【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例および比較例についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0024】
1.染色性
ステンレス基板(SUS304、25mm×75mm×0.5mm、ヘアライン仕上げ)上にマーカーとして羊血などのタンパク質を2ヶ所点着させた16枚の洗浄評価インジケーター((株)イヌイメデイックス、商品名:ピュアチェック(登録商標))を水平に置き、各インジケーターのマーカー上に表1と表2に示す染色液(表1のNo.1〜No.8は染色液(本発明品)、表2のNo.9〜No.16は染色液(比較品))をスポイドで数滴滴下した。1分経過後、水道水を受けてオーバーフローするビーカーの中に前記各染色液を滴下したインジケーターをそれぞれ1分浸漬した。次いで、前記ビーカーから前記インジケーターを取り出し、自然乾燥させた。乾燥終了後、各インジケーターについてマーカーの色調、染着濃度、染色斑を目視観察した。
表1と表2に「外観(色調)」と称する項目で各インジケーターのマーカーの色調を記載した。
染色性の評価は、酢酸を配合した比較染色液(No.9〜No.12)を滴下したインジケーターについて得られた結果を基準として、以下のように行った。
・No.9〜No.12の比較染色液と比べて明らかに染色性が優れると認められた場合。表1と表2の「染色性」と称する項目に「◎」で明記。
・No.9〜No.12の比較染色液と同程度の染色性が認められた場合。表1と表2の「染色性」と称する項目に「○」で明記。
・No.9〜No.12の比較染色液と比べて明らかに染色性が悪いと認められた場合。表1と表2の「染色性」と称する項目に「×」で明記。
【0025】
2.臭気
前記「1.染色性」の試験において、各染色液を各インジケーターのマーカー上に滴下したときの臭気を嗅いだ。臭気の評価は以下のように行った。
・臭気が認められなかった場合。表1と表2の「臭気」と称する項目に「なし」と明記。
・少し臭気が認められた場合。表1と表2の「臭気」と称する項目に「刺激臭」と明記。
・No.9〜No.12の比較染色液と同程度の臭気が認められた場合。表1と表2の「臭気」と称する項目に「刺激臭強」と明記。
【0026】
3.貯蔵安定性
表1と表2に示す各染色液をそれぞれ300mlのポリエチレン製容器に入れ、室温(17℃)で24時間保管し、結晶の析出の有無を目視観察するとともに、−15℃に設定した冷凍庫の中で24時間保管し、結晶の析出の有無を目視観察した。
・結晶の析出が認められなかった場合、表1と表2の「液安定性(17℃)」、「液安定性(−15℃)」と称する項目に「○」と明記。
・結晶の析出が認められた場合、表1と表2の「液安定性(17℃)」、「液安定性(−15℃)」と称する項目に「×」と明記。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表1と表2の結果から、No.1〜No.8の染色液(本発明品)の染色性は、いずれもNo.9〜No.12の染色液(比較品)と同程度に優れることが分かった。代表例として
図1にNo.1,2,4,6の染色液(本発明品)とNo.9の染色液(比較品)について、染色前後に撮影した写真を示す。臭気については、No.1〜No.8の染色液(本発明品)は臭気が認められず、No.9〜No.16の染色液(比較品)はいずれも刺激臭が強いことが認められた。貯蔵安定性については、No.1〜No.16のいずれの染色液についても結晶の析出は認められなかった。
【0030】
4.染色液のタンパク質検出感度
羊血((株)日本生物材料センター、NSN−羊全血液へパリン処理)に硫酸プロタミン1重量%水溶液を10重量%添加したタンパク基準液にイオン交換水を添加して 3.2,6.3,25,50,100,200μg/10μLの希釈タンパク液を調製した。ピペットで各希釈タンパク液10μLをステンレス基板(SUS304、25mm×75mm×0.5mm、ヘアライン仕上げ)上に滴下し、室温で3日間放置して乾燥させた。こうして、希釈タンパク液が乾燥して、スポット血液として点着したものをテストピースとした。次いで、各テストピースを水平に置き、スポイドで表1と表2に記載のNo.1,2,4,6,9の染色液を該テストピースのスポット血液上に数滴滴下した。1分経過後、水道水を受けてオーバーフローするビーカーの中に前記各染色液を滴下したテストピースをそれぞれ30秒浸漬した。次いで、前記ビーカーから前記テストピースを取り出し、室温で自然乾燥させた。各テストピースについてスポット血液の色調、染着濃度、染色斑を目視観察した。さらにデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス、VHX−600)で倍率25倍に拡大し、試験後のテストピースについて画像観察を行った(
図2を参照)。
図2より、試験に供した5種類の染色液(No.1,2,4,6,9)の染着性は、いずれも、いずれのスポット血液濃度においてもNo.9の染色液(比較品)と同等であり、差異は認められなかった。また、リンゴ酸を配合した染色液(No.1,2,4)とクエン酸を配合した染色液(No.6)の染着性については、両者ともに差異が認められず、どちらも好適に使用できることが分かった。
図2から、試験に供した5種類の染色液(No.1,2,4,6,9)のタンパク質検出感度はいずれも約3.2μgであった。
【0031】
5.増粘剤や界面活性剤を配合した染色液に対する各種評価試験
下記および表3〜5に示す種々の増粘剤を配合した染色液、下記および表6に示す増粘剤と界面活性剤を配合した染色液について、以下の条件で粘度を測定するとともに、ドロップテストを行なった。さらに、各染色液の染色性と臭気について、上述した「1.染色性」と「2.臭気」と同様の方法で評価した。表3〜6に結果を示す。
【0032】
(使用した増粘剤)
・ポリアクリル酸(商品名:ハイビスワコー104,和光純薬工業(株))
・ポリアクリル酸(商品名:ハイビスワコー105,和光純薬工業(株))
・ポリメタクリル酸(試薬:Polyacrylamide,MW10,000,50% solution in water,Polysciens,Inc.,)
・ポリアクリルアミド(試薬:Poly(methacrylic Acid),Polysciens,Inc.,)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ60SH−4000,信越化学工業(株))
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ60SH−10000,信越化学工業(株))
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ90SH−15000,信越化学工業(株))
・ヒドロキシエチルセルロース(商品名:HECダイセルSE900,ダイセル化学工業(株))
・ポリビニルアルコール(商品名:ポリビニルアルコール P:900〜1000,和光純薬工業(株))
・ポリビニルアルコール(商品名:ポリビニルアルコール 80mol%けん化,和光純薬工業(株))
【0033】
(使用した界面活性剤)
・ポリオキシエチレントリデシルエーテル(商品名:ファインサーフTD−90,青木油脂工業(株))
・ポリオキシエチレントリデシルエーテル(商品名:ファインサーフTD−120,青木油脂工業(株))
・ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル(商品名:ブラウノンEH-11,青木油脂工業(株))
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソデシルエーテル(ランダム型)(商品名:ワンダーサーフID-90,青木油脂工業(株))
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(商品名:プロノン208,日油(株))
【0034】
(粘度測定)
粘度計:BL型粘度計(東機産業(株)製)
ローター:No.1
回転数:60r.p.m.
測定温度:25℃
測定容器:30mlトールビーカー
試料採取量:200ml
【0035】
(ドロップテスト)
(1)飛び散り:染色液1gを秤量し、それをスポイドで10cmの高さからステンレス板(SUS304、2B、210mm×295mm×10mm)上に滴下して、滴下した地点の中心から試料飛沫の飛び散った最大距離(cm)をメジャーにて測定した。
(2)広がり:上記(1)の条件で染色液を滴下したときに、ステンレス板上に出来たスポットの最大径(cm)を測定した。
(3)スポットの外観:上記(1)の条件で染色液を滴下したときに、ステンレス板上にできた
スポットの形を丸型か星型かに大別した。なお、星型とは、丸型以外の形をいう。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
まず、表3〜表5の結果を説明する。飛び散りについてNo.18〜No.63の染色液は、いずれもNo.17の染色液(表1のNo.2の染色液と同一処方のもの)に比べて小さい数値を示した。このことから、増粘剤としてポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコールを配合した場合、いずれも飛び散りが抑制されることが分かった。上記のうち、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合したNo.36,No.37,No.40〜No.43,No.45〜No.49の染色液とヒドロキシエチルセルロースを配合したNo.51〜No.55の染色液の飛び散りは0(ゼロ)cmとなり、飛び散りが完全になくなるという顕著な効果を示した。また、染色性、臭気については、No.18〜No.63の染色液はいずれも問題はなかった。
【0041】
次に表6の項目のうち、広がりについては、界面活性剤を配合したすべての染色液(No.65〜No.69,No.71〜No.75,No.77〜No.81)が、界面活性剤を配合しない染色液(No.64,No.70,No.76)よりも大きな数値を示した。上記のうち、特に、No.68,No.71〜No.74,No.78の染色液は広がりが8.0cm以上を示し、特に広がりが良好だった。