特許第5783998号(P5783998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783998
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20150907BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20150907BHJP
【FI】
   B60R21/2338
   B60R21/205
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-287689(P2012-287689)
(22)【出願日】2012年12月28日
(62)【分割の表示】特願2008-535325(P2008-535325)の分割
【原出願日】2007年9月11日
(65)【公開番号】特開2013-56671(P2013-56671A)
(43)【公開日】2013年3月28日
【審査請求日】2012年12月28日
(31)【優先権主張番号】特願2006-257787(P2006-257787)
(32)【優先日】2006年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【復代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(72)【発明者】
【氏名】井戸本 武士
(72)【発明者】
【氏名】田伏 啓哉
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−306358(JP,A)
【文献】 特開2004−314933(JP,A)
【文献】 特開2006−051884(JP,A)
【文献】 特開2000−033842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアパネル及びフロントパネルを縫合したエアバッグであって、
前記リアパネルの周縁及び該周縁に対応するフロントパネルの周縁を縫合してある周縁縫合部と、
前記フロントパネルから突設され、または、前記フロントパネルの先端に縫合により取り付けられる前記リアパネルの内面に縫合された2つのテザー部と
を備え、
一のテザー部の先端と前記リアパネルの右内面とが縫合され、他のテザー部の先端と前記リアパネルの左内面とが縫合されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記一のテザー部は、前記リアパネルの右内面略中央部に縫合され、前記他のテザー部の先端は、前記リアパネルの左内面略中央部に縫合されている
ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記一のテザー部が縫合される前記リアパネルの右内面略中央部、及び、前記他のテザー部が縫合される前記リアパネルの左内面略中央部に縫合する際の目印がプリントされている
ことを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアパネル及び2枚のフロントパネルからなるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車両衝突時、その衝撃を感知してインフレータ(ガス発生器)から発生させたガスをエアバッグ内に注入し、膨張・展開させて、乗員と車体との間に介在させることにより乗員への衝撃を緩和してこれを保護するエアバッグ装置が普及している。近年では、乗員の顔面、上体を保護するためステアリングホイール及び助手席側のインパネ(Instrumental Panelの略)にエアバッグが装備され、一層の安全性が確保されるようになっている。
【0003】
より安全性を向上させるべく、動作時に特殊な形状に膨張・展開させる技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のエアバッグは、右半側エアバッグと左半側エアバッグとを設け、動作時には左右の胸に存在する硬くて強い肋骨を右半側エアバッグ及び左半側エアバッグにより受け止める。また、右半側エアバッグと左半側エアバッグとの間には空間部が設けられている。動作時には、胸の中央に存在する胸骨を右半側エアバッグ及び左半側エアバッグではなく、これらの間の空間部へ導くことにより、その衝撃を緩和している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−244005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1に記載のエアバッグは、2枚のフロントインナパネル、2枚のフロントアウタパネル、リアインナパネル及びリアアウタパネルの計6枚のパネルを用いる必要があり、バッグ収納容積が大きくなるという問題があった。またこれらのパネルを縫合するには非常に手間がかかるという問題があった。
【0006】
さらに、特許文献1に記載のエアバッグは右半側エアバッグ及び左半側エアバッグの左右の側面同士が所定の長さ以上に離反することを防止するために、フロントインナパネル及びフロントアウタパネルのそれぞれに吊紐を縫いつけており、さらにその製造に手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、頭部または胸部を適切に保護することが可能なエアバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアバッグは、リアパネル及びフロントパネルを縫合したエアバッグであって、前記リアパネルの周縁及び該周縁に対応するフロントパネルの周縁を縫合してある周縁縫合部と、前記フロントパネルから突設され、または、前記フロントパネルの先端に縫合により取り付けられる前記リアパネルの内面に縫合された2つのテザー部とを備え、一のテザー部の先端と前記リアパネルの右内面とが縫合され、他のテザー部の先端と前記リアパネルの左内面とが縫合されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るエアバッグは、前記一のテザー部は、前記リアパネルの右内面略中央部に縫合され、前記他のテザー部の先端は、前記リアパネルの左内面略中央部に縫合されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るエアバッグは、前記一のテザー部が縫合される前記リアパネルの右内面略中央部、及び、前記他のテザー部が縫合される前記リアパネルの左内面略中央部に縫合する際の目印がプリントされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、フロントパネルに突設されるテザー部により、リアパネルが所定幅以上に膨張することを阻止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】フロントパネルの形状を示す平面図である。
図2】リアパネルの形状を示す平面図である。
図3】2枚のフロントパネルを縫合した際の状態を示す平面図である。
図4】折り返し線にてリアパネルを折り返した状態を示す模式的斜視図である。
図5】右リアパネルにフロントパネルを縫合した状態を示す模式的斜視図である。
図6】エアバッグを助手席側のインパネに取り付け、これを膨張・展開させた状態を示す模式的側面図である。
図7】エアバッグを膨張・展開させた状態を示す模式的正面図である。
図8図6のVIII-VIII線による模式的断面図である。
図9】実施の形態2に係るフロントパネル及びテザー部の形状を示す平面図である。
図10】フロントパネル及びテザー部、並びに、フロントパネル及びテザー部を縫合した際の状態を示す平面図である。
図11】実施の形態3に係るフロントパネル及びテザー部の形状を示す平面図である。
図12】フロントパネルの形状を示す平面図である。
図13】2枚のフロントパネルを縫合した際の状態を示す平面図である。
図14】実施の形態5に係るフロントパネルの形状を示す平面図である。
図15】フロントパネルを縫合した際の状態を示す平面図である。
図16】フロントパネルにテザー部を縫合した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本発明に係るエアバッグは2枚のフロントパネル及び1枚のリアパネルにより製造される。図1はフロントパネルの形状を示す平面図である。図において10はフロントパネルである。フロントパネル10は、ナイロン繊維を編み込んだ生地からなり、平面視がオカリナ形状となるよう裁断している。フロントパネル10は、略半楕円形状の頭部13、頭部13と反対方向へ突設されるテザー部11、及び、頭部13とテザー部11とを連結する矩形状の連結部12を含んで構成される。なお他の1枚のフロントパネル20(図3参照)も略同一形状をなしている。
【0014】
テザー部11は、矩形状をなし、長手方向に沿ってその一辺に白抜き丸印で示す第1ガイドマーク14、14、・・・がプリントされている。テザー部11の長辺一辺は後述するようにリアパネルの内面に縫合され、エアバッグの展開時に、リアパネルとフロントパネル10とが所定距離以上離反することを防止する。第1ガイドマーク14、14、・・・はリアパネルの内面に縫合する際の目印となるものである。また、第1ガイドマーク14、14・・・がプリントされている一辺と反対側のテザー部11長辺の他辺上には、直線状の基部160が形成されている。後述する如く直線状の基部160の上には第2ガイドマーク15、15、・・・がプリントされる。なお、本実施の形態においては、説明を容易にするため、第1ガイドマーク14、14、・・・がプリントされている形態について説明するが、必ずしもプリントする必要はない。また、本実施の形態においては矩形状のテザー部11を用いて説明する。しかし、第1ガイドマーク14、14、・・・がプリントされる一の長辺が、基部160が設けられる他の長辺よりも短い台形状のテザー部11を用いるなど、適宜の形態を利用すればよい。
【0015】
テザー部11の基部160に連結される連結部12は矩形状をなし、基部160の反対側において頭部13と連結する。連結部12は略半楕円形状の頭部13中央部よりも上側部分にて、頭部13と連結されている。頭部13及び連結部12の周縁は、リアパネルの周縁に縫合される部位である弧状周縁133、並びに、フロントパネル10とフロントパネル20とを縫合する部位である略L字型のL字周縁134、134から構成される。
【0016】
フロントパネル10には、L字周縁134、直線状の基部160及びL字周縁134に沿って、フロントパネル10とフロントパネル20とを縫合する際の目印となる第2ガイドマーク15、15、・・・がプリントされている。この白抜き長方形で示す第2ガイドマーク15、15、・・・は平面視において凹状をなし、テザー部11の突設方向と同方向に凹が形成されるようプリントされている。一方、頭部13の弧状周縁133には、白抜き三角形で示す第3ガイドマーク16、16、・・・が弧状周縁133に沿ってプリントされている。
【0017】
第3ガイドマーク16、16、・・・は、フロントパネル10とフロントパネル20とを縫合するための目印となる第2ガイドマーク15、15、・・・と異なり、リアパネルとフロントパネル10の弧状周縁133とを縫合する際の目印となるものである。
【0018】
図2はリアパネルの形状を示す平面図である。図において平面視が象の耳・鼻・頭部のシルエットに近似する30はリアパネルである。リアパネル30もフロントパネル10と同じく、ナイロン繊維を編み込んだ生地を裁断したものである。リアパネル30は中央の一点鎖線で示す折り返し線を中心に対称形をなし、左リアパネル31L、右リアパネル31R、及び、折り返し線下向きへ突設されるインフレータ接続部32を含んで構成される。インフレータ接続部32の中央部上側には環状のインフレータ導入口33が裁断によりくり抜かれており、エアバッグ展開時は、インフレータ導入口33から、図示しないガス供給部からのガスがエアバッグ内に注入される。
【0019】
インフレータ接続部32の周縁、並びに、左リアパネル31L及び右リアパネル31Rの下部周縁には、インフレータ接続部32の長手方向の一辺と左リアパネル31Lの下部周縁とを縫合する際の目印となる、白抜き菱形で示す第4ガイドマーク34、34、・・・がプリントされている。同様にこれと対称位置に、インフレータ接続部32の長手方向の他辺と右リアパネル31Rの下部周縁とを縫合する際の目印となる、白抜き菱形で示す第4ガイドマーク34、34、・・・もプリントされている。
【0020】
左リアパネル31Lの弧状周縁133は、フロントパネル10の弧状周縁133に対応するものであり、第4ガイドマーク34、34、・・・がプリントされた以外の周縁部分に相当する弧状周縁133には白抜き三角形で示す第3ガイドマーク16、16、・・・がプリントされている。左リアパネル31Lの略中央部には折り返し線と直交する方向へ白抜き丸印の第1ガイドマーク14、14、・・・がプリントされている。この左リアパネル31L内面の第1ガイドマーク14、14、・・・は、図1で示すフロントパネル10に突設されるテザー部11一辺(先端)にプリントされる第1ガイドマーク14、14、・・・に対応するものである。右リアパネル31Rは左リアパネル31Lとの対称位置にそれぞれ、第1ガイドマーク14、14、・・・、第3ガイドマーク16、16、・・及び第4ガイドマーク34、34、・・・がプリントされている。なお、上述したようにフロントパネル10、20またはリアパネル30にプリントした第1ガイドマーク14、14、・・・、第2ガイドマーク15、15、・・・、第3ガイドマーク16、16、・・または第4ガイドマーク34、34、・・・等は説明を容易にするために記載したものであり、必ずしもプリントする必要はない。
【0021】
以上述べた2枚のフロントパネル10、20及びリアパネル30を用いてエアバッグを製造する手順を説明する。まず、フロントパネル10、20を縫合する工程について説明する。図3は2枚のフロントパネル10、20を縫合した際の状態を示す平面図である。フロントパネル20の上に、略同一形状のフロントパネル10を周縁が一致するよう重ね合わせ、第2ガイドマーク15、15、・・・に沿ってフロントパネル10及びフロントパネル20を縫合し、黒色長方形で示す凹状の第2縫合部(凹状縫合部)151、151、・・・を形成する。第2縫合部151、151、・・・は第2ガイドマーク15、15、・・・と同じくL字周縁134、直線状の基部160及びL字周縁134に沿って凹状に形成される。これによりフロントパネル10、20の縫合により凹状の袋が形成され、エアバッグ展開時にはこの袋部分にて頭部または胸骨が受け止められることになる。
【0022】
次いでリアパネル30の縫合工程について説明する。図4は折り返し線にてリアパネル30を折り返した状態を示す模式的斜視図である。図2に示すリアパネル30を、折り返し線を中心に紙面から視線方向へ向かう方向へ折り曲げ、左リアパネル31L上に右リアパネル31Rを重ね合わせる。インフレータ接続部32及びインフレータ導入口33も同様に折り返し線を中心に同方向(紙面から視線方向へ向かう方向)へ折り曲げる。そして、矢印の方向に折り曲げたインフレータ接続部32の長手方向一辺の第4ガイドマーク34、34、・・・と右パネル31Rの第4ガイドマーク34、34、・・・とを重ね合わせ縫合し、黒色菱形で示す第4縫合部341、341、・・・を形成する。同様に、インフレータ接続部32の長手方向他辺の第4ガイドマーク34、34、・・・と左パネル31Lの第4ガイドマーク34、34、・・・とを重ね合わせ縫合し、第4縫合部341、341、・・・を形成する。最後に、インフレータ接続部32の先端短辺321、321同士を縫合する。リアパネル30の下部には側面視半円状のインフレータ導入口33がリアパネル30の外部を臨んで開口する。
【0023】
最後に2枚のフロントパネル10、20及びリアパネル30を縫合する工程について説明する。図5は右リアパネル31Rにフロントパネル10を縫合した状態を示す模式的斜視図である。内面に折り返したリアパネル30へ、第2縫合部151、151、・・・により縫合されたフロントパネル10及びフロントパネル20を、テザー部11を先頭に挿入する。そして、フロントパネル10に突設されるテザー部11先端の第1ガイドマーク14、14、・・・と右リアパネル31Rの内面にプリントされた第1ガイドマーク14、14、・・・同士とを重ね合わせこれらを縫合し、黒色丸印で示す第1縫合部141、141、・・・を形成する。このテザー部11の右リアパネル31Rへの縫合によりフロントパネル10と右リアパネル31Rとが所定幅以上離反することが防止される。
【0024】
次に、フロントパネル10の弧状周縁133を右リアパネル31Rの弧状周縁133の形状に沿わせて折り曲げる。そして、フロントパネル10の第3ガイドマーク16、16、・・・と右リアパネル31Rの第3ガイドマーク16、16、・・・とを重ね合わせて縫合し、黒色三角形で示す第3縫合部(周縁縫合部)161、161、・・・を形成する。同様に、一方のフロントパネル20についても、第1ガイドマーク14、14、・・・を左リアパネル31Lの第1ガイドマーク14、14、・・・に重ね合わせて縫合し、第1縫合部141、141、・・・(図示せず)を形成する。またフロントパネル20の弧状周縁133にプリントした第3ガイドマーク16、16、・・・を左リアパネル31Lの弧状周縁133にプリントした第3ガイドマーク16、16、・・・に重ね合わせて縫合し、第3縫合部161、161、・・・(図示せず)を形成する。なお、本実施の形態においては、テザー部11を右リアパネル31Rまたは左リアパネル31Lへ第1縫合部141、141、・・・により先に縫合してから、フロントパネル10及び右リアパネル31R、または、フロントパネル20及び左リアパネル31Lを第3縫合部(周縁縫合部)161、161、・・・で縫合する例について説明したが、この逆の手順であっても良い。すなわち、フロントパネル10及び右リアパネル31R、または、フロントパネル20及び左リアパネル31Lを第3縫合部(周縁縫合部)161、161、・・・で縫合した後に、テザー部11を右リアパネル31Rまたは左リアパネル31Lへ第1縫合部141、141、・・・により縫合し、最後にインフレータ接続部32を第4縫合部341、341、・・・にて縫合するようにしても良い。縫合順序は製造状況に応じて適宜変更すれば良い。
【0025】
図6はエアバッグを助手席側のインパネに取り付け、これを膨張・展開させた状態を示す模式的側面図であり、図7はエアバッグを膨張・展開させた状態を示す模式的正面図であり、図8図6のVIII-VIII線による模式的断面図である。上述した縫合工程により製造したエアバッグは適当な形に折りたたまれエアバッグケース2に収納される。図5に示したインフレータ導入口33に、インフレータ3の図示しないガス供給管が挿入される。インフレータ3及びエアバッグケース2は助手席側のインパネ1内部に埋設される。衝突等によりエアバッグを膨張・展開させる場合、インフレータ3の図示しないガス供給管からガスが供給され、インフレータ導入口33を経てエアバッグ内部にガスが注入される。なお、インフレータ導入口33及びインフレータ接続部32の図示は省略している。
【0026】
エアバッグはインパネ1及びフロントガラス4に沿って膨張・展開する。注入されたガスは、右リアパネル31R及びフロントパネル10の凹状の第2縫合部151、151、・・・、弧状の第1縫合部141、141、・・・及び第4縫合部341、341、・・・によって規定される空間に充填される。同様に、注入されたガスは、左リアパネル31L及びフロントパネル20の凹状の第2縫合部151、151、・・・、弧状の第1縫合部141、141、・・・及び第4縫合部341、341、・・・によって規定される空間にも充填される。
【0027】
これにより図7に示すようにエアバッグがフロントパネル10及びフロントパネル20を乗員側に向けて左右対称に膨張・展開する。フロントパネル10とフロントパネル20との間が第2縫合部151、151、・・・により縫合されており、フロントパネル10とフロントパネル20との離反が防止されている。また第2縫合部151、151、・・・は側面視において凹状をなすことから、テザー部11の基部160を終端として連結部12、12と共に形成される凹状の袋が形成される。膨張・展開時には、フロントパネル10及びフロントパネル20に肩部または肋骨が接触し、衝撃を軽減すると共に、凹状の袋には頭部または胸部が受け止められ、適切に衝撃を緩和することができる。さらに、テザー部11はフロントパネル10の一部から構成、すなわちフロントパネル10の一部をテザー部11として利用し、テザー部11の先端をリアパネルに縫合するので、より簡単な工程でエアバッグを製造することが可能となる。
【0028】
また第3縫合部161、161、・・・の形成方向反対側に向けてフロントパネル10及びフロントパネル20に突設されるテザー部11、11の一辺(先端)は図6及び図8に示す如く、左リアパネル31Lの内面及び右リアパネル31Rの内面の第1縫合部141、141、・・・により縫合されている。従って、第2縫合部151、151、・・・により規定されるテザー部11他辺上の基部160と、第1縫合部141、141、・・・により規定されるテザー部11一辺(先端)との間隔を限度として、フロントパネル10と右リアパネル31Rとの間隔、及びフロントパネル20と左リアパネル31Lとの間隔が、膨張・展開時に規制されることになる。
【0029】
なお、以上の実施の形態においてはエアバッグを助手席側のインパネ1に埋設する形態につき説明したがこれに限るものではない。例えば、運転席側のハンドル部分に埋設、後部座席乗員のために前席背面に埋設、またはオートバイのハンドル部分に埋設する形態であっても良い。また本実施の形態においてはリアパネル30、フロントパネル10、フロントパネル20、テザー部11及びテザー部11によりエアバッグを構成したが、必要に応じて他のパネルを追加で縫合するようにしても良い。
【0030】
実施の形態2
実施の形態1においては、テザー部11がフロントパネル10の一部から構成されている形態につき説明したが、テザー部11とフロントパネル10とを別体で構成しても良い。図9は実施の形態2に係るフロントパネル10及びテザー部11の形状を示す平面図である。フロントパネル10は、実施の形態1に係るフロントパネル10よりも、テザー部11が別体となっている分だけ突設部分が短く切り取られている。矩形状のテザー部11は、フロントパネル10と同一素材またはポリウレタン繊維等の伸縮性素材が複合された素材が用いられる。テザー部11の基部160がフロントパネル10の第2ガイドマーク15の下側に位置するよう、フロントパネル10をテザー部11上に載置する。なお、フロントパネル20についても同様の構成であるので詳細な説明は省略する。
【0031】
図10はフロントパネル10及びテザー部11、並びに、フロントパネル20及びテザー部11を縫合した際の状態を示す平面図である。フロントパネル10とフロントパネル20との間にそれぞれの一部が重複する形で、テザー部11、11が挿入される。フロントパネル10の第2ガイドマーク15とフロントパネル20の第2ガイドマーク15との間に、テザー部11、11の基部160、160が存在するかを確認する。その上で、第2ガイドマーク15、15、・・・に沿ってフロントパネル10、テザー部11の基部160、160、フロントパネル20を縫合し、黒色長方形で示す凹状の第2縫合部(凹状縫合部)151、151、・・・を形成する。なお、テザー部11の形状は本実施の形態の如く縦長矩形状に限るものではなく、横長矩形状のものであっても良い。このようにフロントパネル10とテザー部11とを別に構成することで、テザー部11の素材を伸縮性のある素材に適宜変更する等、自由な設計が可能となる。また、テザー部11の基部160、160、フロントパネル10及びフロントパネル20の縫合を第2縫合部151、151、・・・により一度で行うことで、製造工程が簡略化される。
【0032】
本実施の形態2は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0033】
実施の形態3
実施の形態3に示す如く、テザー部11の基部160を第2縫合部151とは別に縫合しても良い。図11は実施の形態3に係るフロントパネル10及びテザー部11の形状を示す平面図である。フロントパネル10及びテザー部11は、実施の形態2と同様の形状から成り、テザー部11の素材も実施の形態2と同様のものが用いられる。テザー部11の基部160がフロントパネル10の先端辺と第2ガイドマーク15、15、・・・との間に位置するよう、テザー部11上にフロントパネル10を載置する。なお、フロントパネル10上にテザー部11を載置するようにしても良い。
【0034】
そして、フロントパネル10の先端辺と第2ガイドマーク15、15、・・・との間、及び、テザー部11の基部160上を縫合し、第5縫合部111、111、・・・を形成する。これにより、別体のフロントパネル10とテザー部11の基部160とが結合される。その後、実施の形態1の図3で説明した如く、フロントパネル10とフロントパネル20とを縫合して凹状の第2縫合部151、151、・・・を形成する。この場合、テザー部11は第2縫合部151、151、・・・近傍から突設する。なお、フロントパネル20についても同様の構成であるので詳細な説明は省略する。
【0035】
本実施の形態3は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1及び2と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0036】
実施の形態4
実施の形態4は設計に応じてフロントパネル10、20の一部を切断する形態に関する。図12はフロントパネル10の形状を示す平面図である。実施の形態4におけるフロントパネル10は実施の形態1よりも長いテザー部11が突設されている。テザー部11は突設方向を長手方向とする長方形状をなしている。エアバッグのサイズ、膨張の許容度、及び、エアバッグの搭載位置等の各種設計に応じて当該テザー部11を長手方向と交差する方向で切断する。
【0037】
例えば図12の点線、または、一点鎖線で示す位置にて、長手方向と交差する方向へ向けてテザー部11の一部を切断する。テザー部11を短くする場合は、頭部13寄りの点線で示す位置にて、長手方向と交差する方向へ向けてテザー部11の一部を切断する。またこれよりも長くする場合は、頭部13から離れた一点鎖線で示す位置にて、長手方向と交差する方向へ向けてテザー部11の一部を切断する。なお、図示しないがフロントパネル20についても、フロントパネル10のテザー部11と同じ長さとなる位置にて、テザー部11を切断するようにすればよい。またフロントパネル10及び20を重ね合わせて同時に切断するようにしても良い。さらに、より長いテザー部11が必要とされる場合は、切断することなくテザー部11が突設されたフロントパネル10、20をそのまま用いればよい。これにより、設計に応じた最適な長さのテザー部11を有するフロントパネル10、20を作成することが可能となる。
【0038】
また設計に応じて凹状縫合部151の形状を変更しても良い。図13は2枚のフロントパネル10、20を縫合した際の状態を示す平面図である。凹状縫合部151の凹の深さも上述の如く設計に応じて変化させても良い。例えばテザー部11を長く設計する場合は、凹の深さが浅くなるよう凹状縫合部151を縫合により形成する。一方、テザー部11を短くする場合は、凹の深さが深くなるよう凹状縫合部151を縫合により形成する。
【0039】
図13は凹の深さを浅くした例である。テザー部11を長くする場合、凹の深さが浅い位置にて、すなわち頭部13寄りの位置にてフロントパネル10及び20の縫合を行い、図13の黒色長方形で示す第2縫合部151(凹状縫合部)を形成する。その一方で、テザー部11を短くする場合は、頭部13から離れた凹の深さが深い位置、すなわち図13の例では白抜き長方形で示す第2ガイドマーク15の位置にて、フロントパネル10及び20の縫合を行えば良い。このように構成することで、設計に応じた好ましい長さを有するテザー部11を作成することが可能となる。
【0040】
本実施の形態4は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至3と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0041】
実施の形態5
実施の形態5は1枚のフロントパネル10を用いる形態に関する。図14は実施の形態5に係るフロントパネル10の形状を示す平面図である。フロントパネル10は頭部13、13、及び、これらに連結する連結部12、12により構成される。フロントパネル10は長手方向略中央部の2点鎖線で示す位置を基準に、左右で対称となるよう構成されている。連結部12は略半楕円形状の頭部13中央部よりも上側部分にて、頭部13と連結されている。頭部13及び連結部12の周縁は、リアパネルの周縁に縫合される部位である弧状周縁133、133、及び、フロントパネル10を2点鎖線で示す位置を基準に折りたたみ、重ね合わせて縫合する部位である略L字型のL字周縁134、134、134、134から構成される。
【0042】
フロントパネル10の一部には、2点鎖線で示す略中央部にてフロントパネル10を折りたたんで、頭部13、13同士及び連結部12、12同士を重ね合わせて縫合する際の目印となる、第2ガイドマーク15がプリントされている。具体的にはL字周縁134に沿うフロントパネル10の周縁に沿って白抜き長方形で示す第2ガイドマーク15がプリントされる。さらに、フロントパネル10の連結部12上の、フロントパネル10の長手方向と交差する方向に縦断する位置にも第2ガイドマーク15がプリントされる。この交差する方向に縦断する第2ガイドマーク15は、凹の深さを調整すべく複数プリントしておけばよい。なお、本実施の形態においては説明を容易にするために、交差する方向に縦断する2種類の第2ガイドマーク15を図示している。
【0043】
凹の深さを浅くする場合は、頭部13寄りの第2ガイドマーク15に従って凹状に縫合すれば良い。また凹の深さを深くする場合は、頭部13からさらに離れた中央付近の第2ガイドマーク15に従って凹状に縫合すればよい。一方、頭部13の弧状周縁133には、白抜き三角形で示す第3ガイドマーク16、16、・・・が弧状周縁133に沿ってプリントされている。第3ガイドマーク16、16、・・・は、リアパネル30とフロントパネル10の弧状周縁133、133とを縫合する際の目印となるものである。
【0044】
図15はフロントパネル10を縫合した際の状態を示す平面図である。図14に示す2点鎖線に基づき、フロントパネル10を折り返し、頭部13、13同士、及び連結部12、12同士が略一致するよう、重ね合わせる。その後、第2ガイドマーク15のいずれか一つに従い、縫合を行い、黒色長方形で示す第2縫合部(凹状縫合部)151を凹状に形成する。図15の例では凹が深くなるよう頭部13から離れた位置の第2ガイドマーク15に従い縫合が行われている。
【0045】
図16はフロントパネル10にテザー部11を縫合した状態を示す説明図である。フロントパネル10の折りたたみ位置であるその一端には、テザー部11の基部160が縫合される。本実施の形態においては、テザー部11は、矩形状の2枚のテザー部11、11から構成される例を説明するが、これに限るものではない、例えば、フロントパネル10と同じく1枚の長方形状のテザー部を略中央部で折り返し、この折り返し部分を基部160としてフロントパネル10の一端に縫合するようにしても良い。
【0046】
フロントパネル10の一端表面に、一のテザー部11の基部160を重ね、さらにフロントパネル10の一端裏面に、他のテザー部11の基部160を重ね合わせる。そして一のテザー部11の基部160、フロントパネル10の一端、他のテザー部11の基部160の順にこれらを縫合する。一のテザー部11及び他のテザー部11の先端はそれぞれ実施の形態1で述べた如くリアパネル30の裏面に縫合される。なお、このようにして構成されたフロントパネル10及びテザー部11と、リアパネル30との縫合は実施の形態1で述べたとおりであるので詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施の形態5は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至4と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。以上述べたエアバッグの製造方法及びエアバッグは、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される趣旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、及び、構成配置等に制約されるものではない。また本願明細書中に用いられた表現及び用語は、説明を目的としたもので、特に限定される趣旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 インパネ
2 エアバッグケース
3 インフレータ
4 フロントガラス
10 フロントパネル
11 テザー部
12 連結部
13 頭部
14 第1ガイドマーク
15 第2ガイドマーク
16 第3ガイドマーク
160 基部
20 フロントパネル
30 リアパネル
31L 左リアパネル
31R 右リアパネル
32 インフレータ接続部
33 インフレータ導入口
34 第4ガイドマーク
133 弧状周縁
134 L字周縁
141 第1縫合部
151 第2縫合部(凹状縫合部)
161 第3縫合部(周縁縫合部)
341 第4縫合部
図1
図2
図3
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