特許第5784104号(P5784104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5784104半導電性ポリイミド樹脂ベルト及び半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784104
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】半導電性ポリイミド樹脂ベルト及び半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20150907BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150907BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20150907BHJP
   B29C 41/04 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   C08L79/08 Z
   C08K3/04
   C08G73/10
   B29C41/04
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-271135(P2013-271135)
(22)【出願日】2013年12月27日
(62)【分割の表示】特願2009-543855(P2009-543855)の分割
【原出願日】2008年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-122350(P2014-122350A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2013年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2007-310633(P2007-310633)
(32)【優先日】2007年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市野 晃
(72)【発明者】
【氏名】西浦 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鞍岡 隆志
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−132554(JP,A)
【文献】 特開平05−065342(JP,A)
【文献】 特開平05−112642(JP,A)
【文献】 特開平03−221525(JP,A)
【文献】 特開2001−152013(JP,A)
【文献】 特開2006−008820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/00−79/08
C08K 3/00−3/40
C08G 73/00−73/26
B29C 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル及びビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香族ジアミンを含み、該芳香族ジアミン全量に対して芳香環数が3個及び/又は4個の芳香族ジアミンを50モル%以上含有する芳香族ジアミンとを、有機極性溶媒中で反応して得られるポリイミド前駆体溶液に、カーボンブラックを分散させてカーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を調製し、
該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を回転成形法にて管状物に成形し、
該成形体を加熱処理してイミド化する半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法であって、
(1)回転する円筒金型の内周面に、該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を塗布する工程、
(2)該円筒金型を回転させたまま80〜150℃の温度で加熱して、自己支持性の皮膜を形成する工程、及び
(3)該皮膜を円筒金型の内周面に付着した状態のまま、300〜350℃の温度で加熱してイミド化する工程、
を含むこと特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記カーボンブラックがオイルファーネス法で製造されたカーボンブラックであり、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(JIS K6217)が80〜150m2/g、ジブチルナフタレート(DBP)吸収量が40〜100ml/100gである、請求項1に記載の半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記カーボンブラックの揮発分が2〜5重量%、pHが2〜5である、請求項2に記載の半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記カーボンブラックの半導電性ポリイミド樹脂ベルト中の含有量が、15〜30重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法。
【請求項5】
前記芳香族ジアミン成分が、4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニルを芳香族ジアミン全量に対して50〜90モル%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像形成装置を備えた電子写真複合機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機、さらにはデジタル印刷機等の電子写真機器に用いられる半導電性ポリイミド樹脂ベルトとその製造方法に関する。さらに詳しくは、カラー画像形成装置の中間転写ベルト等として使用した場合に、ベルトの幅方向にかかる荷重によるクラックや割れが発生しにくく、耐久性に優れ、長期間走行させても安定した使用が可能である優れた機械的特性を備えている半導電性ポリイミド樹脂ベルトとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を応用した画像形成装置では、先ず無機又は有機光導電性感光体からなる潜像担持体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザーや発光ダイオード光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。そして、前記トナー像を静電的に中間転写ベルト上へ一次転写し、さらに中間転写ベルト上のトナー像を記録紙に静電的に二次転写して、これを加熱や加圧により定着させることによって、所要の再生画像を得る中間転写方式が知られている。
【0003】
近年、OA機器では高速化及び高画質化への対応だけでなくキーパーツの高耐久化が図られ、中間転写ベルトにおいても長期間安定して高品質の転写画像を得るために必要な材料設計が不可欠となってきている。カラー画像形成装置において正確な転写を実現することができ、転写電圧による抵抗変化を防止し、長期間安定して高品質の転写画像を得ることができる等の優れた電気的特性とともに、ベルトの幅方向にかかる荷重による塑性変形による平面性の悪化がなく、屈曲耐久性に優れ、長期間走行させても安定した使用が可能である等の優れた物理的特性を兼ね備えた中間転写ベルトに仕上げることが重要な技術と位置付けされている。
【0004】
中間転写ベルトに用いることができる半導電性ベルトとしては、機械特性や耐熱性に優れたポリイミド樹脂フィルムに導電性フィラーを配合したものが知られている。
【0005】
そのような導電性ベルトとして、例えば、高い機械強度を備えるポリイミド樹脂にアセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックを添加した導電性ポリイミドシームレスベルトが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを反応させた高分子量のポリアミド酸溶液を原料とし、これに導電フィラーを分散させた原料溶液から得られる半導電性ポリイミド樹脂ベルトが知られている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0007】
しかし、これらの半導電性ポリイミド樹脂ベルトは、剛直なポリイミド樹脂を使用しているため剛性は充分であるが、柔軟性がないため、長期使用において、ベルト端部から割れが生じやすいという問題があった。
【0008】
さらに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と屈曲性を有する4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを反応させた高分子量のポリアミド酸溶液を原料とし、これにpH2〜4のカーボンブラックを分散させた原料溶液から得られる半導電性ポリイミド樹脂ベルト(例えば、特許文献5参照)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの共重合体からなるベルトの製造方法(例えば、特許文献6参照)が知られている。
【0009】
特許文献5及び6のように、ジアミン化合物として、屈曲性を有する4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いた場合、剛直性が緩和されるため柔軟性が付与され、ベルト端部の割れは生じにくくなる。しかし、剛性が不充分であるため、長期使用において、ベルトの幅方向にかかる荷重により塑性変形し、平面性が悪化するという問題があった。この平面性の悪化は、画像形成装置の中間転写ベルトとして使用した際、白抜けや色ズレ等の問題を引き起こすことが知られている。
【0010】
また、テトラカルボン酸二無水物として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とピロメリット酸二無水物、芳香族ジアミンとしてp−フェニレンジアミンとジアミノジフェニルスルホンとの共重合体からなるベルトの製造方法が知られている(例えば、特許文献7参照)。
【0011】
半導電性ポリイミド樹脂のシームレスベルトを精度よく製造する方法としては、従来回転成形法が検討されている。特許文献2〜7では、ポリイミド樹脂の前駆体溶液を円筒金型の内周面に塗布、遠心成形して被膜を形成した後、被膜がそれ自体支持できるまで一部溶媒の除去及び一部イミド転化を行った後、前記金型から剥離し、管状金型の外周に差し替えて溶媒の除去及びイミド転化反応の完結を行う方法にて製造されている。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主成分とするポリアミド酸溶液を用いた場合、回転成形法の後、金型に貼り付いた状態でイミド転化を完結させようとすると、溶媒揮発やイミド化反応での体積収縮力やイミド化反応での強い面配向による収縮応力で円筒金型の内面から剥がれてしまうため、イミド転化の工程においては円筒金型から剥離し、管状金型の外周に差し替えて行われる。
【0012】
しかしながら、上記のように管状金型を用いてイミド転化する場合、剥離ベルトに残存する溶媒が蒸発した蒸発分が抜けきらず、ベルトと管状金型の間に溜まることによってベルトの膨らみが発生する、イミド化反応時に生じるベルトの収縮によってベルト平面性が悪化し、そして波打ちが発生する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−077252号公報
【特許文献2】特開平7−156287号公報
【特許文献3】特開平10−63115号公報
【特許文献4】特開平10−83122号公報
【特許文献5】特開2000−281902号公報
【特許文献6】特開2003−266454号公報
【特許文献7】特開2006−206778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、カラー画像形成装置において正確な転写を実現することができ、長期間安定して高品質の転写画像を得ることができる等の優れた電気的特性とともに、ベルトの幅方向にかかる荷重による塑性変化による平面性の悪化が発生しにくく、耐久性に優れ、長期間走行させても安定した使用が可能である等の優れた物理的特性を兼ね備えた半導電性ポリイミド樹脂ベルト、特には該半導電性ポリイミド樹脂ベルトからなる中間転写ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとをイミド化して得られ、芳香環数が3個及び/又は4個の芳香族ジアミンを、前記の芳香族ジアミン全量に対して50モル%以上含有することを特徴とするポリイミド樹脂にカーボンブラックを充填した半導電性ポリイミド樹脂ベルトが、上記の目的を達成できることを見出した。この知見に基づいてさらに発展させることにより本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は下記の半導電性ポリイミド樹脂ベルト、およびその製造方法を提供する。
【0017】
項1.カーボンブラック及びポリイミド樹脂を含む半導電性ポリイミド樹脂ベルトであって、該ポリイミド樹脂が、ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとをイミド化して得られ、かつ、前記の芳香族ジアミン全量に対して芳香環数が3個及び/又は4個の芳香族ジアミンを50モル%以上含有することを特徴とする半導電性ポリイミド樹脂ベルト。
項2.前記芳香族ジアミン成分が、4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニルを芳香族ジアミン全量に対して50〜90モル%含有することを特徴とする項1に記載の半導電性ポリイミド樹脂ベルト。
項3.前記芳香族ジアミン成分が、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル及びビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香族ジアミンを含むことを特徴とする項1又は2に記載の半導電性ポリイミド樹脂ベルト。
項4.JIS K7113に準じて測定した応力−ひずみ曲線で記録される引張降伏強さ:σyが180MPa以上であり、引張破断強さ:σbとの関係が、
(引張破断強さ:σb)/(引張降伏強さ:σy)≧1.1
を満たす項1〜3のいずれかに記載の半導電性ポリイミド樹脂ベルト。
項5.表面抵抗率が1×108〜1×1014Ω/□である項1〜4のいずれかに記載の半導電性ポリイミド樹脂ベルトからなる電子写真機器の中間転写ベルト。
項6.ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを、有機極性溶媒中で反応して得られるポリアミド酸溶液に、カーボンブラックを分散させてカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液組成物を調製し、該カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液組成物を回転成形法にて管状物に成形し、該成形体を加熱処理してイミド化する半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法であって、
(1)回転する円筒金型の内周面に、該カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液組成物を塗布する工程、
(2)該円筒金型を回転させたまま80〜150℃の温度で加熱して、自己支持性の皮膜を形成する工程、及び
(3)該皮膜を円筒金型の内周面に付着した状態のまま、300〜350℃の温度で加熱してイミド化する工程、
を含むこと特徴とする製造方法。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
1.半導電性ポリイミド樹脂ベルト
本発明は、カーボンブラック及びポリイミド樹脂を含む半導電性ポリイミド樹脂ベルトであって、該ポリイミド樹脂が、ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとをイミド化して得られ、かつ、前記の芳香族ジアミン全量に対して芳香環数が3個及び/又は4個の芳香族ジアミンを50モル%以上含有することを特徴とする半導電性ポリイミド樹脂ベルトに関する。
【0020】
1.1 ポリイミド樹脂
本発明で用いるポリイミド樹脂としては、ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン全量に対して芳香環数が3個及び/又は4個の芳香族ジアミンを50モル%以上含有する芳香族ジアミンとをイミド化して得られるポリイミド樹脂であれば特に限定されるものではない。
【0021】
ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物とは、芳香族環を3個有するものであり、下記のような構造を有するものである。
【0022】
【化1】
【0023】
本発明で用いるカルボン酸二無水物成分としては、ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物を用いるものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物以外のカルボン酸二無水物を含んでいてもよい。
【0024】
ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物以外のカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−スルホニルジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物等の公知の酸無水物等を挙げることができる。
【0025】
本発明で用いる芳香族ジアミン成分としては、芳香族ジアミン全量に対して芳香環数が3個及び/又は4個の芳香族ジアミンを50モル%以上含有するものであればよく、特に限定されるものではない。
【0026】
本発明においては、芳香族ジアミン全量に対して芳香環数が3個及び/又は4個の芳香族ジアミンを50モル%以上含有するものであるが、60モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがより好ましい。また、上限値は特に限定されないが、例えば、100モル%であることが好ましい。芳香環数が3個及び/又は4個の芳香族ジアミンを前記範囲で含有することにより、得られた半導電性ポリイミド樹脂ベルトの剛性と強靭性のバランスが良好であり、耐久性に優れ、長期間走行させた場合でも、ベルトの平面度が悪化することがないため好ましい。
【0027】
芳香環数が3個の芳香族ジアミンとしては、
【0028】
【化2】
【0029】
等を挙げることができる。
【0030】
芳香環数が4個の芳香族ジアミンとしては、
【0031】
【化3】
【0032】
等を挙げることができる。
【0033】
これらの芳香環数が3個の芳香族ジアミン、芳香環数が4個の芳香族ジアミンの中から1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
これらの中でも4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニルを含む芳香族ジアミンを用いることが好ましく、その場合の含有量としては、芳香族ジアミン全量に対して4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニルを50〜90モル%含有することが好ましく、60〜80モル%含有することがより好ましく、70〜80モル%含有することがさらに好ましい。4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニルを前記範囲で含有することにより、得られた半導電性ポリイミド樹脂ベルトの剛性と強靭性のバランスが良好であり、耐久性に優れ、長期間走行させた場合でも、ベルトの平面度が悪化することがないため好ましい。
【0035】
また、本発明で用いる芳香族ジアミン成分としては、芳香環数が3個の芳香族ジアミンと芳香環数が4個の芳香族ジアミンの両方を含むことが好ましく、その配合割合としては、3個の芳香族ジアミン:芳香環数が4個の芳香族ジアミン=30:70〜80:20(モル比)となることが好ましく、50:50〜70:30(モル比)となることがより好ましい。前記範囲で含有することにより、得られた半導電性ポリイミド樹脂ベルトの剛性と強靭性のバランスが良好であり、耐久性に優れ、長期間走行させた場合でも、ベルトの平面度が悪化することがないため好ましい。
【0036】
また、芳香環数が3個の芳香族ジアミンと芳香環数が4個の芳香族ジアミンの組合せとしては、4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニルと4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、又は、4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニルとビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテルの組合せであることが好ましい。
【0037】
また、本発明において使用できる、前記芳香環数が3個及び/又は4個の芳香族ジアミン以外の芳香族ジアミン成分としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、ベンジジン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン等を挙げることができ、これらの中でも4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
【0038】
本発明で用いるポリイミド樹脂は、下記一般式(1)で示される、ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位を含む。
【0039】
【化4】
【0040】
また、本発明で用いるポリイミド樹脂は、下記一般式(2)〜(6)で示される構造単位のいずれか1種以上を含むことが好ましい。
【0041】
【化5】
【0042】
【化6】
【0043】
【化7】
【0044】
【化8】
【0045】
【化9】
【0046】
前記一般式(2)〜(6)で示される構造単位は、4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンに由来する単位構造である。
【0047】
本発明で用いるポリイミド樹脂としては、酸二無水物成分由来の構造単位(1)とジアミン成分由来の構造単位(2)〜(6)からなる下記繰り返し単位を含むポリイミド樹脂が好ましい。
【0048】
【化10】
【0049】
ポリイミド樹脂の合成方法としては特に限定されるものではなく、通常用いられている方法を採用することができるが、前記カルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分との略等モル量とを、有機極性溶媒中で反応してポリイミド前駆体溶液を製造し、その後加熱処理によりイミド化する方法が好ましい。
【0050】
有機極性溶媒としては、特に限定されるものではないが、非プロトン系有機極性溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と言うこともある)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上の混合溶媒であってもよい。これらの中でも、沸点が200℃以上と高く、熱イミド化中に膜から揮発しにくく、残留溶媒の可塑化効果によりイミド化が進行しやすくなる等の点から、NMPが特に好ましい。
【0051】
ポリイミド前駆体溶液の25℃における粘度は、特に限定されるものではないが、例えば、3.0〜50Pa・sであることが好ましく、5.0〜20Pa・sであることがより好ましい。
【0052】
前述のように、ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン全量に対して芳香環数が3個及び/又は4個の芳香族ジアミンを50モル%以上含有する芳香族ジアミンとをイミド化して得られるポリイミド樹脂を用いることにより、得られた半導電性ポリイミド樹脂ベルトの剛性と強靭性のバランスが良好であり、耐久性に優れ、長期間走行させた場合でも、ベルトの平面度が悪化することがないため好ましい。
【0053】
本発明においては、カーボンブラックをポリイミド前駆体溶液に混合してカーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物(以下、前駆体溶液組成物とする)を製造するが、混合方法としては、カーボンブラックがポリイミド前駆体溶液中に均一に混合、分散される方法であれば特に制限はなく、例えば、サンドミル、ビーズミル、超音波ミル、3本ロール等を用いた方法を挙げることができる。
【0054】
前駆体溶液組成物中のカーボンブラックの含有量は、前駆体溶液組成物中の全固形分中15〜30重量%であることが好ましく、18〜26重量%であることがより好ましい。
【0055】
ここで、前記前駆体溶液組成物中のカーボンブラックの含有量とは、該溶液から得られる半導電性ポリイミド樹脂ベルト中のカーボンブラック含有量と同様である。
【0056】
したがって、本発明の半導電性ポリイミド樹脂ベルト中には、ポリイミド樹脂を70〜85重量%含むことが好ましく、74〜82重量%含むことがより好ましい。
【0057】
なお、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、上記組成物中にイミダゾール系化合物(2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−メチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール)、界面活性剤(フッ素系界面活性剤等)等の添加剤を加えてもよい。
【0058】
上記方法によりカーボンブラックが均一分散された前駆体溶液組成物を製造することができる。
【0059】
溶液中に分散しているカーボンブラックの平均粒径は、0.1〜0.5μmであることが好ましく、0.1〜0.3μmであることがより好ましい。また、分散しているカーボンブラックの最大粒子径は1μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。最大粒子径の下限値は特に限定されるものではないが、0.2μm以上であることが好ましい。
【0060】
1.2 カーボンブラック
本発明で使用するカーボンブラックとしては、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック粒子表面にポリマーをグラフト化させたり、絶縁材を被覆したりすることで導電特性を制御したカーボンブラック;カーボンブラック粒子表面に酸化処理を施したカーボンブラック等を挙げることができる。これらの中でも、オイルファーネス法のカーボンブラックは、燃料を燃やした1400℃以上の高温ガス中で炭化水素を還元雰囲気で熱分解して製造されるため、粒子内部や表面の酸素含有量や不純物が著しく少なく、結晶子が発達するため好ましい。また、カーボンブラックの揮発分含有量を調整できる点から、オイルファーネス法で製造されたカーボンブラックをさらに酸化処理することが好ましい。
【0061】
以下に、オイルファーネス法で製造されたカーボンブラックをさらに酸化処理したカーボンブラックについて説明する。
【0062】
酸化処理で用いる酸化剤としては、硝酸を含む窒素酸化物、オゾン、次亜塩素酸類、硫酸ガス等の酸化剤を挙げることができる。これらの中でも、酸化処理後のカーボンブラックに酸化剤の残存が少なく、未分解原料炭化水素(PAH)が分解される点から、オゾンを含む酸化剤が好ましく、オゾンが特に好ましい。未分解原料炭化水素(PAH)は可能な限り少ない方が良く、具体的には10ppm以下であればよい。
【0063】
前述したように、オイルファーネス法で製造されたカーボンブラックをさらに酸化処理することにより、カーボンブラックの揮発分含有量を調整することができる。カーボンブラックの揮発分含有量としては、2〜5重量%であることが好ましく、2.5〜5重量%がより好ましい。
【0064】
酸化処理により揮発分2〜5重量%に調整されたカーボンブラックの表面には、フェノール性水酸基やカルボニル基、カルボキシル基等の酸素官能基(特に、カルボキシル基)を含むため、ポリイミド前駆体溶液組成物中での該カーボンブラックの流動性及び分散安定性が向上し、またポリイミド樹脂への親和性も向上する。
【0065】
また、オイルファーネス法で製造された同じ比表面積及びジブチルフタレート(DBP)吸収量のカーボンブラックであれば、その揮発分量と粉体抵抗はほぼ比例関係にある。該カーボンブラック表面の揮発分である酸素官能基は、π電子の流れを阻害する絶縁物として働くため、酸化処理されていないオイルファーネス法によるカーボンブラックよりも粉体抵抗が大きくなる。従って、揮発分を上記の範囲に設定することにより、カーボンブラックの粉体抵抗を3〜30Ω・cm程度の高い値で制御することができる。
【0066】
そのため、半導電性ポリイミド樹脂ベルトの表面抵抗率を所望の範囲(108〜1014Ω/□)に設定する場合に、ポリイミド樹脂中に該カーボンブラックを高充填(半導電性ポリイミド樹脂ベルト(ポリイミド樹脂とカーボンブラックの総重量)中、カーボンブラックが15〜30重量%)することができる。これにより、カーボンブラック同士の連鎖による導電性が付与され、外部環境や印加電圧に影響を受けにくい安定した電気特性を有する半導電性ポリイミド樹脂ベルトを得ることができる。換言すれば、本発明の半導電性ポリイミド樹脂ベルト中にカーボンブラックが15〜30重量%の高含有量に制御できることになる。
【0067】
なお、カーボンブラックの揮発分は、実施例に記載の方法により測定される。
【0068】
揮発分が2%未満のカーボンブラック(例えば、三菱化学(株)製 三菱カーボンブラック「MA11」「MA100」、デクサ製「Printex 95」「Printex L6」等)では、ポリイミド前駆体溶液に対する親和性に問題があり、分散後にファンデルワールス力によって2次凝集体を形成しやすい傾向がある。
【0069】
また、揮発分が5%を超えるカーボンブラック(例えば、デクサ製「Color Black FW200」「Special Black 5」「Special Black 4」「Printex 150T」等)は、チャンネル法のカーボンブラックがほとんどであり、水素や酸素以外に、硫黄や未分解原料炭化水素(PAH)等の不純物が多く含まれ、この不純物がポリイミド樹脂等のバインダー樹脂本来の機械的特性を低下させる傾向がある。
【0070】
また、オイルファーネス法のカーボンブラックを揮発分が5%を超えるように酸化処理した場合、粉体抵抗が大幅に高くなるため(絶縁性カーボンブラックになるため)、中間転写ベルトとして必要な表面抵抗率108〜1014Ω/□を実現できない傾向がある。
【0071】
本発明で使用するカーボンブラックの窒素吸着比表面積(JIS K6217)は、80〜150m2/gであることが好ましく、90〜130m2/gであることがより好ましい。
【0072】
一般にカーボンブラックを各種の方法で酸化すると、比表面積が大きくなるほど酸素官能基は多く付与される。しかし、カーボンブラックの粉体抵抗やこれを各種材料に配合した際の物性は、酸素官能基の絶対量でなく単位表面に付与している酸素官能基の数と相関している。
【0073】
窒素吸着比表面積が80m2/g未満であると、ポリイミド前駆体溶液との親和性が得られず粉体抵抗も充分に高い値にならない傾向がある。また、150m2/gを超えると、高比表面積のカーボンブラック、即ち一次粒子が小さいか又は同一粒子径においても細孔を形成したカーボンブラックとなり、酸素官能基を付与しても結果的にカーボンブラックの粉体抵抗が高くならないため、カーボンブラック含有量が高い(例えば、15重量%以上の高濃度で充填した)半導電性ポリイミド樹脂ベルトが得られない傾向がある。つまり、カーボンブラック充填量が低い半導電性ポリイミド樹脂ベルトしか得られない傾向がある。
【0074】
本発明で使用するカーボンブラックのpHは、2〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。
【0075】
また、本発明で使用するカーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、40〜100ml/100gであることが好ましく、50〜90ml/100gであることがより好ましい。DBP吸収量が100ml/100gを超えると、酸化処理を施してもカーボンブラックの粉体抵抗が高くならないため、カーボンブラックを15重量%以上の高濃度で充填した半導電性ポリイミド樹脂ベルトが得られない傾向がある。DBP吸収量が40ml/100g未満であると、粉体抵抗が高くなりすぎるため、該固形分中のカーボンブラック濃度は30重量%を超えて充填しないと半導電性ポリイミド樹脂ベルトが得られなくなる。
【0076】
本発明の半導電性共重合ポリイミドベルトの表面抵抗率は、1×108〜1×1014Ω/□であることが好ましく、1×109〜1×1014Ω/□であることがより好ましく、1×1010〜1×1013Ω/□であることがより好ましい。表面抵抗率がこの範囲にあることで、中間転写ベルトに電荷が蓄積することがなく、転写時に発生するトナー飛散の抑制と中間転写ベルトの自己除電機能を両立させることができるため好ましい。
【0077】
本発明の半導電性ポリイミド樹脂ベルト、特に、半導電性ポリイミド樹脂ベルトからなる電子写真機器の中間転写ベルトの材料設計において、引張降伏強さ:σyと引張破断強さ:σbとは、ベルトとしての材料設計の重要な強度因子であり、少なくとも引張降伏強さ:σyは180MPaであることが好ましく、195MPaであることがより好ましい。引張降伏強さ:σyがこの範囲にあることで、ベルトの厚みを80μm以下に薄くしてもベルトの幅方向にかかる荷重による塑性変形を起こさないため好ましい。塑性変形(伸びによる寸法変化)を起こすとベルト自体の平面度が悪化し、このことが画像ムラを起こすため好ましくない。
【0078】
また、引張破断強さ:σbは、引張降伏強さ:σyより大きいことも必要で、ベルト回転の耐寿命(タフネス)に寄与する。したがって、σb/σy≧1.1であること好ましく、σb/σy≧1.15であることがより好ましい。σb/σyが1.1未満では、塑性変形する前にベルトが破壊する傾向がある。
【0079】
ここで、引張破断強さ:σbと引張降伏強さ:σyは、JIS K7113に準じて測定した応力−ひずみ曲線で記録される引張破断強さと引張降伏強さである。
【0080】
本発明の半導電性ポリイミド樹脂ベルトのベルト幅方向の平面度が2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましい。平面度がこの範囲にあることでベルト駆動を行う駆動ロールと中間転写ベルトとの密着性が保たれ、高精度の画像あわせが可能となるため好ましい。ここで、平面度とは実施例に記載の方法により測定される値をいう。
【0081】
また、本発明の半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法は、特に限定されるものではないが、下記方法により製造することが好ましい。
【0082】
2.導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法
本発明は、ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを、有機極性溶媒中で反応して得られるポリイミド前駆体溶液(ポリアミド酸溶液とも言う)に、カーボンブラックを分散させてカーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物(カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液組成物とも言う)を調製し、該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を回転成形法にて管状物に成形し、該成形体を加熱処理してイミド化する半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法であって、
(1)回転する円筒金型の内周面に、該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を塗布する工程、
(2)該円筒金型を回転させたまま80〜150℃の温度で加熱して、自己支持性の皮膜を形成する工程、及び
(3)該皮膜を円筒金型の内周面に付着した状態のまま、300〜350℃の温度で加熱してイミド化する工程、
を含むこと特徴とする製造方法に関する。
【0083】
以下、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物(以下、前駆体溶液組成物とする)を使った半導電性ポリイミド樹脂ベルトの製造方法について説明する。
【0084】
なお、前記製造方法で用いる前駆体溶液組成物としては、本明細書に記載されているいずれの前駆体溶液組成物も好適に用いることができる。
【0085】
前駆体溶液組成物は、回転する円筒金型の内周面に、該前駆体溶液組成物を均一な厚さで塗布する。円筒金型の回転速度としては特に限定されるものではないが、重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度で低速回転することが好ましい。重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度という低速回転で、前駆体溶液組成物が供給されることで回転方向に受けるせん断力が小さく、分子鎖の配向やカーボンブラック等のフィラーのストラクチャー配向を抑制できる。
【0086】
前記の遠心加速度が重力加速度の0.5倍未満であると、供給された前駆体溶液組成物が円筒金型の内周面に密着せずに流れ落ちる(たれ)危険性がある。一方、重力加速度の10倍より大きくなると、供給時に受ける回転方向へのせん断力による分子鎖の配向やカーボンブラック等のフィラーのストラクチャー配向だけでなく、遠心力による前駆体溶液組成物の流動が発生し、平面度に影響を与える傾向がある。
【0087】
なお、本発明で使用する遠心加速度(G)は、下記式から導かれる。
【0088】
G(m/s2)=r・ω2=r・(2・π・n)2
【0089】
ここで、rは円筒金型の半径(m)、ωは角速度(rad/s)、nは1秒間での回転数(60秒間の回転数がr.p.m.)を示す。比較する重力加速度(g)は、9.8 (m/s2)である。
【0090】
前駆体溶液組成物の供給手段は、ノズル法やスプレー法で吐出させながら回転する円筒金型の回転軸方向に移動させることによって、円筒金型の内周面に前駆体溶液組成物を均一な厚みで塗布する。ここで、均一な厚みとは、円筒金型の内周面に塗布平均厚みに対して±5%の範囲で塗布することをいう。
【0091】
前駆体溶液組成物の供給手段としては、前駆体溶液組成物を霧化することで、供給時の流動を限りなく小さく、回転する円筒金型の内周面に瞬間的に密着できる点、前駆体溶液組成物の粘度にもあまり影響されず同一回転速度下で原料供給できる点、薄い厚みの塗膜を容易に得ることができ、前駆体溶液組成物の不揮発分濃度を高く設定することが可能である点から、スプレー法が好ましい。
【0092】
塗布ヘッドの形状は、特に制約はなく、円形や矩形等、適時使用できる。また、その大きさも特に制約はなく、吐出される前駆体溶液組成物の粘度との組み合わせによって、適正な吐出圧力となるように設計することが可能である。
【0093】
スプレーヘッドと円筒金型の距離は任意でよく、5〜200mm程度が好ましい。吐出圧力の方式には特に制限はないが、圧縮空気や高粘度液対応のモーノポンプ、ギヤポンプ等が用いられる。
【0094】
このように円筒金型の内周面に均一な厚みで前駆体溶液組成物を塗布した場合は、円筒金型の高速回転、即ち、遠心力によって前駆体溶液組成物を流動させ塗膜の膜厚を均一にさせる必要はない。遠心力を利用した回転成形では、原料を供給後、遠心力により前駆体溶液組成物を円筒金型の内面に均一に流延させる。そして遠心力によって生じる流動によってカーボンブラックの粒子が流動方向にストラクチャーを成形したように並ぶ。そのため、これによってポリイミド製中間転写ベルトの電気特性に悪影響を引き起こす場合がある。これに対し、高速回転させない本発明の方法によれば、この様な問題はほとんど生じない。
【0095】
円筒金型の内周面には、ポリイミド樹脂が密着しないように、離型剤を塗布することが好ましい。離型材の種類に制限はないが、前駆体溶液組成物の溶媒や加熱反応時に樹脂から発生する水の蒸気等に侵されないものであれば特に限定はない。
【0096】
液体樹脂の皮膜形成工程においては、重量加速度の0.5〜10倍の遠心加速度で低速回転させたまま、80〜150℃(好ましくは、100〜140℃)の温度で溶媒を揮発して固形分濃度を40重量%以上とすることで円筒金型の内周面に自己支持性を有する皮膜を形成することで達成できる。
【0097】
ポリイミド樹脂皮膜形成工程においては、ポリイミド樹脂の種類によって異なるが円筒金型の内周面に付着した状態のまま、60〜120分間で約250℃に上昇する。次に完全にポリイミド転化する温度、例えば300〜350℃で30〜90分間、皮膜を加熱させることでポリイミド樹脂皮膜を形成することができる。皮膜形成を円筒金型の内周面に付着した状態で行うことで、イミド化反応や溶媒揮発で起こる収縮を抑えてその応力でポリマー鎖を面内方向に均一配向させることが可能となる。
【0098】
以上のように、本発明で用いる前駆体溶液組成物は、高い固形分濃度を有するものであり、さらに、高含有量でカーボンブラックを含んでいるものである。さらに、これを用いて成形される半導電性ポリイミド樹脂ベルトは高いカーボンブラック濃度を有しており、しかも、ポリイミド樹脂の本来の機械的特性(強靭性等)が充分に保持されている。
【0099】
得られる半導電性ポリイミド樹脂ベルトの平均膜厚は、通常50〜150μm程度、好ましくは60〜125μm程度に調節される。
【0100】
このように製造した本発明の半導電性ポリイミド樹脂ベルトは、例えば、電子写真機器のカラー画像形成装置の中間転写ベルトとして使用した場合、ベルトの幅方向にかかる荷重によるクラックや割れが発生しにくく、耐久性に優れ、長期間走行させても安定した使用が可能である優れた機械的特性を発揮することができる。
【0101】
本発明の半導電性ポリイミド樹脂ベルトは、電子写真機器の中間転写ベルト、一本のベルトで転写と定着を兼ね備えた転写兼定着ベルトのベルト基材として有効である。転写兼定着ベルトとして使用する場合には、表面に付着するトナーの剥離性向上のため、表面に非粘着性の樹脂皮膜を形成することが有効である。その非粘着性の樹脂皮膜の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂等が好ましい。また、弾性シリコーン樹脂、フッ素ゴム樹脂、弾性フロロシリコーン樹脂、弾性ポリシロキサン等を用いてもよい。
【発明の効果】
【0102】
本発明は、カラー画像形成装置において正確な転写を実現することができ、長期間安定して高品質の転写画像を得ることができる等の優れた電気的特性とともに、ベルトの幅方向にかかる荷重による塑性変化による平面性の悪化が発生しにくく、耐久性に優れ、長期間走行させても安定した使用が可能である等の優れた物理的特性を兼ね備えた半導電性ポリイミド樹脂ベルトを提供することができる。また、本発明の半導電性ポリイミド樹脂ベルトは、中間転写ベルト、一本のベルトで転写と定着を兼ね備えた転写兼定着ベルトとして有効である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1】平面度測定方法の概略図を示す。
図2図1のAA断面図を示す。
図3】高電圧印加テスト及び空転耐久テストに用いる通電システムの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0104】
以下、比較例と共に実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0105】
実施例1
(カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物の作製)
全カルボン酸二無水物成分に対してパラ−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(TPDA)100モル%と、全芳香族ジアミン成分に対して4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニル70モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)30モル%とを、カルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分との略等モル量でN−メチル−2−ピロリドン中で重合してポリイミド前駆体のポリアミド酸溶液を5kg用意した。この溶液は粘度9.0Pa・s(25℃)、不揮発分濃度18重量%であった。
【0106】
この溶液にオイルファーネス系カーボンブラック(CB1、pH:4.1、窒素吸着比表面積:95m2/g、DBP吸収量:65ml/100g、揮発分含有量:2.1重量%)を0.25kgとN−メチル−2−ピロリドン1.8kgを加えて、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行い、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物A(以下、前駆体溶液組成物Aとする)を調製した。この溶液の固形分濃度は16.3重量%であり、この固形分重量のうち、カーボンブラックの含有量は、21.7重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒子径は0.28μm、最大粒径は0.51μmであった。
【0107】
(カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルトの作製)
前記前駆体溶液組成物Aを、外径324mm、内径300mm、長さ500mmの円筒金型内周面にスプレー法にて塗布し、重量加速度の4.0倍の遠心加速度(約154r.p.m)で回転させながら、長さ500mmの円筒金型内周面に長さ480mmの均一な展開膜を得た。塗布の厚さは、不揮発分濃度から算出し、ポリイミド樹脂ベルトの厚さが75μmになるように決定した。その後も重量加速度の4.0倍の遠心加速度(約154r.p.m)で回転させたまま、30分間かけて120℃に昇温し、その後120℃で100分間保持して溶媒を揮発させた。
【0108】
次に、この管状物を円筒金型の内周面に付着したまま高温加熱炉に投入し、150分間かけて320℃に昇温し(昇温速度:約1.33℃/分)、320℃で60分間高温加熱することでポリイミド転化を完了した。その後、室温まで冷却し、金型内面より剥離し、平均厚さ75μmのカーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルトを得た。
【0109】
実施例2
(カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液の作製)
全カルボン酸二無水物成分に対してパラ−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(p−TPDA)100モル%と、全芳香族ジアミン成分に対してジアミン成分として4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニル50モル%と4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル50モル%とを、カルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分との略等モル量でN−メチル−2−ピロリドン中で重合してポリイミド前駆体のポリアミド酸溶液を5kg用意した。この溶液は粘度8.5Pa・s(25℃)、不揮発分濃度19重量%であった。
【0110】
この溶液にオイルファーネス系カーボンブラック(CB2、pH:2.5、窒素吸着比表面積:120m2/g、DBP吸収量:105ml/100g、揮発分含有量:3.9重量%)を0.21kgとN−メチル−2−ピロリドン1.8kgを加えて、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行い、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物B(以下、前駆体溶液組成物Bとする)を調製した。この溶液の固形分濃度は16.5重量%であり、固形分重量のうち、カーボンブラックの含有量は、18.1重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒子径は0.26μm、最大粒径は0.44μmであった。
【0111】
(カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルトの作製)
上記前駆体溶液組成物Bを用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルト(平均膜厚:75μm)を作製した。
【0112】
実施例3
(カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液の作製)
全カルボン酸二無水物成分に対してパラ−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(p−TPDA)100モル%と、全芳香族ジアミン成分に対して4,4’−ジアミノ−パラ−ターフェニル60モル%と、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル40モル%とを、カルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分との略等モル量でN−メチル−2−ピロリドン中で重合してポリイミド前駆体のポリアミド酸溶液を5kg用意した。この溶液は粘度7.0Pa・s(25℃)、不揮発分濃度18重量%であった。
【0113】
この溶液にオイルファーネス系カーボンブラック(CB3、pH:2.3、窒素吸着比表面積:120m2/g、DBP吸収量:75ml/100g、揮発分含有量:3.3重量%)を0.28kgとN−メチル−2−ピロリドン1.8kgを加えて、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行い、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物C(以下、前駆体溶液組成物Cとする)を調製した。この溶液の固形分濃度は16.7重量%であり、固形分重量のうち、カーボンブラックの含有量は、23.7重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒子径は0.25μm、最大粒径は0.44μmであった。
【0114】
(カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルトの作製)
上記前駆体溶液組成物Cを用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルト(平均膜厚:75μm)を作製した。
【0115】
比較例1
(カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液の作製)
全カルボン酸二無水物成分に対してパラ−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(p−TPDA)100モル%と、全芳香族ジアミン成分に対してパラフェニレンジアミン(PPD)100モル%とを、カルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分との略等モル量でN−メチル−2−ピロリドン中で重合してポリイミド前駆体のポリアミド酸溶液を5kg用意した。この溶液は粘度8.0Pa・s(25℃)、不揮発分濃度20.0重量%であった。
【0116】
この溶液に実施例1で用いたオイルファーネス系カーボンブラック(CB1、pH:4.1、窒素吸着比表面積:95m2/g、DBP吸収量:65ml/100g、揮発分含有量:2.1重量%)を0.30kgとN−メチル−2−ピロリドン1.8kgを加えて、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行い、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物D(以下、前駆体溶液組成物Dとする)を調製した。この溶液の固形分濃度は18.3重量%であり、固形分重量のうち、カーボンブラックの含有量は、23.0重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒子径は0.28μm、最大粒径は0.51μmであった。
【0117】
(カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルトの作製)
上記前駆体溶液組成物Dを用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルト(平均膜厚:75μm)を作製した。
【0118】
比較例2
(カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液の作製)
全カルボン酸二無水物成分に対してパラ−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(p−TPDA)100モル%と、全芳香族ジアミン成分に対して4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)100モル%とを、カルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分との略等モル量でN−メチル−2−ピロリドン中で重合してポリイミド前駆体のポリアミド酸溶液を5kg用意した。この溶液は粘度7.5Pa・s(25℃)、不揮発分濃度20.0重量%であった。
【0119】
この溶液に実施例2で用いたオイルファーネス系カーボンブラック(CB2、pH:2.5、窒素吸着比表面積:120m2/g、DBP吸収量:105ml/100g、揮発分含有量:3.9重量%)を0.24kgとN−メチル−2−ピロリドン1.8kgを加えて、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行い、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物E(以下、前駆体溶液組成物Eとする)を調製した。この溶液の固形分濃度は17.6重量%であり、固形分重量のうち、カーボンブラックの含有量は、19.3重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒子径は0.26μm、最大粒径は0.44μmであった。
【0120】
(カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルトの作製)
上記前駆体溶液組成物Eを用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルト(平均膜厚:76μm)を作製した。
【0121】
以上の実施例1〜3、比較例1〜2より得たポリイミドシームレスベルトについて、下記の特性を評価した。その結果を、表1〜3に示す。
【0122】
本明細書に記載される各物性値の測定は、以下のようにして行った。
【0123】
<カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物中の固形分濃度の測定>
カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物中の固形分濃度は、次のように算出された値である。試料を金属カップ等の耐熱性容器で精秤し、この時の試料の重量をA(g)とする。試料を入れた耐熱性容器を電気オーブンに入れて、120℃×15分、180℃×15分、及び300℃×30分で順次昇温しながら加熱、乾燥し、得られる固形分の重量(不揮発分重量)をB(g)とする。同一試料について5個のサンプルのA及びBの値を測定し(n=5)、次式にあてはめて固形分濃度を求めた。その5個のサンプルの平均値を、固形分濃度とした。
【0124】
固形分濃度=B/A×100(%)
【0125】
<窒素吸着表面積>
窒素吸着表面積は、JIS K6217(低温窒素吸着法)に準拠して測定した。或いは、市販カーボンの特性データを参照した。
【0126】
<DBP吸収量>
DBP吸収量は、JIS K6217に準拠して測定した。或いは、市販カーボンの特性データを参照した。
【0127】
<カーボンブラックの揮発分含有量>
揮発分含有量は、JIS K6221に準拠して、該カーボンブラックを950℃で7分間加熱した時の減量を測定し、加熱前のカーボンブラック重量に対する減量をパーセント表示(重量%)した。
【0128】
<カーボンブラックのpH>
pH値は、ASTM D1512に準拠した値とした。
【0129】
<カーボンブラックの粒度>
溶液中でのカーボンブラックの粒度は、HORIBA社製LA−920型レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
【0130】
<半導電性ポリイミド樹脂ベルトの表面抵抗率>
表面抵抗率(SR)の測定は、得られた半導電性ポリイミド樹脂ベルトを長さ400mmにカットしたものをサンプルとして、三菱化学(株)製の抵抗測定器“ハイレスタIP・URプロ−ブ”を使って、幅方向に等ピッチで3カ所と縦(周)方向に4カ所の合計12ヶ所について各々測定し、全体の平均値で示した。表面抵抗率(SR)は電圧500V印加の下10秒経過後に測定した。
【0131】
<力学特性の評価>
得られたカーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルトから、試験片(5mm×40mm)を切り出し、この試験片を用いて、JIS K7127の引張条件に基づいて、オートグラフ((株)島津製作所製、AGS−5kNG)により、引張速度50mm/分、測定温度23℃の条件で試験片の引張降伏強さ:σy(MPa)、引張破断強さ:σb(MPa)及び引張伸度(%)を測定した。なお、それぞれの特性値は、上記各カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルトからそれぞれ5つの試験片を切り出し、各試験片について測定した値の平均値として求めた。
【0132】
<平面度測定>
得られた各カーボンブラック充填ポリイミドシームレスベルトを幅350mmにカットし、図1に示すような直径30mmの2本のローラー(3)に35Nの張力で張架した状態で、キーエンス(株)製のレーザ変位計(製品番号:タイプKL080)(2)でベルトの幅方向にベルト表面の変位量を読み取った。そして、図2に示すように、最大値から最小値を差分した値を幅方向の平面度とした。また、後述する高電圧印加テスト及び空転耐久テストの評価を行った後のポリイミドシームレスベルトについても、前述の方法により平面度測定を行った。
【0133】
<高電圧印加テスト及び空転耐久テスト>
10℃、25%RHの環境下、走行速度を280mm/sで、図3に示す通電システムにて評価した。実施例および比較例で得られたベルト(1)を、電圧印加ローラー(5)により4.0kV(通電電流約40μA)の印加電圧で、50時間運転した後の表面抵抗率の変動を測定した。その後、印加電圧なしで走行速度を280mm/sの速度で連続300時間の空転耐久評価を実施した。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
表3より、実施例1〜3は、高い平面度が得られた。これは、ターフェニル−テトラカルボン酸と芳香環数が3個および4個の芳香族ジアミンを主成分とすることで、ポリイミド樹脂の繰り返し単位中のイミド基(環)の濃度を減らすことができ、イミド化時の脱水量を減らし体積収縮力を低減できるため、と考えられる。そして、空転耐久評価で連続300時間行ってもベルトが破損せず、平面度の悪化が少なかった。比較例2は評価前の平面度は比較的小さい値であったが、耐久評価後ではかなり悪化した。これは、引張降伏強さが180MPaよりかなり小さく、ベルトの幅方向にかかる荷重による塑性変形(伸びによる寸法変化)を起こしたと考えられる。
【0138】
また、実施例1〜3のベルトは、高電圧印加テストにおいても表面抵抗率の変化(低下)はなかった。これは、樹脂中にカーボンブラックを高充填化させること、即ち、樹脂中でカーボンブラックが可能な限り連続した均一な分散状態であるためと考える。
【0139】
これらの結果は、本発明の半導電性ポリイミド樹脂ベルトを、例えば中間転写ベルトとして用いた場合、過大な電流を繰り返し流しても表面抵抗率の変化がなく高品質の転写画像が得られ、しかも長期間の使用でも破損することがないことを意味する。
【符号の説明】
【0140】
1 無端管状フィルム
2 レーザー変位計
3 ローラー
4 レーザー変位計の走査方向
5 電圧印加ローラー
6 走行方向
図1
図2
図3