特許第5784267号(P5784267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5784267EGRクーラー用扁平伝熱管およびこの扁平伝熱管を使用したEGRクーラー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784267
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】EGRクーラー用扁平伝熱管およびこの扁平伝熱管を使用したEGRクーラー
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/02 20060101AFI20150907BHJP
   F02M 25/07 20060101ALI20150907BHJP
   F28F 1/40 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   F28F1/02 A
   F02M25/07 580E
   F28F1/40 N
【請求項の数】2
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2009-194850(P2009-194850)
(22)【出願日】2009年8月25日
(65)【公開番号】特開2011-47542(P2011-47542A)
(43)【公開日】2011年3月10日
【審査請求日】2012年8月1日
【審判番号】不服2014-8712(P2014-8712/J1)
【審判請求日】2014年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】宮内 祐治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】滝川 一儀
(72)【発明者】
【氏名】林 耕一
(72)【発明者】
【氏名】臼井 正一郎
【合議体】
【審判長】 鳥居 稔
【審判官】 近藤 裕之
【審判官】 田村 嘉章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−202846号公報(JP,A)
【文献】 特開昭62−233691号公報(JP,A)
【文献】 特開2006−5014号公報(JP,A)
【文献】 特開2007−78194号公報(JP,A)
【文献】 特開2004−263616号公報(JP,A)
【文献】 特開平9−72680号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/02
F28F 1/04
F02M 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気中のすすや汚れ(パーティキュレートマター:PM)を含有する排気ガスの一部をEGR(排気再循環)させるとき、前記排気ガスの一部を伝熱管の内部に導き、外部の冷媒との熱交換により冷却するために使用されるEGRクーラーに組込まれるEGRクーラー用扁平伝熱管であって、前記EGRクーラー用扁平伝熱管は、断面形状が略扁平形状の管体からなる扁平管と、前記扁平管の内部に内装された波形フィン構造体とで構成され、かつ、前記波形フィン構造体は、断面形状が略矩形のチャンネル形状の波形(矩形チャンネル波形)を有し、さらに、前記波形フィン構造体は、前記波形フィン構造体単体を2段または複数段に相重ねた構造を有する、EGRクーラー用扁平伝熱管において、前記波形フィン構造体は、下記式(1)〜式(5)の条件を満たし、さらに、前記扁平管の内部空間高さhと波形フィン構造体単体の内高さaが、それぞれ下記式(6)、式(7)の条件を満たすことを特徴とする、EGRクーラー用扁平伝熱管。
<記>
式(1):1.2≦a(mm)
式(2):1.2≦b(mm)
式(3):0.4≦b/a≦1(a≧b)
式(4):0.4≦a/b≦1(b≧a)
式(5):1.2≦D≦2.8(mm)
式(6):3≦h≦6(mm)
式(7):a=約h/波形フィン構造体単体の段数
ただし、a:波形フィン構造体単体の内高さ、b:波形フィン構造体単体の内幅、b/a(a≧b)またはa/b(b≧a):波形フィン構造体単体の矩形チャンネルのアスペクト比、D:波形フィン構造体単体の矩形チャンネルの相当直径{4ab/(2a+2b)}、h:扁平管の内部空間高さ
【請求項2】
請求項1に記載のEGRクーラー用扁平伝熱管を用いて構成したことを特徴とするEGRクーラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンにおいてエンジンの冷却液、カーエアコン用冷媒または冷却風等でEGRガスを冷却するEGRクーラー用の扁平伝熱管およびこの扁平伝熱管を組込んだEGRクーラーに係り、より詳しくは、排気ガス流路を形成する断面形状が略扁平の扁平管と、該扁平管の内部に熱交換性能の向上を促すための波形フィン構造体を内装してなるEGRクーラー用扁平伝熱管およびこの扁平伝熱管を使用したEGRクーラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気ガスの一部を吸気に戻し混合気に加えるEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気再循環)システムは、空気より比熱が大きく昇温し難い燃焼排気ガスを含有し、かつ酸素濃度が低い状態での燃焼によりその燃焼温度が低下するため、窒素酸化物(NOx)の発生が抑制されるとともに、シリンダ周壁面およびシリンダヘッドの燃焼室壁面やピストンの頭上表面等からの放熱が減少することから、排気ガス浄化や熱効率改善の有効な方法として知られている。
このEGRシステムに採用されるEGRクーラーは、エンジンシリンダ内部に環流させる排気ガス(EGRガス)を冷却するための熱交換器として使用されるもので、エンジンの冷却液、カーエアコン用冷媒または冷却風等でEGRガスを冷却することにより、燃焼ガスであり高温の排気ガスであるEGRガスを予め冷却して体積を減少させて新鮮な空気の比率を低くすることによりシリンダ内への吸気のEGRガスの充填比率を高めることができる上、高温の排気ガスを冷却した後に環流させることによりエンジン構成部品の熱劣化低減にも有効な技術である。
【0003】
従来のEGRクーラーとしては、例えば冷却ジャケットを構成するシェル内に、扁平管の内部に断面形状が所定のピッチ幅の略矩形のチャンネル形状の波形(以下、説明の便宜上「矩形チャンネル波形」という)を有し、かつ前記矩形チャンネル波形の軸方向(排気ガス流れ方向)の形状が所定のうねり幅の波形(うねり波形)を有するフィン(以下、説明の便宜上「波形フィン構造体」という)を収容して構成した扁平伝熱管を、複数本配設したもの(例えば特許文献1参照)が知られている。
しかしながら、このような波形フィン構造体を用いた扁平伝熱管の場合、伝熱管内における伝熱面積が少ないものにおいては、環流させる排気ガスの流速を上げることによって伝熱性能の向上をはかろうとするが、逆に圧力損失が大きくなり、流路内へのすすや汚れ(パーティキュレートマター:以下、「PM」という)の付着が性能劣化の原因となる等の課題が生ずる。
【0004】
前記課題を解決するため、本願出願人は、扁平伝熱管内を通流する高温流体が、均一な流速分布を以て通流して、該伝熱管の外側を通流する冷却媒体との熱交換を効率よく促進する伝熱管を先に提案した(特許文献2参照)。
この伝熱管は、波形フィン構造体における排気ガス流路の断面方向に形成される矩形チャンネル波形の波幅と、軸方向(排気ガス流れ方向)に形成されるうねり波形の波長と、該うねり波形の曲率半径とを、それぞれ特定範囲内に形成することにより、伝熱管内に発生するPMの問題を解消したものである。
【0005】
具体的には、図12図13に波形フィン構造体を内装固着した扁平伝熱管の一例を示すように、扁平管121の内部に、断面形状が略矩形のチャンネル形状の波形(矩形チャンネル波形)を有し、かつ、軸方向(排気ガス流れ方向)に所定の波長のうねり波形が形成された湾曲曲面を有する波形フィン構造体122を内装固着してなる扁平伝熱管において、前記波形フィン構造体122のフィンの内幅(ピッチ)bと、うねり波形の波長Lの比(b/L)や、軸方向におけるうねり波形の振幅(図示せず)と波形フィン構造体122のピッチbとの差によって求められるギャップ(図示せず)との比等を適正な値に設定したものである。図中、aは波形フィン構造体122の内高さ、hは扁平管121の内空間部の内高さ、Wは扁平管の外幅をそれぞれ示す。
【0006】
なお、前記した波形フィン構造体122の構造・形状としては、前記した矩形チャンネル波形を有し、かつ、軸方向に所定の波長のうねり波形が形成された湾曲曲面を有するものに限定されない。この他に、例えば、前記した軸方向に所定波長のうねり波形を持たないもので、軸方向の形状がストレート状のもの(ストレートフィン)、あるいは前記ストレートフィンの垂直壁部をフィンとフィンの間に交互に突設させて開口部を千鳥状に配設したオフセットフィン(マルチ・エントリ形フィン)等がある。
また、後述する本発明に係る波形フィン構造体の構造・形状としては、当然のことながら前記したものなどが対象となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−263616号公報
【特許文献2】特開2007−78194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
今後ますます環境規制、排ガス規制が厳しくなる中で、前記EGRシステムは必須の構成要素であり、エンジン運転領域においては、これまで中回転領域での使用が主流であったが、低速回転領域から高速回転領域および低負荷から高負荷運転領域と全領域にわたってEGRが使用され、かつシリンダ内に充填されるガス量に対する排気ガスの環流量、いわゆるEGR率は従来より高くなり、小流量から大流量を高EGR率で環流することが必要となり、高伝熱性能のEGRクーラーが要求される。
特に、EGRクーラーは、エンジンルーム内の極めて限定された(狭隘な)空間に配設されるため、よりコンパクト化(小型化)された高性能なもの、更には、EGRシステムは排気ガスを排気マニホールド(エキゾーストマニホールド)と吸気マニホールド(インテークマニホールド)の間の圧力差により環流するため、圧力差の低い低回転領域においても高性能を発現する圧力抵抗(圧力損失)の少ないものが強く望まれている。
【0009】
まず、前記ニーズ(要請)に応えるために、図14図15を参照して、従来の扁平伝熱管の問題点、限界について考えてみる。
図14は、前記した従来の扁平伝熱管(図12図13参照)を採用したEGRクーラーの一例を模式的に示す断面図であり、コア123の内部に複数本の扁平伝熱管を配設したEGRクーラーの断面図で、Xはコア断面幅、Yはコア断面高さ、Sは扁平伝熱管の間隔をそれぞれ示す。なお、コア123の軸方向の長さは省略する。
この従来のEGRクーラー用扁平伝熱管は、前記したように扁平管121の内部に、断面形状が矩形チャンネル波形を有し、かつ軸方向の形状が所定の波長でうねり波形が形成された湾曲曲面を有する波形フィン構造体122が1段内装されたもの、いわゆる1段式の波形フィン構造を有するものである。
【0010】
前記した従来の波形フィン構造体を内装した扁平伝熱管の場合、コンパクト化をはかり、かつ伝熱性能の向上をはかるために、波形フィン構造体の垂直壁面間のピッチb(間隔)を狭めて伝熱面積を増すことが考えられる。しかしながら、波形フィン構造体のピッチbが狭すぎると(1.2mm程度未満)、排気ガスのPMが波形フィン構造体の壁面に付着するだけでなく、ガス流路がきわめて狭くなるため、PMの付着により圧力損失を上昇させるのみならずガス流路を閉塞させてしまうという問題が生じる。
【0011】
そしてこれらに起因して、例えば、PMの波形フィン構造体壁面への付着による伝熱効率の低下のみならず、付着したPMの剥離物は燃焼室内で残渣となり摺動部分の摩耗を増大させてエンジン構成部品の耐久性を脅かす等のトラブルの要因となり、さらにガス流路の閉塞によりEGRシステムが機能しなくなる。
すなわち、PMの波形フィン構造体壁面への付着による圧力損失の増大に伴い、比熱が大きく昇温し難い燃焼排気ガスであるEGRガスがシリンダ内に充填されず比熱が小さく昇温し易い空気のみが充填されるため(EGR率の低下)、燃焼温度の上昇により窒素の酸化が進行して窒素酸化物(二酸化窒素等)が増加して排気ガスの規制値をクリアできなくなる。
さらに、燃焼室壁面からの熱エネルギーの散逸により燃料消費率が悪化するとともに、エンジン冷却水への伝熱量の増大に伴いラジエターからの放熱負荷が増大してクーリングシステムを構成するラジエターや冷却ファンが大型化したりエンジン部品の劣化や破損等を招くなどのおそれがある。
【0012】
また、前記したように、波形フィン構造体単体のピッチbを狭めて伝熱面積を増加させようとすると、扁平管と波形フィン構造体で構成される複数の矩形チャンネル(排気ガス通路)のアスペクト比b/aが小さくなり、特にエンジン回転速度の低い層流域のようなガス流速では、アスペクト比1(正方形)に対し圧力損失が高くなってしまう。このため、EGRガスの十分な所望流量の確保が困難となって、比熱が大きく昇温し難い燃焼排気ガスであるEGRガスがシリンダ内に十分に充填されず、比熱が小さく昇温し易い空気が多く充填されることとなり、燃焼温度の上昇により窒素の酸化が進行して窒素酸化物が増加して排気ガスの規制値をクリアできなくなる。
さらに、燃焼室壁面からの熱エネルギーの散逸により燃料消費率が悪化するとともに、エンジン冷却水への伝熱量の増大に伴いラジエーターからの放熱負荷が増大してクーリングシステムを構成するラジエーターや冷却ファンが大型化したりエンジン部品の劣化や破損等を招くなどのおそれがある。
【0013】
このため、目標伝熱性能を達成して、排気ガスの規制値をクリアし、さらにエンジンの耐久性の確保やクーリングシステムの大型化を防止するためには、例えば図15に示すように一段式の波形フィン構造体122の流路面積を小さくし、伝熱管本数を増やすか、または管長を長くする等、EGRクーラーの容積を大きくする方法しかない。これは前記したニーズ(要請)に対応することができない方策であることは明らかである。
【0014】
本発明は、前記した従来の問題を解決するためになされたものであり、EGRクーラー用の扁平管とその内部に内装される波形フィン構造体とから成るEGRクーラー用扁平伝熱管において、前記扁平管の大きさ(ディメンション)が従来と同じであっても格段に優れた伝熱特性・圧力抵抗(圧損)を発現し、かつ、低流量から高流量までと幅広い流量領域で高いEGR率を確保できる経済的でコンパクト化されたEGRクーラー用の扁平伝熱管とこの扁平伝熱管を使用したEGRクーラーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、本出願人による扁平管の内部に波形フィン構造体を1段内装した構造のEGRクーラー用扁平伝熱管、および前記伝熱管を使用したEGRクーラーの実製品をベースにして種々、検討を加えた。なお、前記したように、本願出願人はEGRクーラー用扁平伝熱管を製造しているが、本発明は扁平管として、内部空間高さhが10mm以下という極薄のものを使用することを前提としている。
【0016】
その結果、本発明者らは、検討の初期段階では扁平管の厚さ(10mm以下)からみて、そのような狭い内部空間に波形フィン構造体を多段に相重ねるという考えは持ち合わせていなかったが、この点をブレークスルーすることにより可能化させると共に、さらに、収容する波形フィン構造体の形状・構造を特定化することにより、前記した優れた特性を有する経済的でコンパクト化されたEGRクーラー用扁平伝熱管が得られることを見いだした。本発明は、前記した知見をベースにして創案されたものである。
【0017】
すなわち、本発明に係るEGRクーラー用扁平伝熱管は、内燃機関からの排気中のすすや汚れ(パーティキュレートマター:PM)を含有する排気ガスの一部をEGR(排気再循環)させるとき、前記排気ガスの一部を伝熱管の内部に導き、外部の冷媒との熱交換により冷却するために使用されるEGRクーラーに組込まれるEGRクーラー用扁平伝熱管であって、前記EGRクーラー用扁平伝熱管は、断面形状が略扁平形状の管体からなる扁平管と、前記扁平管の内部に内装された波形フィン構造体とで構成され、かつ、前記波形フィン構造体は、断面形状が略矩形のチャンネル形状の波形(矩形チャンネル波形)を有し、さらに、前記波形フィン構造体は、前記波形フィン構造体単体を2段または複数段に相重ねた構造を有する、EGRクーラー用扁平伝熱管において、前記波形フィン構造体は、下記式(1)〜式(5)の条件を満たし、さらに、前記扁平管の内部空間高さhと波形フィン構造体単体の内高さaが、それぞれ下記式(6)、式(7)の条件を満たすことを特徴とするものである。
<記>
式(1):1.2≦a(mm)
式(2):1.2≦b(mm)
式(3):0.4≦b/a≦1(a≧b)
式(4):0.4≦a/b≦1(b≧a)
式(5):1.2≦D≦2.8(mm)
式(6):3≦h≦6(mm)
式(7):a=約h/波形フィン構造体単体の段数
ただし、a:波形フィン構造体単体の内高さ、b:波形フィン構造体単体の内幅、b/a(a≧b)またはa/b(b≧a):波形フィン構造体単体の矩形チャンネルのアスペクト比、D:波形フィン構造体単体の矩形チャンネルの相当直径{4ab/(2a+2b)}、h:扁平管の内部空間高さ
【0019】
さらに、本発明のEGRクーラー用扁平伝熱管は、前記波形フィン構造体として、前記波形フィン構造体を構成する2段または複数段の波形フィン構造体単体の間に、前記波形フィン構造体単体の扁平伝熱管の幅(W)方向が該波形フィン構造体単体の幅ないし扁平伝熱管の内幅で、かつ軸方向(排気ガス流れ方向)の長さが前記波形フィン構造体単体の軸方向長さに略等しいスペーサ板を介在させて構成することを好ましい態様とするものである。
【0020】
さらにまた、本発明において、波形フィン構造体を例えば2段式の波形フィン構造体で構成する場合、2つの波形フィン構造体単体の間に前記スペーサ板を介在させるとともに、相互の当接部を接合することを好ましい態様とするものである。
【0021】
また、本発明に係るEGRクーラーは、前記EGRクーラー用扁平伝熱管の所望本数を使用して構成したもので、前記式(1)〜式(7)の条件を満たす波形フィン構造体単体、あるいは前記波形フィン構造体単体の間に前記スペーサ板を介在させた波形フィン構造体単体を、前記扁平管の内部に2段または複数段相重ねて内装してEGRクーラー用扁平伝熱管を構成し、前記EGRクーラー用扁平伝熱管の所望本数を所望の冷却ジャケットを有するシェル本体内に配設することにより構成されるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るEGRクーラー用扁平伝熱管は、波形フィン構造体を構成する波形フィン構造体単体の内高さ、内幅、矩形チャンネルのアスペクト比および矩形チャンネルの相当直径を適正値に設定し、波形フィン構造体単体を2段または複数段に相重ね、かつ相互の当接部を接合して構成した多段式波形フィン構造体を扁平管の内部に内装して構成される。
これにより、扁平管のサイズを大きくしたり扁平伝熱管の配設本数を増加させることなく従来と同等の容積(大きさ)で、PMの付着により伝熱性能が低下することのない高い伝熱性能が得られ、かつ低流量から高流量まで幅広い流量領域で所望の高いEGR率を確保できるコンパクトで軽量の高性能のEGRクーラーを提供することができる。
【0023】
また、波形フィン構造体(波形フィン構造体単体)の壁面からのPMの剥離物が燃焼室内で残渣となって摺動部分の摩耗を増大させてエンジン構成部品の耐久性を脅かしたりすることがない。
【0024】
さらにまた、空気より比熱が大きく昇温し難い燃焼排気ガスであるEGRガスの十分な流量を確保してシリンダ内に比熱が小さく昇温し易い空気の体積比率を低く抑える(EGR率を高く維持する)ことができ、これによって燃焼温度が高温となり窒素の酸化が進行して窒素酸化物が増大し排気ガスが悪化するのを抑制することができる。また、燃焼室壁面からの熱エネルギーの散逸を減少させて燃料消費率を向上させることができ、エンジン冷却水への伝熱量の増大を抑制してラジエーターや冷却ファンの大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る第1のEGRクーラー用伝熱管の(形状)構造を説明するための図であって、(A)は波形フィン構造体が内装された扁平伝熱管を一部省略して示す正面図、(B)は扁平伝熱管に内装される波形フィン構造体単体の矩形チャンネルの構造を説明するための部分拡大断面図である。
図2】同じく本発明に係る第2のEGRクーラー用伝熱管の(形状)構造を説明するための図であって、波形フィン構造体が内装された扁平伝熱管を一部省略して示す正面図である。
図3】同じく本発明に係る第3のEGRクーラー用伝熱管の(形状)構造を説明するための図であって、波形フィン構造体が内装された扁平伝熱管を一部省略して示す正面図である。
図4】同じく本発明に係る第4のEGRクーラー用伝熱管の(形状)構造(形状)を説明するための図であって、波形フィン構造体が内装された扁平伝熱管を一部省略して示す正面図である。
図5】同じく本発明に係る第5のEGRクーラー用伝熱管の(形状)構造(形状)を説明するための図であって、波形フィン構造体が内装された扁平伝熱管を一部省略して示す正面図である。
図6】同じく本発明に係る第6のEGRクーラー用伝熱管の(形状)構造(形状)を説明するための図であって、波形フィン構造体が内装された扁平伝熱管を一部省略して示す正面図である。
図7】本発明に係る第1〜第6のEGRクーラー用伝熱管で構成するEGRクーラーの(形状)構造を説明するための図であって、EGRクーラーの(形状)構造を一部省略して模式的に示す横断面図である。
図8】本発明の実施例1におけるPM堆積試験での運転時間とガス流量の関係を示す図である。
図9】本発明の実施例2におけるアスペクト比と圧損/アスペクト比1の圧損の関係を調べた結果(解析値)を文献値(引用文献:McGraw−Hill Handbooks発行、Handbook of HEAT TRANSFERの、Third EditionでのCHAPTER 5)と比較して示す図である。
図10】本発明の実施例3におけるEGRクーラー用伝熱管の矩形チャンネルの相当直径Dと交換熱量比の関係を示す図である。
図11】本発明の実施例4におけるEGRクーラーのフィン重量比と交換熱量比の関係を示す図である。
図12】従来の1段式の波形フィン構造体を採用したEGRクーラー用扁平伝熱管を一部破断して模式的に示す要部拡大斜視図である。
図13図12に示す従来の1段式の波形フィン構造体を採用したEGRクーラー用扁平伝熱管を一部省略して示す正面図である。
図14図13に示す従来のEGRクーラー用伝熱管を採用したEGRクーラーを一部省略して模式的に示す横断面図である。
図15】従来の1段式の波形フィン構造体の流路面積を小さくし、伝熱管本数を増やして伝熱面積を増加させた従来のEGRクーラーを一部省略して模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るEGRクーラー用扁平伝熱管の構成について、図面を参照して説明する。
本発明に係る第1のEGRクーラー用扁平伝熱管1は、図1(A)にその要部を示すように、断面形状が略扁平形状の板厚が例えば0.5mmの、SUS304Lオーステナイト系ステンレススチールを素材として形成された扁平管1−1の内部に、板厚が例えば0.1mmのSUS316Lオーステナイト系ステンレススチール製板材にプレス成形を施すことによって断面形状が略矩形のチャンネル状の波形、すなわち矩形チャンネル波形を有する波形フィン構造体単体2−1を2段に相重ねるとともに、相互の当接部を例えばろう付けによって接合した2段式の波形フィン構造体2を内装し、かつ前記扁平管1−1と波形フィン構造体2の当接部を例えばろう付けによって接合して構成したものである。
【0027】
図示されるように本発明の矩形チャンネル波形を有する波形フィン構造体単体2−1は、扁平管1−1の内部空間高さhを2分割するものであり、従来の1段式波形フィン構造体122(図12図13参照)と比較して、その内高さaを小さく設定して、流路面積を小さくしてある。
なお、ここに示す波形フィン構造体単体2−1の軸方向(排気ガス流れ方向)の形状は、図12に示される従来のものと同様に、軸方向に所定の波長のうねり波形が形成されたものである。
また、図1(B)は、前記波形フィン構造体単体の矩形チャンネル波形の一つ(1つの排気ガス流通口、1つのチャンネル)を拡大して示すものであり、図中、aは波形フィン構造体単体の内高さ、bは波形フィン構造体単体の内幅をそれぞれ示す。
【0028】
本発明において、扁平管1−1に内装する波形フィン構造体2の構成を、扁平管1−1の内部空間高さhを2分割して波形フィン構造体単体の内高さaを低くし、流路面積の小さい波形フィン構造体単体2−1を2段に相重ねて2段式フィン構造体とする理由は、扁平管1−1のサイズを大きくすることなく従来と同等の大きさ(略同一体積)の扁平管1−1のもとで熱交換性能を向上させるためである。
すなわち、従来の1段式波形フィン構造体122(図12図13参照)を用いたEGRクーラー用扁平伝熱管の場合は、該扁平伝熱管内における伝熱面積が少なく、伝熱性能の向上がはかられないのに対し、波形フィン構造体の構成を2段式の波形フィン構造体2とした場合は、波形フィン構造体単体の垂直壁部2−1a部分の伝熱面積に加え、流路面積の小さい2つの波形フィン構造体単体2−1を2段に相重ねているため水平壁部2−1b部分の伝熱面積が増加分となり、伝熱性能を向上できるからである。
【0029】
また、本発明において、各波形フィン構造体単体2−1の内高さa、内幅b、矩形チャンネルのアスペクト比b/a(a≧b)またはa/b(b≧a)、矩形チャンネルの相当直径D={4ab/(2a+2b)}、および扁平管1−1の内部空間部高さhとしたとき、前記式(1)〜式(7)の条件を満足することとしたのは、以下に示す理由による。
【0030】
すなわち、式(1)、式(2)は、それぞれ排気ガス中のPMが波形フィン構造体単体の壁面に堆積・沈着してそのチャンネル(排気ガス通路)を閉塞させない波形フィン構造体単体の内高さa、波形フィン構造体単体の内幅bを規定したものである。
本発明者らによる多くの実証テストにより、また、扁平管1−1の内部空間高さhが大きくてもせいぜい10mm以下、特に5mm前後の極端な扁平管の使用を前提とした実験により、波形フィン構造体単体の内高さaまたは波形フィン構造体単体の内幅bが1.2mm未満の条件では、排気ガス中のPMが波形フィン構造体単体2−1の垂直壁部2−1a表面および水平壁部2−1b表面に付着・堆積してガス流路を閉塞してしまうことが認められた。波形フィン構造体単体の内高さa、内幅bの上限は、伝熱特性等を考慮して設定すればよい。
【0031】
式(3)および式(4)は、層流域での圧力損失の抑制効果を考慮して矩形チャンネルのアスペクト比b/a(a≧b)またはa/b(b≧a)を規定したものである。
すなわち、伝熱管内の排気ガスの流れが層流域となるようなエンジン回転速度の低い低流量領域においては、排気マニホールドと吸気マニホールド間の圧力差が小さいため、できるだけ圧力損失の低いEGRクーラーが要求されるが、アスペクト比が0.4未満ではEGRクーラーを構成する伝熱管の圧力損失が高くなり、要求されるガス流量、すなわち所望のEGR率が確保できず、排気ガスの規制値等がクリアできなくなったり、所望の燃費を確保することができなくなったりする。
なお、式(3)において、アスペクト比(内幅b/内高さa)が1より大きい領域、すなわちb>aとなる領域は、式(4)に規定される領域に相当し、式(4)において、アスペクト比(内高さa/内幅b)が1より大きい領域、すなわちa>bとなる領域は、式(3)に規定される領域に相当する。
【0032】
式(5)に示す相当直径Dは、EGRクーラーの設計において矩形チャンネルの流路面積に相当する直径として使用される値であり、前記したように、相当直径D=4×(断面積)/(ぬれ周長)で定義される。
本発明において、この相当直径Dを1.2≦D≦2.8(mm)と規定したのは、1.2mm未満では、エンジン排気ガス中のPMがチャンネル壁に付着するだけでなく、そのチャンネルを閉塞しEGRガスが所望量流れなくなり、EGRシステムが機能しなくなる、すなわち燃焼温度の上昇により排気ガスの規制値をクリアできなくなるためである。
これにより、例えば、PMの波形フィン構造体(波形フィン構造体単体)壁面への付着による伝熱効率の低下のみならず、付着したPMの剥離物質は燃焼室内で残渣となり摺動部分の摩耗を増大させてエンジン構成部品の耐久性を脅かし破損等を招くなどのトラブルの要因となる。さらに、ガス流路の閉塞により、すなわちPMの波形フィン構造体壁面への付着による圧力損失の増大に伴い、比熱が大きく昇温し難い燃焼排気ガスであるEGRガスがシリンダ内に充填されず、比熱が小さく昇温し易い空気のみが充填されることになり(EGR率の大幅な低下)、燃焼温度の上昇により窒素の酸化が進行して窒素酸化物が増加して排気ガスの規制値をクリアできなくなるおそれがある。さらにまた、燃焼温度の上昇により燃焼室壁面からの熱エネルギーの散逸により燃料消費率が悪化するとともに、エンジン冷却水への伝熱量の増大に伴いラジエーターからの放熱負荷が増大してクーリングシステムを構成するラジエーターや冷却ファンが大型化したりエンジン部品の劣化や破損等を招くなどのおそれがある。
他方、相当直径Dが2.8mmを超えると、従来品に対し伝熱性能の向上が見られず本発明の効果が発揮し得ないためである。
【0033】
式(6)は、特に本発明の対象となる扁平管1−1のサイズを規定したものであり、扁平管1−1内部空間部高さhが3mm未満では、波形フィン構造体単体2−1の内高さaが小さくなりすぎるため、前記したように伝熱管が閉塞しガスが流れなくなり、他方、6mmを超えると高い伝熱性能を確保するためには伝熱管およびEGRクーラーコア本体の容積が大きなものになり、本発明の目的とするコンパクト化・軽量化が達成できないためである。
【0034】
式(7)は、波形フィン構造体単体2−1の内高さa、扁平管の内部空間高さh、および波形フィン構造体単体の段数、の関係を規定したものであり、本発明においては波形フィン構造体単体の内高さaを、扁平管の内部空間高さh/波形フィン構造体単体の段数、で規定している。
本発明において、前記したようにEGRクーラーのコンパクト化、高性能化というニーズに対応するために、扁平管1−1の内部空間部高さhが10mm以下、特に5mm前後であることを前提としているため、これとの関係で所望の波形フィン構造体単体の段数を選択すればa値が定まる。なお、a値の決定は式(1)にも依存する。
【0035】
本発明に係る第2のEGRクーラー用扁平伝熱管11は、図2に示すように前記図1に示す第1のEGRクーラー用扁平伝熱管1と略同様の伝熱管であるが、波形フィン構造体12を構成する上下2つの波形フィン構造体単体12−1の間にスペーサ板3を介在させて構成した点が相違する。
このEGRクーラー用扁平伝熱管11は、波形フィン構造体12を構成する2つの波形フィン構造体単体12−1の間に、扁平管11−1の内幅wに略等しく、かつ該波形フィン構造体単体の軸方向(排気ガス流れ方向)長さに略等しい1枚のスペーサ板3を介在させ、前記上、下段の波形フィン構造体単体12−1およびスペーサ板3を相互に例えばろう付けして一体となして2段式の波形フィン構造体12を構成し、このスペーサ板3付きの2段式波形フィン構造体12を前記と略同様の扁平管11−1に内装固着して構成したものである。
なお、図中、11−1は扁平管、12−1aは垂直壁部、12−1bは水平壁部である。
【0036】
本発明に係る第3のEGRクーラー用伝熱管21は、図3に示すように同一サイズの上下2つの波形フィン構造体単体22−1、22−2を用い、上段の波形フィン構造体単体22−1と下段の波形フィン構造体単体22−2を対称位置に(上段の凸部チャンネルと下段の凹部チャンネルが対応するように)相重ねるとともに、上段と下段の波形フィン構造体単体22−1と22−2の間に、扁平管21−1の内幅wに略等しく、かつ該波形フィン構造体単体の軸方向(排気ガス流れ方向)長さに略等しいスペーサ板3を介在させ、前記上、下段の波形フィン構造体単体22−1、22−2およびスペーサ板3を相互に例えばろう付けして一体となして2段式の波形フィン構造体22を構成し、このスペーサ板3付きの上下2段式波形フィン構造体22を扁平管21−1に内装固着して構成したものである。
なお、図中、22−1a、22−2aは垂直壁部、22−1b、22−2bは水平壁部である。
【0037】
本発明に係る第4のEGRクーラー用扁平伝熱管31は、図4に示すように波形フィン構造体32において、上段の波形フィン構造体単体32−1を流れるガス流は矩形チャンネルのうねりに沿って先ず左向きに流入し、下段の波形フィン構造体単体32−2を流れるガス流は矩形チャンネルのうねりに沿って先ず右向きに流入し、それぞれのガス流が交差しながら流れることができるように、上段の波形フィン構造体単体32−1と下段の波形フィン構造体単体32−2の軸方向(排気ガス流れ方向)のうねりの位相を該伝熱管の軸方向にほぼ1/2波長ずらして相対向させて構成した例である。
すなわち、このEGRクーラー用扁平伝熱管31は、上段の波形フィン構造体単体32−1に対し下段の波形フィン構造体単体32−2の軸方向のうねりの位相を該伝熱管の軸方向にほぼ1/2波長ずらして配置し、この上下2つの波形フィン構造体単体32−1、32−2の間に、扁平管31−1の内幅wに略等しく、かつ該波形フィン構造体単体の軸方向(排気ガス流れ方向)長さに略等しいスペーサ板3を介在させ、前記上、下段の波形フィン構造体単体32−1、32−2およびスペーサ板3を相互に例えばろう付けして一体となして上下2段式の波形フィン構造体32を構成し、このスペーサ板3付きの2段式の波形フィン構造体32を扁平管31−1に内装固着して構成したものである。
なお、図中、32−1a、32−2aは垂直壁部、32−1b、32−2bは水平壁部である。
【0038】
本発明に係る第5のEGRクーラー用扁平伝熱管41は、図5に示すように前記図4に示すEGRクーラー用扁平伝熱管のスペーサ板付き波形フィン構造体とほぼ同様の上下2つの波形フィン構造体単体42−1、42−2を用い、上段の波形フィン構造体単体42−1と下段の波形フィン構造体単体42−2の矩形チャンネル(1つの排気ガスチャンネル)の位相を扁平管41−1の幅W方向にほぼ1/4波長ずらして構成したものである。
すなわち、このEGRクーラー用扁平伝熱管41は、上下2つの波形フィン構造体単体42−1、42−2の間に、扁平管41−1の内幅wに略等しく、かつ該波形フィン構造体単体の軸方向(排気ガス流れ方向)長さに略等しいスペーサ板3を介在させ、前記上、下段の波形フィン構造体単体42−1、42−2およびスペーサ板3を相互にろう付けして一体となして上下2段式の波形フィン構造体42を構成し、このスペーサ板3付きの2段式の波形フィン構造体42を扁平管41−1に内装固着して構成したものである。
このEGRクーラー用扁平伝熱管41は、前記第4のEGRクーラー用扁平伝熱管31と同様に、上段の波形フィン構造体単体42−1を流れるガス流は矩形チャンネルのうねりに沿って先ず左向きに流入し、下段の波形フィン構造体単体42−2を流れるガス流は矩形チャンネルのうねりに沿って先ず右向きに流入し、それぞれのガス流が交差しながら流れることができる構造となっている。
なお、図中、42−1a、42−2aは垂直壁部、42−1b、42−2bは水平壁部である。
【0039】
前記図2図5に係る第2〜第5のEGRクーラー用扁平伝熱管11、21、31、41において、それぞれの2段式波形フィン構造体12、22、32、42を構成する上下2つの波形フィン構造体単体12−1の間、波形フィン構造体単体22−1と22−2の間、波形フィン構造体単体32−1と32−2の間、および波形フィン構造体単体42−1と42−2の間に、各扁平管11−1、21−1、31−1、41−1の内幅wに略等しく、かつそれぞれの波形フィン構造体単体の軸方向(ガス流れ方向)長さに略等しい1枚のスペーサ板3を介在させて波形フィン構造体を構成することとしたのは、伝熱面積の増加による熱交換性能の向上と共に、それぞれの波形フィン構造体単体12−1、22−1、22−2、32−1、32−2、42−1、42−2の接合強度の向上と接合の簡易化をはかるためである。
【0040】
本発明において、前記したスペーサ板3の材質および板厚は、特に限定するものではないが、それぞれの波形フィン構造体単体12−1、22−1、22−2、32−1、32−2、42−1、42−2と同一でよい。また、スペーサ板3の幅は、扁平管11−1、21−1、31−1、41−1の内幅wに略等しい例を示したが、スペーサ板3の幅は必ずしも扁平管の内幅wに略等しい必要はなく、波形フィン構造体単体12−1、22−1、22−2、32−1、32−2、42−1、42−2以上の幅があればよい。
【0041】
本発明に係る第6のEGRクーラー用扁平伝熱管51は、図6に示すように図1に示す扁平伝熱管1−1と同様、断面形状が略扁平形状の板厚が例えば0.5mmの、SUS304Lオーステナイト系ステンレススチールを素材として形成された扁平管51−1の内部に、板厚が例えば0.1mmのSUS316Lオーステナイト系ステンレススチール製板材にプレス成形を施すことによって形成された略同一形状の3つの波形フィン構造体単体52−1、52−2、52−3を3段に相重ねて構成したものである。そして、さらに該波形フィン構造体単体52−1と52−2の間、および52−2と52−3の間に、扁平管51−1の内幅wに略等しく、かつ該波形フィン構造体単体の軸方向(ガス流れ方向)長さに略等しい2枚のスペーサ板3を介在させて構成し、前記3段の波形フィン構造体単体52−1、52−2、52−3および2枚のスペーサ板3の各当接部を相互に例えばろう付け接合して一体となして上下3段式の波形フィン構造体52を構成し、このスペーサ板付きの3段式の波形フィン構造体52を扁平管51−1に内装固着して構成したものである。
なお、図中、52−1a、52−2aは垂直壁部、52−1b、52−2bは水平壁部である。
【0042】
図7は、前記図1図6を参照して説明した本発明のEGRクーラー用扁平伝熱管を使用して構成したEGRクーラーを説明するものである。
すなわち、図7は、前記図1図6に示すEGRクーラー用扁平伝熱管1、11、21、31、41、51を、断面幅X、断面高さYを有する大きさのコア(冷却用シェル本体)4内に間隔Sを隔ててそれぞれ所望する本数配設して構成されるEGRクーラーを模式的に示したものである。
本発明のEGRクーラーは、前記した2段式の波形フィン構造体2、12、22、32、42を使用した(組込んだ)EGRクーラー用扁平伝熱管1、11、21、31、41、もしくは前記3段式の波形フィン構造体52を使用した(組込んだ)EGRクーラー用扁平伝熱管51により構成されるため、EGRクーラー本体そのものは、従来の1段式の波形フィン構造体122で構成されるEGRクーラーとほぼ同一のサイズで済み、コンパクトで高い熱交換性能を発揮することができる。
【0043】
なお、従来の1段式の波形フィン構造体122で構成される従来のEGRクーラーにおいて、高い熱交換性能を得る方法として、例えば1段式の波形フィン構造体122(図12図13参照)の流路面積を小さくし、伝熱管本数を増やして伝熱面積を増加させる方法がある(図15参照)。しかしながら、この方法では伝熱管単管あたりの伝熱性能が低下する上、伝熱管の間隔Sを冷却媒体経路確保のため狭くすることができないため、図15に示すようにEGRクーラー本体のボリュウムが例えば15〜20%大きくなるという問題があることは前記した通りである。
【0044】
前記本発明に係るEGRクーラー用扁平伝熱管における扁平管と波形フィン構造体の接合手段としては、ろう付け、溶接、貼着、その他の接合方法の中から適宜選択されることはいうまでもない。
また、波形フィン構造体として、ここでは断面形状が矩形チャンネル波形で、軸方向に所定の波長で波形のうねりが形成された湾曲曲面を有するウェイブフィン(波形フィン)を示したが、フィン形状としてはストレートフィンやオフセットフィン(マルチ・エントリ形フィン)等もあり、本発明においてもこれらを対象とするものである。
【0045】
次に、前記図1図6に示すEGRクーラー用扁平伝熱管の形状構造に基づいて製作したEGRクーラー用扁平伝熱管、および前記EGRクーラー用扁平伝熱管を組込んだEGRクーラーの諸特性について調べた。その結果を、以下、実施例1〜5に示す。
なお、各実施例における特性評価は実験データ、解析用シミュレーションモデルによる解析値を用いて行った。
【実施例1】
【0046】
EGRクーラー用扁平伝熱管においてPMが閉塞しない波形フィン構造体単体の内幅bについて調べるため、断面形状が略扁平形状の板厚が0.5mmの、SUS304Lオーステナイト系ステンレスを素材として形成された扁平管1−1(h=5mm、W=59mm、長さ=270mm)の内部に、板厚が0.1mmのSUS316Lオーステナイト系ステンレス材にプレス成形を施すことによって形成された断面形状が略矩形のチャンネル波形を有する図1に示されるものとほぼ同様の3種類(A、B、C)の波形フィン構造体単体(A:波形フィン構造体単体の内高さa=2.4mm、内幅b=1.0mm、相当直径D=1.4mm、B:波形フィン構造体単体の内高さa=2.4mm、内幅b=1.2mm、相当直径D=1.6mm、C:波形フィン構造体単体の内高さa=2.4mm、内幅b=1.5mm、相当直径D=1.8mm)をそれぞれ2段に相重ね、かつ相互の当接部をろう付けによって接合して構成した2段式の波形フィン構造体2を内装し、かつ該扁平管1−1の内部との当接部をろう付けによって接合して得た図1に示すものと略同様の構成を有するEGRクーラー用扁平伝熱管1を組込んで、図7に示すものとほぼ同じEGRクーラー(X=70mm、Y=90mm、長さ=270mm、伝熱管数=10本、S=2.5mm)を製作し、このEGRクーラーをエンジン排気管に取付けて、EGRクーラー前後の圧力差が一定となるように排気ガスを流した時のエンジン運転時間とガス流量の変化を調べた結果を図8に示す。
図8は、伝熱管のチャンネル壁面にPMが付着し流路が狭くなることによるガス流量の低下状況を、チャンネル壁面のピッチ(波形フィン構造体単体の内幅b)を変えて比較した実測データである。
【0047】
図8に示す結果より明らかなように、本発明の条件、すなわち、波形フィン構造体単体の内幅b≧1.2mmという条件を外れた内幅b=1.0mmの波形フィン構造体単体Aは、本発明の条件を満たす波形フィン構造体単体B(内幅b=1.2mm)、C(内幅b=1.5mm)に比べ、ガス流量が早く低下したことから、PMの付着が著しいことが確認された。
【実施例2】
【0048】
EGRクーラー用扁平伝熱管を構成する波形フィン構造体単体の矩形チャンネル(1つの排気ガスチャンネル;図1(B)参照)の適正なアスペクト比b/a(a≧b)またはa/b(b≧a)を調べるため、図2に示す波形フィン構造体12を構成する波形フィン構造体単体12−1の内高さaおよび内幅bを種々に変えたシミュレーションモデル(波形フィン構造体単体の内高さa=1.8〜11.4mm、内幅b=0.98〜1.8mm、相当直径D=1.8mm(一定))を作成し、矩形チャンネル内の流速一定条件にて流体解析を実施し、層流域におけるアスペクト比(短辺/長辺)と圧力損失(圧損/アスペクト比1の圧損)の関係を調べた結果を文献値(引用文献:McGraw−Hill Handbooks発行、Handbook of HEAT TRANSFERの、Third EditionでのCHAPTER 5)と比較して図9に示す。
なお、前記したアスペクト比1とは、前記矩形チャンネルの短辺/長辺が1、つまり矩形チャンネルが正方形のことである。したがって、前記した(圧損/アスペクト比1の圧損)という特性は、ある一定の流速の排気ガスを前記矩形チャンネルに流した時の圧力損失と、矩形チャンネルが正方形の時の圧力損失との比を意味し、この値が高いほど圧力損失が高いことを表している。
【0049】
図9に示す結果より明らかなように、排気ガス流れが層流域のような流速の遅い領域においては、同一の相当直径(1.8mm)、流速一定条件のもとで、アスペクト比が0.4未満のものは、アスペクト比0.4〜1.0のものと比較してアスペクト比:1(正方形)に対し、圧力損失の上昇の傾向が顕著にみられることが確認された。このことから、本発明において、矩形チャンネルのアスペクト比(a/bまたはb/a)は、0.4〜1.0に規定されるべきである。
【実施例3】
【0050】
EGRクーラー用扁平伝熱管に内装される波形フィン構造体単体の矩形チャンネルの適正な相当直径Dを調べるため、本発明品と従来品による実測データとシミュレーションモデルによる解析値を用いて比較を行った。
本実施例では、断面形状が扁平形状の板厚が0.5mmの、SUS304Lオーステナイト系ステンレス材を素材として形成された扁平管(h=5mm、W=59mm、長さ=270mm)の内部に、板厚が0.1mmのSUS316Lオーステナイト系ステンレス材にプレス成形を施すことによって形成された断面形状が略矩形のチャンネル波形を有する図3に示されるものとほぼ同様の波形フィン構造体22であって、該波形フィン構造体22は相当直径Dを種々変えた波形フィン構造体単体(内高さa=2.4mm、内幅b=0.7〜4mm、相当直径D=1.1〜3.0mm)をそれぞれ2段に相重ね、さらに該波形フィン構造体単体の間に扁平管21−1の内幅wにほぼ等しく、かつ該波形フィン構造体単体の軸方向長さにほぼ等しい1枚のスペーサ板3(材質:波形フィン構造体単体と同種、厚さ0.1mm)を介在させて構成し、この波形フィン構造体22を扁平管内に内装し、各相互当接部をろう付けによって接合して構成した図3に示すものと同様の構成を有するEGRクーラー用扁平伝熱管21を用い、図7に示すものとほぼ同じEGRクーラー(X=70mm、Y=90mm、長さ=270mm、伝熱管数=10本、S=2.5mm)を製作し、扁平管内に内装される波形フィン構造体単体の矩形チャンネルの相当直径Dと交換熱量比の関係を調べた。
ここで、交換熱量比とは、従来の1段式波形フィン構造体(相当直径D=3.8)を用いたEGRクーラーの交換熱量に対する、各種波形フィン構造体を用いたEGRクーラーの交換熱量との比のことである。
【0051】
本実施例の結果を、従来の1段式波形フィン構造体122(図12図13参照)を用いたEGRクーラー(扁平管:h=5mm、W=59mm、長さ=270mm、波形フィン構造体:波形フィン構造体単体の内高さa=4.9mm、内幅b=2〜3.5mm、相当直径D=2.8〜4.1mm、コア:X=70mm、Y=90mm、長さ=270mm、伝熱管数=10本、S=2.5mm)と、図3に示されるものとほぼ同様の2段式波形フィン構造体22を用いたEGRクーラー(扁平管:h=5mm、W=59mm、長さ=270mm、波形フィン構造体:波形フィン構造体単体の内高さa=2.4mm、内幅b=0.7〜4mm、相当直径D=1.1〜3mm、コア:X=70mm、Y=90mm、長さ=270mm、伝熱管数=10本、S=2.5mm)、および図6に示されるものとほぼ同様の3段式波形フィン構造体52を用いたEGRクーラー(扁平管:h=5mm、W=59mm、長さ=270mm、波形フィン構造体単体:波形フィン構造体単体の内高さa=1.5mm、内幅b=1〜4mm、相当直径D=1.2〜2.1mm、コア:X=70mm、Y=90mm、長さ=270mm、伝熱管数=10本、S=2.5mm)と合わせて(前記した三つのケースについて)、図10に示す。
【0052】
図10に示す結果より明らかなように、本発明の2段式および3段式の波形フィン構造体として、相当直径Dが1.2〜2.8の範囲のものを使用したEGRクーラーは、従来の1段式の波形フィン構造体を使用したEGRクーラーに比べ、交換熱量比が高く(例えば10〜25%)、格段に優れたEGRクーラーであることがわかる。
なお、図10に示されるように、2段式の波形フィン構造体を内装固着した扁平伝熱管を使用したEGRクーラーは、3段式の波形フィン構造体を内装固着した扁平伝熱管を使用したEGRクーラーよりも伝熱性能がより優れている。このことは、本発明が前提としている扁平管内部空間高さhが極薄タイプのことを考えると、3段式よりも2段式の方が優れた傾向にあることを示している。
【実施例4】
【0053】
2段式および3段式の波形フィン構造体を内装固着したEGRクーラー用扁平伝熱管に内装された波形フィン構造体単体とスペーサ板のフィン重量(以下、フィン重量という)に対する伝熱性能を調べるため、本発明品と従来品による実測データとシミュレーションモデルによる解析値を用いて比較を行った。
本実施例では、断面形状がほぼ扁平形状の板厚が0.5mmの、SUS304Lオーステナイト系ステンレスを素材として形成された扁平管(h=5mm、W=59mm、長さ=270mm)の内部に、板厚が0.1mmのSUS316Lオーステナイト系ステンレス材にプレス成形を施すことによって形成された断面形状が略矩形のチャンネル波形を有する図3に示されるものとほぼ同様の波形フィン構造体22であって、該波形フィン構造体22は相当直径Dを種々変えた波形フィン構造体単体(内高さa=2.4mm、内幅b=1〜4mm、相当直径D=1.4〜3.0mm)22−1、22−2を図3のようにそれぞれ2段に相重ね、さらに該波形フィン構造体単体の間に扁平管21−1の内幅wにほぼ等しく、かつ該波形フィン構造体単体の軸方向長さにほぼ等しい1枚のスペーサ板3(材質:波形フィン構造体単体と同種、厚さ0.1mm)を介在させて構成し、この波形フィン構造体22を扁平管21−1内に内装し、各相互当接部をろう付けによって接合して構成した図3に示すものと同様の構成を有するEGRクーラー用扁平伝熱管21を用い、図7に示すものとほぼ同じEGRクーラー(X=70mm、Y=90mm、長さ=270mm、伝熱管数=10本、S=2.5mm)を製作し、これらのフィン重量比と交換熱量比の関係を調べた。
ここで、フィン重量比とは、従来の一段式波形フィン構造体(相当直径D=3.8)を用いたEGRクーラーのフィン重量に対する、各種波形フィン構造体を用いたEGRクーラーのフィン重量との比のことである。
なお、前記フィン重量比と交換熱量比の特性は、同じ重量比において交換熱量比が大きい方が優れていることを意味するが、このことは単にフィンの重量が軽く扁平伝熱管が軽量となるだけではなく、フィン用材料であるステンレス鋼板の使用量を減少させることができるのでEGRクーラーを低コストで製造可能であるという観点からも留意しなければならない特性である。
【0054】
本実施例の結果を、従来の1段式波形フィン構造体122(図12図13参照)を用いたEGRクーラー(扁平管:h=5mm、W=59mm、長さ=270mm、波形フィン構造体:波形フィン構造体単体の内高さa=4.9mm、内幅b=2〜3.5mm、相当直径D=2.8〜4.1mm、コア:X=70mm、Y=90mm、長さ=270mm、伝熱管数=10本、S=2.5mm)と、図3に示されるものとほぼ同様の2段式波形フィン構造体22を用いたEGRクーラー(扁平管:h=5mm、W=59mm、長さ=270mm、波形フィン構造体:波形フィン構造体単体の内高さa=2.4mm、内幅b=0.7〜4mm、相当直径D=1.1〜3mm、コア:X=70mm、Y=90mm、長さ=270mm、伝熱管数=10本、S=2.5mm)、および図6に示されるものとほぼ同様の3段式波形フィン構造体52を用いたEGRクーラー(扁平管:h=5mm、W=59mm、長さ=270mm、波形フィン構造体単体:波形フィン構造体単体の内高さa=1.5mm、内幅b=1〜4mm、相当直径D=1.2〜2.1mm、コア:X=70mm、Y=90mm、長さ=270mm、伝熱管数=10本、S=2.5mm)と合わせて(前記した三つのケースについて)、図11に示す。
【0055】
図11に示す結果より明らかなように、前記図10に示す結果と同様に実測データに基づく解析による本実施例においても本発明の2段式および3段式の波形フィン構造体を内装した伝熱管を使用したEGRクーラーは、従来の1段式の波形フィン構造体を内装した伝熱管を使用した従来のEGRクーラーに比べ交換熱量比が高く優れていることを示している。
なお、本実施例においても、図11に示されるように、2段フィンと3段フィンの重量に対する伝熱性能を比較すると、同じフィン重量では2段フィンの方が伝熱性能が高いことから、3段式の波形フィン構造体よりも2段式の波形フィン構造体の方がより優れているということができる。
【実施例5】
【0056】
本発明の扁平管と(前記扁平管に内装される)波形フィン構造体単体とからなるEGRクーラー用扁平伝熱管において、前記したように、
・ 前記波形フィン構造体単体の(形状)構造は、当該単体の内高さa、内幅b、矩形チャンネルのアスペクト比b/aまたはa/b、相当直径Dの観点から規定されるものであり、さらに加えて、
・ 前記波形フィン構造体単体の(形状)構造は、扁平管の内部空間高さh、波形フィン構造体単体の段数の観点から規定されるものである。
以下、これらの規定(限定)条件の観点より、波形フィン構造体単体の内高さa、内幅bがどのような規定値を有するかを表1、表2に示す。表1、表2において、列は波形フィン構造体単体の内高さaを表し、0.5mmから11階層に分けて5mmまでの範囲とし、行は波形フィン構造体単体の内幅bを表し、0.5mmから15階層に分けて7mmまでの範囲とした。各データ欄の上段にアスペクト比(b/aまたはa/b)を、下段に相当直径を示している。
【0057】
表1において、式(1)〜式(5)の条件をすべて満足する範囲は、表内データの網掛けで示している。
すなわち、表1に示すように本発明のEGRクーラー用扁平伝熱管は、特定条件を満足する波形フィン構造体単体を使用することにより、優れた伝熱特性を発揮するものである。
【0058】
表2において、式(1)〜式(5)の条件をすべて満足する表1の範囲に加え、さらに式(6)〜式(7)の条件をもすべて満足する範囲は、表内データの網掛けで示されている。
具体的な条件としては、例えば、扁平管の内部高さhを式(6)の最大値の6mmとし、かつ段数を最小の2段とする条件(例えば、h=6mm、a=3mmを1つの条件賭する)を選べばよいから、表2に示すように本発明のEGRクーラー用扁平伝熱管は、特定条件を満足する波形フィン構造体単体を使用することにより、はじめて優れた伝熱特性を発揮することがわかる。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
前記実施例1〜5は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン用のEGRクーラーに関するものである。しかし、本発明は、内燃機関用のEGRクーラーのみならず、PMを含有する高温ガスに対する熱交換器にも適用可能であることはいうまでもない。
すなわち、本発明のEGRクーラー用扁平伝熱管およびこれを使用したEGRクーラーは、本願明細書の記載・説明および当業者の技術レベルから明らかのように、EGRクーラー用以外の他のPMを含有する高温ガス等を処理するための熱交換要素部材として有用なものである。
したがって、本発明におけるEGRクーラー用扁平伝熱管およびEGRクーラーという用語の意味は、最広義に解釈されるべきであり、一般の熱交換器要素部材(一般の熱交換器用扁平伝熱管、熱交換器)までを含有するものであると解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のEGRクーラー用扁平伝熱管は、波形フィン構造体単体の内高さ、内幅、矩形チャンネルのアスペクト比および相当直径を適正値に設定した波形フィン構造体単体を2段または複数段に相重ね、かつ相互の当接部を接合して構成した多段式波形フィン構造体を、極薄(10mm以下)の扁平管の内部に内装して構成されるものであるため、扁平管のサイズを大きくしたり配管本数を増加させることなく従来と同等の大きさ、すなわちコンパクトかつ軽量で、さらにPMの付着により伝熱性能が低下することがなく高い伝熱性能が得られ、かつ低流量域から高流量域までと幅広い流量領域で所望の高いEGR率を確保できる、極めて限定された(極薄な)空間スペース内に配設されなければならないEGRクーラー用として有用なものである。
【0063】
特に、波形フィン構造体の壁面からのPMの剥離物質の燃焼室内で残渣となって摺動部分の摩耗を増大させてエンジン構成部品の耐久性を脅かし破損等を招くなどのトラブルの要因となることがない。また、空気より比熱が大きく昇温し難い燃焼排気ガスであるEGRガスの十分な流量を確保してシリンダー内での比熱が小さく昇温し易い空気の体積比率を低く抑えることができ、これによって燃焼温度が高温となり窒素の酸化が進行して窒素酸化物(二酸化窒素等)が増大し排気ガスが悪化することを抑制することができる。さらに、燃焼温度が高温にならないことにより燃焼室壁面からの熱エネルギーの散逸を減少させて燃料消費率を向上させることができ、さらにまた、エンジン冷却水への伝熱量の増大を抑制してラジエーターからの放熱負荷を減少させ、クーリングシステムを構成するラジエーターや冷却ファンの大型化を抑制することができることから、熱交換性能の優れたEGRガス冷却装置の小型軽量化等を低コストで実現できるなど、当該技術分野に大きく寄与し得る。
【符号の説明】
【0064】
1、11、21、31、41、51 EGRクーラー用伝熱管
1−1、11−1、21−1、31−1、41−1、51−1 扁平管
2、12、22、32、42 2段式の波形フィン構造体
2−1、12−1、22−1、32−1、42−1、52−1 波形フィン構造体単体
2−1a、12−1a、22−1a、22−2a、32−1a、32−2a、 42−1a、42−2a、52−1a、52−2a 垂直壁部
2−1b、12−1b、22−1b、22−2b、32−1b、42−1b、 52−2b 水平壁部
3 スペーサ板
4 コア(シェル本体)
52 3段式の波形フィン構造体
a 波形フィン構造体単体の内高さ
b 波形フィン構造体単体の内幅
W 扁平管の外幅
w 扁平管の内幅
X コア断面幅
Y コア断面高さ
S 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15