特許第5784142号(P5784142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5784142ヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784142
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 17/10 20060101AFI20150907BHJP
   C07K 14/56 20060101ALN20150907BHJP
   C07K 14/565 20060101ALN20150907BHJP
   C07K 14/57 20060101ALN20150907BHJP
   C07K 14/525 20060101ALN20150907BHJP
   A61K 38/21 20060101ALN20150907BHJP
   A61K 38/00 20060101ALN20150907BHJP
   A61P 1/16 20060101ALN20150907BHJP
【FI】
   C07K17/10
   !C07K14/56
   !C07K14/565
   !C07K14/57
   !C07K14/525
   !A61K37/66 H
   !A61K37/02
   !A61P1/16
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-543093(P2013-543093)
(86)(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公表番号】特表2014-500272(P2014-500272A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】KR2011009363
(87)【国際公開番号】WO2012077950
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2013年6月10日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0126432
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】505282042
【氏名又は名称】ポステック・アカデミー‐インダストリー・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】セイ・クワン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エー・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スン・キュ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ヘ・フー
(72)【発明者】
【氏名】キ・テ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ミン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・テ・ジュン
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−525491(JP,A)
【文献】 J. Control. Release,2010年 1月 4日,Vol.141, No.1,p.2-12
【文献】 Bioconjug. Chem.,2006年10月,Vol.17, No.5,p.1360-1363
【文献】 Bioconjug. Chem.,2008年12月,Vol.19, No.12,p.2401-2408
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00− 19/00
PubMed
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格に一つ以上のアルデヒド基が導入されているヒアルロン酸−アルデヒド誘導体をタンパク質のN−末端と反応させる工程であって、前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体とタンパク質のN−末端との反応が、pH5〜pH7の緩衝液内で実行される工程、および
前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体が5%以上30%未満のアルデヒド置換率を有するように、前記ヒアルロン酸またはその塩のアルデヒド置換率を調節する工程
を含むヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法であって、
前記ヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートは、肝疾患の治療のために使用されるものであり、かつ、前記タンパク質は、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンベータ(IFNβ)、インターフェロンガンマ(IFNγ)および腫瘍壊死因子(TNF)からなる群から選択される、
製造方法
【請求項2】
前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格が開環されており、開環された環の末端に一つ以上のアルデヒド基を有する請求項1に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、ヒアルロン酸またはその塩を酸化剤と反応させて得る請求項2に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項4】
前記酸化剤は、ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格を開環させて一つ以上のアルデヒド基を形成させることができる請求項3に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項5】
前記酸化剤は、過ヨード酸(periodate)である請求項4に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項6】
ヒアルロン酸またはその塩と酸化剤との間の反応時間を調節することで、ヒアルロン酸またはその塩のアルデヒド置換率を調節する請求項3に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項7】
前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格に存在するカルボキシル位置にアルデヒド基が導入されている誘導体である請求項1に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項8】
前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、ヒアルロン酸またはその誘導体のカルボキシル基をジアミンまたはジヒドラジド基を有した分子と反応させた後、その分子の誘導体をジアルデヒド基を有した別の分子と反応させて得る請求項7に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項9】
ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体とタンパク質のN−末端との反応は、還元的アミノ化(reductive amination)を誘導する試薬の存在下で実行される請求項1に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項10】
還元的アミノ化を誘導する試薬は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN:sodium cyannoborohydride)またはナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(NaBH(OCOCH):sodium triacetoxyborohydride)である請求項に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項11】
前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体とタンパク質のN−末端との反応は、pH5.5〜pH6.5の緩衝液内で実行される請求項1に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項12】
ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体でタンパク質のN−末端と反応しない未反応アルデヒド基を保護基でブロッキングするステップをさらに含む請求項1に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項13】
ヒアルロン酸またはその塩は、10,000〜3,000,000ダルトン(Da)の分子量を有する請求項1に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項14】
ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体1分子当たり結合されるタンパク質の分子数は、1〜20個である請求項1に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項15】
ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格に一つ以上のアルデヒド基が導入されているヒアルロン酸−アルデヒド誘導体がタンパク質のN−末端と結合されているヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートであって、
前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体が、5%以上30%未満のアルデヒド置換率を有し、
前記ヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートは、肝疾患の治療のために使用されるものであり、かつ、前記タンパク質は、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンベータ(IFNβ)、インターフェロンガンマ(IFNγ)および腫瘍壊死因子(TNF)からなる群から選択される、
ヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲート
【請求項16】
ヒアルロン酸またはその塩は、10,000〜3,000,000ダルトン(Da)の分子量を有する請求項15に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲート。
【請求項17】
ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体1分子当たり結合されているタンパク質の分子数は、1〜20個である請求項16に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲート。
【請求項18】
前記タンパク質は、インターフェロンアルファである請求項15に記載のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質医薬品の長期薬効持続剤型に関する研究は、最近まで生体適合な生分解性高分子とのコンジュゲーション(Conjugation)反応を通じた剤型開発に重点を置いて進行されている。前記のようなタンパク質医薬品の薬効持続時間は、剤型の形態及びコンジュゲーションされる有効薬効成分によって数週まで延長されることもある。前記剤型の開発のためには、剤型の薬効維持及び薬効持続時間の増大とともに、有効薬効成分にコンジュゲーションされる高分子の生体適合性有無に関しても考慮される必要がある。また、高分子とのコンジュゲーションによるタンパク質医薬品の活性度減少の問題も考慮しなければならない。
【0003】
このような剤型研究の一例として、最近には、生体適合な生分解性ポリエチレングリコール(PEG:poly ethylene glycol)またはヒアルロン酸(HA:hyaluronic acid)と有効薬効成分をコンジュゲーションして薬物伝達システムに応用する研究が活発に進行されている。
【0004】
しかし、有効薬効成分にポリエチレングリコール(PEG)をコンジュゲーションする反応、すなわち、PEG化(PEGylation)反応に使われるPEGは、EDAで公認した代表的な生体用高分子材料の中で一つであるが、薬物伝達体で活用されるPEG−Liposome接合体を繰り返し注射すれば、体内に投与された薬物が早く消失される「accelerated blood clearance(ABC)」現象が発生すると報告されている。実際に、肝疾患治療用タンパク質医薬品であるインターフェロンアルファの場合、PEG化された商品が週1回の注射剤型で商品化されているが、C型感染治療のためのPEG化されたインターフェロン薬剤の場合、副作用が深刻で治療途中に中断する患者が多くて、遺伝子型1型の場合50%程度の抗ウイルス効果しか示さなくて新しい薬物の開発が必要である。PEGを利用した薬物伝達体の場合、特定組職で伝達特性が存在しないで単純に体内残留時間を増加させる役目をするので、特定疾患の治療のために特定組職に伝達するためには標的化部位(targeting moiety)が別に必要である。
【0005】
一方、ヒアルロン酸を有効薬効成分にコンジュゲーションすれば、肝組職に特異的に伝達される長所があるが、これらコンジュゲーション反応のバイオ接合(Bioconjugation)効率が低くてこれに対する限界点が指摘されて来た。
【0006】
また、PEGやヒアルロン酸のような高分子とタンパク質医薬品のコンジュゲートの場合、高分子がタンパク質のアミノ酸配列の多様な反応基と非特異的に反応してタンパク質の3次構造を破ってタンパク質医薬品の生体活性度を低める問題点が指摘されて来た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005−0176108号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、前記のような従来の諸問題点を解消するために提案されたものであって、本発明は、タンパク質医薬品の生体活性度を最大限維持するとともに、バイオ接合効率が高くて多様な水溶性有効薬効成分に適用可能なヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法及びそれにより製造されたヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲート、及びその用途に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明は、ヒアルロン酸またはその塩にアルデヒド基が導入されているヒアルロン酸−アルデヒド誘導体をタンパク質のN−末端と反応させる方法を含むヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、ヒアルロン酸またはその塩にアルデヒド基が導入されているヒアルロン酸−アルデヒド誘導体がタンパク質のN−末端と結合されているヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートを提供する。
【0011】
以下、本発明のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲート及びその製造方法に対してより詳細に説明する。
【0012】
ヒアルロン酸(HA:Hyaluronic acid)は、D−グルクロン酸(D−glucuronic acid、GlcA)及びN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)がβ1,3−グリコシド結合(β1,3−glycosidic bond)により連結されているジサッカライドを繰り返し単位で含む高分子量の線形ポリサッカライドである。ヒアルロン酸のジサッカライド繰り返し単位は、下記化学式1の通りである。
【0013】
【化1】
【0014】
本発明において、「ヒアルロン酸」は、前記化学式1のジサッカライドを繰り返し単位で含むヒアルロン酸だけではなく、化学式1のジサッカライド骨格から由来された誘導体を繰り返し単位で含むヒアルロン酸の誘導体を含むことで解釈される。ヒアルロン酸の誘導体は、前記化学式1のデサッカライド構造の中でカルボキシル基、水酸化基、アセチル基、またはデサッカライド繰り返し単位の末端が他の置換基に置換されている構造を有するヒアルロン酸を意味する。例えば、前記置換基は、水素、C1−6アルキル基、C1−6アルキルカルボニル基、カルボキシル基、水酸化基及びアセチル基から選択される一つ以上の置換基である。
【0015】
ヒアルロン酸の塩は、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸の誘導体の塩を全て含み、これに限定されるものではないが、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩などが例示される。
【0016】
本発明は、ヒアルロン酸またはその塩にアルデヒド基が導入されているヒアルロン酸−アルデヒド誘導体をタンパク質のN−末端と反応させる方法を含むヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造方法を提供する。
【0017】
ヒアルロン酸とタンパク質とのコンジュゲーション方法で、既存にはヒアルロン酸のカルボキシル基とタンパク質のアミン基を結合させる方法を使用した。しかし、このような方法は、通常的に結合形成のためのリンカーを使用しければならないので、反応が複雑であり、反応の効率、すなわち、バイオ接合効率が落ちるだけではなく、タンパク質のN−末端だけではなくタンパク質アミノ酸配列によって多数存在するリジンのアミン基と非特異的に反応するなどの問題点があった。
【0018】
一方、本発明では、ヒアルロン酸のカルボキシル基の代わりにヒアルロン酸−アルデヒド誘導体を利用することで、ヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲーションのバイオ接合効率及び反応特異性を著しく改善した。
【0019】
本発明で使われる「ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体」は、ヒアルロン酸またはその塩にアルデヒド基が導入されているヒアルロン酸またはその塩び誘導体を全て含むことで解釈される。
【0020】
具体的には、一例において、前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格に一つ以上のアルデヒド基が導入されているものである。
【0021】
本発明のヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格にアルデヒド基を含んでいるので、ヒアルロン酸のジサッカライド繰り返し単位の末端にアルデヒド基が形成されているヒアルロン酸−アルデヒド誘導体を使用する場合に比べてアルデヒド基の置換率を自由に調節できる。本発明において、アルデヒド基の置換率とは、ヒアルロン酸またはその塩の特定機能基がアルデヒド基に代替されるか修飾されることを意味する。アルデヒド基への置換率は、全体ヒアルロン酸繰り返し単位の中でアルデヒド基に置換された繰り返し単位の割合で定義され、定義上0超過1以下の数値、または0%超過100%以下の数値、または0モル%超過100モル%以下の数値で表現することができる。アルデヒド基の置換率を調節すれば、ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体を肝臓で標的化するか、または肝臓を迂回するようにするかを制御することができるので、ヒアルロン酸とコンジュゲーションされる薬物の種類によって肝臓への標的性を調節することができる長所を提供する。
【0022】
具体的には、一例において、前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格が開環されており、開環された環の末端に一つ以上のアルデヒド基を有する。例えば、このようなヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、下記化学式2の繰り返し単位を一つ以上含む高分子を含む。
【0023】
【化2】
【0024】
このようなヒアルロン酸−アルデヒド誘導体を製造する方法は、特別に限定されるものではない。当業者であれば、公知の方法を使用してグルクロン酸を開環させて、開環された環の末端に一つ以上のアルデヒド基を形成させることができる。
【0025】
具体的には、一例において、ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格が開環されており、開環された環の末端に一つ以上のアルデヒド基を有する前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、ヒアルロン酸またはその塩を酸化剤と反応させて得ることができる。下記反応式1は、前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体の形成方法の例を模式化した式である。
【0026】
【化3】
【0027】
本明細書の反応式において、m及びnは、繰り返し単位の繰り返し回数を示し、m及びnは、各々独立的に1〜10,000の定数である。
【0028】
反応式1のように、ヒアルロン酸またはその塩の中で一部の繰り返し単位を化学式2の構造で誘導することができる。
【0029】
具体的には、一例において、前記酸化剤は、グルクロン酸の開環反応を誘導するものであることができ、これに限定されるものではないが、このような酸化剤は、過ヨード酸(periodate)、例えば、過ヨード酸ナトリウム (sodium periodate)、過ヨード酸カリウム(potassium periodate)などを含む。過ヨード酸を酸化剤で利用する場合、ヒアルロン酸またはその塩を暗条件下で過ヨード酸と2時間反応させることで、10%の置換率を有するヒアルロン酸誘導体を得ることができ、反応時間を24時間までふやして50%の置換率を有するヒアルロン酸誘導体を得ることができる。酸化剤との反応時間を調節することで、ヒアルロン酸のアルデヒド置換率を調節することが可能であり、これは当業者がヒアルロン酸とコンジュゲーションさせようとするタンパク質医薬の種類によって適切に選択して調節することができる。
【0030】
本発明の他の具体的な例において、前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格に存在するカルボキシル位置にアルデヒド基が導入されているものである。ヒアルロン酸のカルボキシル位置にアルデヒド基を導入する方法は、当業者により多様に選択されることができる。これに限定されるものではないが、例えば、このようなヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、下記化学式3の繰り返し単位を一つ以上含む高分子を含む。
【0031】
【化4】
【0032】
このようなヒアルロン酸−アルデヒド誘導体を製造する方法は、特別に限定されるものではない。当業者であれば、公知の方法を使用してヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格に存在するカルボキシル位置にアルデヒド基を導入させることができる。
【0033】
具体的には、一例において、ヒアルロン酸またはその塩のグルクロン酸骨格に存在するカルボキシル位置にアルデヒド基が導入されているヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、ヒアルロン酸またはその誘導体のカルボキシル基をジアミンまたはジヒドラジド基を有した分子と反応させた後、その誘導体をジアルデヒド基を有した分子と反応させて得ることができる。下記反応式2は、前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体の形成方法の例を模式化した式である。
【0034】
【化5】
【0035】
反応式2のように、ヒアルロン酸またはその塩の一部の繰り返し単位のカルボキシル基をヒドラジド基またはアミン基を末端に有した分子と反応させてヒドラジドまたはアミン基を有したヒアルロン酸誘導体を合成した後、これを両側末端にアルデヒド基を有した物質と反応させてアルデヒドが導入されたヒアルロン酸誘導体を合成することができる。両側末端にヒドラジドまたはアミン基を有した分子では、両側末端にヒドラジドまたはアミン基を有した分子があり、それに限定されるものではなく、アジピン酸ジヒドラジド(ADH:Adipic acid dihydrazide)、ヘキサンジヒドラジド(hexanedihydrazide)、ヘプタンジヒドラジド(heptanedihydrazide)、オクタンジヒドラジド(octanedihydrazide)、ノナン−1,9−ジアミン(nonane−1,9−diamine)、オクタン−1,8−ジアミン(octane−1,8−diamine)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA:hexamethlyene diamine)、ジアミノペンタン(diamino pentane)、ジアミノブタン(diamino butane)、ジアミノエタン(diamino ethane)などを含む。また、両側末端にアルデヒドが導入されている分子では、両側方末端にアルデヒドが導入されている分子であり、それに限定されるものではなく、アジピンアルデヒド(adipaldehyde)、ヘプタンダイアール(heptanedial)、オクタンダイアール(octanedial)、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)などを含む。ADHを使用して誘導体を合成する場合、3分間反応させる時20%、2時間反応させる時70%のADHが置換されたヒアルロン酸誘導体を得ることができる。HA−ADH誘導体とグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)を利用する場合、ADHの置換率によって20%〜70%のヒアルロン酸−アルデヒド誘導体を得ることができる。一方、本発明によるヒアルロン酸−アルデヒド誘導体を利用すれば、前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体のアルデヒド置換率を調節することで、ヒアルロン酸とコンジュゲーションさせるタンパク質薬物の種類によって肝臓で標的化するかまたは肝臓を迂回するようにするかを制御することができる。
【0036】
本発明のヒアルロン酸−アルデヒド誘導体のアルデヒド置換率は、例えば、グルクロン酸の開環反応を誘導する酸化剤の処理時間を調節することで自由に調節することができる。また、ヒアルロン酸のカルボキシル基とジヒドラジドまたはジアミン基を有した分子との反応時間を調節することで、カルボキシル基の置換率を自由に調節することができる。
【0037】
本発明の一具体例において、前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、5%以上30%未満のアルデヒド置換率を有することができる。5%以上30%未満のアルデヒド置換率を有するヒアルロン酸−アルデヒド誘導体とコンジュゲーションされたタンパク質は、肝臓で標的化されることができる。
【0038】
本発明の他の具体例において、前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体は、30%以上100%以下のアルデヒド置換率を有することができる。30%以上100%以下のアルデヒ基置換率を有するヒアルロン酸−アルデヒド誘導体とコンジュゲーションされたタンパク質は、肝臓で標的化されないで標的非特異的な特性を有するようになる。
【0039】
下記実施例では、10%置換された低置換率のヒアルロン酸アルデヒド誘導体を利用した場合、体内残留時間は短いが肝臓への伝達特性がよく、45%置換された高置換率のヒアルロン酸アルデヒド誘導体を利用した場合、体内残留時間がより長くなる一方、肝臓への伝達特性が低くなることが確認できる。
【0040】
このように得られたヒアルロン酸−アルデヒド誘導体をタンパク質のN−末端と結合させることで、本発明のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートを製造することができる。
【0041】
本発明のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートは、例えば、ヒアルロン酸内に下記化学式4の繰り返し単位を一つ以上含むことができる。
【0042】
【化6】
【0043】
例えば、化学式2の繰り返し単位を一つ以上含むヒアルロン酸−アルデヒド誘導体をタンパク質とコンジュゲーションさせると、下記反応式3のように、化学式2に存在するアルデヒド基とタンパク質のN−末端のアミン基がお互いに反応してコンジュゲーションを形成するようになる。
【0044】
【化7】
【0045】
他の具体例では、本発明のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートは、例えば、ヒアルロン酸内に下記化学式5の繰り返し単位を一つ以上含むことができる。
【0046】
【化8】
【0047】
例えば、化学式3の繰り返し単位を一つ以上含むヒアルロン酸−アルデヒド誘導体をタンパク質とコンジュゲーションさせると、下記反応式4のように、化学式3に存在するアルデヒド基とタンパク質のN−末端のアミン基がお互いに反応してコンジュゲーションを形成するようになる。
【0048】
【化9】
【0049】
ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体とタンパク質とのコンジュゲーションは、好ましくは、還元的アミノ化(reductive amination)を誘導する試薬の存在下で実行することができる。例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN:sodium cyannoborohydride)、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(NaBH(OCOCH):sodium triacetoxyborohydride)などのような直接還元的アミノ化試薬を利用すれば、短時間内にワンステップでヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲーションを誘導することができる。
【0050】
前記ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体とタンパク質のN−末端との反応は、pH5〜pH7の緩衝液内で実行することが好ましい。緩衝液のpHを前記範囲で調節することで、ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体のアルデヒド基がタンパク質の他のアミン基を有するリジンのようなアミノ酸と反応しないで、タンパク質のN−末端と特異的に反応するようにすることができる。より好ましくは、ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体とタンパク質のN−末端との反応は、pH5.5〜pH6.5、一番好ましくは、pH6.0の緩衝液内で実行する。
【0051】
一方、ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体でタンパク質のN−末端と反応しない未反応アルデヒド基は、保護基を使用してブロッキング(blocking)できる。ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体の未反応アルデヒド基は、薬物伝達体の製造過程または生体内投与過程で、タンパク質医薬の他のアミノ酸残基または体内の他のタンパク質物質などと不必要に反応する可能性があるので、これを前もってブロッキングすることが好ましい。
【0052】
未反応アルデヒド基をブロッキングする物質では、カルバジン酸エチル(ethyl carbazate)、カルバジン酸テトラブチル(tetrabutyl carbazate)のようなカルバジン酸アルキル(alkyl carbazate)、アミノエタノール(aminoethanol)のようなアミノアルコール(aminoalchol)を使用することができるが、これに限定されるものではない。一般的に、アルデヒド基の保護基で知られているアシラール保護基(acylal protecting group)、アセタール保護基(acetal protecting group)、ケタール保護基(ketal protecting group)などを使用することも可能である。
【0053】
これに制限されるものではないが、上のような未反応アルデヒド基のブロッキング過程は、下記反応式5または反応式6のように実行することができる。
【0054】
【化10】
【0055】
【化11】
【0056】
本発明において、ヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造のために使われるヒアルロン酸またはその塩は、これに限定されるものではないが、10,000〜3,000,000ダルトン(Da)の分子量を有することができる。前記範囲の分子量を有するヒアルロン酸またはその塩は、薬物の薬効持続のための薬物伝達体の製造に有用に使われることができる。
【0057】
一方、ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体1分子当たり結合されるタンパク質の分子数は、ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体と反応させるタンパク質水溶液の濃度によって調節することができる。一具体例では、本発明のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートにおいて、タンパク質は、ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体1分子当たり1〜20個の分子が結合される。前記範囲内の分子数のタンパク質が結合されたヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートは、希望する薬効持続時間を示すことができ、肝臓組織への伝達特性が優れて肝疾患治療剤で応用が可能である。
【0058】
本発明のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの製造に使われるタンパク質医薬の種類は、特別に限定されるものではない。前記タンパク質医薬は、本発明の方法に容易に適用するように水溶性であることが好ましいが、これに限定されるものではない。タンパク質薬効の長期持続性の確保が必要なタンパク質医薬であれば、いずれも本発明のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートの形態で製造して使うことができる。
【0059】
具体的には、一例において、前記タンパク質は、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンベータ(IFNβ)、インターフェロンガンマ(IFNγ)、インシュリン、インシュリン様成長因子1(IGF−1)、成長ホルモン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−1アルファ、インターロイキン−1ベータ、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−2、上皮成長因子(EGF)、カルシトニン(calcitonin)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)腫瘍壊死因子(TNF)、アトビスバン(atobisban)、ブセレリン(buserelin)、セトロレリックス(cetrorelix)、デスロレリン(deslorelin)、デスモプレシン(desmopressin)、ジノルフィンA(dynorphin A)(1−13)、エルカトニン(elcatonin)、エレイドシン(eleidosin)、エプチフィバチド(eptifibatide)、成長ホルモン放出ホルモン−II(GHRH−II)、ゴナドレリン(gonadorelin)、ゴセレリン(goserelin)、ヒストレリン(histrelin)、リュプロレリン(leuprorelin)、リプレシン(lypressin)、オクトレオチド(octreotide)、オキシトシン(oxytocin)、ピトレシン(pitressin)、セクレチン(secretin)、シンカリド(sincalide)、テルリプレシン(terlipressin)、チモペンチン(thymopentin)、チモシン(thymosine)α1、トリプトレリン(triptorelin)、ビバリルジン(bivalirudin)、カルベトシン(carbetocin)、シクロスポリン、エキセジン(exedine)、ランレオチド(lanreotide)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ナファレリン(nafarelin)、副甲状腺ホルモン、プラムリンチド(pramlintide)、T−20(enfuvirtide)、チマルファシン(thymalfasin)またはジコノチドであり得る。
【0060】
また、本発明は、ヒアルロン酸またはその塩にアルデヒド基が導入されているヒアルロン酸−アルデヒド誘導体がタンパク質のN−末端と結合されているヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートを提供する。
【0061】
本発明のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートは、上述の方法により製造することができるが、これとは異なる方法で製造されたものも全て含むことで意図される。
【0062】
下記実施例で示すように、ヒアルロン酸またはその塩にアルデヒド基が導入されているヒアルロン酸−アルデヒド誘導体と結合されたタンパク質は、バイオ接合が95%に至るだけではなく安全性が優秀であり、高分子の結合によりタンパク質の立体構造が影響を受けないで、タンパク質医薬の薬効持続性が非常に優れたことで確認された。したがって、本発明のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートは、タンパク質の薬物伝達システムのために有用に使われることができる。特に、ヒアルロン酸のレセプターとバインディングするカルボキシル基を残したままリング構造をオープンしてタンパク質をコンジュゲーションしたヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートは、ヒアルロン酸の肝臓組職の特異的伝達特性を最大化して肝臓疾患治療剤への開発に多様に応用することができる。また、ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体のアルデヒド置換率を調節することで、ヒアルロン酸の肝臓標的志向性を自由に調節することができるので、肝臓の迂回が必要な薬物の薬効持続性確保のためにも有用に使用することができる。
【発明の効果】
【0063】
本発明に係るヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートは、タンパク質医薬のバイオ接合率と薬効持続性が非常に優秀であり、ヒアルロン酸がタンパク質のN−末端と特異的に結合されているのでタンパク質医薬の活性がすぐれる。また、ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体のアルデヒド置換率を調節することで、ヒアルロン酸の肝臓標的志向性を自由に調節することができるので、肝臓疾患治療用医薬だけではなく、肝臓の迂回 が必要な医薬の薬効持続性確保のためにも有用に使用することができる。本発明のヒアルロン酸−タンパク質コンジュゲートは、タンパク質の薬物伝達システムのために有用に使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1A】本発明の製造例1による方法で製造された置換率別HA−adehyde−TBC誘導体のH−NMR結果を示す図である。
図1B】本発明の製造例2による方法で製造された置換率別HA−adehyde−TBC誘導体のH−NMR結果を示す図である。
図2】本発明の製造例による方法で製造されたヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートとタンパク質のGPC結果を示す図である。
図3】ヒアルロン酸−インターフェロンコンジュゲートの一つのヒアルロン酸鎖に含まれたインターフェロン分子数及びタンパク質分子数によるバイオ接合効率を示す図である。
図4】インターフェロンアルファとヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートのCircular Dichroism(CD)分析結果を比較して示す図である。
図5】本発明の一製造例によるヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートとインターフェロンアルファの活性度の分析結果をELISA assayを通じて示す図である。
図6】本発明の一製造例によるヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートとインターフェロンアルファの活性度の分析結果をdaudi cellを利用したantiproliferation assayを通じて示す図である。
図7】本発明の一製造例によるヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートとインターフェロンアルファの坑癌治療効果をHepG2肝癌細胞を利用したantiproliferation assayを通じて示す図である。
図8】本発明の一製造例によるヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートとインターフェロンのhuman serum内での安全性を比較して示す図である。
図9】近赤外線蛍光染料でラベリングされた(A)インターフェロンアルファ及び(B)本発明の一製造例によるヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの尾静脈注射の後のリアルタイムバイオイメージング結果を示す図である。
図10】本発明の一製造例によるヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートのPharmacokinetic analysis結果を示す図である。
図11】本発明の一製造例によるヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートのマウスの肝臓での抗ウイルス分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例について本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、発明は多様な形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されないものではない。
【実施例】
【0066】
実施例1
製造例1:ヒアルロン酸アルデヒド誘導体の製造
ヒアルロン酸(HA)(MW=6.4kDa、35kDa、100kDa、230kDa)10mg/mlの濃度で水に溶かした後、過ヨード酸ナトリウム(sodium periodate)を単位体当たり1mole倍で添加して、各々2時間、6時間、12時間の間光を遮断した状態で反応させた。その後、前記溶液を蒸溜水に対して透析して精製した後、3日間凍結乾燥させて置換率が異なるヒアルロン酸アルデヒド誘導体(HA−aldehyde誘導体)を得た。
【0067】
製造例2:ヒアルロン酸アルデヒド誘導体の製造
ヒアルロン酸(HA)(MW=6.4kDa、35kDa、100kDa、230kDa)5mg/mlの濃度で水に溶かした後、HA単位体の20mole倍分量のAdipic Acid Dihydrazide(ADH)を添加した後、HClで溶液のpHを4.8で合わせた後、30分間stirringさせた後、溶液にHA単位体の4mole倍分量のN−(3Dimethylaminopropyl)N’thylcarbodiimidehydro chloride(EDC、Mw=191.71)を添加した後、各3分、2時間の間pHを4.8で維持しながら反応させる。その後、前記溶液を蒸溜水に対して透析して精製した後、3日間凍結乾燥させて置換率が異なるHA−ADH誘導体を得た。作られたHA−ADH誘導体を10mg/mlの濃度でpH5.2の酢酸ナトリウム緩衝液に溶かした後、導入されたADHの10mole倍のグルタルアルデヒドを添加した後24時間の間反応させる。その後、溶液を蒸溜水に対して透析して精製した後、3日間凍結乾燥させて置換率が異なるHA−ADH−Aldehyde誘導体を得た。
【0068】
実験例1:ヒアルロン酸アルデヒド誘導体の置換率の分析
製造例1により用意したヒアルロン酸アルデヒド誘導体を5mg/mlの濃度でpH5.2の酢酸ナトリウム緩衝液に溶かした後、ヒアルロン酸単位体当たり5mole倍のカルバジン酸テトラブチル(TBC:Tetrabutyl carbazate)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN:sodium cyannoborohydride)を添加して24時間反応させた。この溶液を蒸溜水に対して透析した後、3日間凍結乾燥してH−NMR(DPX300、Bruker、Germany)でアルデヒドの置換率を分析した。
【0069】
その結果、図1に示したように、製造例1によるHA−TBCのH−NMRスペクトルでは、ヒアルロン酸のピーク以外にも、δ=1.2〜1.4ppmに9個の水素を示すTBCの3個のメチルピークが現われた。定量分析のためにδ=1.85〜1.95ppmのヒアルロン酸のアセトアミド官能基のメチル共鳴(methyl resonance of acetamido moiety of HA)を内部標準(internal standard)で決めた。製造例1によるHA−Aldehydeの置換率は、δ=1.85〜1.95ppmのピーク面積とδ=1.2〜1.4ppmのピーク面積を比較して求めた。このようなH−NMR分析結果を通じてヒアルロン酸−アルデヒド誘導体の置換率を計算した結果、後に過ヨード酸ナトリウムとの反応時間を調節して10〜50%の置換率を調節して得ることができた(2h:10%、12h:25%、24h:45%)。
【0070】
実験例2: ヒアルロン酸アルデヒド誘導体の置換率の分析
製造例2により用意したヒアルロン酸アルデヒド誘導体を5mg/mlの濃度でpH5.2の酢酸ナトリウム緩衝液に溶かした後、ヒアルロン酸単位体当たり5mole倍のカルバジン酸テトラブチル(TBC:Tetrabutyl carbazate)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN:sodium cyannoborohydride)を添加して24時間反応させた。この溶液を蒸溜水に対して透析した後、3日間凍結乾燥してH−NMR (DPX300、Bruker、Germany)でアルデヒドの置換率を分析した。その結果、図1の(B)に示したように、製造例2によるHA−TBCのH−NMRスペクトルでは、ヒアルロン酸のピーク以外にも、δ=1.2〜1.4ppmに9個の水素を示すTBCの3個のメチルピークが現われた。定量分析のためにδ=1.85〜1.95ppmのヒアルロン酸のヒアルロン酸のアセトアミド官能基のメチル共鳴(methyl resonance of acetamido moiety of HA)を内部標準(internal standard)で決めた。製造例2によるHA−Aldehydeの置換率は、δ=1.85〜1.95ppmのピーク面積とδ=1.2〜1.4ppmのピーク面積を比較して求めた。このようなH−NMR分析結果を通じてヒアルロン酸−アルデヒド誘導体の置換率を計算した結果後に導入されたADHの置換率によって20〜70%のアルデヒド置換率を調節して得ることができた。
【0071】
製造例3:ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体とタンパク質とのコンジュゲートの製造
製造例1から得られたヒアルロン酸−アルデヒド誘導体を10mg/mlの濃度でpH6のアセテート緩衝液に溶かした後、水溶液状態のインターフェロンアルファをヒアルロン酸1鎖当たり各々1個、4個、6個、9個になるように添加した。ヒアルロン酸−アルデヒド誘導体の置換率によってアルデヒドの5mole倍でシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN:sodium cyannoborohydride)を添加して24時間の間反応させて、ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲート(HA−IFN conjugate)を得た。
【0072】
ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲート内に反応しないで残っているアルデヒドをブロッキング(blocking)するために、カルバジン酸エチル(ethyl carbazate)をアルデヒドの5mole倍で入れた後、24時間の間さらに反応させるか、アミノメタノール(amino ethanol)をアルデヒドの5mole倍で入れた後pH8で3時間のさらに反応させた。反応させた溶液をpH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)に対して透析した後、−70Cで保管した。下記実験例3、5、6、7、8、9、10及び11では、いずれもヒアルロン酸1鎖当たり6個のインターフェロンアルファが接合されたヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートを使用した。
【0073】
実験例3:ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートのGPC分析
製造例3により用意したヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートのGPC分析を通じてヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの形成を確認した。
【0074】
HPLCを使用してヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートのGPCを分析した。分析条件は下記の通りである。
【0075】
GPC分析条件
ポンプ:Waters 1525 binary HPLC pump
吸光度測定器:Waters 2487 dual λ absorbance detector
サンプラー:Waters 717 plus auto−sampler
コラム: Waters Ultrahydrogel 500 +Waters Ultrahydrogel 250
移動相:PBS at pH 7.4、flow rateは0.5mL/min。
測定波長:210nmと280nmで二重測定(dual detection)。
【0076】
分析結果、図2に示したように、280nmの波長で測定した時、高分子量のヒアルロン酸の滞留時間(retention time)である22分帯でピークが現われてヒアルロン酸(HA)にインターフェロンアルファがコンジュゲーションされたことを確認した。
【0077】
実験例4:ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの定量分析
前記製造例3によるHa−インターフェロンアルファコンジュゲート内のインターフェロンアルファの含量は、GPCでピークの下面積を測定して求めた。まず、蒸溜水に1mg/mLの濃度でインターフェロンアルファ原液を準備した後、希釈させてインターフェロンアルファ標準溶液を準備した。前記実験例3のGPC分析条件でインターフェロンアルファ標準溶液を分析してインターフェロンアルファの濃度によるGPCピークの下の面積の標準曲線(standard curve)を求めた。前記製造例3によるヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートを同じ条件で分析して得たGPCピークの下面積を標準曲線に代入してタンパク質含量を求めた。
【0078】
分析結果、図3に示したように、製造例3によるヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲート内のタンパク質含量は、feed内でHA一分子当たり反応させたタンパク質の分子数によって増加することが分かった。HA一分子当たり反応させたタンパク質の分子数を1、4、6、9個に変化させた時、HA一分子当たり結合したタンパク質の平均分子数は、1、4、6、9個で調節可能であった。バイオ接合効率(Bioconjugation efficiency)(%)は分子数に関係なく95%以上であった。
【0079】
実験例5:ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートのCD分析
インターフェロンの濃度を基準として(0.25mg/ml)インターフェロンアルファ溶液と前記製造例3によるヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲート溶液を利用してCircular Dichroism分析した。分析条件は下記の通りである。
【0080】
CD分析条件
UV spectrophotometer:JASCO J−715
測定条件:25℃、200〜250nm、N2 atmosphere
A quartz cuvette:2mm path length
Raw data : 0.2mm intervals with a response time of 1s.
【0081】
分析結果、図4に示したように、インターフェロンのスペクトルとヒアルロン酸−インターフェロンコンジュゲートのCDのピークが一致することから、インターフェロンの2次構造がヒアルロン酸と接合されても維持されることが分かる。
【0082】
実験例6:ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの活性度分析
ELISA/Bradford assayの割合を通じてヒアルロン酸−インターフェロンコンジュゲートの活性度を分析した。まず、1mg/mlのインターフェロンアルファ溶液の原液を準備した後、希釈させてインターフェロンアルファ標準溶液を準備した。Bradford assayを利用して濃度による吸光度を測定して標準曲線を求めた。前記製造例3により用意したヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートとインターフェロンを希釈して同じ条件でBradford assayで吸光度を測定した後、標準曲線に代入してインターフェロンアルファの含量を求めた。また、Bradford assayを示したサンプルと標準溶液を10000倍希釈してELISAを通じて活性度を有したインターフェロンの含量を求めた。その後、ELISA/Bradford assayの割合を通じてヒアルロン酸−インターフェロンコンジュゲートの活性度を分析した。
【0083】
分析結果、図5に示したように、ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートのELISA/Bradford assayの割合が70%以上であった。Bradford assayは、タンパク質のリジン(lysine)を測定する分析方法であり、ELISAは、インターフェロンアルファと抗体との結合を利用して定量する分析方法として、この割合を通じて存在するタンパク質の中で70%以上が活性を有していることが分かった。
【0084】
実験例7:ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの活性度テスト
インターフェロンが存在する場合に増殖が難しい細胞で知られているHuman B-lymphoblastoid cell(Daudi cell)を利用してインターフェロンの活性度をテストした。
【0085】
まず、1mg/mlのインターフェロンアルファの原液を準備した後、希釈させてインターフェロンアルファ標準溶液を準備した。Bradford assayを利用して濃度による吸光度を測定して標準曲線を求めた。前記製造例3により用意したヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートとインターフェロンアルファを希釈して同じ条件でBradford assayで吸光度を測定した後、標準曲線に代入してインターフェロンアルファの含量を求めた。Daudi cellを各標準溶液と希釈したサンプルを含んだ培地で5日間インキュベーションした後、MTS assayを通じてDaudi cellの増殖速度を確認した。
【0086】
分析結果、図6に示したように、インターフェロンアルファ標準溶液に比べてヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの活性度が低いが、市販されるPEGASYSの場合と類似な効率を示すことが確認できた。
【0087】
実験例8:ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの坑癌効果分析
肝癌細胞であるHepG2細胞にヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートを処理し、MTT assayを通じてHepG2細胞の生存率を分析することで、ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの坑癌効果を試した。
【0088】
まず、1mg/mlのインターフェロンアルファの原液を準備した後、希釈させてインターフェロンアルファ標準溶液を準備した。Bradford assayを利用して濃度による吸光度を測定して標準曲線を求めた。前記製造例3により用意したヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートとインターフェロンアルファを希釈して同じ条件でBradford assayで吸光度を測定した後、標準曲線に代入してインターフェロンアルファの含量を求めた。標準溶液と希釈したサンプルを含んだ各培地でHepG2細胞を3日間インキュベーションした後、MTS assayを通じてHepG2細胞の生存率を確認した。
【0089】
分析結果、図7に示したように、インターフェロンアルファ標準溶液とヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの坑癌効果が類似な効果を示すことが分かる。
【0090】
実験例9:ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの半減期分析(Invitro)
IFNとHA IFNコンジュゲート(10%/6)(アルデヒド置換率が10%であり、HA一鎖当たり6個のIFN分子が結合しているヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲート)を分析サンプルで使用してこれらの半減期を分析した。
【0091】
上のサンプルをIFN濃度が1mg/mLで同一になるように各々人間血清に溶解させて、37℃で120時間の間インキュベーションした。定まった時間になった時、一部をサンプリングして、人間血清の影響を阻むためにPBSに1000倍で希釈した後冷凍させた。各サンプルの生物学的活性度は、IFN ELISAキットとDaudi細胞を利用したMTS assayを使用して測定した。
【0092】
分析結果、図8に示したように、インターフェロンアルファは、24時間内にはやく分解された。しかし、HA−IFNコンジュゲート(10%/6)は、120時間以上に半減期が延長されて、インターフェロンに比べて約5倍長くなった半減期を有した。
【0093】
実験例10:ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの生体内撮像(in vivo imaging)及び薬理(PK)特性分析(Invivo)
HA−IFNαの全身的な分布を調査するために生体内撮像を実行した。IFNα及びHA−IFNαコンジュゲート(10%/6)を近赤外線蛍光(NIRF)染料でラベリンして、Balb/cマウスの尾静脈にこれを注射した。注射した後30分及び1時間後にマウスを痲酔して蛍光を発光イメージ分析器でキャプチャした。図9に示したように、NIRF染料がラベリングされたHA−IFNαコンジュゲートは、ターゲット特異的に肝臓に伝達された一方、NIRF染料−IFNαは、均一に分布されて膀胱での蛍光を示す腎臓消失により除去された。この結果は、量子ドットを利用したHA誘導体のターゲット特異的の肝伝達に対して報告した以前論文のリアルタイムバイオイメージング結果とよく一致して、HA−IFNα コンジュゲートの肝疾患治療のための実現可能性を裏付ける。
【0094】
一方、SD ratの尾静脈を通じてPBS、IFN、HA IFNαコンジュゲート(置換度10%、25%、45%)を各々投与した後、一定時間になった時尾静脈から血液を採取して各サンプルの血中濃度をIFN ELISA kitを使用して測定した。
【0095】
分析結果、図10に示したように、IFN血中濃度は、24時間以前にbaselineに落ちたが、HA IFNαコンジュゲート(45%/6)の血中濃度は、4日目でもbaselineに落ちなかった。
【0096】
実験例11:ヒアルロン酸−インターフェロンアルファコンジュゲートの抗ウイルス特性分析(InVivo)
2'−5'−oligoadenylate synthetase1(OAS 1)は、INFαにより由来される抗ウイルス性タンパク質として、ウイルス感染に対する先天的免疫反応に参加する。OAS 1は、二重本RNAの分解及びウイルス複製の阻害に対してRNase Lを活性化させる2'−5'−oligoadenylateを合成する反応に対する酵素である。INFαの抗ウイルス活性はOAS 1発現レベルと深い関係がある。
【0097】
Balb/cマウスの尾静脈を通じてPBS、IFNα、HA IFNα(10%/6)、HA IFNα(45%/6)コンジュゲートを各々投与した後(注射量:インターフェロン基準0.2mg/kg)、24時間以後にマウスの肝を採取して肝での2'−5'−oligoadenylate synthetase 1(OAS 1)levelをウエスタンブロットを通じて定量した。
【0098】
図11に示したように、IFNαよりも低置換率のHA−IFNαコンジュゲートの場合、肝への伝達がよく行われて体内残留時間が長くなるので、肝での抗ウイルス役目をするOAS 1 levelが一層高くなることが確認できた。また、高置換率のHA−IFNαコンジュゲートの場合、低置換率のHA−IFNαコンジュゲートに比べては肝への伝達特性が落ちるが体内残留時間を増やしてIFNαよりOAS 1 levelが高くなることを確認した。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11