特許第5784116号(P5784116)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5784116密閉された二つの接触電極用のアーク制御チャンバー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784116
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】密閉された二つの接触電極用のアーク制御チャンバー装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/985 20060101AFI20150907BHJP
   H01H 33/70 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   H01H33/985
   H01H33/70 C
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-519066(P2013-519066)
(86)(22)【出願日】2011年7月12日
(65)【公表番号】特表2013-534351(P2013-534351A)
(43)【公表日】2013年9月2日
(86)【国際出願番号】EP2011061818
(87)【国際公開番号】WO2012007447
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】1055800
(32)【優先日】2010年7月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】オズィール ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ロセ ルネ
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−095680(JP,A)
【文献】 実開平02−133843(JP,U)
【文献】 実開昭63−079032(JP,U)
【文献】 実開平05−068046(JP,U)
【文献】 特開昭58−071523(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0045595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/985
H01H 33/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉位置と開位置との間で可動する二つの接触可能な電極(1、2)と、
前記電極(1、2)それぞれ支持する二つの接触支持部(3、4)と、
前記接触支持部(3、4)を繋ぐとともに、前記電極(1、2)の対向部位を囲む、フード(29)と
を含み、
前記フード(29)が、誘電体の主部(30)と、前記主部(30)の端部と前記接触支持部(3、4)とを連結する二つのカラー(31、32)とを含む、
アーク制御チャンバー装置であって、
前記カラー(31、32)が、前記電極(1、2)の前記対向部位が延びる前記フード(29)の内側の内部空間(57)を、前記フード(29)の外側の外部空間(58)と連通させるとともに、前記内部空間(57)を囲む、開口部(47、48)をそれぞれ備え
前記カラー(31、32)それぞれが、前記主部(30)を越えて半径外側方向に突出する、連続隔壁(35、36)を含むとともに、前記開口部(47、48)が、前記主部(30)と前記連続隔壁(35、36)との間で、前記カラー(31、32)を通じて広がること
を特徴とする該装置。
【請求項2】
前記カラーそれぞれが、対応する前記接触支持部(3、4)に接する支持リング(33、34)と、前記主部を支持するための内側部(43、44)とを含み、前記連続隔壁(35、36)が前記支持リングに繋がり、前記開口部が前記連続隔壁と前記内側部との間に広がること、
を特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記内側部(43、44)が、前記連続隔壁(35、36)に組み付けられ、前記開口部が、前記連続隔壁上に設けられ、前記内側部が支持される、タブ(41、42)の間に広がること、
を特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記カラーそれぞれが、前記連続隔壁に繋がり前記内側部を囲む前方ブッシング(37、38)を含み、前記開口部が、前記内側部と前記前方ブッシングとの間に広がること、
を特徴とする請求項またはに記載の装置。
【請求項5】
前記前方ブッシング(37、38)それぞれが、自由端に、前記主部(30)に向かって突出する丸いビード(55、56)を含むこと、
を特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記接触支持部(3、4)それぞれが、対応する前記電極の開放後方端からのガス流の経路を規定する外側の端部(15、16)を有し、前記端部が、対応する前記連続隔壁に向かって開口し、前記カラー(39、40)それぞれが、前記連続隔壁に繋がり対応する前記外側の端部の一端を囲む後方ブッシングを有すること、
を特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記カラーの前記内側部それぞれが、フィールド電極(45、46)を支持し、前記フィールド電極が前記接触電極(1、2)を囲むとともに、前記開口部が前記接触電極と前記フィールド電極との間に広がること、
を特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記開口部が、対流による換気ガス流に、空間(57)の中央を貫通する対角線経路を与えるように、一方の前記カラー(31)の角部分と他方の前記カラー(32)の対角部分とに亘って広がること、
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、高電圧機器での回路遮断装置またはスイッチにおける、密閉された二つの接触電極用のアーク制御チャンバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な装置が、接触電極が内部でスライドし該電極を囲む接触支持部を繋ぐ、絶縁フードを含んでいる。このような絶縁フードの主たる機能は、電極が同じ軸上にあり、これにより、接点の開動作及び閉動作が可能であることを保証することにある。これらは、しばしば、水平軸上にある電極に用いられるが、これは、重力が電極を下落させるためである。
【0003】
しかしながら、このフードにより密閉される空間で、特有の困難が生じる。一方の電極から他方に流れる電流により生じる熱が、装置を通過することができる公称電流を制限する。状況は、接触電極が開く際に、より困難になるが、これは、電気的アークが短時間発生し、アークを囲むガスに、大量の熱と、顕著な量の加圧とを生じ、これがフードを破裂し得るからである。
【0004】
既知の方策の一つは、接点が開いた際に電気アークにより生じる非常に高圧のガスを排出するために、電極の後方に開口部を配置することである。そして、高温ガスは、電極を囲むフード周囲の空間に戻る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第一の目的は、フードにより成された密閉状態にもかかわらず、装置は通常の動作のままで、接点が閉状態の電極の加熱を制限することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、閉位置と開位置との間で可動する二つの接触電極と、電極を支持する二つの接触支持部と、接触支持部を繋ぐとともに電極の対向部位を囲むフードとを含み、フードが、誘電体の主部と、主部の端部と接触支持部とを連結する二つのカラーとを含む、アーク制御チャンバー装置であって、カラーが、電極の対向部位が延びるフードの内側の内部空間を、フードの外側の外部空間と連通させるとともに、内部空間を囲む、開口部を備えること、を特徴とする該装置を提供する。
【0007】
開口部は、カラーを通じて形成され、機械加工が容易な導電性材料から作られてもよく、これにより、フードを通じたガス対流を生じることが可能であり、従って、フードの中の高温ガスを、フードの外側からのより冷たいガスに連続的に入れ替えることが可能である。カラーを介したこの開口部の配置は、フードの主部を介する場合よりも、顕著な利点をもたらすことが強調されるべきである。カラーがしばしば金属で作られるという条件下での機械加工によってでも、あるいは、モデリングや他の方法によるカラーの製作においてでも、カラーにおける開口部の製作は容易であり、カラーが、金属から、またはポリマーから、または複合材料から作られることに依らず、カラーの設計において有効なより大きな自由度にもかかわらず、十分な機械的強度を保つ。フードは薄い円筒であり、密閉空間の中央に接近できるため、より良い解決策に見える、フードの主部に孔を開けることは、実際には、より大きな短所をもたらすことが分かっているが、これは、フードの主部が、最も脆弱な部分であり、通常絶縁繊維で作られているからである。そこへの穿孔は、全体としてのフードの機械的強度に必然的に影響し、また、機械加工により切断された繊維片が電流経路を助長するため、誘電強度にも影響する。
【0008】
他の困難が、アークによりフードに囲まれた空間に生じる高温ガスの排気の上述した状況に現れる。このガスは、開口部を通じたフードにより密閉される空間への浸入と、ガスの高プラズマ含有量による電極間でのアークの再発生の危険性を有する。しかしながら、これは、開口部を高温ガス流と遮断することによる、本発明の好ましい実施形態において回避可能であり、これは、開口部が、カラーにおけるフードの端部にある場合には容易であり、周囲空間が必要な電極間の接合部と一致する、フードの中央の開口部を利用する場合は、より困難である。対応する好ましい配置では、カラーは、この目的のために、半径方向に突出し、高温ガスが排気される隣接する空間の開口部を隔て、従って開口部を遮蔽する、連続隔壁を備える。フードを囲む空間は、高温ガスにほとんど浸入されることはなく、従って、ガスは、この空間を横切る機会を持たない。
【0009】
本発明は、他の様々な側面で改良されてもよい。カラーそれぞれは、対応する接触支持部に接する支持リングと、フードの主部を支持するための内側部とを含み、連続隔壁は支持リングに繋がり、開口部は連続隔壁と内側部との間に広がり、前方ブッシングは、内側部を囲むように、連続隔壁に繋がってもよく、開口部は、内側部と前方ブッシングとの間に広がる。前方ブッシングは、開口部に対する良好な遮蔽を提供し、一方で、装置の誘電強度を高めることに貢献している。
【0010】
便利な構造では、内側部は、(ねじ等の個別手段により)連続隔壁に組み付けられ、開口部は、連続隔壁上に設けられ内側部が支持される、タブの間に広がる。
【0011】
前方ブッシングそれぞれは、自由端に、フードの主部に向かって突出する丸いビードを含んでもよい。
【0012】
好ましい配置では、接触支持部それぞれは、対応する電極の開放後方端からのガス流の経路を規定する外側の端部を有し、この端部は、連続隔壁に向かって開口し、カラーそれぞれは、連続隔壁に繋がり外側の端部の一端を囲む後方ブッシングを有する。この配置は、連続隔壁により、アークが形成される際に電極から生じる高温ガスを遮断し、高温ガスをフード及び電極間の接合領域から遠ざけることができる。
【0013】
また、カラーの内側部は、それぞれフィールド電極を支持してもよく、このフィールド電極が接触電極を囲むとともに、開口部が接触電極とフィールド電極との間に広がる。
【0014】
対流の質を向上することができる、好ましい実施形態では、開口部は、一方のカラーの角部分と、他方のカラーの対角部分とを占有する。
【0015】
以下、本発明を、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】接点が開状態の本発明の第一の実施形態を示す。
図2】第一の実施形態のバリエーションである。
図3】カラーの斜視図である。
図4】接点が閉状態の本発明の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、図1及び図4を参照されたい。アーク制御チャンバーは、可動接触電極(1)と、固定接触電極(2)とを、同じ軸上に含む。電極(1及び2)は、固定接触支持部(3及び4)により支持されており、各固定接触支持部は、特に、対応する電極(1及び2)が嵌め込まれる各スリーブ(5及び6)を含み、電極(1及び2)による電気的接続を成すためのスプリング板(7及び8)を備える。固定接触支持部は、その後方部分に、スリーブ(5及び6)の内部でチャンバーに開口するとともに、スリーブ(5及び6)を貫通する他の経路(11及び12)を介して内側のスリーブ(5及び6)と外側の円筒状の端部(15及び16)との間に広がる環状のチャンバー(13及び14)に開口する、経路(9及び10)を含み、さらにスリーブ(5及び6)の後方への接続部(17及び18)をも含み、前方が、すなわち、電極(2または1)に対向して、開口している。スイッチ装置全体は、タンク(図示せず)内に配置されている。含まれるガスは、通常、六フッ化硫黄SF6または他の高い誘電性のガスである。
【0018】
電極(1及び2)は、外部接触部(19及び20)と、外部接触部により囲まれ、装置が開く際に外部接触部よりも長く互いに接したままの状態にあり、接点が開く際にアークが飛ぶ、内部接触部(21及び22)とを有する。誘電性材料のアーク吹き付けノズル(24)が、電極(1及び2)を共に連結し、内部接触部(21及び22)を囲み、アーク(23)を閉じ込める。アーク(23)は、従来の方法により、例えば、スリーブ(5)の隔壁(26)と可動電極(1)との間の圧縮チャンバー(25)に最初に含まれるガスの膨張により、吹き付けが行われ、ガスは、圧縮が、該開口(27)に取り付けられたチェックバルブ(28)を開けるのに十分となった直後に、該電極の終端壁を通る開口(27)を介して、アーク(23)に向かって、電極(1)の前方に吹き付けられる。
【0019】
電極(1及び2)は、円筒形状の主部(30)と、接触支持部(3及び4)にそれぞれ固定される二つのカラー(31及び32)とを有するフード(29)により、中心が合わされている。主部(30)は、誘電体であり、カラー(31及び32)は、導電性材料から作られてもよい。カラーは、略同一である。各カラーは、スリーブ(5または6)と結合する支持リング(33または34)と、支持リング(33または34)の周りに広がり、主部(30)を越えて半径方向(電極(1または2)の軸に垂直)に突出する、平らな連続隔壁(35または36)と、連続隔壁(35または36)の外側端部から他のカラー(32または31)に向かって延びる円筒状の前方ブッシング(37または38)と、同様に円筒状で、前方ブッシングから反対方向に、連続隔壁(35または36)の外側端部から後方に向かって延び、隔壁(35または36)に非常に近いスリーブの端部(15または16)を囲む、後方ブッシング(39または40)と、を含む。図3でより良好に確認できる、タブ(41または42)が、前方ブッシング(37または38)近くの連続隔壁(35または36)から突出し、カラー(31または32)の内側部(43または44)を支持する。フード(29)の主部(30)の端部は、この内側部(43及び44)に圧着される。フード(29)は単体部品であり、ねじ(59または60)により、内側部(43または44)が連続隔壁(35または36)に一体化される。また、各内側部(43または44)は、接触電極(1または2)の一方の外側部(19または20)の前端を接触することなしに囲むフィールド電極(45または46)を、それぞれ支持する。フィールド電極(45及び46)は、互いに対向する。
【0020】
フード(29)は、開口部(47または48)により開口され、各開口部は、対応するカラー(31または32)を通じて延び、連続隔壁(35または36)と内側部(43または44)との間に広がる第一の部位(49または50)と、タブ(41または42)の間で、前方ブッシング(37または38)と内側部(43または44)との間に広がる第二の部位(51または52)と、前方ブッシング(37または38)の端部で、内側に突出し丸い形状のビード(55または56)を形成する端部の位置の、第三の部位(53または54)と、を含む。
【0021】
本発明は、以下のように動作する。接点が閉じられると、フード(29)に含まれるガスが加熱され、開口部(47及び48)を通じて、対流が生じる。より軽い高温ガスは、上部の開口部を通じて、フード(29)により密閉された内部空間(57)から外に出る一方、フード(29)を囲む外部空間(58)から来たガスが、底部の開口部を通じて、それと置き替わる。これにより、電極(1及び2)の十分な換気が達成される。
【0022】
接点が開かれて、アーク(23)が現れると、これにより生じる高温ガスが、まず、環状のチャンバー(13及び14)に運ばれ、続いて、カラー(31及び32)に対して吹き付けられるが、連続隔壁(35及び36)がこのガスを阻み、後方ブッシング(39及び40)がガスを反転し、これにより、外部空間(58)からガスを遠ざけ、ガスが開口部(47及び48)に達するのを防ぐ。
【0023】
図2に示す特有の実施形態では、一方のカラー(31)における開口部(47)が上部に位置し、他方のカラー(32)における開口部(48)が底部に位置し、またはより一般的には、カラーにおける開口部は、カラー(31及び32)の周辺周りで互いに対向する角部に唯一つが配置され、これにより、換気ガスを、内部空間(57)の中央を貫通する対角線経路に進ませ、これにより、良好な換気を保証する。このバリエーションは、タブ(41及び42)間の他の開口部分を遮断するストッパー(61及び62)を付加することにより実施可能である。
【0024】
図2は、矢印(63)により、対流の動きを示し、矢印(64及び65)により、電気アークの遮断時に排出される高温ガスの排気の動きを示す。また、図1の実施形態は、矢印(63)の対流の動きに対称な対流の動きをも含む。
【0025】
カラー(31及び32)は、アルミ鋳造として、低価格で作ることが出来る。開口部(47、48)は、所望の対流速度を可能とするように、大きい寸法が与えられる。開口部の波状形状は、特に望まれるものではないが、示される実施形態において、前方ブッシング(37、38)とフィールド電極(45、46)との存在によりもたらされる。それらの部品が存在しない場合は、直線的な開口部が選択可能である。
図1
図2
図3
図4