(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記細胞分散部は、せん断力が付与される細胞よりも少ない数の細胞に対して超音波振動を付与するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞分析装置。
前記検出部は、細胞を通過させるフローセルと、前記フローセルを通過する細胞に光を照射する光源部と、前記光源部が細胞に光を照射することによって生じる光を受光する受光部と、を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞分析装置。
細胞を含む試料に対して、試料中の凝集した細胞をせん断力により分散させる第1分散処理と、試料中の凝集した細胞を超音波により分散させる第2分散処理とを実行可能な細胞分散部と、
前記第1分散処理および前記第2分散処理により分散された細胞を含む試料に染色液を添加する染色液添加部と、
前記染色液が添加された前記試料中の細胞の特徴を反映した特徴情報を検出する検出部と、
前記特徴情報に基づいて前記細胞を分析する分析部とを備える、細胞分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1実施形態)
まず、
図1〜
図15を参照して、本発明の第1実施形態による細胞分析装置1の構成について説明する。
【0026】
細胞分析装置1では、患者から採取した細胞を含む測定試料をフローセルに流し、フローセルを流れる測定試料にレーザ光を照射する。そして、測定試料からの光(前方散乱光、側方蛍光など)を検出してその光信号を分析することにより、細胞に癌細胞が含まれているか否かを判断する。より具体的には、第1実施形態による細胞分析装置1は、子宮頸部の上皮細胞を分析対象としており、子宮頸癌をスクリーニングするのに用いられる。
【0027】
図1に示すように、細胞分析装置1は、被検者から採取された生体試料に細胞分散処理や染色処理などを行って測定試料を調製し、測定試料に対してレーザ光による光学的な測定を行う測定装置2と、測定装置2での測定結果の分析などを行うデータ処理装置4とを備えている。
【0028】
図2に示すように、測定装置2は、主検出部21と、信号処理部22と、測定制御部23と、I/Oインタフェース24とを備えている。また、測定装置2は、副検出部31と、信号処理部32と、調製制御部33と、生体試料に対する成分調整を自動的に行うための調製デバイス部35とを備えている。
【0029】
主検出部21は、測定試料から測定対象細胞(子宮頸部の上皮細胞)やその核の数およびサイズなどを検出する機能を有する。第1実施形態では、主検出部21には、
図5および
図6に示すフローサイトメータ10が採用されている。
【0030】
信号処理部22は、主検出部21からの出力信号に対して必要な信号処理を行う信号処理回路からなる。また、測定制御部23は、マイクロプロセッサ25と記憶部26とを含んでいる。記憶部26は、主検出部21などの制御プログラムやデータを格納するROM、および、RAMなどからなる。
【0031】
測定制御部23のマイクロプロセッサ25は、I/Oインタフェース24を介して、データ処理装置4と調製制御部33の後述するマイクロプロセッサ36とに接続されている。これにより、データ処理装置4および調製制御部33のマイクロプロセッサ36との間で各種データを送受信することが可能である。
【0032】
副検出部31は、生体試料に含まれる測定対象細胞の細胞数を検出する機能を有する。第1実施形態では、この副検出部31についても、
図5および
図6に示すものとほぼ同様のフローサイトメータ10が採用されている。信号処理部32は、副検出部31からの出力信号に対して必要な信号処理を行う信号処理回路からなる。調製制御部33は、マイクロプロセッサ36と、記憶部37と、センサドライバ38と、駆動部ドライバ39とを含んでいる。また、記憶部37は、副検出部31や調製デバイス部35などを制御するための制御プログラムなどを格納するROM、および、RAMなどからなる。
【0033】
調製デバイス部35は、検体セット部50と、第1分散部51と、検体ピペット部52と、弁別・置換部53と、容器移送部54と、第2分散部55と、液体除去部56と、反応部57と、第1試薬添加部58aと、第2試薬添加部58bと、試料吸引部59と、容器洗浄部66とから主に構成されている。
【0034】
図3に示すように、検体セット部50は、メタノールを主成分とする保存液と生体試料との混合液を収容する複数の生体容器6をセットするためのものである。検体セット部50は、セットされた生体容器6を検体ピペット部52による生体試料の吸引位置まで順次搬送する機能を有する。
【0035】
また、第1分散部51は、生体試料に含まれる凝集細胞を分散させるための第1分散処理を生体試料に実行する機能を有する。第1実施形態では、この第1分散処理は、凝集細胞にせん断力を付与して分散するせん断力付与処理である。第1分散部51は、生体試料を収容可能な試料収容部51aを含み、試料収容部51aに供給された生体試料中の凝集細胞に対して機械的にせん断力を付与するように構成されている。なお、第1分散部51の構成については、後に詳細に説明する。
【0036】
また、検体ピペット部52は、生体容器6内の生体試料を第1分散部51に移送する機能、第1分散部51内の生体試料を弁別・置換部53および副検出部31に移送する機能、並びに、弁別・置換部53において濃縮された濃縮液を測定試料容器7に供給する機能を有する。具体的には、検体ピペット部52は、第1分散部51の試料収容部51a、弁別・置換部53、副検出部31の試料取込部31a、および、試料受け渡し部52bに位置づけられた測定試料容器7などの上方位置へ移動可能に構成されている。また、検体ピペット部52は、生体試料の吸引および吐出を行うピペット52aを有し、図示しない検体定量部(定量シリンダ、定量シリンダ内のピストンを駆動するモータ等からなる)により生体試料を定量して所定量の生体試料を上記した各部に供給することが可能なように構成されている。
【0037】
弁別・置換部53は、第1分散部51による第1分散処理後の生体試料と保存液との混合液を受け入れ、メタノールを主成分とする保存液を希釈液に置換する機能を有する。また、弁別・置換部53は、生体試料中に含まれる測定対象細胞とそれ以外の細胞(赤血球、白血球、細菌など)とを弁別する機能を有する。また、弁別・置換部53は、主検出部21による測定に必要な細胞測定数を得るために生体試料に含有される測定対象細胞(上皮細胞)の濃縮を行う機能を有する。弁別・置換部53は、処理の効率化のために2つ設けられている。なお、弁別・置換部53には、たとえば上記国際公開第2009/122999号に開示された公知の構成を採用することが可能であるので、弁別・置換部53の具体的な構成についての説明は省略する。
【0038】
容器移送部54は、反応部57にユーザによってセットされた測定試料容器7をはさみ状の把持部54aにより把持して、試料受け渡し部52bと、第2分散部55と、液体除去部56と、反応部57とに測定試料容器7を移送する機能を有する。容器移送部54は、所定の回動中心周りの円周状軌跡Cに沿って把持部54aを移動させるように構成されている。また、容器移送部54は、把持部54aを上下方向に移動させることが可能に構成されている。なお、試料受け渡し部52bと、第2分散部55と、液体除去部56と、反応部57とは、この円周状軌跡C上に配置されている。これにより、反応部57にユーザによってセットされた測定試料容器7を容器移送部54の把持部54aにより把持して円周状軌跡C上の各部に移送することが可能である。
【0039】
第2分散部55は、第1分散部51による第1分散処理が実行された生体試料に対して、第1分散処理とは異なる第2分散処理を実行する機能を有する。第1実施形態では、この第2分散処理は、超音波を用いて凝集した細胞を分散する超音波分散処理である。具体的には、第2分散部55は、第1分散部51による第1分散処理が実行され、弁別・置換部53において濃縮された(測定対象細胞の濃度が高められた)生体試料に超音波振動を付与するように構成されている。この際、第1実施形態では、第2分散処理(超音波分散処理)は、第1分散処理が実行される生体試料の量よりも少ない量の生体試料に対して実行されるように構成されている。これにより、第2分散部55は、第1分散処理の後に残存する凝集細胞を単一細胞に分散させる。このように、第1実施形態では、第1分散処理を実行する第1分散部51と、第2分散処理を実行する第2分散部55とにより、細胞分析装置1の細胞分散部が構成されている。なお、第2分散部55の構成については、後に詳細に説明する。
【0040】
液体除去部56は、第2分散部55による第2分散処理の後、測定試料容器7の外表面に付着した液分を除去(水切り)する機能を有する。第2分散処理は、後述するように、測定試料容器7が液体113中に漬けられた状態(
図15参照)で実行される。液体除去部56は、設置口56aに測定試料容器7がセットされた状態で測定試料容器7の外表面に空気流を供給することにより、測定試料容器7の外表面に付着した水滴を除去するように構成されている。これにより、測定試料容器7が反応部57などの各部にセットされたときに、液体が各部に付着するのが防止される。
【0041】
反応部57は、測定試料容器7内の生体試料と第1試薬添加部58aおよび第2試薬添加部58bにより添加される試薬との反応を促進させる機能を有する。反応部57は、図示しない駆動部により回転可能に構成された円形の回転テーブル57aを備えている。回転テーブル57aの外周縁部には、測定試料容器7をセット可能な複数の保持部57bが設けられている。この保持部57bにユーザによって測定試料容器7がセットされる。また、回転テーブル57aの回転による保持部57bの軌跡と容器移送部54の把持部54aの円周状軌跡Cとは所定位置で交差しており、この交差位置で容器移送部54が測定試料容器7を保持部57bにセットすることが可能なように構成されている。また、反応部57は、保持部57bにセットされた測定試料容器7を所定温度に加温して、生体試料と試薬との反応を促進させる機能を有する。
【0042】
第1試薬添加部58aおよび第2試薬添加部58bは、それぞれ、反応部57(回転テーブル57a)の保持部57bにセットされた測定試料容器7内に試薬を供給する機能を有する。第1試薬添加部58a(第2試薬添加部58b)は、回転テーブル57aの周縁部近傍の位置に設置され、回転テーブル57aにセットされた測定試料容器7の上方の第1試薬添加位置P1(第2試薬添加位置P2)まで移動可能な供給部58c(58d)を有する。これにより、回転テーブル57aにより第1試薬添加位置P1(第2試薬添加位置P2)に測定試料容器7が搬送されたときに、測定試料容器7内に供給部58c(58d)から所定量の試薬を添加することが可能となっている。
【0043】
第1実施形態では、第1試薬添加部58aにより添加される試薬は、細胞にRNA処理を行うためのRNaseであり、第2試薬添加部58bにより添加される試薬は、PI染色を行うための染色液である。RNA処理とは、細胞中のRNAを分解するための処理であり、この処理により細胞核のDNAのみを測定することが可能となる。PI染色は、色素を含む蛍光染色液であるヨウ化プロピジウム(PI)により行われる。PI染色では細胞内の核に選択的に染色が施されることにより、核からの蛍光が検出可能となる。第1実施形態では、第1分散処理および第2分散処理が実行された後に、試薬(RNaseおよび染色液)の添加が行われるように構成されている。
【0044】
試料吸引部59は、反応部57(回転テーブル57a)にセットされた測定試料容器7内の測定試料を吸引して、主検出部21(
図2参照)に測定試料を移送する機能を有する。試料吸引部59は、回転テーブル57aの周縁部近傍の位置に設置され、回転テーブル57aにセットされた測定試料容器7の上方の吸引位置P3まで移動可能なピペット59aを有する。これにより、回転テーブル57aにより吸引位置P3に測定試料容器7が搬送されたときに、測定試料容器7内の測定試料を吸引することが可能となっている。試料吸引部59は、図示しない流路を介して主検出部21の後述するフローセル13(
図5および
図6参照)に接続されており、ピペット59aにより吸引した測定試料を主検出部21のフローセル13に供給することが可能なように構成されている。なお、第1実施形態では、後述するように、生体試料は、第1試薬添加部58aおよび第2試薬添加部58bによる処理の後に他の処理を介在させることなく試料吸引部59によって吸引される。したがって、第1試薬添加部58aおよび第2試薬添加部58bによる処理の完了直後に、主検出部21による検出が実行されるように構成されている。
【0045】
容器洗浄部66は、試料吸引部59により測定試料が主検出部21に供給された後の測定試料容器7の内部を洗浄する機能を有する。容器洗浄部66は、回転テーブル57aの保持部57bに保持された測定試料容器7内に洗浄液を吐出することにより、測定試料容器7の内部を洗浄するように構成されている。これにより、その後の測定処理において同じ測定試料容器7を用いた場合に、他の生体試料とのコンタミネーションを抑制することが可能となる。
【0046】
図2に示すように、調製制御部33のマイクロプロセッサ36は、I/Oインタフェース24を介して測定制御部23のマイクロプロセッサ25に接続されている。これにより、測定制御部23のマイクロプロセッサ25との間で各種データを送受信することが可能である。
【0047】
また、調製制御部33のマイクロプロセッサ36は、センサドライバ38または駆動部ドライバ39を介して、調製デバイス部35の各部(検体セット部50、第1分散部51、検体ピペット部52、弁別・置換部53、容器移送部54、第2分散部55、液体除去部56、反応部57、第1試薬添加部58a、第2試薬添加部58bおよび試料吸引部59)のセンサ類や駆動モータと接続されている。これにより、マイクロプロセッサ36は、センサからの検知信号に基づいて制御プログラムを実行し、駆動モータの動作を制御する。
【0048】
図4に示すように、第1実施形態におけるデータ処理装置4は、例えばノートPC(デスクトップ型でもよい)などのパーソナルコンピュータからなり、処理本体41と、表示部42と、入力部43とから主に構成されている。
【0049】
処理本体41は、CPU41aと、ROM41bと、RAM41cと、ハードディスク41dと、読出装置41eと、画像出力インタフェース41fと、入出力インタフェース41gとを備えており、これらの各部は内部バスによって通信可能に接続されている。
【0050】
ハードディスク41dには、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど各種プログラムの他、測定制御部23(
図2参照)および調製制御部33(
図2参照)への動作命令の送信、測定装置2(
図1参照)で行った測定結果の受信および分析処理、並びに、処理した分析結果の表示などを行う操作プログラム44がインストールされている。この操作プログラム44は、オペレーティングシステム上で動作する。
【0051】
入出力インタフェース41gには、キーボードおよびマウスからなる入力部43が接続されている。また、入出力インタフェース41gは、測定装置2(
図2参照)のI/Oインタフェース24(
図2参照)とも接続されている。これにより、測定装置2とデータ処理装置4との間でデータの送受信を行うことが可能である。
【0052】
次に、測定装置2の主検出部21を構成するフローサイトメータ10について説明する。
図5に示すように、フローサイトメータ10のレンズ系11は、光源である半導体レーザ12からのレーザ光を、生体試料を通過させるフローセル13を流れる測定試料に集光する機能を有する。集光レンズ14は、測定試料中の細胞の前方散乱光をフォトダイオード15からなる散乱光検出器に集光する機能を有する。
【0053】
レンズ系11は、具体的には、
図6に示すように、半導体レーザ12側(
図6の左側)から順に、コリメータレンズ11a、シリンダレンズ系(平凸シリンダレンズ11b+両凹シリンダレンズ11c)およびコンデンサレンズ系(コンデンサレンズ11d+コンデンサレンズ11e)から構成されている。
【0054】
図5に示すように、側方用の集光レンズ16は、測定対象細胞およびこの細胞中の核の側方散乱光と側方蛍光とをダイクロイックミラー17に集光する機能を有する。ダイクロイックミラー17は、側方散乱光をフォトマルチプライヤ(光電子増倍管)18へ反射させるとともに、側方蛍光をフォトマルチプライヤ(光電子増倍管)19の方へ透過させるように構成されている。これらの光は、測定試料中の細胞や核の特徴を反映したものとなっている。
【0055】
そして、フォトダイオード15、フォトマルチプライヤ18および19は、受光した光信号を電気信号に変換して、それぞれ、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)および側方蛍光信号(SFL)を出力する。これらの出力信号は図示しないプリアンプにより増幅され、測定装置2の信号処理部22(
図2参照)に送られる。測定装置2の信号処理部22で処理された各信号FSC、SSC、SFLは、それぞれ、マイクロプロセッサ25によってI/Oインタフェース24からデータ処理装置4に送信される。
【0056】
データ処理装置4のCPU41aは、操作プログラム44を実行することにより、各信号FSC、SSC、SFLに基づいて、前方散乱光強度、側方蛍光強度等の特徴パラメータを取得し、これらの特徴パラメータに基づいて、細胞や核を分析するための頻度分布データを作成する。そして、CPU41aは、この頻度分布データに基づいて、測定試料中の粒子の弁別処理を行い、測定対象細胞(上皮細胞)が異常であるか否か、具体的には癌化した細胞(異型細胞)であるか否かを判定する。
【0057】
また、副検出部31は、上記のように主検出部21とほぼ同じ構成のフローサイトメータ10を採用しているので、詳細な説明を省略する。なお、副検出部31は、主検出部21による本測定の前に測定対象細胞の濃度測定を予備的に行うものであるので、副検出部31では、その細胞数を計数するための信号を出力できれば足りる(前方散乱光信号(FSC)を取得できれば足りる)。
【0058】
次に、第1分散部51の具体的な構成を説明する。
図7および
図8に示すように、第1分散部51は、有孔部材60と、ローター70と、このローター70を回転駆動させるモータ80とを備えている。ローター70の外側には、生体試料の流れをガイドする機能を有するパイプ90が配置されており、パイプ90の先端の開口に有孔部材60が取り付けられている。これらを試料収容部51a(
図14参照)内に挿入してローター70を回転させることにより、試料収容部51a内の生体試料に含まれる凝集細胞が単一細胞に分散される。
【0059】
図9〜
図11に示すように、有孔部材60は、耐薬品性や強度などを考慮してステンレスで作製されており、円筒形状の筒部61と、筒部61の下端を塞ぐように設けられ、4つの孔部63を有する底部62とが一体的に形成されている。有孔部材60は、パイプ90の先端の開口に取り付けられている。
図10および
図11に示すように、底部62は、平面的に見て円形に形成されており、上面(内表面)から下面(外表面)まで貫通する4つの孔部63を有する。これらの孔部63は、凝集細胞(大きさ約100μm以上約500μm以下)が通過可能な大きさを有する。
【0060】
底部62の上面には、平面的に見て、ローター70の回転方向(矢印R方向)と直交する方向(半径方向)に延びるとともに、ローター70側(上方)に突出する4つの凸部64が形成されている。また、底部62の上面には、これらの凸部64を境界とする凹部からなる4つの保液部65が形成されている。
図11に示すように、この底部62(凸部64)の厚さはt1(約1mm)であり、保液部65は、t2(約0.5mm)の深さを有する。
【0061】
図10に示すように、底部62の4つの孔部63は、4つの保液部65内にそれぞれ配置されている。また、孔部63は、幅W(約0.5mm)および長さL(約3.25mm)の細長形状を有する。また、孔部63は、矢印R方向(ローター70の回転方向)と直交する方向に延びるように形成されている。より具体的には、孔部63は、扇形状の保液部65の内部において、ローター70の回転方向(矢印R方向)側の端部に凸部64と隣接して凸部64と平行に延びるように配置されている。また、孔部63は、扇形状の保液部65の半径方向内側の端部から半径方向外側の端部まで延びるように形成されている。
【0062】
図8に示すように、ローター70は、底部62と同じく耐薬品性や強度などを考慮してステンレスで作製されており、パイプ90の内部に配置されている。ローター70は、
図12および
図13に示すように、外周に螺旋状の溝71が形成されている。溝71は、リード角α(約40度)で形成されている。また、溝71は、ローター70が矢印R方向(
図10参照)に回転した場合に、溝71の回転によって有孔部材60の配置された下方向(矢印Z2方向)に生体試料を送るように設けられている。これにより、ローター70がモータ80により軸周り(矢印R方向)に回転されるとき、生体試料を下方の底部62に向けて供給する(生体試料に下方の推進力を付与する)ことが可能なように構成されている。また、ローター70の下端面72は、平坦に形成されている。
【0063】
図14に示すように、ローター70の下端面72と、パイプ90の下端に取り付けられた有孔部材60の底部62の上面(凸部64の上面)とは、所定の間隔CL1を隔てて離間するように構成されている。この間隔CL1は、凝集細胞(100μm以上)は通過不能で、かつ、単一細胞(平均60μm)は通過可能な大きさを有する。したがって、間隔CL1は、測定対象とする子宮頸部の上皮細胞(単一細胞)の大きさ(平均60μm)と略等しくなるように30〜80μmの範囲で設定されている。第1実施形態では、この間隔CL1は約50μmである。なお、
図14では説明のために間隔CL1を誇張して図示している。
【0064】
ここで、凝集細胞は100μmを超える大きさとなるため、間隔CL1を約50μmとすることにより、凝集細胞に対して効果的にせん断力を与えることが可能である。このように、第1分散部51は、モータ80によりローター70を回転させることにより、有孔部材60の凸部64とローター70の下端面72との間で凝集細胞を分散するように構成されている。なお、間隔CL1を30〜80μmに設定したのは、30μm未満であれば、細胞が破砕されることがあり、80μmを超えると凝集細胞に与える分散力が低下してしまうことがあるためである。
【0065】
図8に示すように、ローター70の上端部73は、回転軸74を介してモータ80の出力軸80aに連結されている。これにより、モータ80の駆動力(回転力)がローター70に伝達される。モータ80は、支持部材81の上面に取り付けられている。支持部材81の下部には、下方に延びるように筒体82が取り付けられている。この筒体82の内部において、回転軸74が回転可能に支持されている。
【0066】
パイプ90は、ローター70を内部に収容可能な内径を有するステンレス製の円形パイプからなる。パイプ90の上端は、回転軸74が挿入された筒体82に連結されている。回転軸74に取り付けられたローター70は、パイプ90と有孔部材60とにより、側方と下方とを取り囲まれるように配置されている。なお、
図14に示すように、ローター70の溝71が形成された外周とパイプ90の内周面とは、僅かに間隔CL2(約0.3mm)を隔てて離間している。
【0067】
パイプ90の側壁には、ローター70が配置される位置よりもやや上方の位置に長孔形状の開口部92(
図7および
図14参照)が2つ形成されている。この2つの開口部92は、パイプ90の芯を中心として対向する位置に形成されている。
図14に示すように、この開口部92により、パイプ90の外部の生体試料は、開口部92を流入口としてパイプ90内に導入され、ローター70により流入口からパイプ90内部を下方(矢印Z2方向)に移動する。そして、生体試料は、下端の有孔部材60の孔部63を流出口としてパイプ90の外側に流出し、再度開口部92(流入口)へ流入する。これにより、流入口(開口部92)からパイプ90の内側、流出口(孔部63)、パイプ90の外側、流入口(開口部92)へと生体試料内の細胞が循環する循環流が形成されるように構成されている。
【0068】
次に、第2分散部55の具体的な構成を説明する。
図15に示すように、第2分散部55は、水などの液体113を収容する液体収容部111と、液体113を介して測定試料容器7内の生体試料に対して超音波振動を付与する超音波振動子112とを含んでいる。
【0069】
液体収容部111は、中央に液体113を収容する凹部114を有し、略円筒形状に形成されている。また、凹部114の上端部の開口には、測定試料容器7を挿入可能な大きさの円孔が形成された蓋115が設けられている。この蓋115により、超音波振動に伴う液体113の外部への飛散を防止するように構成されている。
【0070】
超音波振動子112は、円柱形状を有し、液体収容部111の下部に配置されている。この超音波振動子112としては、たとえば部品の洗浄などに用いられる公知のものを利用することができる。なお、筒状の液体収容部111の内径D1は、円柱状の超音波振動子112の外径D2よりも数mm程度(たとえば、5mm〜6mm程度)大きくされている。超音波が付与される液体113の領域の大きさ(液体収容部111の内径D1)を超音波振動子112の外径D2よりも大きくすることにより、超音波振動を効率よく液体113に伝達することが可能である。
【0071】
略円筒形状の液体収容部111の周壁には、下方から順に液体流通孔116と、上部流出孔117と、オーバーフロー流路(孔)118とが設けられており、これらの液体流通孔116、上部流出孔117およびオーバーフロー流路118は、それぞれ液体収容部111の外部に連通している。
【0072】
液体流通孔116は、凹部114の底面付近の位置に形成され、液体収容部111(凹部114)への液体113の供給および排出を行うために設けられている。液体流通孔116は、液体供給源116aと、吸引源116bに接続された液体チャンバ120とに流路切り替えバルブ119を介して連通している。液体113の供給時には、流路切り替えバルブ119により液体供給源116aと液体流通孔116(凹部114)とを連通させ、液体供給源116aから凹部114に液体113を供給させる。一方、液体113の排出時には、流路切り替えバルブ119により液体チャンバ120と液体流通孔116(凹部114)とを連通させ、吸引源116bにより凹部114内の液体113を液体チャンバ120まで吸引させる。液体チャンバ120では、吸引源116bにより吸引した液体が装置外へ排出される。
【0073】
上部流出孔117は、液体チャンバ120と連通しており、凹部114内の液体113を排出する機能を有する。したがって、この上部流出孔117により、凹部114における液体113の水面の深さ(上限位置)dが決定される。第1実施形態では、超音波振動を効果的に発生させるために、超音波振動子112により発生する超音波の節が、凹部114内に収容される液体113の水面に位置になるように深さd(上部流出孔117の下端の凹部114の底面からの高さ位置)が設定されている。
【0074】
そこで、第1実施形態では、測定試料容器7を液体収容部111内に所定量だけ挿入して液体113内に漬けた状態で、液体流通孔116から所定量の液体113を凹部114内に供給した後、調製制御部33により吸引源116bを所定時間駆動させて、上部流出孔117から凹部114内の余分の液体113を液体チャンバ120に排出(吸引)するように構成されている。なお、液体チャンバ120と液体供給源116aとの間の流路は流路切り替えバルブ119により遮断される。この結果、上部流出孔117の高さ位置が超音波振動子112により発生する超音波の節の位置(深さd)となるように設定されているので、上部流出孔117から液体113を所定時間吸引することによって、液体113の水面の位置が超音波の節の位置(深さd)になるように調節される。なお、液体113を吸引する「所定時間」は、供給した液体113の量と吸引源116bの吸引能力から算出される時間に数秒程度の時間を足した時間とすることができる。なお、算出される時間よりも長めに吸引したとしても、上部流出孔117よりも下方の液体113が排出されてしまうことはないので、液面位置の調整には支障はない。
【0075】
第2分散部55による第2分散処理において、測定試料容器7は、容器移送部54の把持部54aに把持された状態で、液体収容部111の液体113中に漬けられる。この際、測定試料容器7内の液面が液体113の液面よりも下方に位置するように、容器移送部54(把持部54a)の下降位置が設定されている。測定試料容器7内の液面が液体113の液面よりも上方に位置する場合には、測定試料容器7内の液体に効果的に超音波を伝達させることができず、その結果、生体試料中の凝集細胞の分散効率が向上しにくい。第1実施形態では、測定試料容器7内の液面が、凹部114内の液体113の液面よりも1mm〜2mm程度下方に位置するのが好ましい。
【0076】
ここで、
図15に示すように、超音波振動は、節と節の間のλ/2(λは超音波振動の波長)の範囲で振動振幅が大きくなる。したがって、測定試料容器7を凹部114の上方から挿入した状態で、測定試料容器7内の液体がλ/2の範囲内に位置するように配置することにより、測定試料容器7内の液体に効果的に超音波を伝達させることが可能となる。このλ/2は、超音波振動が約25kHzで約28.8mm、約40kHzで約18.8mm、約75kHzで約10mmとなる。したがって、測定試料容器7内の液体に効果的に超音波を伝達させるためには、測定試料容器7内の液面高さ(すなわち、測定試料容器7内の液体の量)がλ/2の高さ範囲内となるようにする必要がある。第1実施形態では、弁別・置換部53により生体試料中の測定対象細胞の濃度を上昇させる(濃縮する)ことによって、主検出部21による測定に必要な細胞数を確保しながら測定試料容器7内に収容する生体試料の量を少なくすることが可能である。この結果、測定試料容器7内の液面高さをλ/2の高さ範囲内とすることができるので、測定試料容器7内の液体に効果的に超音波を伝達させることが可能となる。なお、超音波振動子112により発生される超音波振動の振動数は、特に限定されるものではないが、第2分散処理に際して測定試料容器7内に収容されている液量と、超音波振動の効率的な伝達などの観点から、20kHz以上であるのが好ましく、さらに、20kHz〜75kHzであることが好ましい。
【0077】
オーバーフロー流路118は、何らかの理由で液体供給源116aから液体113が過剰に供給された場合にも、液体113が凹部114から溢れることがないようにするためのものである。オーバーフロー流路118は、液体収容部111(凹部114)の上端部近傍に設けられ、液体チャンバ120に連通している。液体113が上部流出孔117を超えるまで過剰に供給された場合や測定試料容器7が凹部114内に過剰に挿入された場合にも、液体113が溢れることなくオーバーフロー流路118から液体チャンバ120に排出される。
【0078】
なお、測定試料容器7は、合成樹脂やステンレスなどの金属により作成することができるが、凹部114内に収容される液体113の音響インピーダンスと同程度の音響インピーダンスを有する材料により作成するのが好ましい。たとえば、凹部114内に水を収容する場合、測定試料容器7は、ポリプロピレンまたはポリエチレンで作成するのが好ましい。超音波振動子112と生体試料との間に介在し、振動を伝達する液体113の特性(音響インピーダンス)および測定試料容器7の特性を同程度にすることにより、超音波振動を生体試料に効率よく伝達することが可能となる。
【0079】
また、測定試料容器7の内周面は、凝集細胞の分散効果を向上させるという観点から、ある程度の粗さを有する面とすることが好ましい。具体的には、測定試料容器7の内周面は、表面粗さがたとえば1μm〜30μm程度にするのが好ましい。
【0080】
次に、
図2、
図3、
図5、
図8、
図9、
図11および
図14〜
図16を参照して、第1実施形態による細胞分析装置1の分析動作について説明する。なお、測定装置2の主検出部21および信号処理部22の動作制御は、測定制御部23(マイクロプロセッサ25)により実行され、測定装置2の副検出部31、信号処理部32および調製デバイス部35の動作制御は、調製制御部33(マイクロプロセッサ36)により実行される。データ処理装置4の制御は、処理本体41(CPU41a)により実行される。
【0081】
図16に示すように、細胞分析装置1による分析に際して、まず、ユーザにより分散液としてN−アセチル−L−システイン(NAC)を生体試料に添加するなどの前処理が行われる。その後、生体試料と、アルコールを主成分とする保存液とが収容された生体容器6がユーザにより検体セット部50(
図3参照)にセットされ、細胞分析装置1による分析が開始される。
【0082】
分析が開始されると、
図16のステップS1において、第1分散部51により生体試料中の凝集細胞の分散処理(第1分散処理)が行われる。具体的には、
図3に示すように、生体試料と、アルコールを主成分とする保存液とが収容された生体容器6内の混合液が、検体セット部50において検体ピペット部52によって吸引される。そして、検体ピペット部52が第1分散部51の試料収容部51aの上方に移動して、試料収容部51a内に混合液を供給する。その後、試料収容部51a内の混合液が第1分散部51で分散される。
【0083】
この第1分散処理は、第1分散部51により、次のようにして行なわれる。
【0084】
図14に示すように、まず、調製制御部33(
図2参照)によりモータ80(
図8参照)を回転駆動させると、このモータ80の回転によって回転軸74と回転軸74の先端に連結されたローター70とが軸周りに矢印R方向に回転する。このとき、ローター70の外周の溝71の回転により、溝71内の生体試料が下方の底部62(ローター70の下端面72と底部62との間)に向けて送られる。第1実施形態では、モータ80の回転数は約10000rpmであり、回転(細胞の分散)は約60秒間継続して行われる。
【0085】
底部62に送られた生体試料は、凸部64によって分割された保液部(凹部)65(
図9参照)に流れ込み、保液部65内に一時的に貯留(保液)される。この際、保液部65内に流れ込んだ生体試料の上方(矢印Z1方向)には、矢印R方向に回転するローター70の下端面72が存在するため、生体試料は保液部65内で矢印R方向に移動される。保液部65内における生体試料の矢印R方向の流れは、保液部65を分割する凸部64(
図11参照)の壁面により遮られる。これにより、矢印R方向の生体試料の流れは、矢印R方向側の端部に形成された孔部63から下方(外部)に流出しようとする生体試料の流れと、凸部64の壁面に沿って上方に移動して凸部64を乗り越えようとする生体試料の流れとに分かれる。
【0086】
孔部63から下方(外部)に流出しようとする生体試料の流れは、底部62の外部に流出(噴出)するとともに、ローター70の回転によりパイプ90の周壁の開口部92を介してパイプ90内部に引き込まれる。この結果、流入口(開口部92)からパイプ90内側、流出口(孔部63)、パイプ90外側、流入口(開口部92)へと循環する循環流が形成される。
【0087】
一方、凸部64を乗り越えようとする流れは、ローター70の下端面72と凸部64の上面との間を通過する。ここで、ローター70の下端面72と底部62との間隔CL1は、凝集細胞が通過不可能な間隔(約50μm)である。このため、凸部64を乗り越えようとする流れに含まれる凝集細胞には回転されているローター70(下端面72)と固定的に設置された凸部64との間でせん断力が付与され、凝集細胞が単一細胞に分散される。なお、間隔CL1は単一細胞が通過可能な大きさであるので、凸部64を乗り越えようとする流れに含まれる単一細胞(および分散された単一細胞)は、流れに乗って凸部64を乗り越える。このようにして凝集細胞は次々と分散され、所定時間(約60秒間)にわたって循環流を循環させることによって、生体試料中の凝集細胞が単一細胞に分散される。
【0088】
第1分散処理が終了すると、ステップS2において、調製制御部33により検体ピペット部52(
図3参照)が作動され、分散済みの生体試料を含む混合液が副検出部31の試料取込部31aに供給される。これにより、副検出部31のフローセル13(
図5参照)に分散済みの生体試料を含む混合液が送液される。そして、この副検出部31を用いて、フローサイトメトリー法によって生体試料のプレ測定(混合液に含まれる測定対象細胞の数の検出)が行われる。プレ測定の結果、癌判定ために測定装置2が行う本測定の前に、混合液(生体試料および保存液)に含まれる測定対象細胞(上皮細胞)の濃度を反映した濃度情報が得られる。
【0089】
プレ測定が行われると、調製制御部33により、混合液(生体試料および保存液)が副検出部31から排出される。そして、得られた濃度情報に基づいて混合液(生体試料および保存液)中の測定対象細胞(上皮細胞)の濃度が算出される。さらに、算出された濃度に基づいて、本測定に用いる測定試料を調製するための、混合液(生体試料および保存液)の吸引量が決定される。すなわち、プレ測定に用いた生体試料中の測定対象細胞の濃度(単位体積あたりの測定対象細胞の数)と、本測定における癌細胞検出のために必要な有意細胞数とに基づき、この有意細胞数が確保される程度に本測定を行うために必要な混合液(生体試料および保存液)の採取料(液量)が演算される。
【0090】
次に、ステップS3において、演算された採取料(液量)の混合液(生体試料および保存液)について弁別・置換処理が実行される。すなわち、
図3に示すように、調製制御部33により検体ピペット部52が作動され、演算された吸引量だけ第1分散部51の試料収容部51aから混合液(生体試料および保存液)が吸引される。吸引された混合液が弁別・置換部53に供給されることにより、弁別・置換処理が開始される。
【0091】
この弁別・置換処理において、弁別・置換部53により、アルコールを主成分とする保存液が希釈液に置換されるとともに、測定対象細胞とその他の細胞や夾雑物とが弁別される。また、弁別の過程で測定対象細胞を含む液体が濃縮され、測定対象細胞の濃度が上昇する。この結果、癌細胞検出のために必要な有意細胞数を含むように測定対象細胞が濃縮された濃縮液が得られる。
【0092】
次に、ステップS4において、第2分散部55により濃縮液中の凝集細胞の分散処理(第2分散処理)が行われる。具体的には、
図3に示すように、測定対象細胞が濃縮された濃縮液が、弁別・置換部53から検体ピペット部52によって吸引される。これに並行して、容器移送部54が反応部57の保持部57bにセットされた測定試料容器7を把持して取り出し、試料受け渡し部52bに位置づける。そして、検体ピペット部52が試料受け渡し部52bに位置づけられた測定試料容器7の上方(試料受け渡し部52bの上方)に移動して、測定試料容器7に濃縮液を供給する。その後、濃縮液を収容する測定試料容器7が容器移送部54により第2分散部55に移送され、第2分散処理が実行される。
【0093】
第2分散処理では、
図15に示すように、まず、容器移送部54が第2分散部55の液体収容部111(凹部114)内に測定試料容器7の一部(下部)を挿入し、凹部114内の液体113中に漬ける。容器移送部54により凹部114内の液体113中に漬けられた状態で保持された測定試料容器7内の濃縮液に対して、超音波振動子112により超音波振動が付与され、超音波振動が液体113および測定試料容器7を介して濃縮液に伝達される。この超音波振動が濃縮液中にキャビテーション(微細な気泡の発生と気泡の破裂)を発生させ、キャビテーションに伴う衝撃(圧力変動)により、凝集した細胞を分散させる。これにより、測定試料容器7内の濃縮液中の、第1分散処理後に残存していた凝集細胞(測定対象細胞)が単一細胞に分散される。
【0094】
なお、第2分散処理が完了すると、
図3に示すように、容器移送部54が測定試料容器7を把持した状態のまま、液体除去部56の設置口56aに測定試料容器7の一部(下部)をセットする。液体除去部56では、測定試料容器7の外表面に空気流が供給されることにより、測定試料容器7の外表面に付着した水滴が除去される。その後、容器移送部54により測定試料容器7が反応部57(回転テーブル57a)の保持部57bにセットされる。
【0095】
反応部57に測定試料容器7がセットされると、ステップS5において、試薬(RNase)の添加および加温により、濃縮液中のRNA除去処理が行われる。具体的には、回転テーブル57aにセットされた測定試料容器7が第1試薬添加位置P1まで移動され、第1試薬添加部58aの供給部58cから測定試料容器7内の濃縮液に対して所定量の試薬(RNase)が添加される。その後、反応部57により測定試料容器7内の液体が所定温度(約37℃)で約10分間加温されることにより、RNA除去処理が実行される。なお、試薬(RNase)の添加後、反応が完了するまでの約10分間の間に、回転テーブル57aにより測定試料容器7が第2試薬添加位置P2まで移動される。
【0096】
RNA除去処理の後、ステップS6において、試薬(染色液)の添加および加温により、測定試料容器7内の測定対象細胞のDNAの染色処理が行われる。RNA除去処理が完了した時点で、回転テーブル57aにより測定試料容器7が第2試薬添加位置P2まで移動されるため、これに同期して第2試薬添加部58bの供給部58dから測定試料容器7内に所定量の試薬(染色液)が添加される。その後、反応部57により測定試料容器7内の液体が所定温度(約37℃)で約1分間加温されることにより、DNA染色処理が実行される。なお、染色液の添加後、反応(染色)が完了するまでの約1分間の間に、回転テーブル57aにより測定試料容器7が試料吸引部59の吸引位置P3まで移動される。
【0097】
次に、ステップS7において、染色処理済みの測定試料が主検出部21のフローセル13に送られるとともに、測定試料中の細胞に対する本測定が行われる。染色処理が完了した時点で、回転テーブル57aにより測定試料容器7が試料吸引部59の吸引位置P3まで移動されるため、これに同期して試料吸引部59のピペット59aが吸引位置P3まで移動される。これにより、染色処理が完了した直後に他の処理が介在することなく試料吸引部59のピペット59aにより測定試料が吸引される。そして、吸引された測定試料が試料吸引部59から主検出部21のフローセル13(
図5参照)に移送されるとともに、測定装置2の測定制御部23(
図2参照)により測定試料中の細胞に対する本測定が行われる。測定試料が主検出部21に送られた後に、容器洗浄部66によって測定試料容器7の内部が洗浄され、洗浄された測定試料容器7はその後の測定処理に用いられる。
【0098】
本測定後、ステップS8において、得られた測定データが測定装置2の測定制御部23からデータ処理装置4に送信される。データ処理装置4の処理本体41は、測定装置2から測定データを受信したか否かを常時判定している。測定装置2から測定データを受信すると、ステップS9において、データ処理装置4の処理本体41により、その測定データに基づいて測定試料中の粒子の弁別処理が行われ、測定試料中の測定対象細胞(上皮細胞)が異常であるか否か、すなわち、癌化した細胞(異型細胞)であるか否かなどが判定される。以上により、測定処理が終了する。
【0099】
第1実施形態では、上記のように、第1分散処理を実行する第1分散部51と、第1分散処理とは異なる第2分散処理を実行する第2分散部55とからなる細胞分散部と、第1分散処理および第2分散処理が実行された生体試料に含まれる所定の細胞の特徴情報を検出する主検出部21と、検出結果に基づいて所定の細胞を分析するデータ処理装置4(CPU41a)とを設けることによって、種類の異なる複数の分散処理を生体試料に実行することができるので、生体試料中の細胞の凝集度合いが高い場合であっても効果的に細胞の分散を行うことができる。これにより、細胞の凝集度合いが高い場合であっても、凝集した細胞を十分に単一の細胞に分散することができるので、精度の高い細胞検出を行うことができる。この結果、細胞の凝集度合いが高い場合であっても、高精度な検出結果に基づいて精度の高い細胞分析を行うことができる。
【0100】
また、第1実施形態では、上記のように、副検出部31による検出結果に基づいて、検体ピペット部52により弁別・置換部53に供給される生体試料の量が調整され、第1分散処理が、副検出部31による検出前に実行されるように構成されている。このように構成することによって、副検出部31の検出結果に基づいて癌細胞検出のために必要な有意細胞数を含むように測定試料の調製(生体試料中の測定対象細胞の濃縮)を行うことにより、主検出部21による検出に適した測定試料を調製することができる。この際、第1分散処理が副検出部31による検出前に実行されるので、ある程度凝集細胞が分散された状態で副検出部31による検出を行うことができる。この結果、副検出部31による検出の精度を向上させることができる。
【0101】
また、第1実施形態では、上記のように、第2試薬添加部58bによる染色液の添加が、第1分散処理および第2分散処理の後に実行されるように構成されている。このように構成することによって、第1分散処理および第2分散処理により凝集細胞が十分に単一の細胞に分散された後に細胞の染色を行うことができるので、分散された個々の細胞に対して染色液による染色を確実に行うことができる。
【0102】
また、第1実施形態では、上記のように、生体試料は、第1分散処理および第2分散処理の後に第1試薬添加部58aおよび第2試薬添加部58bにより処理され、第1試薬添加部58aおよび第2試薬添加部58bによる処理の後に他の処理を介在させることなく主検出部21による検出が実行されるように構成されている。このように構成することによって、染色液の添加を含む試薬による処理を、第1分散処理および第2分散処理によって凝集細胞が分散された後の単一の細胞に対して実行することができる。そして、試薬による処理と検出部による検出との間に他の処理が介在することがないので、試薬による処理が完了した直後に細胞の検出を行うことができる。この結果、検出対象の細胞が壊れる前に速やかに細胞検出を行うことができる。
【0103】
また、第1実施形態では、上記のように、第1分散処理は、凝集した細胞にせん断力を付与するせん断力付与処理である。このように構成することによって、凝集細胞をせん断力によって強制的に分散させることができるので、比較的大量の生体試料に対しても、効率よく凝集細胞の分散を行うことができる。
【0104】
また、第1実施形態では、上記のように、第2分散処理は、超音波を用いて凝集した細胞を分散する超音波分散処理である。このように構成することによって、超音波により生体試料中にキャビテーション(気泡の発生および破裂)を発生させ、凝集した細胞を分散することができる。超音波により発生する気泡は微細であるので、偏りの少ない均一な分散効果を得ることができ、分散処理に伴う細胞に対するダメージが増大するのも抑制することができる。
【0105】
また、第1実施形態では、上記のように、第2分散処理(超音波分散処理)は、第1分散処理が実行される生体試料の量よりも少ない量の生体試料に対して実行されるように構成されている。このように構成することによって、少ない量の生体試料に対して超音波分散処理を行うことができるので、第2分散部55を小型化することができる。第2分散部55の小型化によって、超音波の発生に起因する騒音の発生等を低減することができる。また、少ない量の生体試料に対して超音波分散処理を行うことによって、生体試料全体に均一に超音波振動を付与しやすいので、容易に、高い分散効果を得ることができる。
【0106】
また、第1実施形態では、上記のように、第1分散処理はせん断力付与処理であり、第2分散処理は超音波分散処理であり、第1分散処理の実行後、第2分散処理が実行されるように構成されている。このように構成することによって、細胞の凝集度合いが高い場合にも、まず、凝集した細胞をせん断力によって強制的に分散させることができるので、効率よく凝集細胞の分散を行うことができる。そして、せん断力付与処理の実行後に残存する比較的小さな凝集細胞を超音波分散処理によって分散させることができるので、効率的な分散処理を行うことができる。
【0107】
また、第1実施形態では、上記のように、主検出部21は、生体試料を通過させるフローセル13と、フローセル13を通過する生体試料に光を照射する半導体レーザ12と、半導体レーザ12が生体試料に光を照射することによって生じる光を受光するフォトダイオード15、フォトマルチプライヤ18および19とを含む。このように構成することによって、第1分散処理および第2分散処理によって効果的に分散された個々の細胞に対してフローサイトメトリー法による検出を行うことができるので、フローサイトメトリー法による検出精度を向上させることができる。
【0108】
また、第1実施形態では、上記のように、主検出部21は、生体試料に含まれる上皮細胞を検出するように構成され、データ処理装置4(CPU41a)は、検出した上皮細胞が癌細胞(異型細胞)であるか否かを分析するように構成されている。このように構成することによって、種類の異なる複数の分散処理を生体試料に実行することにより、生体試料中の上皮細胞の凝集度合いによらず精度の高い細胞検出を行うことが可能な癌細胞(異型上皮細胞)の細胞分析装置1を得ることができる。
【0109】
また、第1実施形態では、上記のように、検体ピペット部52は、第1分散処理が実行された試料収容部51a内の生体試料を測定試料容器7に分注するように構成され、容器移送部54は、検体ピペット部52により分注された生体試料を収容する測定試料容器7を第2分散部55に移送するように構成されている。このように構成することによって、第1分散処理の実行後、検体ピペット部52によって主検出部21による検出に必要な量の生体試料だけを測定試料容器7に分注し、測定試料容器7に分注された生体試料だけに効率よく第2分散処理を実行することができる。
【0110】
また、第1実施形態では、上記のように、容器移送部54は、検体ピペット部52により分注された生体試料を収容する測定試料容器7を把持した状態で、液体収容部111に収容された液体113内に測定試料容器7を浸漬するように構成されている。このように構成することによって、測定試料容器7からの生体試料の吸引や吐出を行うことなく、測定試料容器7に生体試料が収容されたままの状態で第2分散処理(超音波分散処理)を行うことができる。これにより、生体試料の吸引および吐出工程が不要となり第2分散処理に要する時間を短縮することができるので、主検出部21による検出が行われるまでに測定対象細胞に加わるダメージが増大するのを抑制することができる。
【0111】
(第2実施形態)
次に、
図2、
図5および
図17を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、せん断力付与処理である第1分散処理を実行する第1分散部51および超音波分散処理である第2分散処理を実行する第2分散部55を設けた上記第1実施形態に加えて、さらに分散液添加処理を実行する第3分散部205が設けられている。なお、第3分散部205以外の構成は上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0112】
図17に示すように、第2実施形態による細胞分析装置201の測定装置203には、第1分散部51、第2分散部55に加えて、第3分散処理を実行する第3分散部205が設けられている。
【0113】
第3分散部205は、第1分散部51による第1分散処理および第2分散部55による第2分散処理が実行された生体試料に対して、第1分散処理および第2分散処理とは異なる第3分散処理を実行する機能を有する。第2実施形態では、この第3分散処理は、分散液を生体試料に添加して凝集した細胞を分散する分散液添加処理である。具体的には、第3分散部205は、第2分散部55による第2分散処理が実行され、第1試薬添加部58aによる試薬(RNase)の添加および第2試薬添加部58bによる試薬(染色液)の添加が実行された後、試料を主検出部21に送る直前に、測定試料容器7内に分散液の添加を行うように構成されている。
【0114】
具体的には、第2実施形態では、第3分散部205は、反応部57の回転テーブル57aの周縁部近傍の位置に設置され、回転テーブル57aにセットされた測定試料容器7の上方の分散液添加位置P4まで移動可能な分散液供給部205aを有する。これにより、回転テーブル57aにより分散液添加位置P4に測定試料容器7が搬送されたときに、測定試料容器7内に分散液供給部205aから所定量の分散液を添加することが可能となっている。第2実施形態では、分散液は、界面活性剤である。第1分散処理および第2分散処理に加えて分散液の添加を行うことによって凝集細胞を化学的に分散させ、分散効果の更なる向上を図ることが可能である。
【0115】
なお、回転テーブル57aにより第2試薬添加位置P2に測定試料容器7が搬送され、供給部58dから測定試料容器7内に所定量の試薬(染色液)が添加され、染色処理が完了すると、回転テーブル57aにより測定試料容器7が分散液添加位置P4まで移送される。そして、第3分散部205による分散液添加処理の直後に、測定試料容器7が吸引位置P3まで移動されるとともに、試料吸引部59のピペット59aにより測定試料が吸引される。そして、吸引された測定試料が試料吸引部59から主検出部21(
図2参照)のフローセル13(
図5参照)に移送されるとともに、測定試料中の細胞に対する本測定が行われる。
【0116】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0117】
第2実施形態では、上記のように、第1分散処理および第2分散処理に加えて、分散液として界面活性剤を生体試料に添加して、凝集した細胞を分散する分散液添加処理が行われる。このように構成することによって、界面活性剤の添加により凝集細胞を化学的に分散させ、単一の細胞にすることができる。また、第2実施形態では、分散液として界面活性剤を添加した直後に測定試料が主検出部21に移送されるので、界面活性剤によって細胞が壊れる前に主検出部21によって細胞の検出を行うことができる。
【0118】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0119】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0120】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、子宮頸部の上皮細胞を分析する細胞分析装置1(201)に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。子宮頸部の上皮細胞以外の細胞の分析を行う細胞分析装置に本発明を適用してもよい。
【0122】
また、上記第1および第2実施形態では、第1分散部によるせん断力付与処理を実行した後に、第2分散部による超音波分散処理を実行した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、超音波分散処理を実行した後にせん断力付与処理を実行してもよい。また、第1分散処理(せん断力付与処理)と第2分散処理(超音波分散処理)とが同時に実行されてもよい。せん断力付与処理と超音波分散処理とを同時に実行する構成としては、例えば、第1分散部51の試料収容部51a内の生体試料に対してせん断力付与処理を実行しながら、試料収容部51a内の生体試料に対して超音波振動を付与する構成であってもよい。
【0123】
また、上記第1および第2実施形態では、第1分散処理(せん断力付与処理)、第2分散処理(超音波分散処理)、及び、第3分散処理(分散液添加処理)を生体試料に対して行う場所が互いに異なっているが、これらの処理を生体試料に対して同じ場所で行ってもよい。例えば、第1分散部51の試料収容部51a内の生体試料に対してせん断力付与処理を行っている間に、分散液を試料収容部51a内に供給してもよいし、第2分散部55において測定試料容器7内の生体試料に対して超音波分散処理を行っている間に、測定試料容器7内に分散液を供給してもよい。また、第1分散部51の試料収容部51a内の生体試料に対してせん断力付与処理および超音波分散処理を行っている間に、分散液を試料収容部51a内に供給してもよい。このように構成すれば、せん断力付与処理と分散液添加処理、超音波分散処理と分散液添加処理、せん断力付与処理と超音波分散処理と分散液添加処理とを同時に行うことができる。
【0124】
同様に、上記第2実施形態では、染色液の添加後に第3分散部による分散液添加処理を実行した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、染色液の添加(染色処理)の直前に第3分散部による分散液添加処理を実行してもよく、または、染色液の添加と同時に分散液添加処理を実行してもよい。また、第1試薬添加部による試薬(RNase)の添加前に分散剤添加処理を行ってもよい。この他、たとえば第1分散部による第1分散処理の前、または、第1分散処理後の弁別・置換部による弁別・置換処理の前に分散液添加処理を行ってもよい。この場合、添加された分散液が弁別・置換部によって希釈液に置換されるため、分散剤が染色液による測定対象細胞の染色性に与える影響を低減することができる。
【0125】
なお、上記第1実施形態では、細胞分析装置による分析開始前に、ユーザにより分散液としてNACを添加するなどの前処理が行われる例を示したが、本発明では、この前処理を分散液添加処理として、細胞分析装置が実行するように構成してもよい。
【0126】
また、上記第2実施形態では、分散液として界面活性剤を添加する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、分散液として、酵素剤または粘液除去剤などを用いてもよい。
【0127】
また、上記第1実施形態では、第1分散処理を弁別・置換処理の前に実行し、第2分散処理を弁別・置換処理の後に実行した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1分散処理および第2分散処理の両方を弁別・置換処理の前、または、弁別・置換処理の後に実行してもよい。
【0128】
また、上記第1実施形態では、第1分散処理(せん断力付与処理)よりも少ない量の生体試料(弁別・置換部による濃縮後の生体試料)に対して第2分散処理(超音波分散処理)が実行されるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1分散処理と同じ量の生体試料に対して第2分散処理が実行されるようにしてもよい。
【0129】
また、上記第1実施形態では、染色処理が完了した直後に他の処理が介在することなく試料吸引部により測定試料が吸引され、主検出部による測定(本測定)が行われるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、染色処理が完了した後、他の処理を実行してから主検出部による測定(本測定)を行ってもよい。ただし、主検出部による検出精度を向上させる観点から、染色処理の完了後は、可及的速やかに主検出部による測定(本測定)を行うのが好ましい。
【0130】
また、上記第1実施形態では、フローセルと、半導体レーザ(光源部)と、フォトダイオードおよびフォトマルチプライヤ(受光部)とを備えたフローサイトメータからなる主検出部を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、フローサイトメータ以外の検出部を設けてもよい。
【0131】
なお、上記実施形態における各種の寸法(間隔CL1、CL2、底部(凸部)の厚さt1、保液部の深さt2など)などはあくまでも例示に過ぎず、本発明はこれに限られない。各部の寸法は、一度に分散処理を行う生体試料の量や、分散処理の対象となる細胞の種類に応じて変更すればよい。