(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784101
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】CNTネットワーク構成体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 31/02 20060101AFI20150907BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20150907BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20150907BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20150907BHJP
H01B 1/20 20060101ALN20150907BHJP
H01B 5/02 20060101ALN20150907BHJP
H01B 1/00 20060101ALN20150907BHJP
【FI】
C01B31/02 101F
H01B13/00 Z
B82Y40/00
B82Y30/00
!H01B1/20 Z
!H01B5/02 Z
!H01B1/00 H
!H01B1/00 E
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-263497(P2013-263497)
(22)【出願日】2013年12月20日
(62)【分割の表示】特願2009-278332(P2009-278332)の分割
【原出願日】2009年12月8日
(65)【公開番号】特開2014-159361(P2014-159361A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2013年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137800
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(74)【代理人】
【識別番号】100148079
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 裕明
(72)【発明者】
【氏名】吉原 久美子
(72)【発明者】
【氏名】小向 拓治
(72)【発明者】
【氏名】下元 温
【審査官】
山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−138338(JP,A)
【文献】
特開2006−045034(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/084788(WO,A1)
【文献】
特開2004−018328(JP,A)
【文献】
特開2005−343726(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0255799(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0137786(US,A1)
【文献】
特開2009−274936(JP,A)
【文献】
特開2010−052972(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/063984(WO,A1)
【文献】
特表2003−505332(JP,A)
【文献】
特開2009−074072(JP,A)
【文献】
特開2010−083755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B31/00−31/36
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイト層が単層または多層の同軸管状になった物質であるカーボンナノチューブ(CNT)を複数含み、これら各CNTを、グラファイト層同士が連続的に接合した箇所を有して電気伝導性に関するネットワークを構成させる、CNTネットワーク構成体の製造方法であって、
基板上に複数のCNTを配向成長させるステップと、
上記ステップにより基板上に配向成長しているCNTに対してアモルファスカーボンからなる接合補助材を添加するステップと、
上記ステップにより接合補助材を添加した後の基板上のCNTと共に当該接合補助材を加熱して各CNT同士を該接合補助材により接合を補助して接合することでCNTネットワーク構成体を作製するステップと、
を含むことを特徴とするCNTネットワーク構成体の製造方法。
【請求項2】
グラファイト層が単層または多層の同軸管状になった物質であるカーボンナノチューブ(CNT)を複数含み、これら各CNTを、グラファイト層同士が連続的に接合した箇所を有して電気伝導性に関するネットワークを構成させる、CNTネットワーク構成体の製造方法であって、
基板上に複数のCNTを配向成長させるステップと、
上記ステップにより基板上に配向成長しているCNTを、触媒金属塩または触媒金属コロイドまたは触媒金属微粒子を含む溶液に浸漬あるいは当該溶液をCNTにスプレーするステップと、
上記ステップにより上記溶液に浸漬あるいは当該溶液をスプレーした後のCNTをアモルファスカーボンからなる接合補助材の添加または添加無しで焼成することで上記溶液中に含む触媒金属塩または触媒金属コロイドまたは触媒金属微粒子を昇華させて複数のCNT同士を接合してなるCNTネットワーク構成体を作製するステップと、
を含むことを特徴とするCNTネットワーク構成体の製造方法。
【請求項3】
上記接合補助材がカーボンブラックである、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のCNT(カーボンナノチューブ)のネットワーク構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CNTは、グラファイト層が単層または多層で同軸管状になった物質である。このCNTは、周知されるように高アスペクト比、導電性、高強度、耐酸性等の優れた特徴を有し、このことから各種の補強材料、導電性材料等にその応用が期待されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−308583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CNT含有材料中においてCNTにより電気伝導性を持たせる場合、CNT同士が接触
してネットワークを形成して導電パスを形成することが重要である。
【0005】
しかしながら、実際はCNT同士の接触点に電気的な絶縁成分がわずかに介在しても、あるいはネットワーク中でのわずかな一部での接触態様に不良があってそこでの接触抵抗が高いような場合等には、その電気伝導性が容易に阻害されてしまう。従来のCNT含有導電材料では、このようなことは容易にしばしば起きることであり、当該材料における電気伝導性上の信頼性が低くなり、用途によっては採用し難い材料となってしまう(第1の課題)。
【0006】
また基材中にCNTを混入し、この混入CNTにより当該基材に強度を持たせようとする場合において、CNTは基材と一体となって補強材の機能を果たすことが重要である。
【0007】
しかしながら、実際の基材の切断面を観察した場合、CNTが基材から抜け落ちるなどして補強材としての機能を果たしていないことが多い(第2の課題)。
【0008】
したがって、本発明においては上記に鑑み、複数のCNT同士間で電気伝導性に関するネットワークが形成され、かつ、基材中に混入されて当該基材の補強に使用されるような場合、その補強材として基材と一体的に機能することができるCNTネットワーク構成体の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明第1によるCNTネットワーク構成体の製造方法は、グラファイト層が単層または多層の同軸管状になった物質であるカーボンナノチューブ(CNT)を複数含み、これら各CNTを、グラファイト層同士が連続的に接合した箇所を有して電気伝導性に関するネットワークを構成させる、
CNTネットワーク構成体の製造方法であって、
基板上に複数のCNTを配向成長させるステップと、
上記ステップにより基板上に配向成長しているCNTに対してアモルファスカーボンからなる接合補助材を添加するステップと、
上記ステップにより接合補助材を添加した後の基板上のCNTと共に当該接合補助材を加熱して各CNT同士を該接合補助材により接合を補助して接合することでCNTネットワーク構成体を作製するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0010】
ここで、上記「接合」とは、物理的な結合、化学的な結合(共有結合等)を含む概念である。
【0011】
また、上記「連続的」とはCNTがアモルファス層を介することなく結晶性を持つグラ
ファイト層で連続的に接合された状態をいう。
【0012】
本発明第1のCNTネットワーク構成体の製造方法においては、複数のCNTそれぞれが例えば最表面側のグラファイト層同士が連続的に接合した箇所を有するので、そのCNTネットワーク内に複数のCNTそれぞれの接触点に電気的な絶縁成分が介在しても、その接触点での接触抵抗が高くても、上記CNTネットワークにおける電気抵抗値が低くなり、CNTネットワークの電気伝導性が向上する。
【0013】
また、本発明第1のCNTネットワーク構成体の製造方法では、基材中に混入された場合、各CNTが単独で抜け落ちてしまうことがなくなり、基材と一体となった補強材として機能することができるようになる。
【0014】
さらに、本発明第1のCNTネットワーク構成体の製造方法では、CNT自体が強固なネットワーク構造体を形成するので、耐酸、耐アルカリに優れ、酸素が無い高温環境下で分解しにくく化学的に極めて安定した機能構造体となる。
【0018】
本発明第
2によるCNTネットワーク構成体の製造方法は、
グラファイト層が単層または多層の同軸管状になった物質であるカーボンナノチューブ(CNT)を複数含み、これら各CNTを、グラファイト層同士が連続的に接合した箇所を有して電気伝導性に関するネットワークを構成させる、CNTネットワーク構成体の製造方法であって、
基板上に複数のCNTを配向成長させるステップと、
上記ステップにより基板上に配向成長しているCNTを、触媒金属塩または触媒金属コロイドまたは触媒金属微粒子を含む溶液に浸漬あるいは当該溶液をCNTにスプレーするステップと、
上記ステップにより上記溶液に浸漬あるいは当該溶液をスプレーした後のCNTを
アモルファスカーボンからなる接合補助材の添加または添加無しで焼成することで上記溶液中に含む触媒金属塩または触媒金属コロイドまたは触媒金属微粒子を昇華させて複数のCNT同士を接合してなるCNTネットワーク構成体を作製するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0019】
上記溶液は、好ましくは加熱時に酸化剤として働くガスを放出しない溶液であり、例えば、水酸化鉄コロイド溶液、水酸化ニッケルコロイド溶液を例示することができる。触媒金属微粒子は、鉄微粒子、ニッケル微粒子を例示することができる。
【0020】
また、接合補助材はカーボンブラックが好ましい。
【0021】
カーボンブラックには、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、これらは単独で、または、2種以上を併用して使用することができる。
【0022】
これらのカーボンブラックは、目的とする導電性、補強材としての機能により適宜選択することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のCNTネットワーク構成体の製造方法によれば、当該ネットワーク内に複数のCNTそれぞれのグラファイト層同士が接合している接合箇所を有するので、CNTネットワークの電気伝導性が高くなると共に、CNTネットワーク構成体が基材中に混入された場合、CNTネットワーク構成体を形成する各CNTは上記接合箇所で接合されている結果、単独で抜け落ちてしまうことがなくなり、基材の補強材として機能することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1(a)は従来例によるCNTネットワーク構成体において複数のCNTの接触交点を部分破断して示す図、
図1(b)は
図1(a)のA−A線での断面構成を示す図である。
【
図2】
図2(a)は本発明によるCNTネットワーク構成体において複数のCNTそれぞれの接触交点を部分破断して示す図、
図2(b)は
図2(a)のB−B線での断面構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)はアモルファスカーボンを接合補助材として、CNT4c,4d最表面側のグラファイト層が接合している状態を示すTEM写真像を示す図、
図3(b)は、
図3(a)においてグラファイト層が接合している状態を示す模式図である。
【
図4】
図4は本発明の実施の形態にかかるCNTネットワーク構成体の製造方法の工程を示す図である。
【
図5】
図5は本発明の実施の形態にかかるCNTネットワーク構成体の別の製造方法の工程を示す図である。
【
図6】
図6は本発明の実施の形態にかかるCNTネットワーク構成体のさらに別の製造方法の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係るCNTネットワーク構成体を説明する。
図1(a)(b)を参照して従来のCNTネットワーク構成体1を説明すると、このCNTネットワーク構成体1は、複数のCNT2a,2b…を含む構造体である。図面では図解の都合で2本のCNT2a,2bのみを示す。これらCNT2a,2b…は、多層CNTである。多層CNTは、複数のグラファイト層が同軸管状になった物質である。このCNTネットワーク構成体1においては、図解の都合で、いずれのCNT2a,2bも層数がグラファイト層2a1,2a2,2a3;2b1,2b2,2b3の3層とする。従来のCNTネットワーク構成体1では、各CNT2a,2bそれぞれの最表面側のグラファイト層2a1,2b1は接合していない構造となっている。このネットワーク構造では、CNT2a,2bは接触交点で接触抵抗を有して接触しているから、CNT2a,2bそれ自体の電気伝導性が高くても、この接触交点での高い接触抵抗によりその電気伝導性は大きく低下している。
【0026】
したがって、以上説明した従来のCNTネットワーク構成体1では上記課題の欄で説明した第1、第2の課題を有する。
【0027】
図2(a)(b)を参照して本実施の形態のCNTネットワーク構成体3を説明する。実施の形態のCNTネットワーク構成体3は、複数のCNT4a,4b…から構成されている。これらCNT4a,4bは多層CNTである。多層CNTは、複数のグラファイト層が同軸管状になった物質である。このCNTネットワーク構成体3においては、複数のグラファイト層を有する。この例では図解の都合でいずれのCNT4a,4bもグラファイト層4a1,4a2,4a3;4b1,4b2,4b3の3層とする。実施の形態のCNTネットワーク構成体3では、各CNT4a,4bそれぞれの最表面側のグラファイト層4a1,4b1が連続的に接合した構造となっている。このため実施の形態のCNTネットワーク構成体3では、各CNT4a,4b相互間の電気抵抗値は低くなり、また、基材中に混入された場合、各CNT4a,4bが単独で抜け落ちてしまうことがなくなり、基材と一体となった補強材として機能することができる。さらに、上記CNTネットワーク構成体3では、CNT自体が強固なネットワーク構造体を形成するので、耐酸、耐アルカリに優れ、酸素が無い高温環境下で分解しにくく化学的に極めて安定した機能構造体となる。
【0028】
以上により本実施の形態のCNTネットワーク構成体3においては、上記課題の欄で説明した第1、第2の課題を解決することができる。
【0029】
上記接合の意義は、各CNT4a,4bそれぞれの最表面側のグラファイト層4a1,4b1が連続的に物理的、化学的に結合した形態である。
【0030】
また、このCNTネットワーク構成体3においては、複数のCNT4a,4b…が直接、最表面側のグラファイト層4a1,4b1において接合した形態となっているが、最表面側のグラファイト層4a1,4b1に限定されず、それより内層側のグラファイト層4a2,4b2等と接合する形態でもかまわない。
【0031】
さらに上記接合形態に限らず、例えば後述するようなカーボンブラック等の接合補助材で接合してもよい。この場合、接合補助材は、あくまで、CNT4a,4b…それぞれの最表面側のグラファイト層同士の接合を補助するようになっている。
【0032】
また、
図3(a)のTEM写真像によりアモルファスカーボンを接合補助材として、CNT4c,4d最表面側のグラファイト層が接合している状態を示す。
図3(a)のTEM写真像においてグラファイト層が接合している状態を、
図3(b)の模式図に示す。
図3(b)において、○で囲む領域が
図3(a)のTEM写真像においてグラファイト層が接合している部分を示している。アモルファスカーボンは、アニール処理によりグラファイト構造に再配列していることで、導電性を有すると考えられる。
図3(a)、
図3(b)において、CNT4c,4dの符号は、
図3(b)に示す。
【0033】
次に
図4ないし
図6を参照して実施の形態のCNTネットワーク構成体の製造方法を説
明する。
【0034】
(第1の製造方法)
図4を参照して実施の形態のCNTネットワーク構成体の第1の製造方法を説明する。この第1の製造方法は、複数のCNTを含むCNT粉からCNT成形体を作製する第1ステップと、このCNT成形体を加熱して複数のCNT同士を接合させることでCNTネットワーク構成体を作製する第2ステップと、を含む。
【0035】
上記第1ステップにおいては、バインダとして例えばエチルセルロースを、溶媒として例えばテルピネオールに溶解して基材溶液5を作製する(1−1)。
【0036】
次いで、この基材溶液5中にCNT粉を投入すると共に分散剤等によりCNT粉を分散させてCNT分散溶液6を作製する(1−2)。
【0037】
このCNT分散溶液6を基板7上にキャストなどして塗布することでCNTが分散した塗布液8を作製する(1−3)。この(1−3)においては、フィルタ上へCNTを堆積して、塗布液8を作製してもよい。
【0038】
この塗布液8を250℃で加熱し、溶媒を除去することで基板7上にシート状のCNT成形体9を作製する(1−4)。
【0039】
ついで、基板7上からCNT成形体9を剥離する(1−5)。
【0040】
CNT成形体9はCNT粉を圧縮成形することにより作製してもよい。
【0041】
上記第2ステップにおいて、上記シート状に剥離したCNT成形体9を複数積み重ね、この積み重ねCNT成形体10を空気中で460℃で焼成することでバインダを除去する(2−1)。
【0042】
もちろん、CNT成形体9の成形厚さが厚い場合はCNT成形体9を積み重ねることなく焼成してバインダを除去してもよい。
【0043】
さらに真空雰囲気下で、高温例えば2500℃で加熱して、CNTネットワーク構成体11を作製する(2−2)。
【0044】
なお、製造上のステップの図示は略するものの、上記でCNT成形体に対して触媒金属塩または触媒金属コロイドまたは触媒金属微粒子を含む溶液に浸漬または当該溶液をスプレーし、その後、そのCNT成形体をアスペクト比がCNT以下でカーボンからなる接合補助材の添加または添加無しで焼成することで上記触媒金属塩または触媒金属コロイドまたは触媒金属微粒子を昇華させることにより、複数のCNT同士を接合してなるCNTネットワーク構成体を作製するようにしてもよい。
【0045】
(第2の製造方法)
図5を参照して実施の形態のCNTネットワーク構成体の第2の製造方法を説明する。
【0046】
この第2の製造方法は、基板12上に複数のCNT13を配向成長させる(第1ステップ)。この成長法は例えば熱CVD法等各種あり、その詳細説明は略する。
【0047】
次いで、基板12上に配向成長しているCNT13に対して接合補助材としてカーボンブラック14を添加する(第2ステップ)。
【0048】
最後に、基板12上のCNT13とカーボンブラック14とを加熱して各CNT13同士をカーボンブラック14を接合補助材として接合することでCNTネットワーク構成体15を作製する(第3ステップ)。
【0049】
上記第1の製造方法においては、CNTネットワーク構成体の作製に用いたCNTは互いに独立した複数のCNTが集合して粉状となっているCNT粉であったのに対して、上記第2の製造方法においては、基板上に配向成長しているCNTを用いる点で相違している。
【0050】
第2の製造方法においては、基板上に配向成長している複数のCNT13上にカーボンブラック14を振り掛けるようにして添加するので、カーボンブラック14は基板12上のCNT13の基部側よりも先端側に多く添加されることになる。また、CNT13は垂直に配向成長しているので、CNT13同士の絡み合いが少ない場合はCNT13同士が直接接触するよりもカーボンブラック14を介してCNT13同士が間接接触している状態が多くなる。そして、この状態で加熱することで、カーボンブラック14は接合補助材として機能することができる。この場合、カーボンブラック14はその表面のグラファイト層がCNT13それぞれの最表面側のグラファイト層と接合することでCNTネットワーク構成体15を形成することができる。
【0051】
(第3の製造方法)
図6を参照して実施の形態のCNTネットワーク構成体の第3の製造方法を説明する。
【0052】
第3の製造方法は、第2の製造方法と同様に、基板16上に複数のCNT17を配向成長させる(第1ステップ)。
【0053】
次いで、基板16上に配向成長しているCNT17を触媒金属塩または触媒金属コロイドまたは鉄微粒子等の触媒金属微粒子を含む溶液18に浸漬あるいは当該溶液18をCNT17にスプレーするなどして塗布する(第2ステップ)。
【0054】
そして、この触媒金属塩または触媒金属コロイドまたは触媒金属微粒子が付着している基板16上に配向している複数のCNT17に、第2の製造方法と同様に、カーボンブラック19を振りかけるなどして添加する(第3ステップ)。
【0055】
最後に、焼成することで触媒金属塩または触媒金属コロイドまたは触媒金属微粒子を昇華させて複数のCNT17同士を接合してなるCNTネットワーク構成体20を作製する(第4ステップ)。
【0056】
なお、この第3の製造方法ではカーボンブラック19の添加を省略してもよい。
【0057】
以上説明したように本実施の形態のCNTネットワーク構成体においては、グラファイト層が単層または多層の同軸管状になった物質であるCNTを複数含み、これら各CNTは、グラファイト層同士が連続的に接合した箇所を複数有してCNTネットワークを構成しているので、該CNTネットワーク内に複数のCNTそれぞれの接触点に電気的な絶縁成分が介在しても、その接触点での接触抵抗が高くても、上記CNTネットワークの電気抵抗値は低くなる。また、実施の形態のCNTネットワーク構成体では、基材中に混入された場合、各CNTが単独で抜け落ちてしまうことがなくなり、基材と一体となった補強材として機能することができるようになる。
【符号の説明】
【0058】
3 CNTネットワーク構成体
4a,4b CNT
4a1,4a2,4a3 グラファイト層
4b1,4b2,4b3 グラファイト層