(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のエアバッグ装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、ニーエアバッグ装置を例に採り説明する。ニーエアバッグ装置は、膝保護用エアバッグ装置である。ニーエアバッグ装置は、車両内に搭載されて、シート(運転席や助手席等)に着座した乗員を保護する。また、ニーエアバッグ装置は、乗員の膝部前方に配置される。ニーエアバッグ装置は、乗員の膝部の移動を抑制して主に乗員の膝部を保護する。以下では、運転席前方のインストルメントパネルに配置されたニーエアバッグ装置について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態のニーエアバッグ装置を搭載した車両の断面図である。
図1では、車両の運転席付近を側方から見て示している。
図1では、車両80の一部と乗員90を側面図で示している。
図2は、車両80に搭載したニーエアバッグ装置1の斜視図である。
図2では、車両80と乗員90の一部も示している。
【0011】
車両80は、一般的な乗用車である。車両80は、図示のように、運転席81と、乗員90を運転席81に拘束するシートベルト82とを備えている。車両80は、乗員90の前方(
図1では左方)に、ステアリングホイール83と、ステアリングホイール83が固定されたステアリングシャフト84と、インストルメントパネル85とを備えている。インストルメントパネル85は、フロントウインドウ86の下方に設けられている。インストルメントパネル85は、乗員90の脛部91の上方、及び、膝部92の前方(膝部前方という)に位置する。
【0012】
ニーエアバッグ装置1は、乗員90の膝部前方のインストルメントパネル85に配置される。ニーエアバッグ装置1は、車両80内で、ステアリングホイール83の下方に搭載される。ニーエアバッグ装置1は、左右の膝部92に対向するように、車両80のベース部2に配置される。ベース部2は、車両80内で膝部前方に設けられる。ベース部2は、ニーエアバッグ装置1のベースとなる部材又は部分であり、インストルメントパネル85の所定位置に設けられる。ベース部2は、例えば、ニーエアバッグ装置1が取り付けられるプレート、又は、ニーエアバッグ装置1の一部を収納するケースからなる。このように、ベース部2は、インストルメントパネル85に固定された部材により構成される。ただし、ベース部2は、インストルメントパネル85の所定部分であってもよい。この場合には、ニーエアバッグ装置1は、インストルメントパネル85に直接取り付けられる。
【0013】
ニーエアバッグ装置1は、ベース部2を覆う膝用の保護パネルである膝保護パネル10を備えている。膝保護パネル10は、乗員90の膝部92を保護するための部材である。膝保護パネル10は、膝部92に接触して膝部92の移動を妨げる。膝保護パネル10は、合成樹脂等により板状に形成され、膝部92に対向するように膝部前方に配置される。また、膝保護パネル10は、連結手段(連結部材や接着剤等)により、ベース部2又はインストルメントパネル85に分離可能に連結される。膝保護パネル10は、ニーエアバッグ装置1が作動するまで、連結手段により、ベース部2又はインストルメントパネル85に連結される。連結手段により、膝保護パネル10の脱落が防止される。ニーエアバッグ装置1が作動したときには、膝保護パネル10は、ベース部2又はインストルメントパネル85との連結が解除される。膝保護パネル10は、ベース部2から膝部92に向かって移動する。
【0014】
ここでは、膝保護パネル10は、車両80内に設けられたロアパネルからなる。膝保護パネル10は、インストルメントパネル85に連結されて、インストルメントパネル85の表面の一部を構成する。また、膝保護パネル10は、矩形状をなす。膝保護パネル10の一部は、インストルメントパネル85の表面形状に合わせて、湾曲して形成されている。膝保護パネル10は、上部に空所11を有する。空所11内には、ステアリングコラム87が配置される。ステアリングコラム87は、ステアリングシャフト84を囲む。膝保護パネル10とベース部2との間には、エアバッグとインフレータが収納される。
【0015】
図3は、本実施形態のエアバッグを展開して示す平面図である。
図3では、エアバッグ20内の構成を点線で示している。
図3Aは、膝保護パネル10側(表側という)から見たエアバッグ20を示す図である。
図3Bは、ベース部2側(裏側という)から見たエアバッグ20を示す図である。
ニーエアバッグ装置1は、図示のように、膨張展開可能なエアバッグ20と、エアバッグ20内に配置されたインフレータ3とを備えている。
【0016】
インフレータ3は、シリンダタイプのガス発生装置である。インフレータ3は、車両緊急時や衝撃検知時に、エアバッグ20内でガスを発生する。エアバッグ20は、インフレータ3から供給されるガスにより、所定形状に折り畳まれた状態から膨張展開する。インフレータ3は、エアバッグ20内の中央部に収納されて、車幅方向に沿って配置される。インフレータ3は、一端部に複数のガス噴出し口(図示せず)を有する。インフレータ3は、複数のガス噴出し口からガスを放射状に噴き出す。
【0017】
エアバッグ20は、平面視矩形状に形成された袋体である。エアバッグ20は、インフレータ3を内部に収納した状態で膝保護パネル10内に配置される。エアバッグ20は、インフレータ3が発生するガスにより、膝保護パネル10の裏側で膨張展開する。エアバッグ20は、表側に配置される表側基布21と、裏側に配置される裏側基布22とを有する。表側基布21と裏側基布22は、矩形状の布からなり、それぞれエアバッグ20の表面と裏面を構成する。表側基布21と裏側基布22は、エアバッグ20の内部に膨張可能な気室23を区画する。
【0018】
エアバッグ20は、重ね合わせた複数の基布21、22を接合して形成される。基布21、22は、外縁接合部24で、縫製や接着(ここでは、縫製)により接合される。外縁接合部24は、エアバッグ20の内外を区画して気室23の外縁形状を規定する。基布21、22は、外縁接合部24に沿って1列又は複数列縫製される。基布21、22の間には、気室23が形成される。エアバッグ20は、開口部25を有する。開口部25は、基布21、22を部分的に接合しないことでエアバッグ20に形成される。インフレータ3は、開口部25からエアバッグ20の内部に挿入される。インフレータ3が気室23内の所定位置に配置された後、エアバッグ20の開口部25の部分を縫製し(又は、折り畳んで)、開口部25が封鎖される。その状態で、インフレータ3が固定部材によりベース部2に固定される。エアバッグ20は、ベース部2と膝保護パネル10に取り付けられる。
【0019】
ベース部2と膝保護パネル10の間で、エアバッグ20の重ね合わせた一方側と他方側の基布21、22が、それぞれ膝保護パネル10とベース部2に取り付けられる。そのため、エアバッグ20は、ベース部用取付部(ベース取付部という)26、27と、膝保護パネル用取付部(パネル取付部という)28とを有する。ベース取付部26、27は、ベース部2に取り付けられる。パネル取付部28は、膝保護パネル10に取り付けられる。各取付部26、27、28の位置で、エアバッグ20は、ベース部2又は膝保護パネル10に1以上の固定部材(図示せず)で固定される。これにより、エアバッグ20が、ベース部2又は膝保護パネル10に取り付けられる。その際、ベース取付部26、27は、ベース部2の膝保護パネル10に対向する面(表面)に取り付けられる。パネル取付部28は、膝保護パネル10のベース部2に対向する面(裏面)に取り付けられる。
【0020】
ここでは、4つのベース取付部26、27が、エアバッグ20の長手方向(
図3では左右方向)に所定間隔を開けて設けられる。ベース取付部26、27は、それぞれベース部2に2箇所で固定される。一方のベース取付部26は、エアバッグ20の両端において気室23外に位置する。ベース取付部26では、両基布21、22がベース部2に取り付けられる。他方のベース取付部27は、気室23内でインフレータ3の両側に位置する。ベース取付部27では、裏側基布22のみがベース部2に取り付けられる。これに対し、パネル取付部28は、一方と他方のベース取付部26、27の間に1つずつ(計2つ)設けられる。パネル取付部28は、それぞれ膝保護パネル10に1箇所で固定される。パネル取付部28は、気室23内に位置する。パネル取付部28では、表側基布21のみが膝保護パネル10に取り付けられる。エアバッグ20は、各取付部26、27、28でベース部2と膝保護パネル10に取り付けられて、ベース部2と膝保護パネル10の間に配置される。
【0021】
図4は、ベース部2と膝保護パネル10の間に収納したエアバッグ20を示す断面図である。
図4では、膨張前のエアバッグ20を
図2の矢印X方向から見て模式的に示している。
エアバッグ20の取付部26、27、28は、図示のように、固定部材4により、プレート状のベース部2の表面や膝保護パネル10の裏面に取り付けられる。固定部材4は、基布21、22を貫通するネジやリベット等からなる。エアバッグ20は、折り畳まれた状態で車幅方向(
図4では左右方向)に配置される。エアバッグ20は、ベース部2と膝保護パネル10に挟まれて保持される。このエアバッグ20では、基布21、22を重ね合わせた状態で、パネル取付部28の周辺部分が折り畳まれる。エアバッグ20は、折り畳まれた形状から所定形状に向かって膨張する。エアバッグ20は、ベース部2と膝保護パネル10の間で膨張展開する。これにより、エアバッグ20は、膝保護パネル10を、ベース部2から乗員90の膝部92に向かって移動(
図4の矢印R)させる。
【0022】
図5は、膨張展開したエアバッグ20を示す断面図である。
エアバッグ20は、図示のように、気室23内にガスが充填されることで膨張展開する。膝保護パネル10は、膨張するエアバッグ20に押されて、ベース部2を覆う位置から乗員90の膝部92を保護する位置まで移動する。その際、ベース部2と膝保護パネル10に対する取付部26、27、28の位置が固定されているため、エアバッグ20は、取付部26、27、28の付近で屈曲するように膨張する。この膨張に伴い、屈曲部の間のエアバッグ20が、ベース部2から離れて、ベース部2と膝保護パネル10の間で次第に起立する。
【0023】
本実施形態のエアバッグ20は、少なくとも2つ(ここでは2つ)の起立部30を有する。2つの起立部30は、エアバッグ20の一部を構成する筒状部であり、エアバッグ20の所定部分(ここでは、両端部)に一体に形成されている。2つの起立部30の内部は、非起立部35を介して互いに連通する。起立部30は、エアバッグ20の膨張に伴い、ベース部2から膝保護パネル10に向かって起立するように膨張する。起立部30は、膨張によりベース部2から起立して、膝保護パネル10に向かって突出する。起立部30は、起立に伴い、膝保護パネル10をベース部2から乗員90の膝部92に向かって移動させる。これにより、膝保護パネル10が、ベース部2から離間して、膝部92を保護する位置に配置される。エアバッグ20は、膨張展開したときに、起立部30の先端で膝保護パネル10に接する。エアバッグ20の起立部30の間の部分は、膝保護パネル10から離れる。そのため、エアバッグ20と膝保護パネル10の間には、比較的大きな空間5が形成される。
【0024】
ここでは、起立部30は、それぞれ2つのベース取付部26、27と、2つのベース取付部26、27の間に配置された1つのパネル取付部28とを有する。起立部30が、取付部26、27、28でベース部2と膝保護パネル10に取り付けられるため、起立部30は、取付部26、27、28付近を頂点とした逆V字状に膨張する。起立部30は、パネル取付部28を中心に屈曲して、一対の傾斜部31を形成する。一対の傾斜部31は、パネル取付部28から互いに逆方向に傾斜して延び、それぞれベース部2と膝保護パネル10に取り付けられる。一対の傾斜部31は、互いに支え合うことで、起立部30を起立した状態に維持する。
【0025】
なお、エアバッグ20が折り畳まれた状態で(
図4参照)、重ね合わせた両基布21、22は、起立部30の起立方向Rと直交するように配置される。気室23の膨張により基布21、22同士が離れて、エアバッグ20が、厚さ方向に膨張展開する。また、取付部26、27、28がベース部2又は膝保護パネル10に取り付けられた状態で、エアバッグ20の2つの起立部30が起立する。これにより、エアバッグ20は、膝保護パネル10を所定距離だけ移動させる。その際、2つの起立部30は、同じタイミングで起立して、膝保護パネル10の全体を均等に移動させる。膝保護パネル10は、エアバッグ20の膨張と起立部30の起立により偏りなく移動する。その結果、膝保護パネル10の姿勢の変動が抑制される。
【0026】
ニーエアバッグ装置1は、車両80に搭載された後、車両80の緊急時等にインフレータ3を作動させる。インフレータ3は、ガスを発生して、エアバッグ20の気室23内にガスを供給する(
図5参照)。このガスにより、エアバッグ20を、折り畳み形状を解消させつつ膨張させる。エアバッグ20は、ベース部2と膝保護パネル10の間で膨張展開する。エアバッグ20が、まず、全体的に膨張することで、エアバッグ20の厚さが増加する。膝保護パネル10は、エアバッグ20の膨張の力で、インストルメントパネル85から分離する。また、膝保護パネル10の移動が開始する。続いて、起立部30が起立するのに伴い、膝保護パネル10が、起立部30に押される。膝保護パネル10は、乗員90の膝部92に向かって移動する。
【0027】
ニーエアバッグ装置1は、エアバッグ20の起立部30により、膝保護パネル10を移動させて膝部前方の所定位置に配置する。乗員90の膝部92は、膝保護パネル10に接触して、ニーエアバッグ装置1により拘束される。その際、ニーエアバッグ装置1は、膝保護パネル10により膝部92を受け止めて膝部92の移動を妨げる。同時に、膨張展開したエアバッグ20により衝撃エネルギーを吸収することで、膝部92に加わる衝撃を緩和する。これにより、ニーエアバッグ装置1は、膝部92を保護する。
【0028】
以上説明したニーエアバッグ装置1では、エアバッグ20に起立部30を設けたため、エアバッグ20の容量を小さくすることができる。その結果、エアバッグ20が完全に膨張展開する時間を短縮できるため、エアバッグ20が早期に設定形状に膨張する。また、起立部30が素早く膨張及び起立するため、膝保護パネル10の移動速度も速くなる。これにより、膝保護パネル10が、乗員90の膝部92を保護する位置まで短時間で移動して、膝部92に早期に接触する。また、膝保護パネル10を、少なくとも2つの起立部30により安定して支持できる。膝保護パネル10により、膝部92を受け止めて、乗員90の下肢を保護することができる。
【0029】
従って、本実施形態のニーエアバッグ装置1によれば、エアバッグ20の容量を小さくして、エアバッグ20を短時間で膨張展開させることができる。また、エアバッグ20により、膝保護パネル10を乗員90の膝部92に向かって迅速に移動させて、膝部92を早期にかつ確実に保護することができる。同時に、乗員90の腰部の前方移動を規制できるため、シートベルト82が乗員90を拘束する効果を高めることもできる。膝保護パネル10が割れたとしても、エアバッグ20により、膝部92を受け止め、かつ、衝撃エネルギーを吸収できるため、膝部92を保護できる。
【0030】
重ね合わせた基布21、22を接合することで、エアバッグ20を簡単に形成できる。その結果、エアバッグ20の製造の手間やコストを削減できる。基布21、22からなるエアバッグ20は、コンパクトに折り畳めるため、エアバッグ20の収納スペースを小さくすることもできる。また、重ね合わせた一方側の裏側基布22をベース部2に、他方側の表側基布21を膝保護パネル10に取り付けるときには、基布21、22の平面が、ベース部2と膝保護パネル10に取り付けられる。そのため、基布21、22を、ベース部2と膝保護パネル10に取り付け易くなる。基布21、22の取り付け作業も容易になる。また、エアバッグ20が、ベース部2及び膝保護パネル10と広い面積で接触するため、膝保護パネル10を、より安定して支持することもできる。
【0031】
エアバッグ20の起立部30に、ベース取付部26、27とパネル取付部28を設けたため、ベース部2と膝保護パネル10の間で、起立部30が、その形状や位置が変動せずに膨張する。起立部30は、設定された高さに起立する。これにより、膝保護パネル10の移動が規制されるため、膝保護パネル10を確実に所定位置に移動させることができる。起立部30が起立する高さを変更することで、膝保護パネル10が移動する位置を容易に調整することができる。
【0032】
起立部30には、2つのベース取付部26、27と、ベース取付部26、27の間に配置された1つのパネル取付部28を設けるのが好ましい。このようにすると、起立部30がパネル取付部28を中心に屈曲する。また、上記したように、起立部30の一対の傾斜部31が、互いに押し合うようにして支え合う。その結果、起立部30が安定するため、起立部30により、膝保護パネル10をしっかりと支持できる。また、膝保護パネル10に膝部92が接触したときに、衝撃エネルギーを分散して吸収できるため、衝撃エネルギーの吸収能力を高くすることができる。膝保護パネル10に加わる力も、2つのベース取付部26、27に向かって分散するため、各ベース取付部26、27に加わる力を小さくできる。そのため、ベース取付部26、27で、エアバッグ20をベース部2に強固に取り付ける必要がない。
【0033】
なお、起立部30は、各条件に対応して、エアバッグ20の複数箇所に適宜設けられる。この条件は、例えば、エアバッグ20と膝保護パネル10の形状、エアバッグ20と膝保護パネル10の大きさ、膝保護パネル10の移動態様、又は、膝部92の接触位置である。3つ以上の起立部30を、エアバッグ20に設けてもよい。エアバッグ20は、矩形状以外の形状(楕円形状や菱形形状等)に形成してもよい。エアバッグ20は、膝保護パネル10(
図2参照)の形状に合わせて、半円形状、U字形状、又は、V字形状に形成してもよい。
【0034】
図6は、V字形状に形成したエアバッグ40を展開して示す平面図である。
図6では、エアバッグ40内の構成を点線で示している。
図6Aは、表側から見たエアバッグ40を示す図である。
図6Bは、裏側から見たエアバッグ40を示す図である。
このエアバッグ40は、基本的には、既に説明したエアバッグ20と同様に構成されている。そのため、以下では、エアバッグ20と同じ構成は、同じ名前を付して、その詳しい説明は省略する。
【0035】
エアバッグ40は、図示のように、平面視V字形状をなす。エアバッグ40は、インフレータ3を内部に収納した状態で膝保護パネル10内に配置される。エアバッグ40は、表側基布41と裏側基布42とを有する。表側基布41と裏側基布42が外縁接合部43で接合されて、基布41、42の間に気室44が形成される。インフレータ3は、開口部45からエアバッグ40内に挿入される。
【0036】
エアバッグ40は、ベース取付部46、47と、パネル取付部48とを有する。ベース取付部46、47は、エアバッグ40の2つの先端とインフレータ3の両側に位置する。パネル取付部48は、ベース取付部46、47の間に位置する。エアバッグ40の各取付部46、47、48が、ベース部2又は膝保護パネル10に取り付けられる。エアバッグ40は、ベース部2と膝保護パネル10の間に配置される。エアバッグ40は、取付部46、47、48の位置で屈曲するように膨張する。膨張により、エアバッグ40のベース取付部46、47の間の部分(起立部49)が起立する。起立部49は、2つのベース取付部46、47と、ベース取付部46、47の間に配置された1つのパネル取付部48とを有する。起立部49は、パネル取付部48を中心に屈曲して、逆V字状に膨張する。
【0037】
エアバッグ40は、折り畳まれた状態で、膝保護パネル10(
図2参照)の空所11を囲むように、ベース部2と膝保護パネル10の間に収納される。エアバッグ40は、ステアリングコラム87の下方で、ステアリングコラム87の周囲に沿って配置される。即ち、エアバッグ40は、車両80のステアリングシャフト84の一部を下方から囲んで配置される。ベース取付部46、47は、ステアリングシャフト84の両側で、ベース部2に取り付けられる。ベース取付部46、47は、ベース部2の上下方向に距離を開けた位置に取り付けられる。エアバッグ40が膨張展開するときには、起立部49は、膨張によりベース部2から起立して、膝保護パネル10に向かって突出する。起立部49は、ステアリングシャフト84の両側で起立する。起立部49は、膝保護パネル10を移動させ、かつ、膝保護パネル10を支持する。
【0038】
このエアバッグ40では、運転席81の前方において、膝保護パネル10の両側部を支持できるため、膝保護パネル10の安定性が向上する。また、膝保護パネル10が膝部92を受け止めたときに、膝保護パネル10が傾くのを抑制できるため、乗員90の膝部92を、より安全に保護できる。
【0039】
次に、他の実施形態のエアバッグについて説明する。
図7は、他の実施形態のエアバッグ50を示す図である。
図7Aは、エアバッグ50を展開して示す平面図である。
図7Bは、エアバッグ50の一部を
図7Aの矢印Y方向から見た拡大図である。
図7Aでは、エアバッグ50内の構成を点線で示している。
【0040】
エアバッグ50は、図示のように、少なくとも2つの凸部51が設けられた複数の基布52、53からなる。凸部51は、エアバッグ50の起立部54となる起立部用の凸片である。凸部51は、同じ方向に突出するように基布52、53の同じ側に形成される。基布52、53は、第1の基布52と第2の基布53からなり、重ね合わせて外縁接合部55で接合される。エアバッグ50の基布52、53の間に気室56が形成される。インフレータ3は、開口部57からエアバッグ50の内部に挿入される。接合された基布52、53の凸部51は、エアバッグ50の膨張により、凸状(柱状)に膨張する。凸部51は、膨張により、ベース部2から膝保護パネル10に向かって突出して、ベース部2から起立(
図7Aの矢印S)する。
【0041】
エアバッグ50は、突出する凸部51の先端に、膝保護パネル10に接する平面部60(
図7B参照)を有する。ここでは、平面部60は、円形状の第3の基布61からなる。第3の基布61は、凸部51の先端で、第1の基布52と第2の基布53の間に配置される。第3の基布61の外周が基布52、53に接合される。平面部60及び第3の基布61は、起立部54が起立したときに、膝保護パネル10に沿って展開して、膝保護パネル10の裏面に押し付けられる。
【0042】
エアバッグ50は、各凸部51の逆側に配置された取付片58と、取付片58に設けられたベース取付部59と、平面部60に設けられたパネル取付部62とを有する。このエアバッグ50では、突出する凸部51の先端(ここでは平面部60)が膝保護パネル10に取り付けられる。エアバッグ50の取付部59、62が、それぞれベース部2と膝保護パネル10に取り付けられる。エアバッグ50は、ベース部2と膝保護パネル10の間に配置される。起立部54の端部は、ベース部2と膝保護パネル10に取り付けられる。その状態で、起立部54が、ベース部2と膝保護パネル10の間で膨張して、ベース部2から起立する。
【0043】
エアバッグ50は、折り畳まれた状態で、ベース部2と膝保護パネル10の間に収納される。その際、起立部54は、例えば、起立方向Sと直交する方向に折り曲げられて、蛇腹状に折り畳まれる。エアバッグ50が膨張展開すると、起立部54が起立する。起立部54は、膝保護パネル10を移動させる。膝保護パネル10は、乗員90の膝部前方に配置されて、起立部54により支持される。
【0044】
このエアバッグ50では、接合した凸部51の突出により、起立部54を円滑に起立させることができる。凸部51の先端を膝保護パネル10に取り付けたため、凸部51の長さにより、膝保護パネル10の移動距離を調整できる。これにより、膝保護パネル10の移動距離と配置位置を、容易に変更することもできる。凸部51の先端に設けた平面部60により、膝保護パネル10を広い面積で支持できる。その結果、膝保護パネル10が安定するため、膝保護パネル10を傾くことなく移動させることができる。同時に、膝部92が膝保護パネル10に接触したときに、膝保護パネル10が傾くのを抑制できるため、乗員90の膝部92を安全に保護できる。エアバッグ50は、真っ直ぐに延ばしてベース部2に取り付けてもよい。エアバッグ50は、途中で曲げて、ステアリングシャフト84の一部を下方から囲んで配置してもよい。
【0045】
なお、本発明は、ニーエアバッグ装置1に限定されず、他のエアバッグ装置に適用することもできる。即ち、上記と同様のエアバッグを、各種のエアバッグ装置のベース部と保護パネルの間に設けるようにしてもよい。例えば、車両80の側突用のエアバッグ装置では、エアバッグ装置は、ドア内に設けられた車両80のベース部に配置される。ベース部は、乗員90の保護パネルであるドアトリムにより覆われる。エアバッグは、ベース部とドアトリムの間で膨張展開する。エアバッグの起立部が起立して、ドアトリムを乗員90に向かって移動させる。エアバッグ装置は、ドアトリムに接触した乗員90を保護する。エアバッグの膨張展開時には、ドアトリムの全体を、乗員90に向かって移動させてもよい。また、ドアトリムの一部を、乗員90に向かって移動させてもよい。この場合には、ドアトリムの一部が、ドアトリムを兼ねる保護パネルになる。保護パネルは、ドアトリムに連結されて、ドアトリムの一部を構成する。エアバッグの膨張展開時には、保護パネルだけが乗員90に向かって移動する。
【0046】
歩行者用のエアバッグ装置では、エアバッグ装置は、ボンネット内に設けられた車両80のベース部に配置される。ベース部は、歩行者の保護パネルであるボンネットにより覆われる。エアバッグは、ベース部とボンネットの間で膨張展開する。エアバッグの起立部が起立して、ボンネットを移動させる。ボンネットは、エアバッグの起立部により持ち上げられる。エアバッグ装置は、ボンネットに接触した歩行者を保護する。
【0047】
このように、本発明は、エアバッグにより保護パネルを移動させる種々のエアバッグ装置に適用できる。各種のエアバッグ装置において、エアバッグの容量を小さくして、エアバッグを短時間で膨張展開させることができる。また、エアバッグにより、保護パネルを迅速に移動させることができる。上記した効果と同様の効果も得られる。なお、保護パネルとは、エアバッグにより移動して、人(例えば、乗員90や歩行者)を保護するためのパネルのことをいう。