(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酢酸およびプロピオン酸の合計含有量が600ppm以上のアクリル酸を用いて単量体水溶液を調整する工程と、該単量体水溶液の重合工程と、得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、含水ゲル状架橋重合体またはその乾燥物の表面架橋工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、
上記単量体は、プロピオン酸より少ない含有量の酢酸と、10〜200ppmのp−メトキシフェノールを含み、
上記単量体水溶液中の固形分量に対するFe含有量が2ppm以下であり、
上記重合工程が、p−メトキシフェノールおよび界面活性剤の存在下、過硫酸塩を重合開始剤とする、炭素数6〜8の疎水性有機溶媒中での逆相懸濁重合であり、
上記乾燥工程が、疎水性有機溶媒中における含水ゲル状架橋重合体中の固形分が60〜95重量%になるまで共沸脱水を行う第一乾燥工程と、共沸脱水後に攪拌または流動乾燥を行う第二乾燥工程とからなり、
上記第二乾燥工程が表面架橋後に行われ、含水率を5〜15重量%に調整することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂およびその製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0015】
〔1〕用語の定義
(1−1)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。なお、「水膨潤性」とは、ERT441.2−02で規定するCRC(無加圧下吸水倍率)が通常5[g/g]以上であることをいい、また、「水不溶性」とは、ERT470.2−02で規定するExt(水可溶分)が通常0〜50重量%であることをいう。
【0016】
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜設計可能であり、特に限定されるものではないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた、親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記性能を維持する範囲内において、添加剤等を含んでもよい。すなわち、吸水性樹脂組成物であっても、本発明では吸水性樹脂と総称する。
【0017】
(1−2)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、繰り返し単位として、アクリル酸および/またはその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を主成分とする吸水性樹脂を意味する。
【0018】
具体的には、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)のうち、アクリル酸(塩)を通常50〜100モル%含む重合体をいい、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%含む吸水性樹脂をいう。また、重合体としてのアクリル酸塩は、必須に水溶性塩を含み、好ましくは一価塩、より好ましくはアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩、さらに好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩を含む。
【0019】
(1−3)「初期色調」、「経時着色」
本発明における「初期色調」とは、製造直後の吸水性樹脂またはユーザー出荷直後の吸水性樹脂の色調をいい、通常、工場出荷前の色調で管理する。色調の測定方法については、国際公開第2009/005114号に記載される方法(Lab値、YI値、WB値等)を例示することができる。
【0020】
また、「経時着色」とは、未使用状態で長期間の保管、あるいは、流通時に生じる吸水性樹脂の色調変化をいう。経時によって吸水性樹脂が着色するため、紙オムツの商品価値の低下となりうる。経時着色は数ヶ月〜数年単位で生じるため、国際公開第2009/005114号に開示される促進試験(高温・高湿下での促進試験)で検証する。
【0021】
(1−4)「EDANA」および「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)である吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recomeded Test Method)の略称である。なお、本発明においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0022】
(a)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(以下、「吸水倍率」と称することもある)を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.2gについて、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する30分間の自由膨潤後さらに遠心分離機で水切りした後の吸水倍率(単位;[g/g])である。
【0023】
(b)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する1時間、2.06kPa(0.3psi)での荷重下膨潤後の吸水倍率(単位;[g/g])である。なお、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更して測定することもある。
【0024】
(c)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200gに対して、吸水性樹脂1gを500rpmで16時間攪拌した後、溶解したポリマー量をpH滴定で測定した値(単位;重量%)である。
【0025】
(d)「FSC」(ERT440.2−02)
「FSC」は、Free Swell Capacityの略称であり、自由膨潤倍率を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に吸水性樹脂0.20gを30分浸漬した後、遠心分離機で水切りを行わないで測定した吸水倍率(単位;[g/g])である。
【0026】
(e)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」とは、吸水性樹脂中に残存するモノマー量を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200cm
3に対して、吸水性樹脂1.0gを500rpmで1時間攪拌した後、溶解した残存モノマー量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定した値(単位;ppm)である。
【0027】
(f)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」とは、Particle Size Disributionの略称であり、ふるい分級により測定される粒度分布を意味する。なお、重量平均粒子径(D50)および粒子径分布幅は欧州公告特許第0349240号明細書7頁25〜43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。
【0028】
(g)その他、EDANAで規定される吸水性樹脂の物性(2002年規定)。
「pH」(ERT400.2−02) : 吸水性樹脂のpH。
「Moisture Content」(ERT430.2−02) : 吸水性樹脂の含水率。
「Flow Rate」(ERT450.2−02) : 吸水性樹脂の流下速度。
「Density」(ERT460.2−02) : 吸水性樹脂の嵩比重。
「Respirable Particles」(ERT480.2−02) : 吸水性樹脂の呼吸域粉塵。
「Dust」(ERT490.2−02) : 吸水性樹脂中に含まれる粉塵。
【0029】
(1−5)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上、Y以下」であることを意味する。また、重量の単位である「t(トン)」は、「Metric ton(メトリック トン)」であることを意味し、さらに、特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」または「質量ppm」を意味する。
【0030】
〔2〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法
(2−1)単量体水溶液調整工程
(a)単量体(架橋剤を除く)
本発明の単量体は、上記のアクリル酸またはその塩を主成分としており、吸水特性や残存モノマーの低減の点から重合体の酸基が中和されていることが好ましく、中和率は10〜100モル%、さらには30〜95モル%、特に50〜90モル%、60〜80モル%である。中和は重合後の重合体(含水ゲル)に行ってもよく、単量体に行ってもよいが、好ましくは、生産性やAAP向上の面等から、単量体を中和することが好ましい。従って、本発明で好ましい単量体は、アクリル酸の部分中和塩である。なお、本発明の「単量体」は、1種類の単量体および複数の単量体の混合物、あるいは単量体組成物のいずれをも意味する。
【0031】
また、本発明ではアクリル酸(塩)以外の親水性または疎水性不飽和単量体を使用しても良い。使用できる単量体としては、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレートやそれらの塩等である。
【0032】
重合前あるいは重合後のアクリル酸の中和に用いられる塩基性物質としては、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)カリウム等の炭酸(水素)塩等の一価塩基が好ましい。特に残存モノマー低減の点からアクリル酸アルカリ金属塩として中和され、中でも水酸化ナトリウムでの中和が特に好ましい。中和に用いる一価塩基(特に水酸化ナトリウム)は後述の範囲のFe量に制御されることが好ましい。
【0033】
(b)架橋剤(内部架橋剤)
本発明では、単量体として、吸水特性の観点から架橋剤(別称;内部架橋剤)を使用することが特に好ましい。架橋剤は物性面から、架橋剤を除く上記単量体に対して0.001〜5モル%、好ましくは0.005〜2モル%、さらには0.01〜1モル%、特に0.03〜0.5モル%で使用される。
【0034】
使用できる架橋剤としては、例えば、アクリル酸と重合し得る重合性架橋剤、カルボキシル基と反応し得る反応性架橋剤や、それらを併せ持った架橋剤の1種以上が例示できる。具体的には、重合性架橋剤として、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アリロキシアルカン等の分子内に重合性2重結合を少なくとも2個有する化合物が例示できる。また、反応性架橋剤として、ポリグリシジルエーテル(エチレングリコールジグリシジルエーテル等)、多価アルコール(プロパンジオール、グリセリン、ソルビトール等)等の共有結合性架橋剤、アルミニウム等多価金属化合物であるイオン結合性架橋剤が例示できる。これらの架橋剤の中では、吸水特性の面から、アクリル酸との重合性架橋剤、特に、アクリレート系、アリル系、アクリルアミド系の重合性架橋剤が好適に使用される。
【0035】
(c)酢酸およびプロピオン酸
本発明では、酢酸およびプロピオン酸の合計含有量が600ppm以上のアクリル酸を使用することを特徴とする。ここで、購入先や購入時期、アクリル酸メーカーやその製造方法などが異なる複数のアクリル酸を用いてもよく、その場合、混合後のアクリル酸としての酢酸およびプロピオン酸の合計量で規定される。
【0036】
酢酸およびプロピオン酸の合計含有量が600ppm未満のアクリル酸は精製が困難でコスト面や供給面での問題を抱えるのみならず、本発明では重合時の所定量以上の酢酸およびプロピオン酸の存在は得られる吸水性樹脂の吸水倍率(CRC)を向上させることを見いだした。
【0037】
本願では単量体の主成分として使用するアクリル酸が一定量以上の酢酸およびプロピオン酸を存在させることを特徴とする。プロピオン酸および酢酸の合計含有量は必須に600ppm以上である。その合計含有量は700ppm以上が好ましく、800ppm以上がより好ましく、1000ppm以上がさらに好ましく、2000ppm以上が特に好ましい。上限は通常5重量%以下とするのが好ましく、2重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましく、0.5重量%以下が特に好ましい。プロピオン酸および酢酸の含有量が少ない場合、アクリル酸のコストや入手面の問題があるのみならず、吸水倍率の向上の効果がないか、あるいは非常に小さい。
【0038】
酢酸およびプロピオン酸の合計量が多い場合、残存プロピオン酸や酢酸による臭気(酸臭)の問題がある。また、酢酸およびプロピオン酸の除去を目的として、アクリル酸(特に非化石原料由来のアクリル酸)を過度に精製すると、収率低下やコストアップ等の問題を招くため、一定量以上(例えば、400ppm以上)のプロピオン酸を精製後のアクリル酸に残存させることが好ましい。臭気の原因物質であるプロピオン酸は、アクリル酸から除去するよりも、本発明では重合時に一定量存在させたうえで、重合後の吸水性樹脂から除去することが好ましい。よって、上下限は上記範囲で、吸水倍率の向上効果と酸臭やその他物性の兼ね合いで適宜決定されるが、例えば、600ppm〜1重量%、650ppm〜1重量%(さらには0.5重量%)、800ppm〜1重量%(さらには0.5重量%)で適宜決定される。
【0039】
なお、酢酸やプロピオン酸とはその塩を含む概念であり、中和されたアクリル酸塩系の単量体中では、酢酸やプロピオン酸も単量体とほぼ同等の中和率となっているが、本願では単量体中の未中和プロピオン酸およびその塩(特に一価塩)の総量をプロピオン酸量とする。なお、飽和脂肪族カルボン酸を所定量(ppm)含有するアクリル酸を中和して単量体を得る場合、通常、中和後の単量体(アクリル酸塩)でも飽和脂肪族カルボン酸の含有量(単量体中のppm)は中和前のアクリル酸と実質同じである。
【0040】
(d)従来の酢酸およびプロピオン酸の量
アクリル酸中に酢酸や酢酸やプロピオン酸がごく少量含まれることは周知であり、上記特許文献7(米国特許第6444744号)の実施例1〜4では酢酸100ppmやプロピオン酸100ppmのアクリル酸を製造したうえで、該アクリル酸で吸水性樹脂を製造している。
【0041】
また、アクリル酸中の酢酸およびプロピオン酸が吸水性樹脂の臭気(酸臭)の原因であることは上記特許文献4(米国特許出願公開第2005/0209411号)で知られており、該米国特許出願公開は酢酸およびプロピオン酸の合計量が400ppm以下で重合することで、臭気の少ない吸水性樹脂を提供する。該特許文献4の比較例では酢酸1200ppmおよびプロピオン酸300ppmでのニーダーでの水溶液重合を開示する。
【0042】
特許文献12では逆相懸濁重合で得られる吸水性樹脂の臭気低減のために、酢酸およびプロピオン酸の合計量が500ppm以下でアクリル酸ダイマーが1000ppm以下のアクリル酸を特定の重合および表面架橋する、吸水性樹脂の製造方法を開示する。該特許文献11の比較例1、3では酢酸500ppmおよびプロピオン酸500ppmのアクリル酸を開示する。
【0043】
米国特許第6710141号の実施例は酢酸2000ppm未満およびプロピオン酸600ppm未満のアクリル酸(量は記載なし)での吸水性樹脂のニーダーでの水溶液重合を開示する。また、日本国特許公開平8−34757号公報は、吸水性樹脂の臭気の原因となる酢酸について、酢酸を0.01重量%以下に低減するアクリル酸の精製法を開示する。
【0044】
本願では従来、臭気の問題で悪影響を及ぼすとされ、その増加が問題となっていた酢酸およびプロピオン酸について、特定の逆相懸濁重合および共沸脱水で飛躍的に低減でき、しかも、逆に、従来量(例;300ppm)を超える一定量以上のプロピオン酸が吸水性樹脂に存在することで、吸水性樹脂の吸水倍率の向上に有効であることを見いだし、本発明を完成した。
【0045】
また、本発明において、プロピオン酸(C
2H
5COOH)に比べて酢酸(CH
3COOH)では本発明の吸水倍率(CRC)の向上効果が小さいこと、あるいは殆どないことが見いだされた。さらにかかる酢酸の使用は効果の面だけでなく、プロピオン酸に比べて酢酸が低沸点であるため、さらなる臭気の問題も見いだされた。そして、本発明では特許文献19で同列に有害とされたプロピオン酸および酢酸において、所定量以上のプロピオン酸を使用することで吸水倍率を向上させ、さらには重合後の除去(特に乾燥、さらには共沸脱水による乾燥)や塩基性物質の添加で臭気を改善した。
【0046】
また、従来の問題(本発明の課題)として、アクリル酸から酢酸やプロピオン酸を得られる吸水性樹脂の臭気がなくまるまで十分に精製除去するには、従来、それらの沸点や融点や構造が近いため、蒸留や晶析での高度な一段さらには多段の精製は、アクリル酸のコストや収率を犠牲にするものであり、結果的に吸水性樹脂のコストにも影響するものであった。かかる問題は前記したように非化石原料由来のアクリル酸でより顕著であった。しかし、アクリル酸から酢酸やプロピオン酸の過度の精製を行わず、所定量のプロピオン酸をそのまま吸水性樹脂に使用し、重合後の除去(特に乾燥、さらには共沸脱水による乾燥)や塩基性物質の添加で本発明の方法では安価に吸水性樹脂を製造できる。よって、例え、本発明の吸水倍率向上効果が小さくても(あるいは(殆ど)なくても)、アクリル酸から酢酸やプロピオン酸の過度の精製を行わず、所定量のプロピオン酸を有するアクリル酸をそのまま吸水性樹脂に使用することで、吸水性樹脂のコスト削減も可能となる。
【0047】
(e)酢酸
本願では、臭気(酸臭)の問題から残存する酢酸およびプロピオン酸は吸水性樹脂では1重量%以下に低減させた方が好ましく、後述の加熱処理、特に加熱乾燥、さらには共沸脱水で揮発ないし除去させることが好ましい。臭気の観点から得られる吸水性樹脂中のプロピオン酸量、さらには酢酸およびプロピオン酸の合計量は、0.5重量%以下、さらには0.3重量%以下、0.1重量%以下にされる。かかる揮発工程の負荷低減のみならず、プロピオン酸(沸点141℃)に比べてより低沸点の酢酸(沸点118℃)は、臭気の観点から原料中でも少ないことが好ましく、よって、単量体は、プロピオン酸より少ない酢酸を含むか、またはND(検出不能)であることが好ましい。
【0048】
すなわち、従来のアクリル酸は上記(6)に記載の上記特許文献4(米国特許出願公開第2005/0209411号)(酢酸1200ppmおよびプロピオン酸300ppm)に限らず、アクリル酸はプロピオン酸に比べて、一般に酢酸を多く含むが、吸水倍率を向上させるためにプロピオン酸を使用する本願では、臭気の原因となる酢酸はプロピオン酸増量に伴ってあえて増やす必要はなく、よって、アクリル酸中の酢酸は、プロピオン酸より少ない量であるか、またはND(検出不能)であることが好ましい。
【0049】
単量体中あるいはアクリル酸中の酢酸の量は1000ppm以下あるいはプロピオン酸より少量であり、具体的には、酢酸量は0〜1000ppmが好ましく、800ppm以下がより好ましく、600ppm以下がさらに好ましい。また、プロピオン酸に対して1重量倍未満であることが好ましく、0.9〜0.01重量倍の範囲がより好ましく、0.8〜0.05重量倍の範囲がさらに好ましい。さらに酢酸の重量(ppm)とその比は同時に満たすことが好ましい。
【0050】
(f)アクリル酸ダイマー
本発明で使用するアクリル酸中に、アクリル酸ダイマーが含まれていてもよい。アクリル酸ダイマーを問題とする特許文献2、3とは異なり、特定の重合および乾燥を行うことによって、アクリル酸ダイマーの含有量が100ppm以上、さらには300ppm以上、600ppm以上、1000ppm以上となっても問題が生じない。かかるアクリル酸ダイマー量のアクリル酸を使用することで、精製後のアクリル酸からも経時的に増加するアクリル酸ダイマーを除去・再精製する必要もなく、安価に高収率で吸水性樹脂を製造できる。ただし、多量のアクリル酸ダイマーは吸水倍率(CRC)を低下させるおそれがある。よって、アクリル酸中のアクリル酸ダイマー含有量の上限は5重量%以下、さらには1重量%以下である。
【0051】
(g)重合禁止剤
重合時に好ましくは重合禁止剤を含む。重合禁止剤としては国際公開第2008/096713号に例示のN−オキシキシル化合物、マンガン化合物、置換フェノール化合物が挙げられ、好ましくは置換フェノール類、特にメトキシフェノール類が挙げられる。
【0052】
好ましく使用できるメトキシフェノール類としては、具体的には、o,m,p−メトキシフェノールや、それらにさらにメチル基、t−ブチル基、水酸基等の1個または2個以上の置換基を有するメトキシフェノール類が例示されるが、本発明において特に好ましくはp−メトキシフェノールである。メトキシフェノール類の含有量は、10〜200ppmであればよいが、好ましくは5〜160ppm、さらには10〜160ppm、より好ましくは10〜100ppm、さらに好ましくは10〜80ppm、最も好ましくは10〜70ppmである。
【0053】
p−メトキシフェノールの含有量が200ppmを越える場合、得られた吸水性樹脂の着色(黄ばみ/黄変)の問題が発生する。また、p−メトキシフェノールの含有量が10ppm未満の場合、特に5ppm未満の場合、すなわち、蒸留等の精製によって重合禁止剤であるp−メトキシフェノールを除去した場合、意図的に重合を開始させる前に重合が起きる危険があるのみならず、驚くべきことに、重合速度がかえって遅くなることもあり好ましくない。また、さらにp−メトキシフェノールの含有量が少ない場合、得られる吸水性樹脂の膨潤ゲルの耐光性が劣るで好ましくない。一般に吸水性樹脂の膨潤ゲルは光で劣化するが、p−メトキシフェノールの使用によって耐光性が向上することが見出された。
【0054】
(h)Fe量およびその他不純物
本願での単量体は好ましくは鉄を含む/ないし鉄がゼロである。鉄量(Fe)は単量体に対して2ppm以下、さらには1.5ppm以下、特に1.0pm以下、0.5ppm以下、さらには0.3ppm以下である。鉄が多いと重合率の低下によって残存モノマーが増加し、臭気の問題が発生するのみならず、得られる吸水性樹脂の着色や劣化の問題が発生するので好ましくない。なお、鉄は主に中和に用いる塩基、特に苛性ソーダ、炭酸(水素)ナトリウム中の微量成分として主に含有されるため、苛性ソーダ等の純度を制御することで制御できる。Feの下限は塩基(特に苛性ソーダ)の精製コストから0.001ppm、さらには0.01ppmで十分である。
【0055】
例えば、NaOH中にFeが5ppm含有される場合、75モル%中和アクリル酸ナトリウムには、「アクリル酸(分子量72)+NaOH(分子量40)×0.75=75モル%中和アクリル酸ナトリウム(分子量88.5)」より、5ppm×(40×0.75/88.5)=1.7ppmとなる。なお、塩基中や吸水性樹脂中の鉄量は、例えば、JIS K1200−6に記載のICP発光分光分析方法で定量でき、定量方法の参考文献として、国際公開第2008/090961号を参照することができる。
【0056】
また、アクリル酸中のプロトアネモニン、アリルアクリレート、アリルアルコール、アルデヒド分(特にフルフラール)、マレイン酸、安息香酸の不純物6種類のうち、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6種類の全てが各々0〜20ppmである。好ましくは各々が0〜10ppm、より好ましくは0〜5ppm、さらに好ましくは0〜3ppm、特に好ましくは0〜1ppmであり、ND(検出限界)が最も好ましい。また、これらプロトアネモニン、アリルアクリレート、アリルアルコール、アルデヒド分、マレイン酸、安息香酸の合計量(対アクリル酸重量)も100ppm以下が好ましく、0〜20ppm、さらには0〜10ppmであることがより好ましい。これら微量成分やプロピオン酸量の好適な制御方法として、下記の非化石原料由来のアクリル酸が使用される。
【0057】
上記不純物が多いと、吸水性樹脂の残存モノマーや可溶分が増加したり、着色が起ったりする。同様にアクリル酸中の水分量も残存モノマーの観点から20重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましく、0.2重量%以下であることが特に好ましい。すなわち、単量体の調製には、アクリル酸水溶液(例;市販の80重量%水溶液)よりもアクリル酸(水分0.2重量%以下)が好ましい。
【0058】
(i)アクリル酸の製法および非化石原料
本発明でアクリル酸の製造方法は特に問わず、例えば、原料としてプロピレンやプロパン等の化石原料を気相酸化してもよく、また、グリセリン等の非化石原料、特に天然物を酸化してもよい。かかる酸化はアクロレインを経由ないし単離してもよく、直接、アクリル酸を得てもよい。
【0059】
吸水性樹脂が紙オムツ等に大量に消費され使い捨てされる現状、原料はRenewableでSutainableなこと、すなわち、非化石原料から吸水性樹脂およびその原料を得ることが好ましい。非化石原料としては2−ヒドロキシプロピオン酸(別称;乳酸)、3−ヒドロキシプロピオン酸、グリセリン(好ましくは植物油脂の鹸化物、とくにバイオディーゼルからのグリセリン)が使用できる。ヒドロキシプロピオン酸はセルロースやグルコースから化学的酸化反応や発酵法によって得られる。一例として、かかる吸水性樹脂およびアクリル酸の製造方法としては、油脂から得られるグリセリンからアクリル酸を得て、吸水性樹脂を得ればよい。すなわち、RenewableでSutainableの点、および、プロピオン酸さらにはフェノールの制御の点から、好ましくは、アクリル酸が天然物由来の原料(非化石原料)から得られ、より好ましくはグリセリンないしヒドロキシプロピオン酸が原料である。
【0060】
従来、かかる非化石原料からのアクリル酸、特にヒドロキシプロピオン酸やグリセリンからのアクリル酸には酢酸やプロピオン酸が多く含まれることが見いだされ、かかる非化石原料のアクリル酸からの酢酸やプロピオン酸の精製除去はコストや収率を犠牲にするものであったが、しかし、非化石原料のアクリル酸から酢酸やプロピオン酸の過度の精製を行わず、所定量のプロピオン酸をそのまま吸水性樹脂に使用し、重合後の除去(特に乾燥、さらには共沸脱水による乾燥)や塩基性物質の添加を行う本発明の方法では、安価にRenewableでSutainableな吸水性樹脂を製造できる。
【0061】
かかる非化石原料からのアクリル酸は使用する全アクリル酸中で100モル%に限定されず、アクリル酸中で通常1モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上で使用される。また、後述の範囲で他のアクリル酸(化石原料由来あるいは他の非化石原料由来)を併用してもよい。
【0062】
(グリセリン)
非化石原料からかかるアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法は、例えば、国際公開第2006/092271号、同第2006/092272号、同第2006/136336号、同第2008/023039号、同第2008/023040号、同第2007/109128号等に例示されている。これら6件の特許文献はなんら本願吸水性樹脂の製造方法を示唆しない。
【0063】
また、非化石原料からアクリル酸の製造方法は、国際公開第2006/08024号、米国特許出願公開第2007/0129570号、国際公開第2007/119528号、同第2007/132926号等に例示されている。国際公開第2006/08024号はグリセリンからアクロレインを得る際にプロパナールが副生する事実を開示し、かかるプロパナールを含むアクロレインを酸化することで、本発明のプロピオン酸入りアクリル酸、特に非化石原料由来のアクリル酸を容易に得ることができる。
【0064】
(ヒドロキシプロピオン酸)
ヒドロキシプロピオン酸から脱水でアクリル酸を得る方法は、例えば、国際公開第2002/090312号、同第2003/08795号、同第2005/095320号、同第2007/106099号、米国特許出願公開第2007/219391号、国際公開第2008/1042958号等に例示されている。脱水される未中和ヒドロキシプロピオン酸は酸ないしその塩(特に一価塩、さらにはナトリウム塩やアンモニム塩)が使用され、その際、溶媒は使用してもよく未使用でもよい。得られたアクリル酸は晶析や蒸留等で精製すればよく、アクリル酸の晶析法は層状または分散型で連続または回分で行われ、例えば、国際公開第2008/023039号等に示されている。なお、ヒドロキシプロピオン酸アンモニム塩からの脱水にはアクリルアミドの副生に注意する必要がある。
【0065】
また、グリセリンから3−ヒドロキシプロピオン酸を得る方法は、例えば、米国特許第6852517号、特開2007−082476号、特開2005−102533号に示されている。グリセリンから2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)を得る方法は、例えば、特開平4−356436号に示されている。β−アラニンから3−ヒドロキシプロピオン酸を得る方法は、国際公開第2002/042418号、同第2007/042494号に示されている。
【0066】
(j)単量体の濃度
これら単量体は、通常水溶液で重合される。水溶液中の単量体濃度はアクリル酸塩の種類によって決定されるが、通常15〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは30〜45重量%である。また、単量体を水溶液で重合するときには、澱粉、ポリビニルアルコール等の高分子化合物、各種キレート剤、各種添加剤を0〜30重量%(対単量体)添加して、併用してもよい。
【0067】
(2−2)重合工程(架橋重合工程)
プロピオン酸および酢酸の除去には、特定の逆相懸濁重合に加えて、疎水性有機溶媒中での共沸脱水も好ましいことも見いだされた。好ましい除去方法として、逆相懸濁重合の乾燥に用いられる共沸脱水が適用できる。さらに、本発明は逆相懸濁重合にも好適に適用できる。すなわち、本発明では吸水性樹脂の製造方法において、前記水溶性不飽和単量体が所定量のプロピオン酸を含有し、かつ共沸脱水でプロピオン酸を除去することを特徴とする、吸水性樹脂の製造方法を提供し、その際の重合方法として逆相懸濁重合を採用する。
【0068】
疎水性有機溶媒は一般に沸点60〜140℃、さらには80〜120℃程度の低沸点疎水性溶媒が使用できるが、本発明ではかかる低沸点、特にプロピオン酸の沸点(141℃)未満の溶媒での重合ないし共沸脱水(加熱温度の上限は溶媒の沸点)でも、プロピオン酸を極めて効率的に除去できることを見いだした。また、第2乾燥もかかる温度範囲が好ましく、かかる温度範囲の乾燥によって、アクリル酸ダイマーの影響もなく、低残存モノマーの低臭気の問題もない。
【0069】
逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に重量平均粒子径0.1〜1mm程度の粒子状で懸濁させる重合法であり、重合と同時に製品粒径のゲル粒子が得られる利点があり、例えば、米国特許第4093776号、同第4367323号、同第4446261号、同第4683274号、同第5244735号等に記載されている。本発明では、単量体の水溶液中に必要により界面活性剤や保護コロイドから選ばれる分散剤を溶解あるいは分散して含有させてもよい。特に逆相懸濁重合を本発明に採用する場合、この分散剤を単量体水溶液中に含有させることによって、疎水性有機溶剤での単量体ないし重合体の粒子形状での分散がより均一に起こり、最終的に得られる吸水性樹脂の粒子径分布がより狭くなる。
【0070】
これらの界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル燐酸エステルやポリオキシエチレントリデシルエーテル燐酸エステル(いずれも第一工業製薬製:プライサーフ(登録商標))等の(ポリオキシエチレン)燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤や、高級アルコール硫酸エステル、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルポリオキシエチレンサルフェート塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン系界面活性剤等の中から一種又は二種以上を分割選択して用いることができ、これらは一括または分割して重合系に添加できる。さらに、高分子保護コロイドとしては、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、(無水)マレイン酸−エチレン共重合体、(無水)マレイン酸−ブタジエン共重合体等が例示できる。中でも脂肪酸エステル系の界面活性剤、さらには非イオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤、特に蔗糖脂肪酸ステルが好ましい。界面活性剤ないし分散剤の使用量は、一般に単量体に対して0.05〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0071】
本発明で逆相懸濁重合の媒体として使用される疎水性有機溶剤としては、単量体水溶液と混和せず二相を形成するものであれば特に制限なく、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の置換基を有してもよい脂環族炭化水素類;ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン等の置換基を有してもよい芳香族炭化水素水等があげられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用できる。特に好ましくはn−ヘキサン(沸点69℃)、n−ヘプタン(沸点98℃)、シクロヘキサン(沸点81℃)、メチルシクロヘキサン(沸点110℃)、トルエン(沸点81℃)またはキシレン(沸点139℃)であり、酢酸およびプロピオン酸の除去の観点から、好ましくは、炭素数6〜8の疎水性有機溶媒であり、特に、n−ヘプタンまたはシクロヘキサンが使用される。これら疎水性有機溶剤と単量体水溶液の重量比率は3:2〜4:1程度が好ましい。重合中あるいは重合後に別途、分散剤や疎水性有機溶剤を加えてもよい。
【0072】
これらの溶媒中に単量体を一括ないし分割で分散させ、単量体ないしその重合体の分散した溶媒を好ましくは40〜90℃の範囲、より好ましくは50〜80℃の範囲で加熱して、好ましくは0.5〜10時間の範囲、より好ましくは1〜5時間の範囲で重合すればよい。
【0073】
吸水速度と酢酸およびプロピオン酸の除去の観点から粒子径が細かいほど好ましく、分散時の重量平均粒子径は通常10〜800μmの範囲、物性面から好ましくは50〜700μmの範囲、さらに好ましくは100〜600μmの範囲であり、さらに、最終製品として、重量平均粒子径は200〜600μm、さらには300〜600μmの球状またはその造粒粒子(
図1を参照)であり、850μm以上および150μm以下の微粉末の含有量は少ないほど、具体的には各々10重量%以下、さらには5重量%以下が好ましい。これらは分散剤や溶媒の種類や量、攪拌動力、さらには重合時の造粒(2段重合による粒子の凝集等)等で適宜調整すればよい。
【0074】
本発明で逆相懸濁重合を行うことで、重合も温和に制御できる。また、逆相懸濁重合の大きな利点として、一般的な熱風乾燥に比べて、疎水性有機溶媒中での共沸脱水による低温での乾燥(加熱上限は溶媒の沸点)を用いることで、低温乾燥(低沸点有機溶媒中での乾燥)にもかかわらず、重合後の酢酸やプロピオン酸の除去が容易である。また、プロピオン酸除去の観点から重合の際に水溶液重合を用いる場合も上記共沸脱水を用いることも好ましく、その場合、必要により上記界面活性剤や分散剤を使用することで水溶液重合後の含水ゲル状重合体を上記疎水性有機溶媒中に分散させたのち、疎水性有機溶媒中で共沸脱水すればよい。乾燥後の固形分は上記の範囲であり、共沸脱水後の吸水性樹脂は疎水性溶媒からろ過され、必要により疎水性溶媒などをさらに乾燥すればよい。また、プロピオン酸や界面活性剤などを含む疎水性有機溶媒は蒸留リサイクルすればよい。また、表面架橋は任意であるが、疎水性溶媒中で分散系で行ってもよく、ろ過後の粉体系で行ってもよい。疎水性有機溶媒を蒸留しリサイクルしない場合、酢酸およびプロピオン酸の除去率が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0075】
なお、酢酸およびプロピオン酸の除去率は、単量体水溶液中の固形分量に対する酢酸およびプロピオン酸の合計含有量をa[ppm]、本発明で得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂中の酢酸およびプロピオン酸の合計含有量をb[ppm]とした場合に、次式で求められる。
【0077】
本発明で使用される重合開始剤としては、重合の形態によって適宜選択される。このような重合開始剤としては例えば、光分解型重合開始剤や熱分解型重合開始剤、レドックス系重合開始剤等を例示できるが、本発明では過硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニム)が少なくとも重合開始剤に使用されることが好ましい。重合開始剤の量は前記モノマーに対し、0.0001〜1モル%、好ましくは0.001〜0.5モル%の範囲で使用される。
【0078】
これら逆相懸濁重合では、効果や吸水速度の面で、重合工程が単量体を他段階に添加する逆相懸濁重合であることが好ましい。かかる多段重合(2段重合)では例えば
図1に示す、球状の造粒粒子を得ることができる。
【0079】
(2−3)乾燥工程(脱溶媒工程)
単量体水溶液として15〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは30〜45重量%を用いて上記逆相懸濁重合して得られた含水ゲル状重合体は重合前とほぼ同じか若干上昇した固形分(+5〜10重量%)であり、さらに、乾燥される。乾燥工程では必須に該共沸脱水され、かかる共沸脱水を経て効率的に酢酸およびプロピオン酸が除去される。共沸脱水は固形分60〜95重量%、さらには75〜93重量%まで行われ、さらに、共沸脱水後に疎水性有機溶媒を除去する第2の乾燥が行われる。
【0080】
第2の乾燥方法としては、連続式またはバッチ式の方法であって、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の方法の1種または2種以上を採用することができる。好適な乾燥装置は特開2004−269593号等に例示のスクリュー型の乾燥機が好ましく用いられる。
【0081】
乾燥温度は吸水性樹脂の乾燥温度、特に材料温度で60〜140℃、さらには80〜120℃程度であり、本発明ではかかる低沸点、特にプロピオン酸の沸点(141℃)未満の溶媒での重合ないし共沸脱水(加熱温度の上限は溶媒の沸点)でも、プロピオン酸を極めて効率的に除去できることを見いだした。また、第2乾燥もかかる温度範囲が好ましく、かかる温度範囲の乾燥によって、アクリル酸ダイマーの影響もなく、低残存モノマーの低臭気の問題もない。
【0082】
本発明では表面架橋後、第2乾燥で共沸脱水後の攪拌または流動乾燥によって、最終的な含水率(180℃で3時間の乾燥減量で規定)を5〜15重量%、さらには6〜14重量%、特に7〜13重量%とするポリアクリル酸系吸水性樹脂の製造方法である。最終製品としてかかる所定含水率とすることで、臭気や残存モノマーの問題も低減され、さらに耐衝撃性も向上する。乾燥後の含水率が5重量%未満では酢酸やプロピオン酸が揮発しやく、また、アクリル酸の分解による残存モノマーや酸臭の問題もある。含水率が高すぎると、吸水性樹脂の粘着性の問題もあり、また、残存モノマーや残存する酢酸やプロピオン低減効果か不十分である。
【0083】
(2−4)表面架橋工程
表面架橋は上記乾燥工程の終了後あるいはその途中(好ましくは含水率60〜95重量%、さらには75〜93重量%)の時点で行われる。表面架橋は上記重合や乾燥に用いた重合釜や乾燥釜中の吸水性樹脂の疎水性溶媒分散体(分散状態の吸水性樹脂)に表面架橋剤を添加してもよく、また、重合釜や乾燥釜から溶媒をろ過ないし蒸発させた吸水性樹脂の粉末(非分散状態の吸水性樹脂)に適用してもよいが、工程や装置の簡便さから好ましくは疎水性溶媒分散体(分散状態の吸水性樹脂)に表面架橋剤が添加され、該溶媒中で加熱されて表面架橋される。
【0084】
好ましくは、表面架橋剤として、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、(モノ、ジ、またはポリ)オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物が挙げられ、好ましくは多価グリシジル化合物、特に(ポリ)エチグリコールジグリシジルエーテルが使用される。
【0085】
また、上記有機表面架橋剤以外に無機表面架橋剤を使用して通液性等を向上させてもよい。使用される無機表面架橋剤は2価以上、好ましくは3価ないし4価の多価金属の塩(有機塩ないし無機塩)ないし水酸化物が例示できる。使用できる多価金属としてはアルミニウム、ジルコニウム等が挙げられ、その塩としては乳酸アルミニムや硫酸アルミニムが挙げられる。これら無機表面架橋剤は有機表面架橋剤と同時または別途に使用される。
【0086】
表面架橋剤の使用量は吸水性樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部程度の範囲内で適宜決定される。表面架橋剤に合わせて好ましくは水が使用され得る。使用される水の量は吸水性樹脂100重量部に対して、0.5〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。無機表面架橋と有機表面架橋剤を併用する場合も各々0.001〜10重量部、0.01〜5重量部で併用される。
【0087】
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は好ましくは加熱処理され、必要によりその後の冷却処理される。加熱温度は上記の共沸温度ないし疎水性有機溶媒の沸点以下の範囲であり、加熱温度は60〜140℃、さらには80〜120℃程度であり、本発明ではかかる低沸点、特にプロピオン酸の沸点(141℃)未満の溶媒での重合ないし共沸脱水(加熱温度の上限は溶媒の沸点)でも、酢酸やプロピオン酸を極めて効率的に除去できることを見いだした。
【0088】
(2−5)粉砕ないし分級工程(乾燥後の粒度調整)
粒度は重合(特に逆相懸濁重合)、粉砕、分級、造粒、微粉回収などで適宜調整できる。以下、粒度は標準篩(JIS Z8801−1(2000))で規定される粒度とする。
【0089】
さらに、澱粉、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂ないし吸水性樹脂を例えば0〜50重量%、好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜10重量%、最も好ましくは0〜3重量%加えてもよい。各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤や後述の添加剤等を、例えば、0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%添加して、本発明のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の諸物性を改善してもよい。
【0090】
キレート剤、乳酸等のヒドロキシカルボン酸、還元性無機塩が、吸水性樹脂の重量に対して、好ましくは10〜5000ppm、より好ましくは10〜1000ppm、さらに好ましくは50〜1000ppm、特に好ましくは100〜1000ppm含まれていてもよい。好ましくはキレート剤が必須に使用される。
【0091】
(2−6)添加工程
(a)キレート剤(好ましくは水溶性有機キレート剤)
本発明のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、例えば、さらに色安定性(ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を、高温高湿条件下で、長期間保存する場合の色安定性)の向上や耐尿性(ゲル劣化防止)の向上を目的とする場合は、好ましくは上記使用量のキレート剤が用いられる。
【0092】
特に、酢酸およびプロピオン酸が600ppm以上、さらには前記の範囲の多いアクリル酸を使用する場合、ゲル劣化がおこりやすい傾向にあることも見いだされ、よって、好ましくは、水溶性有機キレート剤が使用される。
【0093】
効果の面から好ましくは、キレート剤が水溶性有機キレート剤であり、さらに、好ましくは、窒素原子または燐原子を有する非高分子化合物有機キレート剤であり、より好ましくは、アミノ多価カルボン酸系キレート剤またはアミノ多価燐酸系キレート剤である。重合への影響や得られる物性から、重量平均分子量が5000以下の非高分子系有機化合物が好ましく、より好ましくは分子量100〜1000である。
【0094】
前記の中でも窒素原子または燐原子を有する化合物が好ましい。中でも、カルボキシル基を分子内に2個さらには3個以上、好ましくは3〜100個、さらには3〜20個、特に3〜10個を有する、アミノ多価カルボン酸(塩)またはリン酸基を有する有機リン酸(塩)化合物が好ましい。特に、有機多価リン酸化合物やアミノ基を有するアミノ多価リン酸化合物が好ましい。
【0095】
2個以上のカルボキシル基を有するアミノ多価カルボン酸(塩)としては、イミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸およびこれらの塩等のアミノカルボン酸系金属キレート剤が例示される。
【0096】
分子内に3個以上のリン酸基を有する有機多価リン酸化合物またはアミノ多価リン酸化合物としては、エチレンジアミン−N,N’−ジ(メチレンホスフィン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスフィン酸)、ポリメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、およびこれらの塩である。
【0097】
(b)還元性無機塩
さらには、色安定性効果や耐尿性のために、米国特許出願公開第2006/88115号に例示の還元性無機塩を上記使用量で使用してもよい。
【0098】
特に、酢酸およびプロピオン酸が600ppm以上、さらには前記の範囲の多いアクリル酸を使用する場合、ゲル劣化がおこりやすい傾向にあることも見いだされ、よって、好ましくは、還元性無機塩が使用される。好ましい無機還元剤は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩からなる。
【0099】
〔3〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とその性状
吸水性樹脂の形状は通液性の観点から、また、酢酸およびプロピオン酸の除去の観点からも、球状またはその造粒物好ましく、かかる吸水性樹脂は例えば蔗糖脂肪酸エステルを界面活性剤して上記逆相懸濁で得られる。造粒には水不溶性無機微粒子(好ましくはシリカ微粒子、例えば、アエロジル200商品名)を逆相懸濁重合中の含水ゲル状架橋重合体に添加したり、単量体水溶液を逐次的に疎水性有機溶媒中に添加する逆相懸濁重合で得られる。好ましい形態は
図1にも示す、球状の造粒粒子である。なお、添付の
図1は球状の造粒粒子である吸水性樹脂の電子顕微鏡写真である。
【0100】
アクリル酸の原料として天然物(特に非化石原料)を使用する場合、米国特許出願公開第2007/219521号に準じて、非化石原料の比率は、得られるポリアクリル酸の14C(放射性炭素)/C(炭素)で特定できる。従来の化石原料(特に石油、さらにプロピレン)から得られるアクリル酸(塩)系吸水性樹脂では14C/Cが1.0×10
−14未満であるのに対して、本発明の吸水性樹脂は14C/Cが好ましくは1.0×10
−14以上、さらに好ましくは1.0×10
−13以上、特に好ましくは1.0×10
−12である。ほぼ100重量%が非化石原料の場合、上限は1.2×10
−12である。14C/Cはアイソトープ・マススペクトロフィー等で測定でき、例えば、米国特許第3885155号、同第4427884号、同第5438194号、同第5661299号に示される。
【0101】
またアクリル酸を用いる場合、最適なコストや酢酸プロピオン酸の比率とするため、非化石原料由来のアクリル酸と化石原料由来のアクリル酸を併用する好ましく、併用する場合、化石原料と非化石原料の比率は14C量でも定量でき、14C(放射性炭素)/C(炭素)の比率でのSustinable率(非化石原料率)は1〜99%が好ましく、10〜90%がより好ましく、20〜80%がさらに好ましく、30〜70%が特に好ましい。この場合、例えば、アクリル酸の一方(例;非化石原料由来)が酢酸およびプロピオン酸の合計量600ppm以上であり、もう一方(例;化石原料由来)が600ppm未満であることも好ましい。
【0102】
すなわち、本発明では、アクリル酸として非化石原料と化石原料を併用するポリアクリル酸系吸水性樹脂を提供する。併用比率は上記14Cの含有量で特定でき、好ましい範囲は上記である。異なる2種類のアクリル酸の使用比率は、両アクリル酸の価格(原料コスト)、供給量、微量成分(プロピオン酸やそれ以外の微量成分)などで適宜決定され、特に、アクリル酸として化石原料および非化石原料の複数の原料ソースを使用することで吸水性樹脂の原料コストをヘッジできる。かかる新規な吸水性樹脂はコストや原料ソースの安定性に優れ、かつプロピオン酸などの微量成分を最適比で含むことが容易なため、物性も安定し、高物性で安価な吸水性樹脂として広く使用できる。アクリル酸の非化石原料としてヒドロキシプロピオン酸やグリセリンであり、化石原料として石油や石炭が使用される。
【0103】
〔4〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の物性
衛生材料、特に紙オムツを目的とする場合、上記重合や表面架橋によって、下記(4−1)〜(4−10)の少なくとも1つ、さらにはAAPを含め2つ以上、特に3つ以上を制御することが好ましい。下記を満たさない場合、後述の高濃度オムツでは十分な性能を発揮しないことがある。なお、好適な粒度や14C割合(非化石原料の割合)は前記のとおりである。
【0104】
(4−1)初期色調
かかる吸水性樹脂は初期着色に優れ、例えば、ハンターLab表面色系において、L値(Lightness)が好ましくは85以上、より好ましくは87以上、さらに好ましくは89以上である。b値は−5から10が好ましく、より好ましくは−5〜5、さらに好ましくは−4〜4であり、また、a値は−2〜2が好ましく、より好ましくは−1〜1、さらに好ましくは−0.5〜1、最も好ましくは0〜1である。YIは10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。WBは70以上が好ましく、75以上がより好ましく、77以上が更に好ましい。さらに、かかる吸水性樹脂は経時着色にも優れ、長期保存の促進試験(モデル)である高温高湿でも十分な白色度を示す。
【0105】
(4−2)加圧下吸水倍率(AAP)
紙オムツでのモレを防止するため、上記重合を達成手段の一例として、1.9kPaの加圧下さらには4.8kPaの加圧下での0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液に対する吸水倍率(AAP)が好ましくは20[g/g]以上、よりに好ましくは22[g/g]以上、さらに好ましくは24[g/g]以上に制御する。上限は他の物性とのバランスから40[g/g]程度である。
【0106】
(4−3)通液性(SFC)
紙オムツでのモレを防止するため、上記重合を達成手段の一例として、加圧下での通液特性である0.69重量%塩化ナトリウム水溶液流れ誘導性SFCは1[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上、好ましくは10[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上、より好ましくは50[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上、さらに好ましくは70[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上、特に好ましくは100[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上に制御する。
【0107】
(4−4)無加圧下吸収倍率(CRC)
無加圧下吸収倍率(CRC)は好ましくは10[g/g]以上であり、より好ましくは20[g/g]以上、さらに好ましくは25[g/g]以上、特に好ましくは30[g/g]以上に制御する。CRCは高いほど好ましく上限値は特に限定されないが、他の物性とのバランスから、好ましくは50[g/g]以下、より好ましくは45[g/g]以下、さらに好ましくは40[g/g]以下である。
【0108】
(4−5)水可溶分量(可溶分)
水可溶分量は、好ましくは0〜35重量%以下、より好ましくは25重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。また、劣化可溶分も上記の範囲であることが好ましく、そのためには、金属キレートおよび/または還元性無機塩が含有されることが好ましい。
【0109】
(4−6)残存モノマー
上記重合を達成手段の一例として、残存モノマー(残存単量体)量は通常500ppm以下、好ましくは0〜400ppm、より好ましくは0〜300ppm、特に好ましくは0〜200ppm、0〜100ppmとする。
【0110】
(4−7)含水率
吸水速度や耐衝撃性からも含水率(180℃で3時間の乾燥減量で規定)を5〜15重量%、さらには6〜14重量%、特に7〜13重量%とする。
【0111】
(4−8)酢酸およびプロピン酸量
600ppm以下、さらには300ppm以下とされる。
【0112】
(4−9)Fe量
劣化および着色の観点から上記範囲である。
【0113】
(4−10)粒度および形状
最終製品として重量平均粒子径は200〜600μm、さらには300〜600μmの球状またはその造粒粒子(
図1を参照)であり、850μm以上および150μm以下の微粉末の含有量は少ないほど、具体的には各々10質量%以下、さらには5質量%以下が好ましい。
【0114】
〔5〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の用途
本発明の吸水性樹脂の用途は特に限定されないが、好ましくは、紙オムツ、生理ナプキン、失禁パット等の吸収性物品に使用され得る。特に、従来、原料由来の臭気、着色等が問題になっていた高濃度オムツ(1枚のオムツに多量の吸水性樹脂を使用したもの)に使用され、特に前記吸収性物品中の吸収体上層部に使用された場合に、特に優れた性能が発揮される。
【0115】
〔実施例〕
[測定例1]初期色調
日本電色工業株式会社製の分光式色差計SZ−Σ80COLOR MEASURING SYSTEMを用いて行った。測定の設定条件は、反射測定が選択され、内径30mmで且つ高さ12mmである付属の粉末・ペースト用容器が用いられ、標準として粉末・ペースト用標準丸白板No.2が用いられ、30Φ投光パイプが用いられた。備え付けの粉末・ペースト用容器に約5gの吸水性樹脂を充填した。
【0116】
[測定例2]経時着色
吸水性樹脂を高温高湿下(70℃、75%RH)に10日間放置したのち、上記(a)の手法で色を測定した。
【0117】
[測定例3]その他物性
上記EDANAのERT、ないし、米国特許出願公開第2006/204755号に準じて、0.9重量%生理食塩水でのCRC(無加圧下吸水倍率)、pH可溶分、残存アクリル酸,SFC(生理食塩水流れ誘導性)を測定した。
【0118】
[測定例4]臭気
ゲル臭気は容量100mlの蓋つき円筒容器(商品名パックエース)に50gの0.9重量%生理食塩水を入れ、吸水性樹脂2gで膨潤ゲル化後に蓋をした。所定時間放置後、蓋を開けてゲルの臭いを10人のパネラーが嗅いで5段階(数字が小さいほど良好;1は無臭、2はほぼ無臭・・・5は強い悪臭)で評価し、その平均点で臭いとした。
【0119】
[測定例5]ゲル劣化(劣化可溶分)
国際公開第2005/092956号に従い、尿中のゲル劣化成分であるL−アスコルビン酸の存在下で吸水性樹脂の可溶分を測定した。
【0120】
[測定例6]耐光性
吸水性樹脂の飽和膨潤ゲルをマヨネーズに入れて蓋をして、姫路市にて太陽光下に放置してゲルの劣化を観察した。
【0121】
[測定例7]含水率
吸水性樹脂1gを直径・約30mmのアルミカップに入れて、180℃の無風オーブン中で3時間乾燥し、その乾燥減量を含水率[重量%]とした。
【0122】
[製造例1]
国際公開第2006/087084号に準じて、非化石原料由来のアクリル酸を得た。すなわち、天然油脂由来のグリセリンを強酸固体触媒下で脱水反応させ、プロパナール等の副生物を含有するアクロレインを得、次いで、該アクロレインを接触気相酸化することでガス状のアクリル酸とし、さらに水で捕集してアクリル酸水溶液にし、これを蒸留することで、不純物としてプロピオン酸3重量%を含む非化石原料由来のアクリル酸を得た。
【0123】
[製造例2]
上記製造例1で得られたアクリル酸について、さらに蒸留操作を2回行ったものの、アクリル酸と沸点が近いプロピオン酸含有量は、ほとんど変化しなかった。
【0124】
[製造例3]
上記製造例1で得られたアクリル酸について、晶析法で精製することで、不純物としてプロピオン酸1.2重量%を含む非化石原料由来のアクリル酸を得た。
【0125】
[製造例4]
上記特許文献12(米国特許出願公開第2009/0035855号)の製造例1に準じて、アクリル酸を得た。
【0126】
すなわち、不純物として、アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、およびプロピオン酸500ppmを含有する市販のアクリル酸を、50段の無堰多孔板を有する高沸不純物分離塔の塔底に供給し、還流比1で蒸留した。該分離塔において、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の高沸点不純物を除去した後、さらに晶析を行うことで、アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、およびプロピオン酸50ppmを含有するアクリル酸を得た。
【0127】
[製造例5]
上記特許文献12(米国特許出願公開第2009/0035855号)の製造例2に準じて、アクリル酸を得た。
【0128】
すなわち、不純物として、アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、およびプロピオン酸500ppmを含有する市販のアクリル酸を、20段の無堰多孔板を有する高沸不純物分離塔の塔底に供給し、還流比1で蒸留した。該分離塔において、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の高沸点不純物を除去した後、さらに晶析を行うことで、アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸500ppm、およびプロピオン酸500ppmを含有するアクリル酸を得た。
【0129】
[実施例1]
Feイオンを0.34ppm含有する48重量%苛性ソーダおよび純水を、上記製造例3で得られた非化石原料由来のアクリル酸(プロピオン酸1.2重量%、酢酸500pm、p−メトキシフェノール60ppm含有)に加えて中和した。
【0130】
得られた単量体濃度35重量%、中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム水溶液に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.05モル%(対単量体量)、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロースHEC EP850(ダイセル化学工業)2.0重量%(対単量体量)、および、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.12g/モル(対単量体量)を溶解させ、窒素置換した。該アクリル酸ナトリウム水溶液は固形分に対してFeが0.24ppm、プロピオン酸が1.0重量%、酢酸が410ppm、p−メトキシフェノールが50ppm含有していた。該単量体水溶液を、滴下ロートを通じて、ショ糖脂肪酸エステルF−50(第一工業製薬)2.8重量%含むシクロヘキサン200gが入っている攪拌羽根を供えた窒素置換後の4口フラスコに滴下して、約1mm〜0.1mmの液滴としてシクロヘキサンに分散させた。バス温60℃にすることで、40分間の重合を行い、次いでバス温度を85〜92℃として固形分75%まで共沸脱水を90分行い、さらに、表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.01重量%(対単量体水溶液の固形分量)を添加して、ろ過後にさらに100℃で乾燥して、含水率10重量%まで乾燥して球状の吸水性樹脂(1)を得た。
【0131】
吸水倍率(CRC)31[g/g]、水可溶分4重量%で、吸水性樹脂中のプロピオン酸は0.25重量%、酢酸は250ppm(酢酸とプロピオン酸の除去率は75%)であった。表1に結果を示す。
【0132】
[比較例1]
実施例1において、同じ単量体を用いて重合方法を逆相懸濁重合から水溶液重合(非沸騰重合、重合開始温度30℃、ピーク温度90℃)、乾燥方法を共沸脱水(シロクヘキサンの沸点81℃で還流)から熱風乾燥(170℃×20分)に変更した。
【0133】
すなわち、内部架橋剤ポリエチレングリコールジアクリレート0.05モル%(対単量体量)を含む、濃度35重量%で中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム水溶液(Feが0.24ppm対単量体固形分量)からなるアクリル酸系単量体(1)80gについて、内容積500mlの円筒容器に入れ、窒素置換後に、過硫酸ナトリウム0.12[g/mol]、および、Lアルコルビン酸0.005[g/mol]を用いて静置水溶液重合後に、得られたブロック状含水ゲル状重合体をミートチョッパーで細分化して、得られた比較含水ゲル(1)を170℃で20分熱風乾燥した。なお、該アクリル酸ナトリウム水溶液は固形分に対してFeを0.24ppm、プロピオン酸を1.0重量%、酢酸を410ppm含有していた。得られた比較吸水性樹脂粉末(1)について、表1に結果を示す。
【0134】
[比較例2]
実施例1において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、単量体濃度を35重量%から45重量%に変更し、さらに、重合方法を逆相懸濁重合から水溶液重合(沸騰水溶液重合、重合開始温度90℃、ピーク温度120℃)、乾燥方法を共沸脱水(シロクヘキサンの沸点81℃で還流)から熱風乾燥(170℃×20分)に変更した。
【0135】
すなわち、プロピオン酸1.0重量%を含むアクリル酸を使用して、濃度45重量%、中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム水溶液(3−ヒドロキシプロピオン酸は100ppm)に、内部架橋剤ポリエチレングリコールジアクリレート(0.06モル%)、キレート剤としてジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム塩を50ppm溶解させたのち、95℃に加温し、水溶性アゾ系開始剤V−50(和光純薬工業社製)を0.02[g/モル](対単量体)、過硫酸ナトリウム0.12[g/モル](対単量体)を添加して重合を行った。なお、該アクリル酸ナトリウム水溶液は固形分に対してFeを0.24ppm、プロピオン酸を1.0重量%、酢酸を410ppm含有していた。重合後のゲルをミートチョッパーで細分化して、得られた比較含水ゲル状架橋重合体(2)をさらに170℃で20分加熱乾燥することで、比較吸水性樹脂粉末を得た。結果を表1に示す。
【0136】
[比較例3]
比較例2(170℃×20分の熱風乾燥)において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、比較含水ゲル状架橋重合体(2)の乾燥温度をあげて、乾燥を熱風乾燥(200℃×20分)に変更した。結果を表1に示す。
【0137】
[比較例4]
比較例3(200℃×20分の熱風乾燥)において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、比較含水ゲル状架橋重合体(2)の乾燥時間を長くして、乾燥を熱風乾燥(200℃×40分)に変更した。結果を表1に示す。
【0138】
[比較例5]
比較例2(170℃×20分の熱風乾燥)において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、比較含水ゲル状架橋重合体(2)の乾燥温度を高くして、乾燥を熱風乾燥(180℃×20分)に変更した。結果を表1に示す。
【0139】
[比較例6]
比較例5(180℃×20分の熱風乾燥)において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、比較含水ゲル状架橋重合体(2)の乾燥時間を長くして、乾燥を熱風乾燥(180℃×180分)に変更した。結果を表1に示す。
【0140】
[比較例7]
比較例2(170℃×20分の熱風乾燥)において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、比較含水ゲル状架橋重合体(2)をまず熟成(140℃×60分)して、さらに、比較例2と同様に170℃×20分の熱風乾燥を行った。結果を表1に示す。
【0141】
[比較例8]
比較例2(中和率70%、濃度45%の沸騰水溶液重合)において、単量体の中和率を80モル%に変更する以外は同様に、沸騰水溶液重合および熱風乾燥(170℃×20分)を行った。結果を表1に示す。
【0142】
[比較例9]
比較例2(中和率70%、濃度45%の沸騰水溶液重合)において、単量体の中和率を50モル%に変更する以外は同様に、沸騰水溶液重合および熱風乾燥(170℃×20分)を行った。結果を表1に示す。
【0144】
(まとめ)
実施例1での特定の逆相懸濁重合、共沸脱水(シクロヘキサンの沸点81℃)および第2乾燥では、酢酸(沸点118℃)およびプロピオン酸(沸点143℃)がその沸点以下の重合温度および乾燥温度でも75%除去できて酸臭がしない。それに対して、比較例1〜7では乾燥温度、重合温度率などを種々変更した水溶性重合および熱風乾燥(140〜200℃)では、酢酸およびプロピオン酸が40%程度にすぎず、吸水性樹脂に酸臭が残る。比較例8,9でも中和率を変更するが、いずれも除去率は実施例に遥かに及ばず、酸臭が残存する。
【0145】
[比較例10]
実施例1において、アクリル酸の調整方法5で得られたアクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を使用した。収率やコストを犠牲にしてアクリル酸を精製しても、特定の逆相懸濁重合および共沸脱水、さらには第2乾燥を行うことで、酸臭の点で実施例1と変わりなく、コスト的に不利である。
【0146】
さらに、予想できぬことに、実施例1の吸水性樹脂(CRC=31[g/g]と比較して、吸水倍率が0.5[g/g]低下した。従来、酸臭で悪影響を及ぼすとされた酢酸およびプロピオン酸は吸水性樹脂の吸水倍率(CRC)を向上させることが判明した。
【0147】
[比較例11]
実施例1において、純度の異なる48重量%苛性ソーダ(Feが3.4ppm)を用いて単量体(Feが対単量体固形分で2.35ppm)を調整して、実施例1と同様に重合を行った。得られた比較吸水性樹脂は着色および劣化安定性で実施例1より劣っていた。
【0148】
[比較例12]
実施例1において、単量体水溶液中のp−メトキシフェノールを単量体水溶液の固形分に対し300ppmとする以外は同様に重合を行った。得られた比較吸水性樹脂は着色で実施例1より劣っていた。
【0149】
[比較例13]
実施例1において、単量体水溶液中のp−メトキシフェノールを0ppmとする以外は同様に操作したが、重合の安定性に劣っていた。さらに、得られた比較吸水性樹脂は実施例1で得られた吸水性樹脂(p−メトキシフェノールが50ppm)と比較して、p−メトキシフェノールが0ppmではゲル劣化(流動化)が早く、耐光性も劣っていた。
【0150】
[比較例14]
実施例1において、共沸脱水後にろ過した吸水性樹脂について、180℃で60分乾燥することで、固形分を1%にした。得られた比較吸水性樹脂は残存モノマーが増加して、結果、酸臭でも劣っていた。実施例1の吸水性樹脂の残存モノマーが100ppmであったのに対して、固形分1%まで乾燥して得られた比較吸水性樹脂(6)は残存モノマーが1000ppm以上に増加して、結果、酸臭でも劣っていた。
【0151】
[実施例2]
実施例1において、単量体の中和率を80モル%とする以外は同様に逆相懸濁重合および共沸脱水を行った。得られた球状の吸水性樹脂(2)の性状を表2に示す。
【0152】
[実施例3]
実施例1において、単量体の中和率を50モル%とする以外は同様に逆相懸濁重合および共沸脱水を行った。得られた球状の吸水性樹脂(3)の性状を表2に示す。
【0153】
[実施例4]
実施例1で得られた吸水性樹脂に対して、さらにキレート剤(ジエチレントリアミンペンタ5酢酸)を100ppm添加した。ゲル劣化および経時着色は実施例1より向上し、まったく見られなかった。得られた球状の吸水性樹脂(4)の性状を表2に示す。
【0154】
[実施例5]
実施例1で得られた吸水性樹脂に対して、さらにキレート剤(ジエチレントリアミンペンタ5酢酸)を100ppm添加した。ゲル劣化および経時着色は実施例1より向上し、まったく見られなかった。得られた球状の吸水性樹脂(5)の性状を表2に示す。
【0155】
[参考例1]
上記特許文献11の比較例1において、特許文献11に開示のないFe量を0.24ppm、p−メトキシフェノールを60ppmとし、さらに、共沸脱水後の乾燥を減圧乾燥から熱風乾燥100℃で30分に変更することで、含水率8%とした。
【0156】
すなわち、攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK−エステルF−50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。別にフラスコ中に市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、市販のアクリル酸21.6g及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−ダイセルEP−850)0.4gを溶解させ、単量体濃度35重量%の単量体水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、含水ゲル状物から共沸脱水により水を系外に取り出した。
【0157】
脱水した含水ゲル状物に、表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル85.0mgを添加した後、浴温を80℃で2時間保持し、表面架橋を行った。その後、逆相懸濁(有機溶媒:シクロヘキサン)により造粒した後にろ過し、100℃で含水率8%まで熱風乾燥し、球状の吸水性樹脂(7)を得た。
【0158】
[参考例2]
上記実施例1のアクリル酸(酢酸およびプロピオン酸が1.2重量%)について、特許文献10(特開2004−210924号)の製造例1に準じた逆相懸濁重合および共沸脱水を行った。さらに、特許文献11に開示のない第2の乾燥として、熱風乾燥100℃で30分を行った。
【0159】
すなわち、攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコに、n−ヘプタン500mLを加えた。これに、界面活性剤としてHLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学(株)製、商品名:S−370〕0.92gを添加して分散させ、昇温して界面活性剤を溶解させた後、55℃まで冷却した。
【0160】
500mL容の三角フラスコに80重量%アクリル酸水溶液92gを加えた。外部から冷却しながら、この三角フラスコに30重量%水酸化ナトリウム水溶液102.2g(鉄含有量:0.2ppm)を滴下し、アクリル酸の75モル%を中和し、アクリル酸の部分中和物を調製した。さらに、水50.2g、重合開始剤の過硫酸カリウム0.11gおよび架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mgを添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
【0161】
この1段目重合用の単量体水溶液の全量を上記の五つ口円筒型丸底フラスコに撹拌下で加えて分散させ、系内を窒素ガスで十分に置換した後、昇温し、浴温を70℃に保持して、重合反応を1時間行った後、室温まで冷却して重合スラリー液を得た。
【0162】
さらに別の500mL容の三角フラスコに、80重量%アクリル酸水溶液119.1gを加え、冷却しながら30重量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(鉄含有量:0.2ppm)を滴下し、アクリル酸の75モル%を中和し、水27.4g、過硫酸カリウム0.14gおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル35.7mgを添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。
【0163】
この2段目重合用の単量体水溶液の全量を前記で得られた重合スラリー液に添加した後、再び系内を窒素ガスで十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、2段目の重合反応を2時間行った。重合反応終了後、n−ヘプタンに分散させた含水ゲル状物から共沸蒸留により水分のみを系外に除去した。得られたゲル状物に2重量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.44gを添加し、さらに水分およびn−ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、吸水性樹脂を得た。この吸水性樹脂中の鉄含有量は0.3ppmであった。さらに、特許文献11に開示のない第2の乾燥として、熱風乾燥100℃で30分を行い、含水率を6重量%とした。得られた球状の造粒粒子である吸水性樹脂(8)の性状を表2に示す。
【0164】
[実施例8]
実施例1において、アクリル酸中の酢酸およびプロピオン酸の合計量を2000ppmとする以外は同様に行った。得られた球状の吸水性樹脂(9)の性状を表2に示す。
【0165】
[実施例9]
実施例1において、アクリル酸を室温で7日間放置して、アクリル酸中のアクリル酸ダイマー量を2000ppm増加させる以外は同様に行った。得られた球状の吸水性樹脂(9)の残存モノマーは実施例1の吸水性樹脂と同じく100ppmであり、本発明の製造方法では、経時的に増加するアクリル酸ダイマー量の影響やクリル酸の保存時間の影響を受けないことが判る。
【0167】
(まとめ)
実施例1と比較例10との対比から、従来、酸臭で悪影響を及ぼすとされた酢酸およびプロピオン酸は吸水性樹脂の吸水倍率を向上させることが判明した。所定量の酢酸およびプロピオン酸を特定の重合および乾燥に用いることで、吸水倍率の吸水倍率も向上し、さらに、アクリル酸を過度に精製せずとも酸臭のない吸水性樹脂が得られる。また、実施例1および実施例9との対比、実施例1と比較例14の対比から、本発明の製造方法ではアクリル酸ダイマーの影響を受けず、過度のアクリル酸の精製を必要としない。
【0168】
非化石原料由来のアクリル酸に多く含まれる飽和有機酸、特にプロピオン酸について、原料アクリル酸の蒸留ではほとんど分離できないのに対して、特定の重合および乾燥、共沸脱水によって効率的に除去できる。除去には中和率は低いほど好ましい。