(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783857
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】エレベータかご内照明装置およびエレベータかご内照明方法
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20150907BHJP
F21V 14/02 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
B66B11/02 E
F21V14/02 200
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-196221(P2011-196221)
(22)【出願日】2011年9月8日
(65)【公開番号】特開2013-56746(P2013-56746A)
(43)【公開日】2013年3月28日
【審査請求日】2013年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】北川 猛
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘明
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−182296(JP,A)
【文献】
特開2010−123539(JP,A)
【文献】
特開2010−205482(JP,A)
【文献】
特開2012−131594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
F21V 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごに設けられ、前記かご内を照明するエレベータかご内照明装置であって、
基板および前記基板に実装されるLEDを有した複数のLEDユニットと、
前記かごに取り付けられ、各前記基板を保持する複数の保持部材とを備え、
前記複数のLEDユニットは、多角形状に並べて配置され、
各前記保持部材は、回動軸と、前記回動軸を中心に回動可能に設けられ、前記基板を保持する保持部本体とを有し、各前記保持部本体が前記回動軸を中心に回動することにより、各前記LEDユニットから放たれる光が拡散して前記かごの床に当たるように各前記基板を水平面に対して別々に傾斜させることを特徴とするエレベータかご内照明装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記保持部本体が前記回動軸を中心に回動することにより、水平面に対する前記基板の傾斜角度が変更可能であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータかご内照明装置。
【請求項3】
各前記LEDユニットは、同一円周上であって、周方向に等間隔に並べられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータかご内照明装置。
【請求項4】
基板および前記基板に実装されるLEDを有し多角形状に並べて配置された複数のLEDユニットと、回動軸および前記回動軸を中心に回動可能に設けられ前記基板を保持する保持部本体を有しかごに取り付けられる複数の保持部材とを用いて、前記かご内を照明するエレベータかご内照明方法であって、
各前記保持部本体が前記回動軸を中心に回動することにより、複数の前記LEDユニットのそれぞれから放たれる光が拡散して前記かごの床に当たるように各前記基板を水平面に対して別々に傾斜させる基板傾斜工程を備えたことを特徴とするエレベータかご内照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータのかご内を照明するエレベータかご内照明装置およびエレベータかご内照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リング形状の1枚の基板と、基板に実装された複数のLEDとを備えたエレベータかご内照明装置が知られている。複数のLEDは、基板の形状に合わせて、円を描くように並べて配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−367406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LEDから放たれる光は、通常、照射角度が約120°程度である。したがって、従来のエレベータかご内照明装置をエレベータのかごの上部に設けて、かご内を照明する場合には、かごの床には、光が多く当たる部分と、光があまり当たらない部分とが発生する。つまり、かごの床には、光むらが発生してしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、かごの床に発生する光むらを低減させることができるエレベータかご内照明装置およびエレベータかご内照明方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータかご内照明装置は、かごに設けられ、前記かご内を照明するエレベータかご内照明装置であって、基板および前記基板に実装されるLEDを有した複数のLEDユニットと、前記かごに取り付けられ、各前記基板を保持する
複数の保持
部材とを備え、前記複数のLEDユニットは、多角形状に並べて配置され、
各前記保持
部材は、
回動軸と、前記回動軸を中心に回動可能に設けられ、前記基板を保持する保持部本体とを有し、各前記保持部本体が前記回動軸を中心に回動することにより、各前記LEDユニットから放たれる光が拡散して前記かごの床に当たるように
各前記基板を水平面に対して
別々に傾斜させる。
【0007】
この発明に係るエレベータかご内照明方法は、
基板および前記基板に実装されるLEDを有し多角形状に並べて配置された複数のLEDユニットと、回動軸および前記回動軸を中心に回動可能に設けられ前記基板を保持する保持部本体を有しかごに取り付けられる複数の保持部材とを用いて、前記かご内を照明するエレベータかご内照明方法であって、
各前記保持部本体が前記回動軸を中心に回動することにより、複数の
前記LEDユニットのそれぞれから放たれる光が拡散して前記かごの床に当たるように
各前記基板を水平面に対して
別々に傾斜させる基板傾斜工程を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るエレベータかご内照明装置によれば、基板および基板に実装されるLEDを有した複数のLEDユニットと、かごに取り付けられ、各基板を保持する保持装置とを備え、複数のLEDユニットは、多角形状に並べて配置され、保持装置は、各LEDユニットから放たれる光が拡散してかごの床に当たるように基板を水平面に対して傾斜させるので、各LEDユニットから放たれる光がかごの床の一部に集中して当たることを低減させることができる。その結果、かごの床に発生する光むらを低減させることができる。
【0009】
この発明に係るエレベータかご内照明方法によれば、基板および基板に実装されるLEDを有し多角形状に並べて配置された複数のLEDユニットのそれぞれから放たれる光が拡散してかごの床に当たるように基板を水平面に対して傾斜させる基板傾斜工程を備えているので、各LEDユニットから放たれる光がかごの床の一部に集中して当たることを低減させることができる。その結果、かごの床に発生する光むらを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータを示す正面図である。
【
図2】
図1の照明装置を下方から視た示す下面図である。
【
図3】
図2のIII−III線に沿った矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエレベータを示す正面図である。図において、エレベータは、かご1と、かご1の上部に設けられた照明装置(エレベータかご内照明装置)2とを備えている。かご1は、床11と、床11に対して立てられた側壁12と、側壁12の上部に設けられた天井13とを有している。照明装置2は、天井13に取り付けられている。この例では、照明装置2が天井13の下面よりも下方に配置されている。なお、照明装置2は、天井13の下面よりも上方に配置されてもよい。
【0012】
図2は
図1の照明装置2を下方から視た示す下面図、
図3は
図2のIII−III線に沿った矢視断面図である。図において、照明装置2は、リング形状に形成されたアルミニウム製のベース板21と、ベース板21に取り付けられる6個の保持部材22と、各保持部材22に1個ずつ保持される6個のLEDユニット23と、各保持部材22に1個ずつ取り付けられる6個のアクリルカバー24とを備えている。なお、
図2では、ベース板21およびLEDユニット23を見易くするために、アクリルカバー24を省略している。
【0013】
ベース板21は、保持金具(図示せず)を用いて天井13(
図1)の下面に取り付けられている。つまり、保持部材22は、ベース板21および保持金具を介して、かごに取り付けられている。
【0014】
各保持部材22および各LEDユニット23は、重力方向に延びた直線である鉛直線を中心に、同一円周上であって、周方向に等間隔に並べて配置されている。各6個の保持部材22およびLEDユニット23は、六角形状に並べて配置されている。つまり、各6個の保持部材22およびLEDユニット23は、各保持部材22およびLEDユニット23が六角形の各辺を構成するように配置されている。
【0015】
各保持部材22は、ベース板21に固定された軸受部221と、水平方向に延びて軸受部221に嵌合された回動軸222と、LEDユニット23を保持し回動軸222を中心に回動する保持部本体223とを有している。保持部本体223は、回動軸222に固定され回動軸222の径方向に延びた支持棒224と、支持棒224に固定されLEDユニット23を保持する取付金具225とを有している。軸受部221、回動軸222および支持棒224は、硬質プラスチックから構成されている。軸受部221は、回動軸222よりも僅かに小さな径の受部で回動軸22と嵌合されており、軸受部221と回動軸222との間には、保持部本体223およびLEDユニット23の自重により発生する回動軸222を中心とした保持部本体223の回動を抑制する摩擦力が発生するようになっている。つまり、作業者が保持部本体223に対して回動する力を加えることにより、保持部本体223は回動軸222を中心に回動し、作業者による力が取り除かれることにより、回動軸222に対して保持部本体223が固定される。なお、保持部本体223が、回動軸222に対する位置を固定する固定部材(図示せず)を有してもよい。つまり、回動軸222を中心に保持部本体223が適切な位置に回動した後、固定部材により回動軸222に対する保持部本体223の位置が固定されるようにしてもよい。
【0016】
各LEDユニット23は、平面視長方形形状の基板231と、基板231に実装される3個のLED232とを有している。各LED232は、基板231の長手方向に並べて配置されている。各LEDユニット23は、6個のLEDユニット23が構成する六角形の各辺に沿って基板231が延びるように配置されている。各LEDユニット23は、保持部本体223に保持されており、保持部本体223の回動にともなって、回動軸222を中心に回動する。6個のLEDユニット23は、回動軸222を中心に回動されて、各LEDユニット23から放たれる光が拡散してかご1の床11(
図1)に当たるように各基板231が水平面に対して傾斜して配置されている(基板傾斜工程)。具体的には、LED232が実装された基板231の面は、ベース板21の径方向について内側に位置する基板231の部分が外側に位置する基板231の部分よりもベース板21から離れるように水平面に対して傾斜している。なお、この例では、全ての基板231が水平面に対して傾斜して配置されているが、一部の基板231のみが水平面に対して傾斜して配置されてもよい。また、LED232が実装された基板231の面を、ベース板21の径方向について内側に位置する基板231の部分が外側に位置する基板231の部分よりもベース板21に近づくように水平面に対して傾斜させてもよい。この場合、対向する位置にある一対のLEDユニット23から放たれる光が、交差し、さらに、拡散して、かご1の床11に当たる。
【0017】
各アクリルカバー24は、ベース板21とともに各保持部材22および各LEDユニット23を覆っている。各アクリルカバー24は、透明の材料から構成されている。
【0018】
図4は
図2の照明装置2の配光特性を示す図である。
図4では、床11(
図1)から高さが2.5mの位置に配置された天井13(
図1)の中央部分に照明装置2を配置した場合の照明装置2の配光特性を示している。縦軸は床11における照度を示している。横軸は床11の中央部分からの距離を示しており、床11の中央部分を横軸の中心としている。また、
図4では、照明装置2の配光特性と比較するために、基板231を水平にした場合の照明装置2の配光特性と、照明装置2の換わりに蛍光管を用いた場合の照明装置の配光特性とを合わせて表示している。図において、Aは蛍光管を用いた照明装置の配光特性、Bは基板231を水平にした場合の照明装置2の配光特性、Cは基板231を水平面に対して傾斜させた場合の照明装置2の配光特性である。蛍光管を用いた照明装置の場合には、床11の中央部分と床11の端部分との間での照度の差は、ほとんどない。つまり、蛍光管を用いた照明装置の場合には、床11には光むらが発生しない。基板231を水平にした場合には、LED232から放たれる光が拡散されずに、床11の中央部分にあたる。つまり、床11の中央部分に光が多く当たり、床11の端部分には光があまり当たらない。その結果、床11には光むらが発生する。基板231を傾斜させた場合には、床11の中央部分の照度と床11の端部分の照度との差が、基板231を水平にした場合と比較して、低減されている。つまり、床11に発生する光むらが低減されている。
【0019】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る照明装置2によれば、基板231および基板231に実装されるLED232を有した6個のLEDユニット23と、かご1に取り付けられ、各基板231を保持する保持部材22とを備え、6個のLEDユニット23は、六角形状に並べて配置され、保持部材22は、各LEDユニット23から放たれる光が拡散してかご1の床11に当たるように基板231を水平面に対して傾斜させるので、LEDユニット23から放たれる光がかご1の床11の一部に集中して当たることを低減させることができる。その結果、かご1の床11に発生する光むらを低減させることができる。また、リング形状に形成される従来の基板と比較して、基板231が平面視四角形状に形成されるので、基板231の製造の歩留まりを向上させることができる。また、リング形状に形成された基板の形状に合わせて円を描くようにLEDが基板に実装される従来の照明装置と比較して、平面視四角形状に形成された基板231に直線上にLED232が実装されるので、LED232の実装を容易にすることができる。その結果、LED232の基板231への実装を自動化することができる。
【0020】
また、保持部材22は、回動軸222と、回動軸222を中心に回動可能に設けられ基板231を保持する保持部本体223とを有し、保持部本体223が回動軸222を中心に回動することにより、水平面に対する基板231の傾斜角度が変更可能であるので、照明装置2をかご1に取り付ける際に、かご1の形状に合わせて、基板231の水平面に対する傾斜角度を調節することができる。これにより、かご1の形状に合わせて、基板231の水平面に対する傾斜角度を最適な角度にすることができる。
【0021】
また、各LEDユニット23は、同一円周上であって、周方向に等間隔に並べられているので、照明装置2から放たれる光の周方向についてのばらつきを低減させることができる。これにより、照明装置2の直下に位置する床11の部分を中心とする周方向についての光むらの発生を防止することができる。その結果、床11に発生する光むらをより低減させることができる。
【0022】
この発明に係るエレベータかご内照明方法によれば、基板231および基板231に実装されるLED232を有し六角形状に並べて配置された6個のLEDユニット23のそれぞれから放たれる光が拡散してかご1の床11に当たるように基板231を水平面に対して傾斜させる基板傾斜工程を備えているので、LEDユニット23から放たれる光が、側壁12からの反射も加わり、かご1の床11の一部に集中して当たることを低減させることができる。その結果、かご1の床11に発生する光むらを低減させることができる。
【0023】
なお、上記実施の形態1では、保持部本体223がLEDユニット23を保持した状態で、回動軸222を中心に回動して、基板231が水平面に対して傾斜する構成について説明したが、保持部本体223は、回動軸222を有さず、ベース板21に対して固定され、水平面に対して傾斜する基板231を保持する構成であってもよい。
【0024】
また、上記実施の形態1では、LED232から放たれる光が拡散してかご1の床11(
図1)に当たるように各基板231が水平面に対して傾斜して配置されている構成について説明したが、必要に応じて、LED232から放たれる光が集中してかご1の床11に当たるように一部の基板231が水平面に対して傾斜して配置される構成であってもよい。
【0025】
また、上記実施の形態1では、6個の保持部材22およびLEDユニット23が六角形の各辺を構成するように配置された照明装置2について説明したが、例えば、8個の保持部材22およびLEDユニット23が八角形の各辺を構成するように、複数個の保持部材22およびLEDユニット23が、その数に応じて決められる多角形の各辺を構成するように配置された照明装置2であってもよい。
【0026】
また、上記実施の形態1では、各LEDユニット23が、同一円周上であって、周方向に等間隔に並べられる構成について説明したが、これに限らず、LED232から放たれる光が拡散してかご1の床11に当たるように基板231が水平面に対して傾斜して配置されていればよい。
【0027】
また、上記実施の形態1では、かご1の天井13に1つの照明装置2が設けられた構成について説明したが、天井13に複数の照明装置2が設けられた構成であってもよい。この場合、隣り合う照明装置2から放たれる光が互いに重なり合うので、床11に発生する光むらをより低減させることができる。
【0028】
また、上記実施の形態1では、かご1の天井13に新規に取り付けられる照明装置2について説明したが、かご1の天井13に既設の蛍光灯照明装置を天井13から取り外して、蛍光灯照明装置が取り付けられていた天井13の部分に取り付けられる照明装置2であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 かご、2 照明装置(エレベータかご内照明装置)、11 床、12 側壁、13 天井、21 ベース板、22 保持部材、23 LEDユニット、24 アクリルカバー、221 軸受部、222 回動軸、223 保持部本体、224 支持棒、225 取付金具、231 基板、232 LED。