブ2,4の高さh,h´は、5〜20mmに設定し、好ましくは5〜10mmに設定することが考えられる。
【0056】
さらに、
図5に示すように、この衝撃吸収インナリブ2と衝撃吸収アウタリブ4は、互いに後面視(前面視)で上下方向でズレて、重なり合わないように、互い違いとなるよう例えば、千鳥配置にしている。このように、ズレて千鳥配置にすることで、後述するように、飛び石等が衝突した際の衝撃吸収性能を高めることができる。
【0057】
なお、例えば、これらのリブ2,4の間隔(ピッチ)p,p´は5〜40mmに設定し、好ましくは10〜30mmに設定することが考えられる。この間隔p,p´は、後述する変形挙動の際に、有効に変形が生じる範囲の間隔であり、あまりに狭すぎると有効な変形挙動が生じず、逆に広すぎると飛び石がリブ2,4の間から侵入してリブ2,4が衝撃吸収しない可能性がある。なお、飛び石の大きさは、例えば、ゴルフボール大(直径30〜50mm)以上を想定している。
【0058】
衝撃吸収アウタリブ4の厚みt´は、衝撃吸収インナリブ2の厚みtよりも肉厚を薄く設定している。このように設定することで、衝撃吸収アウタリブ4の方が座屈変形しやすくなり、確実に、衝撃吸収アウタリブ4から先に変形が生じるようにできる。
【0059】
なお、例えば、衝撃吸収インナリブ2の厚みtは2.5〜3.0mmに設定することが好ましいが、この実施形態では2.5mmに設定している。一方、衝撃吸収アウタリブ4の厚みt´は1.5〜2.0mmに設定することが好ましいが、この実施形態では、1.7mmに設定している。
【0060】
さらに、衝撃吸収アウタリブ4が設けられるプロテクターカバー3の厚みy´も、オイルパン1の厚みyよりも薄肉に設定している。これも、プロテクターカバー3の方が変形しやすくして、オイルパン1よりも確実に先に変形するようにするためである。なお、この実施形態では、プロテクターカバー3の厚みを2.0mmに設定し、オイルパン1の厚みを3.0mmに設定している。
【0061】
次に、このように構成される衝撃吸収構造に飛び石等が衝突した際の変形挙動について、
図6、
図7で説明する。
図6(a)が接触前、
図6(b)が接触初期、
図7(c)が接触中期、
図7(d)が接触後期を示している。
【0062】
図6(a)に示すように、接触前に、プロテクターカバー3は、衝撃吸収インナリブ2との間で所定の変形空間sを保ったまま、オイルパン1の下方位置に位置している。
【0063】
飛び石などの衝突物Zが衝突してくると、
図6(b)に示すように、プロテクターカバー3が後退(上方に移動)して、衝撃吸収アウタリブ4が座屈変形する。このプロテクターカバー3の後退によって、変形空間sが無くなりプロテクターカバー3が衝撃吸収インナリブ2に当接する。この後退の際には、取付前脚部35(
図4参照)が折れ曲がり変形して、差込後脚部36(
図4参照)がスライド移動することで衝撃エネルギーを吸収する。
【0064】
この変形を詳しく説明すると、(1)前方下部位置に飛び石Zが当たる(
図4のα矢印)場合、取付前脚部35のクランク状の部分や平坦部分33の近傍が曲がり、また、差込後脚部36、36が後方にスライドして、更に、差込後脚部36の段形状の部分や平坦領域33の近傍が曲がって、プロテクターカバーがα矢印方向に後退しながら衝撃荷重を吸収する。
【0065】
(2)(1)の場合より前方上部に飛び石Zが当たる(
図4のβ矢印)場合、取付前脚部35のクランク状の部分や平坦領域33の近傍がより大きく曲がって、プロテクターカバーはやや上方側に移動しながら衝撃荷重を吸収する。
【0066】
(3)(1)の場合より後方位置に飛び石Zが当たる(
図4のγ矢印)場合、差込後脚部36、36が後方にスライドしながら衝撃荷重を吸収し、更に、差込後脚部36の段形状の部分や平坦領域33の近傍が大きく曲がり、取付前脚部35のクランク状の部分が下方に伸びてプロテクターカバーが後方側に移動しながら衝撃荷重を吸収する。
【0067】
なお、取付前脚部35と差込後脚部36の屈曲形状は、蛇腹形状であっても良い。
そして、衝撃吸収アウタリブ4が座屈変形することで、さらに大きな衝撃エネルギーを吸収する。
【0068】
そして、さらに衝突物Zがプロテクターカバー3を押圧すると、
図7(c)に示すように、プロテクターカバー3自体が略波形形状に変形する。すなわち、平板状であったプロテクターカバー3の基部32が、波形形状に変形するのである。
【0069】
これは、衝撃吸収アウタリブ4と衝撃吸収インナリブ2が互い違いに千鳥配置されているため、各リブ2,4がそれぞれ突っ張ってプロテクターカバー3の基部32を変形させることにより生じる変形である。このような変形を生じさせることにより、さらに、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0070】
そして、さらに衝突物Zがプロテクターカバー3を押圧すると、
図7(d)に示すように、衝撃吸収インナリブ2がやや遅れて座屈変形する。これは、前述したように、衝撃吸収インナリブ2の厚みtが衝撃吸収アウタリブ4よりも厚く設定され、衝撃吸収アウタリブ4より剛性が高いからである。このように、衝撃吸収インナリブ2が遅れて座屈変形することで、二段階で衝撃エネルギーを吸収することができ、より大きな衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0071】
このように、この衝撃吸収構造によると、衝撃吸収アウタリブ4だけでなく、衝撃吸収インナリブ2も座屈変形するために、二段階で座屈変形が生じて大きな衝撃エネルギーを吸収することができる。そして、その二段階の座屈変形の間にプロテクターカバー3の基部32も、波形形状に変形するため、より大きな衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0072】
以上のように、本実施形態では、オイルパン1の衝撃吸収インナリブ2と、プロテクターカバー3の衝撃吸収アウタリブ4とが、ズレて、互い違いに千鳥配置されているため、衝突時には、プロテクターカバー3の衝撃吸収アウタリブ4で、初期の衝撃吸収も行いながらも、衝撃吸収インナリブ2の座屈変形と衝撃吸収アウタリブ4の座屈変形とが互いに干渉し合うことがない。
【0073】
このため、衝撃吸収インナリブ2による衝撃吸収性能を確保しながらも、衝撃吸収アウタリブ4での衝撃吸収性能を得ることができる。特に、千鳥配置されていることで、プロテクターカバー3の衝撃吸収アウタリブ4を設けた部分が衝撃吸収インナリブ2の間に確実に、喰い込み、プロテクターカバー3の基部32が、略波形形状に変形するため、衝撃エネルギーの吸収量をさらに増加することができる。
【0074】
よって、衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収構造において、リブ2,4の座屈変形を確実に生じさせて、衝撃エネルギーの吸収量を確実に増加させることでき、さらに、効率的に衝撃エネルギーの吸収量を、増加させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、プロテクターカバー3とオイルパン1の衝撃吸収インナリブ2との間に変形空間sを設定したため、プロテクターカバー3が衝突時に押圧されて衝撃吸収インナリブ2の先端に当接するまでは、プロテクターカバー3だけにしか衝撃荷重は作用しない。このため、プロテクターカバー3の変形による衝撃エネルギーの吸収が確実に生じることになる。
【0076】
よって、プロテクターカバー3で効率的に衝撃エネルギーの吸収を行うことができ、全体として衝撃吸収量を増加させることができる。また、入力される衝撃荷重が小さい場合には、プロテクターカバー3のみが変形して、オイルパン1側にはその影響が及ばないため、プロテクターカバー3のみを交換するだけで、衝撃吸収の構造を再度利用することができる。
【0077】
また、本実施形態では、略クランク状に屈曲した取付前脚部35を介してプロテクターカバー3をオイルパン1に固定しているため、プロテクターカバー3は取付前脚部35の変形によっても衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0078】
よって、さらにプロテクターカバー3の衝撃エネルギー吸収量を増やすことができ、オイルパン1側への衝突時の影響を少なくすることができる。
【0079】
また、本実施形態では、プロテクターカバー3をスライド固定の差込後脚部36,36でオイルパン1に固定しているため、衝撃荷重を受けた際は差込後脚部36,36でスライド移動することで摺動抵抗を受けて、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0080】
よって、よりさらに、プロテクターカバー3の衝撃エネルギー吸収量を増やすことができる。
【0081】
また、本実施形態では、衝撃吸収アウタリブ4の厚みt´を衝撃吸収インナリブ2の厚みtよりも薄く設定したことで、衝撃荷重を受けた際に、衝撃吸収アウタリブ4の方が衝撃吸収インナリブ2よりも早く変形する。このため、衝撃吸収アウタリブ4で衝撃吸収がなされた後に、確実に衝撃吸収インナリブ2で衝撃吸収がなされることになる。
【0082】
よって、確実に、衝撃吸収アウタリブ4と衝撃吸収インナリブ2とで、段階的な衝撃吸収を生じさせることができ、衝撃エネルギーの吸収量を確実に増加させることができる。
【0083】
次に、実施形態2に係る衝撃吸収構造について、
図8の断面図を利用して説明する。この衝撃吸収構造も、実施形態1と同様にオイルパン1に採用した衝撃構造であり、実施形態1と同一の構成要素については、同一の符号を付することで説明を省略する。
【0084】
この衝撃吸収構造においては、プロテクターカバー103側に衝撃吸収インナリブ102も形成することで、オイルパン1側にはリブを設けることなく、プロテクターカバー103に衝撃吸収アウタリブ4と衝撃吸収インナリブ102とを各々設けたものである。
【0085】
この実施形態2でも、衝撃吸収アウタリブ4と衝撃吸収インナリブ102とは、互い違いに千鳥配置にしており、実施形態1と同様に、座屈変形時に互いのリブ4,102が干渉し合うことがなく、確実に両リブ4,102で座屈変形が生じる。
【0086】
よって、この実施形態2でも、実施形態1と同様に、リブ4,102の座屈変形を確実に生じさせて、衝撃エネルギーの吸収量を確実に増加させることでき、さらに、効率的に衝撃エネルギーの吸収量を増加させることができる。
【0087】
この実施形態2では、衝撃吸収インナリブ102もプロテクターカバー3側に設けられているため、衝撃吸収アウタリブ4と衝撃吸収インナリブ102が、常に千鳥配置された位置関係になる。したがって、プロテクターカバー103のオイルパン1への取付位置を、比較的自由にすることができる。
【0088】
また、この実施形態2では、座屈変形を生じさせるリブ4,102を共にプロテクターカバー103に設けているため、オイルパン1の材質が樹脂でなくてもよくなり、例えば、鉄やアルミニウムといった別素材にすることもできる。よって、本発明の衝撃吸収構造をさまざまなオイルパン1に適用することができる。
【0089】
さらに、この実施形態2によると、プロテクターカバー103のみが変形して衝撃エネルギーを吸収することになるため、一部品を交換するだけで、補修ができるというメリットもある。
【0090】
以上、実施形態を説明してきたが、本発明は、その目的の範囲を逸脱しない限りにおいて、適宜、変更をしてもよい。
【0091】
なお、以上の実施形態では、オイルパン1自体を本発明のインナパネルとして構成したが、別途1枚のパネルを追加して、衝撃吸収構造を変形可能な2枚のパネル体で構成してもよい。この場合には、インナパネルもさらに大きく変形するようにしてもよい。
【0092】
また、以上の実施形態では、全て千鳥配置としたが、一方のリブ又は双方のリブが1つ飛び等の歯抜け状態で配置された状態であっても、ほぼ同様の効果を奏することができる。
【0093】
なお、アウタリブとインナリブをすべて直線状としたが、衝撃入力方向からみて、重ならない位置であれば、湾曲形状に形成してもよい。
【0094】
また、アウタリブとインナリブは全て平行に形成したが、重ならなければ、個々のリブが角度を異なって形成してもよい。