(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784276
(24)【登録日】2015年7月31日
    
      
        (45)【発行日】2015年9月24日
      
    (54)【発明の名称】自然由来の酢液等の酸性溶液を用いた汚泥水処理工法
(51)【国際特許分類】
   C02F  11/14        20060101AFI20150907BHJP        
   C02F  11/00        20060101ALI20150907BHJP        
   E21D   9/13        20060101ALI20150907BHJP        
【FI】
   C02F11/14 DZAB
   C02F11/00 C
   E21D9/13 C
【請求項の数】8
【全頁数】6
      (21)【出願番号】特願2010-80502(P2010-80502)
(22)【出願日】2010年3月31日
    
      (65)【公開番号】特開2011-212514(P2011-212514A)
(43)【公開日】2011年10月27日
    【審査請求日】2013年3月6日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】390037268
【氏名又は名称】富士見環境緑化株式会社
          (73)【特許権者】
【識別番号】000170646
【氏名又は名称】国土防災技術株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】100072202
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野  政雄
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】田中  賢治
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】南雲  政博
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】松山  康二
              
            
        
      
    
      【審査官】
        池田  周士郎
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開平09−071777(JP,A)      
        
        【文献】
          特開昭60−099318(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2004−081973(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2003−211145(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F    11/00−11/20
E21D      9/13        
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  トンネル掘削工事の対象地において発生する高含水掘削汚泥水に炭を作る過程で抽出される木酢液,もみがら酢液を処理する際に抽出される有機酸を混合して撹拌することにより,アルカリ性の緩和を図れると同時に当該汚泥水の凝集化により半固形の汚泥を得ることを特徴とする自然由来の酢液の酸性溶液を用いた汚泥水処理工法。
【請求項2】
  使用する酢液は,処理する汚泥水に対して容量換算で0.5〜30.0%混合したものを用いることとし,混合された溶液を撹拌機で処理することによってアルカリ性の緩和と汚泥水の中に含まれているスライムの凝集を行うことができる請求項1記載の自然由来の酢液の酸性溶液を用いた汚泥水処理工法。
【請求項3】
  自然由来の酢酸は,水分が80%以上,有機酸含有量が1%以上の資材を利活用する請求項1記載の自然由来の酢液の酸性溶液を用いた汚泥水処理工法。
【請求項4】
  汚泥水のpHを低下させる緩衝資材としての酢液は,pH(H2O)5.0以下で電気伝導度が1.0ms/cm以上のものを利活用する請求項1記載の自然由来の酢液の酸性溶液を用いた汚泥水処理工法。
【請求項5】
  汚泥水のpHを低下させる緩衝資材としての酢液には,粒径φ=1mm以下の固形物しか含まれていないものを利活用する請求項1記載の自然由来の酢液の酸性溶液を用いた汚泥水処理工法。
【請求項6】
  汚泥水のpHを低下させる緩衝資材としての酢液は,木質系の有機質資材から抽出した酸性溶液についても利活用する請求項1記載の自然由来の酢液の酸性溶液を用いた汚泥水処理工法。
【請求項7】
  対象地に発生する汚泥のpH(H2O)の測定結果から,アルカリ緩和に用いる酢液の使用量を調整する請求項1記載の自然由来の酢液の酸性溶液を用いた汚泥水処理工法。
【請求項8】
  対象地に発生する汚泥水を凝集して固めるためには,各々の泥水の状態により酢液の混合量を可変することで対応する請求項1記載の自然由来の酢液の酸性溶液を用いた汚泥水処理工法。
 
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は,泥水加圧シールド工法や泥土圧シールド工法などの地下利用を目的としたトンネル掘削工事において発生する高含水掘削汚泥,基礎杭工法などの基礎工事で発生する軟弱汚泥,浚渫工事などで発生する軟弱土砂および下水処理場や浄水場で発生する汚泥のような多量の水分を含んだ残土は,著しくアルカリ性を示すことから搬送,再利用するのが困難となっていた汚泥水に炭等を作る過程で抽出される木酢液,もみがら酢液,魚等を処理する再に抽出される酸性水を汚泥水に混合して撹拌してアルカリ性を緩和し,同時に汚泥水から半固形の汚泥にできてダンプトラックでの搬出が可能としたものである。
 
【背景技術】
【0002】
  一般的に泥水加圧シールド工法や泥土圧シールド工法などの地下利用を目的としたトンネル掘削工事において発生する高含水掘削汚泥,基礎杭工法などの基礎工事で発生する軟弱汚泥,浚渫工事などで発生する軟弱土砂および下水処理場や浄水場で発生する汚泥のような多量の水分を含んだ残土は,生石灰やセメントなどの無機系固化剤を添加混合して水和反応で凝結させたり,有機質資材の微生物や発酵の作用を利用して固化処理してきた経緯がある。
【特許文献1】特開2000−333573号公報の発明
【特許文献2】特開2000−41479号公報の発明
【特許文献3】特開2002−238348号公報の発明
【特許文献4】特開2005−318891号公報の発明
 
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
  ところが,上記特許文献1〜4の発明における従来工法では,対象となる汚泥水が強アルカリ性であるのに対して無機系固化剤もアルカリ性であることから,汚泥水のpHが更に高くpHで11程度となって周辺環境への影響が顕著となったり,有機質資材の微生物や発酵の効果を利用する場合には処理に時間を要することが問題となっていた。
【0004】
  そこで,本発明では,自然由来のもみがら等の有機質資材を炭化する際に抽出される酸性の酢液を対象となる汚泥に適量混合して撹拌することによって,アルカリ性の緩和(pHの低下)と汚泥水の凝集化の両方が可能となったことにより,従来の課題を解決し,且つ発明の目的を達成するようにしたものである。
【0005】
  本発明の第1は,自然由来の酢液を用いた汚泥水処理工法において,トンネル掘削工事等の対象地において発生する高含水掘削汚泥水に炭等を作る過程で抽出される木酢液,もみがら酢液,魚等を処理する際に抽出される酢液を混合して撹拌することにより,アルカリ性の緩和を図れると同時に当該汚泥水の凝集化により半固形の汚泥を得る用にしたものである。
【0006】
  本発明の第2は,第1の発明に係る自然由来の酢液を用いた汚泥水処理工法において,使用する酢液は,処理する汚泥水に対して容量換算で0.5〜30.0%混合したものを用いることとし,混合された溶液を攪拌機で処理することによってアルカリ性の緩和と汚泥水の中に含まれている泥状・粘液状のぬるぬるしたスライムの凝集を行うようにしたものである。
【0007】
  本発明の第3は,第1の発明に係る自然由来の酢液を用いた汚泥水処理工法において,自然由来の
酢液は,水分が80%以上,有機酸含有量が1%以上の資材を利活用するようにしたものである。
 
【0008】
  本発明の第4は,第1の発明に係る自然由来の酢液を用いた汚泥水処理工法において,汚泥水のpHを低下させる緩衝資材としての酢液は,pH(H
2O)5.0以下で電気伝導度が1.0mS/cm以上のものを利活用するようにしたものである。
【0009】
  本発明の第5は,第1の発明に係る自然由来の酢液を用いた汚泥水処理工法におい,汚泥水のpHを低下させる緩衝資材としての酢液には,粒径がφ=1mm以下の固形物しか含まれていないものを利活用する用にしたものである。
【0010】
  本発明の第6は,第1の発明に係る自然由来の酢液を用いた汚泥水処理工法において,汚泥水のpHを低下させる緩衝資材としての酢液は,木質系の有機質資材のみならず,魚介類等から抽出した酸性溶液についても利活用するようにしたものである。
【0011】
  本発明の第7は,第1の発明に係る自然由来の酢液を用いた汚泥水処理工法におい
て,対象地に発生する汚泥のpH(H
2O)の測定結果から,アルカリ緩和に用いる酢液の使用量を調整するようにしたものである。
 
【0012】
  本発明の第8は,第1の発明に係る自然由来の酢液を用いた汚泥水処理工法において,対象地に発生する汚泥水を凝集して固めるためには,各々の泥水の状態により酢液の混合量を可変することで対応するようにしたものである。
 
【発明の効果】
【0013】
  本発明は上記の構成であるから,次の効果がある。すなわち,自然由来の酢液を用いることにより,強アルカリ性の汚泥水の緩和ができ同時に汚泥水のスライムを凝集させることが期待できる。また,このような作用によって,環境に負荷の少ない汚泥を形成することが可能であることから,吸引機とタンクを備えたバキュームカーによる搬出を必要とせず、当該バキュームカーよりコストが低減な荷台を傾けて積荷を下ろすためのダンプトラックによる搬出が可能となった。
【0014】
  また,本発明にあっては,自然由来の酢液を汚泥水に用いて汚泥を形成することから,周辺環境への負荷が少ない肥料としての活用が可能である。
 
 
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
  (1)建設汚泥水を固化処理する過程で無機系の固化剤を利用していることから,汚泥水のアルカリ性が更に高まってpHで10以上となっており,このような汚泥を利活用するためにはpHを8.6以下に低下させないといけない状態であることを確認した。汚泥水のpHを緩和する手法については,工業的に生産された酸性液を混合するが,自然由来でないことからそのままでは再利用できない。
  (2)汚泥水を凝集させるためにフライアッシュ等の資材が用いられるが,pHで10以上であることから汚泥水のアルカリ性は更に高くなる。このようにpHが更に高くなることから,炭を製造する過程で抽出される酢液を混合することで,汚泥水のアルカリ緩和とスライムの凝集を同時に実現する。
  (3)汚泥水のアルカリ緩和とスライムの凝集を実現する自然由来の酢液は,pHの更に低い酢液を用いることによって,汚泥水に混合する量を調整することが可能である。
  (4)酢液については,不純物が入って処理能力が低下することを防ぐために,粒径でφ=1mm以上の不純物が混入しないものを用いることで解決している。
 
【実施例1】
【0016】
  次に,本発明の実施例を説明する。
  1は自然由来の酢液
であり,水槽3に入っている建設汚泥水2に
当該自然由来の酢液1を混合する。自然由来の酢液は,水分が80%以上,有機酸含有量が1%以上でpH(H2O)5.0以下,電気伝導度が1.0mS/cm以上のものを利活用する。4は混合した汚泥水を混合する撹拌機である。
 
【0017】
「具体的な施工例における施工順序」
(1)  水槽3に入っている建設汚泥水2に対して,容量換算で0.5〜30%の自然由来の酢液1を混合する。
(2)  建設汚泥2に自然由来の酢液1に混合した溶液を攪拌機4で撹拌して,アルカリ性の緩和とスライムの凝集を促進させる。
 
【産業上の利用可能性】
【0018】
  本発明は,強アルカリ性の液体であることから処理がし難かった建設汚泥に対して,自然由来の酢液を混合することで強アルカリ性の緩和とスライムの凝集を実現し,ダンプトラックでの処理を可能としたことで環境負荷の少ない汚泥処理が実現できる。
 
【符号の説明】
【0020】
1……自然由来酢液
2……建設汚泥水
3……水槽
4……攪拌機