(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5784186
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】メッシュ状集電極を備えた大電力用電気二重層キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 11/26 20130101AFI20150907BHJP
H01G 11/40 20130101ALI20150907BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20150907BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20150907BHJP
【FI】
H01G11/26
H01G11/40
H01G11/70
H01G11/12
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-110776(P2014-110776)
(22)【出願日】2014年5月29日
【審査請求日】2014年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-87851(P2014-87851)
(32)【優先日】2014年4月22日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2014年第61回応用物理学会春季学術講演会「講演予稿集」(2014年3月3日発行)第59頁に発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512257174
【氏名又は名称】川端 啓介
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】川端 啓介
【審査官】
中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−147599(JP,A)
【文献】
特表2009−537963(JP,A)
【文献】
特表2012−509569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/26
H01G 11/12
H01G 11/40
H01G 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を収容した電解液槽と、前記電解液に浸漬され複数個のメッシュ状電極が互いに電気的に接続された正極用電極と、前記電解液に浸漬され複数個のメッシュ状電極が互いに電気的に接続された負極用電極と、を備え、
前記両メッシュ状電極は、集電用金属線からなる金網を平板状にし、同サイズの平面電極の表裏の表面積の合計とほぼ同じ大きさの表面積をもつ基体を備え、前記基体の前記集電用金属線の表面に更にその表面積よりも大きい実効吸着表面積をもつカーボン系のイオン吸着層が形成されたものであり、かつ、隣接する前記集電用金属線間にはイオンが移動するように前記イオン吸着層により覆われていない開口部が存在するものであり、
前記正極用電極と負極用電極はそれぞれ複数個の電極が集合した電極ユニットとして構成されており、電極は各電極ユニット内で互いに電気的に接続されており、
正極用電極ユニットと負極用電極ユニットは互いに電気的に接触する可能性がない程度の近距離に離れた位置に接置されていることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記正極用電極ユニットと負極用電極ユニットは、前記電解液槽内にそれぞれが複数ユニットずつ配置され、正極用電極ユニットどうしが電気的に接続され、負極用電極ユニットどうしも電気的に接続されている請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気二重層キャパシタに関し、特に大電力用電気二重層キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは従来小電力用の電子機器に使われているにすぎなかったが、最近はハイブリッド型自動車のスタート電源に使われるなど大電力方面にも広がってきた。
【0003】
しかし、短時間に大電流を流せる長所がある反面、エネルギー密度が低いことが欠点になって、さらなる大電力への利用の展望は広がっていない。また、従来電気二重層キャパシタに補助的な役割しか与えられなかったもう1つの理由は、負荷をつないだ際、出力電圧電流が時間とともに直線的に低下することであった。もし、電気二重層キャパシタが本発明のように大容量になれば、出力をACに変換後、電圧調整を外部回路で行うことで、化学電池のように負荷をつないでも電圧をある時間まで一定にすることが可能であり、独立した電池的機能値を有することになる。そうすれば、短時間に大電流の供給が可能であるという電気二重層キャパシタの本来の性質から化学電池に対して優位に立つこともできる。
【0004】
電気二重層キャパシタはパーソナルコンピュータや自動車向けのように積載重量や体積の制限がある用途よりも、後述(段落[0008])するように、むしろ据置き型の大電力用に向いている。最近自然エネルギーの利用が叫ばれ大型の太陽光、風力利用も企画されているが、これらの出力は天気まかせであるから従来の電力網に組み入れるためには、据置き型の大電力用電池を使用して出力の平準化を行うことが絶対に必要である。
【0005】
通常、電気二重層キャパシタは正負の電極板の間にセパレータを入れ電解液に浸している。現在市販されている100ファラドぐらいのキャパシタでも極間距離は小さく、1mm以下である。通常、電気化学電池では集電極の間にかかる電界は液中のイオンを輸送する手段ともなっているが、同時に電界は電極板から電解液中へ電荷移動を起こさせる役割も兼ねているので極性の異なる電極板を対向させて配置した正負交互配置の並行電極板の形式は絶対に必要である。従来の電気二重層キャパシタでもこの発想の範囲内にあり正負交互配置の並行電極板の形式を採用している(特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−121305号公報
【特許文献2】特開2009−81434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気二重層電池でもリチウムイオン電池でも効率のよい充放電作用をさせるためには電解液中のイオン移動抵抗が小さくなくてはならない。この抵抗は電極間距離に比例し電極面積に反比例する。このため,従来は電極間距離がせいぜいセパレータ膜の厚さぐらいにしたので正負電極がショートして電解液が発火するという問題がしばしば起こった。
【0008】
本来、電池の動作原理が同様に物理的であるリチウムイオン電池と比べると電気二重層電池は、(1)構造の単純さ、したがってコスト安にできる可能性、(2)サイクル寿命、(3)安全性、(4)充放電時間で勝るが、従来のように小型で且つ運搬可能というような要請があるところでは貯蔵可能エネルギー密度で劣っており、従来では尖頭電流を分担するぐらいの用途しかなかった。しかし、近年据え置き型大容量電池の要請が出てきて上述(段落0007)したイオンの移動抵抗の条件は電極面積が大きくなるためやや緩和されるので、貯蔵エネルギーを上げる可能性が出てきた。電気二重層電池でエネルギー密度を上げるためには並行電極板を増設して電極方向と直角方向にエネルギーを蓄える領域を増すようにすればよい。
【0009】
本発明は、電極配置として正負交互配置の並行集電極だけでなく、他の配置形式も採用することができて電極配置に関して自由度が高く、大電力用にするのも容易な電気二重層キャパシタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明ではメッシュ状電極を使用する。すなわち、本発明の電気二重層キャパシタは、電解液を収容した電解液槽と、電解液に浸漬され複数個の並列メッシュ状電極が互いに電気的に接続された正極用電極と、電解液に浸漬され複数個のメッシュ状電極が互いに電気的に接続された負極用電極と、を備えている。
【0011】
メッシュ状電極の一形態は、集電極として金網を平板状にした基体を備えたものである。メッシュ状集電極の利点の一つは基板集電極の表面積が大きいことである。例えは、半径100μmの線で1インチに40本の縦横のアルミニウムのメッシュ基板の表面積は同じサイズのアルミニウム板の表裏の表面積の和に等しい。また、電極はイオン吸着表面積が大きいほど好ましいことは当然である。そのためには、集電極である基体の表面に、その表面積よりも大きい実効吸着表面積をもつカーボン系のイオン吸着層が形成されたものが好ましい。例えば、活性化カーボンで通常信じられている実効表面積は2000m
2/gであり、市販の50f電気二重層キャパシタでは0.02g/cm
2の被膜重量があった。適当な重さのこのような被膜は充電量を激増せしめながら充放電に要する時間を短くすることができる。また、小径の線状電極の周囲の電界は電極からの距離に反比例して増大するので電極直近のイオンを引き付ける速度を大きくするのに有効である。
【0012】
メッシュ状電極の基体として金網を使用する場合は、金網の材質、線径、ネット面間隔、カーボン被膜層の厚さ、電解液の種類と濃度を入出力性能が最高になるように選べる大きな自由度がある。
【0014】
メッシュ状電極のもう1つの利点はネット状であるから板状の電極板に無数の開口部があり、どのネットからでも対向の異符号ネット間のイオン移動抵抗は充分低くなる。これにより貯蔵電気密度が大きく、かつイオン移動抵抗が低いという条件が同時に満足される。
【0015】
電解液としては水系電解液と非水系電解液のいずれも使用することができる。水系電解液としては、例えばKFなどの1価イオン又は多価イオンの水溶液を使用することができる。非水系電解液としては、例えば有機電解液を使用することができる。有機電解液は、使用可能電圧、したがって貯蔵エネルギーを上昇させることができる利点がある。しかし、電解液の種類はこれらに限定されるものではない。例えば、陰イオンと陽イオンがイオン結合状態で存在する液体であるイオン性液体など、従来の電気二重層キャパシタに使用されている電解液であればいずれも使用することができる。
【0016】
電気二重層キャパシタでは電極と電解液との間で電荷移動をしないで、界面で正負の電荷がクーロン力により向きあうだけであるから、単に電解液中のイオンを電極の近くにもってくる機構があればよく、本発明ではその機構は単純な電界駆動であるが、メッシュ状電極は、段落[0014]に述べたように、異符号ネット間のイオン移動抵抗を小さくすることに有効である。
【0017】
電解液中に正負の電極があるので、電解液中のある場所ではある定まった電位を示す筈で、その場所での電位Vaと電極の電位V0との差でイオンは電極に泳動してくるが、電極のすぐ近傍のイオンには電極の余剰電子との間のクーロンカが働き、電気二重層ができる。一般の電気二重層キャパシタはモデル的には正負の電極の向かい合った界面のそれぞれがキャパシタとなっていると考えられ、その間を電解液がつないでいる。もっとも単純な2枚の正負電極をもつ電気二重層キャパシタでは、外部回路を流れる電子電流、電解液中を流れるイオン電流、界面を流れる変位電流はみな等しく一つの閉回路を作る。数枚の平行電極があるときは、定性的にいえば、もっとも内側のペア電極界面への充電がもっとも速い。ここでチャージアップが完了すると
電解液中ではこの内側電極が作る電界はゼロになる。界面での電子とイオンの電荷ダイポールが作る電界はあるが、短距離で減衰する。すると、その隣接した外側の電極からの電気力線は支障なくメッシュの開口部を通って隣接したペア電極の表面にあるキャパシタを充電する。このため、どうしても全体の充電時間は最内側のペアの場合より長くなるが、貯蔵能力は電極と直角方向に増大する。
【0018】
好ましい形態では、例えば後で説明する
図2の実施例に示されるように、正極用電極と負極用電極はそれぞれ複数個の電極が集合した電極ユニットとして構成されており、電極は各電極ユニット内で互いに電気的に接続されている。そして、正極用電極ユニットと負極用電極ユニットは接触する可能性がない程度で、しかもなるべく近い位置に設置されている。電極が電極ユニットとして構成されている場合は、同符号の電極ユニット内では隣接するメッシュ平面とは接触してもかまわないので、電極間の間隔は非常に小さく選べるので全体サイズを小さくすることができる。
【0019】
この形態では、例えば後で説明する
図3の実施例に示されるように、正極用電極ユニットと負極用電極ユニットは、電解液槽内にそれぞれが複数ユニットずつ配置されていてもよい。この場合は、正極用電極ユニットどうしが電気的に接続され、負極用電極ユニットどうしも電気的に接続されており、しかも必ずひとつのユニットに隣接して異符号のユニットがくるようになっている。この場合、ある一対のユニットの最外側の電極は隣接した異符号のユニットに対しては最内側になるので、全体としては、見掛けよりも正負電極間のイオン移動が速い。このように、電極ユニットを連結することによりいくらでも大容量にできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電気二重層キャパシタでは、(1)メッシュ状電極を使用したので、吸着の実効表面積が大きく貯蔵電気密度が大きく、かつ全体の貯蔵量も大きくなる。また、イオン移動抵抗が低くなるので大電力用に適したものとなる。(2)正負極間は接触する可能性を排除した距離が取れるので安全性が向上する。(3)本来、電気二重層キャパシタはイオンの表面着脱のみに関係するのでサイクル寿命が長い。(4)構造が単純で、低コストの制作、運転費が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施例における電極を示す概念図であり、(A)は正極用と負極用の電極ユニットを示す概略斜視図、(B)はメッシュ電極の一部を示す概略平面図、(C)はメッシュ電極の一部を拡大して示す概略断面図であり、
図1(B)のX−X線位置での断面図を表している。
【
図2】一実施例を示す図であり、(A)は概略断面図、(B)は(A)のA−A線位置での断面図である。
【
図3】正極用と負極用にそれぞれ複数の電極ユニットを備えた実施例の電気接続の例を示す結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一実施例における電極の概略を
図1に示す。
図1(A)に示されるように、電極は正極用電極ユニット2aと負極用電極ユニット2bを備えている。各電極ユニット2a、2bはそれぞれ複数枚、例えば4−6枚程度、のメッシュ電極4を備えている。メッシュ電極4は各電極ユニット2a、2b内で互いに平行に配置されている。各電極ユニット2a、2b内ではメッシュ電極4間は接触してもよいので、隣接するメッシュ電極4、4間の距離bは例えば1mm程度にすることができる。一方、正極用電極ユニット2aと負極用電極ユニット2bは接触してはならないので、その間の距離aは例えば2−3mm程度とする。
【0024】
メッシュ電極4は、集電用金属線6の表面に多孔質で実効表面積の大きいカーボン層8が形成されたものである。カーボン層8は例えば活性化炭素やハードカーボンなどである。多孔質のカーボン層8は多数の細孔をもつ。カーボン層8の外表面だけでなく、それらの細孔の内部の表面も吸着に寄与するので、カーボン層8を形成することによりメッシュ電極4の表面積が非常に大きなものとなる。
【0025】
一実施例を
図2により説明する。絶縁性材質からなり、上部が開口した箱型の電解液槽12内に電解液14が収容されている。電解液槽12の開口は絶縁性材質からなる蓋13により閉じられている。電解液14は上部にいくらかの空間が残るような液面15の高さになるように、電解液14の量が設定されている。
【0026】
電解液14は、例えば高濃度のイオンを含むKF水溶液である。その濃度は特に限定されるものではないが、高濃度の方がイオン濃度が高くなり、好都合である。他の溶質水溶液を使用することもでき、また、有機電解液やイオン性液体を使用することもできる。
【0027】
電解液14に正極用電極ユニット16と負極用電極ユニット18が浸漬されている。電極ユニット16、18は、それぞれの上部の一部が電解液14から露出する状態に浸漬されている。正極用電極ユニット16と負極用電極ユニット18は、この実施例ではそれぞれ1ユニットずつ設けられている。
【0028】
電極ユニット16、18はそれぞれ複数のメッシュ状電極20が集合して構成されたものであり、各電極ユニット16、18内ではそれぞれの電極20が互いに電気的にも機械的にも接続されるように一体化されている。電極20はその平面図が(B)に示されるように矩形であり、例えば1辺が例えば1mの正方形をなしている。
【0029】
電極20は、集電極として金網を平板状にした基体を備えたものである。基体としては、例えば、1インチで60本の線で縦横に編まれている市販の60メッシュステンレス金網を使用することができる。この60メッシュの金網は同じサイズの板の表裏の表面積の和にほぼ等しい。アルミニウムの場合は段落[0011]に記載されている。
【0030】
基体の表面には、その表面よりも大きい実効表面積をもつカーボン系のイオン吸着層として、ハードカーボン、活性炭粒子や活性炭繊維などの活性炭材料が塗布又は被覆されている。それらのカーボン系のイオン吸着層は、カーボン材料をバインダとともに基体に塗布したものである。
【0032】
カーボンファイバやカーボンナノチューブは、基体を被覆しても
、イオン吸着層の表面積をより大きくすることができるので、電極体積を小さくして小型で大電力用の電気二重層キャパシタの実現のためにより好都合である。
【0033】
各電極ユニット16、18はそのような電極20を一定間隔、例えば1−2mm間隔で互いに平行に複数の電極20を垂直方向に配置して固定したものである。各電極ユニット16、18に含まれる電極20の数が例えば5枚の場合、各電極ユニット16、18の厚みは約1cm以下である。各電極ユニット16、18はそれぞれのユニットに含まれる電極20の少なくとも上端部を金属板、例えばアルミニウム板に溶接により固着したものである。
図2の実施例では電極20の下端側も連結用金属板、例えばアルミニウム板に溶接により固着されている。電極20の両側方も金属の枠で保持しておくのが好ましい。各電極ユニット16、18の上端側を固定する金属板は表面を絶縁処理してもよいが、電解液14と接触しないので絶縁処理をしなくてもよい。各電極ユニット16、18の下端側も連結用金属板で固定する場合、及び電極20の両側方を金属の枠で保持する場合は、それらの連結用金属板と保持枠は電解液14と接触しているのでそれらの表面を絶縁被膜で被覆しておくのが好ましい。
【0034】
このようにユニットに含まれる電極20の上端側と下端側を固定することによりユニットに含まれる電極20の配置が安定する。さらに側方も枠で保持されている場合は電極20の配置がさらに安定する。各電極ユニット16、18はそれぞれの少なくとも上端側が金属板で固定されていることにより電気的にも接続され、各電極ユニット16、18に含まれるそれぞれの電極20は同電位となる。
【0035】
この実施例では各電極ユニット16、18内の電極20は同電位であるので、各電極ユニット16、18内の電極20間の距離は十分に短くすることができ、たとえ接触しても差し支えない。そのため、電極ユニット16、18内には絶縁のためのセパレータは設ける必要がない。電極ユニット16と18の間は接触がないような距離にしなければならない。電極ユニット16と18の間には絶縁のためのセパレータを設けてもよい。
【0036】
各電極ユニット16、18は電極20を固着している端部が上端と下端になるように配置されて、それぞれの上端部が電解液槽12の蓋13の内側に当接して固定されている。電解液槽12の内側の幅、すなわち
図2(A)では紙面垂直方向の寸法、
図2(B)では横方向の寸法、は電極20の横方向の寸法より大きく、電解液槽12に電極ユニット16、18を収納した状態で、
図2(B)に示されるように、電解液槽12の内側の側面に隙間がある。
【0037】
各電極ユニット16、18の上面には電極端子28、30が設けられており、それらの電極端子28、30が電解液槽12の蓋13の上面を貫通して外部に延在している。蓋13から突出した電極端子28、30は充電時と放電時に外部回路に接続される外部接続端子となる。
【0038】
電極端子28、30の外面にはネジが形成されており、電解液槽12から突出した電極端子28、30のネジをナットで固定することにより、電極ユニット16、18の上端部が電解液槽12の蓋13の内側に当接した状態で、電極ユニット16、18が電解液槽12内に固定されている。
【0039】
この実施例において、充電時は外部接続端子28、30を太陽光発電装置や他の発電装置の給電線に接続して電流を供給する。外部から供給された電流が電極20の表面界面に速やかに電気二重層を形成して充電がなされていく。
【0040】
放電時は外部接続端子28、30を家庭や施設の負荷に接続する。放電時の動作は従来の電気二重層キャパシタと同様である。AC変換の後、必要とあれば出力電圧を一定にする回路を加えることができる。
【0041】
図2の実施例は電解液槽12内に正極用電極ユニット16と負極用電極ユニット18がそれぞれ1ユニットずつ配置されたものであるが、電解液槽12内に配置される電極ユニットの数はそれに限ったものではなく、正極用電極ユニット16と負極用電極ユニット18を複数ユニットずつ配置してもよい。
【0042】
図3は電解液槽12内に正極用電極ユニット16と負極用電極ユニット18を2ユニットずつ配置した実施例を表わしたものである。
【0043】
図3の実施例では正極用電極ユニット16a、負極用電極ユニット18a、正極用電極ユニット16b、負極用電極ユニット18bの順になるように、正極用電極ユニットと負極用電極ユニットが交互に配置されている。正極用電極ユニット16aと16bが相互に接続されて外部接続端子28に接続され、負極用電極ユニット18aと18bが相互に接続されて外部接続端子30に接続されている。
【0044】
正極用電極ユニット16と負極用電極ユニット18を3ユニット以上ずつ配置する場合も
図3と同様に配置して外部接続端子28、30に接続すればよい。このように、電極ユニットはいくらでも同じものを連結してキャパシタの容量を増やすことができる。
【0045】
図4は電極配置として正負交互配置の並行電極構造とした
参考例を表わしたものである。
【0046】
電極ユニット46、48を構成する電極20は
図2に実施例に示されたものである。各電極ユニット46、48はそのような電極20を一定間隔、例えば2−3mm間隔で互いに平行に配置して固定したものである。
【0047】
電極ユニット46、48はそれぞれのユニットに含まれる電極20の一端部が連結用金属板、例えばアルミニウム板に溶接により固着されている。電極20の間隔を一定に保つために各電極ユニット46、48の側面側においても電極20が連結用金属板、例えばアルミニウム板に溶接により固着されていることが好ましい。その場合、例えば電極ユニット46は紙面の手前側の側面を固着すると、電極ユニット48は紙面の奥側の側面を固着する。各電極ユニット46、48はそれぞれの少なくとも一端側が連結用金属板で固定されていることにより電気的にも連結され、各電極ユニット46、48に含まれるそれぞれの電極20は同電位となる。連結用金属板で電解液と接触するものはその表面を絶縁被膜で被覆しておくのが好ましい。
【0048】
各電極ユニット46、48は電極20が垂直方向を向き、電極ユニット46では上端面が電解液槽12の内側上面に当接して固定されている。電極ユニット46を電解液槽12に固定するために、
図2の実施例と同様に電極ユニット46の上端面に電極端子28が設けられ、その電極端子28が電解液槽12の蓋13の上面から突出している。電極端子28にはネジが形成され、蓋13の外部で電極端子28のネジがナットで固定されていることにより、電極ユニット46が蓋13に固定されている。電極ユニット48は下端に電極20を固着している端部が位置するように配置され、電極ユニット48は支持部材26によって電解液槽12の内側底面から離れた位置に固定されている。
【0049】
電極ユニット48の電極端子30も電解液槽12の蓋13上に配置されている。蓋13上の電極端子28、30が充電時と放電時に外部回路に接続される外部接続端子となっている。
【符号の説明】
【0050】
2a、16、16a、16b 正極用電極ユニット
2b、18、18a、18b 負極用電極ユニット
4、20 メッシュ状電極
6 集電用金属線
8 カーボン層
12 電解液槽
14 電解液
28、30 電極端子
【要約】
【課題】集電極の形状、幾何学的配置、大きさ、吸着用被膜などの電気二重層キャパシタ固有の選択の自由度を高くし大電力用キャパシタを設計する。
【解決手段】好ましい形態では、電解液を収容した電解液槽と、電解液に浸漬された平板状金網基体を実効大表面積を有する被膜で覆った複数個の平面状メッシュ電極を平行に配置しそれらを電気的に連結した正極用電極と、同様な同数個の平面状メッシュ電極を平行に配置しそれらを電気的に連結した負極用電極と、を備えた大容量電気二重層キャパシタである。
【選択図】
図2