(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フィッシャー−トロプシュワックスとセカンドワックスの総量に対して、フィッシャー−トロプシュワックスの割合が、20重量%〜80重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の作用剤。
前記セカンドワックスが、鉱物系ワックス、モンタンワックス、植物系ワックス、及び/又は動物系ワックスの群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の作用剤。
フィッシャー−トロプシュワックスとセカンドワックスの総量が、前記作用剤の総量に基づいて、5〜25重量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の作用剤。
形成された作用剤が、環境温度まで冷却され、次いで前記作用剤の少なくとも50重量%が1mm以上の粒径を有する粒径範囲までふるいに掛けられることを特徴とする、請求項6に記載の作用剤の製造方法。
工程a)又はa’)は、前記フィッシャー−トロプシュワックスと前記セカンドワックスの凝固点未満で実施されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の作用剤の製造方法。
前記混合物の温度は、1種類又は複数種類のオイル、フィッシャー−トロプシュワックス、及びセカンドワックスを前記無機顔料に同時に加えた後、110℃〜230℃の温度まで上げられることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一項に記載の作用剤の製造方法。
【背景技術】
【0002】
最適な色彩の印象を実現するための顔料の加工においては、顔料を粉砕して一次粒子を形成させることが必要となる。結果として得られるパウダーは、非常にダスティング(dusting)し易く、且つ、パウダーの細分化した微細状態のために、互いに張り付き易いとともに、包装材、機械部品、及び計測装置に張り付き易い。従って、毒物学者によって有害であると認識された物質は、結果として得られるダストに起因する人及び環境に対するいかなる害をも回避するために、加工過程において対策を講じる必要がある。しかし、例えば酸化鉄顔料等の、影響を与えない不活性物質の場合でさえも、ダストによる障害対策が、市場によってますます求められている。
【0003】
従って、建材及び有機媒体への使用において、品質的に均一である色彩の印象を実現するために、良好な流動特性に依ってダストを回避すること並びに計測を向上させることが、顔料取扱いの目標となる。この目標は、多かれ少なかれ、造粒プロセスを顔料に適用することによって達成される。
【0004】
顆粒状の顔料は、どの方法で製造されようと、2つの相反する特性を有するように市場によって原則として要求されている。すなわち、顆粒の側での機械的安定性(摩滅安定性)であり、使用される媒体での良好な分散特性である。機械的安定性は、製造者と使用者の間の輸送に関連する良好な輸送特性に関わるだけでなく、顔料が使用されるようになる際の良好な計測及び流動特性にも関わることとなる。機械的安定性は、高い結合力に起因し、且つ、例えばバインダーの品質及び種類に依存する。一方で、分散性は、造粒前の良好な粉砕(湿式及び乾式粉砕)によって、特定のアプリケーション媒体への混入における機械的エネルギー(せん断力)によって、並びに媒体への混入過程においてペレットの結合力を直ちに減少させる分散補助剤によって、影響を受ける。最適な色彩の印象を実現させようとする場合には、顔料の顆粒は、一次粒子に更に分割される必要がある。無機顔料の場合には、比較的大量の分散補助剤を使用することは、助剤/顔料のコスト比によって制約を受けることになる。
【0005】
例えばアスファルト等の建材の着色においては、顔料は、ある場合には粉末状態で依然として使用されている。顔料は、磨り潰される場合には、良好な分散性の利点を有する。アスファルトミキサー中でのこのような粉末無機顔料の完全及び均一な分散は、短時間内で、通常1分以内で達成される。これらの微細なパウダーの不利な点は、良好な流動性を有しておらず、且つ、不適切に保存される場合、ケーキング(cake)及び凝集ともに高頻度でなり易いことである。これらの微細なパウダーは、包装及び機械部品に張り付き、加工の際に正確な計測を損なう。パウダーの更なる不利な点は、ダスティングし易いことである。
【0006】
アスファルト混合施設は、非常に多くの場合、居住区域に集中しているため、有機媒体、特にアスファルトの着色用顔料を使用することにおいて、ダストを回避すること並びに計測を向上させることが、第1の目的となる。
【0007】
(特許文献1)によれば、顆粒は、加熱可能なミキサーを介して進行性凝集プロセスにおいてワックスを加えることで、「マスターバッチ」として製造可能である。異なる粒径は、反応条件に応じて得られる。これらの顆粒は、プラスチック、ワックス、又は樹脂等のポリマーの着色に使用される。このような用途に使用される顆粒にとって最も良い粒径は、0.2〜2mm(70〜10メッシュ)の間である。バインダーとして使用されるワックスは、好ましくは、組成物の総量に基づいて26%〜65%の濃度で使用される。バインダーは、建材の特性に悪影響を及ぼす場合があるため、この高いバインダー画分は、建材の着色に使用することに対して不利となる。更に、著しく高い量の「マスターバッチ」が、粉末無機顔料と比較して、同一の着色効果を実現するために必要であり、この使用が非経済的となる。
【0008】
(特許文献2)は、無機顔料顆粒を用いたアスファルト及び/又はビチューメンの着色方法を記載しており、この場合、顆粒はオイル及び/又はワックスを付加することによって形成可能である。上記の量の添加剤(顔料に基づいて0.01〜10重量%)で、ビチューメンにおける顆粒の分散性は確かに向上するが、この方法では、十分な機械的安定性を有する顆粒を提供することはできない。
【0009】
(特許文献3)は、アスファルトにとって混合剤として有用であるエチルビニルアセテート(ethyl vinyl acetate)の共重合体に基づく組成物を記載している。この特許文献においては、押出し顆粒が関連しており、当業者は、酸化鉄を用いたプラスチック押出しによって、顔料の摩耗特性に依るアスファルト加工装置の重度な損耗がもたらされることを認識している。
【0010】
(特許文献4)及び(特許文献5)は、極性媒体用のワックス及び分散剤を加えることによって、アスファルト及びビチューメン等の無極媒体を着色する顔料顆粒を開示している。これらの製造方法は、水溶液系の噴霧造粒プロセスである。噴霧造粒は滴下を含意し、従ってそのために、容易に流動性を有する、すなわち、液体、懸濁液の使用を必要とする。しかしながら、比較的大量の水が、乾燥のために蒸発させられる必要があるため、この方法はエネルギー集約型であるとともに、このために、特に、顆粒化される顔料が水を含んだ相中に、例えば水性懸濁液中又は水性ペースト中にある場合、これらの製造方法に基づいて使用することは有利である。得られたままの乾燥顔料は、水中及び乾燥状態で再懸濁される必要があるため、例えば焼成などの乾式製法を介して得られた顔料の場合には、噴霧造粒が追加操作となる。更に、噴霧造粒を介して得られた顆粒は、20〜500μmの間の粒径を有し、計測して追加する際に重大なダスティングを引き起こす。径の大きさが1mm未満の粒子は、アスファルト加工に携わる従業員を保護する観点から、ダストとして依然カウントされる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の作用剤は、好ましくは、オイルと、フィッシャー−トロプシュワックスと、セカンドワックスとを含む。作用剤の少なくとも70重量%、及び好ましくは少なくとも80重量%が、1mm以上、好ましくは1〜10mm、より好ましくは1〜6mmの粒径を有することが好ましい。
【0017】
本発明の作用剤は、非顆粒の顔料パウダーと比較して、アプリケーション媒体の分散性に関する、並びに、着色されたアプリケーション媒体において得られる色相に関する要件を十分に満たし、且つ、作用剤で着色された建材の特性(例えば、機械的荷重下でのアスファルト強度)に悪影響を及ぼすことはない。機械的強度は、アスファルトの本質的特性である。機械的強度の減少は、車両がアルファルトで覆われた道路又は小道を移動する場合に、例えば、わだちが発達する傾向を増大させる。
【0018】
本発明の作用剤は塊状のものである。以下本明細書の「作用剤」とは、一次粒子の凝集体を意味するものと理解されたく、これらの凝集体は、その最大空間範囲において一次粒子のものと異なる。又、「作用剤」は顆粒も包含する。本発明の内容における「顆粒」又は「顆粒状の」とは、出発物質と比較して、処理工程によって平均粒径が増加するいかなる材料をも意味するものと理解されたい。従って、「顆粒」又は「顆粒状の」とは、溶射顆粒、圧縮顆粒(圧搾顆粒又はブリケット顆粒)、又は進行性凝集顆粒だけでなく、例えば、後続の粉砕による湿式又は湿潤処理の生成物、並びに乾式又は本質的に乾式加工工程の生成物、例えば、乾式生成顆粒、ブリケット等も包含する。本発明の作用剤は、好ましくは進行性凝集顆粒であり、より好ましくは加熱可能なミキサーを介して生成する進行性凝集顆粒である。
【0019】
本発明の作用剤は、好ましくは球状の凝集体の形態であるとともに、球体の形状だけでなく、楕円の形状も、並びにこれらの中間の形態も有することが可能である。
【0020】
又、本発明の範囲は、列挙される範囲のいかなる望ましい組み合わせ、並びに、選好性の範囲の組み合わせを含むあらゆる特性に対するいかなる望ましい選好性をも包含することが指摘され得る。
【0021】
本発明の作用剤においては、無機顔料は、好ましくは酸化鉄、水酸化酸化鉄、酸化クロム、二酸化チタン及び/又は酸化金属をベースとした混合相顔料の群から選択される。酸化鉄としては、例えば、ヘマタイト(酸化鉄赤)又はマグネタイト(酸化鉄黒)が挙げられる。水酸化酸化鉄としては、例えば、ゲータイト(酸化鉄黄)が挙げられる。酸化金属をベースとした混合相顔料としては、例えば、亜鉛フェライト(酸化亜鉛及び酸化鉄からなる混合相顔料)、又はマンガンフェライト(酸化マンガン及び酸化鉄からなる混合相顔料)がある。本発明の作用剤は、1種類以上の無機顔料を含んでもよい。好ましくは、本発明の作用剤は、1種類の無機顔料を含む。
【0022】
本発明の作用剤は、1種類以上のオイルを含む。本発明の内容におけるオイルは、室温で液体且つ揮発性でない、非極性又は僅かに極性である物質である。この群の中で好ましいものは、合成オイル、鉱物オイル(石油又は石炭から得られる)、動物性オイル、又は植物性オイルの群から選択されるオイルである。同様に好ましいものは、40℃で1.6〜1500mm
2/sの動粘度(DIN 51562に従って測定される)を有するオイルである。本発明の作用剤は、炭化水素をベースとする合成オイル、又は鉱物オイル(石油又は石炭から得られる)を含むことが特に好ましい。
【0023】
本発明の作用剤においては、1種類又は複数種類のオイルの総量は、作用剤の総量に基づいて、好ましくは0.1%〜5.0重量%、より好ましくは0.5〜3重量%である。本発明の作用剤は、1種類以上のオイルを含んでもよい。好ましくは、本発明の作用剤は、1種類のオイルを含む。
【0024】
ワックスとは、微細な結晶に対して粗く、分解することなしに40℃超において溶解し、且つ、非粘着性であるとともに、融点をわずかに超える温度においてでさえも比較的低粘度である物質を意味する。
【0025】
フィッシャー−トロプシュワックスは、合成脂肪族炭化水素、すなわち高い分子量及び20〜120個の炭素原子の鎖長を有する合成パラフィンワックスである。フィッシャー−トロプシュワックスは、いわゆるフィッシャー−トロプシュワックス法を介して、石炭ガス化からの合成ガス(水素、一酸化炭素)から、又は触媒の存在下で天然ガスから生成される。フィッシャー−トロプシュワックスの群は、酸化されたフィッシャー−トロプシュワックスも含む。一般的に、フィッシャー−トロプシュワックスは、70℃を超える凝固点を有する。ワックスの加工にとって融点よりも技術的に重要である凝固点は、多くの場合、融点に代わって測定されるワックスの物理的特性である。凝固点は、ISO 2207又はASTM D 938に従って測定できる。
【0026】
フィッシャー−トロプシュワックスは、比較的硬質であり、25℃における針貫入によって「mm」の単位で測定できる。フィッシャー−トロプシュワックスは、好ましくは、3mmまでの65℃における針貫入を有する。
【0027】
例えば25℃又は65℃などの異なる温度における針貫入を測定する方法としては、例えばASTM D 1321又はDIN 51579の方法が挙げられる。フィッシャー−トロプシュワックスにとって25℃における針貫入の通常の値は、0.1mm〜1mmの範囲である。本発明の作用剤は、1種類以上のフィッシャー−トロプシュワックスを含んでもよい。好ましくは、本発明の作用剤は、1種類のフィッシャー−トロプシュワックスを含む。
【0028】
本発明の作用剤の「セカンドワックス」は、フィッシャー−トロプシュワックスとポリオレフィンワックスのどちらでもない。ポリオレフィンワックスは、連鎖成長付加重合によって生成される、例えばエチレン、プロピレン、又はスチレン(フェニルエテン)などの誘導体化又は非誘導体化アルケンからなるポリマーによって形成される。
【0029】
セカンドワックスは、好ましくは、鉱物系ワックス、モンタンワックス、植物系ワックス及び/又は動物系ワックスの群から選択される。鉱物系ワックスは、例えばセレシンなどの化石由来のワックスを精製することによって得られる、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の飽和炭化水素の混合物である。モンタンワックスは、褐炭品種から抽出可能な天然ワックスである。天然ワックスは、第三紀植物の樹脂、ワックス、及び脂肪から形成される。さとうきびワックス及びカルナバワックスは、植物系ワックスの代表例である。動物系ワックスとしては、鯨ろう、ラノリン、及び蜜ろうが挙げられる。
【0030】
セカンドワックスとして特に有用なワックスは、上述した群から由来し、且つ、800mPas未満、好ましくは300mPas未満、より好ましくは1〜100mPas(DIN 53019に従って測定される)の120℃における動的粘度を有する。セカンドワックスとして使用する際に好ましいものは、鉱物系ワックス、より好ましくは微結晶の硬質ワックスである。これらは、鉱物系ワックスの群の一部を形成している。本発明の作用剤が、セカンドワックスとして1〜100mPasの120℃における動的粘度を有する微結晶の硬質ワックスを含むことは、特に極めて好ましい。本発明の作用剤は、1種類以上の「セカンドワックス」を含んでよい。好ましくは、本発明の作用剤は、1種類の「セカンドワックス」を含む。
【0031】
本発明の作用剤中のフィッシャー−トロプシュワックスの割合は、フィッシャー−トロプシュワックスとセカンドワックスの総量に基づいて、20重量%〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%、よりいっそう好ましくは35〜65重量%であることが好ましい。本発明の作用剤中のフィッシャー−トロプシュワックスとセカンドワックスの総量は、作用剤の総量に基づいて、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは8〜20重量%、よりいっそう好ましくは10〜18重量%である。
【0032】
フィッシャー−トロプシュワックスとセカンドワックスは、その原型である、すなわち、化学的非修飾形態、又はその化学的修飾形態で存在することができる。
【0033】
更に、本発明の作用剤は、補助材料、但し、ダストの特質、用量能力(doseability)、及び分散性、更にこれらの作用剤で着色されたアスファルトの機械的強度等の作用剤の特性を低減させてはならない補助材料を更に含んでもよく、又は、本発明の作用剤は、これらの更なる補助材料を些かも含まない。
【0034】
本発明の作用剤は、より好ましくは、酸化鉄又は酸化クロム、鉱物オイル、フィッシャー−トロプシュワックス、及び微結晶の硬質ワックスの組み合わせを含む。
【0035】
本発明は又、
a)少なくとも1種類の無機顔料が、1種類以上のオイルと混合され、且つ、
b)工程a)の混合物が、1種類以上のフィッシャー−トロプシュワックスと1種類以上のセカンドワックスと混合され、
c)工程b)の混合物が、フィッシャー−トロプシュワックスとセカンドワックスの凝固点を超える温度で更に混合されること(変形形態A)、又は、
a’)少なくとも1種類の無機顔料が、1種類以上のフィッシャー−トロプシュワックスと1種類以上のセカンドワックスと混合され、且つ、
b’)工程a’)の混合物が、1種類以上のオイルと混合され、
c’)工程b’)の混合物が、フィッシャー−トロプシュワックスとセカンドワックスの凝固点を超える温度で更に混合されること(変形形態B)、又は、
少なくとも1種類の無機顔料が、1種類以上のオイルと、1種類以上のフィッシャー−トロプシュワックスと、1種類以上のセカンドワックスと同時に混合され、且つ、次いでこの混合物が、フィッシャー−トロプシュワックスとセカンドワックスの凝固点を超える温度で更に混合されること(変形形態C)を特徴とする、3つの代替実施形態(変形形態A、B、又はC)における本発明の作用剤の製造方法を提供する。
【0036】
作用剤を形成する方法は又、この内容において、進行性凝集によって顆粒を構築することであると見なされる場合がある。本発明による方法の変形形態A、B、及びCの好ましい実施形態は、本発明の作用剤についての説明過程において総称の下に開示された特定の生成物を、オイル、フィッシャー−トロプシュワックス、及びセカンドワックスとして使用する。
【0037】
変形形態A、B、及びCの製造工程は、形成された作用剤は環境温度まで冷却され、次いで、作用剤の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%が、1mm以上、好ましくは1〜10mm、より好ましくは1〜6mmの粒径を有する粒径範囲までふるいに掛けられる工程を、好ましくは含む、又はこれらの工程を含まない。作用剤を環境温度まで冷却することは、振動コンベヤー又は流動床冷却装置で、又は、液状若しくはガス状の媒体を用いる何か別の方法で、なされてもよいし、なされなくてもよい。
【0038】
変形形態A、B、及びCの製造工程は又、ふるいを掛けた後に得られる大き過ぎるもの及び/又は小さ過ぎるもの、すなわち、望ましい粒径より大きい及び/又は小さい作用剤の有無に関わらず実施することができ、この作用剤は、作用剤の製造工程に再生利用される。製造工程において、再生利用された大き過ぎるもの及び/又は小さ過ぎるものは、工程に導入された他の構成要素と結合して本発明の作用剤を形成する。
【0039】
1種類又は複数種類のオイル、フィッシャー−トロプシュワックス、及びセカンドワックスが無機顔料に連続して加えられる本発明による方法の実施形態における工程a)又はa’)(変形形態A及びB)は、好ましくはフィッシャー−トロプシュワックス及びセカンドワックスの凝固点未満で実施される。混合操作の前又は間に、変形形態Aにおいては1種類又は複数種類のオイル、又は変形形態Bにおいてはワックスを、無機顔料に加えることは実施可能である。変形形態Aおいては、オイルは、混合操作において無機顔料にわたって均一に分散する。パウダーは、この操作中では流動状態のままである。次いで混合物は、工程b)又はb’)の前に、好ましくは60〜150℃の範囲の温度まで、より好ましくは90〜140℃の範囲の温度まで加熱される。続いて、変形形態Aにおいては、パウダー、フレーク、ピースの形態の又は溶融状態のワックスをオイル処理された無機顔料に加えるか、又は変形形態Bにおいては、1種類又は複数種類のオイルをワックスと混合された無機顔料に加える。その後、混合物の温度は、フィッシャー−トロプシュワックスとセカンドワックスの凝固点を超える温度まで、更に上げられる。工程c)又はc’)は、好ましくは110℃〜230℃で実施される。
【0040】
温度上昇は、混合操作におけるせん断力及び/又は外部からの熱供給のいずれかに起因している。ワックスは溶融するとともに、オイル処理された無機顔料にわたって分散し、作用剤を形成する。
【0041】
1種類又は複数種類のオイル、フィッシャー−トロプシュワックス、及びセカンドワックスが、無機顔料に同時に加えられる(変形形態C)本発明による方法の実施形態において、無機顔料と、オイル、フィッシャー−トロプシュワックス、及びセカンドワックスを混合させることは、ワックスの凝固点より低い又は高い温度で実施される。好ましくは、無機顔料と、オイル、フィッシャー−トロプシュワックス、及びセカンドワックスを混合することは、ワックスの凝固点より低い温度でなされる。続いて、混合物の温度は、フィッシャー−トロプシュワックスとセカンドワックスの凝固点を超える温度まで、好ましくは110℃〜230℃の範囲の温度まで上げられるとともに、混合操作は継続される。温度上昇は、混合操作におけるせん断力及び/又は外部からの熱供給のいずれかに起因している。ワックスは溶融するとともに、オイルとともに無機顔料にわたって分散し、作用剤を形成する。
【0042】
十分な混合効果及び十分なせん断力を提供する様々な加熱可能な混合装置が使用可能である。好ましくは、加熱可能なヘンシェル(Henschel)ミキサーが使用される。
【0043】
本発明による作用剤の粒径は、変形形態A、B、及びCの製造工程の混合操作において、単調に増加する。従って、混合操作は適切な時点で終了する。混合操作が行われる時間が短すぎる場合には、得られる作用剤の粒径が小さくなりすぎる。混合時間が長すぎる場合には、作用剤は粗くなり、アスファルトの分散性に悪影響を及ぼす場合がある。こうしたことによって、アスファルトの不均一な着色がもたらされることとなる。従って、混合操作は、作用剤の総量に基づいて、1mm以上、好ましくは1〜10mm、より好ましくは1〜6mmの粒径を有する作用剤の最大パーセント画分が達成された時点で、終了する。
【0044】
本発明による製造工程の変形形態A、B、及びCにおける混合操作が終了した後に、本発明の作用剤は、環境温度まで冷却され、続いて、
作用剤の少なくとも50重量%が1mm以上の粒径を有する、好ましくは作用剤の少なくとも70重量%が1mm以上の粒径を有する、より好ましくは作用剤の少なくとも80重量%が1mm以上の粒径を有する、又は、
作用剤の少なくとも50重量%が1〜10mmの範囲の粒径を有する、好ましくは作用剤の少なくとも70重量%が1〜10mmの範囲の粒径を有する、より好ましくは作用剤の少なくとも80重量%が1〜10mmの範囲の粒径を有する、又は、
作用剤の少なくとも50重量%が1〜6mmの範囲の粒径を有する、より好ましくは作用剤の少なくとも70重量%が1〜6mmの範囲の粒径を有する、より好ましくは作用剤の少なくとも80重量%が1〜6mmの範囲の粒径を有する、粒径範囲までふるいにかけられる。
【0045】
本発明の作用剤は、良好な流動性、低いダスト含有量、良好な摩滅安定性、更にビチューメン含有又はタール含有の建材の高い分散性、更に非顆粒の無機顔料と比較して、アプリケーション媒体の同様な強く且つ同等な色相、更に本発明の作用剤で着色したアスファルトがその機械的強度を保持するという事実において優れている。
【0046】
本発明は又、建材、好ましくはアスファルト、ビチューメン、ビチューメンの混合物、タール、及びタール含有組成物の着色を目的として、本発明による作用剤の使用を提供する。この使用においては、本発明の作用剤は、凝固点より低い温度で混合することによって建材に加えられる。混合操作は、建材の均一な着色が得られるまで継続される。
【0047】
本発明は又、本発明の作用剤と建材をこれらの軟化点超において混合することを含む、建材、好ましくは、アスファルト、ビチューメン、ビチューメンの混合物、タール、及びタール含有組成物の着色方法を提供する。この方法においては、建材は、建材の均一な着色が得られるまで、作用剤と混合される。
【0048】
同様に、本発明は、本発明の作用剤で着色された建材、好ましくは、アスファルト、ビチューメン、ビチューメンの混合物、タール、及びタール含有組成物を提供する。
【0049】
本発明の主題は、個々の請求項の主題からだけではなく、個々の請求項の相互の組み合わせからも明らかであろう。同じことが、本明細書に開示された全てのパラメータ及びこれらの任意の組み合わせについて当てはまる。
【実施例】
【0050】
実施例及び方法
I.使用した測定及び試験方法の説明
実施例1〜5に関する測定結果を表1にまとめる。
【0051】
I.1 アスファルトの分散性
アスファルトの分散性を以下の通り測定した。すなわち、凝集体(アスファルト製造用鉱物フィラー)を、Pigmental(登録商標)50/70道路建設用ビチューメン(TOTAL Bitumen Deutschland GmbHの市販品)とともに、加熱可能な実験ミキサー(レゴー(Rego)より)中にて、180℃で30秒間、均質化した。その後、測定する顔料試料、すなわち、実施例による作用剤を加え、次いで180℃で更に120秒間混合した。加えた顔料試料の量は、組成物全体に基づいて、各場合とも3重量%であった。この混合物を用いてマーシャル試験片(「The Shell Bitumen Handbook、Shell Bitumen U.K.、1990年、230〜232頁)を作製した。マーシャル試験片の色相差は、原色の赤の値a
*と、バイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)130パウダー(ランクセス(LANXESS) Deutschland GmbHの酸化鉄赤色顔料、色測定絶対値 Rx=6.46、Ry=5.12、Rz=3.92の2001基準)(ミノルタ 色彩色差計 II、基準光源C、L
*a
*b
*表色系(CIELAB system)、DIN 5033、DIN 6174を使用して測定)の同一量を使用して作製したマーシャル試験片を比較することによって、比色測定で評価した。1.0ユニット未満のa
*値(Δa
*値)の差は、視覚的に区別ができない。測定される試料で着色された試験片のa
*値の大きさが、バイフェロックス(登録商標)130パウダー基準試料で着色された試験片の値より小さい場合は、このパウダー基準試料と比較して、測定試料の側において分散性が低いことを示している。この測定において、Δa
*値の大きさが小さくなればなるほど、異なる測定値に対して色相がより類似し、このことは、バイフェロックス(登録商標)130パウダー基準試料と比較して、測定試料の分散性における差が小さいことを示している。
【0052】
I.2 作用剤の粒径画分測定
粒径画分は、1mm及び6mmのふるいセット(DIN ISO 3310に従うふるいセット)を用い、Retsch Vibtronic VE 1 振動ふるい機を使用して、測定した。塊状の作用剤(50.0g)は、最上部の最も大きいふるい上で計量した。ふるいセットの塔は、1mmの振動強度で2分間振動させた。その後、それぞれ個々のふるいを計量し、ふるい画分を測定した。
【0053】
I.3 作用剤の摩滅値測定
摩滅値は、Rhewum LPS 200 MC エアジェットふるい機を使用して測定した。以下のセッテイングを選択した:ノズル1mm、流量速度35m
3/h、1mmふるい、回転速度18rpm。DIN ISO 3310に従うふるいを風袋として計量し、次いで20gの試料とともに計量した。その後、ふるい機を始動させ、試料に1、2、3、4、及び5分間、圧力をかけた(ふるいに掛けられた材料をエアジェットふるい機によって回転させることで)。毎分後、試料を伴うふるいを計量し、その後ふるい機上に置き、更に少しふるいに掛けた。
【0054】
較正:(20g(原重量)−最終重量)/20gの原重量×100=サブサイズ重量%(摩滅値)
【0055】
この試験による良好な摩滅安定性(=低摩滅値)とは、ふるいに掛けた材料を5分間回転させた後に測定して、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下のサブサイズの量であると定義される(=5分後の摩滅値、表1を参照)。
【0056】
I.4 針貫入測定
試験は、定義された混合材料(Technical Supply Conditions for Asphalt Mix Material for the Construction of Traffic Surfaces、TL Asphalt−StB07に準ずる、Th−Asphalt、MA Eschenau、Hormersdorf、Zirndorfの50/70道路用ビチューメンを有するAC 8 DNアスファルトコンクリートカバー層)を使用して実施した。実施例による作用剤濃度は、着色されたアスファルト混合物全体の2.73重量%であった。実施例による作用剤は、方法I.1に記載のように同一温度で及び同一混合時間の中で、混合材料中に分散した。針貫入は、DIN EN 1426に従って、回収バインダー中で測定した(TP Asphalt−StBによる)。
【0057】
I.5 環球式軟化点測定
試験は、定義された混合材料(Technical Supply Conditions for Asphalt Mix Material for the Construction of Traffic Surfaces、TL Asphalt−StB07に準ずる、Th−Asphalt、MA Eschenau、Hormersdorf、Zirndorfの50/70道路用ビチューメンを有するAC 8 DNアスファルトコンクリートカバー層)を使用して実施した。実施例による作用剤濃度は、着色されたアスファルト混合物全体の2.73重量%であった。実施例による作用剤は、方法I.1に記載のように同一温度で及び同一混合時間の中で、混合材料中に分散した。環球式軟化点は、DIN EN 1427に従って、回収バインダーで測定した(TP Asphalt−StBによる)。
【0058】
I.6 空隙率測定
試験については、TP Asphalt−StBに従うマーシャル試験片で、定義された混合材料(Technical Supply Conditions for Asphalt Mix Material for the Construction of Traffic Surfaces、TL Asphalt−StB07に準ずる、Th−Asphalt、MA Eschenau、Hormersdorf、Zirndorfの50/70道路用ビチューメンを有するAC 8 DNアスファルトコンクリートカバー層)を使用して実施した。実施例による作用剤濃度は、着色されたアスファルト混合物全体の2.73重量%であった。実施例による作用剤は、方法I.1に記載のように同一温度で及び同一混合時間の中で、混合材料中に分散した。試験については、顔料性アスファルト混合材料の見掛け密度及び顔料性アスファルト試験片のエンベロープ密度(いずれの特性もTP Asphalt−StBに従う)を測定した。空隙率Vは、以下の式に従って、アスファルト混合材料の見掛け密度(pm)及び試験片のエンベロープ密度(pb)から計算する。
V=((pm−pb)/pm)×100
【0059】
II:実施例
使用した無機顔料、オイル、及びワックスの特性
バイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)130顔料パウダー(ランクセス(Lanxess)Deutschland GmbHより):7〜9m
2/gのBET表面積(DIN ISO 9277に従う)を有するヘマタイト(赤色酸化鉄)。
【0060】
Energol RC−R 100(ビーピー(BP)より):40℃における約100cStの動粘度(DIN 51562)を有する鉱物オイル。
【0061】
Sasobit(登録商標):Sasolのフィッシャー−トロプシュワックス、特性:凝固点(ASTM D 938)約100℃、25℃における針貫入(ASTM D 1321)0.1mmまで、65℃における貫入(ASTM D 1321)1.3mmまで。
【0062】
Tecero(登録商標)30332:Wachs− u.Ceresin−Fabriken Th.C.Tromm GmbHの微結晶のワックス、特性:凝固点(ISO 2207)90〜95℃、25℃における貫入(DIN 51579)0.4〜0.7mm、120℃における粘度(DIN 53 019)7〜11mPas。
【0063】
実施例1
15.0kgのバイフェロックス(登録商標)130酸化鉄赤色顔料に、0.150kgのEnergol RC R 100コンプレッサーオイルを室温で加え、この混合物を約100℃まで加熱し、75L FM75 ヘンシェルミキサー中にて約5分間混合させ、次いで、1.32kgのTecerowachs(登録商標)30332ワックス及び1.32kgのSasobit(登録商標)を加え、更に混合物全体を約15分間(装置速度約780rpm)混合させ、工程中、約200℃まで加熱した。温度は生成物中にて測定した。
【0064】
次いで、作用剤をバルブを介して放出させ、冷却し、ふるいに掛け計量した。作用剤の収率を、1〜6mmの間の粒径範囲全体について計算した(表1)。
【0065】
実施例2
15.0kgのバイフェロックス(登録商標)130酸化鉄赤色顔料に、0.150kgのEnergol RC R 100コンプレッサーオイル、1.32kgのTecerowachs(登録商標)30332ワックス、及び1.32kgのSasobit(登録商標)を室温で加えた。この混合物を75L FM75 ヘンシェルミキサー中にて約15分間(装置速度約780rpm)混合させ、工程中、約200℃まで加熱した。温度は生成物中にて測定した。
【0066】
次いで、作用剤をバルブを介して放出させ、冷却し、ふるいに掛け計量した。作用剤の収率を、1〜6mmの間の粒径範囲全体について計算した(表1)。
【0067】
実施例3
15.0kgのバイフェロックス(登録商標)130酸化鉄赤色顔料に、0.150kgのEnergol RC R 100コンプレッサーオイル、1.32kgのTecerowachs(登録商標)30332ワックス、及び1.32kgのSasobit(登録商標)を室温で加え、この混合物を75L FM75 ヘンシェルミキサー中にて約35分間外部からの加熱なしで約130℃までにて混合した(装置速度約780rpm)。温度は生成物中にて測定した。
【0068】
次いで、作用剤をバルブを介して放出させ、冷却し、ふるいに掛け計量した。作用剤の収率を、1〜6mmの間の粒径範囲全体について計算した(表1)。
【0069】
実施例4
15.0kgのバイフェロックス(登録商標)130酸化鉄赤色顔料に、0.150kgのEnergol RC R 100コンプレッサーオイルを室温で加え、この混合物を約100℃まで加熱し、75L FM75 ヘンシェルミキサー中にて約5分間混合させ、次いで、1.19kgのTecerowachs(登録商標)30332ワックス及び1.46kgのSasobit(登録商標)を加え、更に混合物全体を約15分間(装置速度約780rpm)混合させ、工程中、約200℃まで加熱した。温度は生成物中にて測定した。
【0070】
次いで、作用剤をバルブを介して放出させ、冷却し、ふるいに掛け計量した。作用剤の収率を、1〜6mmの間の粒径範囲全体について計算した(表1)。
【0071】
実施例5
15.0kgのバイフェロックス(登録商標)130酸化鉄赤色顔料に、0.150kgのEnergol RC R 100コンプレッサーオイル、1.19kgのTecerowachs(登録商標)30332ワックス、及び1.46kgのSasobit(登録商標)を室温で加えた。この混合物を75L FM75 ヘンシェルミキサー中にて約15分間(装置速度約780rpm)混合させ、工程中、約200℃まで加熱した。温度は生成物中にて測定した。
【0072】
次いで、作用剤をバルブを介して放出させ、冷却し、ふるいに掛け計量した。作用剤の収率を、1〜6mmの間の粒径範囲全体について計算した(表1)。
【0073】
実施例1〜5は、良好な色彩特性を備え、粒径画分1〜6mmについて70%超の収率を有する本発明の作用剤を提供するものである。比色測定においては、試料は、バイフェロックス(登録商標)130パウダー(2001基準)と同等であった。これらの作用剤は、非常に高い摩滅安定性(=低い摩滅値)及び有利性のあるアスファルト技術特性を有する(表1)。測定したアスファルト技術特性は、本発明の作用剤で着色されたアルファルトの側における十分な強度に対する良好な指標である。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例6(比較例)
特許文献、欧州特許第0567882B1号明細書(皿形造粒を介した作用剤の製造)の実施例1を再実験した。バイフェロックス(登録商標)130パウダー(2001基準)と比較して、−0.6L
*a
*b
*(CIELAB)ユニットの色ずれΔa
*が見出された。しかしながら、作用剤は、非常に低い摩滅安定性(20重量%超に相当する5分後の摩滅値)を有するに過ぎない。