(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体チオビスフェノール酸化防止剤をポリエチレンと混合する方法であって、(A)チオビスフェノール酸化防止剤をポリアルキレングリコール(PAG)と混合してブレンドを形成する工程及び(B)ブレンドをポリエチレンと混合する工程を含む方法。
【背景技術】
【0003】
USP6,869,995は、ポリエチレン(PE)、チオビスフェノール酸化防止剤及び1000〜100,000の範囲の分子量のポリエチレングリコール(PEG)を含む組成物を記載している。この組成物は、製造の際の良好なスコーチ抵抗性及び使用の際の良好な耐水トリー性を有する電力ケーブル絶縁シースの製造に有用である。PEは、前方ロールで1分間あたり24回転(rpm)、後方ロールで36rpm及び125〜130℃の2本のロールの温度で10分間稼働する2本ロールミルによりPEGとコンパウンドされる。1つの実施形態において、手順は、樹脂をオーブンにより70℃に予熱すること;2本ロールミルにより可能な限り素早く樹脂を流動体化する(flux)こと(3〜4分間);PEG及び4,4’−チオビス−(2−tert−ブチル−5−メチル−フェノール)(TBM6)を加え、更に3〜4分間流動体化すること;並びに次に過酸化物を加え、十分に混合されるまで流動体化し、剥離し、折り畳むことを伴う。この特許は、TBM6とPEGとの予備形成(pre-formed)ブレンドの使用について考察していない。
【0004】
TBM6は、架橋性(XL)PE組成物において使用される高性能チオビスフェノール酸化防止剤及びスコーチ抑制剤であり、それは162℃の高い溶融温度を有する。この添加剤の高い融点は、ワイヤ及びケーブル用途の絶縁化合物の生成において幾つかの問題を引き起こす。これらの問題には、以下が含まれる:
(A)TBM6はポリエチレン樹脂にあまり可溶性がなく、このことはポリエチレン絶縁組成物において未溶融TBM6粒子をもたらしうる。TBM6のこれらの未溶融粒子は、材料から製造された最終ケーブルにおいて許容されない電気特性を引き起こしうるので、XLPEにおいて望ましくない。
(B)TBM6の高い融点は、コンパウンディング設備の液体添加剤供給機系におけるこの添加剤の使用を困難にし、したがって化合物への添加剤の正確な計量供給を困難にする。液体添加剤供給系のみを用いるこれらのコンパウンディング設備では、TBM6は化合物配合における使用の選択肢では全くない。
(C)TBM6の高い融点は、添加剤の清浄性を改善するために、コンパウンディング設備で添加剤を濾過することを困難にする。清浄性は、不純物及び欠陥がXLPEから製造された最終ケーブルにおいて電気的な不備を引き起こす可能性のため、XLPE絶縁組成物の重要な特徴である。TBM6添加剤の改善された清浄性は、結果として最終XLPE絶縁化合物の改善された清浄性になる。
(D)TBM6の粉末形態は、爆発性の微粉と考えられる。このことは、粉末形態のTBM6を使用するために、高価な防爆材料取扱装置の使用を必要とする。そうでなければ、微粉蓄積を最小限にするために、より高価な圧密ペレット形態のTBM6を使用しなければならない(TBM6は、低い最小点火エネルギー(MIE)及び高い微粉爆燃指数(Kst)を有する)。
【0005】
ワイヤ及びケーブル用途の架橋性ポリエチレン(XLPE)絶縁組成物においてトリー抑制添加剤(tree retardant additive)として使用されるPEG20000(USP4,305,849、4,440,671及び6,869,955)は、約62℃の融点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
特に異なる記述がない、内容から示唆されない又は当技術分野において慣用ではない限り、全ての部及びパーセントは、重量に基づいており、全ての試験方法は、本開示の出願日の時点で最新のものである。米国の特許実務のために、いかなる参照特許、特許出願又は公報の内容も、特に定義(本開示において具体的に提供されているいかなる定義とも不一致でない程度)の開示及び当技術分野における一般的知識に関して、それらの全体が参照により組み込まれている(又はその同等の米国版が参照によりそのように組み込まれている)。
【0013】
本開示の数値範囲は近似値であり、したがって、特に示されない限り、範囲外の値を含むことができる。数値範囲は、任意の低いほうの値と任意の高いほうの値との間に少なくとも2単位の分離があるのであれば、1単位刻みで、低いほう及び高いほうの値を含む全ての値を含む。例として、例えば分子量などの組成的、物理的又は他の特性が100〜1,000である場合、100、101、102などの全ての個別の値及び100〜144、155〜170、197〜200などの部分範囲は明確に列挙されている。1未満である値又は1を超える分数(例えば、1.1、1.5など)を含有する値を含有する範囲では、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01又は0.1であると考慮される。10未満(例えば、1〜5)の1桁の数を含有する範囲では、1単位は典型的には0.1であると考慮される。これらは、具体的に意図されるものの例にすぎず、列挙されている最低値と最高値との間の数値の可能な組合せは、全て、本開示において明確に記述されていると考慮されるべきである。数値範囲は、とりわけ、PEGの分子量及びチオビスフェノール酸化防止剤とPEGとの重量比について本開示内において提供される。
【0014】
「ワイヤ」及び同様の用語は、単一ストランドの導電性金属、例えば銅若しくはアルミニウム又は単一ストランドの光ファイバーを意味する。
【0015】
「ケーブル」、「電力ケーブル」及び同様の用語は、保護ジャケット又はシース内の少なくとも1本のワイヤ又は光ファイバーを意味する。典型的には、ケーブルは、典型的には共通の保護ジャケット又はシース内で一緒に束ねられている2本以上のワイヤ又は光ファイバーである。ジャケット内部の個別のワイヤ又はファイバーは、裸である、覆われている又は絶縁されていることがある。結合ケーブルは、電線及び光ファイバーの両方を含有することができる。ケーブルなどは、低、中及び高電圧用途に設計することができる。典型的なケーブル設計は、USP5,246,783、6,496,629及び6,714,707に例示されている。
【0016】
「組成物」及び同様の用語は、2つ以上の成分の混合物又はブレンドを意味する。
【0017】
「ブレンド」、「混合物」及び同様の用語は、互いに組み合わされて組成物を形成するチオビスフェノール酸化防止剤及びPAGを意味する。チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGは、任意の様式、例えば溶融、共通の溶液での一緒の溶解、ドライブレンドなどで組み合わせることができる。
【0018】
「酸化防止剤」及び同様の用語は、ポリマーの加工中に生じる酸化を最小限にする化学化合物を意味する。
【0019】
「架橋した」、「硬化した」及び同様の用語は、ポリマーが、物品に造形される前又はその後、架橋を誘導する処理に付され又は曝露されており40から100重量パーセントの間のキシレン又はデカレン抽出物(すなわち、40重量パーセント以上のゲル含有量)を有することを意味する。
【0020】
「架橋性」、「硬化性」及び同様の用語は、ポリマーが、物品に造形される前又はその後、硬化又は架橋しておらず、実質的な架橋を誘導する処理に付されていない又は曝露されていないが、ポリマーが、そのような処理に付される又は曝露される(例えば、水、熱又は照射に曝露される)と実質的な架橋を引き起こす、促進する又は可能にする添加剤又は官能基を含むことを意味する。
【0021】
チオビスフェノール酸化防止剤
ポリエチレンが高温で加工される際、例えばワイヤ及びケーブル被覆の製造において酸化に対する保護をポリエチレンに提供する任意のチオビスフェノール酸化防止剤を、本発明の実施において使用することができる。チオビスフェノール酸化防止剤の代表的な例には、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)(TBM−6、CAS96−69−5としても知られている);2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール);4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(4−オクチルフェノール)(CAS16857−10−6);2,2’−チオビス(6−t−ブチル−p−クレゾール)(TBP−6、CAS90−66−4としても知られている)及び2つ以上のこのような酸化防止剤の混合物が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)が好ましいチオビスフェノール酸化防止剤である。
【0022】
PAG
本発明の実施において使用されるポリアルキレングリコールは、既知の化合物であり、これらは、当技術分野で既知の反応条件下で水及び一価、二価又は多価化合物の1つ又は複数により開始され塩基触媒により促進されるアルキレンオキシドモノマー又はアルキレンオキシドモノマーの混合物の重合により作製される(例えば、“Alkylene Oxides and Their Polymers”, Surfactant Science Series, Vol 35を参照されたい)。重合が完了すると、反応混合物は排気され、次に1つ又は複数の酸を加えることにより中和される。場合により、中和により得られる塩を任意の既知の様式で除去することができる。中和ポリアルキレングリコール生成物は、4.0〜8.5のpH値を有する。本発明のために、「ポリアルキレングリコール」には、ジアルキレングリコール、具体的にはジエチレングリコールが含まれる。
【0023】
1つの実施形態において、開始剤は、エチレン若しくはプロピレングリコール又はこれらの一方のオリゴマーである。1つの実施形態において、開始剤は、式:
R
1O−(CHR
2CH
2O)
m−R
3
[式中、R
1及びR
3は独立して、直鎖又は分岐鎖構造を有し1つ又は複数の不飽和結合又は水素を含有してもよいC
1〜C
20脂肪族又は芳香族基であるが、但し、R
1及びR
3の少なくとも一方は水素であり;各R
2は、独立して水素、メチル又はエチルであり;mは、0〜20の整数である]の化合物である。1つの実施形態において、出発化合物は、グリセロール又はソルビトールなどの3つ以上のヒドロキシル基を含有する炭化水素化合物である。
【0024】
1つの実施形態において、触媒は、塩基、典型的にはアルカリ若しくはアルカリ土類金属水酸化物若しくは炭酸塩、脂肪族アミン、芳香族アミン又は複素環式アミンの少なくとも1つである。1つの実施形態において、水酸化ナトリウム又はカリウムが塩基触媒である。
【0025】
重合においてモノマーとして使用されるアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ヘキセンオキシド又はオクテンオキシドなどのC
2〜C
8酸化物である。1つの実施形態において、アルキレンオキシドは、エチレン又はプロピレンオキシドである。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、ポリアルキレンオキシドは、ポリエチレンオキシド又はエチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)との水溶性コポリマー又はこれらの一方のモノメチル、エチル、プロピル若しくはブチルエーテル又はポリエチレンオキシド又はグリセロールにより開始されるEOとPOとのコポリマーである。1つの実施形態において、ポリアルキレングリコールは、1,000〜100,000の分子量を有するポリエチレングリコールである。典型的には、最小分子量は、5,000、より典型的には10,000、更により典型的には15,000である。典型的な最大分子量は、100,000、より典型的には75,000、更により典型的には50,000である。ポリエチレングリコールが好ましいが、ポリプロピレングリコール及びポリエチレン−ポリプロピレングリコールを含む他のポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールの混合物を、代わりに使用することができる。
【0027】
チオビスフェノール酸化防止剤/PAGブレンド
チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGは、典型的には0.02:1〜3:1、より典型的には0.1:1〜2:1、更により典型的には0.5:1〜1:1のチオビスフェノール酸化防止剤とPAGとの重量比で存在する。チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGは、任意の適切な様式、例えば溶融ブレンド、共通の溶媒での溶解、それに続く溶媒の除去、ドライブレンドなどでブレンドすることができる。本発明の実施は均質なブレンドを必要としないが、好ましくは、チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGは、少なくともほぼ、好ましくは完全に均質な混合物が得られるまで互いに混合される。溶媒ブレンドの実施形態において、溶媒には、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、四塩化炭素、o−ジクロロベンゼンなどが含まれるが、これらに限定されず、溶媒は任意の適切な手段、例えば蒸発により除去される。チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGを、個別に又は任意の順番で共通の溶媒に溶解させ、次に互いに又は同時にブレンドすることができる。ブレンドを溶融又は固体形態で使用することができる。
【0028】
好ましい実施形態において、チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGは、互いにドライブレンドされ、すなわち、酸化防止剤及びPAGは両方ともブレンドされる時点では固体である。ドライブレンドを行うために使用される様式及び装置は、適宜変わることができる(例えば、高、低及び中強度乾燥固体ブレンダー、乳鉢と乳棒など)。酸化防止剤及びPEGは、好ましくは粉末形態であり、典型的には、チオビスフェノール酸化防止剤では粒径が1〜1,000マイクロメートルのものであり、PEGでは1〜10,000マイクロメートルのものである。
【0029】
場合により、好ましくは、チオビスフェノール酸化防止剤とPAGとのブレンドは、PEと混合する前に任意の形状、例えばペレット、錠剤、フレークなどに圧密される(compacted)。圧密されていることが好ましいが必ずしも必要ではないこの物理的ブレンドは、伝統的な固体供給系を使用してPEコンパウンディング装置に正確に計量供給されて、原材料の取扱いを簡素化することができる。この物理的ブレンドは、チオビスフェノール酸化防止剤の融点の低減、したがってPE化合物への容易な溶融混合を提供し、したがって組成物中での酸化防止剤の分散を改善し、PEにおける未溶融酸化防止剤を無くする。更に、チオビスフェノール酸化防止剤とPAGとの安定した圧密物理的ブレンドは、チオビスフェノール酸化防止剤の粉末形態に関連する爆発の問題を無くする。次に、このことは防爆材料取扱装置への資本支出を低減し、原材料の取扱いを簡素化し、製造設備における清掃を簡素化する。酸化防止剤及びPAGを個別に加えることに対する物理的ブレンドのなお別の利点は、低い発汗の維持、及び酸化防止剤によりもたらされる改善されたスコーチ特徴及びPEGによりもたらされる水トリーに対する改善された抵抗性である。更に別の利点は、いったん液体状態に変換されると、ブレンドの濾過が促進されることであり、このことは清浄な絶縁組成物の生成において重要である。
【0030】
1つの好ましいドライブレンドは、TBM6及びPEG20,000である。TBM6は、162℃の融点を有し、一方、PEG20,000は、約62℃の融点を有する。0.6:1のTBM6とPEG20,000との比のTBM6とPEG20,000との物理的ブレンドは、予想外に低い融点を有し、ほぼ全ての混合物が63℃で溶融する(130℃及び161℃での幾つかの非常に小さい画分の融点は、組成物における有意ではない百分率を表す)。
【0031】
PEと混合されるブレンドの量は、PE組成物(PE樹脂、酸化防止剤/PAGブレンド、並びに任意の添加剤及び充填剤を含む)の重量に基づいて、典型的には少なくとも0.1、より典型的には少なくとも0.5、更により典型的には少なくとも0.9の重量パーセント(wt%)である。PE組成物におけるブレンドの最大量は、典型的には3以下、より典型的には1.5以下、更により典型的には1.1以下のwt%である。
【0032】
ポリエチレン
ポリエチレンは、この用語がここで使用されるとき、エチレンのホモポリマー又はエチレンと3〜12個の炭素原子、好ましくは4〜8個の炭素原子を有する微量の1つ又は複数のアルファ−オレフィン及び場合によりジエンとのコポリマー又はそのようなホモポリマーとコポリマーとの混合物である。混合物は、機械的ブレンド又はin situブレンドでありうる。アルファ−オレフィンの例は、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンである。
【0033】
ポリエチレンは、均質又は不均質でありうる。均質なポリエチレンは、通常、1.5〜3.5の範囲の多分散性(Mw/Mn)及び本質的に均一のコモノマー分布を有し、単一の比較的低いDSC融点により特徴付けられる。一方、不均質なポリエチレンは、3.5を超える多分散性(Mw/Mn)を有し、均一のコモノマー分布を有さない。Mwは、重量平均分子量と定義され、Mnは、数平均分子量と定義される。ポリエチレンの密度は、1立方センチメートルあたり0.860以下から0.950以上のグラム(g/cc)の範囲でありうるが、典型的には0.870〜0.930g/ccの範囲の密度を有する。これらは、典型的には、10分間あたり0.1〜50グラム(g/10分)の範囲のメルトインデックスを有する。
【0034】
ポリエチレンは、低又は高圧法により生成することができる。これらは、従来の技術によりガス相又は溶液若しくはスラリー中の液相において生成することができる。低圧法は、典型的には1000psi未満の圧力で実行されるが、高圧法は、典型的には15,000psiを超える圧力で実行される。
【0035】
これらのポリエチレンの調製のために使用することができる典型的な触媒系には、以下が含まれる:USP4,302,565(不均質なポリエチレン)に記載されている触媒系により例示されるマグネシウム/チタンに基づいた触媒系;USP4,508,842(不均質なポリエチレン)並びにUSP5,332,793、5,342,907及び5,410,003(均質なポリエチレン)に記載されているものなどのバナジウムに基づいた触媒系;USP4,101,445に記載されているものなどのクロムに基づいた触媒系;USP4,937,299及び5,317,036(均質なポリエチレン)に記載されているものなどのメタロセン触媒系;又は他の遷移金属触媒系。これらの触媒系の多くは、多くの場合、チーグラーナッタ触媒系又はフィリップス(Phillips)触媒系と呼ばれる。シリカ−アルミナ支持体の酸化クロム又はモリブデンを使用する触媒系を、ここに含めることができる。ポリエチレンを調製するための典型的な方法も、前述の特許に記載されている。典型的なin situポリエチレンブレンド及び方法、並びに触媒系は、USP5,371,145及び5,405,901に記載されている。多様なポリエチレンは、高圧法により作製されるエチレンの低密度ホモポリマー(HP−LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)及び0.940g/ccを超える密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)を含むことができる。後者の4つのポリエチレンは、一般に低圧法により作製される。従来の高圧法は、Introduction to Polymer Chemistry, Stille, Wiley and Sons, New York, 1962, 149から151頁に記載されている。高圧法は典型的には、管型反応器又は撹拌型オートクレーブにおいて実施されるフリーラジカル開始重合である。撹拌型オートクレーブでは、圧力は1平方インチあたり10,000〜30,000ポンド(psi)の範囲であり、温度は175〜250℃の範囲であり、管型反応器では、圧力は25,000〜45,000psiの範囲であり、温度は200〜350℃の範囲である。
【0036】
VLDPEは、エチレンと、3〜12個の炭素原子、典型的には3〜8個の炭素原子を有する1つ又は複数のアルファ−オレフィンとのコポリマーでありうる。VLDPEの密度は、0.870〜0.915g/ccの範囲でありうる。それは、例えば、(a)クロム及びチタンを含有する触媒、(b)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体を含有する触媒又は(c)バナジウム、電子供与体、アルキルアルミニウムハロゲン化物調節剤及びハロカーボン促進剤を含有する触媒の存在下で生成することができる。VLDPEを作製するための触媒及び方法は、それぞれ、USP4,101,445、4,302,565及び4,508,842に記載されている。VLDPEのメルトインデックスは、0.1〜20g/10分の範囲であることができ、典型的には0.3〜5g/10分の範囲である。エチレン以外でコモノマーに起因するVLDPEの部分は、コポリマーの重量に基づいて1〜49重量パーセント(wt%)の範囲であることができ、典型的には15〜40wt%の範囲である。第3のコモノマーには、例えばエチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン又はジシクロペンタジエンなどの別のアルファ−オレフィン又はジエンを含めることができる。エチレン/プロピレンコポリマー及びエチレン/プロピレン/ジエンターポリマーは、一般にEPRと呼ばれ、ターポリマーは、一般にEPDMと呼ばれる。第3のコモノマーは、コポリマーの重量に基づいて1〜15wt%の量で存在することができ、典型的には1〜10wt%の量で存在する。典型的には、コポリマーは、エチレンを含む2又は3つのコモノマーを含有する。
【0037】
LLDPEは、VLDPE及びMDPE(これらも線状である)を含むことができるが、一般に、0.916〜0.925g/ccの範囲の密度を有する。これは、エチレンと、3〜12個の炭素原子、典型的には3〜8個の炭素原子を有する1つ又は複数のアルファ−オレフィンとのコポリマーでありうる。メルトインデックスは、1〜20g/10分の範囲であることができ、典型的には3〜8g/10分の範囲である。アルファ−オレフィンは、上記のものと同じであることができ、触媒及び方法も、所望の密度及びメルトインデックスを得るために必要な変動を受ける同じものである。
【0038】
示されているように、ポリエチレンの定義に含まれるものは、従来の高圧法により作製されるエチレンのホモポリマーである。本発明の1つの実施形態において、ポリエチレンは、高圧法により作製されるエチレンのホモポリマーである。ホモポリマーは、好ましくは、0.910〜0.930g/ccの範囲の密度を有する。ホモポリマーは、1〜5g/10分の範囲のメルトインデックスを有することもでき、典型的には0.75〜3g/10分の範囲のメルトインデックスを有する。メルトインデックスは、ASTM D−1238、条件(Condition)E下で決定される。190℃及び2160グラムで測定される。
【0039】
エチレンと不飽和エステルとから構成されるコポリマーはよく知られており、上記の従来の高圧法により調製することができる。不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート及びビニルカルボキシレートでありうる。アルキル基は、1〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。カルボキシレート基は、2〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは2〜5個の炭素原子を有する。エステルコモノマーに起因するコポリマーの部分は、コポリマーの重量に基づいて5〜50重量パーセントの範囲であることができ、好ましくは15〜40重量パーセントの範囲である。アクリレート及びメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートである。ビニルカルボキシレートの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート及びビニルブタノエートである。エチレン/不飽和エステルコポリマーのメルトインデックスは、0.5〜50g/10分の範囲であることができ、好ましくは2〜25g/10分の範囲である。エチレンと不飽和エステルとのコポリマーを調製するための1つの方法は、USP3,334,081に記載されている。ビニルトリメトキシシランなどのシランとエチレンとのコポリマーを使用することもできる。
【0040】
1つ又は複数の追加の樹脂が組成物に導入される場合、チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGの成分の量は、組成物における樹脂全体の100重量部に基づいている。これらの樹脂は、多様なポリエチレン若しくはポリプロピレン又はワイヤ及びケーブルにおいて慣用的に使用される他のポリマー添加剤でありうる。
【0041】
添加剤
ポリエチレン配合物に導入することができる従来の添加剤は、酸化防止剤、カップリング剤、紫外線吸収剤又は安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、核剤、増強充填剤又はポリマー添加剤、カーボンブラック、滑剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、界面活性剤、エキステンダー油(extender oils)、金属不活性化剤、電圧安定剤、難燃性充填剤及び添加剤、架橋剤、促進剤及び触媒、並びに防煙剤により例示される。充填剤及び添加剤は、原樹脂、この場合はポリエチレンの100重量部毎に約0.1未満から約200超の重量部の範囲の量で加えることができる。
【0042】
酸化防止剤の例は、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、ビス[(ベータ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルホン及びチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメートなどのヒンダードフェノール;トリ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト及びジ−tert−ブチルフェニル−ホスホナイトなどのホスファイト及びホスホナイト;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルトルヒオジプロピオネート及びジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ化合物;多様なシロキサン;並びに重合2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びジフェニルアミンなどの多様なアミンである。酸化防止剤は、ポリエチレンの100重量部あたり0.1〜5重量部の量で使用することができる。
【0043】
PEは、架橋剤を組成物に加えることにより又は樹脂を加水分解性にすることにより架橋することができ、これは、−−Si(OR)
3(ここで、Rはヒドロカルビルラジカルである)などの加水分解性基を、グラフト又は共重合を通してPEに加えることにより達成される。典型的には、PEは架橋しており、これは有機過酸化物の作用を通して架橋している。
【0044】
有機過酸化物などのフリーラジカル開始剤によるポリマーの架橋は、よく知られている。一般に、有機過酸化物は、ロールミル、二軸混練押出機又はBANBURY(商標)若しくはBRABENDER(商標)ミキサにより過酸化物の有意な分解の開始温度よりも低い温度で溶融ブレンドすることによって、ポリマーに組み込まれる。過酸化物は、Plastic Additives Handbook, Gachterら, 1985, 646から649頁に記載されているように、それらの半減期温度に基づいて分解が判断される。有機過酸化物をポリマー化合物に組み込むための代替的な方法は、液体過酸化物とポリマーのペレットとをHENSCHEL(商標)ミキサのようなブレンドデバイス又は簡素なドラムタンブラーのような浸漬デバイスにより混合することであり、これらは、有機過酸化物の凍結点を超え有機過酸化物の分解温度及びポリマーの溶融温度を下回る温度で維持される。有機過酸化物の組込みの後、次にポリマー/有機過酸化物ブレンドを、例えば押出機に導入し、ここでそれは、導電体の周りに有機過酸化物の分解温度を下回る温度で押し出されて、ケーブルを形成する。次にケーブルを、有機過酸化物が分解するより高い温度に曝露してフリーラジカルをもたらし、これがポリマーを架橋させる。
【0045】
適切な架橋剤は、ジクミルペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;t−ブチルクミルペルオキシド;及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン−3などの有機過酸化物である。1つの実施形態において、ジクミルペルオキシドが好ましい有機過酸化物である。
【0046】
加水分解性基は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシ−シランなどの1つ又は複数のSi(OR)
3基を有するエチレン性不飽和化合物のグラフトにより、前述の有機過酸化物の存在下でポリマーに加えることができる。次に加水分解性樹脂は、ジラウリン酸ジブチルスズ、マレイン酸ジオクチルスズ、ジブチルスズジアセテート、酢酸第一スズ、ナフテン酸鉛及びカプリル酸亜鉛などのシラノール縮合触媒の存在下で水分により架橋する。1つの実施形態において、ジラウリン酸ジブチルスズが好ましいシラノール縮合触媒である。
【0047】
加水分解性グラフトコポリマーの例は、ビニルトリメトキシシラングラフトエチレンホモポリマー、ビニルトリエトキシシラングラフトエチレンホモポリマー及びビニルトリブトキシシラングラフトエチレンホモポリマーである。或いは、ビニルトリアルコキシシラン架橋剤とエチレン及び他のモノマーとの共重合は、エチレンホモポリマー並びにビニルアセテート及びアクリレートとのコポリマーの製作に使用される高圧反応器においてすることができる。
【0048】
ケーブルの製造
本発明の組成物を使用するケーブルは、多様な型の押出機、例えば一軸又は二軸型により調製することができる。コンパウンディングは、押出機により又は押出しの前にBRABENDER(商標)ミキサ若しくはBANBURY(商標)ミキサなどの従来のミキサにより行うことができる。従来の押出機の1つの記載は、USP4,857,600において見出すことができる。1つの典型的な押出機は、その上流末端にホッパー及びその下流末端にダイを有する。ホッパーは、スクリューを備えるバレルに供給する。下流末端では、スクリューの末端とダイとの間にスクリーンパック及びブレーカープレートがある。押出機のスクリュー部分は、供給区画、圧縮区画及び計量区画の3つの区画、並びに後面熱領域及び前面熱ゾーンの2つのゾーンに分かれていると考慮され、区画及びゾーンは上流から下流へと連続している。代替的には、上流から下流へと連続している軸に沿って多数の加熱ゾーン(2つを超える)が存在することができる。それが2つ以上のバレルを有する場合、バレルは直列に連結されている。それぞれのバレルの長さと直径との比は、約15:1〜約30:1の範囲である。材料が押出しの後で有機過酸化物により架橋するワイヤ被覆において、クロスヘッドのダイは、加熱ゾーンに直接供給し、このゾーンは130℃〜500℃の範囲、好ましくは170℃〜450℃の範囲の温度で維持することができる。ケーブルのための架橋方法は、Electrical Wire Handbook, The Wire Association International, Inc., Guilford, Connecticut, 1983, 112から120頁に記載されている。
【0049】
本発明は以下の実施例を通してより完全に記載される。特に示されない限り、全ての部及び百分率は重量による。
【実施例】
【0050】
特定の実施形態
材料
Chemtura CorporationのLowinox TBM6(CAS登録番号:96−69−5)[4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)又は4,4’−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)]。
ポリエチレングリコール、MW20,000(CAS登録番号:25322−68−3)。
【0051】
予備形成ブレンド
加工前に20,000の分子量を有するPEGは、撹拌能力を有する固定型加熱デバイスを使用して、100℃から120℃の間の温度で溶融する。温度をこの範囲で保って、高温で生じる可能性があるPEG20000の化学分解を回避する。0.6:1のTBM6とPEG20000との比を用いる。TBM6の適切な重量を、TBM6の完全な溶解が生じるまで、連続的に撹拌しながら溶融PEG20000に注意深く加える。予備形成混合物を熱源から取り出し、周囲条件下(23℃及び大気圧)下で冷ます。冷めた生成物は均質な固体である。TBM6とPEG20000との異なる比の追加の試料を同じようにブレンドするが、高いTBM6含有量の試料のために、温度を120℃超からおよそ170℃に上げることが必要である。
【0052】
予備形成混合物は、TA Instruments Thermal Analysis Q−1000 DSCユニットを使用して溶融特性について試験する。DSCを30.0℃で平衡し、次に1分あたり10.0℃で180.0℃まで勾配する。これは第1の熱DSC走査である。次に試料を1分間等温で保ち、10.0℃で勾配して−60.0℃にし、3分間等温で保ち、次に10.0℃で勾配して200.0℃にする。これは第2の熱DSC走査である。0.6:1のTBM6とPEG20000との比についての第1の熱DSC走査を
図1に示し、データを表1に提示する。0.6:1のTBM6とPEG20000との比のTBM6とPEG20000との予備形成混合物の融点は、TBM6単独よりも有意に低く(60〜80℃対162℃)、PEG20,000単独よりも有意に低い(59℃対62.5℃)。TBM6とPEG20000との他の予備形成混合物についての第1の熱DSC走査を
図2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
予備形成混合物は、#6スピンドルを備えたBrookfield Digital Viscometer Model RVTDを使用して粘度を測定するために、撹拌能力を有する固定型加熱デバイスを使用して75℃、100℃、125℃及び150℃の温度に加熱される。0.6:1のTBM6とPEG20000との比のTBM6とPEG20000との予備形成混合物は、純PEG20000よりも有意に低い粘度を120℃超で示し、データを
図3に例示する。完全なデータを表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
PE組成物
LDPEポリマーを、BrabenderモデルPrep Mixer/Measuringヘッド実験室用電動バッチミキサを使用して、TBM6とPEG20000(0.6:1のTBM6とPEG20000との比で)との固体予備形成混合物とコンパウンドする。ユニットは、中剪断速度Cam Bladesを備えて、試料の微粉砕、混合及び剪断の組合せを提供する。Brabenderの2つの温度領域を120℃に設定し、ロータ速度を25rpmに設定する。LDPEポリマーを、TBM6とPEG20000との予備形成混合物と共にBrabenderミキサに加える。材料が装填された後、ラムアーム閉鎖アセンブリを下げ、混合速度を40rpmに増加させる。混合サイクルの持続時間は5分間である。化合物をBrabenderミキサから取り出し、Mylarシートの間で圧縮成形プレスにより加圧して、化合物を冷却する。この材料をPE化合物と定義する。
【0057】
TBM6及びPEG20000が予備形成混合物として加えられていないPE化合物の試料を比較例として含める。この比較例のPE化合物を、BrabenderモデルPrep Mixer/Measuringヘッド実験室用電動バッチミキサを使用して、固体TBM6添加剤及び固体PEG20000添加剤を(0.6:1のTBM6とPEG20000との比で)LDPEポリマーに加えることにより調製する。ユニットは、中剪断速度Cam Bladesを備えて、試料の微粉砕、混合及び剪断の組合せを提供する。Brabenderの2つの温度領域を180℃に設定し、ロータ速度を45rpmに設定する。材料が装填された後、ラムアーム閉鎖アセンブリを下げ、材料を3分間混合する。化合物をBrabenderミキサから取り出し、Mylarシートの間で圧縮成形プレスにより加圧して、化合物を冷却する。この材料を、TBM6及びPEG20000が予備形成混合物として加えられていないPE化合物比較例として定義する。
【0058】
TBM6とPEG20000との予備形成混合物を含有するPE化合物の一部を、TA Instruments Thermal Analysis Q−1000 DSCユニットを使用して、ASTM D 3895−07に従ってDSC酸化誘導時間(OIT)について試験する。試料を130℃の温度で加圧して公称10ミル厚の膜にし、およそ5mgの膜を試験する。TBM6及びPEG20000が予備形成混合物として加えられていないPE化合物の1つの試料も同様に、DSC OITについて試験する。0.6:1のTBM6とPEG20000との比のTBM6とPEG20000との予備ブレンド溶融混合物を含有するPE化合物は、予備ブレンドされていないTBM6及びPEG20000を含有するPE化合物よりも有意に高いDSC OIT平均を示し、データを表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
TR−XLPE組成物
LDPEポリマーを、BrabenderモデルPrep Mixer/Measuringヘッド実験室用電動バッチミキサを使用して、TBM6とPEG20000(0.6:1のTBM6とPEG20000との比で)との固体予備形成混合物とコンパウンドする。ユニットは、中剪断速度Cam Bladesを備えて、試料の微粉砕、混合及び剪断の組合せを提供する。Brabenderの2つの温度領域を120℃に設定し、ロータ速度を25rpmに設定する。LDPEポリマーを、TBM6とPEG20000との予備ブレンド混合物と共にBrabenderミキサに加える。材料が装填された後、ラムアーム閉鎖アセンブリを下げ、混合速度を40rpmに増加させる。混合サイクルの持続時間は5分間である。次に溶融ジクミルペルオキシドを、シリンジにより5分間かけて配合物に加え、続いて40rpmで2分間流動体化して、所望の分散体を得る。バッチをミキサボウルから取り出し、液圧プレスによりMylarシートの間で圧縮して所望の形態にし、冷ます。この材料をTR−XLPE化合物と定義する。
【0061】
TBM6及びPEG20000が予備形成混合物として加えられていないTR−XLPE化合物の1つの試料を比較例として含める。この比較例のTR−XLPE化合物を、BrabenderモデルPrep Mixer/Measuringヘッド実験室用電動バッチミキサを使用して、固体TBM6添加剤及び固体PEG20000添加剤を(0.6:1のTBM6とPEG20000との比で)LDPEポリマーに加えることにより調製する。ユニットは、中剪断速度Cam Bladesを備えて、試料の微粉砕、混合及び剪断の組合せを提供する。Brabenderの2つの温度領域を180℃に設定し、ロータ速度を45rpmに設定する。材料が装填された後、ラムアーム閉鎖アセンブリを下げ、材料を3分間混合する。化合物をBrabenderミキサから取り出し、Mylarシートの間で圧縮成形プレスにより加圧して、化合物を冷却する。次にこのPE化合物を、過酸化物を加えるために2本ロールミルに移す。2本のロールミルローラを120℃に設定し、溶融過酸化物をシリンジによりゆっくりと加える。過酸化物が組み込まれると、材料を5分間混合する。化合物を2本ロールミルから取り出し、切断してストリップにする。この材料を、TBM6及びPEG20000が予備形成混合物として加えられていないTR−XLPE比較例と定義する。
【0062】
TR−XLPE化合物を、機械的及び電気的試験のために、架橋した小板(plaque)に変換する。引っ張り試験のための公称75ミル厚小板を、シングルプレス技術(single press technique)を使用してGREENARD(商標)急冷手動プレス(quench cool manual press)により加圧する。Mylarシートを試料の間に置き、加圧して小板の清浄性を確実にする。材料を、500psi及び120℃で3分間、続いて2600psi及び190℃で15分間加圧する。小板をプレスにより5分間冷却する。
【0063】
引っ張り強さ及び引っ張り伸び試験を、ASTM D638に従ってINSTRU−MET(商標)Model 4201引っ張り試験機により実施する。試料を、100ポンドロードセルを用いて1分間あたり20インチの速度で試験する。引っ張り強さ及び引っ張り伸びの特性を、熱老化していない小板、並びに136℃及び150℃で3週間まで熱老化した後の小板で測定する。熱老化は、引っ張り試験片をBlue M Electric Companyの通常のオーブンに特定の時間吊すことにより実施される。許容される熱老化引っ張り強さ及び引っ張り伸びの試験の基準は、この老化プロトコールの後で初期特性の75パーセント超を保持することである。
【0064】
0.6:1のTBM6とPEG20000との比のTBM6とPEG20000との予備ブレンド混合物を含有するTR−XLPE化合物は、熱老化引っ張り強さ及び引っ張り伸びの試験の基準を満たした、すなわち、初期特性値の75パーセント超を保持する。データを表4に示す。
【0065】
水トリーの成長速度は、ASTM D6097に従って測定される。試験片は、先端半径3ミクロンの埋込み成形された円錐形の欠陥を有する圧縮成形ディスクである。試料を、0.01モルのNaClの導電性水溶液において1kHzで5kVの印加電圧及び室温により30日間老化する。埋込み成形された欠陥への集中電気ストレスは、排気水トリーの形成及び成長を開始する。老化の後、試験片は、水トリーを顕微鏡検査により観察でき水トリーの長さを測定できるように、染色され、薄切りされる。
【0066】
0.6:1のTBM6とPEG20000との比のTBM6とPEG20000との予備ブレンド混合物を含有するTR−XLPE化合物は、水トリーの成長に対して抵抗性を示し、これは比較試料の結果と本質的に同等である。データを表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
追加の実施例
以下の実施例において、PEG20000及びTBM6を受け取ったままで使用する。低密度ポリエチレン(密度0.92g/cc、メルトインデックス2.3g/10分、エチレンの高圧重合により作製)であるDXM−446を、使用前に超低温で粉砕して、1〜2,000マイクログラムの微粒径範囲にする。次に材料を、純粋な材料(比較例1〜3)として示差走査熱量測定(DSC)により分析するか又は乳鉢及び乳棒を使用して室温で十分にブレンドして、物理的ブレンド(実施例1及び2)を作る。
【0069】
DSCは、アルミニウムパンを窒素雰囲気下で使用して、10℃で出発し200℃で終了する10℃/分の熱速度で実施される。
【0070】
結果を表5に報告する。比較例1〜3は、単独で測定すると、PEG20,000が65℃で溶融し、TBM6が163℃で溶融し、DXM−446が111℃で溶融することを示す。驚くべきことに、実施例1に示されているように、62:38のPEG20,000:TBM6のブレンドは、1つの主要吸熱だけを示し、それは63℃においてである(全体の僅か約1%の量になる有意ではない吸熱が、110℃及び162℃で見られる)。同様に、実施例2では、純粋なTBM6において163℃で生じたTBM6溶融吸熱はごく僅かであり(ピーク162℃のエンタルピーは、全エンタルピーのごく僅かの0.8%である)、有意なピークは、64℃及び110℃で存在するだけである。実施例3において、1つの主要吸熱だけが存在し、それは60.6℃においてである。実施例4は、主な吸熱を61.6℃で示し、より高い温度では少量の吸熱だけであり、これは、個別の成分に基づいて予測されるものと比較して、高い温度(>100℃)ピークのエンタルピーにおいて>76%の低減を表す。同様に、実施例5は、主な吸熱を64.2℃で示し、より高い温度では少量の吸熱だけであり、これは、個別の成分に基づいて予測されるものと比較して、高い温度(>100℃)ピークのエンタルピーにおいて>77%の低減を表す。理論に束縛されることなく、実施例1及び2において吸熱ピークを63〜64℃で引き起こす現象は、PEG20,000溶融体でのTBM6の驚くべき同時溶解を伴うPEG20,000の溶融であると考えられる(実施例2における110℃でのピークは、主にDXM−446の溶融に起因する)。結果は、本発明の物理的ブレンドが、驚くべきことにTBM6の高い温度での溶融をほぼ全て無くすることを示す。
【0071】
【表5】
【0072】
本発明は好ましい実施形態の前述の記載を通してある程度詳細に記載されてきたが、この詳細は主に例示するためのものである。多くの変形及び変更を、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、当業者によって行うことができる。
[1]
少なくとも1つのチオビスフェノール酸化防止剤及び少なくとも1,000の重量平均分子量の少なくとも1つのポリアルキレングリコール(PAG)を含む添加剤混合物。
[2]
チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGが、0.02:1〜3:1のチオビスフェノール酸化防止剤とPAGとの重量比で存在する、[1]に記載の混合物。
[3]
PAGが、少なくとも10,000の重量平均分子量を有し、チオビスフェノール酸化防止剤が、2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール);4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−チオビス4−オクチルフェノール;2,2’−チオビス(6−t−ブチル−p−クレゾール)及び4,4’−チオビス−(2−tert−ブチル−5−メチル−フェノール)(TBM6)の少なくとも1つである、[2]に記載の混合物。
[4]
ドライブレンドとして調製され、PAGがポリエチレングリコールである、[3]に記載の混合物。
[5]
[3]に記載の混合物を調製する方法であって、PAGをチオビスフェノール酸化防止剤と溶融ブレンドする工程を含む方法。
[6]
[3]に記載の混合物を調製する方法であって、PAG及びチオビスフェノール酸化防止剤を共通の溶媒に溶解させる工程を含む方法。
[7]
溶媒がハロゲン化炭化水素であり、方法が、蒸発により溶媒を除去する更なる工程を含む、[6]に記載の方法。
[8]
[3]に記載の混合物を調製する方法であって、PAG及びチオビスフェノール酸化防止剤をドライブレンドする工程を含む方法。
[9]
ドライブレンドを圧密して圧密物品にする更なる工程を含む、[8]に記載の方法。
[10]
ポリエチレン、[1]に記載の混合物及び有機過酸化物を含む架橋性ポリエチレン組成物。
[11]
[1]に記載の混合物が、組成物の0.1〜3重量パーセントを占める、[10]に記載の架橋性PE組成物。
[12]
有機過酸化物が、PEの0.3〜3重量部の量で存在する、[10]に記載の架橋性PE組成物。
[13]
PEが、LDPE、LLDPE、ULDPE、VLDPE及びHDPEの少なくとも1つである、[10]に記載の架橋性PE組成物。
[14]
PEが、高圧法により調製されるエチレンの低密度ホモポリマーである、[10]に記載の架橋性PE組成物。
[15]
固体チオビスフェノール酸化防止剤をポリエチレンと混合する方法であって、(A)チオビスフェノール酸化防止剤をポリアルキレングリコール(PAG)と混合してブレンドを形成する工程及び(B)ブレンドをポリエチレンと混合する工程を含む方法。
[16]
チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGが、最初に共通の溶媒に溶解されてブレンドを形成し、次に溶媒が、ブレンドをポリエチレンと混合する前に除去される、[15]に記載の方法。
[17]
チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGが、ブレンドをポリエチレンと混合する前に溶融混合されてブレンドを形成する、[15]に記載の方法。
[18]
チオビスフェノール酸化防止剤及びPAGが、ブレンドをポリエチレンと混合する前にドライブレンドされてブレンドを形成する、[15]に記載の方法。
[19]
ブレンドが均質である、[18]に記載の方法。
[20]
A.高圧法により調製されるエチレンの架橋した低密度ホモポリマー;及び
B.[1]に記載の添加剤混合物
を含む組成物で周りを囲まれている導電体を含むケーブル。