(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングと、回転軸を中心として回転可能な主軸部と、前記主軸部を回転駆動させる駆動部と、前記主軸部に設けられ、前記回転軸から径方向に離れた偏心軸を中心として回転可能な偏心回転部と、ある部位が前記ハウジングに固着されると共に他の部位が前記偏心回転部の前記偏心軸上に固着され、前記ある部位から前記他の部位へ向ってレーザー光を伝送する光ファイバーと、を有する偏心回転機構と、
前記主軸部と一体となって前記回転軸周りに回転し、被穿孔物を穿孔する穿孔工具であって、前記偏心軸に沿って設けられ、前記光ファイバーにより伝送された前記レーザー光が通る光路となる偏心孔を内部に1つのみ有する穿孔工具と、
前記レーザー光を照射するためのレーザー照射部と、
前記穿孔工具を前記回転軸周りに回転させることにより該回転軸を中心に前記偏心孔のレーザー照射口を回転させつつ、前記レーザー照射部に前記被穿孔物に対してレーザー光を照射させることにより、前記レーザー光が照らす照射スポットを前記回転軸周りに偏心回転させ、
前記照射スポットを偏心回転させることにより形成されるドーナツ形状に強度劣化した前記被穿孔物の部位を、前記駆動部に前記主軸部を回転させることにより前記穿孔工具で穿孔する制御を行なう制御部と、
を備えたことを特徴とする穿孔装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
即ち、ハウジングと、
回転軸を中心として回転可能な主軸部と、
前記主軸部を回転駆動させる駆動部と、
前記主軸部に設けられ、前記回転軸から径方向に離れた偏心軸を中心として回転可能な偏心回転部と、
ある部位が前記ハウジングに固着されると共に他の部位が前記偏心回転部の前記偏心軸上に固着され、前記ある部位から前記他の部位へ向ってレーザー光を伝送する光ファイバーと、
を備えたことを特徴とする偏心回転機構である。
このような偏心回転機構によれば、光ファイバーを用いて偏心軸に沿う光路へ変更しても、偏心回転部が回転するため、光ファイバーが破断するのを抑えることができる。
【0010】
また、かかる偏心回転機構であって、
前記光ファイバーは、
前記ハウジングに固着された前記ある部位に第一直線部を形成し、前記偏心回転部に固着された前記他の部位に第二直線部を形成し、前記第一直線部と前記第二直線部との間に所定の曲率半径を有する曲線部を形成することとしてもよい。
このような偏心回転機構によれば、光ファイバーに直線部を形成することによって、光の直進性を維持することができる。また、光ファイバーに曲線部を形成することによって、簡素化した構造により光路を変更することができる。
【0011】
また、ハウジングと、回転軸を中心として回転可能な主軸部と、前記主軸部を回転駆動させる駆動部と、前記主軸部に設けられ、前記回転軸から径方向に離れた偏心軸を中心として回転可能な偏心回転部と、ある部位が前記ハウジングに固着されると共に他の部位が前記偏心回転部の前記偏心軸上に固着され、前記ある部位から前記他の部位へ向ってレーザー光を伝送する光ファイバーと、を有する偏心回転機構と、
前記主軸部と一体となって前記回転軸周りに回転し、被穿孔物を穿孔する穿孔工具であって、前記偏心軸に沿って設けられ、前記光ファイバーにより伝送された前記レーザー光が通る光路となる偏心孔を内部に有する穿孔工具と、
前記レーザー光を照射するためのレーザー照射部と、
前記レーザー照射部に前記被穿孔物に対してレーザー光を照射させ、前記レーザー光の照射により強度劣化した前記被穿孔物の部位を、前記駆動部に前記主軸部を回転させることにより前記穿孔工具で穿孔する制御を行なう制御部と、
を備えたことを特徴とする穿孔装置である。
このような穿孔装置によれば、被穿孔物を穿孔する際に生ずる騒音や振動を軽減しつつも、穿孔時においてもレーザー光の照射することができるため、作業効率を向上させることが可能となる。また、光ファイバーを用いて偏心軸に沿う光路へ変更しても、偏心回転部が回転するため、光ファイバーが破断するのを抑えることができる。
【0012】
さらに、かかる穿孔装置であって、
前記光ファイバーは、
前記ハウジングに固着された前記ある部位に第一直線部を形成し、前記偏心回転部に固着された前記他の部位に第二直線部を形成し、前記第一直線部と前記第二直線部との間に所定の曲率半径を有する曲線部を形成することとしてもよい。
このような穿孔装置によれば、光ファイバーに直線部を形成することによって、光の直進性を維持することができる。また、光ファイバーに曲線部を形成することによって、簡素化した構造により光路を変更することができる。
【0013】
===第一実施形態===
以下、本発明の実施形態に係る穿孔装置1について説明する。
【0014】
<<<穿孔装置1の構成例について>>>
穿孔装置1の構成例について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、穿孔装置1の構成例を示す概略図である。
図2は、穿孔装置1の構成例を示すブロック図である。なお、
図1において、右図は穿孔装置1の側面図であり、左図は穿孔装置1のうちのスピンドルユニット10のみを正面図にしたものであって、各図とも一部を断面図で示したものである。
【0015】
本実施の形態に係る穿孔装置1は、コンクリート(鉄筋を含むコンクリート等)や岩石等の被穿孔物2に対しレーザー光を照射することにより強度劣化した当該被穿孔物2の部位を穿孔するためのものである。
【0016】
この穿孔装置1は、
図1及び
図2に示すように、穿孔ユニットの一例としてのスピンドルユニット10と、レーザー照射部の一例としてのレーザー照射ユニット40と、給気を行うための給気ユニット50と、排気を行うための排気ユニット60と、スライド部の一例としてのスライドユニット70と、操作ユニット80と、センサー群90と、これらのユニット等を制御し穿孔装置1としての動作を司る制御部の一例としてのコントローラー100と、を有している。
【0017】
<<スピンドルユニット10>>
本実施の形態に係る穿孔装置1に備えられたスピンドルユニット10の構成例について、
図3乃至
図5を用いて説明する。
図3は、スピンドルユニット10の構成例を示す概略図である。
図4は、ドリル11の構成例を説明する図である。なお、
図4において、左上図はドリル11の正面図、右上図はドリル11の側面図(横断面図)を示し、左下図は右下図のB−B断面図、右下図は右上図のA−A断面図を示している。
図5は、レーザー光を照射した被穿孔物2の部位について説明する図である。なお、
図5において、上図はドリル11の断面を示しており、下図は被穿孔物2の上面(レーザー光が照射される表面)を示している。
【0018】
スピンドルユニット10は、ドリル11を回転させて被穿孔物2に孔を形成するためのものである。このスピンドルユニット10は、
図3に示すように、穿孔工具の一例としてのドリル11と、ドリル11を保持するための工具保持部16と、工具保持部16を保持すると共に工具保持部16及びドリル11と一体となって回転可能な主軸部19と、主軸部19を回転駆動させる駆動部の一例としてのモーター22と、工具保持部16及び主軸部19を回転可能に支持しつつ複数のボルトによりスライドベース71に取り付けられたハウジング25と、を有している。
【0019】
<ドリル11>
ドリル11は、工具保持部16を介して主軸部19と一体となって回転しながら刃先を被穿孔物2に押し当てることにより、当該被穿孔物2に孔を形成する工具である。このドリル11は、
図3に示すように、主軸部19の回転軸19CLと同心である回転軸11CLを中心として回転するものであって、この回転軸11CL(回転軸19CL)から径方向に偏心された仮想直線13a、14aに沿って設けられた2つの偏心孔(第一偏心孔13、第二偏心孔14)を内部に有している。
【0020】
第一偏心孔13は、ドリル11の軸方向に貫通して設けられており、レーザー照射ユニット40により被穿孔物2に対して照射されるレーザー光が通る光路となると共に、給気ユニット50により供給されるエアーが通る給気路となるものである。そして、この第一偏心孔13は、ドリル11を正面から見ると分かるように(
図4の左上図参照)、エアーを流出させる給気出口13bに繋がっている。この給気出口13bは、レーザー光を被穿孔物2に照射するためのレーザー照射口13bを兼ねている。
【0021】
第二偏心孔14は、ドリル11の軸方向に貫通して設けられており、排気ユニット60により排気される切粉(被穿孔物2を穿孔することによって発生する)がエアーと共に通る排気路となる。そして、この第二偏心孔14は、ドリル11を正面から見ると分かるように(
図4の左上図参照)、エアーを流入させる排気入口14bに繋がっている。
【0022】
したがって、給気路としての第一偏心孔13を通過したエアーが給気出口13bから被穿孔物2に向って流出すると、被穿孔物2を穿孔することにより発生する切粉がエアーと共に排気入口14bから瞬時に吸引され、排気路としての第二偏心孔14を通じて排気されることになる。また、光路としての第一偏心孔13を通過したレーザー光がレーザー照射口13b(給気出口13b)から被穿孔物2に向って照射されると、レーザー光に照らされた被穿孔物2の部位の強度が低下(強度劣化)するため、ドリル11は小さなトルクで被穿孔物2の当該部位を切削することができる。
【0023】
ドリル11は、
図4に示すように、第一偏心孔13と第二偏心孔14とを連通させる連通孔15を先端付近に有している。このため、第一偏心孔13から供給されるエアーを瞬間的に停止させた状態で、発生した切粉を排気する場合には、排気入口14bのみならず給気出口13bからも切粉を吸引することができるようになるため、一度に多くの切粉を第二偏心孔14に導くことが可能となる。
【0024】
ここで、被穿孔物2に対してレーザー光を照射する際、以下のような問題が生じる虞がある。すなわち、ドリル11を用いて被穿孔物2を穿孔するときに多数の切粉が発生するため、これらの切粉がレーザー照射口13b(給気出口13b)から照射されるレーザー光を遮ることで、照射されるべき被穿孔物2の部位(強度劣化させたい部位)にレーザー光が十分に届かない虞がある。そして、レーザー光を遮る多数の切粉は、レーザー光に照らされて瞬時にガスを発生させる。発生したガスは、レーザー光に照らされることによりプラズマとなって周囲に飛散する。そして、このプラズマは、ドリル11内の偏心孔13、14に付着すると、付着したその部分を溶かしてしまう虞がある。
【0025】
しかしながら、本実施形態におけるドリル11は、上述したように、第一偏心孔13を通じてレーザー光を照射するのみならずエアーも供給し、かつ、第二偏心孔14を通じて発生した切粉をエアーと共に吸引しているため、当該切粉が第一偏心孔13へ逆流するのを抑えて、瞬時に当該切粉を第二偏心孔14へ排出することにより、当該切粉がレーザー光を遮ることを抑制することができる。なお、レーザー光を照射するためのレーザー照射ユニット40、エアーを供給するための給気ユニット50、及び、切粉をエアーと共に排気するための排気ユニット60の具体的構成については、追って詳述する。
【0026】
そして、ドリル11は、先端に刃先部12を有している。刃先部12は、
図4の左上図に示すように、2枚の切刃12a、12bを連ねてチゼル部分を形成してなる。このため、被穿孔物2を切削する際、各切刃12a、12bに均等な力を加えることができるため、切削バランスが良い。この刃先部12は、ドリル11本体にネジ止めされている。このため、磨耗等により劣化した際には、劣化後の刃先部12をドリル11本体から取り外し、劣化前の良好な刃先部12に交換することが可能となる。
【0027】
なお、本実施形態では、2枚の切刃12a、12bを用いて1つの刃先部12を形成しているが、これに限られるものではない。たとえば、4枚の切刃を用いて2つの刃先部12を形成し、この2つの刃先部12を十字状に配置するようにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、刃先部12はドリル11本体に対して着脱可能にネジ止めさているが、これに限られるものではない。たとえば、ロウ付け等によりドリル11本体と一体となるように構成してもよい。
【0029】
<工具保持部16>
工具保持部16は、チャック16cによりドリル11を着脱可能に保持し、同心の回転軸11CL回りにドリル11と一体となって回転するものである。この工具保持部16は、
図3に示すように、主軸部19の貫通孔20及び第一偏心孔13に連通する第一孔部17と、第二偏心孔14に連通する第二孔部18と、を内部に有し、エアー導入口である給気入口16aと、切粉及びエアー排出する排気出口16bと、を外周面に有している。
【0030】
第一孔部17は、レーザー照射ユニット40により被穿孔物2に対して照射されるレーザー光が通る光路となると共に、給気ユニット50により供給されるエアーが通る給気路となるものである。
【0031】
この第一孔部17は、
図3に示すように、仮想直線13aに沿って設けられた縦孔17aと、仮想直線13aに対して直交する横孔17bからなる。
【0032】
縦孔17aは、第一偏心孔13を通じて給気出口13bに繋がり、横孔17bは、給気入口16aに繋がっている。したがって、給気入口16aから導入されたエアーは、横孔17bを経由して縦孔17aに流入し、第一偏心孔13を通じて給気出口13bから流出することになる。
【0033】
また、この縦孔17aは、主軸部19の貫通孔20及び第一偏心孔13に接続されている。したがって、主軸部19の貫通孔20を通過したレーザー光は、縦孔17aを経由して第一偏心孔13に到達し、第一偏心孔13のレーザー照射口13b(給気出口13b)から照射されることになる。
【0034】
第二孔部18は、排気ユニット60により排気される切粉(被穿孔物2を穿孔することによって発生する)がエアーと共に通る排気路となる。この第二孔部18は、
図3に示すように、仮想直線13aに沿って設けられた縦孔18aと、仮想直線13aに対して傾きをなした傾斜孔18bからなる。
【0035】
縦孔18aは、第二偏心孔14を通じて排気入口14bに繋がり、傾斜孔18bは、排気出口16bに繋がっている。したがって、排気入口14bから吸引された切粉及びエアーは、第二偏心孔14を経由して縦孔18aに流入し、傾斜孔18bを通じて排気出口16bから排出されることになる。
【0036】
ここで、本実施形態における工具保持部16では、第一偏心孔13に供給するエアーを、仮想直線13aに対して直交する横孔17bを通じて給気する一方で、第二偏心孔14から排出するエアーを、仮想直線14aに対して傾きをなした傾斜孔18bを通じて排気するようにしている。これは、第二偏心孔14からエアーを排出する際、穿孔時に発生する切粉も同時に排出されるため、切粉が第二偏心孔14を経由して第二孔部18に到達したときに、直角よりも緩やかな傾斜角を持つ傾斜孔18bを通過することによって排出し易くなり、切粉が内部に詰まるのを抑制することができるからである。
【0037】
<主軸部19>
主軸部19は、ドリル11を保持する工具保持部16を保持し、モーター22を駆動源として回転軸19CL周りに工具保持部16と一体となって回転するものである。すなわち、主軸部19がモーター22の駆動により回転すると、ドリル11も主軸部19と一体となって同心の回転軸周りに回転する。
【0038】
この主軸部19は、
図3に示すように、回転軸19CLの軸方向に貫通する貫通孔20と、貫通孔20の内周面に第一プリズム42a及び第二プリズム42bを支持する支持部19aと、外周面に取付けられたプーリー21と、を有している。
【0039】
貫通孔20は、レーザー照射ユニット40により被穿孔物2に対して照射されるレーザー光が通る光路となるものである。この貫通孔20は、
図3に示すように、第一孔部17に接続されている。したがって、貫通孔20を通過したレーザー光は、第一孔部17(縦孔17a)を経由して第一偏心孔13に到達し、第一偏心孔13のレーザー照射口13b(給気出口13b)から照射されることになる。
【0040】
支持部19aは、
図3に示すように、回転軸19CLに沿う光路を通るレーザー光の光軸と第一プリズム42aの入射面とが直交するように第一プリズム42aを支持し、かつ、第一プリズム42aの出射面から出射したレーザー光の光軸と第二プリズム42bの入射面とが直交するように第二プリズム42bを支持している。これにより、主軸部19が回転した場合であっても、回転軸19CLに沿う光路を通るレーザー光を、仮想直線13aに沿う光路を通るレーザー光に整形させることができる。このため、貫通孔20を通過したレーザー光は、そのまま直進することにより、第一孔部17に進入することができる。
【0041】
プーリー21は、主軸部19と一体になって回転可能に取付けられており、モーター22の駆動軸の先端にはプーリー23が嵌着されている。そして、プーリー21、23の間には、ループ状の駆動ベルト24が架け渡されている。したがって、モーター22が回転すると、駆動ベルト24を介して動力が伝達され、主軸部19は回転軸19CLを中心として回転することができる。このため、主軸部19の回転に連動してドリル11が回転することによって、ドリル11の刃先が接触する被穿孔部2の部位を切削することができる。
【0042】
<ハウジング25>
ハウジング25は、工具保持部16及び主軸部19を回転可能に支持し、スライドベース71に対し回転不能に固定されるものであり、ハウジング部材25Aと、ハウジング部材25Bと、ハウジング部材25Cと、を有している。
【0043】
ハウジング部材25Aは、内周面に設けられた軸受け部材26と、給気用環状溝部27と、排気用環状溝部28と、を有している。このハウジング25Aは、
図3に示すように、その内部において工具保持部16を収容し、その工具保持部16を軸受け部材26により回転可能に支持している。
【0044】
給気用環状溝部27は、工具保持部16の外周面に沿う環状の空間を形成し、給気ポートから送られたエアーを給気入口16aへ導くためのガイドとして機能するものである。すなわち、
図3に示すように、給気用環状溝部27の上下方向における位置を給気入口16aの上下方向における位置に一致させることにより、工具保持部16の回転中に給気入口16aがどの方向を向いても給気できるようになっている。
【0045】
排気用環状溝部28は、工具保持部16の外周面に沿う環状の空間を形成し、傾斜部18bを経由して排気出口16bから飛び出した切粉及びエアーを排気ポートへ導くためのガイドとして機能するものである。すなわち、
図3に示すように、排気用環状溝部28の上下方向における位置を排気出口16bの上下方向における位置に一致させることにより、工具保持部16の回転中に排気出口16bがどの方向を向いても排気できるようになっている。
【0046】
ハウジング部材25Bは、内周面に設けられた2つの軸受け部材29、30と、切欠部31と、を有している。このハウジング25Bは、
図3に示すように、その内部において主軸部19を収容し、その主軸部19を2つの軸受け部材29、30により回転可能に支持している。切欠部31は、駆動ベルト24との干渉を回避するためのものである。
【0047】
ハウジング部材25Cは、光ファイバー41を固定する固定部32と、コリメーションレンズ43を保持するレンズ保持部33と、を有している。
【0048】
固定部32は、光ファイバー41の端部を回転軸19CLに沿わせて固定し、レーザー光の直進性を維持するためのものである。
【0049】
レンズ保持部33は、回転軸19CL上に配置されたコリメーションレンズ43を保持するものである。このため、コリメーションレンズ43を通過したレーザー光は、回転軸19CLに沿う平行光線に変換される。
【0050】
<<レーザー照射ユニット40>>
レーザー照射ユニット40は、被穿孔物2にレーザー光を照射するためのものである。このレーザー照射ユニット40は、不図示のレーザー光源と、伝送部の一例としての光ファイバー41と、光路を変更する光路変更部42と、光学レンズの一例としてのコリメーションレンズ43と、を有している。
【0051】
<光ファイバー41>
光ファイバー41は、レーザー光源から発せられたレーザー光を伝送するものであり、中心のコアを樹脂等で被覆して構成される。
【0052】
<光路変更部42>
光路変更部42は、ある光路から入射した光線を他の光路へ向けて出射させるものであり、第一プリズム42aと第二プリズム42bを有している。
【0053】
本実施形態においては、先ず、第一プリズム42aが、回転軸19CLに沿う方向から入射したレーザー光を、回転軸19CL側から仮想直線13a側に向う方向に屈折させて出射する。次に、第二プリズム42bが、第一プリズム42aから出射されたレーザー光を入射させ、入射したレーザー光を仮想直線13aに沿う方向に屈折させて出射する。これにより、回転軸19CLに沿う光路を通るレーザー光を、仮想直線13aに沿う光路を通るレーザー光に整形させることができるため、レーザー照射ユニット40は、レーザー照射口13b(給気出口13b)から被穿孔物2に向けてレーザー光を照射することができるようになる。したがって、レーザー光源から発せられたレーザー光が、主軸部19の貫通孔20→工具保持部16の第一孔部17→ドリル11の第一偏心孔13、の順に通過することにより、光路が形成されることになる。
【0054】
このようにして、被穿孔物2に向けてレーザー光を照射する際、ドリル11が回転軸11CL周りに回転すると、レーザー照射口13b(給気出口13b)も回転軸13CLを中心にして回転するため、
図5に示すように、レーザー光が照射された被穿孔物2の部位はドーナツ形状(レーザー光が照らす照射スポット(円形)を回転軸11CL周りに偏心回転させることにより形成される形状)に強度劣化される。すなわち、レーザー光の照射スポット(円形)の直径はドリル穴の半径(ドリル11の半径)より小さくても、ドリル穴の直径(ドリル11の直径)とほぼ同じ広い範囲を照射することが可能となる。
【0055】
<コリメーションレンズ43>
コリメーションレンズ43は、光ファイバー41からのレーザー光を平行光線に変換するためのものである。このように、被穿孔物2に照射するレーザー光を平行光線にすることで、レーザー光が照らす照射範囲を点から面へ広げることができるため、レーザー光により照らされる被穿孔物2の部位を効率良く強度劣化させることが可能となる。
【0056】
<<給気ユニット50>>
給気ユニット50は、ドリル11内にエアーを供給して給気出口13bからエアーを流出させるためのものであり、給気部の一例としての空気供給部(不図示)を有している。空気供給部は、給気用ファン等により圧縮空気を送るためのものであり、給気ポートを介してハウジング25Bに接続されている。このため、空気供給部から供給された圧縮空気が、給気用環状溝部27→工具保持部16の横孔17b→工具保持部16の縦孔17a→ドリル11の第一偏心孔13、の順に通過することにより、給気路が形成されることになる。
【0057】
<<排気ユニット60>>
排気ユニット60は、ドリル11の切削により発生した切粉をエアーと共に排気入口14bから吸引して排気するものであり、排気部の一例としての空気吸引部(不図示)を有している。空気吸引部は、排気用ファン等によりエアーを吸引するものであり、排気ポートを介してハウジング25Bに接続されている。このため、空気吸引部によって吸引された切粉及びエアーが、ドリル11の第二偏心孔14→工具保持部16の縦孔18a→工具保持部16の傾斜孔18b→排気用環状溝部28、の順に通過することにより、排気路が形成されることになる。
【0058】
<<スライドユニット70>>
スライドユニット70は、スピンドルユニット10を上下方向に移動させるものであり、回転するドリル11を上下方向下側へ直進させることにより被穿孔部2にドリル穴を深く掘り下げていくことができる。このスライドユニット70は、
図1に示すように、スライドベース71と、スライド機構72と、を有している。スライドベース71にはスピンドルユニット10が複数のボルトによって固定されているため、スライドベース71はこのスピンドルユニット10一体となって上下方向にスライドすることができる。スライド機構72は、スライドベース2に固定されたスピンドルユニット10を上下方向に案内するためのガイド(不図示)と、ガイドに沿ってスピンドルユニット10を上下方向に直進駆動させるためのモーター(不図示)と、を有している。
【0059】
<<操作ユニット80>>
操作ユニット80は、操作者が操作入力を行うためのものであり、操作画面等の表示部及び操作ボタン等の操作部によって構成されている。操作部は、ドリル11の回転開始・停止させる操作入力や、ドリル11の回転速度、ドリル11による掘り下げ量(ドリル穴の深さ)、レーザー光の照射時間等を設定するための操作入力を受け付けるものである。この操作部から入力された操作情報は、コントローラー100に送信される。
【0060】
<<センサー群90>>
センサー群90は、穿孔装置1内の状況を監視するものであり、例えば、スピンドルユニット10の回転量を検出しドリル11の回転速度の制御に利用されるエンコーダーや、ドリル11(スライドベース71)の上下方向における位置を検出しドリル11による掘り下げ量の制御に利用されるセンサーなどがある。
【0061】
<<コントローラー100>>
コントローラー60は、穿孔装置1の制御を行うための制御ユニットである。このコントローラー60は、CPUと、メモリーと、ユニット制御回路と、を有している。CPUは、穿孔装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリーは、CPUのプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPUは、メモリーに格納されているプログラムに従ったユニット制御回路により各ユニットを制御する。
【0062】
<<<穿孔装置1の動作について>>>
次に、穿孔装置1の動作例について、説明する。
本実施形態にかかる穿孔装置1を用いた穿孔動作(穿孔方法)は、被穿孔物2にレーザー光を照射する工程と、レーザー光の照射により強度を低下させた脆弱層を被穿孔物2に形成する工程と、当該脆弱層をドリル11により切削する工程と、切削により発生した切粉を除去する工程と、を有している。そして、これらの工程を1サイクルとして繰り返すことによって、被穿孔物2に深いドリル穴を形成することができる。
【0063】
各工程における穿孔装置1の各種動作は、主としてコントローラー100により実現される。特に、本実施の形態においては、メモリーに格納されたプログラムをCPUが処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0064】
先ず、コントローラー100は、操作者の操作に応じてドリル11を回転させる。すなわち、コントローラー100は、操作ユニット80からドリル11の回転を開始させる操作信号を受け取ると、モーター22を駆動させてスピンドルユニット10を予め設定した回転速度で回転させる。本実施形態におけるドリル11の回転速度は、100rpm〜1000rpmの範囲内の値に予め設定されている。この際、コントローラー100は給気ユニット50、排気ユニット60、及びレーザー照射ユニット40も同時に作動させる。
【0065】
次いで、コントローラー100は、操作者の操作に応じてドリル11を上下方向下側へスライドさせる。すなわち、コントローラー100は、スライドユニット70のモーターを駆動させてドリル11をガイドに沿って上下方向下側へスライドさせる。そして、スライドしたドリル11の刃先が被穿孔物2に接触すると、ドリル11は回転しているため刃先部12により被穿孔物2の表面を削ることができる。
【0066】
このとき、この被穿孔物2の表面には、レーザー照射ユニット40によるレーザー光の照射によってドーナツ状の脆弱層が形成されているため(
図5の下図参照)、ドリル11は被穿孔物2を容易に削ることができ、切削により生ずる騒音や振動を抑えることが可能となる。
【0067】
なお、このドーナツ状の脆弱層は、レーザー光の照射による温度上昇に伴い強度劣化して形成されたものであり、完全に溶融化(ガラス化)する前の状態にある。すなわち、本実施形態におけるレーザー光の出力は、脆弱層を完全に溶融化させない程度の大きさに予め設定されているため(0.5kw〜5.0kwの範囲内の値に予め設定されているため)、当該脆弱層は、上述した回転速度(100rpm〜1000rpmの範囲内の値)で回転軸11CL周りに偏心回転するレーザー光の照射を受けても、完全に溶融化することはない。したがって、ドリル11は、レーザー光の照射を受けた当該脆弱層を連続して切削することができるため、穿孔速度を高めることが可能となる。
【0068】
また、このとき、この切削により発生する切粉は、給気ユニット50により給気出口13bからエアーが流出すると、排気ユニット60により排気入口14bから瞬時に吸引されるため(
図5参照)、切粉のプラズマ化等の悪影響を抑えることができると共に、切粉が周囲に飛散するのを軽減することが可能となる。
【0069】
次いで、コントローラー100は、被穿孔物2に空けられたドリル穴の深さをセンサー群90からの検出信号に基づき計測し、そのドリル穴の深さが予め設定した掘り下げ量に達したか否かを判定する。そして、コントローラー100は、予め設定した掘り下げ量に達した場合には、スピンドルユニット10が上下方向上側へ移動するようにスライドユニット70のモーターを駆動させる。これにより、被穿孔物2からドリル11が引き抜かれて、予め設定した深さ(掘り下げ量)のドリル穴が形成される。
【0070】
一方、コントローラー100は、予め設定した掘り下げ量に達していない場合には、引き続き各ユニットを作動させて、穿孔動作を継続させる。
【0071】
次いで、コントローラー100は、操作ユニット80からドリル11の回転を停止させる操作信号を受け取ると、モーター22の駆動を停止させてスピンドルユニット10の回転を停止させる。この際、コントローラー100は、給気ユニット50、排気ユニット60、及びレーザー照射ユニット40についても同時にその動作を停止させる。
【0072】
なお、上記の動作例においては、コントローラー100は、ドリル11の回転中、レーザー照射ユニット40にレーザー光を連続照射させているが、これに限定されない。
【0073】
たとえば、コントローラー100は、ドリル11の回転中に、レーザー光の照射を一時的に停止させる制御を行ってもよい。具体的には、たとえば深さ20mmのドリル穴を被穿孔物2に空ける場合、コントローラー100は、200rpm〜300rpmの回転速度でドリル11を回転させる。そして、当該ドリル11が1回転するまでに1.0kwの出力で7mmのビーム径を持つレーザー光を照射させ、その後、当該レーザー光の照射を一時的に停止させる。この1回転の間に、被穿孔物2にはドーナツ状の脆弱層(例:厚さ2mm)が形成される。つまり、このときの回転速度は、200〜300rpmであるから、100rpm〜1000rpmの範囲内の値となり、このときのレーザー出力は、1.0kwであるから、0.5kw〜5.0kwの範囲内の値となる。このため、当該脆弱層は、完全に溶融化する手前の状態となる。そして、コントローラー100は、引き続きドリル11を回転させながら下降させて、ドリル穴を2mm掘り下げた場合に(センサー群90からの検出情報に基づき、ドリル11が2mm下降したことを検出した場合に)、ドリル11が次の1回転するまで再び当該レーザー光を照射させるようにする。このようにドリル穴を2mm掘り下げると、すでに形成された脆弱層がドリル11により全て削り取られるため、次の1回転の間に再び当該レーザー光を照射することによって新たな脆弱層を形成することができる。これを繰り返すことにより、騒音・振動を軽減させつつ、深さ20mmのドリル穴を被穿孔物2に形成することが可能となる。
【0074】
<<<本実施の形態に係る穿孔装置1の有効性について>>>
上述したとおり、本実施形態に係る穿孔装置1に備えられたスピンドルユニット10は、回転軸19CLを中心として回転可能な主軸部19と、主軸部19を回転駆動させるモーター22と、主軸部19と一体となって回転軸19CL周りに回転し、被穿孔物2を穿孔するドリル11であって、回転軸19CLから径方向に偏心された仮想直線13aに沿って設けられ、被穿孔物2を照射するレーザー光が通る光路となる第一偏心孔13を内部に有するドリル11と、を備えている。そして、このことにより、被穿孔物2を穿孔する際に生ずる騒音や振動を軽減しつつも、穿孔時においてもレーザー光の照射することができるため、作業効率を向上させることが可能となる。また、回転軸19CLから径方向に偏心された第一偏心孔13を通じてレーザー光を照射しても、ドリル11が回転軸19CL周りに回転するため(第一偏心孔13が回転軸19CL周りに偏心回転するため)、より広い範囲に照射することができる。
【0075】
また、本実施形態においては、第一偏心孔13は、レーザー光の光路となると共に、被穿孔物2へ向う噴射されるエアーを供給する給気路となるものであり、第一偏心孔13と異なる第二偏心孔14は、被穿孔物2をドリル11で穿孔することによって発生した切粉をエアーと共に排気する排気路となることとした。そのため、被穿孔物2を穿孔する際に生ずる騒音や振動を軽減することができると共に、穿孔により発生する切粉が周囲に飛散するのを軽減することができる。また、ドリル穴に切粉が詰まるのを回避できる。また、プラズマ化した切粉が第一偏心孔13、第二偏心穴14に付着するのを抑えて、ドリル11の劣化を軽減することができる。
【0076】
===第二実施形態===
次いで、本発明の第二実施形態に係る穿孔装置1について説明する。
【0077】
<<<穿孔装置1の構成例について>>>
第二実施形態に係る穿孔装置1は、上述した第一実施形態に係る穿孔装置1と同様に、スピンドルユニット10と、レーザー照射ユニット40と、給気ユニット50と、排気ユニット60と、スライドユニット70と、操作ユニット80と、センサー群90と、コントローラー100と、を有している。
しかしながら、第二実施形態に係る穿孔装置1においては、スピンドルユニット10及びレーザー照射ユニット40の構成が、第一実施形態に係る穿孔装置1のものと異なる。
従って、第一実施形態とは異なる構成のスピンドルユニット10及びレーザー照射ユニット40について、具体的に説明する。
【0078】
<<スピンドルユニット10>>
本実施の形態に係る穿孔装置1に備えられたスピンドルユニット10の構成例について、
図6を用いて説明する。
図6は、スピンドルユニット10の他の構成例を示す概略図である。
【0079】
スピンドルユニット10は、ドリル11を回転させて被穿孔物2に孔を形成するためのものである。このスピンドルユニット10は、穿孔工具の一例としてのドリル11と、ドリル11を保持するための工具保持部16と、工具保持部16を保持すると共に工具保持部16及びドリル11と一体となって回転可能な主軸部19と、主軸部19を回転駆動させる駆動部の一例としてのモーター22と、工具保持部16及び主軸部19を回転可能に支持しつつ複数のボルトによりスライドベース71に取り付けられたハウジング25と、を有している。
【0080】
なお、本実施形態におけるスピンドルユニット10においては、上記の各構成部品のうち、ドリル11と工具保持部16とを除いた各構成部品により偏心回転機構を形成している。この偏心回転機構によれば、光ファイバー41を用いて回転軸19CLから偏心回転軸190CLに沿う光路へ変更しても、偏心回転部190が自らも回転するため、光ファイバー41が曲げ応力等の作用を受けて破断するのを抑制することができる。偏心回転部190等の具体的構成については、追って詳述する。
【0081】
第二実施形態に係るスピンドルユニット10においては、主軸部19及びハウジング25の構成が、上述した第一実施形態に係るスピンドルユニット10のものと異なるため、主軸部19及びハウジング25について、具体的に説明する。
【0082】
<主軸部19>
主軸部19は、ドリル11を保持する工具保持部16を保持し、モーター22を駆動源として回転軸19CL周りに工具保持部16と一体となって回転するものである。すなわち、主軸部19がモーター22の駆動により回転すると、ドリル11も主軸部19と一体となって同心の回転軸周りに回転する。
【0083】
この主軸部19は、
図6に示すように、外周面に取付けられたプーリー21と、コリメーションレンズ43を保持するレンズ保持部33と、回転軸19CLから径方向に離れた偏心回転軸190CL周りに回転する偏心回転部190と、を有している。
【0084】
偏心回転部190は、
図6に示すように、2つの軸受け部材191、192を有しており、光ファイバー41の直線部41cを偏心回転軸190CL周りに回転可能に支持するものである。この偏心回転軸190CLは、回転軸19CLから径方向に離れた位置に設定されている。そして、偏心回転部190は、偏心回転軸190CLとレーザー光の光軸とが一致するように光ファイバー41の直線部41cを支持し、レーザー光の直進性を維持させている。
【0085】
また、偏心回転部190は、主軸部19に設けられているため、モーター22の駆動により主軸部19が回転軸19CL周りに回転すると、これに連動して回転軸19CL周りに偏心回転する。このため、光ファイバー41の直線部41cから出射したレーザー光は、主軸部19がドリル11と一体となって回転軸19CL周りに回転しても、偏心回転軸190CLと仮想直線13aとが常に一致するため、ドリル11の第一偏心孔13を通過することができる(
図6では、レーザー光が工具保持部16の第一孔部17(縦孔17a)を通過してドリル11の第一偏心孔13に到達する構成は省略されている)。
【0086】
プーリー21は、主軸部19と一体になって回転可能に取付けられており、モーター22の駆動軸の先端にはプーリー23が嵌着されている。そして、プーリー21、23の間には、ループ状の駆動ベルト24が架け渡されている。したがって、モーター22が回転すると、駆動ベルト24を介して動力が伝達され、主軸部19は回転軸19CLを中心として回転することができる。このため、主軸部19の回転に連動してドリル11が回転することによって、ドリル11の刃先が接触する被穿孔部2の部位を切削することができる。
【0087】
レンズ保持部33は、
図6に示すように、コリメーションレンズ43を通過するレーザー光の光軸と偏心回転軸190CLとが一致するように、コリメーションレンズ43を保持するものである。そして、コリメーションレンズ43を通過したレーザー光は、回転軸19CLに沿う平行光線に変換される。
【0088】
このレンズ保持部33は、主軸部19に設けられているため、モーター22の駆動により主軸部19が回転軸19CL周りに回転すると、これに連動して回転軸19CL周りに偏心回転する。このため、レンズ保持部33は、主軸部19がドリル11と一体となって回転軸19CL周りに回転しても、コリメーションレンズ43により変換された平行光線をドリル11の第一偏心孔13に入射させることができる。
【0089】
<ハウジング25>
ハウジング25は、工具保持部16及び主軸部19を回転可能に支持し、スライドベース71に対し回転不能に固定されるものであり、ハウジング部材25Aと、ハウジング部材25Bと、ハウジング部材25Cと、を有している。
【0090】
第二実施形態に係るハウジング25においては、ハウジング部材25B及びハウジング部材25Cの構成が、上述した第一実施形態に係るハウジング25のものと異なるため、ハウジング部材25B及びハウジング部材25Cについて、具体的に説明する。
【0091】
ハウジング部材25Bは、
図6に示すように、その内部において主軸部19を収容し、その主軸部19を内周面に設けられた軸受け部材29により回転可能に支持している。また、ハウジング部材25Bは、駆動ベルト24との干渉を回避するための切欠部31を有している。
【0092】
ハウジング部材25Cは、光ファイバー41の直線部41aを固定する固定部32を有している。固定部32は、レーザー光の光軸と回転軸19CLとが一致するように光ファイバー41の直線部41aを固定し、レーザー光の直進性を維持させている。
【0093】
<<レーザー照射ユニット40>>
レーザー照射ユニット40は、被穿孔物2にレーザー光を照射するためのものである。このレーザー照射ユニット40は、不図示のレーザー光源と、伝送部の一例としての光ファイバー41と、を有している。
【0094】
第二実施形態に係るレーザー照射ユニット40においては、光ファイバー41自体が光路を変更させる光路変更部としての機能を兼ねているため、上述した第一実施形態に係るレーザー照射ユニット40のものと異なる。従って、第二実施形態に係る光ファイバー41について、具体的に説明する。
【0095】
<光ファイバー41>
光ファイバー41は、レーザー光源から発せられたレーザー光を伝送するものであり、中心のコアを樹脂等で被覆して構成される。この光ファイバー41は、
図6に示すように、ハウジング部材25Cの固定部32に固定される部位に直線部41a(第一直線部)を有し、かつ、偏心回転部190に回転可能に支持される端部に直線部41c(第二直線部)を有している。そして、この光ファイバー41は、直線部41aと直線部41cとの間の部位に所定の曲率半径を有する曲線部41bを有している。
【0096】
直線部41aは、
図6に示すように、光ファイバー41の部位を所定の厚みを持つ固定部32に固定することによって形成され、主軸部19の回転軸19CLに沿っている。そして、この直線部41aは、レーザー光がハウジング25内に進入する際に、その光の直進性を維持させることができる。
【0097】
直線部41cは、
図6に示すように、光ファイバー41の端部を所定の厚みを持つ偏心回転部190に固定することによって形成され、偏心回転軸190CL(仮想直線13a)に沿っている。そして、直線部41cは、レーザー光がコリメーションレンズ43に向けて出射する際に、その光の直進性を維持させることができる。
【0098】
曲線部41bは、
図6に示すように、直線部41aと直線部41cとの間の部位を弛ませた状態にすることにより形成されている。すなわち、直線部41aと直線部41cとの間の部位が湾曲するように、直線部41a及び直線部41cの上下方向における固定位置を設定している。
【0099】
ここで、直線部41a及び直線部41cを固定することによって、このような曲線部41bを形成すると、モーター22の駆動により主軸部19が回転軸19CL周りに回転したときに、直線部41aは固定部32により回転軸19CL上において固定される一方で、直線部41cは偏心回転部190と一体となって回転軸19CL周りに偏心回転するため、光ファイバー41の曲線部41bにおいてねじれが生じてしまう。
【0100】
しかしながら、直線部41aは固定部32に回転不能に固定されているものの、直線部41cは偏心回転部190に偏心回転軸190CL周りに回転可能に支持されている。このため、曲線部41bにねじれが生じたとしても、直線部41cが偏心回転軸190CL周りに回転(自転)することによって生じたねじれを解消することができるため、光ファイバー41が破断することはない。
【0101】
また、曲線部41bは、光ファイバー41を曲げた際に所定の曲率半径をもつ円弧形状となるように形成されている。この所定の曲率半径は、光ファイバー41を湾曲させても破断しない範囲内に設定している。このため、主軸部19を回転させることにより曲線部41bが回転軸19CLを中心として偏心回転しても、光ファイバー41は破断することはない。
【0102】
また、曲線部41bは、回転軸19CLに沿う光路を通るレーザー光を、仮想直線13aに沿う光路を通るレーザー光に整形させる光路変更部として機能する。このため、レーザー照射ユニット40は、光ファイバー41を通過したレーザー光を、レーザー照射口13b(給気出口13b)から被穿孔物2に向けて照射することができるようになる。
【0103】
このようにして、被穿孔物2に向けてレーザー光を照射する際、ドリル11が回転軸11CL周りに回転すると、レーザー照射口13b(給気出口13b)も回転軸13CLを中心にして回転するため、
図5に示すように、レーザー光が照射された被穿孔物2の部位はドーナツ形状(レーザー光が照らす照射スポット(円形)を回転軸11CL周りに偏心回転させることにより形成される形状)に強度劣化される。すなわち、レーザー光の照射スポット(円形)の直径はドリル穴の半径(ドリル11の半径)より小さくても、ドリル穴の直径(ドリル11の直径)とほぼ同じ広い範囲を照射することが可能となる。
【0104】
<<<穿孔装置1の動作について>>>
次に、第二実施形態に係る穿孔装置1の動作例について、説明する。
第二実施形態に係る穿孔装置1を用いた穿孔動作(穿孔方法)は、上述した第一実施形態に係る穿孔装置1と同様に、被穿孔物2にレーザー光を照射する工程と、レーザー光の照射により強度を低下させた脆弱層を被穿孔物2に形成する工程と、当該脆弱層をドリル11により切削する工程と、切削により発生した切粉を除去する工程と、を有している。そして、これらの工程を1サイクルとして繰り返すことによって、被穿孔物2に深いドリル穴を形成することができる。
なお、第二実施形態に係る穿孔装置1の動作例の具体的な説明については、上述した第一実施形態に係る穿孔装置1の動作例と同様であるので省略する。
【0105】
<<<本実施形態に係る穿孔装置1の有効性について>>>
上述したとおり、本実施形態に係る穿孔装置1に備えられた偏心回転機構は、ハウジング25と、回転軸19CLを中心として回転可能な主軸部19と、主軸部19を回転駆動させるモーター22と、主軸部19に設けられ、回転軸19CLから径方向に離れた偏心回転軸190CLを中心として回転可能な偏心回転部190と、ある部位がハウジング25に固着されると共に他の部位が偏心回転部190の偏心回転軸190CL上に固着され、該ある部位から該他の部位へ向ってレーザー光を伝送する光ファイバー41と、を備えている。そして、このことにより、光ファイバー41を用いて回転軸19CLから偏心回転軸190CLに沿う光路へ変更しても、偏心回転部190が自らも回転するため、光ファイバー41が曲げ応力等の作用を受けて破断するのを抑制することができる。
【0106】
また、本実施形態においては、光ファイバー41は、ハウジング25に固着された当該ある部位に直線部41aを形成し、偏心回転部190に固着された当該他の部位に直線部41cを形成し、直線部41aと直線部41cとの間に所定の曲率半径を有する曲線部41bを形成することとしている。そのため、光ファイバー41に直線部41a、41bを形成することによって、光の直進性を維持することができる。また、光ファイバー41に曲線部42aを形成することによって、簡素化した構造により光路を変更することができる。
【0107】
また、本実施形態に係る穿孔装置1は、ハウジング25と、回転軸19CLを中心として回転可能な主軸部19と、主軸部19を回転駆動させるモーター22と、主軸部19に設けられ、回転軸19CLから径方向に離れた偏心回転軸190CLを中心として回転可能な偏心回転部190と、ある部位がハウジング25に固着されると共に他の部位が偏心回転部190の偏心回転軸190CL上に固着され、該ある部位から該他の部位へ向ってレーザー光を伝送する光ファイバー41と、を有する偏心回転機構と、主軸部19と一体となって回転軸19CL周りに回転し、被穿孔物2を穿孔するドリル11であって、偏心回転軸190CLに沿って設けられ、光ファイバー41により伝送された当該レーザー光が通る光路となる第一偏心孔13を内部に有するドリル11と、レーザー光を照射するためのレーザー照射ユニット40と、レーザー照射ユニット40に被穿孔物2に対してレーザー光を照射させ、レーザー光の照射により強度劣化した被穿孔物2の部位(脆弱層)を、モーター22に主軸部19を回転させることによりドリル11で穿孔する制御を行なうコントローラー100と、を備えている。そして、このことにより、被穿孔物2を穿孔する際に生ずる騒音や振動を軽減しつつも、穿孔時においてもレーザー光の照射することができるため、作業効率を向上させることが可能となる。また、回転軸19CLから径方向に偏心された第一偏心孔13を通じてレーザー光を照射しても、ドリル11が回転軸19CL周りに回転するため(第一偏心孔13が回転軸19CL周りに偏心回転するため)、より広い範囲に照射することができる。また、光ファイバー41を用いることによって、簡素化した構造により光路を変更することができる。さらに、偏心軸190CL周りに回転する偏心回転部190に光ファイバーを固着することにより、光ファイバー41にねじれが生じた場合でもそれを解消し、光ファイバー41が破断するのを抑えることができる。
【0108】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0109】
<ドリル11>
上記の実施形態においては、穿孔工具の一例としてのドリル11について、
図4を用いて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、
図7に示す構成のドリル11を穿孔ユニット及び穿孔装置に適用することができる。
具体的には、上記の実施形態におけるドリル11は、第一偏心孔13と第二偏心孔14とを連通させる連通孔15を有していたが、この連通孔15を設けなくてもよい。
【0110】
また、
図7に示すように、ドリル11の先端にある刃先部12について、2枚の切刃12a、12bのそれぞれに空気孔12c、12dを設けてもよい。この空気孔12c、12dからエアーを逃がすことによって、切刃12a、12bに加えられる風圧を減らし、ドリル11をスムーズに回転させることができる。
【0111】
<偏心回転機構>
上記の実施形態においては、偏心回転機構を利用して、穿孔工具の一例としてのドリル11に設けられた第一偏心孔13にレーザー光を通す場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、金属を加工する場合において、この偏心回転機構を利用してレーザー光を偏心回転させながら板金等の被加工素材に照射することにより、円形の部品を形成するようにしてもよい。このようにすれば、被加工素材の厚みが大きい場合でも、被加工素材から円形の部品を抜き取ることができるため、タレットパンチプレス加工を行って円形の部品を形成する場合に比べて有効な手段となる。