特許第5783897号(P5783897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783897
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/18 20060101AFI20150907BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   H01G4/24 301B
   H01G4/32 305Z
   H01G4/18 304Z
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-287001(P2011-287001)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-135205(P2013-135205A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増山 孝弘
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−303942(JP,A)
【文献】 特開2011−124434(JP,A)
【文献】 実開昭56−174222(JP,U)
【文献】 特開平11−317320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/18
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムに金属蒸着電極が形成された金属化フィルムを所定の巻芯方向を中心に巻回してなる円柱状のコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の一方端側に形成された第1端面に設けられた第1の取出し電極と、
前記コンデンサ素子の他方端側に形成された第2端面に設けられた第2の取出し電極と、
前記コンデンサ素子ならびに前記第1および第2の取出し電極を収容し、当該第1の取出し電極が位置する側を開口部とする有底筒状のケースと、
前記第1の取出し電極側に設けられ、外部接続端子として機能する第1および第2の電極端子と、
前記第1の電極端子と前記第1の取出し電極とを接続する第1の接続導体と、
前記コンデンサ素子の外周側面に沿って延びる延長部を有し、前記第2の電極端子と前記第2の取出し電極とを接続する帯状の第2の接続導体と
を備え、
前記延長部は、前記巻芯方向に対して傾斜しつつ前記円柱状のコンデンサ素子の外周側面に沿って湾曲するように延設され
前記第2の接続導体は、前記第1端面に沿って延びるとともに、前記第2の電極端子に接続される一端部と、前記第2端面に沿って延びるとともに、前記第2の取出し電極に接続される他端部と、前記一端部から前記延長部へと屈曲する第1の屈曲部と、前記延長部から前記他端部へと屈曲する第2の屈曲部とを有し、
前記第1および第2の屈曲部は、前記一端部および他端部の幅方向に対して斜めに屈曲形成されていることを特徴とする、フィルムコンデンサ。
【請求項2】
誘電体フィルムに金属蒸着電極が形成された金属化フィルムを所定の巻芯方向を中心に巻回してなる円柱状のコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の一方端側に形成された第1端面に設けられた第1の取出し電極と、
前記コンデンサ素子の他方端側に形成された第2端面に設けられた第2の取出し電極と、
前記コンデンサ素子ならびに前記第1および第2の取出し電極を収容し、当該第1の取出し電極が位置する側を開口部とする有底筒状のケースと、
前記第1の取出し電極側に設けられ、外部接続端子として機能する第1および第2の電極端子と、
前記第1の電極端子と前記第1の取出し電極とを接続する第1の接続導体と、
前記コンデンサ素子の外周側面に沿って延びる延長部を有し、前記第2の電極端子と前記第2の取出し電極とを接続する帯状の第2の接続導体と
を備え、
前記延長部は、前記巻芯方向に対して傾斜しつつ前記円柱状のコンデンサ素子の外周側面に沿って湾曲するように延設され、
前記第2の接続導体は、前記第1端面に沿って延びるとともに、前記第2の電極端子に接続される中間部と、前記第2端面に沿って延びるとともに、前記中間部の両側に前記第2の取出し電極に独立して接続される両端部と、前記中間部と前記両端部との間に形成される一対の前記延長部と、前記中間部から前記延長部のそれぞれへと屈曲する一対の第1の屈曲部と、前期延長部のそれぞれから前記両端部のそれぞれへと屈曲する一対の第2の屈曲部とを有し、
前記第1および第2の屈曲部は、前記中間部および前記両端部の幅方向に対して斜めに屈曲形成されていることを特徴とする、フィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば円筒状のケースにコンデンサ素子を収容して構成されるフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルムコンデンサには、たとえば特許文献1に開示されたものがある。
この文献に開示されたフィルムコンデンサは、2つのコンデンサ素子を有底円筒状のケースに収容して構成されている。ケースの開口部には、蓋が設けられている。蓋には、2つの電極端子が設けられている。
コンデンサ素子は、誘電体フィルムに金属蒸着電極が形成された金属化フィルムを巻回して円柱状に形成されている。各コンデンサ素子の両端面には、取出し電極が設けられている。たとえば、蓋に対して近い方のコンデンサ素子の端面(上側の端面)に設けられた取出し電極と一方の電極端子とは、第1の接続導体(箔状接続端子)を介して接続されている。蓋に対して遠い方のコンデンサ素子の端面(底側の端面)に設けられた取出し電極と他方の電極端子とは、第2の接続導体(箔状接続端子)を介して接続されている。
第1および第2の接続導体は、帯状の金属箔により構成されている。特に、各コンデンサ素子に接続された第2の接続導体は、当該コンデンサ素子の外周側面に沿ってその巻芯方向(巻芯の軸方向をいう。以下同様。)に延びる延長部を有する。この延長部は、ケースの内周壁とコンデンサ素子の外周側面との間に配置され、コンデンサ素子の外周側面一部を覆う。このような構成は、1つのコンデンサ素子をケースに収容したものでも同様である。
【0003】
図13は、従来のフィルムコンデンサの一部切欠き底面図である。同図に示すように、従来のフィルムコンデンサでは、第2の接続導体600がケース100の内周壁120と干渉しないように配置される。
第2の接続導体600の端部600Bは、コンデンサ素子300の底面300Bに沿って延び、はんだ付けなどにより底面300Bに接合されている。これにより、端部600Bは、底面300Bに形成された取出し電極に接続されている。端部600Bは、コンデンサ素子300の外周側面300Cより僅かに外方まで延び、この端部600Bから延長部600Cへと屈曲している。
これにより、端部600Bと延長部600Cとの間に屈曲部600Eが形成されている。屈曲部600Eは、端部600Bから延長部600Cへと直角に屈曲し、底面300Bの円弧状の縁部に沿っている。特に図示しないが、コンデンサ素子300の上面側においても、第2の接続導体600の端部と延長部600Cとの間に同様の屈曲部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−277828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のフィルムコンデンサでは、図14に示すように、ケース100の内周壁120と屈曲部600Bとの干渉を避けるために、延長部600Cをそれほど幅広に形成することができない。そのため、耐電流性能を向上させにくいという難点があった。
【0006】
また、上記従来のフィルムコンデンサでは、上述の理由からコンデンサ素子300の外周側面300Cに対して延長部600Cが覆う面積をそれほど大きくできない。そのため、コンデンサ素子300において生じる磁束と第2の接続導体600を流れる電流により生じる磁束とは、互いに打ち消し合う効果がそれほど高められない。これにより、インダクタンスを低減させにくくなっている。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐電流性能を高めるとともに、インダクタンスを低減させることができるフィルムコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフィルムコンデンサは、誘電体フィルムに金属蒸着電極が形成された金属化フィルムを所定の巻芯方向を中心に巻回してなる円柱状のコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の一方端側に形成された第1端面に設けられた第1の取出し電極と、前記コンデンサ素子の他方端側に形成された第2端面に設けられた第2の取出し電極と、前記コンデンサ素子ならびに前記第1および第2の取出し電極を収容し、当該第1の取出し電極が位置する側を開口部とする有底筒状のケースと、前記第1の取出し電極側に設けられ、外部接続端子として機能する第1および第2の電極端子と、前記第1の電極端子と前記第1の取出し電極とを接続する第1の接続導体と、前記コンデンサ素子の外周側面に沿って延びる延長部を有し、前記第2の電極端子と前記第2の取出し電極とを接続する帯状の第2の接続導体とを備え、前記延長部は、前記巻芯方向に対して傾斜しつつ前記円柱状のコンデンサ素子の外周側面に沿って湾曲するように延設され、前記第2の接続導体は、前記第1端面に沿って延びるとともに、前記第2の電極端子に接続される一端部と、前記第2端面に沿って延びるとともに、前記第2の取出し電極に接続される他端部と、前記一端部から前記延長部へと屈曲する第1の屈曲部と、前記延長部から前記他端部へと屈曲する第2の屈曲部とを有し、前記第1および第2の屈曲部は、前記一端部および他端部の幅方向に対して斜めに屈曲形成されていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、第2の接続導体の延長部は、コンデンサ素子の外周側面に沿って例えばねじれ変形し、当該外周側面の一部を覆う。これにより、第2の接続導体の延長部は、巻芯方向に延びるものよりも、コンデンサ素子の外周側面をより大きな面積で覆うこととなる。
したがって、本発明のフィルムコンデンサでは、耐電流性能を向上させることができる。また、コンデンサ素子において生じる磁束と、第2の接続導体を流れる電流により生じる磁束とが、互いに打ち消し合う効果が高められる結果、インダクタンスを低減させることができる。
【0011】
この構成によれば、第1および第2の屈曲部に連続する延長部を、自然に巻芯方向に対して斜めとなるように配置することができ、この延長部をコンデンサ素子の外周側面に対して容易に沿わせることができる。
【0012】
また、本発明のフィルムコンデンサは、誘電体フィルムに金属蒸着電極が形成された金属化フィルムを所定の巻芯方向を中心に巻回してなる円柱状のコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の一方端側に形成された第1端面に設けられた第1の取出し電極と、前記コンデンサ素子の他方端側に形成された第2端面に設けられた第2の取出し電極と、前記コンデンサ素子ならびに前記第1および第2の取出し電極を収容し、当該第1の取出し電極が位置する側を開口部とする有底筒状のケースと、前記第1の取出し電極側に設けられ、外部接続端子として機能する第1および第2の電極端子と、前記第1の電極端子と前記第1の取出し電極とを接続する第1の接続導体と、前記コンデンサ素子の外周側面に沿って延びる延長部を有し、前記第2の電極端子と前記第2の取出し電極とを接続する帯状の第2の接続導体とを備え、前記延長部は、前記巻芯方向に対して傾斜しつつ前記円柱状のコンデンサ素子の外周側面に沿って湾曲するように延設され、前記第2の接続導体は、前記第1端面に沿って延びるとともに、前記第2の電極端子に接続される中間部と、前記第2端面に沿って延びるとともに、前記中間部の両側に前記第2の取出し電極に独立して接続される両端部と、前記中間部と前記両端部との間に形成される一対の前記延長部と、前記中間部から前記延長部のそれぞれへと屈曲する一対の第1の屈曲部と、前期延長部のそれぞれから前記両端部のそれぞれへと屈曲する一対の第2の屈曲部とを有し、前記第1および第2の屈曲部は、前記中間部および前記両端部の幅方向に対して斜めに屈曲形成されていることを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、コンデンサ素子の外周側面全体のうち延長部により覆われる部分の割合が大幅に大きくなる。これにより、耐電流性能の向上およびインダクタンスの低減をより一層図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐電流性能を高めるとともに、インダクタンスを低減させることができるフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサの分解斜視図である。
図2図1に示すフィルムコンデンサの一部切欠き側面図である。
図3図2のIII-III線に沿う一部切欠き上面図である。
図4図2のIV-IV線に沿う一部切欠き底面図である。
図5図2のV-V線に沿う一部切欠き側面図である。
図6図1に示すフィルムコンデンサに適用される第2の接続導体の平面図である。
図7図1に示すフィルムコンデンサに適用されるコンデンサ素子の分解斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るフィルムコンデンサの分解斜視図である。
図9図8に示すフィルムコンデンサの一部切欠き側面図である。
図10図8に示すフィルムコンデンサを上側から見た一部切欠き上面図である。
図11図8に示すフィルムコンデンサを底側から見た一部切欠き底面図である。
図12図8に示すフィルムコンデンサに適用される第2の接続導体の平面図である。
図13】従来のフィルムコンデンサを示す一部切欠き底面図である。
図14】従来のフィルムコンデンサにおける課題を説明するための一部切欠き底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサの分解斜視図であり、図2は、図1に示すフィルムコンデンサの一部切欠き側面図である。図3〜5は、図2の各矢視線に沿う一部切欠き上面図、一部切欠き底面図、一部切欠き側面図である。なお、図1では、便宜上、一部の部材を省略している。
【0018】
図1〜5に示すように、第1実施形態のフィルムコンデンサAは、ケース1、蓋2、コンデンサ素子3、第1および第2の電極端子4A,4B、第1の接続導体5、および第2の接続導体6を備えている。
【0019】
ケース1は、有底円筒状に形成されている。ケース1は、一端側(図1において上側)に開口された開口部10、他端側(図1において下側)に底部11、内部に内周壁12を有する。
【0020】
蓋2は、ケース1の開口部10を封止するように設けられる。蓋2には、第1および第2の電極端子4A,4Bを挿通させるための孔20A,20Bが設けられている。
【0021】
コンデンサ素子3は、ケース1の内部に収容される。本実施形態に適用されるコンデンサ素子3は、次のような構成からなる。
【0022】
図7は、コンデンサ素子3の分解斜視図である。同図に示すように、コンデンサ素子3は、たとえば誘電体フィルム30の片面に金属蒸着電極31が形成された2枚の金属化フィルム30A,30Bを重ね合わせて巻芯方向を中心に巻回し、円柱状に形成されたものである。
図1および図2に示すように、コンデンサ素子3は、巻芯方向Lに沿ってケース1に挿入される。コンデンサ素子3は、開口部10側に配置される第1端面3A、底部11側に配置される第2端面3B、内周壁12に面する外周側面3Cを有する。巻回された金属化フィルム30A,30Bにおいて、誘電体フィルム30および金属蒸着電極31は、交互に重なり合っている。
一方の金属化フィルム30Aにおいて第2端面3B側の縁部には、金属蒸着電極31が形成されない無蒸着耳部30aが設けられている。他方の金属化フィルム30Bにおいて第1端面3A側の縁部には、金属蒸着電極31が形成されない無蒸着耳部30bが設けられている。金属蒸着電極31は、小区分単位に分割されている。これにより、本実施形態のコンデンサ素子3では、金属蒸着電極31の一部に絶縁欠陥が生じた場合、その部分が全体から切り離されるので、コンデンサとしての機能が失われない。
【0023】
第1端面3Aおよび第2端面3Bには、たとえば金属溶射によって第1の取出し電極3A’および第2の取出し電極3B’が形成されている。第1の取出し電極3A’は、一方の金属化フィルム30Aの金属蒸着電極31に連接しており、第2の取出し電極3B’は、他方の金属化フィルム30Bの金属蒸着電極31に連接している。これにより、コンデンサ素子3では、第1端面3Aと第2端面3Bとの間に電圧が印加され、コンデンサとして機能する。
【0024】
コンデンサ素子3の外周側面3Cにおいて、第1端面3Aおよび第2端面3Bの近傍部分となる縁部には、絶縁テープ32が巻回されている。第1端面3Aの略半分の領域には、第1の取出し電極3A’の一部を覆うように絶縁板33が設けられている。図2および図5に示すように、コンデンサ素子3とケース1との間には絶縁樹脂34が充填される。第2端面3Bは、絶縁板35を介して底面11に接合固定されている。これにより、コンデンサ素子3は、ケース1と絶縁されている。
【0025】
第1および第2の電極端子4A,4Bは、第1端面3A上に対向するように配置されている。第1および第2の電極端子4A,4Bの先端部は、蓋2の孔20A,20Bに挿通された状態で外方に露出させられる。
図3に示すように、第1の電極端子4Aは、露出した第1の取出し電極3A’上に配置され、第2の電極端子4Bは、絶縁板33上に配置されている。
【0026】
第1の接続導体5は、第1の電極端子4Aと第1の取出し電極3A’とを接続するものである。第1の接続導体5は、帯状の金属板をコの字状に屈曲して形成されている。第1の接続導体5の一端部は、第1の電極端子4Aの基端部に接合されている。第1の接続導体5の他端部は、はんだ付けにより第1の取出し電極3A’に接合されている。
図2および図3に示すように、第1の接続導体5において、第1の電極端子4Aや第1の取出し電極3A’と接合される部分以外の部分は、絶縁材5’により被覆されている。これにより、第1の接続導体5と、ケースとが絶縁される。
【0027】
第2の接続導体6は、第2の電極端子4Bと第2の取出し電極3B’とを接続するものである。図6は、第2の接続導体6の平面図である。
同図に示すように、第2の接続導体6は、第1の接続導体5より長い帯状で平面視において折れ曲がった金属板をコの字状に屈曲して形成されている。第2の接続導体6は、第2の電極端子4Bに接続される一端部6A、第2の取出し電極3B’に接続される他端部6B、一端部6Aから他端部6Bへと延びる延長部6C、一端部6Aから延長部6Cへと屈曲する第1の屈曲部6D、延長部6Cから他端部6Bへと屈曲する第2の屈曲部6Eを有する。
図2〜5に示すように、一端部6Aおよび他端部6Bの接続部分以外の部分、延長部6C、ならびに、第1および第2の屈曲部6D,6Eは、絶縁材6’により被覆されている。これにより、第2の接続導体6にも、リーク電流の低減対策が施されている。
【0028】
図2および図5に示すように、一端部6Aは、絶縁板33上でこれから離間するように配置されている。
図3に示すように、一端部6Aは、第1端面3A(第1の取出し電極3A’)の縁近傍から絶縁板33の中央付近まで第1端面3Aに沿って延びている。一端部6Aは、第2の電極端子4Bの基端部に接合され、一定の幅寸法に形成されている。
【0029】
図2および図5に示すように、他端部6Bは、第2端面3B(第2の取出し電極3B’)に密接してこれに沿うように配置されている。
図4に示すように、他端部6Bは、第2端面3B(第2の取出し電極3B’)の縁近傍から内側に向かって延びている。他端部6Bは、巻回端面に平行な面内(巻芯方向Lに垂直な面内)において、一端部6Aとは重ならない位置に配置されている。他端部6Bは、はんだ付けにより第2の取出し電極3B’に接合され、一定の幅寸法に形成されている。
なお、本実施形態では、一端部6Aと他端部6Bとの幅寸法が同一であるが、異なる幅寸法であってもよい。
【0030】
図2に示すように、延長部6Cは、これを正面視して、コンデンサ素子3の巻芯方向の垂直方向Lに対して斜めに延びている。延長部6Cは、外周側面3Cに沿いつつ、ねじれ変形しており、当該外周側面3Cの一部を覆っている。
図5に示すように、延長部6Cは、内周壁12と外周側面3Cとの間に形成された一定幅の隙間に配置されている。この隙間は、絶縁樹脂34が充填されて湾曲した空間になっている。
【0031】
図6に示すように、第1の屈曲部6Dは、一端部6Aの幅方向Wに対して斜めに屈曲形成されている。
図3および図5に示すように、第1の屈曲部6Dは、第1端面3Aの円弧状の縁部付近から若干離間して位置し、当該縁部の接線方向L1に概ね沿うように配置されている。第1の屈曲部6Dは、内周壁12と干渉しないように配置されている。
【0032】
図6に示すように、第2の屈曲部6Eは、他端部6Aの幅方向Wに対して斜めに屈曲形成されている。同図に示すように展開した状態において、第2の屈曲部6Eは、第1の屈曲部6Dとは異なる折れ線方向になっている。
図4および図5に示すように、第2の屈曲部6Eは、第2端面3Bの円弧状の縁部近傍に位置し、当該縁部の接線方向L2に概ね沿うように配置されている。第2の屈曲部6Eは、巻芯方向Lに垂直な面内において、第1の屈曲部6Dとは重ならない位置に配置されている。
すなわち、第1および第2の屈曲部6D,6Eは、共に巻芯方向Lに対して垂直な折れ線方向を形成するものの、互いにねじれの位置関係をなすように配置されている。第2の屈曲部6Eも、内周壁12と干渉しないように配置されている。
【0033】
上記フィルムコンデンサAでは、次のような効果が得られる。
【0034】
第2の接続導体6の延長部6Cは、コンデンサ素子3の外周側面3Cに沿ってねじれ変形した状態でケース1内に収容される。すなわち、延長部6Cは、外周側面3Cの巻芯方向Lに沿う長さ寸法よりも長くて斜めに延びており、外周側面3Cを広く覆いやすい形態になっている。
これにより、延長部6Cは、巻芯方向Lに沿って延びる形態としたものよりも、外周側面3Cをより大きな面積で覆うこととなる。
【0035】
また、第1および第2の屈曲部6D,6Eは、互いにねじれの位置関係をなしつつ、第1端面3Aおよび第2端面3Bの縁部の接線方向L1,L2に沿って折れ線をなすように屈曲形成させられている。これにより、第1および第2の屈曲部6D,6Eに連続する延長部6Cは、自然とねじれ変形した形態になるので、この延長部6Cを外周側面3Cに対して容易に沿わせることができる。
【0036】
さらに、延長部6Cは、ケース1の内周壁12に沿って、ねじれ変形した形態にもなっている。そのため、延長部6Cは、内周壁12と外周側面3Cとの間に形成された湾曲空間状の隙間に適切に位置している。
これにより、延長部6Cについては、ねじれ変形などがなく、まっすぐ延びるものと比べた場合、内周壁12と接触しない範囲内においてできる限り幅広に形成することができる。すなわち、延長部6Cは、電流路としての断面積をより大きく確保することができる。
【0037】
したがって、フィルムコンデンサAによれば、第2の接続導体6の延長部6Cを幅広に形成して断面積を大きくすることができ、耐電流性能を向上させることができる。
【0038】
また、作動時にコンデンサ素子3において生じる磁束と、第2の接続導体6を流れる電流により生じる磁束とは、延長部6Cにより外周側面3Cが覆われる面積が大きくなるほど互いに打ち消し合う効果が高められる。これにより、フィルムコンデンサAでは、磁力線の打ち消し効果によってインダクタンスをより低減させることができる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について、図面を参照して説明する。なお、上記第1実施形態によるものと同一または類似の構成要素については、同一符号を付してその説明を略する。
【0040】
図8は、本発明の第2実施形態に係るフィルムコンデンサの分解斜視図である。図9は、そのフィルムコンデンサの一部切欠き側面図、図10は、そのフィルムコンデンサの一部切欠き上面図、図11は、そのフィルムコンデンサの一部切欠き底面図である。なお、図8では、便宜上、一部の部材を省略している。
【0041】
図8〜11に示すように、第2実施形態のフィルムコンデンサBも、ケース1、蓋2、コンデンサ素子3、第1および第2の電極端子4A,4B、第1の接続導体5、および第2の接続導体7を備えている。第2実施形態のフィルムコンデンサBは、第1実施形態のものとは第2の接続導体7の形態が異なるだけであり、その余の構成は同一である。
【0042】
図12は、第2の接続導体7の平面図である。同図に示すように、第2の接続導体7は第1の接続導体5より長い帯状で、平面視において折れ曲がった金属板を概ねブラケット状に屈曲して形成されている。
【0043】
第2の接続導体7は、第2の電極端子4Bに接続される中間部7A、第2の取出し電極3B’に接続される両端側2つの端部7B、中間部7Aと両端側2つの端部7Bとの間に形成される一対の延長部7C、中間部7Aから延長部7Cのそれぞれへと屈曲する一対の第1の屈曲部7D、延長部7Cのそれぞれから端部7Bのそれぞれへと屈曲する一対の第2の屈曲部7Eを有する。
なお、以下の説明においては、両端側2つの端部7Bをまとめた呼称として両端部7Bと称する。
【0044】
図9〜11に示すように、中間部7Aおよび両端部7Bの接続部分以外の部分、延長部7C、ならびに、第1および第2の屈曲部7D,7Eは、絶縁材7’により被覆されている。これにより、第2の接続導体7にも、リーク電流の低減対策が施されている。
【0045】
図9に示すように、中間部7Aは、第1実施形態の一端部6Aに相当する部分である。図10に示すように、中間部7Aは、第1端面3A(第1の取出し電極3A’)の縁近傍からこれに対向する縁近傍まで延びており、絶縁板33を大きく覆っている。中間部7Aは、第2の電極端子4Bの基端部に接合され、一定の幅寸法に形成されている。
【0046】
図9および図11に示すように、両端部7Bは、第1実施形態の他端部6Bに相当する部分である。両端部7Bは、互いに対向するように配置されている。両端部7Bは、はんだ付けにより一括して第2の取出し電極3B’に接合され、一定の幅寸法に形成されている。
なお、本実施形態では、中間部7Aと両端部7Bとの幅寸法が同一であるが、異なる幅寸法であってもよい。
【0047】
延長部7Cは、第1実施形態の延長部6Cと同様であり、コンデンサ素子3の巻芯方向Lに対して斜めに延びているが、図9に示すように、コンデンサ素子3を挟んで互いに対向した位置に一対設けられている。
これらの延長部7Cも、外周側面3Cに沿ってねじれ変形しており、当該外周側面3Cの一部を覆っている。
【0048】
図12に示すように、一対の第1の屈曲部7Dは、互いに線対称となるように屈曲形成されている。
図10に示すように、一対の第1の屈曲部7Dは、第1端面3Aを挟んで互いに対向する位置に配置されている。一方の第1の屈曲部7Dは、第1端面3Aの接線方向L1に概ね沿うように配置されており、他方の第1の屈曲部7Dは、第1端面3Aの上記接線方向L1と線対称をなす接線方向L1’に概ね沿うように配置されている。
その他の点について、第1の屈曲部7Dのそれぞれは、第1実施形態の第1の屈曲部6Dと同様である。
【0049】
図12に示すように、一対の第2の屈曲部7Eは、互いに線対称となるように屈曲形成されている。
図11に示すように、一対の第2の屈曲部7Eは、第2端面3Bを挟んで互いに対向する位置に配置されている。一方の第2の屈曲部7Eは、第2端面3Bの接線方向L2に概ね沿うように配置されており、他方の第2の屈曲部7Eは、第2端面3Bの接線方向L2と線対称をなす接線方向L2’に概ね沿うように配置されている。
その他の点について、第2の屈曲部7Eのそれぞれは、第1実施形態の第2の屈曲部6Eと同様である。
このような第1および第2の屈曲部7D,7Eも、延長部7Cの両側に位置するもの同士がねじれの位置関係をなすように配置される。
【0050】
上記フィルムコンデンサBでは、次のような効果が得られる。
【0051】
一対の延長部7Cは、絶縁板33を挟んで対向する外周側面3Cの2つの部分を覆うことになる。これにより、外周側面3C全体のうち延長部7Cにより覆われる部分の面積は、たとえば第1実施形態によるものと延長部7Cなどの幅寸法が同じ場合、2倍程度大きくなる。
【0052】
したがって、フィルムコンデンサBによれば、耐電流性能の向上およびインダクタンスの低減をより一層図ることができる。
【0053】
また、フィルムコンデンサBでは、製造工程上、次のような利点もある。たとえば、第1実施形態において適用された第2の接続導体6を2つ用いれば、第2実施形態によるものと同程度の電磁的効果を期待することができるが、その場合、第2の電極端子4Bや第2の取出し電極3B’に対して2つの接続導体6を個別にはんだ付けしなければならず、製造工程が増えることになる。一方、フィルムコンデンサBによれば、1つの接続導体6をはんだ付けするだけでよいので、製造工程を複雑化せずに電磁的効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
A,B フィルムコンデンサ
1 ケース
10 開口部
3 コンデンサ素子
3A 第1端面
3B 第2端面
3C 外周側面
3A’ 第1の取出し電極
3B’ 第2の取出し電極
30 誘電体フィルム
30A,30B 金属化フィルム
31 金属蒸着電極
4A 第1の電極端子
4B 第2の電極端子
5 第1の接続導体
6,7 第2の接続導体
6A 一端部
7A 中間部
6B 他端部
7B 両端部
6C,7C 延長部
6D,7D 第1の屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14