【文献】
X. Yang et al.,“An Optimized "QD-like" 6-Channel Flexible and Ergonomic Shoulder Array Coil at 1.5T”,Proceedings of ISMRM-ESMRMB Joint Annual Meeting 2010,2010年 5月,p.3843
【文献】
Y. Hamamura et al.,“An 8 channel shoulder coil for high resolusion imaging”,Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 14,2006年 5月,p.419
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。第1〜第10の実施形態はRFコイル装置に関し、第11の実施形態はそれらのRFコイル装置を用いたMRI装置に関する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるRFコイル装置90Aの概観を示す模式的斜視図である。
図1に示すように、RFコイル装置90Aは、ベース部材92にベルト部材94aを連結することで構成される。
【0021】
装着方法の一例としては、被検者の肩を含む背面側にベース部材92を配置し、被検者の片腕の根元(脇)をベース部材92とベルト部材94aとで挟むように装着させることができる。RFコイル装置90Aは、ベルト部材94a以外に他の複数のベルト部材94b、94c、94d、94d’を備え(後述の
図6〜
図9参照)、ベルト部材94a、94b、94c、94d、94d’を取り替えることでコイル素子の数およびコイルの感度領域を変更可能である。
【0022】
なお、RFコイル装置90Aは、エコー信号(磁気共鳴信号)の受信用コイルとして構成される。この点は、後述の他の実施形態のRFコイル装置90B〜90Nについても同様である。また、RFコイルは主に、信号線としての導線部分(後述のケーブル98等に対応)と、アンテナとしての導線部分とからなるが、以下の説明では、「コイル素子」と記載した場合には、上記のアンテナとしての導線部分を指すものとする。
【0023】
図2は、
図1のベース部材92の構造を示す模式的斜視図である。ベース部材92は、円盤状のベース板96と、ケーブル98と、ベース板96の前面(おもて面)の一端側およびその反対側にそれぞれ配設されたコネクタ100、102とを有する。ベース板96内には、図中に破線で示すループ状のコイル素子104と、二点鎖線で示すループ状のコイル素子106と、一点鎖線で示す部分コイル108aとが配設されている。
【0024】
ケーブル98は、平板状のベース板96における、コネクタ100近傍の側面(ベース板96の厚さ方向に沿った面)から露出している。かかる位置からケーブル98を出すことにより、ベース板96の裏面は平坦に形成される。これにより、被検者がMRI装置の寝台上に仰向けに寝た状態において、被検者の背面と寝台との間にベース部材92をスムーズに置ける。また、ケーブル98は、MRI装置内でRF受信器に接続される。
【0025】
部分コイル108aは、後述のベルト部材94a内の部分コイル108bに電気的に接続されることで、ループ状のコイル素子として機能する。部分コイル108aは、円盤状のベース板96をおよそ2等分する中心ラインに沿って配設され、一端側がコネクタ100に接続され、他端側がコネクタ102に接続されている。
【0026】
コイル素子104、106は、その導線の延在領域がベース板96の裏面および前面に平行になるように、平面的かつ楕円状に配設されている。コイル素子104の長さの例えば2/3以上は、部分コイル108aの延在線を基準にベース板96内を2分した一方の側に配設され、コイル素子106の長さの例えば2/3以上は、同様にベース板96内を2分した他方の側に配設される。
【0027】
デカップリングのため、コイル素子104を含む最小の平面と、コイル素子106を含む最小の平面とが互いに平行になるように、且つ、両者が部分的に対向するようにコイル素子104、106は配設される。なお、コイル素子104、106、部分コイル108aは、ベース板96内における増幅回路等を含む公知の回路構成によって、個別にケーブル98内の別々の配線に電気的に接続されている(図示せず)。
【0028】
図3は、
図1のベルト部材94aの構造を示す模式的斜視図である。
図3に示すように、ベルト部材94aは、長尺状(帯状)の所定幅Wの板を半円状に湾曲させた形状である。ベルト部材94aは、両端にそれぞれ設けられたコネクタ112、114と、内部においてベルト部材94aの延在方向に沿って一端から他端に亘って半円状に配設された部分コイル108bとを有する。
【0029】
図2のコネクタ100は、
図3のコネクタ112を含むベルト部材94aの一端側を嵌合する形状であり、
図2のコネクタ102は、
図3のコネクタ114を含むベルト部材94aの他端側を嵌合する形状である(
図1参照)。ベルト部材94aの両端がベース部材92に嵌合された状態では、部分コイル108aの一端と、部分コイル108bの一端とがコネクタ100、112内の不図示の電極等によって電気的に接続される。また、この嵌合状態では、部分コイル108aの他端と、部分コイル108bの他端とがコネクタ102、114内の不図示の電極等によって電気的に接続される。
【0030】
コネクタ100、102、112、114に上記の機能を提供する構造については、従来技術と同様でよいので(特許文献2等を参照)、詳細な説明を省略する。また、上記の嵌合状態では、部分コイル108a、108bが1のコイル素子として機能する。
上記嵌合状態において、部分コイル108a、108bの導線の延在領域に重なる平面がベース板96の裏面および前面に直交するように、部分コイル108a、108bは配設されている。これを実現するため、上記嵌合状態において、部分コイル108a、108bの延在領域が平面的になると共に、ベルト部材94aの(半円状の)横断面がベース板96の裏面および前面に直交する立体的形状として、各部は構成されている。
従って、部分コイル108a、108bからなるコイル素子全体に重なる平面と、コイル素子106全体に重なる平面とは、互いに直交し、互いのカップリングは殆ど生じない。同様に、部分コイル108a、108bからなるコイル素子全体に重なる平面と、コイル素子104全体に重なる平面とは、互いに直交し、互いのカップリングは殆ど生じない。
【0031】
次に、RFコイル装置90Aの各部を構成する材料について説明する。
図1のRFコイル装置90Aは、コイル素子104、106と、部分コイル108a、108bと、これらをケーブル98に接続する不図示の内部回路と、ケーブル98と、コネクタ100、102、112、114内の不図示の電極の部分を除き、絶縁性の材料で形成されている。
【0032】
ベース板96は、変形しない材料で形成されている。なお、ベース板96は、変形しない本体を例えば柔らかい繊維材料で覆うことで、装着時のクッション性を持たせてもよい。上記の変形しない材料としては例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics:強化繊維プラスチック)やポリエチレンなどを用いることができる。ベース板96内のコイル素子104、106、部分コイル108aは、例えば上記のFRPなどで形成された固い回路基板上に銅などの伝導性材料を配設することで構成される。
【0033】
ベルト部材94aは、変形しない材料で形成されているが、その前面を柔らかい材料で覆うことで装着時のクッション性を持たせてもよい(この点は、後述の各実施形態における変形しない材料で形成されたベルト部材およびベース部材などについても同様である)。部分コイル108bも、同様にFRPなどで形成された固い回路基板上に銅などの伝導性材料を配設することで構成される。後述の
図6〜
図9のコイル素子118、120、122、124、134等についても同様である。
【0034】
図4は、被検者Pが腕を下ろした状態におけるRFコイル装置90Aの装着状態の一例を示す平面模式図である。
図4では、煩雑となるのでコネクタ100、102等の細部を省略している(後述の各実施形態における装着状態を示す図も同様)。
図4に示すように、RFコイル装置90Aの装着状態では、ベルト部材94aとベース部材92との間に被検者Pの腕が挿通される。
【0035】
装着方法としては、例えば、被検者Pの背面の肩近傍にベース部材92を配置した状態で、腕の根元に被さるように上からベルト部材94aをベース部材92に嵌合すればよい。或いは、ベルト部材94aをベース部材92に嵌合させた状態で、ベルト部材94aとベース部材92との間の空隙である挿通口に被検者Pの腕を通すようにしてもよい。
【0036】
ここで、ベルト部材94aの幅W(
図3参照)は、被検者Pが腕を下ろした状態でベース部材94aを脇に無理なく挟める程度であることが望ましく、例えば2cm〜6cmにすることができる(この点は、後述の第5の実施形態のベルト部材286aや、第7の実施形態のベルト部材404等についても同様である)。
【0037】
図5は、被検者Pが腕を上げた状態におけるRFコイル装置90Aの装着状態の一例を示す平面模式図である。被検者Pの腕は、上記のような適切な幅Wで構成されたベルト部材94aで挟まれているだけである。従って、RFコイル装置90Aは、腕を上げた状態、および、腕を下げた状態のどちらの場合にも、無理なく装着することができる。
【0038】
図6は、ベルト部材の別の例の構造を示す模式的斜視図である。
図6に示すように、ベルト部材94bは、
図3のベルト部材94aの中央の両側にそれぞれ、円盤を半分にした形状の突出部116a、116bを一体形成したものである。突出部116a、116b内にはそれぞれ、ループ状のコイル素子118、120が配設されている。
【0039】
コイル素子118、120は、デカップリングのため、前述同様にコイル素子118を含む最小の面と、コイル素子120を含む最小の面とが部分的に対向するように配設される。このベルト部材94bをベース部材92に嵌合することで、RFコイル装置90Aとして、5個のコイル素子による広い感度領域が得られる。
【0040】
なお、コイル素子118、120はそれぞれ、ベルト部材94b内の配線、コネクタ100、112や、前述したベース部材92内の内部回路を介して、ケーブル98内の個別の配線に接続される(図示せず)。以下に述べる
図7〜
図9のコイル素子122、124、134についても同様である。
【0041】
図7は、ベルト部材の別の例の構造を示す模式的斜視図である。
図7に示すように、ベルト部材94cは、
図6のベルト部材94bの突出部116a、116bをさらに大きくした形状である。そして、両側の突出部内には、ループ状のコイル素子122、124がそれぞれ配設される。これにより、ベルト部材94cとベース部材92とを
図4と同様に被検者Pに装着した場合に、被検者Pの肩の前面側(背中とは反対側)の感度領域を広げることができる。
【0042】
図8は、ベルト部材の別の例の構造を示す模式的斜視図である。
図8に示すように、ベルト部材94dは、
図3のベルト部材94aと同様の構造の半円部128に対して、回転軸機構130によってリング部材132を同一面内で回転可能に固定した構造である。回転軸機構130およびリング部材132は、前述同様に変形しない材料で形成されている。リング部材132は、環状であり、その内部を1周するようにループ状のコイル素子134が配設されている。なお、
図8では、ベルト部材94dは、半円部128およびリング部材132を挿通するように回転軸を設けた構成であるが、リング部材132を回転可能にする構造については、この形態に限定されるものではない。
【0043】
図9は、
図8のベルト部材94dの変形例を示す模式的斜視図である。
図9のベルト部材94d’は、回転軸機構130の代わりに可撓性連結部136を設けたことを除き、
図8のベルト部材94dと同様である。
【0044】
可撓性連結部136は、半円部128およびリング部材132を連結しており、変形可能な材料で形成されている。この変形可能な部分には、FPC(Flexible Printed Circuit)などを用いることができる。そして、可撓性連結部136内には(可撓性を有する不図示の)導線が通っており、コイル素子134は、可撓性連結部136および半円部128内の不図示の配線を介してコネクタ112に接続されている。
【0045】
図10は、被検者Pが腕を下ろした状態における、
図8のベルト部材94dと
図2のベース部材92とで構成されるRFコイル装置90Aの装着状態の一例を示す平面模式図である。
【0046】
図11は、
図10の装着状態からリング部材132を回転させた場合における、RFコイル装置90Aの装着状態の一例を示す平面模式図である。
図10、
図11から分かるように、ベルト部材94d、94d’を用いれば、RFコイル装置90Aを装着した状態においても、リング部材132の位置の変更によって、被検者Pに対するコイル素子134の感度領域を適宜変更することができる。
【0047】
このように第1の実施形態のRFコイル装置90Aでは、どのベルト部材94a〜94d’を用いても、1つのRFコイル装置90Aで腕を上げた状態、下ろした状態の両方に適した形状を持つ。即ち、RFコイル装置90Aは、腕を上げた状態、および、腕を下げた状態のどちらの場合にも、無理なく装着することができる。このため、腕を上げた状態での撮像時と、腕を下ろした状態での撮像時で、RFコイル装置の交換は不要である。従って、被検者の負担を軽減でき、複数のコイルを取り替える時間を省略できる。また、肩の撮像に関して複数のコイル装置を購入する必要はなく、費用を低減しうる。
【0048】
また、被検者が寝台上で仰向けに寝た装着状態では、ベース部材92の前面が被検者の背面に密着し、部分コイル108a、108bの連結によって被検者の腕を巻くコイル素子が形成される。即ち、ボウル状に窪んだ従来の肩用RFコイル装置とは異なり、ベース部材92が平坦に形成されているので、被検者の背面との間に空隙はあまり形成されない。このため、腕を上げた状態と腕を下げた状態の双方において、部分コイル108a、108bの連結によるコイル素子と、コイル素子104、106によって良好なコイル感度が得られる。
【0049】
また、ベース板96は、例えば、被検者が仰向けに寝た装着状態において、被検者の背面と寝台との間に配置し易いように平板状に形成される。平板状である限り、ベース板96を大きく形成しても寝台上における被検者の姿勢維持や装着の妨げにはならない。従って、ベース板96を十分な大きさで形成して、内部のコイル素子104、106の配置領域を広げることで、体格の大きい被検者の場合に関節部分までのコイル感度が足りなくなるといったことを防止できる。
【0050】
さらに、撮像目的に応じてベルト部材94a〜94d’のいずれかを選択することで、コイル素子の数を変更できると共に、コイルの感度領域も変更できる。
【0051】
以上説明した第1の実施形態によれば、MRIのRFコイル装置90Aとして、腕を上げた状態と腕を下げた状態の双方において無理なく装着可能にすると共に十分なコイル感度を得ることが可能である。
【0052】
なお、第1の実施形態では、ベース部材92のベース板96が円盤状である例を述べたが、これは一例にすぎない。ベース板96は、例えば裏面および前面(おもて面)が正方形や長方形などの平板状であってもよい。この点は、後述の
図20に示す第4の実施形態のRFコイル装置90Dのベース板248についても同様である。
【0053】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態におけるRFコイル装置90Bの概略構造を示す模式的斜視図である。
図12に示すようにRFコイル装置90Bは、ベース部材140に対して前述のベルト部材94aと、肩当て部材148a、148bとを嵌合することで構成される。
【0054】
ベース部材140は、裏面および前面(おもて面)が正方形に形成された直方体状のベース板142と、ベース板142上に互いに離間して配設されたコネクタ100、102と、ケーブル98とを有する。
ベース板142は、第1の実施形態のベース板96と同様に変形しない材料で形成されている。
【0055】
コネクタ100、102はそれぞれ、ベース板142の正方形状の前面の1辺の中央に隣接して互いに対向するように配設される。
ケーブル98は、ベース板142におけるコネクタ100側の側面から露出している。
【0056】
ベース板142内には、ベース板142をおよそ2等分する中心ラインに沿って部分コイル108aが配設されている。部分コイル108aは、一端側がコネクタ100に接続されており、他端側がコネクタ102に接続されている。部分コイル108aは、
図1〜
図3を用いて前述したように、ベルト部材94a内の部分コイル108bに電気的に接続されることで、ループ状のコイル素子として機能する。
【0057】
また、ベース板142内には、ベース板142の裏面および前面に平行になるように、ループ状のコイル素子156、158が平面的に配設されている。コイル素子156、158は、デカップリングのため、第1の実施形態のコイル素子104、106と同様に両者が部分的に対向するように配設される。
第1の実施形態と同様に、ベルト部材94aの両端がベース板142に対して嵌合された状態において、部分コイル108a、108b(
図3参照)の導線の延在領域に重なる平面がベース板142の裏面および前面に直交するように、部分コイル108a、108bは配設されている。これを実現するため、上記嵌合状態において、ベルト部材94aの(半円状の)横断面がベース板142の裏面および前面に直交する立体的形状として、各部は構成される。従って、部分コイル108a、108bからなるコイル素子全体に重なる平面と、コイル素子156またはコイル素子158全体に重なる平面とは、互いに直交し、互いのカップリングは殆ど生じない。
【0058】
また、ベース板142内において、ケーブル98の露出面とは反対側の側面側には、
図12に一点鎖線で示す部分コイル164c、164dが配設されている。部分コイル164cは、一方の肩当て部材148a内に配設された部分コイル164a(
図12で点線で示す)に電気的に接続されて、ループ状のコイル素子として機能する。部分コイル164dは、他方の肩当て部材148b内に配設された部分コイル164b(
図12で点線で示す)に電気的に接続されて、ループ状のコイル素子として機能する。
【0059】
部分コイル164cとコイル素子158は、デカップリングのため、
図12に示すように両者が部分的に重なるように配設される。部分コイル164dとコイル素子156も、デカップリングのため、
図12に示すように両者が部分的に重なるように配設される。
【0060】
コイル素子156、158、部分コイル108a、164c、164dは、ベース板142内の回路によって、個別にケーブル98内の別々の配線に電気的に接続されている(図示せず)。
【0061】
肩当て部材148a、148bは、可撓性を有する材料によって湾曲等の変形が可能に形成されている。このように変形可能な部分としては、例えば特許文献1に記載の可撓性を有する回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)などを用いることができる。即ち、部分コイル164a、164bは、例えばFPCで形成された回路基板上に銅線などの可撓性を有する配線を設けることで構成される。
【0062】
図13は、ベルト部材94aおよび肩当て部材148a、148bを外した状態におけるRFコイル装置90Bの上面模式図である。
図13では、煩雑となるので、部分コイル108a、164a〜164d、コイル素子156、158やベルト部材94aを省略している。
【0063】
ベース板142内には、ケーブル98の露出面とは反対側の側面に露出するように、コネクタ102の両側にコネクタ168c、168dがそれぞれ埋設されている。また、肩当て部材148a、148bの一端側には、コネクタ168a、168bがそれぞれ設けられている。
【0064】
コネクタ168cは、肩当て部材148aのコネクタ168aを含む一端側を嵌合する形状である。この嵌合状態において、
図12の部分コイル164a、164cは、コネクタ168a、168c内の不図示の電極等によって互いに両端が接続され、ループ状のコイル素子として機能する。
【0065】
図13に戻って、コネクタ168dは、肩当て部材148bのコネクタ168bを含む一端側を嵌合する形状である。この嵌合状態において、
図12の部分コイル164b、164dは、コネクタ168b、168d内の不図示の電極等によって互いに両端が接続され、ループ状のコイル素子として機能する。
【0066】
図14は、被検者Pが腕を下ろした状態におけるRFコイル装置90Bの装着状態の一例を示す平面模式図である。
図14に示すように、RFコイル装置90Bの装着状態では、ベルト部材94aとベース部材140との間の空隙(挿通口)に被検者Pの腕が挿通される。
【0067】
例えば被検者Pの背面にベース部材140を当てた装着状態では、肩当て部材148a、148bを被検者Pの前面に被せることもできるし、被せずにおくこともできるし、肩当て部材148a、148bの一方または双方を外すこともできる。
【0068】
図15は、被検者Pが腕を上げた状態におけるRFコイル装置90Bの装着状態の一例を示す平面模式図である。ここで、肩当て部材148a、148bについては可撓性を有するので被検者Pの腕の動きを妨げない。従って、被検者Pの腕の動きを制限するものは、実質的にはベルト部材94aだけであるので、RFコイル装置90Aは、腕を上げた状態、および、腕を下げた状態のどちらの場合にも、無理なく装着することができる。このため、例えば
図15に示すように、肩当て部材148bを被検者Pの頭頂側に向けて広げると共に肩当て部材148aを被検者Pの前面に被せることができる。
【0069】
このように第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に1つのRFコイル装置90Bで腕を上げた状態、下ろした状態の両方に適した形状を持つため、腕を上げた状態での撮像時と、腕を下ろした状態での撮像時でRFコイル装置の設置し直しは不要である。このため、複数のコイルを取り替える時間や、肩の撮像に関して複数のコイル装置を購入する費用を省ける。
【0070】
また、装着状態においてベース部材140の前面を被検者の背面に密着できると共に、肩当て部材148a、148bを被検者の前面に密着するように被せることができる。このため、腕を上げた状態と腕を下げた状態の双方において、部分コイル108a、108b、164a〜164dの連結による3つのコイル素子と、コイル素子156、158とによって、良好なコイル感度が得られる。
【0071】
また、ベース板142は、平板状である限り、大きく形成しても被検者の姿勢維持や装着の妨げにはならないので、ベース部材142を十分な大きさで形成して、内部のコイル素子156、158の配置領域を広げることで、体格の大きい被検者の場合に関節部分までのコイル感度が足りなくなるといったことを防止できる。
【0072】
なお、第2の実施形態では、ベルト部材94aがベース部材140に対して着脱自在に連結される例を述べたが、これは一例にすぎない。コネクタ100、102等を省き、着脱自在にせずに、ベルト部材94aとベース部材140とを接合した形態にしてもよい。肩当て部材148a、148bに関しても、同様に着脱自在とはせずに、ベース部材140に接合した形態にしてもよい。肩当て部材148a、148bは可撓性を有するので、腕の上げ下ろしの際に被検者の動きを殆ど制限しないから、この場合も上記同様の効果が得られる。
【0073】
(第3の実施形態)
図16は、第3の実施形態におけるRFコイル装置90Cの概略構造を示す分解斜視図である。
図16に示すように、RFコイル装置90Cは、ベース部材200と、ベルト部材94aと、肩当て部材202a、202bとで構成される。
【0074】
ベース部材200は、裏面および前面(おもて面)が正方形に形成された直方体状のベース板206と、ベース板206上に配設されたコネクタ100、102、210、212と、ケーブル98とを有する。
ベース板206は、前述したFRPなどの変形しない材料で形成されている。
【0075】
コネクタ100、102はそれぞれ、第2の実施形態と同様にベース板206の正方形状の前面(おもて面)の1辺の中央に隣接して互いに対向するように配設される。
ケーブル98は、ベース板206におけるコネクタ100側の側面から露出している。
【0076】
ベース板206内には、ベース板206をおよそ2等分する中心ラインに沿って部分コイル108aが配設されている。部分コイル108aは、一端側がコネクタ100に接続されており、他端側がコネクタ102に接続されている。部分コイル108aは、前述同様にベルト部材94a内の部分コイル108bに接続されて、ループ状のコイル素子として機能する。
【0077】
また、ベース板206内には、ベース板206の裏面および前面に平行になるように、ループ状のコイル素子216、218が平面的に配設されている。コイル素子216、218は、デカップリングのため、第2の実施形態と同様に両者が部分的に重なるように配設される。
第2の実施形態と同様に、ベルト部材94aの両端がベース板206に嵌合された状態において、部分コイル108a、108bの導線の延在領域に重なる平面がベース板206の裏面および前面に直交するように、部分コイル108a、108bは配設されている。これを実現するため、上記嵌合状態において、ベルト部材94aの(半円状の)横断面がベース板206の裏面および前面に直交する立体的形状として、各部は構成される。従って、部分コイル108a、108bからなるコイル素子全体に重なる平面と、コイル素子216またはコイル素子218全体に重なる平面とは、互いに直交し、互いのカップリングは殆ど生じない。
【0078】
また、ベース板206内において、ケーブル98の露出面とは反対側の側面側には、
図16に一点鎖線で示す部分コイル222c、222dが配設されている。部分コイル222cは、一方の肩当て部材202a内に配設された部分コイル222a(
図16で点線で示す)に接続されて、ループ状のコイル素子として機能する。部分コイル222dは、他方の肩当て部材202b内に配設された部分コイル222b(
図16で点線で示す)に接続されて、ループ状のコイル素子として機能する。
【0079】
デカップリングのため、部分コイル222cとコイル素子216とが部分的に重なるように配設されると共に、部分コイル222dとコイル素子218とが部分的に重なるように配設される。コイル素子216、218、部分コイル108a、222c、222dは、ベース板206内の回路によって、個別にケーブル98内の別々の配線に電気的に接続されている(図示せず)。
【0080】
肩当て部材202a、202bは、同じ構造であり、板の一端側の半分のみを弧状に湾曲すると共に他端側の半分を平坦なままにした形状である。肩当て部材202a、202bは、前述したFRPなどの変形しない材料で形成されている。肩当て部材202aは、その内部で一端側から他端側に向けて配設された部分コイル222aと、一端側に配設されたコネクタ226aとを有する。同様に、肩当て部材202bは、その内部で一端側から他端側に向けて配設された部分コイル222bと、一端側に配設されたコネクタ226bとを有する。
【0081】
ベース部材200のコネクタ210は、肩当て部材202aのコネクタ226aを含む一端側を嵌合する形状である。この嵌合状態において、部分コイル222a、222cは、コネクタ226a、210内の不図示の電極等によって互いに両端が接続され、ループ状のコイル素子として機能する。
【0082】
同様に、ベース部材200のコネクタ212は、肩当て部材202bのコネクタ226bを含む一端側を嵌合する形状である。この嵌合状態において、部分コイル222b、222dは、コネクタ226b、212内の不図示の電極等によって互いに両端が接続され、ループ状のコイル素子として機能する。
【0083】
図17は、RFコイル装置90Cの各部を連結した場合の概観を示す模式的斜視図であり、複数の装着状態の1つを示す。
図17に示すように、RFコイル装置90Cは、ベルト部材94a、肩当て部材202a、202bをそれぞれベース部材200に対して嵌合することができる。また、RFコイル装置90Cは、部分コイル108aの延在線を挟んで対称的な構造である。
【0084】
連結状態では、肩当て部材202a、202bにおけるコネクタ226a、226b(
図16参照)とは反対側の部分と、ベース部材200との間の空隙が生じる。この空隙と、ベルト部材94a−ベース部材200間の空隙とを挿通するように腕を通すことで、RFコイル装置90Cを装着できる。
【0085】
図18は、被検者Pが腕を下ろした状態におけるRFコイル装置90Cの装着状態の一例を示す平面模式図である。この例では、被検者Pの背面にベース部材200を密着させている。被検者Pが腕を下ろした状態では、肩当て部材202a、202bは、
図18に示すように双方をベース部材200に連結してもよいし、一方または双方を取り外してもよい。
【0086】
図19は、被検者Pが腕を上げた状態におけるRFコイル装置90Cの装着状態の一例を示す平面模式図である。腕を下ろした被検者PにRFコイル装置90Cが装着された状態において、被検者Pが腕を上げる場合、肩当て部材202a、202bを取り外せばよい。これにより、被検者Pの腕の動きを制限するものは、ベルト部材94aだけとなり、第2の実施形態と同様に、腕を上げた状態、および、腕を下げた状態のどちらの場合にも、無理なく装着することができる。
【0087】
このように第3の実施形態では、肩当て部材202a、202bを用いない状態では、ベース部材92とベルト部材94aとで構成される第1の実施形態のRFコイル装置90Aと機能的には同様になるので、同様の効果が得られる。
【0088】
また、腕を下ろした状態での撮像時に被検者Pの前面側のコイル感度を上げる場合には、肩当て部材202a、202bの一方または双方を用いればよい。
【0089】
肩当て部材202a、202bは着脱自在であるので、それらが連結されていても、取り外すだけで、RFコイル装置90C自体の交換をすることなく、腕を上げた状態または腕を下げた状態に移行することができる。従って、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
なお、第3の実施形態では、ベルト部材94aがベース部材200に対して着脱自在に連結される例を述べたが、これは一例にすぎない。コネクタ100、102等を省き、ベルト部材94aとベース部材200とを接合した形態にしてもよい。また、ベース部材200として両面が正方形状のものを例に挙げたが、これは一例にすぎず、例えば第1の実施形態のように円盤状にしてもよい。
【0091】
(第4の実施形態)
第4の実施形態のRFコイル装置90Dは、第1の実施形態のコネクタ102、114の代わりにヒンジ(ちょうつがい)を設けて、ベルト部材94aの一端側をベース部材92に対して回転可能に固定した構造と同等である。
【0092】
図20および
図21は、第4の実施形態におけるRFコイル装置90Dの概略構造を示す模式的斜視図である。
図20は、ベース部材240と、ベルト部材242の一端側とを離した状態を示し、
図21は、回転によってベース部材240に対してベルト部材242の一端側を勘合させた状態を示す。
【0093】
図22は、ベルト部材242の回転動作を示すRFコイル装置90Dの模式的側面図である。これら
図20〜
図22に示すように、RFコイル装置90Dは、ベース部材240と、ベース部材240に対して回転可能に固定されたベルト部材242とで構成される。
【0094】
図20に示すように、ベース部材240は、円盤状に形成されたベース板248と、ベース板248上に配設されたコネクタ252aおよびヒンジ機構256と、ケーブル98とを有する。ベルト部材242は、第1の実施形態のベルト部材94aと同様に、板を半円状に湾曲させた形状であり、一端側がヒンジ機構256により固定されており、他端側にコネクタ252bを有する。ベース板248およびベルト部材242は、前述したFRPなどの変形しない材料で形成されている。
ケーブル98は、ベース板248におけるコネクタ252a側の側面から露出している。
【0095】
ヒンジ機構256は、ベース部材240の前面(おもて面)における、ケーブル98とは反対側の外縁に配設されている。
図22に示すように、ヒンジ機構256は、円盤状のベース板248の両面に垂直な同一面内でベルト部材242を回転可能にする。
図22において、点線は、ベース部材240に対して一端側を勘合させた状態のベルト部材242を示す。
【0096】
図20に示すように、ベース板248内には、ベース板248をおよそ2等分する中心ラインに沿って、図中に一点鎖線で示すコイル素子260の一部が配設されている。コイル素子260の残りの部分は、ヒンジ機構256内を通って、ベルト部材242内部で一端側から他端側に亘って配設されている。コイル素子260は、一端がコネクタ252aに接続されており、他端がベルト部材242内でコネクタ252bに接続されている。
【0097】
コネクタ252aは、ベース部材240の前面(おもて面)における、ヒンジ機構256とは反対側に配設されている。コネクタ252aは、コネクタ252bを含むベルト部材242の他端側を嵌合する形状である。この嵌合状態においてコイル素子260は、コネクタ252a、252b内の不図示の電極等によって両端が電気的に接続され、ループ状のコイル素子となる。
【0098】
また、ベース板248内には、その裏面および前面に平行なループとなるように、第1の実施形態のコイル素子104、106と同様の配置でループ状のコイル素子264、266が配設されている。
図20において、コイル素子264は二点鎖線で、コイル素子266は点線で示す。コイル素子264、266は、デカップリングのため、前述の実施形態と同様に両者が部分的に対向するように配設される。
【0099】
また、上記のコイル素子260は、配置的には第1の実施形態の部分コイル108a、108bに相当するが、コイル素子264、266よりもループを形成する導線の断面積が大きい。これらコイル素子260、264、266は、ベース板248内の不図示の回路によって個別にケーブル98内の別々の配線に接続されている。
なお、第1の実施形態と同様に、ベルト部材242がコネクタ252aに嵌合された状態において、コイル素子260の導線の延在領域に重なる平面がベース板248の裏面および前面に直交するように、コイル素子260は配設されている。これを実現するため、上記嵌合状態において、ベルト部材242の(半円状の)横断面がベース板248の裏面および前面に直交する立体的形状として、各部は構成される。従って、コイル素子260全体に重なる平面と、コイル素子264またはコイル素子266全体に重なる平面とは、互いに直交し、互いのカップリングは殆ど生じない。
【0100】
このように第4の実施形態のRFコイル装置90Dは、第1の実施形態のベルト部材94aの一端側をベース部材92に回転可能に固定した構造と同等であるため、その装着方法については第1の実施形態と同様である。このため、第4の実施形態では、ベルト部材94aとベース部材92とで構成した第1の実施形態のRFコイル装置90Aと同様の効果が得られる。
【0101】
また、第4の実施形態では、ベルト部材242内およびベース部材240内を1周するコイル素子260の導線の断面積が大きいので、装着状態において被検者の前面および背面の両方に配置されるコイル素子260の周囲でコイル感度が向上している。
【0102】
図23は、第4の実施形態の変形例に係るRFコイル装置90Eの概略構造を示す模式的斜視図である。
図23に示すRFコイル装置90Eは、上記の導線断面積を大きくしたコイル素子260の代わりに、同様の配置で「別のコイル素子」を配設した点を除き、上記RFコイル装置90Dと同じである。当該「別のコイル素子」は、便宜上、符号271とするが、この部材は以下の271a、271b、271c、271dを合わせたものなので、図では符号を示していない。コイル素子271は、2ターン巻いたコイル素子である。
図23では、その配線を分かり易くするため、コイル素子271を4つの部分271a、271b、271c、271dに分けて示した。
図中に太線で示す第1部分271aはベース板248’内に配設された部分であり、一点鎖線で示す第2部分271bはベルト部材242’内に配設された部分である。点線で示す第3部分271cはベース板248’内に配設された部分であり、実線で示す第4部分271dはベルト部材242’内に配設された部分である。
【0103】
第1部分271aと第3部分271cとがベース板248’内で互いに交差すると共に、第2部分271bおよび第4部分271dはベルト部材242’内で互いに等間隔で離間している。これにより、コイル素子271は、その電流経路が8の字をその交差点で折り曲げた形状となっている。
電流の経路は、一例としてヒンジ機構256の箇所から順に表記すれば、第1部分271a、第2部分271b、第3部分271c、第4部分271d、第1部分271aのようにループ状となる。コイル素子271は、ベース板248’内の不図示の回路によって個別にケーブル98内の別々の配線に接続されている。このように、導線の断面積を大きくするのでなく、1つのコイル素子の巻数を増やすことによっても、コイル感度を向上させることができる。
【0104】
なお、第4の実施形態では、ベース板248が円盤状である例を述べたが、これは一例にすぎない。ベース板248は、例えば裏面および前面(おもて面)が正方形や長方形や6角形などの平板状であってもよい。また、第4の実施形態ではベルト部材242が半円状に湾曲している例を述べたが、これは一例にすぎず、例えば角括弧状に折曲した形状のものでもよい。
【0105】
(第5の実施形態)
図24は、第5の実施形態におけるRFコイル装置90Fの概略構造を示す模式的斜視図である。
図24に示すように、RFコイル装置90Fは、リング状のベース部材280の2箇所において、バンド部材282を接合部材284a、284bによってそれぞれ固定した構造である。
【0106】
バンド部材282は、帯状のベルト部材286aと、羽根部材286b、286c、286d、286eとを一体形成した構造であり、これらは例えば前述のFPCなどによって形成されており、可撓性を有する。
【0107】
ベルト部材286aは、一端側が接合部材284bによってベース部材280に固定されていると共に他端側にコネクタ292aを有し、その中央よりもやや一端側が接合部材284aによってベース部材280に固定されている。
ベルト部材286a内には、その一端から他端に亘ってコイル素子300aが配設されている。コイル素子300aは、一端がコネクタ292aに電気的に接続されており、他端がベース部材280内を通ってコネクタ292bに電気的に接続されている。コイル素子300aは、コネクタ292a、292bが連結することで両端が電気的に接続され、ループ状のコイルとして機能する。
【0108】
羽根部材286b、286c、286d、286e内にはそれぞれ、ベルト部材286a内に跨るように、ループ状のコイル素子300b、300c、300d、300eが配設されている。羽根部材286b、286cは、互いに部分的に重なるようにベルト部材286aに対して固定されており、羽根部材286d、286eも互いに部分的に重なるようにベルト部材286aに対して固定されている。これは、デカップリングのため、コイル素子300b、300c、300d、300eが平面的に見て部分的に重なるようにしたものである(後述の
図25参照)。
【0109】
ベース部材280は、環状のリング部材304と、リング部材304上に設けられたコネクタ292bと、リング部材304の側面から出ているケーブル98とを有する。リング部材304は、前述のFRPなどの変形しない材料によって形成されている。また、リング部材304内には、
図24に点線で示すループ状のコイル素子308が配設されている。
【0110】
コイル素子300a、300b、300c、300d、300e、308は、ベルト部材286aやリング部材304内の不図示の回路によって、ケーブル98内の別々の配線にそれぞれ接続されている。
【0111】
コネクタ292bは、コネクタ292aを含むベルト部材286aの一端側を嵌合する形状である。この嵌合状態において、コネクタ292a、292b内の不図示の電極等によって、コイル素子300aの両端が電気的に接続される。
【0112】
図25は、RFコイル装置90Fにおいて、バンド部材282を広げた状態を示す平面模式図である。コイル素子300b、300c、300d、300eは、コイル素子300aの延在ラインを基準に線対称に配設されている。そして、デカップリングのため、コイル素子300bは、平面的に見てコイル素子300c、300dに部分的に重なるように配設されている。同様に、コイル素子300eも、平面的に見てコイル素子300c、300dに部分的に重なるように配設されている。
【0113】
図26は、被検者Pが腕を下ろした状態におけるRFコイル装置90Fの装着状態の一例を示す平面模式図である。装着方法としては、例えば、被検者Pの肩の背面にベース部材280を密着した状態で、ベルト部材286aで腕の根元側を巻くようにして、ベルト部材286aの一端をベース部材280のコネクタ292bに嵌合すればよい。
【0114】
そして、
図26に示すように、被検者Pの前面には4つの羽根部材286b〜286eが被せられるが、羽根部材286b〜286eは可撓性を有するので、被検者Pの腕の動きを殆ど制限しない。
【0115】
図27は、被検者Pが腕を上げた状態におけるRFコイル装置90Fの装着状態の一例を示す平面模式図である。ここで、被検者Pの腕の動きを制限するものは、実質的には腕に巻かれるように装着されたベルト部材286aだけであるので、RFコイル装置90Fを装着した状態で無理なく腕の上げ下げを行うことができる。
【0116】
このように第5の実施形態においても、1のRFコイル装置90Fで腕を上げた状態、下ろした状態の両方に適した形状を持つため、腕を上げた状態、および、腕を下げた状態のどちらの場合にも、無理なく装着することができる。従って、第5の実施形態においても第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、装着状態では、4つの羽根部材286b〜286eによって被検者の前面に4つのループ状のコイル素子300b〜300eが密着する。このため、特に被検者の前面側において広く良好なコイル感度が得られる。
【0117】
なお、第5の実施形態では、ベース部材280が(リング部材304によって)環状に形成される例を述べたが、これは一例にすぎない。ベース部材280は、例えば第1の実施形態と同様の円盤状にしてもよいし、第2の実施形態のように両面が略正方形の薄板状にしてもよい。
【0118】
(第6の実施形態)
図28は、第6の実施形態のRFコイル装置90Gの概略構成を示す模式的斜視図であり、
図29は、そのRFコイル装置90Gから2つのベルト部材を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【0119】
図28、
図29に示すように、RFコイル装置90Gは、(内部にコイル素子の一部としての部分コイルを含む)2つのベルト部材344、346をベース部材340に対して嵌合することで構成される。RFコイル装置90Gは、2つのベルト部材344、346を被検者の両肩にそれぞれ上から被せるか、或いは、ベルト部材344、346とベース部材340との空隙に両腕をそれぞれ通すように構成されている。このため、RFコイル装置90Gは、左右対称な構造となっている。
【0120】
図28に示すように、ベース部材340は、ベース板350と、ベース板350上に配設されたコネクタ354a、354b、356a、356bと、ケーブル98とを有する。ベース板350は、両面が略長方形の平板状(裏面、前面、および、4つの側面からなる略直方体状)であり、FRPなどの変形しない材料で形成されている。
【0121】
ベース板350の前面(おもて面)において、ケーブル98側の外縁に隣接してコネクタ354a、356aが例えば約30cm程度の間隔で離間して配設されている。この間隔は、前記したRFコイル装置90Gの被検者に対する装着状態(後述の
図30、
図31を参照)を考慮して、標準的な人体の肩幅より若干狭くしたものである。また、ベース板350の前面におけるコネクタ354aとコネクタ356aの間の部分は、被検者の首に当接される部分であるため、滑らかに窪むように面取りされている。
【0122】
ベース板350において、ケーブル98が出ている側面に隣接する2つの側面には、肩当て部材364、366がそれぞれ固定されている。コネクタ354bは、ベース板350の前面の外縁において、肩当て部材364とベース板350との接合部分よりも例えば1cm程度離れた位置に配設されている。コネクタ356bは、ベース板350の前面の外縁において、肩当て部材366とベース板350との接合部分よりも例えば1cm程度離れた位置に配設されている。
【0123】
図29に示すように、ベース板350内では、コネクタ354a−354b間を結ぶ位置に部分コイル374bが配設され、コネクタ356a−356b間を結ぶ位置に部分コイル376bが配設されている。
【0124】
ベース板350内において、部分コイル374bの延在線を中心に挟んで対称的な配置となるように、肩当て部材364側にはコイル素子380aが配設され、その反対側にはコイル素子380bが配設されている。
同様に、ベース板350内において、部分コイル376bの延在線を中心に挟んで対称的な配置となるように、肩当て部材366側にはコイル素子380dが配設され、その反対側にはコイル素子380cが配設されている。
コイル素子380a〜380dは、直角三角形の各頂点を丸めた輪郭のループ状であり、それぞれカップリングがあまり生じない程度の間隔で離間して配設されている。また、コイル素子380a〜380dは、その導線部分がベース板350の裏面および前面に平行になるように平面的に配設されている。
【0125】
肩当て部材364、366は、FPCなどの可撓性を有する材料で形成されており、折り曲げ可能である。肩当て部材364内には、ベース板350側にコイル素子370aが配設されており、その反対側にコイル素子370bが配設されている。
同様に、肩当て部材366内には、ベース板350側にコイル素子372aが配設されており、その反対側にコイル素子372bが配設されている。
これらコイル素子370a、370b、372a、372bは、直角三角形の各頂点を丸めた輪郭のループ状であり、それぞれカップリングがあまり生じない程度の間隔で離間して配設されている。
【0126】
部分コイル374b、376b、コイル素子380a〜380d、370a、370b、372a、372bは、肩当て部材364、366およびベース板350内の不図示の回路によって、ケーブル98内の別々の配線に個別に接続されている。
【0127】
図29に示すように、ベルト部材344、346は、帯状の板を半円状にねじるように湾曲させた形状である。ベルト部材344、346は、互いに対称的な形状であることを除いて同様の構造であり、FRPなどの変形しない材料で形成されている。
ベルト部材344は、一端側にコネクタ384aを有すると共に他端側にコネクタ384bを有し、その内部の一端から他端に亘って部分コイル374aが配設されている。
同様に、ベルト部材346は、一端側にコネクタ386aを有すると共に、他端側にコネクタ386bを有し、その内部の一端から他端に亘って部分コイル376aが配設されている。
【0128】
ベース板350上のコネクタ354aは、コネクタ384aを含むベルト部材344の一端側を嵌合する形状であり、ベース板350上のコネクタ354bは、コネクタ384bを含むベルト部材344の他端側を嵌合する形状である。ベルト部材344の両端がコネクタ354a、354bに嵌合されると、部分コイル374a、374bは、コネクタ354a、354b、384a、384b内の不図示の電極等によって互いに両端が電気的に接続されてループ状のコイル素子となる。
第1の実施形態と同様に、ベルト部材344の両端がベース板350に嵌合された状態において、部分コイル374a、374bの導線の延在領域に重なる平面がベース板350の裏面および前面に直交するように、部分コイル374a、374bは配設されている。これを実現するため、上記嵌合状態において、ベルト部材344の(略半円状の)横断面がベース板350の裏面および前面に直交する立体的形状として、各部は構成される。従って、部分コイル374a、374bからなるコイル素子全体に重なる平面と、コイル素子380aまたはコイル素子380b全体に重なる平面とは、互いに直交し、互いのカップリングは殆ど生じない。
【0129】
同様に、ベース板350上のコネクタ356aは、コネクタ386aを含むベルト部材346の一端側を嵌合する形状であり、ベース板350上のコネクタ356bは、コネクタ386bを含むベルト部材346の他端側を嵌合する形状である。ベルト部材346の両端がコネクタ356a、356bに嵌合されると、部分コイル376a、376bは、コネクタ356a、356b、386a、386b内の不図示の電極等によって互いに両端が電気的に接続されてループ状のコイル素子となる。
上記同様に、ベルト部材346の両端がベース板350に嵌合された状態において、部分コイル376a、376bの導線の延在領域に重なる平面がベース板350の裏面および前面に直交するように、部分コイル376a、376bは配設されている。これを実現するため、上記嵌合状態において、ベルト部材346の(略半円状の)横断面がベース板350の裏面および前面に直交する立体的形状として、各部は構成される。従って、部分コイル376a、376bからなるコイル素子全体に重なる平面と、コイル素子380cまたはコイル素子380d全体に重なる平面とは、互いに直交し、互いのカップリングは殆ど生じない。
【0130】
図30は、被検者Pが腕を下ろした状態におけるRFコイル装置90Gの装着状態の一例を示す平面模式図である。装着方法としては、例えば、ベルト部材344、346を外してから、被検者Pの背面の肩近傍にベース部材340を配置した状態で、被検者の両肩の上に被せるようにベルト部材344、346をそれぞれベース部材340に対して連結させればよい。
【0131】
或いは、ベルト部材344、346をベース部材340に取り付けた状態にしてから、ベルト部材344、346を被検者Pの両肩の上に被せるように、即ち、RFコイル装置90Gをバックパックのように背負う装着方法でもよい。そして、被検者Pの前面側に肩当て部材364、366を被せればよい。なお、
図30では装着状態を分かり易くするため、一方の肩当て部材364については被検者Pの前面側に被せていない状態を示す。
【0132】
図31は、被検者Pが腕を上げた状態におけるRFコイル装置90Gの装着状態の一例を示す平面模式図である。
図30に示す腕を下ろしての装着状態から
図31に示す腕を上げての装着状態にするには、例えば以下のようにすればよい。即ち、ベルト部材344、346を一旦取り外してから、ベルト部材344、346とベース板350との間の空隙に被検者Pの両腕をそれぞれ挿通させるように、ベルト部材344、346をベース板350に嵌合させればよい。その後、被検者Pの前面に肩当て364、366を被せればよい。ここで、肩当て部材364、366は可撓性を有するので、被検者Pの腕の動きを制限しない。
【0133】
なお、
図30に示す腕を下ろしての装着状態では、ベルト部材344、346とベース板350との間の空隙に被検者Pの両腕を挿通させていないが、挿通させるようにしてもよい。
【0134】
このように第6の実施形態においても、第3の実施形態と同様の効果が得られる。また、装着状態では、2つの肩当て部材364、366が被検者Pの前面側にくるので、4つのコイル素子370a、370b、372a、372bが被検者Pの両肩近傍に密着する。また、被検者Pの両肩の背面側には4つのコイル素子380a〜380dが密着する。さらに、これらのコイル素子とは直交する面でのループとなるように、部分コイル374a、374b、376a、376bによって2つのコイル素子が形成される。このため、被検者の背面側および前面側において広く良好なコイル感度が得られる。さらに、1つのRFコイル装置で両肩の撮像に対応することができる。
【0135】
なお、第6の実施形態では、肩当て部材364、366について、ベース板350を間に挟んで両側に対向するように配置する例を述べたが、これは一例にすぎない。肩当て部材は、
図32の斜視図で示すRFコイル装置90Hのように、コネクタ354a、356a側(装着時における被検者の頭側)に配置してもよい。
【0136】
図32に示すRFコイル装置90Hは、肩当て部材364’、366’の配置を除いて、上記のRFコイル装置90Gと同様の構造である。肩当て部材364’内にはコイル素子370a’、370b’が配設され、肩当て部材366’内にはコイル素子372a’、372b’が配設されている。この場合も上記RFコイル装置90Gと同様の装着が可能であり、被検者の肩の上から肩当て部材364’、366’を被せることができる。
【0137】
また、ベース板350については、被検者の異なる肩幅にも対応し易いように、肩幅方向に伸縮自在に構成してもよい(
図29の肩当て部材364−366間の幅が伸縮自在となるように、ベース板350を構成してもよい)。
【0138】
(第7の実施形態)
図33は、第7の実施形態のRFコイル装置90Iの概略構成を示す模式的斜視図である。
図33に示すように、RFコイル装置90Iは、第1ベース部材400および第2ベース部材402をベルト部材404の所定箇所を中心に回転軸機構410によって回転可能に連結することで構成される。これら第1ベース部材400、第2ベース部材402、ベルト部材404、回転軸機構410は、FRPなどの変形しない材料によって形成されている。
【0139】
第1ベース部材400および第2ベース部材402は、楕円状の両面と側面とによって平板状に形成されており、互いに同一の寸法および形状である。ベルト部材404は、帯状の板の両端を環状に連結させた形状である。第1ベース部材400および第2ベース部材402は、それぞれのおもて面(および裏面)が互いに平行な状態を維持するように、回転可能に固定されている。第1ベース部材400内には、ループ状のコイル素子420が平面的に配設されており、第2ベース部材402内にはループ上のコイル素子422が平面的に配設されている。
図33に示すように第1ベース部材400と第2ベース部材402とが回転可能に連結した状態において、コイル素子420、422が平面的に見て部分的に重なるように配設されている。これは、前述の実施形態と同様に、デカップリングのためである。また、ベルト部材404内には、その延在面に沿って環状のコイル素子424が配設されている。
従って、コイル素子424全体に重なる平面と、コイル素子420全体に重なる平面とは、互いに直交し、コイル素子420、424間のカップリングは殆ど生じない。同様に、コイル素子424全体に重なる平面と、コイル素子422全体に重なる平面とは、互いに直交し、コイル素子422、424間のカップリングは殆ど生じない。
【0140】
図34は、
図33とは反対側(裏面側)からRFコイル装置90Iを見た場合の平面模式図である。
図34に示すように、第1ベース部材400の裏面側からは、ケーブル98が出ている。コイル素子420、422、424は、第1ベース部材400、第2ベース部材402、回転軸機構410内の不図示の配線や回路によってケーブル98内の別々の配線に個別に接続されている。
回転軸機構410は、第1ベース部材400および第2ベース部材402を挿通する円筒状の回転軸(図示せず)を有し、この回転軸は、ベルト部材404の1箇所において固定具414によって固定されている。
【0141】
図35は、回転によって第1ベース部材400および第2ベース部材402を広げた場合のRFコイル装置90Iの模式的斜視図である。
図33〜
図35に示すように、第1ベース部材400および第2ベース部材402は、回転軸機構410によって、上記回転軸を中心に同一面内で回転可能に連結される。
【0142】
図36は、被検者Pが腕を下ろした状態におけるRFコイル装置90Iの装着状態の一例を示す平面模式図である。装着方法としては、例えば、第1ベース部材400および第2ベース部材402が被検者Pの背面側になるように、ベルト部材404に被検者Pの腕を挿通させればよい。
【0143】
図37は、被検者Pが腕を上げた状態におけるRFコイル装置90Iの装着状態の一例を示す平面模式図である。第1ベース部材400および第2ベース部材402は、被検者Pの背面側に位置し、平板状であるから、被検者Pの腕の上げ下ろしを制限しない。従って、被検者Pの腕には、その動きを制限しない程度の適切な幅のベルト部材404が巻かれているだけである。このため、RFコイル装置90Iは、腕を上げた状態、および、腕を下げた状態のどちらの場合にも、無理なく装着することができる。
【0144】
このように第7の実施形態においても、第4の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、第7の実施形態では、被検者Pが腕を下げたり上げたりした場合に、被検者Pの肩や腕の根元の直下に第1ベース部材400および第2ベース部材402が配置されるように、これらを回転させることができる(
図36、37参照)。これにより、被検者Pの腕の位置に合わせて、コイルの感度領域を適切に変更できる。
【0145】
(第8の実施形態)
図38は、第8の実施形態のRFコイル装置90Jを広げた状態を示す平面模式図である。
図39は、RFコイル装置90Jの両端を連結させた状態を示す模式的斜視図である。
図38に示すように、RFコイル装置90Jは、バンド部材450と、バンド部材450の一端に配設されたコネクタ460aと、バンド部材450の他端に配設されたコネクタ460bとを有する。
【0146】
バンド部材450は、被検者の腕の根本を巻くような装着状態を実現するため、FPCなどの可撓性を有する材料によって、およそ帯状に形成されている。バンド部材450は、その長さ方向(
図38に矢印で示すLength Direction)の中央領域450aにおいて幅が狭く形成されている。これは、装着状態で被検者が腕を上げる際に、この窪んだ中央領域450aに腕が入るようにすることで、腕を上げた状態での装着に対応し易くするためである。
【0147】
また、バンド部材450は、被検者の肩領域を覆うことでコイルの感度領域を確保するため、中央領域450aの両側の突出領域450b、450cにおいて、幅が広く形成されている。
【0148】
また、バンド部材450は、突出領域450cから一端側(コネクタ460a側)に向かうほど幅が狭くなるように形成されていると共に、突出領域450bから他端側(コネクタ460b側)に向かうほど幅が狭くなるように形成されている。これは、装着状態においてバンド部材450の両端が被検者の脇側に配置されるため、被検者が腕を下ろし易くするために先細りさせたものである。
【0149】
バンド部材450の中央部には、ケーブル98が配設されている。また、バンド部材450の内部において、一端側から他端側に亘ってコイル素子470aが配設されている。
【0150】
図39に示すように、コネクタ460bは、コネクタ460aを含むバンド部材450の一端側を嵌合する構造である。この嵌合状態では、コイル素子470aは、コネクタ460a、460b内の不図示の電極等によって両端が電気的に接続され、ループ状のコイル素子として機能する。
【0151】
図38に示すように、RFコイル装置90Jは、その長さ方向に直交するように2分した場合に、一端側(コネクタ460a側)と、他端側(コネクタ460b側)とがほぼ対称的な構造である(コネクタ460a、460bの雄雌の形状の違いを除く)。
具体的には、
図38に示すように、バンド部材450内において、突出領域450bを含む領域からコイル素子470aの延在線を跨る位置に、ループ状(楕円状)のコイル素子470bが配設されている。同様に、バンド部材450内において、突出領域450cを含む領域からコイル素子470aの延在線を跨る位置に、ループ状(楕円状)のコイル素子470cが配設されている。
【0152】
また、バンド部材450内において、コイル素子470aの延在線を中心に挟んでコイル素子470bとは反対側には、ループ状(楕円状)のコイル素子470dが配設されている。同様に、バンド部材450内において、コイル素子470aの延在線を中心に挟んでコイル素子470cとは反対側には、ループ状(楕円状)のコイル素子470eが配設されている。
【0153】
デカップリングのため、コイル素子470b、470dは、平面的に見て部分的に重なるように配設されている。同様に、コイル素子470c、470eは、平面的に見て部分的に重なるように配設されている。これらコイル素子470a〜470eは、バンド部材450内の不図示の回路によって個別にケーブル98内の別々の配線に接続されている。
【0154】
図40は、腕を下ろした被検者Pに対して、バンド部材450の突出領域450b、450cが被検者Pの腕側となるようにRFコイル装置90Jを装着した状態の一例を示す平面模式図である。装着方法としては、例えば、バンド部材450を被検者Pの肩の上から被せてから、被検者Pの脇でコネクタ460a、460bを嵌合させればよい。或いは、コネクタ460a、460bを予め嵌合させてから、バンド部材450に対して被検者Pの腕を挿通させてもよい。
【0155】
図41は、
図40に示すRFコイル装置90Jの装着状態から、被検者Pが腕を上げた状態の一例を示す平面模式図である。
図40、
図41から分かるように、バンド部材450の中央領域450aが窪んでいる。従って、腕を上げる場合にはこの窪みに腕を入れることで、被検者Pは、腕を上げた状態、および、腕を下げた状態のどちらの場合にも、RFコイル装置90Jを無理なく装着できる。
【0156】
上記の装着状態において、肩の前面側にはコイル素子470c、470eの感度領域がおよび(
図40、
図41参照)、肩の背面側にはコイル素子470b、470dの感度領域がおよぶ(図示せず)。また、これら4つのコイル素子470b〜470eの感度領域に直交する方向には、コイル素子470aの感度領域がおよぶ。従って、5つのコイル素子470a〜470eにより、良好なコイル感度を確保できる。
【0157】
図42は、腕を下ろした被検者Pに対して、バンド部材450の突出領域450b、450cが被検者Pの胸側となるようにRFコイル装置90Jを装着した状態の一例を示す平面模式図である。
図43は、
図42に示すRFコイル装置90Jの装着状態から、被検者Pが腕を上げた状態の一例を示す平面模式図である。
【0158】
バンド部材450は、被検者Pの腕に巻かれているだけであって可撓性を有する。従って、
図42、
図43のように、バンド部材450の突出領域450b、450cが被検者Pの胸側にした場合にも、腕を上げた状態、および、腕を下げた状態の双方の状態でRFコイル装置90Jを無理なく装着できる。また、
図42、
図43の装着状態においても、
図40、
図41の装着状態の場合と同様に、5つのコイル素子470a〜470eにより、良好なコイル感度を確保できる。
なお、
図40〜
図43ではコネクタ460a、460bを被検者Pの脇側にする装着例を述べたが、コネクタ460a、460bを被検者Pの肩の上側にして装着することもできる。
図44および
図45はそれぞれ、腕を上げた被検者Pに対して、コネクタ460a、460bを肩の上側にしてRFコイル装置90Jを装着した状態の一例を示す平面模式図である。
図44は、突出領域450b、450cを被検者Pの外側にした場合であり、
図45は、突出領域450b、450cを被検者Pの胸側にした場合である。
【0159】
図46および
図47はそれぞれ、
図40の装着状態における人体座標系の肩関節部のサジタル断面の断面模式図であり、
図46は腕の太い被検者に対する装着状態を示し、
図47は腕の細い被検者に対する装着状態を示す。なお、上記サジタル断面は、被検者Pの腹側を前、背中側を後ろとした前後方向をY軸方向とし、およそ背骨延在方向に頭を上、足を下とした上下方向をZ軸方向とする人体座標系のY−Z平面に対応する。
【0160】
腕の太い被検者の場合には、
図46に示すようにバンド部材450と被検者の腕との空隙が狭くなり、腕の細い被検者Pの場合には、
図47に示すようにバンド部材450と被検者の腕との空隙が大きくなる。バンド部材450は可撓性を有するので、
図46および
図47から分かるように、被検者の腕の太さに拘らずに装着可能である。このように第8の実施形態においても、第5の実施形態と同様の効果が得られる。
【0161】
(第9の実施形態)
図48は、第9の実施形態のRFコイル装置90Kを広げた状態を示す平面模式図である。
図49は、RFコイル装置90Kの両端を連結させた状態を示す模式的斜視図である。
図48に示すように、RFコイル装置90Kは、カバー部材500と、ベルト部材502とを有する。
【0162】
カバー部材500の一端と、ベルト部材502の一端とは連結されており、カバー部材500の他端側にはコネクタ506aが配設されており、ベルト部材502の他端側にはコネクタ506bが配設されている。コネクタ506a、506bの連結によってカバー部材500とベルト部材502とで被検者の腕の根本を巻くような装着状態を実現するため、カバー部材500とベルト部材502は、FPCなどの可撓性を有する材料によって形成されている。
【0163】
カバー部材500は、およそ帯状に形成されており、その長さ方向(
図48に矢印で示すLength Direction)に3つの領域に分けられる。具体的には、カバー部材500は、その一端側の肩当て領域500aと、その他端側の肩当て領域500bと、両者を繋ぐバンド領域500cとからなる。
【0164】
肩当て領域500a、500bはそれぞれ、被検者の肩の前面または背面に当接される。この当接状態において、被検者の肩領域を覆うことでコイルの感度領域を確保するため、肩当て領域500a、500bは、バンド領域500cよりも幅が広く形成されている。また、この当接状態において被検者がカバー部材500を無理なく脇に挟めるように、バンド領域500cは、肩当て領域500a、500bよりも幅が狭く形成されている。
【0165】
カバー部材500の他端側には、コネクタ506aの配設箇所近傍からケーブル98が出ている。また、カバー部材500およびベルト部材502を平面状に広げた状態において一直線状となるように、ベルト部材502の他端から一端に亘ると共に、カバー部材500の一端から他端に亘るコイル素子510が配設されている。
コネクタ506aは、コネクタ506bを含むベルト部材502の他端側を嵌合する構造である。この嵌合状態では、コイル素子510は、コネクタ506a、506b内の不図示の電極等によって両端が電気的に接続され、ループ状のコイル素子として機能する。
【0166】
RFコイル装置90Kは、
図48に示すコイル素子510の延在線の上側と下側とで2分した場合に、対称的な構造である。
具体的には、カバー部材500の肩当て領域500a内には、コイル素子510の延在線を挟んで互いに対称的な配置となるように、ループ状の2つのコイル素子512、514が配設されている。これらコイル素子512、514は、デカップリングのため、平面的に見て部分的に重なるように配設されている。
【0167】
同様に、カバー部材500の肩当て領域500b内には、コイル素子510の延在線を挟んで互いに対称的な配置となるように、ループ状の2つのコイル素子516、518が配設されている。これらコイル素子516、518は、デカップリングのため、平面的に見て部分的に重なるように配設されている。
【0168】
また、
図48に示すように、カバー部材500のバンド領域500cのおよそ左半分から肩当て領域500aの右側に亘って、コイル素子520が配設されており、バンド領域500cのおよそ右半分から肩当て領域500bの左側に亘って、コイル素子522が配設されている。
【0169】
コイル素子520の一部と、コイル素子522の一部は、デカップリングのため、バンド領域500cの中央において平面的に見て重なるように配設されている。
また、コイル素子520の一部は、コイル素子512、514の一部ともデカップリングのため平面的に重なるように配設されている。
同様に、コイル素子522の一部は、コイル素子516、518の一部ともデカップリングのため平面的に重なるように配設されている。
これらコイル素子510、512、514、516、518、520、522は、カバー部材500内の不図示の回路によって個別にケーブル98内の別々の配線に接続されている。
【0170】
図50は、腕を下ろした被検者Pに対して、カバー部材500のバンド領域500cが被検者Pの脇に挟まるようにRFコイル装置90Kを装着した状態の一例を示す平面模式図である。装着方法としては、例えば、バンド領域500cを脇に挟むと共に、肩当て領域500a、500bをそれぞれ被検者Pの肩の前面および背面に被さるようにしてから、コネクタ506a、506bを嵌合させればよい。或いは、コネクタ506a、506bを予め嵌合させてから、RFコイル装置90Kに対して被検者Pの腕を挿通させてもよい。
【0171】
図51は、
図50に示すRFコイル装置90Kの装着状態から、被検者Pが腕を上げた状態の一例を示す平面模式図である。
図50、
図51から分かるように、被検者Pの肩の前面および背面には肩当て領域500a、500bが被さるものの、RFコイル装置90Kにおいて、被検者Pの腕の上げ下ろしを直接的に遮る部分はない。さらに、RFコイル装置90Kの殆どの部分(カバー部材500やベルト部材502)は可撓性を有するので、被検者PはRFコイル装置90Jを装着した状態で容易に腕の上げ下ろしができる。
【0172】
上記の装着状態において、肩の前面側および背面側にはそれぞれ、コイル素子512、514、520、または、コイル素子516、518、522の感度領域がおよぶ(
図48、
図49参照)。また、コイル素子512、514、516、518の感度領域に直交する方向には、コイル素子510の感度領域がおよぶ。従って、7つのコイル素子510、512、514、516、518、520、522により、肩領域における良好なコイル感度を確保できる。
【0173】
図52は、腕を下ろした被検者Pに対して、ベルト部材502が被検者Pの脇に挟まるようにRFコイル装置90Kを装着した状態の一例を示す平面模式図である。装着方法については上記と同様である。
【0174】
図53は、
図52に示すRFコイル装置90Kの装着状態から、被検者Pが腕を上げた状態の一例を示す平面模式図である。
図52、
図53に示す装着状態の場合も、
図50、
図51の場合と同様に、被検者Pの肩の前面および背面には肩当て領域500a、500bが被さるものの、RFコイル装置90Kにおいて、被検者Pの腕の上げ下ろしを直接的に遮る部分はない。
【0175】
従って、被検者PはRFコイル装置90Jを装着した状態で腕の上げ下ろしができる。また、
図52、
図53に示す装着状態においても、
図50、
図51に示す場合と同様に、7つのコイル素子510、512、514、516、518、520、522により、肩領域における良好なコイル感度を確保できる。
このように第9の実施形態においても、第5の実施形態と同様の効果が得られる。
【0176】
なお、上記の例では肩当て領域500a、500b、バンド領域500cによってカバー部材500が一体形成されている例を述べたが、これは一例にすぎない。例えば、
図54に示すように、肩当て領域500a側と、肩当て領域500b側とでカバー部材を分離可能に構成してもよい。
【0177】
図54は、第9の実施形態の変形例の概略構造を示す平面模式図である。
図54に示すように、RFコイル装置90Lは、上記RFコイル装置90Kのカバー部材500を第1カバー部材526aと、第2カバー部材526bとに着脱自在に分離した点を除き、同様の構成である。以下、違いのみを説明する。
【0178】
具体的には、第1カバー部材526aの一端側にはコネクタ530aが配設され、第2カバー部材526bの一端側にはコネクタ530bが配設される。また、第1カバー部材526a内には、上記RFコイル装置90Kのコイル素子510の半分に相当する部分コイル510aが配設され、第2カバー部材526b内には、上記コイル素子510の残り半分に相当する部分コイル510bが配設される。
【0179】
また、第1カバー部材526a内には、上記RFコイル装置90Kのコイル素子520の主要部に相当する部分コイル520aが配設され、第2カバー部材526b内には、上記RFコイル装置90Kのコイル素子522の主要部に相当する部分コイル522aが配設される。
また、第1カバー部材526a内には、上記コイル素子522の残りの部分に相当する部分コイル522bが配設され、第2カバー部材526b内には、上記コイル素子520の残りの部分に相当する部分コイル520bが配設される。
【0180】
コネクタ530aは、コネクタ530bを含む第2カバー部材526bの一端側を嵌合する形状である。この嵌合状態において、部分コイル520a、520bは、コネクタ530a、530b内の不図示の電極等によって両端がそれぞれ連結されて1つのループ状のコイル素子として機能する。
同様に、この嵌合状態において、部分コイル522a、522bは、両端がそれぞれ接続されて1つのループ状のコイル素子として機能する。
また、この嵌合状態において、部分コイル510a、510bも互いに電気的に接続される。以上のRFコイル装置90Lの場合も、連結状態における全体形状および各コイル素子の配置は上記RFコイル装置90Kと同等であるので、同様の効果が得られる。
【0181】
(第10の実施形態)
図55は、第10の実施形態のRFコイル装置90Mの模式的な分解斜視図である。
図55に示すように、RFコイル装置90Mは、互いに連結されるカバー部材600および連結部材604を有する。
図55内の3つの実線矢印は、カバー部材600および連結部材604のコネクタ同士の連結方向を示すものであり、互いに同方向である。
図56は、
図55に示す3つの実線矢印の方向に見た場合のカバー部材600の模式的側面図である。
図57は、
図55に示す3つの実線矢印とは反対の方向から見た場合の連結部材604の模式的側面図である。
【0182】
図58は、カバー部材600および連結部材604を連結した状態において、
図55内の破線の矢印方向から見た場合の内部のコイル素子の配置を示す平面模式図である。なお、
図58では、コイル素子の配置を分かり易くするため、羽根部材620、622、624、626、628、630、632を広げた(平面状に展開した)状態を示し、リング部材608とその内部のコイル素子648のみを斜視図的に示す。
また、
図58では区別のため、カバー部材600およびこれに固定された各要素を太い実線で示し、連結部材604およびこれに固定された各要素を細い実線で示し、コイル要素については点線、一点鎖線、または、二点鎖線で示す。
【0183】
以下、
図55〜
図58を参照しながら、RFコイル装置90Mの各部の構造について説明する。
図55に示すように、カバー部材600は、両側の側面およびこれら側面に平行な横断面が角括弧状になるように平板を折り曲げた形状であり、FRPなどの変形しない材料で形成されている。カバー部材600の上面側には、ケーブル98が配設されている。
【0184】
図55および
図56に示すように、カバー部材600の内側の面には、リング部材608がコネクタ610によって固定されている。リング部材608は、被検者の腕をその開口に挿通させるために、FRPなどの変形しない材料で環状に形成されており、支持部材として機能する。
【0185】
また、カバー部材600の前面(リング部材608が固定された面に対向する面であり、
図56において太線で示す部分)には、羽根部材620、622、624、626がそれぞれ固定されている。羽根部材620、622、624、626はそれぞれ、FPCなどの可撓性を有する材料によって、4角を丸めた長方形の羽根状に、かつ、ほぼ同じ大きさで形成されており、一端側がカバー部材600に固定されている。
【0186】
カバー部材600は、リング部材608の開口の法線を間に挟んでほぼ左右対称な構造である。
具体的には、カバー部材600における連結部材604との連結面(角括弧状の側面の一方)側には、羽根部材620、626がリング部材608を間に挟んで互いに対向する位置に設けられている。
カバー部材600における連結面側とは反対側には、羽根部材622、624が互いに対向する位置に設けられている。
なお、内部に含まれる各コイル素子同士(後述の
図58参照)のデカップリングのため、羽根部材622は、部分的に羽根部材620の上に重なるように配設されている。同様に、羽根部材624は、部分的に羽根部材626の上に重なるように配設されている
【0187】
図55および
図56に示すように、カバー部材600における連結部材604との連結面には、連結部材604に嵌合するためのコネクタ640a、642a、644aが配設されている。一方、
図55および
図57に示すように、連結部材604におけるカバー部材600との連結面は、(コネクタの雄雌の違いを除いて)カバー部材600の角括弧状の側面と同じ大きさおよび形状に形成されている。連結部材604は、連結面とは反対側が球面状となっており、内側が窪んだ形状である。
【0188】
連結部材604におけるカバー部材600との連結面には、コネクタ640a、642a、644aにそれぞれ対応する位置に、これらにそれぞれ嵌合する形状のコネクタ640b、642b、644bが設けられている。
図55内の3つの同方向の矢印に示すように、コネクタ640a、640bが互いに嵌合し、コネクタ642a、642bが互いに嵌合し、コネクタ644a、644bが互いに嵌合することで、カバー部材600の側面に連結部材604が固定される。なお、連結部材604は、FRPなどの変形しない材料で形成されている。
【0189】
図55に示すように、連結部材604において、カバー部材600との連結面とは反対側には、羽根部材630が設けられている。この羽根部材630の両側には、互いに対向する位置に羽根部材628、632が設けられている。
羽根部材628、630、632は、FPCなどの可撓性を有する材料によって、4角を丸めた長方形の羽根状に形成されており、一端側が連結部材604に固定されている。なお、連結部材604側の羽根部材628、632は、その延在面の方向がカバー部材600側の羽根部材620、622、624、626とそれぞれ揃うように配置される。
【0190】
また、カバー部材600と連結部材604とを連結した状態において、羽根部材620上に羽根部材632が部分的に重なるように、羽根部材632は、連結部材604において上記連結面からはみ出るように配設されている(
図55参照)。これは、デカップリングのためである。
同様に、連結状態において、羽根部材626上に羽根部材628が部分的に重なるように、羽根部材628は、連結部材604において上記連結面からはみ出るように配設されている。
【0191】
以下、
図58を参照しながら、RFコイル装置90Mの内部のコイル素子の配置について説明する。リング部材608内には、図中に点線で示すように、その環状の内部を1周するようにループ状のコイル素子648が配設されている。
【0192】
また、羽根部材620、622、624、626、628、630、632内には、ループ状(楕円状)のコイル素子650、652、654、656、658、660、662が配設されている。区別のため、羽根部材620内のコイル素子650および羽根部材626内のコイル素子656については一点鎖線で示し、その他の5つのコイル素子652、654、658、660、662については破線で示す。
【0193】
図58に示すように、カバー部材600と連結部材604とを連結した状態では、コイル素子650は、連結部材604側の一部が平面的に見てコイル素子662に部分的に重なるように配設されている。これは、デカップリングのためである。同様に、コイル素子650は、連結部材604とは反対側の一部が平面的に見てコイル素子652に部分的に重なるように配設されている。
【0194】
同様に、コイル素子656は、連結部材604側の一部が平面的に見てコイル素子658に部分的に重なるように、反対側の一部が平面的に見てコイル素子654に部分的に重なるように配設されている。
リング部材608内のコイル素子648は、コネクタ610内の電極等によって、カバー部材600内の回路等を介してケーブル98内の個別の配線に電気的に接続されている。
【0195】
羽根部材628内のコイル素子658は、連結部材604内の回路と、コネクタ644a、644b(
図55参照)内の電極等によって、カバー部材600内の回路等を介してケーブル98内の個別の配線に電気的に接続されている。
【0196】
また、羽根部材630内のコイル素子660は、連結部材604内の回路と、コネクタ642a、642b内の電極等によって、カバー部材600内の回路を介してケーブル98内の個別の配線に電気的に接続されている。
【0197】
また、羽根部材632内のコイル素子662は、連結部材604内の回路と、コネクタ640a、640b内の電極等によって、カバー部材600内の回路を介してケーブル98内の個別の配線に電気的に接続されている。
なお、連結部材604内の回路、コネクタ内の電極、カバー部材600内の回路については、煩雑となるので図示を省略する。
【0198】
コイル素子650、652、654、656についても、それぞれ、カバー部材600内の回路等を介して、ケーブル98内の個別の配線に電気的に接続されている。
【0199】
図59は、腕を下ろした被検者Pに対して、カバー部材600および連結部材604を連結してRFコイル装置90Mを装着した状態の一例を示す模式的斜視図である。装着方法としては、例えば、リング部材608に被検者Pの腕を通してカバー部材600を被検者Pの肩の前面および背面に被せてから、連結部材604をカバー部材600に連結させればよい。
【0200】
図60は、
図59に示すRFコイル装置90Mの装着状態から、連結部材604を取り外して、被検者Pが腕を上げた状態の一例を示す模式的斜視図である。
【0201】
RFコイル装置90Mの装着状態において、肩の前面側はコイル素子654、656により、肩の背面側はコイル素子650、652により、被検者Pの腕の根本周囲はコイル素子658、660、662により、十分なコイルの感度領域が確保される。また、コイル素子650、652、654、656の感度領域とは直交する方向に、腕回りにコイル素子648の感度領域がおよぶ。このため、腕を下ろした状態での撮像時において、良好なコイルの感度領域が確保される。
【0202】
なお、連結部材604については、腕を下ろしての撮像時においてコイルの感度領域をさらに広げるための付加的なものであって、必須ではない。腕を上げた状態、下ろした状態の双方において、カバー部材600のみによっても、5つのコイル素子648、650、652、654、656によってコイルの感度領域が十分に確保される。
【0203】
ここで、リング部材608は、カバー部材600の内側の面において、連結部材604との連結面側に固定されているから(
図55、
図58参照)、装着状態においてカバー部材600は、被検者Pの肩頂点よりもさらに外側には殆どはみ出ない。即ち、カバー部材600は、被検者Pが腕を上げる動きを殆ど妨げない。また、カバー部材600の各羽根部材620、622、624、626は可撓性を有するので、被検者Pの腕の動きを妨げない。
【0204】
前述のように、連結部材604はあくまで付加的なものであるので、カバー部材600のみの装着状態によって、腕を上げた状態、および、腕を下げた状態のどちらの場合にも、無理なく装着することができる。また、連結部材604が連結されていても、それを取り外すだけで、容易に腕の上げ下ろしができる。
このように第10の実施形態においても、第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0205】
なお、第10の実施形態のRFコイル装置90Mを使用する場合、被検者Pの背面のコイル感度領域をより広く補完するため、
図61の平面模式図に示す背面用のRFコイル装置680を併用してもよい。RFコイル装置680は、ベース板682内にループ状のコイル素子686、688を配設し、これらを不図示の回路によってケーブル98内の個別の配線にそれぞれ接続した構成である。コイル素子686、688は、例えば、これら2つによって背中の上半分をカバーする大きさである。
【0206】
また、第10の実施形態では、カバー部材600が角括弧状に曲げられた形状である例を述べたが、これは一例にすぎない。カバー部材600については、例えば、平板をU字状に湾曲させた形状であってもよい。この場合、連結部材604の連結面も、カバー部材600の側面と同一形状および同一寸法にすることが望ましい。
【0207】
図62は、羽根部材を省略した第10の実施形態の変形例に係るRFコイル装置90Nの概略構成を示す模式的な分解斜視図である。
図62に示すように、RFコイル装置90Nは、カバー部材700に連結部材704を連結することで構成される。
図62内の3つの実線矢印は、カバー部材700および連結部材704のコネクタ同士の連結方向を示すものであり、互いに同方向である。
【0208】
カバー部材700は、両側の側面およびこれら側面に平行な横断面がU字状になるように平板を折り曲げた形状であり、FRPなどの変形しない材料で形成されている。カバー部材700の上面側には、ケーブル98が配設されている。
【0209】
カバー部材700の内側の面には、前記リング部材608がコネクタ610によって固定されている。カバー部材700における連結部材704との連結面には、連結部材704に嵌合するためのコネクタ710a、712a、714aが配設されている。
一方、連結部材704におけるカバー部材700との連結面は、(コネクタの雄雌の違いを除いて)カバー部材700のU字状の側面と同じ大きさおよび形状に形成されている。なお、連結部材704は、RFコイル装置90Mの連結部材604と同様に、FRPなどの変形しない材料によって内側が窪んだ形状に形成されている。
【0210】
連結部材704の連結面には、コネクタ710a、712a、714aにそれぞれ対応する位置に、これらにそれぞれ嵌合する形状のコネクタ710b、712b、714bが設けられている。コネクタ710a、710bが互いに嵌合し、コネクタ712a、712bが互いに嵌合し、コネクタ714a、714bが互いに嵌合することで、カバー部材700の側面に連結部材704が固定される。
【0211】
また、
図62に一点鎖線で示すように、カバー部材700内には、コネクタ714a側にループ状のコイル素子730が配設されており、コネクタ710a側にループ状のコイル素子732が配設されている。同様に、連結部材704内にも、互いに対向する位置にループ状のコイル素子734、736が配設されている。
【0212】
図63は、腕を下ろした被検者Pに対して、カバー部材700および連結部材704を連結してRFコイル装置90Mを装着した状態の一例を示す模式的斜視図である。装着方法は、上記RFコイル装置90Mと同様である。
【0213】
図64は、
図63に示すRFコイル装置90Nの装着状態から、連結部材704を取り外して、被検者Pが腕を上げた状態の一例を示す模式的斜視図である。
【0214】
RFコイル装置90Nの装着状態において、肩の前面側はコイル素子730、734により、肩の背面側はコイル素子732、736により、十分なコイルの感度領域が確保される。また、コイル素子730、732の感度領域とは直交する方向に、腕回りにコイル素子648の感度領域がおよぶ。このため、腕を下ろした状態での撮像時において、良好なコイルの感度領域が確保される。
【0215】
連結部材704については、RFコイル装置90Mの場合と同様に付加的なものであって、必須ではない。腕を上げた状態、下ろした状態の双方において、カバー部材700のみによっても、3つのコイル素子648、730、732によって、コイルの感度領域が十分に確保される。
【0216】
RFコイル装置90Nの場合も、リング部材608は、カバー部材700の内側の面において連結面側に固定されているから(
図62参照)、装着状態においてカバー部材700は、被検者Pの肩頂点よりもさらに外側には殆どはみ出ない。従って、RFコイル装置90Mの場合と同様に、腕を上げた状態と下げた状態の双方での装着が可能であり、第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0217】
(第11の実施形態)
図65は、第11の実施形態に係るMRI装置20の全体構成を示すブロック図である。
図65に示すように、MRI装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22と、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24と、傾斜磁場コイル26と、RFコイル28と、制御系30と、被検者Pが乗せられる寝台32とを備える。さらにMRI装置20は、上記RFコイル装置90A〜90Nのいずれかを備える。
【0218】
ここでは一例として、装置座標系の互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、静磁場用磁石22およびシムコイル24は、それらの軸方向が鉛直方向に直交するように配置されているものとし、静磁場用磁石22およびシムコイル24の軸方向をZ軸方向とする。また、鉛直方向をY軸方向とし、寝台32は、その天板の載置用の面の法線方向がY軸方向となるように配置されているものとする。
【0219】
制御系30は、静磁場電源40と、シムコイル電源42と、傾斜磁場電源44と、RF送信器46と、RF受信器48と、寝台駆動装置50と、シーケンスコントローラ56と、コンピュータ58とを備える。
【0220】
傾斜磁場電源44は、X軸傾斜磁場電源44xと、Y軸傾斜磁場電源44yと、Z軸傾斜磁場電源44zとで構成されている。また、コンピュータ58は、演算装置60と、入力装置62と、表示装置64と、記憶装置66とで構成されている。
【0221】
静磁場用磁石22は、静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給された電流により撮像空間に静磁場を形成させる。シムコイル24は、シムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により、この静磁場を均一化する。静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
【0222】
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26xと、Y軸傾斜磁場コイル26yと、Z軸傾斜磁場コイル26zとを有し、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zに接続される。
【0223】
X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zからX軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zにそれぞれ供給される電流により、X軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzが撮像空間にそれぞれ形成される。
【0224】
即ち、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成して、論理軸としてのスライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、および、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groの各方向を任意に設定できる。スライス選択方向、位相エンコード方向、および、読み出し方向の各傾斜磁場Gss、Gpe、Groは、静磁場に重畳される。
【0225】
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルス(RF電流パルス)を生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。
RFコイル28には、ガントリに内蔵されたRFパルスの送受信用の全身用コイル(図示せず)や、寝台32または被検者Pの近傍に設けられるRFパルスの受信用の局所コイルなどがある。本実施形態では局所コイルの一例として、肩用のRFコイル装置90A〜90NのいずれかがRF受信器48に接続されている。
【0226】
送信用のRFコイル28は、RF送信器46からRFパルスを受けて被検者Pに送信する。RFコイル装置90A〜90Nのいずれかを含む受信用のRFコイル28は、被検者Pの内部の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号(磁気共鳴信号としてのエコー信号)を受信し、このMR信号は、RF受信器48により検出される。
【0227】
RF受信器48は、検出したMR信号に前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データ(raw data)を生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ56に入力する。
演算装置60は、MRI装置20全体のシステム制御を行うものである。
【0228】
シーケンスコントローラ56は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させるために必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源44に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
【0229】
シーケンスコントローラ56は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることにより、傾斜磁場Gx、Gy、GzおよびRF信号(RFパルス)を発生させる。また、シーケンスコントローラ56は、RF受信器48から入力されるMR信号の生データ(raw data)を受けて、これを演算装置60に入力する。
以下、上記MRI装置20によって、肩を撮像領域に含むイメージングを行う場合の動作の流れについて説明する。
【0230】
RFコイル装置90A〜90Nのいずれかが肩に装着された被検者Pが寝台32にセットされ、静磁場電源40により励磁された静磁場用磁石22によって撮像空間に静磁場が形成される。また、シムコイル電源42からシムコイル24に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
【0231】
そして、入力装置62から演算装置60に撮像開始指示が入力されると、演算装置60は、パルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ56に入力する。シーケンスコントローラ56は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることで、撮像空間に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイル28からRF信号を発生させる。
【0232】
このため、被検者Pの内部の核磁気共鳴により生じたMR信号が、(RFコイル装置90A〜90Nのいずれかを一部として含む)RFコイル28により受信され、RF受信器48により検出される。RF受信器48は、検出したMR信号に所定の信号処理を施した後、これをA/D変換することで、デジタル化したMR信号である生データを生成する。RF受信器48は、生成した生データをシーケンスコントローラ56に入力する。
【0233】
シーケンスコントローラ56は、生データを演算装置60に入力し、演算装置60は、その内部のk空間データベース(図示せず)に形成されたk空間において、生データをk空間データとして配置する。演算装置60は、k空間データにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで画像データを再構成し、これを一旦保存後、これに所定の画像処理を施すことで表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置66に保存する。
【0234】
このように本実施形態では、RFコイル装置90A〜90Nを肩の撮像に用いるので、1つのRFコイル装置(90A〜90Nのいずれか)によって、腕を上げた状態の撮像と、腕を下ろした状態の撮像の双方に対応することができる。また、RFコイル装置90A〜90Nのいずれかを用いるので、肩においてコイルの感度領域を十分に確保できる。即ち、上記第1〜第10の実施形態と同様の効果が得られる。
【0235】
(実施形態の補足事項)
[1]上記実施形態では、RFコイル装置90A〜90Nを被検者の肩に装着する場合の作用効果等について説明したが、本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。RFコイル装置90A〜90Nは、例えば足首など、被検者の他の部分に装着してRF信号の送信や受信に用いてもよい。
【0236】
[2]第1の実施形態では、ベルト部材94a、94b、94c、94d、94d’が半円状に湾曲している例を述べたが、これは一例にすぎない。例えば角括弧状に折曲した形状のものでもよい。この点は、第2〜第4の実施形態や、第6の実施形態についても同様である。上記の湾曲とは、湾曲部分の横断面が曲線状の意味であり、上記の折曲とは、折れ曲がっている部分の横断面が直線と直線とに分離できる状態の意味である。
【0237】
[3]ベルト部材94a、94b、94c、94d、94d’、242、286a、344、346、404、502が帯状(横断面が長方形状)に形成されている例を述べたが、本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。ベルト部材は、例えば横断面が円または楕円状(ロープ状)であってもよい。
【0238】
[4]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
【0239】
静磁場用磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28、制御系30の全体(
図65参照)が、静磁場および傾斜磁場の印加と、RF信号の送信とを伴った撮像により被検者PからMR信号を収集する機能は、請求項記載の信号収集部の一例である。
収集されたMR信号(エコー信号)に基づいて被検者Pの画像データを再構成する演算装置60の機能は、請求項記載の画像生成部の一例である。
【0240】
[5]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。