(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784138
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】ランプ組み立てのためのガラス物品
(51)【国際特許分類】
C03C 3/06 20060101AFI20150907BHJP
F21S 2/00 20060101ALI20150907BHJP
F21Y 101/00 20060101ALN20150907BHJP
【FI】
C03C3/06
F21S2/00 311
F21Y101:00 100
F21Y101:00 300
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-541275(P2013-541275)
(86)(22)【出願日】2011年11月10日
(65)【公表番号】特表2013-545707(P2013-545707A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2011069835
(87)【国際公開番号】WO2012072398
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2013年7月30日
(31)【優先権主張番号】102010062193.5
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512288684
【氏名又は名称】オスラム ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OSRAM GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガンク ベンテン
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ ビュットナー
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ダイゼンホーファー
(72)【発明者】
【氏名】トマス マーフィー
【審査官】
山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−001586(JP,A)
【文献】
特表2005−506946(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/038349(WO,A1)
【文献】
特開2000−211943(JP,A)
【文献】
特開平07−315863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧放電ランプの放電容器(100)を取り囲む、該高圧放電ランプの外部バルブ(116)として形成されていて、かつ主成分として二酸化ケイ素(SiO2)及びドープ剤としてネオジム、アルミニウム、セリウム、バリウム及びホウ素を酸化物の形で含有するガラス組成物を有するガラス物品において、
− 該ガラス組成物中の二酸化ケイ素の割合が、96質量%以上であり、
− 該ガラス組成物中のネオジムの割合が、0.06〜1.40質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のアルミニウムの割合が、0.09〜1.20質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のセリウムの割合が、0.06〜1.30質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のバリウムの割合が、0.006〜1.30質量%の範囲にあり、かつ
− 該ガラス組成物中のホウ素の割合が、0.0009〜0.20質量%の範囲にある
ことを特徴とするガラス物品。
【請求項2】
前記ガラス組成物が、付加的に、酸化物の形のユーロピウム及びチタンの群からの少なくとも1種の更なるドープ剤を含有することを特徴とする、請求項1記載のガラス物品。
【請求項3】
前記ガラス組成物中のユーロピウムの割合が、0.008〜0.44質量%の範囲にあることを特徴とする、請求項2記載のガラス物品。
【請求項4】
前記ガラス組成物中のチタンの割合が、0.006〜0.06質量%の範囲にあることを特徴とする、請求項2記載のガラス物品。
【請求項5】
前記ガラス物品のガラス組成物が、酸化物の形のネオジム、アルミニウム、セリウム、バリウム及びホウ素のみをドープ剤として含有し、かつ残分は、前記主成分の二酸化ケイ素から形成され、かつ、
− 該ガラス組成物中のネオジムの割合が、0.26〜1.32質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のアルミニウムの割合が、0.09〜0.50質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のセリウムの割合が、0.26〜1.30質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のバリウムの割合が、0.24〜1.30質量%の範囲にあり、かつ
− 該ガラス組成物中のホウ素の割合が、0.003〜0.20質量%の範囲にある
ことを特徴とする、請求項1記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の上位概念に従ったガラス物品(Glasartikel)に関する。殊に本発明は、ランプ組み立てに際して使用されるガラス物品に関する。
【0002】
I.
先行技術
この種のガラス物品は、例えばUS2001/0044370A1に開示されている。前述の文献は、ランプ組み立てにおいて使用するための種々のガラス組成物を有するガラス物品に関する複数の例を記載している。例5及び6に従ったガラス物品はアルミノケイ酸ガラスから成り、これは熱負荷をあまり強く受けないハロゲン白熱ランプ、例えばECE−カテゴリー H4のハロゲン白熱ランプのランプバルブ用に使用可能である。例7及び8に従ったガラス組成物は、そのアルカリ金属酸化物の含有量に基づきハロゲン白熱ランプのランプ容器には適していない。一方で、例5〜8に従ったガラス物品は、極端に高い熱負荷を受けるランプ容器、例えば、直に放電容器に設けられた、自動車ヘッドライトにおける光源として利用されるハロゲン−金属蒸気−高圧放電ランプの外部バルブには適していない。例1〜4に従ったガラス物品は、非常に高い割合の二酸化ケイ素を有するガラス組成物を有し、かつVycorの商標名で知られている。しかしながら、このガラス種のランプ容器の製造は煩雑である。
【0003】
II.
本発明の説明
本発明の課題は、極端に高い熱負荷にも耐えることができ、かつ長波長スペクトル領域からの光に対するフィルターとして使用可能であるガラス物品を提供することである。
【0004】
この課題は、本発明により、特許請求項1からの特徴を有するガラス物品によって解決される。本発明の特に好ましい実施態様は、従属特許請求項に記載されている。
【0005】
本発明によるガラス物品は、主成分として二酸化ケイ素(SiO
2)及びドープ剤としてネオジム、アルミニウム、セリウム、バリウム及びホウ素を酸化物の形で含有するガラス組成物を有し、その際、本発明により
− 該ガラス組成物中の二酸化ケイ素の割合は、少なくとも90質量%であり、
− 該ガラス組成物中のネオジムの割合は、0.06〜1.40質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のアルミニウムの割合は、0.09〜1.20質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のセリウムの割合は、0.06〜1.30質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のバリウムの割合は、0.006〜1.30質量%の範囲にあり、かつ
− 該ガラス組成物中のホウ素の割合は、0.0009〜0.20質量%の範囲にある。
【0006】
本発明によるガラス物品は、ランプ組み立てにおいて使用するために適している。殊に、該ガラス物品から、自動車ヘッドライトに使われているハロゲン−金属蒸気−高圧放電ランプの外部バルブを製造することができる。その非常に高い二酸化ケイ素割合に基づき、本発明によるガラス物品は、石英ガラスに似た特性を有し、かつ極端に高い熱負荷にも耐えることができる。本発明による酸化物の形のバリウム及びホウ素の割合は、ガラス物品の粘度の低下に寄与し、かつランプ容器への該ガラス物品の加工性を改善する。酸化物の形のネオジムの割合は、長波長光の吸収に寄与し、それというのも、ネオジムは、波長524nm、582nm、744nm及び804nm付近で吸収帯を有するからである。それによって、本発明によるガラス物品がランプ容器として使われる場合、ランプから放射される白色光の色温度が約200ケルビン上昇することが可能となる。酸化物の形のセリウムの割合は、紫外線の吸収に寄与し、かつ本発明によるガラス物品から成るランプ容器の透過率を紫外スペクトル領域内で減少させる。アルミニウムの割合は、主として製造技術的な理由に拠っている。ネオジムもセリウムも、酸化ネオジム(Nd
2O
3)及び酸化セリウム(CeO
2)の形より良好に、混合酸化物としてアルミン酸ネオジム(NdAlO
3)及びアルミン酸セリウム(CeAlO
3)の形で添加され、なぜなら、前者は、化学的に混合酸化物より安定しておらず、かつ溶融炉内で酸素を放出し得るからである。そのうえ、酸化物の形のアルミニウムの割合は、ネオジムのみならずセリウムのガラス中での溶解度に寄与し、かつ、それによって非常に均質なガラスを可能にする。
【0007】
本発明によるガラス物品中の全てのドープ剤は酸化物の形で存在しているが、該ドープ剤の質量割合の値を出す場合、酸化物の形の酸素割合は、該質量割合の算出に際して考慮されず、なぜなら、該ドープ剤は、種々の酸化物の形で存在し得るからである。例えば、ドープ剤は、アルミニウムを酸化アルミニウム(Al
2O
3)、アルミン酸ネオジム(NdAlO
3)若しくはアルミン酸セリウム(CeAlO
3)の酸化物の形で、ガラス中若しくはガラス溶融物のためのガラスバッチ混合物中に導入されていてよい。この理由から、酸化物の形で存在するアルミニウムの質量割合を出す場合、元素のアルミニウムの割合のみが、酸化物の形の酸素を考慮せずに、ガラス組成物において示される。同じ事が、酸化物の形で存在するドープ剤のネオジム及びセリウム並びにバリウム及びホウ素にも当てはまる。後者は、例えば、メタホウ酸バリウム(BaB
2O
4)として又は他の酸化物の形でガラス溶融物のためのガラスバッチ混合物中に導入されていてよい。
【0008】
本発明によるガラス物品のガラス組成物中で酸化物の形で存在するドープ剤のネオジム及びセリウムの上限値は、該ガラス中のネオジム及びセリウムの制限された溶解度によって定められる。これらのドープ剤のより高い質量割合は、ガラス物品中の不均質領域をもたらし得る。質量割合が下限値を下回る場合、これらのドープ剤は、所望の効果を十分な程度では示さない。本発明によるガラス物品のガラス組成物中で酸化物の形で存在するバリウム及びホウ素の上限値及び下限値は、該ガラス物品の所望の粘度低下及び必要とされる耐熱負荷性によって定められている。これらのドープ剤のより高い質量割合が、ガラス物品の耐熱負荷性を大いに低下させる可能性がある一方で、これらのドープ剤のより低い質量割合は、ガラスの粘度を、ランプ容器へのガラス物品の十分良好な加工性を可能する程度には下げない。
【0009】
本発明によるガラス物品のガラス組成物は、付加的に、酸化物の形のユーロピウム及びチタンの群からの少なくとも1種の更なるドープ剤を含有してよい。酸化物の形のチタンの割合によって、ガラス物品の透過率(Durchlaessigkeit)を、紫外スペクトル領域内で、殊に短波長紫外線、いわゆるUV−C線に対して更に減少させることができる。ガラス組成物中でのチタンの割合は、この目的のために、好ましくは0.006〜0.06質量%の範囲にある。
【0010】
酸化物の形のユーロピウムの割合によって、ガラス組成物中の酸化物の形のネオジムの割合を、同じ色温度増大において、ほぼ3分の1減少させることができ、なぜなら、ユーロピウムは、ランプ内で発生したUV線によって励起される青色蛍光線を放射するからである。それによって、可能な限り耐熱負荷性を保証するために、ガラス組成物中の二酸化ケイ素の割合を、相応してより多く省くことができる。そのうえ、ドープ剤の酸化物の形のユーロピウムは、ガラス物品の透過率を200nm〜280nmの紫外スペクトル領域内で更に減少させ、酸素雰囲気中でのガラス物品のアニーリングをなしで済ますことができるという更なる利点を有する。ガラス組成物中のユーロピウムの割合は、上記目的のために、好ましくは0.008〜0.44質量%の範囲にある。
【0011】
本発明の有利な実施例によれば、ガラス物品のガラス組成物は、酸化物の形のネオジム、アルミニウム、セリウム、バリウム及びホウ素のみをドープ剤として含有し、かつ残分は、主成分として二酸化ケイ素から形成され、その際、
− 該ガラス組成物中のネオジムの割合は、0.26〜1.32質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のアルミニウムの割合は、0.090〜0.50質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のセリウムの割合は、0.26〜1.30質量%の範囲にあり、
− 該ガラス組成物中のバリウムの割合は、0.24〜1.30質量%の範囲にあり、かつ
− 該ガラス組成物中のホウ素の割合は、0.003〜0.20質量%の範囲にある。
【0012】
このガラス組成物によって、ガラス物品は、自動車ヘッドライトにおける光源として利用されるハロゲン−金属蒸気−高圧放電ランプの外部バルブ用に特に良好に適している。このガラス組成物により、ドープ剤なしの石英ガラス製の外部バルブと比較して、該ハロゲン−金属蒸気−高圧放電ランプから放射される白色光の色温度を200ケルビン分より高く上昇させることができる。
【0013】
本発明によるガラス物品の特に有利な実施形態によれば、石英ガラスの特性に可能な限り似た特性を有するガラス物品を得るために、二酸化ケイ素(SiO
2)の割合は96質量%より大きい。
【0014】
本発明によるガラス物品は、好ましくはランプ容器を製造するためのガラス管として又はランプ容器として、殊に高圧放電ランプの外部バルブとして又はハロゲン白熱ランプとして形成されている。
【0015】
III.
有利な実施例の説明
以下では、本発明を、有利な実施例を手がかりにして、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明により形成された外部バルブを備えた高圧放電ランプの側面を概略的に示す図
【
図2】1mmの内厚における本発明の第一の実施例に従ったガラス組成物を有するガラス物品の透過スペクトル
【
図3】1mmの内厚における本発明の第二の実施例に従ったガラス組成物を有するガラス物品の透過スペクトル
【
図4】3つの異なるガラス組成物を有するガラスから成る外部バルブを使用した場合の、
図1に描写した高圧放電ランプから放射される光の色位置を示す図
【
図5】本発明により形成されたランプバルブを有するハロゲン白熱ランプの側面を概略的に示す図
【0017】
該図面において概略的かつ部分的に切り取って示した本発明によるランプの実施例は、高圧放電ランプ、殊にハロゲン−金属蒸気−高圧放電ランプであり、該ランプは、好ましくは自動車ヘッドライトにおける光源として使用され、かつ定格35Wの電力消費量を有する。
【0018】
このランプは、気密封止された内部空間若しくは放電空間103、ソケットに近い101ピンチシール部及びソケットから離れた102ピンチシール部を備えた石英ガラス製の管形放電容器100を有する。放電空間103内には、二本の電極104、105が突き出ており、該電極はそれぞれ、ピンチシール部101若しくは102においてガス漏れのないよう圧潰されたモリブデン箔106、107を介してピンチシール部101、102から導出された給電線(Stromzufuehrung)108、109と導電的に接続されている。該ランプソケットは、プラスチック射出成形部材から成るソケットスリーブ110を有し、該スリーブ内には放電容器100及び該容器と溶融し合った外部バルブ116が固定されている。放電容器100を背にしたソケットスリーブ110の末端は、2つの電気コンタクト部112、113を備えたプラグとして形成されている。中央コンタクト部112は、ソケットに近いピンチシール部101から導出された給電線108と導電的に接続されている一方で、他方のリング状の電気コンタクト部113は、セラミック管114により被覆されたアウターリード線115(Rueckfuehrung)を介してソケットから離れたピンチシール部102から突き出ている給電線109と導電的に接続されている。放電容器100は、円筒状の、放電容器100に対してほぼ同軸に配置された外部バルブ116で取り囲まれており、該バルブは、ソケットから離れたピンチシール部102及びソケットスリーブ110内で延在する、放電容器100の管状の延長部117と溶融し合っている。外部バルブ116は放電容器100の周りを覆うことから、放電空間103の領域は完全に該外部バルブ116の内部に配置されている。円筒状のソケットスリーブ110に両方のランプ容器100及び116を固定するために、クランプ座で外部バルブ116をつかむ管状の金属製の支持部材118及びジョイント部で曲げられた4本の金属ストリップ119(その第一の末端はそれぞれ支持部材118で溶接されており、かつ、その第二の末端はそれぞれソケットスリーブ110のプラスチック材料中に固定されている)が用いられる。
【0019】
放電容器100の放電空間103内に取り込まれた封入物は、水銀不含で形成されており、かつキセノン並びに金属のナトリウム、スカンジウム、インジウム及び亜鉛のヨウ化物を含有する。放電容器100には、その外側表面で、EP1632985A1に開示されているように、点弧補助コーティング(非図示)が備わっていてもよい。
【0020】
本発明の第一の実施例によれば、外部バルブ116は、ガラス組成物が主成分として二酸化ケイ素(SiO
2)を96.6質量%の質量割合で含有し、かつドープ剤のネオジム、アルミニウム、セリウム、バリウム及びホウ素を酸化物の形で計3.4質量%の割合で含有するガラスから成り、その際、ネオジム、アルミニウム、セリウム、バリウム及びホウ素は、該ガラス組成物中で以下の値を有する:
ネオジム 1.053質量%
アルミニウム 0.322質量%
セリウム 0.651質量%
バリウム 0.493質量%
ホウ素 0.0776質量%
【0021】
既に上で説明した理由から、ドープ剤のネオジム、アルミニウム、セリウム、バリウム及びホウ素のガラス組成物中での割合に関する前述の値において、酸化物の形の酸素割合は考慮されていない。それゆえ、前出の表における質量%の合計は3.4質量%より小さい。
【0022】
本発明の第一の実施例に従った外部バルブ116は、石英砂(SiO
2)から製造され、それにはガラス溶融物の製造のために1.6質量%のアルミン酸ネオジム(NdAlO
3)、1.0質量%のアルミン酸セリウム(CeAlO
3)及び0.8質量%のメタホウ酸バリウム(BaB
2O
4)を添加していた。200nm〜280nmの紫外スペクトル領域内での透過率を減少させるために、外部バルブ116のガラスを酸素雰囲気中でアニーリングした(例えば1000℃の温度で5時間)。
【0023】
本発明の第一の実施例に従った外部バルブ116のガラス組成物の透過率は、1mmの肉厚において
図2に示している。該透過率は、縦軸上で、打ち当たる電磁放射線の波長に依存した、ガラス上に打ち当たる電磁放射線量を%記載で示している。該波長は、横軸上にナノメートル単位でプロットしている。可視光のスペクトル領域内では、該ガラスは、ほぼ90%の高い透過率を、約524nm付近の緑色光、約582nm付近の黄色光、及び約744nm付近の赤色光のスペクトル領域内での例外とともに有する。それによって、高圧放電ランプから放射される白色光の色温度は、非ドープの石英ガラスから成る外部バルブと比べて約210ケルビン分だけ高められて約4280ケルビンとなる。
図4には、高圧放電ランプから放射される白色光の色位置を、CIE 1931及びDIN 5033に則った標準色度図に応じた色座標x、yを用いて△1で示している。
図4における破線で記した台形は、ECE規則に準拠して自動車ヘッドライト用の許容し得る白色光として認可されている色位置x、yの領域を区切っている。該色位置は、ECE規則に準拠して自動車ヘッドライト用に許容し得る白色光に相当するように台形内になければならない。○3は、外部バルブ116が非ドープの石英ガラスから製造されている場合、高圧放電ランプから放射された白色光の色位置を表示する。
【0024】
本発明の第二の実施例によれば、外部バルブ116は、ガラス組成物が主成分として二酸化ケイ素(SiO
2)を98.0質量%の質量割合で含有し、かつドープ剤のネオジム、アルミニウム、セリウム、バリウム、ホウ素、ユーロピウム及びチタンを酸化物の形で計2.0質量%の割合で含有するガラスから成り、その際、ネオジム、アルミニウム、セリウム、バリウム、ホウ素、ユーロピウム及びチタンは、該ガラス組成物中で以下の値を有する:
ネオジム 0.329質量%
アルミニウム 0.245質量%
セリウム 0.391質量%
バリウム 0.370質量%
ホウ素 0.0582質量%
ユーロピウム 0.0864質量%
チタン 0.0300質量%
【0025】
既に上で説明した理由から、ドープ剤のネオジム、アルミニウム、セリウム、バリウムホウ素、ユーロピウム及びチタンのガラス組成物中での割合に関する前述の値において、酸化物の形の酸素割合は考慮されていない。それゆえ、前出の表における質量%値の合計は2.0質量%より小さい。
【0026】
本発明の第二の実施例に従った外部バルブ116は、石英砂(SiO
2)から製造され、それにはガラス溶融物の製造のために0.5質量%のアルミン酸ネオジム(NdAlO
3)、0.15質量%の酸化アルミニウム(Al
2O
3)、0.6質量%のアルミン酸セリウム(CeAlO
3)、0.6質量%のメタホウ酸バリウム(BaB
2O
4)、0.1質量%の酸化ユーロピウム(Eu
2O
3)及び0.05質量%の二酸化チタン(TiO
2)を添加していた。アニーリング処理は、このガラス組成物の場合は必要ではなく、それというのも、200nm〜280nmの紫外スペクトル領域内でのガラスの透過率は、酸化物の形のユーロピウムの添加によって既に大いに減少していたからである。
【0027】
本発明の第二の実施例に従った外部バルブ116のガラス組成物の透過率は、1mmの肉厚において
図3に示している。該透過率は、縦軸上で、打ち当たる電磁放射線の波長に依存した、ガラス上に打ち当たる電磁放射線量を%記載で示している。該波長は、横軸上にナノメートル単位でプロットしている。可視光のスペクトル領域内では、該ガラスは、ほぼ90%の高い透過率を、約582nm付近の黄色光、及び744nm付近の赤色光のスペクトル領域内での例外とともに有する。それによって、本発明の第二の実施例に従った高圧放電ランプから放射される白色光の色温度は、非ドープの石英ガラスから成る外部バルブと比べて約150ケルビン分だけ高められて約4220ケルビンとなる。
図4には、高圧放電ランプから放射される白色光の色位置を、CIE 1931及びDIN 5033に則った標準色度図に応じた色座標x、yを用いて◇2で示している。
図4のグラフ内でほぼ鉛直方向に延びる線は、500ケルビンの間隔で3500ケルビン〜6000ケルビンの範囲内の色温度値の一定の色温度を有する色位置を示す。付加的に、
図4には、いわゆる黒色(プランク)放射源の色度を、"プランク"と呼ばれる曲線によって示している。非ドープの石英ガラス製の外部バルブを有する高圧放電ランプは、○3によって示される測定点に応じて、約4070ケルビンの色温度を有する白色光を放射する。本発明の第一の実施例に従ったガラス組成物を有するガラス製の外部バルブ116を備えた高圧放電ランプは、△1によって示される測定点に応じて、約4280ケルビンの色温度を有する白色光を放射する。本発明の第二の実施例に従ったガラス組成物を有するガラス製の外部バルブ116を有する高圧放電ランプは、◇2によって示される測定点に応じて、約4220ケルビンの色温度を有する白色光を放射する。
【0028】
その非常に高い二酸化ケイ素(SiO
2)の割合に基づき、本発明によるガラス物品及び、殊に両方の実施例に従ったガラス組成物を有するガラスも、ドープされた石英ガラスとして表されることができ、とりわけ、石英砂又は水晶からの本発明によるガラス物品は、上述の酸化物の形のドープ剤の添加下で溶融される。
【0029】
図5には、ランプバルブ1が同様に上記の第一若しくは第二の実施例に従ったガラス組成物を有するドープされた石英ガラスから成るハロゲン白熱ランプを概略的に示している。このハロゲン白熱ランプは、例えば、自動車のフロントヘッドライトにおける光源として用いられるECE−カテゴリー H11のハロゲン白熱ランプである。
【0030】
このハロゲン白熱ランプは、上記の第一若しくは第二の実施例に従ったガラス組成物を有するドープされた石英ガラスから成り、ランプソケット2の金属ソケット部21内に固定されているランプ容器1を有する。該金属ソケット部21に接続している該ランプソケット2のプラスチックソケット部22には、ハロゲン白熱ランプのエネルギー供給のための電気コンタクト部(非図示)が備え付けられている。気密封止されたランプ容器1は、該金属ソケット部21に固定されているシール末端11、及び円筒形の真ん中のランプ容器部分12並びにシール末端11と向かい合い、かつ透光性コーティング13を備えているランプ容器先端を有する。該ランプ容器1の内部空間には、ハロゲン及びクリプトンを包含する封入ガス混合物が存在している。該ランプ容器1の内部では、円筒形のランプ容器部分12の領域にタングステンコイルとして形成されたフィラメント3が配置されている。該コイル3の巻軸は、円筒形ランプ容器部分12のシリンダー軸と平行に配向されている。フィラメント3の両末端31、32は、それぞれ溶接補助に用いられるモリブデン管により囲われており、かつ給電線4、5は、ランプ容器1のシール末端111から導出されており、かつハロゲン白熱ランプの電気コンタクト部と接続されている。
【0031】
ハロゲン白熱ランプのランプバルブ1を製造するために第一若しくは第二の実施例に従ったガラス組成物を有するガラス物品を使用することによって、非ドープの石英ガラス製のランプバルブと比べて、ハロゲン白熱ランプより放射される白色光の色温度が同様に明らかに高められる。
【符号の説明】
【0032】
100 管形放電容器、 101 ピンチシール部、 102 ピンチシール部、 103 放電空間、 104 電極、 105 電極、 106 モリブデン箔、 107 モリブデン箔、 108 給電線、 109 給電線、 110 ソケットスリーブ、 112 電気コンタクト部、 113 電気コンタクト部、 114 セラミック管、 115 アウターリード線、 116 外部バルブ、 117 管状の延長部、 118 支持部材、 119 金属ストリップ、 1 ランプ容器、 2 ランプソケット、 3 フィラメント、 4 給電線、 5 給電線、 11 シール末端、 12 円筒形ランプ容器部分、 13 透光性コーティング、 21 金属ソケット部、 22 プラスチックソケット部