(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コレステロールの誘導体が、CHAPS(3−(3−コールアミドプロピル)−ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルフォネート)およびCHAPSO(3−(3−コールアミドプロピル)−ジメチルアンモニオ−2−ヒドロキシプロパンスルフォネート)から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
AB5 bAREタンパク質を安定化する方法であって、該方法は、AB5 bAREタンパク質を提供する工程と、該AB5 bAREタンパク質を、アルギニン、およびカル
ボン酸によるコレステロールの誘導体と合わせる工程とを包含する、方法。
AB5 bAREクラスタンパク質を、完全なbAREクラスタンパク質と解離したbAREクラスタンパク質とを識別する非解離条件下で分析する方法であって、該方法は、荷電ポリマー分離材上での分離工程を包含することによって特徴付けられ、該分離材は、残留カルボキシル基を有するヒドロキシル化ポリメタクリレート(HEMA)材である、方法。
前記AB5 bAREタンパク質サンプルの前記完全性比を、候補安定化剤を含まないコントロールの完全性比と比較する工程をさらに包含する、請求項17に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
IUPAC−IUB生化学命名法委員会により推奨された1字のアミノ酸記号を、参照目的で提供してある3字の記号と共に下記に示してある。
A Ala アラニン
C Cys システイン
D Asp アスパラギン酸
E Glu グルタミン酸
F Phe フェニルアラニン
G Gly グリシン
H His ヒスチジン
I Ile イソロイシン
K Lys リジン
L Leu ロイシン
M Met メチオニン
N Asn アスパラギン
P Pro プロリン
Q Gln グルタミン
R Arg アルギニン
S Ser セリン
T Thr トレオニン
V Val バリン
W Trp トリプトファン
Y Tyr チロシン
(詳細な説明)
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、具体的に例示した分子または処理パラメーターに限定されず、当然変化し得ることを理解する必要がある。また、本明細書に用いられている用語は、本発明の特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定の意図はないことも理解する必要がある。また、本発明の実施には、他に示さない限り、ウィルス学、微生物学、分子生物学、組み換えDNA法および免疫学の従来の方法が用いられ、それらは全て通常の当業技術の範囲内にある。これらの方法は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A
Laboratory Manual(第2版、1989);DNA Cloning:A Practical Approach、IおよびII巻(D.Glover編集);Ologonucleotide Synthesis(N.Gait編集、1984);A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);およびFundamental Virology,第2版、I&II巻(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編集)を参照されたい。
【0029】
本明細書の上記または下記に引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、参照として、それらの全体が本明細書に組み込まれている。本明細書および添付の請求項に用いられている単数形の「1つの」および「その」は、その内容が他に明らかに指示されない限り、複数の指示物を含む。本出願に用いられている全ての科学用語および専門用語は、他に規定されない限り、当業界で一般に用いられている意味を有する。本出願において用いられる以下の語句は、規定された意味を有する。
【0030】
用語の「含む」は、「含む」ならびに「構成される」を意味し、例えば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXから構成されることもあり得るし、また、追加のものを含み得、例えば、X+Yであり得る。
【0031】
数値、xに関連した用語の「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0032】
他に注記されない限り、本明細書に用いられる用語は、当業者に理解されている通常の意味が与えられる。本発明の理解を助けるために、本発明の特定の要素を指示する多数の定義された用語が本明細書に用いられている。そのように用いられる場合、以下の意味が意図されている。
【0033】
(細菌のADP−リボシル化外毒素(bAREs))
本明細書に用いられる用語の「bARE」は、関連細菌の外毒素のファミリーであるADP−リボシル化細菌毒素のクラスを言い、ジフテリア毒素(DT)、百日咳毒素(PT)、コレラ毒素(CT)、大腸菌熱感受性毒素(LT1およびLT2)、シュードモナス内毒素A、シュードモナス外毒素S、B.セレウス外酵素、B.sphaericus毒素、C.ボツリヌスC2およびC3毒素、C.limosum外酵素、ならびにウェルシュ菌、C.spiriformaおよびC.difficile由来の毒素、黄色ブドウ球菌EDIN、CRM
197、非毒性ジフテリア毒素変異体などの細菌ADPリボシル化毒素変異体が挙げられる。(例えば、Bixlerら(1989)Adv.Exp.Med.Biol.251:175頁;およびConstantinoら(1992)Vaccineを参照)多くのADP−リボシル化細菌毒素は、AサブユニットがADP−リボシルトランスフェラーゼ活性と呼ばれる毒性酵素活性を含有し、Bサブユニットが結合部分として働くA:B多量体として構成されている。該毒素は、NAD+から標的タンパク質へのADP−リボースユニットの転移を触媒する。
【0034】
本明細書に用いられる用語の「安定化された」は、bAREタンパク質の物理的安定化および/または機能的安定化を言う。また、用語の「安定化された」は、物理的安定性および/または機能的安定性の維持である経時的な貯蔵安定性も言う。
【0035】
本明細書に用いられる用語の「物理的に安定化すること」または「物理的安定化」は、bAREタンパク質の沈殿または結晶化または凝集または凝集物形成および予想される分解の抑制、低減、抑止、低下、減少、最少化または下降と同義で用いられる。用語の沈殿または結晶化または凝集または凝集物形成は、本明細書を通して交換可能に用いられる。本発明は、bARE生物学的分子の凝集または凝集物形成を実質的に最少化する安定化剤を用いてbAREタンパク質を安定化する方法を含む。実質的な最少化とは、該安定化剤を含まない対照と比較して、約25%から約100%の凝集または凝集物形成の減少を言う。凝集または分解は、好ましくは約50%、より好ましくは約75%、さらにより好ましくは約100%抑制される。
【0036】
「凝集化」または「凝集物形成」により、可溶性のままであり得るか、または溶液から沈殿または結晶化し得るオリゴマーまたは他のより高次形態の形成をもたらし得るポリペプチド分子間の物理的相互作用が意図されている。本明細書に用いられている用語の「オリゴマー」は、約2つから約5つの多量体bAREユニットなどの複数の多量体bAREユニットを含む分子を意味する。
【0037】
本発明のbARE組成物の物理的安定性をモニタリングする方法は、本明細書に開示された実施例に記載された方法を含み、当業界で利用できるものである。したがって、本発明の液体製薬組成物貯蔵中のAB5凝集物形成などのbARE凝集物形成は、溶液中の可溶性bAREタンパク質の経時的変化を測定することによって容易に判断できる。溶液中の沈殿ポリペプチドの量は、肉視検査により定性的に測定できるか、または、沈殿bAREタンパク質の検出に適合化させた多数の分析アッセイにより定量的に測定できる。定量的測定のためのこのようなアッセイとしては、例えば、逆相(RP)−HPLCおよびUV吸収分光法が挙げられる。溶解度実験では、どれだけ多くのbAREタンパク質が溶液中にあるかを判断できるが、該タンパク質の凝集状態を判断するには、他の方法が必要とされ得る。タンパク質が所与の製剤において、その天然構造で存在するかどうかを判断すること、およびどれだけ多くのタンパク質が凝集化形態などの高次形態において存在するか(存在する場合は)を判断することは重要であると考えられる。分析的超遠心分離は、タンパク質の凝集状態を解明するための最も強力な方法の1つである(LiuおよびShire(1999)J.Pharm.Sci.88:1237−1241頁を参照)。貯蔵中の液体製剤における可溶性および不溶性双方の凝集物の判断は、例えば、分析的超遠心分離を用いて、可溶性凝集物として存在する可溶性ポリペプチド部分と非凝集の生物学的活性分子形態において存在する部分とを識別することによって達成できる。
【0038】
用語の「機能的安定化」とは、bAREタンパク質の機能性にとって重要であるbAREタンパク質の実質的に完全な形態の存在および/または維持を言う。本明細書に用いられている用語の「機能的に安定化すること」または「機能的安定化」は、bAREタンパク質分子の解離の抑制、低減、抑止、低下、減少、下降または最少化の用語と同義で用いられる。本発明は、bARE生物学的分子の解離を実質的に最少化する作用物質を用いてbAREタンパク質を安定化する方法に関する。解離の実質的な最少化とは、該安定化剤を含まない対照と比較して、約25%から約100%の解離の減少を言う。解離は、好ましくは約50%、より好ましくは約75%、さらにより好ましくは約100%抑制される。
【0039】
本明細書に用いられている用語の「実質的に完全な」は、bAREクラスタンパク質のインタクトな、天然の非解離の構造またはコンホメーションを言う。
【0040】
bAREタンパク質サンプルの機能的安定性は、本発明の分析方法を用いてbAREサンプルを分析し、bAREサンプルの完全性比を用いて、bAREタンパク質の完全性の程度を算出することによって判断できる。
【0041】
周知の原理により、クロマトグラムにおけるAB
5タンパク質サブユニットおよびB
5タンパク質サブユニットを示すピークの相対的面積は、該サンプル中のAB
5形態とB
5形態の相対比を示す。該サンプル中のAB
5形態とB
5形態の相対比を用いて該サンプルの機能的安定性を判断できる。
【0042】
本明細書に用いられている用語の「完全性比」とは、本発明の分析方法を用いてbAREタンパク質の非解離形態および解離形態に関して得られたピーク下の面積パーセントにより測定されるサンプル中のbAREタンパク質の解離したAおよびBサブユニット形態に対する完全bAREタンパク質の比を言う。すなわち、インタクトな完全結合bAREタンパク質対部分的に解離したAおよびB5五量体サブユニット形態および完全解離単量体B形態の比である。用語の「完全性比」は、本発明の分析的方法によるbAREクラスタンパク質の機能的安定性の判断に関連して用いられる。AB5タンパク質などのbAREクラスタンパク質は、約10:1から約2:1、または約8:1から約3.5:1、または約6:1から約4.5:1の完全性比を有する場合に、機能的に安定、または機能的に安定化されていると考えられる。本発明の分析的方法を用いては検出されないほど、サンプル中のB
5解離サブユニットの量が極めて少ない場合(例えば、約3%未満)、完全性比は有意味な測定値と考えられなくても、bAREタンパク質はやはり機能的に安定であると考えることができる。
【0043】
好ましい一実施形態において、bAREタンパク質はAB5タンパク質である。
【0044】
(AB5タンパク質)
本発明の組成物に用いられる好ましいADP−リボシル化細菌外毒素(bARE類)としては、コレラ毒素(CT)および大腸菌熱感受性毒素(LT)が挙げられる。CTおよびLT外毒素は、Bサブユニットの5分子からなるドーナツ状の環に囲まれたAサブユニットの単一分子からなる六量体である。毒素原性大腸菌(ETEC)の熱感受性毒素(LT)は、構造的に、機能的に、および免疫学的にCTと類似しており、これら2つの毒素は、免疫学的に交差反応する。CTおよびLTタンパク質は、慣習的にAB5タンパク質と称されている。天然タンパク質全体はAB5として示され、部分的に解離したサブユニットをA、および5つの同一のサブユニットからなるB5五量体およびBmと称される単量体のBとして示される。
【0045】
CTは、基本型の細菌腸毒素である。これは2つのタイプのサブユニット:分子量28,000の単一のAサブユニット、および各々が11,600の分子量を有する5つのBサブユニットから構築されたタンパク質であり、およそ84,000の分子量を有するホロ毒素を与える。Bサブユニットは堅い非共有結合によって環状に集合しており;Aサブユニットは、より弱い非共有的相互作用により、B五量体環に結合し、おそらく部分的に該環内に差し込まれている。これら2つのタイプのサブユニットは中毒過程で異なった役割を持っている:Bサブユニットは細胞結合を生じさせ、Aサブユニットは直接的な毒性活性を生じさせる。Aサブユニットは2つのドメインを含有する。A1ドメインはAサブユニットの毒性を生じさせるADP−リボシル化活性を有する。A2ドメインはBオリゴマーと相互作用する。酵素活性には、この2つのドメインの間のループの蛋白分解性開裂およびA1−cys187とA2−cys199との間のジスルフィドブリッジの還元が必要である。毒性Aサブユニットは体液分泌および下痢をもたらす酵素変化(ADP−リボシル化活性による)を誘導し、一方、非毒性Bサブユニットは腸上皮細胞上の、毒素に対するGM−1ガングリオシド受容体に結合する免疫原性部分である(Holmgren
J Nature(1981)292;413頁)。
【0046】
LTはタイプIの大腸菌熱感受性腸毒素である。これは、(i)毒性ADP−リボシル化活性を含有し、約27kDaの分子量を有する240個のアミノ酸の単一のポリペプチド鎖からなるAサブユニットおよび(ii)ガングリオシド結合部位を含有し、各々が約58.5kDaの分子量を有する5つの同一の103個のアミノ酸の単量体により形成された五量体の環状B5複合体から構成されている。B5細孔の内側は、アミノ酸193〜240に相当するAサブユニットのA2ドメインと相互作用する荷電したアミノ酸からなる。Aサブユニットの残り、A1ドメインは、触媒活性を保持する。AおよびBサブユニットの双方が、高パーセンテージの正に荷電したアミノ酸を含有する(サブユニットA,IP=6.3、サブユニットB、IP=8.87およびAB5、IP=8.5)。
【0047】
一定の好ましい実施形態において、細菌のADP−リボシル化外毒素(bARE)は、コレラ毒素(CT)または大腸菌熱感受性腸毒素(LT)のAB5タンパク質である。
【0048】
特に好ましい実施形態において、ADP−リボシル化外毒素ペプチドサブユニットコード配列は、コレラ毒素(CT)から得られるか、または誘導される。他の特に好ましい実施形態において、ADP−リボシル化外毒素ペプチドサブユニットコード配列は、大腸菌熱感受性腸毒素(LT)、例えば、LT1またはLT2のAB5タンパク質から得られるか、または誘導される。
【0049】
(AB
5クラスタンパク質のAB
5およびB
5形態の分離)
完全なbAREクラスタンパク質と解離したbAREクラスタンパク質とを識別する非解離条件下で、AB
5クラスタンパク質の天然完全AB
5分子と部分的に解離したB
5形態などのbAREクラスタンパク質を分離できることを、この度予想外に見出した。一般に、AB5分子などの天然の完全bARE分子とその解離サブユニット形態とを分離するために好適な材料は、荷電ポリマー分離材であり、それによって、該分離材に適用されたbARE分子の異なる形態を、イオン性緩衝液によって分離できる。該荷電ポリマーカラム分離材はヒドロゲル分離材であることが好ましい。
【0050】
ヒドロゲル組成物は、生物医学業界において周知であり、細胞および組織培養の培地、プロテーゼの印象材、創傷挿入材として、またはゲルろ過クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィー適用における固相材料として、一般的に用いられる。例えば高性能液体クロマトグラフィー法およびアフィニティークロマトグラフィー法において、非多孔性、変形および/または誘導体化アガロースヒドロゲル組成物が用いられてきており(Liら(1990)Preparative Biochem.20:107−121頁)、また、超多孔性ヒドロゲルビーズが、疎水性相互作用クロマトグラフィーにおける支持体として用いられてきた(Gustavssonら(1999)J.Chromatography 830:275−284頁)。
【0051】
本発明に有用なヒドロゲルは、天然のもの(例えば、アガロースおよびアルギン酸塩)であってもよいし、また合成的に作製したもの、または修飾したものであってもよい。ヒドロゲルは、水の存在下で膨張し、水の不在下で(またはその量の減少により)収縮するが、水に溶解しない高分子の三次元網状構造を含む材料である。膨張、すなわち水の吸収は、高分子網状構造に結合したか、またはその中に分散した親水性官能基の存在の結果である。隣接した高分子間の架橋の結果、これらのヒドロゲルは水不溶性となる。該架橋は、化学的(すなわち、共有的)または物理的(すなわち、ファンデルワールス力、水素結合、イオン力など)結合によると考えられる。特に価値のあるヒドロゲルの特徴は、この材料が、脱水しても水和してもその全体の形状を保持することである。したがって、ヒドロゲルが脱水条件において、ほぼ球状を有している場合、水和条件でも球状である。
【0052】
合成的に作製したヒドロゲルは一般に、単量体材料を重合化して骨格を形成し、この骨格を架橋剤によって架橋することによって作製される。一般的なヒドロゲル単量体としては。限定はしないが、以下のものが挙げられる:乳酸、グリコール酸、アクリル酸、1−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エチルメタクリレート(EMA)、プロピレングリコールメタクリレート(PEMA),アクリルアミド(AAM)、N−ビニルピロリドン、メチルメタクリレート(MMA)、グリシジルメタクリレート(GDMA)、グリコールメタクリレート(GMA)、エチレングリコール、フマル酸など。一般的な架橋剤としては、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)およびN,N’−メチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
【0053】
いくつかの合成ヒドロゲルは、親水性ビニル単量体のフリーラジカル重合によって作製される。この最初の工程は、通常、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)などのアゾタイプの開始剤またはベンゾイルペルオキシドなどのペルオキシド開始剤の添加によるフリーラジカルの形成である。紫外線またはガンマ線照射もまた、該反応を開始し得る。ビニル単量体基を用いたフリーラジカル反応により増殖が生じる。通常、該反応混合物の一部は、架橋の程度を規定する二官能性ビニル化合物から構成される。該ゲルの親水性は、通常、親水性ビニル単量体および疎水性ビニル単量体を該ゲルへと共重合化することによって制御される。ヒドロゲルの浸透性は、とりわけ、架橋の程度、ゲルの水和の程度、および浸透物の性質によって決定される。
【0054】
該分離剤は、ヒドロキシル化ポリメタクリレート(HEMA)材であることが好ましい。
【0055】
重合混合物に用いられる溶媒の量およびタイプは、作製されるゲルの性質に実質的に影響を与え得る。例えば、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、またはポリ(HEMA)は、35〜40重量%の水しか吸収せず、したがって、より多量の水を含有する重合反応混合物から作製されたポリ(HEMA)は、水の充満した空隙を含有するので、外観は半透明または不透明である。架橋により、通常、ポリマーの水吸収作用は減少する。
【0056】
合成ヒドロゲル類のさらなる検討は、Richard Bakerによる「Controlled Release of Biologically Active Agents」、A Wiley−Interscience publication、John Wiley&Sons、101−104頁および178−183頁、ならびに米国公開特許出願第20020061336号に見ることができる。これらの参考文献は、参照として、本明細書に組み込まれている。該ポリマー分離材は、約4ミクロンから約10ミクロンの粒径、ならびに約250Åからの多孔度を有し得る。粒径は約6ミクロンであることが好ましい。細孔のサイズは、分析されるbARE分子のサイズに依存し得る。緩衝液は、好適なイオン強度のものであり、該緩衝液系は、溶出緩衝液のpHを、約7.0から約8.0の範囲内に維持できる。溶出緩衝液のpHは、約7.0から約7.5の範囲にあることが好ましい。溶出緩衝液のpHは、約7.0から約7.2の範囲にあることがより好ましい。
【0057】
特定の好ましい実施形態において、ゲル濾過−高性能液体クロマトグラフィーカラムは、例えば、マサチューセッツ州ミルフォード所在のWatersから入手できるWaters Ultrahydrogel250ゲルろ過カラムなど、残留カルボキシル基を有するヒドロキシル化ポリメタクリレート分離材を含む。Ultrahydrogel250は、約6ミクロンの粒径ならびに約250Åの多孔度を有する。該イオン緩衝液は、好適なイオン強度、組成およびpHを有し、例えば、約100〜400mMの実質的に中性のリン酸/硫酸緩衝液のものである。例えば、好ましい一実施形態において、該緩衝液は、例えば、リン酸カリウム(KPi)およびNa
2SO
4,特に、KPi200mMおよびNa
2SO
4100mM、pH7.2であり得る。好ましい一実施形態において、溶出緩衝液は、分析されるbARE分子と適合性の安定化剤を含む。
【0058】
Ultrahydrogel250/KPi200mMおよびNa
2SO
4 100mM、pH7.2システムでは、カラム寸法が7.8mm内径×300mm長である。好適な溶出流速は、約0.25ml/分から約0.7ml/分であり、好ましくは、例えば約0.5ml/分である。検出は、214および280nmで操作するフォトダイオードアレー(PDA)検出器により実施できる。クロマトグラフィー操作時間は、一般に30分以下である。
【0059】
このようなクロマトグラフィーシステムを用いて、AB
5クラスタンパク質のAB
5形態とB
5形態との間の良好なピーク分離を得ることが可能である。良好なピーク分離により、AB
5クラスタンパク質のサンプルにおけるAB
5形態とB
5形態との高信頼の検出が可能となり、ひいては、該サンプルが実質的に完全形態、または結合形態にあるか、部分的な解離形態、または実質的に解離形態にあるか否かを判断することが可能となる。生じたクロマトグラムが、AB
5に相当する保持時間(RT)を有し、実質的に単一なピークによって表されたカラム溶離液中のインタクトな(完全な)AB
5タンパク質の検出によって、カラムにかけたAB
5タンパク質サンプルの実質的な機能的安定性が示される。生じたクロマトグラムが、AB
5およびB
5に相当する保持時間(RTs)を有し、2つの明確なピークによって表されたカラム溶離液中のインタクトなAB
5タンパク質およびB
5タンパク質サブユニットの双方の検出によって、AB
5タンパク質サンプルの部分的解離が示される。生じたクロマトグラムが、B
5に相当する保持時間(RT)を有し、単一なピークによって表されたカラム溶離液中のB
5タンパク質サブユニットの検出によって、AB
5タンパク質サンプルの実質的解離が示される。
【0060】
また、良好なピーク分離により、AB
5クラスタンパク質サンプル中のAB
5形態とB
5形態との比率を高信頼で定量化することが可能になり、ひいては、AB
5クラスタンパク質の完全性の程度を判断することが可能になるか、または他の観点からは、該サンプルの機能的安定性の測定値決定が可能になる。周知の原理により、クロマトグラムにおいて、AB
5タンパク質およびB
5タンパク質サブユニットを表すピークの相対的面積は、該サンプル中のAB
5形態およびB
5形態の相対比を表す。該サンプル中のAB
5形態およびB
5形態の相対比は、該サンプルの機能的安定性を判断するために使用できる。
【0061】
サンプル安定性のこの測定値は、完全性比として示すことができる。本明細書に用いられる用語の「完全性比」とは、サンプル中の完全AB
5タンパク質対B
5サブユニットの比率を言う。本発明により、AB
5タンパク質は、約10:1から約2:1、または約8:1から約3.5:1、または約6:1から約4.5:1の完全性比を有する。AB5タンパク質の完全性比は、少なくとも5:1であることが好ましい。
【0062】
本発明の分析的方法を用いては検出されないほど、サンプル中のB
5サブユニットの量が極めて少ない場合、完全性比は有意味な測定値と考えられなくても、AB
5タンパク質は安定であると考えられる。しかし、該方法の感度は、本発明の分析方法を用いて、3%という低さの部分的に解離したB5サブユニット濃度が検出できるような感度である。対照的に、インタクトなタンパク質の構造的完全性を維持しないSDS−PAGEなどの先行技術の方法では、20%未満の解離B5サブユニット形態は一般的に検出されない。
【0063】
B
5タンパク質サブユニットからAB
5タンパク質を分離するように構成されたゲルろ過高速液体クロマトグラフィー材(GF−HPLC)などの液体クロマトグラフィー技術などの非解離技術を用いてAB
5クラスタンパク質のAB
5形態とB
5形態を高信頼で定量的に分離する能力により、種々の有用なアッセイおよび薬剤、特に、ワクチンに有用な他の技術、タンパク質の構造および安定性についての開発および一般的研究が可能となる。高速水性ゲルろ過クロマトグラフィー(HPASEC)は当業界に公知である(例えば、Perez−Payaら(1991)J of Chromatography548:93−104頁を参照)が、AB
5クラスタンパク質のAB
5およびB
5形態の分離に対するHPASECの適用は、開示されておらず、また、先行技術において提案されたこともない。理論に拘束されることは望まないが、HPASEC支持体上の多くのバイオポリマー溶出機構は、主に、特定の溶質−マトリクス相互作用に由来するイオン排除およびイオン交換、疎水性相互作用および水素結合などの多数の副次的作用のため、純粋なサイズ排除機構から外れている。該分離システムの妥当性は、SDS−PAGE、見かけの分子量決定、光散乱(MALLS)および液体クロマトグラフィー等電収束質量分析(LC−ESI−MS)などの方法のいずれか1つにより実施できるクロマトグラムピークの帰属によって確定できる。実際、実施例が示すように、AB5タンパク質の完全性が維持されているという証拠は、次元解析、光散乱分析(MALLS)およびLC−ESI−MS.Sなどの方法を用いて、検証されている。
【0064】
(安定化剤アッセイおよび同定された安定化剤)
AB
5クラスタンパク質安定化剤などのbAREタンパク質安定化剤を安定化できる作用物質の同定により、インタクトなbAREタンパク質の完全性が治療用最終産物の有効性にとって重要であるワクチンなどの組成物におけるAB
5クラスタンパク質の利用が促進される。本発明の分離方法は、安定化剤候補同定のためのアッセイを提供する上で有利であると考えられる。安定化剤候補のスクリーニングは周知の分野であり、スクリーニングアッセイのハイスループットの実施は、ある特定のスクリーニングの方法論が与えられれば、容易に開発できる。本発明は、そのような方法論を提供する。
【0065】
本発明のスクリーニングアッセイは、AB
5タンパク質などのbAREタンパク質安定化剤を同定する方法である。AB5タンパク質に適用する場合、該アッセイは、安定化剤候補をAB
5クラスタンパク質と組み合わせて、AB
5タンパク質サンプルを形成することを含む。安定化剤候補は、ある一定の条件措置、例えば、pH,濃度などにおける単一の化合物、または化合物の組み合わせであり得る。例えば、安定化剤候補は、種々のpH範囲で作用する安定化緩衝液候補、または非晶質糖類、結晶質糖類、または洗浄剤などの種々の荷電および非荷電の界面活性剤よりなる群から選択される安定化剤候補よりなる群から選択できる。AB
5タンパク質サンプルを安定化する、または物理的安定性を高める安定化剤候補は、AB
5タンパク質物理的安定化剤である。
【0066】
例えば、AB
5タンパク質をB
5タンパク質サブユニットから分離するように構成されたゲルろ過高速液体クロマトグラフィーカラムにサンプルが適用される場合、該分離方法と関連させて、該カラムは上記のとおり、イオン緩衝液によって溶出される。また、上記のとおり、カラム溶出液中の1種以上の実質的にインタクトな(非解離)AB
5タンパク質および/または部分的に解離したB
5タンパク質サブユニットおよび/または実質的に解離したBm単量体サブユニットが検出され、この検出結果に基づいて、安定化剤候補が、AB5タンパク質の機能的安定化に関して、AB
5タンパク質を安定化する能力があるかどうかが判断される。AB
5タンパク質サンプルを安定化する、または機能的安定性を高める安定化剤候補は、AB
5タンパク質機能的安定化剤である。
【0067】
安定化剤候補がAB
5タンパク質を安定化するか、または安定性を高めるかどうかの決定には、実質的に完全なAB
5タンパク質対部分的に解離したB
5サブユニットおよび/または実質的に解離したBm単量体サブユニットの比である完全性比を、タンパク質サンプルに関して算出し、サンプルの完全性比を、安定化剤候補無しの対照に関する完全性比と比較することが含まれる。完全性比はまた、同定された安定化剤によって与えられた安定化の程度を定量化するために使用できる。
【0068】
効率的にAB
5タンパク質安定化剤を同定するために、本法にしたがい、ハイスループット様式で、安定化剤候補のライブラリーをアッセイできる。種々のAB
5タンパク質サンプルの中での所与の安定化剤候補の安定化能力および程度を判断するために、安定化剤候補を、AB
5タンパク質などの種々のbAREタンパク質と組み合わせることができる。典型的には、bAREタンパク質を機能的に安定化する能力のある作用物質を同定するために、本発明の分析方法は、安定化した、好ましくは物理的に安定化したbAREタンパク質に用いられる。あるいは、同定された物理的安定化剤が、bAREタンパク質の機能的安定性に効果を有するかどうかを判断するために、本発明の分析方法を使用できる。
【0069】
実施例で示されるとおり、酢酸塩、pH5.5、クエン酸塩、pH6.5、リン酸塩およびトリス緩衝液(約6〜8のpH範囲)などの種々の緩衝液が選択された。NaCl濃度は、0〜0.5Mの範囲で変化し;pHは、5.5〜7.5の範囲で変化した。糖類、界面活性剤、キレート化剤およびアミノ酸などの種々の添加物が使用された。タンパク質の物理的安定化は、そのタンパク質濃度の関数であると考えられる(すなわち、AB5タンパク質などのbAREタンパク質の濃度が高くなるにつれ、タンパク質の沈殿または結晶化の傾向は増大する)ため、安定化剤候補の効果は、全ての使用された貯蔵緩衝液中、0.8〜1.2mg/mlの濃度範囲のタンパク質およびLTK63(下記で検討される)などのAB5変異体の精製濃縮バルクでは、約1mg/mlから約4mg/mlの濃度範囲のタンパク質を用いて評価された。
【0070】
安定化剤として評価されたアミノ酸候補のいくつかは、以下の表8に記載してある。表8に示されるように、安定化剤候補としてのアミノ酸の選択は、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性に基づいて行うことができる。例えば、負電荷アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。正電荷アミノ酸としては、リジンおよびアルギニンが挙げられる。同様のハイドロフィリシーを有する非電荷極性頭部基を有するアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンが挙げられる。
【0072】
評価された糖類候補のいくつかは、デキストロース、蔗糖、乳糖、トレハロースおよびガラクトースなどの非晶質賦形剤から選択された。評価された他の糖類候補のいくつかは、マンニトール、ソルビトールおよびアリトールなどの糖アルコール類などの結晶質賦形剤から選択された。これらの糖類が、スプレー凍結乾燥法時および長期貯蔵時に、薬剤として使用されるタンパク質を安定化する能力があることが、当業界に公知であるため、これらの作用物質候補が選択された(例えば、国際公開第02/101412号を参照)。しかし、安定化の点で、非晶質賦形剤の利益については、いくつかの矛盾した報告がある。
【0073】
実際、非晶質賦形剤をタンパク質溶液に添加すると、賦形剤とタンパク質との間の相互作用により、実際はタンパク質が不安定化され得ることが、いくつかの試験により示されている。(例えば、Pikeら、Biopharm1990 3:2629頁および国際公開第01/41800号を参照)。
【0074】
実施例で示されるように、本発明のbAREタンパク質の安定化に、全ての安定化剤候補が有用であるとは限らない。例えば、PBSに5%のサッカロースを添加することにより、凍結/解凍サイクルにおけるLTK63などのAB5変異体の解離は防がれると考えられたが、LTK63を、−20℃でPBSプラス5%サッカロース中、1年以上貯蔵すると、タンパク質の解離がいくらか生じる結果となった。しかし、いくつかの作用物質は、本発明の方法を用いて決定されたとおり、bAREタンパク質を安定化する能力があることが同定された。
【0075】
したがって、一態様において、AB5タンパク質などのbAREタンパク質を安定化するために、非荷電物質またはそのアナログの使用が提供される。
【0076】
非荷電物質またはそのアナログの使用が、AB5タンパク質などのbAREタンパク質を機能的に安定化するためのものであることが好ましい。
【0077】
本明細書に用いられる用語の「非荷電物質」は、正電荷または負電荷の正味量を有する作用物質を意味する。用語の「非荷電物質」はまた、含む
「アナログ」により、1つ以上の置換、挿入、または欠失を有し得、かつ、bAREタンパク質の解離を最少化し、したがって、ある期間の貯蔵中に、bAREタンパク質の実質的な完全性を維持する所望の効果をもたらす非荷電物質の変異体、相同体、アナログ、誘導体またはそれらの断片が意図される。好適なアナログとしては、限定はしないが、下記の非荷電物質の誘導体が挙げられる。
【0078】
AB
5タンパク質などのbAREタンパク質を機能的に安定化するために、非荷電物質を含めることは、サブユニット形態の安定な結合を増強するため、有利である。bAREタンパク質を機能的に安定化し得るか、またはbAREタンパク質の機能的安定化を増強し得る作用物質が同定されたのは、今回が初めてである。今まで、完全構造の損失なしに、AB5タンパク質などのbAREタンパク質の機能的安定性を評価するために利用できる方法は無かった。利用できる分析方法が無かったため、このような機能的安定化剤を同定することができなかった。
【0079】
該非荷電物質は、両性イオン性物質であることが好ましい。
【0080】
該両性イオン性物質は、両性イオン性界面活性剤および両性イオン性非界面活性剤化合物よりなる群から選択されることが好ましい。
【0081】
該両性イオン性物質は、両性イオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0082】
両性洗浄剤としても知られている両性イオン性界面活性剤は、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを合わせた性質を提供する点で独特である。非イオン性界面活性剤と同様、両性洗浄剤は、正味の電荷を有さず、導電性および電気泳動性を欠き、イオン交換樹脂と結合しない。
【0083】
該両性イオン性界面活性剤は胆汁酸塩誘導体であることが好ましい。
【0084】
本明細書に用いられる用語の「胆汁酸塩誘導体」とは、カルボン酸によるコレステロールの誘導体を言う。胆汁酸塩誘導体の例としては、限定はしないが、コール酸およびデオキシコール酸が挙げられる。
【0085】
両性洗浄剤としても知られている両性イオン性界面活性剤は、
図16に記載されているASB−14、ASB−16,CHAPS、CHAPSO、DDMAB、DDMAU、Epigen BB界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキシド(LDAO)、両性洗浄剤3−08、3−10、3−12、3−14、および3−16よりなる群から選択されることが好ましい。上記に略図化されたCHAPS、CHAPSOおよび他の両性洗浄剤の構造は、Calbiochem(文書番号CB0068−401)から入手できる、Srirama M Bhairi(2001)による「Detergents−A guide to the properties and uses of detergents in biological systems」から採用された
図17に記載されている。
【0086】
該非荷電界面活性剤は、CHAPS(3−(3−コールアミドプロピル)−ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルフォネート)などの両性洗浄剤であることが好ましい。CHAPSは、胆汁酸塩の両性イオン性合成誘導体である。CHAPSの構造は
図17に記載されている。CHAPSは、Merckの関連会社であるCalbiochemおよびSigma、Aldrichなどの多数の商品供給元から入手できる。
【0087】
理論に拘束されることは望まないが、CHAPSなどの両性洗浄剤は、おそらくそれらの堅固なステロイド環構造により、Zwittergent(登録商標)3−Xシリーズよりも変性的でないため、有利である。したがって、CHAPSなどの両性洗浄剤は、AおよびBサブユニットの安定な結合を増強し得る。
【0088】
該非荷電界面活性剤は、CHAPSO(3−(3−コールアミドプロピル)−ジメチルアンモニオ−2−ヒドロキシプロパンスルフォネート)などの両性洗浄剤であることが好ましい。CHAPSO構造もまた、
図17に記載されている。CHAPSOは、Merckの関連会社であるCalbiochemおよびSigma、Aldrichなどの多数の商品供給元から入手できる。
【0089】
該両性イオン性物質は、非界面活性スルホベタイン(NDSB)であることが好ましい。
【0090】
NDSBは、両性イオン性化合物である。両性洗浄剤と同様に、NDSBSはスルホベタイン親水性頭部基を有する。しかし、両性洗浄剤とは対照的に、NDSB類は、界面活性剤のように挙動しない。最近、NDSB類が、膜タンパク質の単離など、いくつかの適用に用いられることが判明した。また、それらは、化学的、および熱的に変性したタンパク質の復元およびリホールディングにも用いられてきた。短いながらも疎水性基が、タンパク質の疎水性領域と相互作用し、復元時の凝集を防ぐと仮定されている。
【0091】
本発明の他の実施形態において、当業者に公知の方法を用いて、両性イオン性化合物のアナログが調製され、bARE組成物に使用できる。
【0092】
開示されたプロトコルにしたがい、例えば、下記の実施例において、当業者は、本明細書に記載された両性イオン性物質の所望の濃度範囲を評価できる。該組成物に組み込まれた両性イオン性物質の量は、約0.05重量体積(w/v)%から約0.5重量体積%の濃度範囲内であることが好ましく、好ましくは,約0.1%から約0.4%、より好ましくは、約0.2%から約0.35%、さらに好ましくは、約0.25%である。参照を容易にするために言うと、0.05%(w/v)CHAPSは、0.81mMのCHAPSと等価であり、0.25%のCHAPSは、4.06mMのCHAPSと等価である。
【0093】
さらなる態様により、bAREタンパク質、好ましくはAB5タンパク質を安定化するために、荷電物質の使用が提供される。
【0094】
該荷電物質は、荷電アミノ酸塩基であることが好ましい。
【0095】
本明細書に用いられる用語の「荷電アミノ酸」は、アルギニン、リジン、アスアラギン酸、および/またはグルタミン酸などのアミノ酸に見られるような荷電側鎖を有するアミノ酸を意味する。
【0096】
「アミノ酸塩基」によって、所与のアミノ酸が、遊離塩基形態またはその塩形態において存在するアミノ酸またはアミノ酸の組み合わせが意図される。アミノ酸の組み合わせが用いられる場合、全てのアミノ酸がそれらの遊離塩基形態で存在してもよいし、全てがそれらの塩形態で存在してもよいし、いくらかがそれらの遊離塩基形態で存在し、他はそれらの塩形態で存在してもよい。
【0097】
AB
5タンパク質などのbAREタンパク質を物理的に安定化するために荷電アミノ酸塩基を含めることは、それによって、安定化を増強し、および/または凝集および/または凝集物形成を最少化するため、有利である。
【0098】
該荷電アミノ酸は、正に荷電したアミノ酸であることがさらに好ましい。
【0099】
本明細書に用いられる用語の「正に荷電したアミノ酸」は、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸に見られるような正に荷電した側鎖を有するアミノ酸を意味する。
【0100】
正に荷電したアミノ酸は、アルギニンであることが好ましい。
【0101】
安定化剤としてのアルギニンの同定は予想外であるが、bARE組成物にそれを組み入れることは、AB5タンパク質などのbAREタンパク質の溶解度を増大させると思われるため、有利である。
【0102】
アルギニンは、正に荷電したグアニジノ基を有する必須アミノ酸である。アルギニンは、一般に、3文字記号のARGまたは1文字記号Rによって示される。そのIUPAC名は、2−アミノー5−グアニジノペンタン酸である。側鎖のグアニジノ基は、pH7で正に荷電しており;したがってアルギニンは「塩基性」アミノ酸であり、極めて親水性である。アルギニンの直線構造は:HN=C(NH2)−NH−(CH2)3−CH(NH2)−COOH
【0105】
アルギニンの遺伝コードには6種のコドンがあり、それらは:AGA、AGG、CGA、CGC、CGG、CGTである。
【0106】
本発明の組成物は、これらの好ましいアミノ酸のアナログによっても製剤化できる。
【0107】
「アミノ酸アナログ」によって、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、または欠失を有し得、該組成物の貯蔵時にbAREタンパク質の凝集物形成を最少化する所望の効果をもたらす天然アミノ酸の誘導体またはその断片が意図される。好適なアルギニンアナログとしては、例えば、アミノグアニジンおよびN−モノエチルL−アルギニンが挙げられる。他のアナログとしては、限定はしないが、アルギニンを含有するジペプチド類およびペプチド類を挙げることができる。好ましいアミノ酸と同様に、アミノ酸アナログは、それらの遊離塩基形態またはそれらの塩形態のいずれかにおいて該組成物に組み込まれる。
【0108】
用語の「アミノ酸アナログ」は、アミノ酸の立体異性体も含む。特定のアミノ酸がその遊離塩基形態またはその塩形態のいずれかにおいて存在する限り、該アミノ酸の任意の立体異性体(すなわち、L、D、またはDL異性体)またはこれらの立体異性体の組み合わせが本発明のbARE組成物中に存在できる。好ましくは、L立体異性体が使用される。
【0109】
開示されたプロトコルにしたがい、例えば、下記の実施例4〜12において、当業者は、本明細書に記載されたアミノ酸塩基の所望の濃度範囲を評価できる。該組成物中に組み込まれたアミノ酸塩基の量は、該組成物中に存在するタンパク質に依って、約100mMから約400mMの濃度範囲内であることが好ましく、好ましくは、約130mMから約375mM、より好ましくは、約150mMから約350mM、さらに好ましくは、約175mMから約325mM、さらに好ましくは、約180mMから約300mM、さらにいっそう好ましくは、約190mMから約280mM、最も好ましくは、約200mMから約260mMの濃度範囲内である。
【0110】
ある状況において、bAREタンパク質は、機能的には安定であり得る(例えば、その完全性が維持できる)が、物理的には安定であり得ない(例えば、溶液から沈殿し得る)。他の状況において、bAREタンパク質は、物理的には安定であり得る(例えば、溶液において存在し得る)が、機能的には安定であり得ない(すなわち、AB5およびB5形態に部分的に解離し得る)。
【0111】
したがって、上記のとおり、一態様において、本発明は、物理的安定化または機能的安定化に関して、bAREタンパク質を選択的に安定化できる安定化剤を提供する。
【0112】
また、他の態様において、本発明は、bAREタンパク質を安定化するために、荷電安定化と非荷電安定化剤との組み合わせの使用も提供する。
【0113】
非荷電安定化剤は、両性イオン性物質、好ましくはCHAPSであることが好ましい。
【0114】
荷電安定化剤は、荷電アミノ酸、好ましくはアルギニンであることが好ましい。
【0115】
実施例によって示されるように、L−アルギニンまたはリン酸アルギニンなどのL−アルギニンの誘導体などの荷電アミノ酸は、特に、約100mMから約400mMの濃度において、LTK63に対する有用な安定化剤であることが決定された。他の有用な安定化剤は、L−アルギニンまたはリン酸アルギニンなどの荷電アミノ酸とCHAPS(3−〔(3−コールアミドプロピル)−ジメチルアンモニオ〕−1−プロパンスルフォネート)などのスルホベタイン両性イオン性界面活性剤の組み合わせ、特に、約0.05%CHAPSと約200mMリン酸アルギニンとを含む。機能的安定化能力に関して、これらの安定化剤は、LTK63に対して、約10:1から約2:1、または約8:1から約3.5:1、または約6:1から約4.5:1の完全性比を達成できる。LTK63に対する完全性比は、約10:1であることが好ましい。
【0116】
理論に拘束されることは望まないが、アミノ酸を含むことによるbARE組成物の安定性増加は、bAREポリペプチドの安定性に及ぼすアミノ酸の影響、より具体的には、bAREタンパク質沈殿に及ぼすアミノ酸の影響によって達成できる。さらに、本明細書に定義された両性イオン性物質をbAREポリペプチド組成物内に組み込むことにより、bAREタンパク質の完全な天然形態に実質的に維持されており、その完全性を本発明の分析方法を用いて測定できる、bAREタンパク質を含む組成物がもたらされる。
【0117】
遊離塩基形態または塩形態におけるアミノ酸のアルギニン、リジン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸などの荷電アミノ酸と非電荷両性イオン性物質との組み合わせによって、これら2つの成分を組み合わせることなしに調製されたbARE組成物に比較して、安定性が増大する結果となるため、有利なbARE組成物となる。アミノ酸塩基と両性イオン性物質との組み合わせから得られる相乗的安定化効果は、先行技術における開示に関しては全く予想されない。さらに、この安定化組成物は、安定化剤および/または可溶化剤として、ヒト血清アルブミン(HAS)の不在下で安定性を達成できるために有利である。
【0118】
アミノ酸塩基と両性イオン性物質によって本発明のbAREポリペプチド組成物を調製する利点が確認されたので、該組成物貯蔵時のポリペプチド安定性の増大を達成するために、本明細書に記載された凝集物形成を示す治療的に活性な対象bAREポリペプチドを含むbARE組成物中に組み込むこれらの成分各々の好ましい濃度を、過度の実験なしに決定することは当業技術の範囲内にある。
【0119】
例えば、下記の実施例1において、開示されたプロトコルにしたがい、当業者は、本明細書に記載されたアミノ酸塩基および両性イオン性物質の所望の濃度範囲を評価できる。該組成物に組み込まれるアミノ酸塩基の量は、該組成物中に存在するタンパク質に依って、約100mMから約400mMの濃度範囲内にあることが好ましく、好ましくは、約130mMから約375mM、より好ましくは、約150mMから約350mM、さらに好ましくは、約175mMから約325mM、さらに好ましくは、約180mMから約300mM、さらにいっそう好ましくは、約190mMから約280mM、最も好ましくは、約200mMから約260mMの濃度範囲内にある。
【0120】
例えば、下記の実施例4〜12において、開示されたプロトコルにしたがい、当業者は、本明細書に記載された両性イオン性物質の所望の濃度範囲を評価できる。該組成物に組み込まれる両性イオン性物質の量は、約0.05%から約0.5%の濃度範囲内にあることが好ましく、好ましくは、約0.1%から約0.4%、より好ましくは、約0.2%から約0.35%、さらにいっそう好ましくは、約0.25%である。
【0121】
したがって、本発明の他の実施形態において、該安定化組成物は、bAREタンパク質、約150mMから約350mMの濃度のアルギニン塩基、および約0.05%から約0.5%の濃度の両性イオン性物質を含む。好ましい一実施形態において、bARE組成物中に、アルギニン塩基は、約200mMの濃度で存在し、CHAPSなどの両性イオン性物質は、約0.25%の濃度で存在する。好ましいこのbARE組成物は、約7.2のpHを有する。これらの組成物中のbAREタンパク質またはその変異体の濃度は、約0.01mg/mlから約2.0mg/ml、好ましくは、約0.02mg/mlから約1.0mg/ml、より好ましくは、約0.03mg/mlから約0.8mg/ml、最も好ましくは、約0.03mg/mlから約0.5mg/mlである。
【0122】
本発明の安定化組成物は、アミノ酸塩基および両性イオン性物質によって達成される安定化効果が悪影響を受けない限り、治療的有効成分として働く対象bAREポリペプチドの有効性を増大するか、またはその望ましい性質を促進する他の化合物を含有できる。該組成物は、選択される経路を経る投与にとって安全でなければならず、滅菌されていなければならず、その治療的活性を保持しなければならない。
【0123】
bARE組成物は、本明細書に開示された低イオン強度の製剤を用いて得られる溶解度増強を超えて、タンパク質溶解度に寄与する可溶化剤または溶解度増強剤をさらに含んでもよい。さらなる好適な可溶化剤は、米国特許第4,816,440号;第4,894,330号;第5,004,605号;第5,183,746号;第5,643,566号;およびWangら(1980)J.Parenteral Drug Assoc.34:452−462頁において検討されており、これらは、参照として本明細書に組み込まれている。
【0124】
bARE組成物は、さらに、非イオン性界面活性剤を含み得る。非イオン性界面活性剤の例としては、限定はしないが、Brij(登録商標)およびTriton(登録商標)などのポリオキシエチレン部分(例えば、Triton−X、NP−40、Brij、Tweenなど)または限定はしないが、オクチルグルコシドおよびドデシルマルトシド類などのグリコシド基(例えば、オクチル−B−チオグルコピラノシドなど)のいずれかから構成される非荷電、親水性頭部基を含有する界面活性剤が、限定ではないが、挙げられる。理論に拘束されることは望まないが、非イオン性界面活性剤は、タンパク質を変性させることはめったにない一方、それらを可溶化するため、非変性的であると考えられ、膜タンパク質の生物学的活性形態における単離に広く用いられている「穏やかな」界面活性剤と考えられるため、有利である。
【0125】
(貯蔵安定性)
アミノ酸塩基、またはアミノ酸塩基プラス本明細書に記載された1種以上の追加安定化剤を両性イオン性物質と組み合わせて組み込むことによるbAREタンパク質またはその変異体の安定性増大は、貯蔵時のbAREタンパク質組成物の安定性増大をもたらす。したがって、本発明は、bARE組成物が、貯蔵中に凝集物を形成するbAREタンパク質を含む場合、該bARE組成物の貯蔵安定性を増大させる方法も提供する。
【0126】
「貯蔵安定性の増大」により、該bARE組成物の貯蔵時のbAREポリペプチドの凝集物形成および/または解離が、本明細書に記載された1種以上の安定化剤不在下での貯蔵時のbAREポリペプチドの凝集物形成および/または解離に比較して最少化されることが意図される。
【0127】
アミノ酸塩基または両性イオン性物質の添加によるbAREタンパク質の凝集物形成および/または解離の最少化は、濃度依存性の様式で生じ得る。すなわち、アミノ酸塩基および/または両性イオン性物質の不在下において、組成物中のbAREポリペプチドが、貯蔵中に、通常、凝集物形成および/または解離を示す場合、アミノ酸塩基および/または両性イオン性物質の濃度が増加すると、組成物中のbAREポリペプチドの安定性増加をもたらし得る。凝集物形成および/または解離を最少化し、それによって、ポリペプチドの安定性を増加させ、したがって、bARE組成物の貯蔵安定性を増加させるために、該組成物に添加する具体的なアミノ酸塩基および/または両性イオン性物質の量の決定は、当業者に一般的に公知の方法を用いて、過度の実験無しに、任意の特定の対象bAREポリペプチドに関して、容易に決定できる。
【0128】
また、bARE組成物の経時的貯蔵安定性を増大させることが望ましい。
【0129】
本発明のbARE組成物は、貯蔵安定性の増大を示す。
【0130】
貯蔵安定性の増大は、約4ヵ月から約8ヵ月の期間にわたって見られることが好ましい。
【0131】
貯蔵安定性の増大は、約1年の期間にわたって見られることが好ましい。
【0132】
bARE組成物は、2−8で貯蔵された場合、少なくとも、18ヵ月の貯蔵期限を有することが好ましく、より好ましくは、少なくとも20ヵ月、さらに好ましくは、少なくとも約22ヵ月、最も好ましくは、少なくとも約24ヵ月の貯蔵期限を有する。
【0133】
本発明の方法にしたがって作製されたbARE組成物の貯蔵安定性は、当業界に公知の標準的な方法を用いて評価できる。典型的には、このような組成物の貯蔵安定性は、貯蔵安定性プロフィルを用いて評価される。下記の実施例に示されるとおり、pH濃度、安定化剤、安定化剤の濃度などの対象の変数に応答した、非凝集、非解離の生物学的活性分子形態において存在するbAREタンパク質の量およびその効力の変化を、経時的にモニタリングすることによって、これらのプロフィルが経時的に得られる。これらの安定性プロフィルは、冷凍温度、冷蔵温度、室温、または40〜50℃などの高温など、可能な貯蔵条件を代表するいくつかの温度において作成できる。次いで、例えば、対象bAREポリペプチドの非凝集、生物学的活性、非解離分子形態の半減期を測定することによって、プロフィル間での貯蔵安定性を比較できる。
【0134】
「半減期」によって、非凝集、生物学的活性分子形態における対象ポリペプチドの50%減少に必要とされる時間が意図される。本発明の方法によって調製されたアルギニン塩基および両性イオン性物質を含む組成物は、両性イオン性物質と組み合わせたアミノ酸塩基、またはアミノ酸塩基プラス本明細書に記載された1種以上の追加安定化剤の不在下で調整された組成物の半減期の少なくとも約2倍から約10倍、好ましくは、少なくとも約3倍から約10倍、より好ましくは、約4倍から約10倍、最も好ましくは、約5倍から約10倍の半減期を有する。本発明の目的のため、本発明により調製される結果として貯蔵安定性の増大した組成物は、「安定化」bARE組成物と考えられる。
【0135】
理論に拘束されることは望まないが、本発明の安定化bAREポリペプチド含有組成物の貯蔵安定性増大は、貯蔵時の治療上活性なbAREポリペプチド内のグルタミン残基および/またはアスパラギン残基の脱アミドに及ぼすアミノ酸塩基の抑制効果にも関連し得る。貯蔵時のbARE組成物中のこれらの残基の脱アミドに及ぼす具体的なアミノ酸塩基の効果は、脱アミド形態において存在するbAREポリペプチドの量を、経時的にモニタリングすることによって容易に測定できる。具体的なbAREポリペプチドの天然または脱アミドの分子種の測定方法は、当業界で一般的に知られている。このような方法としては、分子種のクロマトグラフィー分離およびRP HPLCによるなど、ポリペプチド分子量標準を用いた同定が挙げられる。
【0136】
(bAREタンパク質)
本明細書に用いられる用語の「bAREタンパク質」には、限定はしないが、タンパク質、核酸が含まれる。bAREタンパク質は、個々に、または他の生物学的分子と組み合わせて使用できる。
【0137】
本明細書に用いられている用語の「タンパク質」は、自然に生じる(天然)、合成、および組み換えポリペプチドおよびタンパク質、および本明細書の他所で定性化された生物学的に活性な変異体およびそれらのアナログを包含する。用語の「タンパク質」にはまた、他の生物学的分子に結合しているポリペプチド類およびペプチド類が含まれる。「治療的活性成分」によって、bARE組成物が対象に投与された時、その対象内の疾病または病態の治療、予防、または診断に関して、所望の治療的応答をもたらすために本発明のbARE組成物に特に組み込まれるタンパク質またはポリペプチドが意図されている。
【0138】
本発明のポリペプチドは、種々の手段(例えば、組み換え発現、細胞培養からの精製、化学的合成など)によって、また、種々の形態(例えば、天然、融合、非グリコシル化、リピド化など)において調製できる。それらは、実質的に純粋な形態(すなわち、他の宿主細胞タンパク質が実質的に除去された)において調製されることが好ましい。また、本発明は、ポリペプチド発現を誘導する条件下で、本発明の核酸により形質転換された宿主細胞を培養するステップを含む、本発明のポリペプチドを製造する方法を提供する。
【0139】
本明細書に用いられている用語の「核酸」は、オリゴヌクレオチド類およびポリヌクレオチド類を言い、DNAおよびRNAを含む。用語の「ヌクレオチド配列(NOI)」は、用語の「ポリヌクレオチド」または「核酸」と同義である。NOIは、ゲノムの、または合成の、または組み換え由来のDNAまたはRNAであり得る。NOIは、センス鎖またはアンチセンス鎖またはそれらの組み合わせのいずれをも表す二本鎖または一本鎖であり得る。いくつかの適用のために、NOIは、DNAであることが好ましい。いくつかの適用のために、NOIは、組み換えDNA法の使用(例えば、組み換えDNA)によって調製されることが好ましい。いくつかの適用のために、NOIはcDNAであることが好ましい。いくつかの適用のために、NOIは、天然形態と同一であり得ることが好ましい。用語の「核酸」には、DNAおよびRNA、また、修飾骨格(例えば、ホスホロチオエート類など)を含有するものなどのそれらのアナログ、ならびにペプチド核酸(PNA)が含まれる。本発明は、上記の配列に相補的な配列を含む核酸を含む(例えば、アンチセンスまたはプロービング目的で)。
【0140】
本発明による核酸は、多くの方法で(例えば、化学的合成により、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、生物それ自体からなど)調製でき、また、種々の形態(例えば、一本鎖、二本鎖、ベクター、プローブなど)をとり得る。それらは、実質的に純粋な形態(すなわち、他のタンパク質または宿主細胞核酸が実質的に除去された)において調製されることが好ましい。
【0141】
本発明の組成物中、治療的有効成分として働くbAREタンパク質の生物学的に活性な変異体もまた、本明細書に用いられている用語の「bAREタンパク質」に包含される。対象に投与された際、変異体ポリペプチドを含む組成物が天然ポリペプチドを含む組成物と同じ治療効果を有するように、このような変異体は、天然bAREタンパク質の所望の生物学的活性を保持することが必要である。すなわち、変異体ポリペプチドは、天然bAREタンパク質で見られる様式と同じ様式で、治療的有効成分として働く。
【0142】
変異体は、限定はしないが、該ポリペプチドの一次アミノ酸配列が、糖部分を用いる誘導体化により(グリコシル化)、または脂質、リン酸塩、アセチル基などの他の補足分子により増強できる状況を含み得る。それはまた、糖類との結合によっても増強できる。このような増強の一定の態様は、産生宿主の翻訳後プロセシング系によって達成され;他のこのような修飾は、インビトロで導入できる。いずれの場合も、このような修飾は、該ポリペプチドの活性が無効にされない限り,本明細書に用いられるポリペプチドの定義に含まれる。種々のアッセイにおいて、このような修飾は、該ポリペプチドの活性を増強、または減少することにより、定量的に、または定性的に該活性に影響を与え得ることが予想される。さらに、鎖中の個々のアミノ酸残基を、酸化、還元、または他の誘導体化によって修飾でき、また、該ポリペプチドを開裂して、活性を保持する断片を得ることができる。活性を無効にしないこのような変更によって、本明細書で用いられる対象ポリペプチドの定義から該ポリペプチド配列が除外されることはない。
【0143】
当業技術により、ポリペプチド変異体の調製および使用に関する実際的な指針が提供されている。ポリペプチド変異体の調製において、天然タンパク質ヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対するどの修飾が、本発明の製薬組成物の治療的有効成分として使用するために好適な変異体を生じさせるか、また、アミノ酸塩基および塩形態が実質的に無い酸、酸の塩形態、または酸とその塩形態との混合物の存在により、どんな凝集物形成が減少するかを、当業者は容易に決定できる。例えば、変異体ポリペプチドが、所望の生物学的活性を保持しているかどうか、したがって、該組成物中の治療的有効成分として働くかどうかを決定する方法が当業界で利用できる。本発明に記載されたアッセイなど天然ポリペプチドまたはタンパク質の活性を測定するために特にデザインされたアッセイを用いて、生物学的活性を測定することができる。さらに、生物学的に活性な天然ポリペプチドに対して増加させた抗体を、変異体ポリペプチドに対するそれらの結合能力に関して試験することができ、ここで効果的な結合は、天然ポリペプチドのコンホメーションと同様なコンホメーションを有するポリペプチドを示す。
【0144】
天然の、または自然に生じる対象ポリペプチドの好適な生物学的活性変異体は、そのポリペプチドの断片、アナログ、および誘導体であり得る。「断片」により、完全ポリペプチド配列と構造の部分のみから構成されているポリペプチドが意図されることもあるし、また、天然ポリペプチドのC末端欠失またはN末端欠失でもあり得る。
【0145】
「アナログ」により、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を有する天然ポリペプチド配列および構造を含む、天然ポリペプチドの、または天然ポリペプチドの断片のアナログが意図されている。本明細書に記載されたものなどの「突然変異タンパク質」および1つ以上のペプトイド(ペプチド模擬物)を有するペプチドもまた、アナログと言う用語に包含される(例えば、国際公開第91/04282号を参照)。
【0146】
「誘導体」により、対象天然ポリペプチドの所望の生物学的活性が保持される限り、該天然ポリペプチドの、該天然ポリペプチド断片の、または、それら各々のアナログの、グリコシル化、リン酸化、または外来部分の他の付加などの好適な修飾が意図されている。ポリペプチドの断片、アナログおよび誘導体を作製する方法は、当業界で一般的に利用できる。例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、対象の天然ポリペプチドをコードするクローン化DNA配列における変異によって調製できる。
【0147】
変異誘発およびヌクレオチド配列変更の方法は、当業界に周知である。例えば、参照として、本明細書に組み込まれているWalkerおよびGaastra編集(1983)Techniques in Molecular Biology(ニューヨーク所在のMacMillan出版社);Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:488−492頁;Kunkelら(1987)Methods Enzymol.154:367−382頁;Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(ニューヨーク州コールドスプリングハーバー);米国特許第4,873,192号;およびそれらに引用された文献を参照されたい。対象のポリペプチドの生物学的活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換についての指針は、参照として本明細書に組み込まれているAtlas of Protein Sequence and Structure(ワシントンD.C.所在のNatl.Biomed.Res.Found.)におけるDayhoffらのモデル(1978)に見ることができる。
【0148】
1つのアミノ酸の、同様な性質を有する他のアミノ酸による交換などの保存的置換が好ましいと考えられる。保存的置換の例としては、限定はしないが、GlyからAla、ValからIleからLeu、AspからGlu、LysからArg、AsnからGln、およびPheからTrpからTyrが挙げられる。対象ポリペプチドの変異体構築においては、変異体が所望の活性を保持し続けるように、修飾がなされる。変異体ポリペプチドをコードするDNAにおいてなされる変異は、リーディングフレーム外に配列を配置してはならないことは明白であり、また、二次的なmRNA構造を生み出し得る相補的領域を生成しないことが好ましい。欧州特許出願公開第75,444号を参照されたい。
【0149】
対象となるポリペプチドの生物学的に活性な変異体は、比較の基準として働く参照ポリペプチド分子のアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは約90%から95%以上、最も好ましくは約98%以上のアミノ酸配列同一性を、一般に有する。対象の天然ポリペプチドの生物学的活性変異体は、1〜15個のアミノ酸だけ、1〜10個だけ、例えば、6〜10個、5個だけ、4、3、2個だけ、またはさらに1個のアミノ酸残基だけ、天然ポリペプチドと異なり得る。
【0150】
本発明に用いられるタンパク質(タンパク質抗原を含めて)は、天然形態との相同性および/または配列同一性を有し得る。このようなタンパク質を発現する能力のある同様なコード配列は、天然の配列との相同性および/または配列同一性を、一般に有する。核酸およびアミノ酸の「配列同一性」を決定する方法もまた、当業界に公知である。典型的には、このような方法は、ある遺伝子に関するmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされたアミノ酸配列を決定すること、およびこれらの配列を第2のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と比較することを含む。
【0151】
一般に、用語の「同一性」とは、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列それぞれの、ヌクレオチド対ヌクレオチド、またはアミノ酸対アミノ酸の完全な対応を言う。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)を、それらの「同一性パーセント」を決定することによって比較することができる。核酸配列でもアミノ酸配列でも、2つの配列の同一性パーセントは、整列した2つの配列間の完全対合数をより短い鎖の長さで割り、100をかけたものである。
【0152】
2つの配列の最適な整列のため、変異体のアミノ酸配列の連続セグメントは、参照分子のアミノ酸配列に関して、追加のアミノ酸残基または欠失アミノ酸残基を有し得る。参照アミノ酸配列との比較のために用いられる連続セグメントは、少なくとも20個の連続アミノ酸残基を含み、また、30個、40個、50個、100個、またはそれ以上の残基であり得る。変異体のアミノ酸配列におけるギャップ含有に関連した配列同一性増大のための補正は、ギャップペナルティーを割り当てることによって実施できる。配列整列の方法は、アミノ酸配列に関しても、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に関しても、当業界に周知である。
【0153】
したがって、任意の2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。配列比較に利用される数学的アルゴリズムの1つの好ましい非限定的な例は、MyersとMiller(1988)CABIOS4:11−17頁のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列整列ソフトウェアーパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)において利用される。アミノ酸配列を比較する際は、ALIGNプログラムと共に、PAM120重量残基表、12のギャップ長さペナルティー、および4のギャップペナルティーが使用できる。2つの配列比較に使用される数学的アルゴリズムの他の好ましい非限定的な例は、KarlinとAltschul(1990)Proc.Natl.Acad Sci.USA87:2264頁をKarlinとAltschul(1993)Proc.Natl.Acad Sci.USA90:5873−5877頁で修正したものである。このようなアルゴリズムは、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403頁のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。対象のポリペプチドをコードするヌクレオチドに対して相同性のヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて、BLASTヌクレオチド探索を実施することができる。対象のポリペプチドをコードするヌクレオチドに対して相同性のアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて、BLASTタンパク質探索を実施することができる。比較目的で、ギャップ化整列を得るために、Altschulら(1997)Nucleic Acid Res.25:3389頁に記載されているGapped BLASTを利用することができる。あるいは、分子間の遠隔関係を検出する反復探索を実施するために、PSI−BLASTを使用することができる。上記、Altschulら(1997)を参照されたい。BLAST、Gapped BLAST、およびPSI−BLASTプログラムを利用する際は、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用できる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。また、Atlas of Protein Sequence and Structure5:Suppl.3(ワシントンD.C.所在のNational Biomedical Research Foundation)におけるALIGNプログラム(Dayhoff(1978)およびWisconsin Sequence Analysis Package、第8版(ウィスコンシン州マジソン所在のGenetics Computer Groupから入手できる)におけるプログラム、例えば、プログラムのデフォルトパラメータが利用されているGAPプログラムを参照されたい。
【0154】
また、核酸配列に関する近似整列がSmithとWaterman、Advances in Applied Mathematics2:482−489頁(1981)の局所相同性アルゴリズムにより提供されている。このアルゴリズムは、Dayhoff、Atlas of Protein Sequence and Structure、M.O.Dayhoff編集、5suppl.3:353−358,米国、ワシントンD.C.所在のNational Biomedical Research Foundationによって開発され、Gribskov、Nucl.AcidsRes.14(6):6745−6763頁(1986)によって正規化されたスコアリングマトリクスを使用することによって、アミノ酸配列に適用できる。配列の同一性パーセントを決定するためのこのアルゴリズムの例示的実施は、「BestFit]ユーティリティーの適用において、Genetics Computer Group(ウィスコンシン州マジソン所在)により提供されている。この方法に関するデフォルトパラメータは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual、第8版(1995)(ウィスコンシン州マジソン所在のGenetics Computer Groupから入手できる)に記載されている。本発明の文脈における同一性パーセント確立の好ましい方法は、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokによって開発され、IntelliGenetics社(カリフォルニア州マウンテンビュー所在)によって配給され、エディンバラ大学が版権を有しているプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。このパッケージ一式から、スコアリング表に関してデフォルトパラメータが使用されている(例えば、12のギャップオープンペナルティー、1のギャップ拡張ペナルティー、6のギャップ)Smith−Watermanアルゴリズムを使用することができる。該データから「対合値」反映「配列同一性」が作成された。配列間の同一性または類似性パーセントを算出するための他の好適なプログラムは、一般的に当業界に公知であり、例えば、他の整列プログラムは、デフォルトパラメータと共に用いられるBLASTである。例えば、以下のデフォルトパラメータを用いて、BLASTおよびBLASTPが使用できる:遺伝コード=標準;フィルター=なし;鎖=双方;カットオフ=60;予想=10;マトリクス=BLOSUM62;表示=50配列;選別=HIGH SCORE;データベース=非重複;GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBankCDS翻訳+Swissタンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスで見ることができる:http://www.ncbi.nlm.gov/cgi−bin/BLAST。
【0155】
アミノ酸配列同一性のパーセンテージを考える場合、保存的アミノ酸置換の結果、いくつかのアミノ酸残基の位置が異なり得るが、これは、タンパク質機能の性質には影響しない。これらの場合、配列同一性パーセントは、保存的に置換されたアミノ酸における類似性のために上方へ調整し得る。このような調製は、当業界に周知である。例えば、MyersおよびMiller(1988)ComputerApplic.Biol.Sci.4:11−17頁を参照されたい。
【0156】
ポリペプチドの正確な化学的構造は、多くの因子に依存する。分子内にイオン化できるアミノ基またはカルボキシル基が存在する時、酸性塩または塩基性塩として、または中性形態で、特定のポリペプチドを得ることができる。好適な環境に置かれた場合に生物学的活性を保持するこのような調製物は全て、本明細書に用いられるポリペプチドの定義に含まれる。
【0157】
あるいは、相同性領域間の安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、引き続き、一本鎖特異的ヌクレアーゼ(1つまたは複数)による消化、および消化された断片のサイズ決定により、相同性が決定できる。2つのDNA配列,または2つのポリペプチド配列が、上記の方法を用いて決定された該分子の規定された長さにわたって、少なくとも約80%〜85%、好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%〜98%の配列同一性を示す場合、該配列は互いに「実質的に相同」である。
【0158】
本明細書に用いられる、実質的に相同または相同はまた、指定されたDNA配列またはポリペプチド配列に対して、完全な同一性を示している配列も言う。実質的に相同または相同のDNA配列は、サザンハイブリダイゼーション実験において、例えば、その特定のシステムに関して規定されたストリンジェントな条件下で、同定できる。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、50%ホルムアミド、5×デンハート液、5×SSC,0.1%SDSおよび100pg/ml変性サケ精子DNAを挙げることができ、洗浄条件としては、37℃における、2×SSC,0.1%SDS、続いて68℃における、1×SSC,0.1%SDSを挙げることができる。適切なハイブリダイゼーション条件の規定は、当業技術の範囲内にある。
【0159】
同一性の程度は、50%超(例えば、65%、80%、90%、またはそれ以上)であることが好ましく、変異体および対立遺伝子変異体を含むことが好ましい。タンパク質間の配列同一性は、ギャップオープンペナルティー=12およびギャップ拡張ペナルティー=1のパラメータで、アフィンギャップ探索を用いるMPSRCHプログラム(Oxford.Molecular)において実施されているSmith−Waterman相同性探索アルゴリズムによって決定することが好ましい。
【0160】
(AB
5タンパク質)
本発明の好ましい一実施形態において、bARE生物学的分子は免疫原である。
【0161】
本明細書に用いられている用語の「免疫原」とは、細胞と接触した際、細胞のおよび/または液性の免疫応答を誘発する能力のある任意の化合物を言い、限定はしないが、ワクチンなどの免疫原性組成物および免疫原を含む組成物が挙げられる。抗体応答およびT細胞応答が誘発されることが好ましい。このような免疫原は、予防的および治療的適用ならびに抗体の創製などの研究適用に有用であることが期待されよう。
【0162】
コレラ毒素(CT)および関連する大腸菌熱感受性腸毒素(LT)は、それらそれぞれの腸毒性細菌株の分泌産物であるが、強力な免疫原であり、全身的に、経口で、または経粘膜で投与された場合、強力な毒性を示す。さらに、CTおよびLTは、筋肉内または経口経路により投与された場合、抗原に対してアジュバント効果を提供できる。これら2つの毒素は極めて類似した分子であり、アミノ酸レベルで、少なくとも約70〜80%相同である。アジュバント活性に対するAおよびBサブユニットの相対的重要性には議論の余地がある。Aサブユニットの毒性活性がBサブユニットに関連したアジュバント効果を調節できるとの推測が、当分野でなされている。いくつかの試験は、Aサブユニットにおける変異によってアジュバント活性が取り消されることを実証しているが、他の試験は、ADP−リボシラーゼ活性を遮断するAサブユニット変異は、アジュバント活性に影響しないことを示している。他の報告は、アジュバント濃度を変化させることによって、精製Bサブユニットまたは組み換えBサブユニットの調製が達成されることを示している。AおよびBサブユニットは、アジュバント活性に独立して寄与する別個の機能を有している可能性が大きい。これらの機能は、それぞれ、ADP−リボシラーゼ活性および受容体トリガリング活性である。
【0163】
好ましい一実施形態において、bAREタンパク質はAB5タンパク質である。
【0164】
好ましい一実施形態において、bARE組成物は治療的有効剤として、修飾AB5タンパク質を含む。
【0165】
修飾AB
5タンパク質は、修飾腸毒素サブユニットコード領域を有することが好ましい。
【0166】
修飾AB
5タンパク質は、修飾腸毒素Aサブユニットコード領域を有することが好ましい。
【0167】
修飾Aサブユニットは、Aサブユニットコード領域が発現された産物において、ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性を破壊または不活化するように修飾されるように修飾されることが好ましい(例えば、国際公開第03/004055号を参照)。
【0168】
周知のように、コレラ毒素(CT)およびLT毒素の毒性は、Aサブユニットに存在する。Aサブユニットの修飾は、毒性の酵素活性を除去する一方、免疫原性を保持する重要活性部位残基の部位指向的変異誘発であることが好ましい。好ましいさらなる一実施形態において、bAREタンパク質は変異AB5タンパク質である。
【0169】
Aサブユニットに点変異を含む、CTおよびその相同体、LTの多数の変異体が当業界に知られている。例えば、国際公開第92/19265号は、Arg−7、Asp−9、Arg−11、His−44、His−70およびGlu−112におけるCTAサブユニットの変異を開示している。国際公開第93/13202号は、1つ以上のアミノ酸、Val−53、Ser−63、Val−97、Tyr−104またはPro−106における置換を有する免疫原性解毒CTおよびLTタンパク質に関する。国際公開第95/17211号は、Lys−7変異を有するLT変異体(LT−K7)を開示している。国際公開第96/06627号は、192位のアルギニンがグリシンで置換されているLT変異体(mLT R192G)を開示している。変異は組み合わせることができる。例えば、CTまたはLTの変異は、2つ以上の変異を有してもよい。
【0170】
特に好ましい実施形態において、AB5タンパク質は、Aサブユニットの63位において、セリン(S)からリジン(K)への置換を有するLT(LTK63)および、Aサブユニットの72位において、アラニン(A)からアルギニン(登録商標)への置換を有するLT(LTR72)よりなる1群以上から選択される大腸菌熱感受性毒素(LT)の解毒変異体Aサブユニットである。
【0171】
さらにいっそう好ましい実施形態において、生物学的分子はLTK63である。
【0172】
例えば、野生型毒素をコードするDNAの部位指向的変異などの、CT、LTおよびCTならびにLT相同体の変異体のデザインおよび製造のための方法は当業界に公知である。例えば、解毒ADP−リボシル化毒素を調製および使用するための好適な方法は、粘膜アジュバントとしては、国際公開第95/17211号に、また、非経口アジュバントとしては、国際公開第98/42375号、ならびに国際公開第93/13202号、国際公開第92/19265号に記載されており、これらの開示は、参照として、本明細書に組み込まれている。
【0173】
アジュバントとしてのADP−リボシル化毒素およびそれらの解毒誘導体、特に、LT−K63およびLT−R72の使用は、各々参照として、それらの全体が具体的に本明細書に組み込まれている以下の参考文献に見ることができる。(Beignonら、Infection and Immunity(2002)70(6):3012−3019頁;Pizzaら、Vaccine(2001)19:2534−2541頁;Pizzaら、Int.J.Med.Microbial(2000)290(4−5):455−461頁;Scharton−Kerstenら、Infection and Immunity(2000)68(9):5306−5313頁;Ryanら、Infection and Immunity(1999)67(12):6270−6280頁;Partidosら、Immunol.Lett.(1999)67(3):209−216頁;Peppoloniら、Vaccines(2003)2(2):285−293頁;およびPineら、J.Control Release(2002)85(1−3):263−270頁)。アミノ酸置換の数値基準は、参照として、その全体が具体的に本明細書に組み込まれている、Domenighiniら、Mol.Microbial(1995)15(6):1165−1167頁に記載されたADP−リボシル化毒素のAおよびBサブユニットの整列に基づくことが好ましい。
【0174】
CTおよびLTの粘膜アジュバント活性は、多数の実験および経口、鼻腔内および直腸内経路により投与される抗原に関して十分に記載されているが、これらの投与経路を用いたAサブユニット活性に関連した毒性可能性およびそれによって生じる下痢の可能性によって、ヒト用ワクチンにおけるそれらの使用は限られてきた。一方、当分野の研究者は、CTなどの局所的(皮膚の穿孔なしの外表皮または経皮投与など)適用は、その経口、鼻腔内および非経口使用において生じる副作用をもたらさないようであることを示してきた。例えば、外表皮に適用されたコレラ毒素(CT)、大腸菌の熱感受性腸毒素(LT)、シュウドモナス外毒素(ETA)、百日咳毒素(PT)などのADP−リボシル化外毒素は、皮膚を通過し、免疫応答を誘導できたことを当分野の研究者は示している。また、CT、LT、ETAおよびPTは、皮膚に同時投与された抗原に対する免疫応答を誘導するアジュバントとして作用することが示されている。(例えば、国際公開第98/20734号、国際公開第99/43350号、国際公開第00/61184号および国際公開第02/064162号を参照)LTに加えて、LT変異体(LTR 192G、LTR72およびLTK63)もまた、経皮免疫化のための強力なアジュバントとして作用することが示されている(Scharton−Kerstenら、(2000)Infect and Immunity68:5306−5313頁)。
【0175】
腸毒素Bサブユニットは、免疫調節剤として(例えば、国際公開第97/02045号および米国特許第20010036917号を参照)、アジュバントとして(例えば、国際公開第99/58145号を参照)、および担体として(例えば、国際公開第03/000899号を参照)作用できることは、当業界に公知である。
【0176】
本発明による免疫原性組成物(例えば、ワクチン類)は、ヒト対象に該免疫原性組成物を投与することにより、細菌感染を予防または軽減するためのヒト対象を処置する方法に使用できる。
【0177】
(アジュバント)
本発明の組成物および/またはbAREタンパク質は、他の免疫調節剤と関連させて投与できる。特に、本発明の組成物は、アジュバントと共に投与できる。アジュバント、特に、遺伝的アジュバントを含めることは、CMI応答のさらなる増強または調整に有用であり得る。アジュバントは、免疫化された対象において、同時投与された抗原の免疫原性を増強することにより、また、同時投与抗原に対するTh1様免疫応答を誘導することによってCMI応答を増強でき、このことは、免疫原性組成物製品において有利である。
【0178】
免疫応答および特にCMI応答は、抗原の組み合わせまたは抗原の組み合わせをコードするヌクレオチド配列にアジュバントを加えることによって改良でき、これによって、長命で持続性のCMI応答増強を誘導する上で特に効果的な組成物がもたらされる。
【0179】
本明細書に用いられている用語の「アジュバント」とは、特異的にまたは非特異的に、抗原特異的免疫応答を変更、増強、誘導、再誘導、助長または開始する能力を有する任意の物質または組成物を言う。
【0180】
用語の「アジュバント」には、限定はしないが、抗原、抗原組成物またはそのような抗原をコードするヌクレオチド配列と共に投与した際、抗原または抗原の組み合わせのみを投与した際に生じるCMI応答に比較して、CMI応答を増強または助長または調整する、細菌のADP−リボシル化外毒素、生物学的活性因子、免疫調整分子、生物学的応答調節剤またはサイトカイン、インターロイキン、ケモカインなどの免疫刺激分子またはリガンドまたはエピトープ(ヘルパーT細胞エピトープなど)および最適には、それらの組み合わせが含まれる。該アジュバントは、ヒトまたは動物の使用にとって適切な、当業界に公知の任意のアジュバントであり得る。
【0181】
サイトカイン類(TNF−アルファ、IL−6、GM−CSF、およびIL−2)のような免疫調整分子、および共刺激および補助的分子(B7−1、B7−2)は、種々の組み合わせにおいて、アジュバントとして使用できる。一実施形態において、GM−CSFは、投与措置の前、最中または後に、対象に投与されない。対象抗原の発現部位における免疫調整分子と対象抗原の同時産生により、CMI応答を増強する助けとなり得る特定のエフェクターの生成が増強され得る。CMI応答の増強および/または調整に関して、種々の免疫刺激分子が、種々の機構を誘導するため、CMI応答増強の程度は、使用される特定の免疫刺激分子および/またはアジュバントに依存すると考えられる。例えば、種々のエフェクター機構/免疫調整分子としては、限定はしないが、ヘルプシグナルの増強(IL−2)、専門APCの動員(GM−CSF)、T細胞頻度の増加(IL−2)、抗原処理経路への影響およびMHC発現(IFN−ガンマおよびTNF−アルファ)ならびにTh1応答からTh2応答への免疫応答の転換(LTB)が挙げられる(国際公開第97/02045号を参照)。非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチド類(国際公開第96/02555号を参照)もまた、Th1応答の優先的な誘導物質であり、本発明の使用に好適である。
【0182】
理論には拘束されないが、アジュバントは、Th2応答をTh1応答へ、および/または発現エピトープへの特定エフェクター関連機構へと転換し、その結果、CMI応答の増強を引き起こし維持することによって、発現抗原に対するCMI応答の増強を補助し得るため、アジュバントを含めることは有利である(例えば、国際公開第97/02045号における教示を参照)。
【0183】
抗原または抗原をコードするヌクレオチド配列と共にアジュバントを含めることはまた、抗原または抗原をコードするヌクレオチド配列を投与される対象において所望のCMI応答を得るために必要な抗原/抗原の組み合わせの用量の低下または投与回数の減少をもたらすため、有利である。アジュバントの有効性は、抗原単独と並行して、抗原と共にアジュバントを動物に投与し、放射免疫アッセイ、ELISAs、CD8+T細胞アッセイなど、全て当業界で周知の標準的アッセイを用いて、2つの群における抗体および/または細胞媒介免疫を比較することによって判断できる。典型的には、1つの分子(例えば、CTBまたはLTBなど、そのアナログなど)が、アジュバントの性質と抗原の性質の双方を有し得るが、アジュバントは抗原とは別個の部分である。
【0184】
本明細書に用いられている用語の「遺伝的アジュバント」とは、ヌクレオチド配列によってコードされているアジュバントを言い、抗原と共に投与された場合、抗原単独で投与された際に生じるCMI応答に比較して、CMI応答を増強する。
【0185】
細菌のADP−リボシル化毒素およびそれらの解毒誘導体は、本発明におけるアジュバントとして使用できる。該タンパク質は、大腸菌(すなわち、大腸菌熱感受性腸毒素「LT」)、コレラ(「CT」)、または百日咳(「PT」)由来であることが好ましい。
【0186】
好ましい一実施形態において、遺伝的アジュバントは細菌のADP−リボシル化外毒素である。
【0187】
上記で説明したように、ADP−リボシル化細菌外毒素は、関連する細菌の外毒素のファミリーであり、ジフテリア毒素(DT)、百日咳毒素(PT)、コレラ毒素(CT)、大腸菌熱感受性毒素(LT1およびLT2)、シュードモナス内毒素A、シュードモナス外毒素S、B.セレウス外酵素、B.sphaericus毒素、C.ボツリヌスC2およびC3毒素、C.limosum外酵素、ならびにウェルシュ菌、C.spiriformaおよびC.difficile由来の毒素、黄色ブドウ球菌EDIN、CRM
197、非毒性ジフテリア毒素変異菌などのADPリボシル化細菌毒素変異菌が挙げられる。(例えば、Bixlerら(1989)Adv.Exp.Med.Biol.251:175頁;およびConstantinoら(1992)Vaccineを参照)多くのADP−リボシル化細菌毒素は、AサブユニットがADP−リボシルトランスフェラーゼ活性を含有し、Bサブユニットが結合部分として働くA:B多量体として構成されている。本発明の組成物に使用される好ましいADP−リボシル化細菌毒素としては、コレラ毒素および大腸菌熱感受性毒素が挙げられる。
【0188】
コレラ毒素(CT)および関連した大腸菌熱感受性腸毒素(LT)は、強力な免疫原であり、全身的に、経口で、または経粘膜で投与された場合、強力な毒性を示す、それらそれぞれの腸毒素細菌株の分泌産物である。CTおよびLTは双方とも、筋肉内または経口経路で投与された場合、抗原に対するアジュバント効果を提供することが知られている。これらのアジュバント効果は、毒性に必要な用量より少ない用量で見られている。これら2つの毒素は極めて類似した分子であり、アミノ酸レベルで、少なくとも約70〜80%相同である。
【0189】
遺伝的アジュバントは、コレラ毒素(CT)、腸毒性大腸菌熱感受性腸毒素(LT)、またはアジュバント活性を保持するCTまたはLTの誘導体、サブユニット、または断片であることが好ましい。さらに好ましい実施形態において、遺伝的アジュバントはLTである。他の好ましい実施形態において、遺伝的アジュバントはCTBまたはLTBであり得る。
【0190】
腸毒素は非毒性腸毒素であることが好ましい。
【0191】
解毒化ADP−リボシル化毒素の使用は、粘膜アジュバントとしては、国際公開第95/17211号に、非経口アジュバントとしては、国際公開第98/42375号に記載されている。毒素またはトキソイドは、AサブユニットおよびBサブユニットを含むホロトキシンの形態であることが好ましい。Aサブユニットは解毒性変異を含有することが好ましく;Bサブユニットは変異されていないことが好ましい。アジュバントは、LT−K63、LT−R72、およびLTR192Gなどの解毒化LT変異体であることが好ましい。アジュバントとしてのADP−リボシル化毒素およびそれらの解毒化誘導体、特に、LT−K63およびLT−R72の使用は、各々、参照として、それらの全体が具体的に本明細書に組み込まれている以下の文献に見ることができる(Beignonら、Infection and Immunity(2002)70(6):3012−3019頁;Pizzaら、Vaccine(2001)19:2534−2541頁;Pizzaら、Int.J.Med.Microbiol(2000)68(9):5306−5313頁;Ryanら、Infection and Immunity(1999)67(12):6270−6280頁;Partidosら、Immunol.Lett.(1999)67(3):209−216頁;Peppoloniら、Vaccines(2003)2(2):285−293頁;およびPineら、J.Control Release(2002)85(1−3):263−270頁)。アミノ酸置換に関する数値基準は、参照として、その全体が具体的に本明細書に組み込まれているDomenighiniら、Mol.Microbiol(1995)15(6):1165−1167頁に記載されているADP−リボシル化毒素のAおよびBサブユニットの整列に基づくことが好ましい。
【0192】
さらに、例えば、腸毒素サブユニットコード領域の少なくとも1つを、それによってコードされるサブユニットペプチドを解毒化するために、遺伝的に修飾でき、例えば、サブユニットペプチド発現産物におけるADP−リボシル化トランスフェラーゼ活性を破壊または不活化するために、切断Aサブユニットコード領域が遺伝的に修飾されている(例えば、国際公開第03/004055号を参照)。
【0193】
したがって、CMI応答をさらに増強することが望まれる場合、この遺伝的アジュバントが特に望ましいことが、これらの結果によって実証されている。他の望ましい遺伝的アジュバントとしては、限定はしないが、IL−10、IL−12、IL−13、インターフェロン類(IFNs)(例えば、IFN−アルファ、IFN−ss、およびIFN−ガンマ)をコードするヌクレオチド配列、およびそれらの好ましい組み合わせが挙げられる。CMI応答を増強させるさらに他のこのような生物学的活性因子は、当業者により容易に選択でき、これらを含有する好適なプラスミドベクターは、公知の方法により構築できる。
【0194】
このように、本発明の組成物(例えば、ワクチン類)は、他の免疫調節剤と関連させて投与できる。特に、組成物は通常、アジュバントを含む。本発明と共に使用されるアジュバントとしては、限定はしないが、下記に記載される以下のものの1つ以上が挙げられる:
(A.無機物含有組成物)
本発明のアジュバントとして使用される好適な無機物含有組成物としては、アルミニウム塩およびカルシウム塩などの無機塩が挙げられる。本発明には、水酸化物(例えば、オキシヒドロキシド類)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシホスフェート、オルトホスフェート)、硫酸塩など(例えば、Vaccine Design...(1995)、編集者PowellおよびNewman.ISBNの第8章および9章:030644867X.Plenumを参照)の無機塩、または種々の無機化合物の混合物(例えば、任意でリン酸塩過剰の、リン酸塩および水酸化物のアジュバント混合物)が含まれ、該化合物は、任意の好適な形態をとっており(例えば、ゲル、結晶、非晶質)、また、塩(1種または複数種)に吸着されていることが好ましい。また、無機物含有組成物は、金属塩の粒子として製剤化することもできる(国際公開第00/23105号)。
【0195】
本発明のワクチン類に、アルミニム塩の用量を、Al
3+が1用量当たり、0.2mgと1.0mgの間であるように、含めることができる。
【0196】
(B.油乳液)
本発明のアジュバントとしての使用に好適な油乳液組成物としては、MF59(マイクロフリューダイザーを用いて、サブミクロン粒子に製剤化した5%スクアレン、0.5%ツウィーン80、および0.5%スパン85)が挙げられる。国際公開第90/14837号を参照されたい。また、Podda、「The adjuvanted influenza vaccines with novel adjuvants:experience with the MF59−adjuvanted vaccine」、Vaccine(2001)19:2673−2680頁;Freyら、「Comparison of the safety,tolerability,and immunogenicity of a MF59−adjuvanted influenza vaccine and a non−adjuvantyed influenza vaccine in non−elderly adults」、Vaccine(2003)21:4234−4237頁を参照されたい。MF59は、FLUAD(商標)インフルエンザウィルス三価サブユニットワクチンにおけるアジュバントとして用いられる。
【0197】
該組成物に使用される特に好ましいアジュバントは、サブミクロン水中油乳液である。本明細書に用いられる好ましいサブミクロン水中油乳液は、4〜5%w/vスクアレン、0.25〜1.0%w/vツウィーン80(商標)(ポリオキシエルチレンソルビタンモノオレアート)および/または0.25〜1.0%スパン85(商標)(ソルビタントリオレアート)、および任意に、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルアトミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−フイドロキシホスホフォリルオキシ)エチルアミン(MTP−PE)を含有するサブミクロン水中油乳液などの、変化する量のMTP−PEを任意に含有するスクアレン/水乳液、例えば、「MF59」として知られているサブミクロン水中油乳液である(参照として、それらの全体が本明細書に組み込まれている国際公開第90/14837号;米国特許第6,299,884号および第6,451,325号;ならびに、Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.およびNewman,M.J.編集)ニューヨーク所在、Plenum Press、1995年、277−296頁におけるOttら、「MF59−Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines」)。MF59は、110Yマイクロフリューダイザーモデル(マサチューセッツ州、ニュートン所在、Microfluidics)などのマイクロフリューダイザーを用いてサブミクロン粒子に製剤化された 4〜5%w/vスクアレン(例えば、4.3%)、0.25〜0.5%w/vツウィーン80(商標)および0.5%w/vスパン85(商標)、および任意に、種々の量のMTP−PEを含有する。例えば、MTP−PEは、約0〜500μg/用量、より好ましくは0〜250μg/用量、最も好ましくは0〜100μg/用量の量で存在できる。本明細書に用いられている用語の「MF59−0」とは、MTP−PEを欠いた、上記のサブミクロン水中油乳液を言い、一方、用語のMF−59−MTPは、MTP−PEを含有する製剤を意味する。例えば、「MF59−100」は、1用量当たり、100μgのMTP−PEを含有するなどである。本明細書に用いられる他のサブミクロン水中油乳液、MF69は、4.3%w/vスクアレン、0.25%w/vツウィーン80(商標)および0.75%w/vスパン85(商標)、および任意に、MTP−PEを含有する。さらに他のサブミクロン水中油乳液は、やはりサブミクロン乳液にマイクロ流動化された、10%スクアレン、0.4%ツウィーン80(商標)、5%プルーロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含有する、SAFとしても知られているMF75である。MF75−MTPは、1用量当たり、100〜400μgのMTP−PEなどのMTPを含むMF75製剤を意味する。
【0198】
該組成物に使用されるサブミクロン水中油乳液、その作製方法およびムラミルペプチドなどの免疫刺激剤は、参照として、それらの全体が本明細書に組み込まれている、国際公開第90/14837号および米国特許第6,299,884号、および第6,451,325号に、詳細に記載されている。
【0199】
完全フロインドアジュバント(CFA)および不完全フロインドアジュバント(IFA)もまた、本発明のアジュバントとして使用できる。
【0200】
(C.サポニン製剤)
サポニン製剤もまた、本発明のアジュバントとして使用できる。サポニンは、広範囲の植物種の樹皮、葉、幹、根そして花にも見られるステロールグリコシド類およびトリテルペノイドグリコシド類の異種グループである。Quillaia saponaria Molina treeの樹皮のサポニンは、アジュバントとして広く研究されてきた。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサプリラ)、Gypsophilla paniculata(ブライデス膜)、およびSaponaria officianalis(ソープ根)から商品としても入手できる。サポニンアジュバント製剤としては、QS21などの精製製剤、ならびに、ISCOM類などの脂質製剤が挙げられる。
【0201】
サポニン組成物は、高速薄層クロマトグラフィー(HP−LC)および逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いて精製されている。これらの方法を用いて、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cなどの特定の精製画分が同定されている。サポニンは、QS21であることが好ましい。QS21の製造方法は、米国特許第5,057,540号に開示されている。サポニン製剤はまた、コレステロールなどのステロールを含み得る(国際公開第96/33739号を参照)。
【0202】
サポニンとコレステロール類との組み合わせは、免疫刺激性複合体(ISCOMs)と呼ばれる独特の粒子を形成するために使用できる。ISCOMsは、典型的には、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質も含む。任意の公知のサポニンが、ISCOMsに使用できる。ISCOMは、QuilA、QHAおよびQHCの1種以上を含むことが好ましい。ISCOMsは、欧州特許第0109942号、国際公開第96/11711号および国際公開第96/33739号に、さらに記載されている。任意に、ISCOMSは、追加の界面活性剤を欠いていてもよい。国際公開第00/07621号を参照されたい。
【0203】
サポニンベースのアジュバントの開発に関するレビューは、Barrら、「ISCOMs and other saponin based adjuvants」、Advanced Drug Delivery Reviews(1998)32:247−271頁に見ることができる。また、Sjolanderら、「Uptake and adjuvant activity of orally delivered saponin and ISCOM vaccines」、Advanced Drug Delivery Reviews(1998)32:321−338頁も参照されたい。
【0204】
(D.ビロゾームおよびウィルス様粒子(VLPs))
ビロゾームおよびウィルス様粒子(VLPs)もまた、本発明におけるアジュバントとして使用できる。これらの構造は任意にリン脂質と組み合わせた、またはリン脂質と共に製剤化した1種以上のタンパク質を一般に含有する。それらは一般に非病原性であり、非複製性であり、一般に天然のウィルスゲノムを含有しない。ウィルスタンパク質は組み換え製造できるか、ウィルス全体から単離できる。ビロゾーム類またはVLP類における使用に好適なこれらのウィルスタンパク質としては、インフルエンザウィルス(HAまたはNAなど)、B型肝炎ウィルス(コアタンパク質またはカプシドタンパク質など)、E型肝炎ウィルス、はしかウィルス、シンドビスウィルス、ロタウィルス、口蹄病ウィルス、レトロウィルス、ノーウォークウィルス、ヒトパピローマウィルス、HIV、RNAファージ、Qβファージ(外殻タンパク質など)、GAファージ、frファージ、AP205ファージ、およびTy(レトロトランスポゾンTyタンパク質p1など)に由来するタンパク質が挙げられる。VLP類は、国際公開第03/024480号、国際公開第03/024481号、およびNiikuraら、「外来エピトープを表す経口ワクチン担体としてのキメラ組み換えE型肝炎ウィルス様粒子」、Virology(2002)293:273−280頁、Lenzら、「Papillomarivurs−Like Particles Induce Acute Activation of Dendric Cells」、Journal of Immunology(2001)5246−5355頁;Pintoら、「Cellular Immune Responses to Human Papillomavirus(HPV)−16L1 Healthy Volunteers Immunized with RecombinantHPV−16L1 Virus−Like Particles」、Journal of Infectious Diseases(2003)188:327−338頁;およびGerberら、「Human Papillomavrisu Virus−Like Particles AreEfficient Oral Immunogens when Coadministered with Escherichia coli Heat−Labile Entertoxin MutantR192G or CpG」、Journal of Virology(2001)75(10):4752−4760頁でさらに検討されている。ビロゾーム類は、例えば、Gluckら、「New Technology Platforms in the Development of Vaccines for the Future」、Vaccine(2002)20:B10−B16でさらに検討されている。免疫増強再構成インフルエンザビロゾーム類(IRIV)は、鼻腔内三価INFLEXAL(商標)製品{Mischler&Metcalfe(2002)Vaccine20 Suppl5:B17−23}およびINFLUVACPLUS(商標)製品におけるサブユニット抗原送達システムとして使用されている。
【0205】
(E.細菌または微生物の誘導体)
本発明における使用に好適なアジュバントとしては、以下のような細菌または微生物誘導体が挙げられる。
【0206】
((1)腸内細菌リポ多糖体(LPS)の非毒性誘導体)
このような誘導体としては、モノホスホリル脂質A(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、4つ、5つまたは6つのアシル化鎖を有する3De−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの混合物である。3De−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい「小型粒子」形態は、欧州特許第0689454号に開示されている。3dMPLのこのような「小型粒子」は、0.22ミクロン膜を通してろ過滅菌する上で十分小さい(欧州特許第0689454号を参照)。他の非毒性LPS誘導体としては、リン酸アミノアルキルグルコサミド、例えばRC−529などのモノホスホリル脂質A模擬物が挙げられる。Johnsonら、(1999)Bioorg Med Chem Lett9:2273−2278頁を参照されたい。
【0207】
((2)脂質A誘導体)
脂質A誘導体としては、OM−174などの大腸菌の脂質A誘導体がが挙げられる。OM−174は、例えば、Meraldiら、「OM−174,a New Adjuvant with a Potential for Human Use ,Induces a Protective Response with Administered with the Synthetic C−Terminal Fragment242−310 from the circumsporozoite protein of Plasmodium berghei」、Vaccine(2003)21:2485−2491頁;およびPajakら、「The Adjuvant OM−174 induces both the migration and maturation of murine dendritic cells in vivo」、Vaccine(2003)21:836−842頁に記載されている。
【0208】
((3)免疫刺激性オリゴヌクレオチド)
本発明におけるアジュバントとしての使用に好適な免疫刺激性オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフ(非メチル化シトシンに続いてグアノシンを含有し、リン酸結合で結合されている配列)を含有するヌクレオチド配列が挙げられる。細菌の二本鎖RNAまたはパリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含有するオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0209】
CpGのものとしては、ホスホロチオエート修飾体などのヌクレオチド修飾体/アナログが挙げられ、二本鎖または一本鎖であり得る。任意に、グアノシンを、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンに置換してもよい。可能なアナログ置換の例としては、Kandimallaら、「Divergent synthetic nucleotide motif recognition pattern:design and development of potent immunomodulatory oligodeoxyribonucleotide agent with distinct
cytokine induction profiles」、Nucleic Acids Research(2003)31(9):2393−2400頁;国際公開第02/26757号および国際公開第99/62923号を参照されたい。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、Krieg、「CpG motifs:the active ingredient in bacterial extracts?」、Nature Medicine(2003)9(7):831−835頁;McCluskieら、「Parenteral and mucosal prime−boost immunization strategies in mice with hepatitisB surface antigen and CpGDNA」、FEMS Immunology and Medical Microbiology(2002)32:179−185頁;国際公開第98/40100号;米国特許第6,207,646号;米国特許第6,239,116号および米国特許第6,429,199号で、さらに検討されている。
【0210】
CpG配列は、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTなどのTLR9に関するものであり得る。Kandimallaら、「Toll−like receptor9:modulation of recognition and cytokine induction by novel synthetic CpG DNAs」、Biochemical Society Transactions(2003)31(part3):654−658頁を参照されたい。CpG配列は、CpG−A ODNなどのTh1免疫応答誘導に対して特異的であり得るか、または、CpH−B ODNなどのB細胞応答の誘導に対してより特異的であり得る。CpG−AおよびCpG−B ODN類は、Blackwellら、「CpG−A−Induced Monocyte Ifn−gamma−Inducible Protein−10 Production is Regulated by Plasmacytoid Dendritic Cell Derived IFN−alpha」、J.Immunol.(2003)170(8):4061−4068頁;Krieg、「From A to Z on CpG」、TRENDS in Immunology(2002)23(2):64−65頁および国際公開第01/95935号において検討されている。CpGは、CpG−A ODNであることが好ましい。
【0211】
CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識のために接近できるように構築されていることが好ましい。任意に、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列はそれらの3’末端で結合して、「イムノマー類」を形成できる。例えば、Kandumallaら、「Secondary structures in CpG oligonucleotides affect immunostimulatory activity」、BBRC(2003)306:948−953頁;Kandimallaら、「Toll−like receptor9:modulation of recognition and cytokine induction by novel synthetic CpG DNAs」、Biochemical Society Transactions(2003)31(part3):664−658頁;Bhagatら、「CpG penta−and hexadeoxyribonucleotides as potent immunomodulatoryagents」BBRC(2003)300:853−861頁および国際公開第03/035836号を参照されたい。
【0212】
((4)ADP−リボシル化毒素およびそれらの解毒誘導体)
上記のとおり、細菌のADP−リボシル化毒素およびそれらの解毒誘導体は、本発明におけるアジュバントとして使用できる。該タンパク質は、大腸菌(すなわち、大腸菌熱感受性腸毒素「LT)、コレラ(「CT」)または百日咳(「PT」)由来であることが好ましい。解毒ADP−リボシル化毒素の使用は、粘膜アジュバントとしては、国際公開第95/17211号に、また、非経口アジュバントとしては、国際公開第98/42375号に記載されている。該アジュバントは、LT−K63、LT−R72、およびLTR192Gなどの解毒LT変異体であることが好ましい。ADP−リボシル化毒素およびそれらの解毒誘導体、特に、LT−K63およびLT−R72のアジュバントとしての使用は、各々が参照として、それらの全体が本明細書に具体的に組み込まれている以下の文献において見ることができる:Beignonら、「The LTR72 Mutant of Heat−Labile Enterotoxin of Escherichia coli Enhances the Ability of Peptide Antigens to Elicit CD4+TCells and Secrete Gamma Interfection after Coapplication onto Bare Skin」、Interferon and Immunity(2002)70(6):3012−3019頁;Pizzaら、「Mucosal vaccines:nontoxic derivatives of LT and CT as mucosal adjuvants」、Vaccine(2001)19:2534−2541頁;Pizzaら、「LTK63 and LTR72,two mucosal adjuvants ready for clinical trials」Int.J.Med.Microbiol(2000)290(4−5):455−461頁;Scharton−Kerstenら、「Transcutaneous Immunization with Bacterial ADP−Ribosylating Exotoxins,Subunits,and Unrelated Adjuvants」、Infection and Immunity(2000)68(9):5306−5313;Ryanら、「Mutants of Escherichia coli Heat−Labile Toxin Act as Effective Mucosal Adjuvants for Nasal Delivery of an Acellular Pertussis Vaccine:Differential Effects of the Nontoxic AB Complex and Enzyme Activity on Th1 and Th2 Cells」Infection and Immunity(1999)67(12):6270−6280頁;Partidosら、「Heat−Labile enterotoxin of Escherichia coli and its site−directed mutant LTK63 enhance the proliferative and cytotoxic T−cell responses to intranasally co−immunized synthetic peptides」、Immunol.Lett.(1999)67(3):209−216頁;Peppoloniら、「Mutants of the Escherichia coli heat−labile enterotoxin as safe and strong adjuvants for intranasal delivery of vaccines」、Vaccines(2003)2(2):285−293頁;およびPineら、(2002)「Intranasal immunization with influenza vaccine and a detoxified mutant of heat labile enterotoxin from Escherichia coli(LTK63)」J.Control Release(2002)85(1−3):263−270。アミノ酸置換に関する数値基準は、参照として、その全体が本明細書に具体的に組み込まれているDomenighiniら、Mol.Microbiol(1995)15(6):1165−1167頁に記載されているADP−リボシル化毒素のAおよびBサブユニットの整列に基づくことが好ましい。
【0213】
(F.生体接着剤および粘膜接着剤)
生体接着剤および粘膜接着剤もまた、本明細書におけるアジュバントとして使用できる。好適な生体接着剤としては、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア類(Singhら(2001)J.Cont.Rele70:267−276頁)またはポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体などの粘膜接着剤が挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明におけるアジュバントとしても使用できる。例えば、国際公開第99/27960号。
【0214】
(G.微粒子)
微粒子もまた、本明細書におけるアジュバントとして使用できる。ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を有する生分解性かつ非毒性(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリカプロラクトンなど)である材料から形成された微粒子(すなわち、直径が約100nmから約150μm、より好ましくは直径が約200nmから約30μm、最も好ましくは直径が約500nmから約10μm)が好ましく、負に荷電した表面(例えば、SDSによる)または正に荷電した表面(例えば、CTABなどのカチオン性界面活性剤による)を有するように任意に処理される。
【0215】
(H.リポソーム類)
アジュバントとしての使用に好適なリポソーム製剤の例は、米国特許第6,090,406号、米国特許第5,916,588号、および欧州特許出願第0 626 169号に記載されている。
【0216】
(I.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル製剤)
本発明の使用に好適なアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテル類およびポリオキシエチレンエステル類が挙げられる。国際公開第99/52549号。このような製剤としては、さらにオクトキシノールと組み合せたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(国際公開第01/21207号)ならびにオクトキシノールなどの少なくとも1種のさらなる非イオン性界面活性剤と組み合せたポリオキシエチレンアルキルエーテル類またはエステル界面活性剤(国際公開第01/21152号)が挙げられる。
【0217】
好ましいポリオキシエチレンエーテル類は、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウルエテ−9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0218】
(J.ポリホスファゼン(PCPP))
PCPP製剤は、例えば、Andrianovら、「Preparation of hydrogel microspheres by coacervation of aqueous polyphophazene solutions」、Biomaterials(1998)19(1−3):109−115頁およびPayneら、「Protein Release from polyphosphazene Matrices」、Adv.Drug.Delivery Review(1998)31(3):185−196頁に記載されている。
【0219】
(K.ムラミルペプチド類)
本発明におけるアジュバントとしての使用に好適なムラミルペプチド類の例としては、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミニル−l−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が挙げられる。
【0220】
(L.イミダゾキノロン化合物)
本発明におけるアジュバントとしての使用に好適なイミダゾキノロン化合物の例としては、Stanley、「Imiquimod and the imidazoquinolones:mechanism of action and therapeutic potential」Clin Exp Dermatol(2002)27(7):571−577頁およびJones、「Resiquimod 3M」、Curr Opin Investig Drugs(2003)4(2):214−218頁にさらに記載されたイミカモドおよびその同族体が挙げられる。
【0221】
本発明はまた、上記に同定された1種以上のアジュバント態様の組合せを含み得る。例えば、以下のアジュバント組成物を、本発明に使用できる:
(1) サポニンと水中油乳濁液(国際公開第99/11241号);
(2) サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)(国際公開第94/00153号を参照);
(3) サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;
(4) サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(任意に+ステロール)(国際公開第98/57659号);
(5) 3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油乳濁液との組合せ(欧州特許出願公開第0835318号、欧州特許出願公開第0735898号および欧州特許出願公開第0761231号を参照);
(6) より大きな粒径乳濁液を生成するためにサブミクロン乳濁液にマイクロ流動化されたか、またはボルテックスされた、10%スクワレン、0.4%ツウィーン80、5%プルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含有するSAF;
(7) 2%スクワレン、0.2%ツウィーン80、およびモノホスホリリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))よりなる群から1種以上の細胞壁成分を含有するRibi(商標)アジュバントシステム(RAS)(Ribi Immunochem);
(8) 1種以上の無機塩(アルミニウム塩など)+LPSの非毒性誘導体(3dPMLなど);および/または
(9) 1種以上の無機塩(アルミニウム塩など)+免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むヌクレオチド配列など)。
【0222】
(M.ヒト免疫調節剤)
本発明におけるアジュバントとしての使用に好適なヒト免疫調節剤としては、インターロイキン類(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)などのサイトカイン類、インターフェロン類(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が挙げられる。
【0223】
アルミニウム塩類とMF59は、注射用インフルエンザワクチン類との使用に好ましいアジュバントである。細菌毒素および生体接着剤は、鼻用ワクチンなどの粘膜送達ワクチンとの使用に好ましいアジュバントである。
【0224】
本発明の組成物は、明礬および/またはCpG配列と共に投与される。
【0225】
(製剤)
本発明の組成物は、種々の形態で調製できる。例えば、該組成物は、液体溶液などの注射剤として調製できる。注射前の液体媒体中の溶液または懸濁液に好適な固形形態もまた調製できる(例えば、凍結乾燥組成物)。該組成物は、例えば、軟膏、クリームまたは粉剤として局所投与用に調製できる。該組成物は、例えば、錠剤またはカプセル剤、スプレー剤、またはシロップ剤(任意に風味付けされた)として経口投与用に調製できる。該組成物は、例えば、微粉末またはスプレーを用いて吸入剤として肺投与用に調製できる。該組成物は、座薬またはペッサリーとして調製できる。該組成物は、例えばドロップ剤として、鼻投与、耳投与または眼投与用に調製できる。該組成物は、組合せ組成物が、患者への投与直前に再構成されるようにデザインされたキット形態であり得る。このようなキットには、液体形態で1種以上の抗原および1種以上の凍結乾燥抗原を含み得る。
【0226】
本発明の組成物は、免疫原性組成物であることが好ましく、ワクチン組成物であることがさらに好ましい。該組成物のpHは、6と8との間が好ましく、約7であることが好ましい。pHは、緩衝液の使用により維持できる。該組成物は、無菌および/または発熱物質の無い状態であり得る。該組成物は、ヒトに関して等張であり得る。
【0227】
bARE組成物は、1種以上の抗原を含むことが好ましい。
【0228】
「抗原」とは、個体における免疫応答を誘発できる何らかの作用物質、一般には高分子を称す。この用語は、個々の高分子または抗原性高分子の均一あるいは不均一な集団を称するために用いることができる。本明細書に用いられる用語の「抗原」とは、一般に1種以上のエピトープを含む蛋白分子またはその一部を称するために用いることができる。本発明の目的のために、抗原は、任意の公知のウィルス、細菌、寄生虫または真菌病原体から得られるか、または誘導できる。またこの用語は、任意の種々の腫瘍特異的抗原および自己免疫疾患と関連する抗原を意図している。
【0229】
さらに、本発明の目的のための「抗原」としては、タンパク質が十分な免疫原性を維持する限り、天然の配列に対する欠失、付加および置換(一般に性質は保存)などの修飾を有するタンパク質が挙げられる。これらの修飾は、例えば、部位特異的突然変異などによる計画的なものであり得るか、または抗原を産生する宿主の突然変異などによる偶発的なものであり得る。
【0230】
本発明の種々の態様において、抗原は、1種以上のT細胞エピトープを含有する。「T細胞エピトープ」は、一般にT細胞応答を誘導することができるペプチド構造の特徴を称す。この点において、T細胞エピトープは、MHC分子のペプチド結合間隙内でコンフォメーションを拡張すると思われる線状ペプチド決定群を含むことが当業界に受け入られている(Unanueら、(1987)Science236:551−557頁)。本明細書に用いられるT細胞エピトープは、一般に少なくとも3〜5つのアミノ酸残基、好ましくは少なくとも5〜10またはそれ以上のアミノ酸残基を有するペプチドである。細胞媒介免疫応答を刺激するための特定抗原の能力は、リンパ球増殖(リンパ球活性)アッセイ、CTL細胞毒細胞アッセイ、または感作された対象における抗原特異性Tリンパ球に関するアッセイによるなど、多くの周知のアッセイにより決定できる。例えば、Ericksonら(1993)J.Immunol.151:4189−4199頁;およびDoeら(1994)Eur.J.Immunol.24:2369−2376頁を参照されたい。
【0231】
本発明の他の態様において、抗原は、1種以上のB細胞エピトープを含有する。「B細胞エピトープ」とは、特異的抗体分子が結合する抗原上の部位を一般に称す。抗体応答を誘発できるエピトープ類の同定は、当業界に周知の技法を用いて容易に達成される。例えば、Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81 3998−4002頁(所与の抗原における免疫原性エピトープ類の位置を決定するためにペプチド類を迅速に合成する一般法);米国特許第4,708,871号(抗原のエピトープ類を同定し、化学的に合成する方法);およびGeysenら(1986)Molecular Immunology 23:709−715頁(所与の抗体に対して高親和力を有するペプチド類を同定する技術)を参照されたい。
【0232】
対象となる抗原は、ウィルス、細菌または寄生虫病原体などの病原体と関連することが好ましく、または該抗原は腫瘍特異的抗原であり得る。抗原は、完全長タンパク質であり得る。あるいは、抗原は、本質的に抗原のB細胞エピトープまたはT細胞エピトープだけからなり得る。
【0233】
腫瘍特異的抗原としては、限定はしないが、MAGE1、MAGE2、MAGE3(HLA−A1ペプチド)、MAGE4など任意の種々のMAGE類(メラノーマ関連抗原E);任意の種々のチロシナーゼ類(HLA−A2ペプチド);変異体ras;変異体p53;およびp97黒色腫抗原が挙げられる。他の腫瘍特異的抗原としては、進行癌と関連するRasペプチドおよびp53ペプチド、子宮頚癌と関連するHPV16/18およびE6/E7抗原、乳癌と関連するMUC1−KLH抗原、大腸癌と関連するCEA(癌胎児性抗原)、黒色腫と関連するgp100またはMART1抗原、および前立腺癌と関連するPSA抗原が挙げられる。p53遺伝子配列は、公知であり(例えば、Harrisら(1986)Mol.Cell.Biol.6:4650−4656頁を参照)、登録番号M14694でGenBankに寄託されている。
【0234】
好適なウィルス抗原としては、限定はしないが、インフルエンザファミリーのウィルス(例えば、http://www.flu.lanl.gov/review/annual.thmlにおけるインフルエンザ配列のデータベースを参照)から、A型肝炎ウィルス(HAV)、B型肝炎ウィルス(HBV)、C型肝炎ウィルス(HCV)、デルタ型肝炎ウィルス(HDV)、E型肝炎ウィルス(HEV)およびG型肝炎ウィルス(HGV)などの肝炎ファミリーのウィルスからの抗原をコードするポリヌクレオチド配列が挙げられる。例として、HBVのウィルスゲノム配列が公知であり、それから抗原コード配列を得る方法も公知である。例えば、Ganemら(1987)Annu.Rev.Biochem.56:651−693頁;Hollinger,F.B.(1990)Hepatitis B virus、II巻、21712235頁、Fieldsら(編集者)、Virologv、第2版、Raven Press、ニューヨーク州ニューヨーク所在;およびValenzuelaら(1980)、The nucleotide Sequence of the Hepatitis B viral Genome and the Identification of the Major Viral Genes、57−70頁、Fieldsら(編集)、Animal Virus Genetics、ニューヨーク州ニューヨーク所在のAcademic Press)、を参照されたい。HBVゲノムは、大型、中型および主要な表面抗原ポリペプチド類、X−遺伝子ポリペプチド、およびコアポリペプチドなどの数種のウィルスタンパク質をコードする。例えば、Yokosukaら(1986)N.Engl.J.Med.315:1187−1192頁;Imazekiら(1987)Hepatology 7:753−757頁;Kanekoら(1988)J.Virol.62:3979−3984頁;およびOuら(1990)J.Virol.64:4578−4581頁、を参照されたい。同様の様式で、HCVのウィルスゲノム配列は公知であり、配列を得る方法も公知である。例えば、国際公開第89/04669号;国際公開第90/11089号;および国際公開第90/14436号、を参照されたい。HCVゲノムは、E1およびE2などの数種のウィルスタンパク質をコードする。例えば、Houghtonら(1991)Hepatology14:381−388頁を参照されたい。これらのHBVおよびHCVタンパク質ならびにそれらの抗原性断片をコードする配列が、該方法の使用により見出される。同様に、HDVの8−抗原に対するコード配列が公知である(例えば、米国特許第5,378,814号を参照)。
【0235】
同様の様式において、HSV−1およびHDV−2糖タンパク質gB、gDならびにgHなどの単純ヘルペスウィルス(HSV)タイプ1および2に由来する抗原;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)およびCMV gBおよびgHなどのサイトメガロウィルス(CMV)の抗原;およびHHV6およびHHV7などの他のヒトヘルペスウィルス類の抗原などヘルペスウィルスファミリーの多種多様のタンパク質抗原をコードする配列を、本発明において用いることができる。(例えば、Cheeら(1990)を参照)。サイトメガロウィルス(J.K.McDougall編集、Springer−Verlag、125169頁;McGeochら(1988)J.Gen.Virol.69:1531−1574頁;米国特許第5,171,568号;Baerら(1984)Nature310:207−211頁;およびDavisonら(1986)J.Gen.Virol.67:1759−1816頁)多数のHIV−1およびHIV−2単離体に関するgpl20配列などのHIV抗原はHIVの種々の遺伝子サブタイプのメンバーを含めて公知であって報告されており(例えば、Myersら、Los Alamos Database、ニューメキシコ州ロスアラモス所在のLos Alamos National Laboratory、(1992);およびModrowら(1987)J.Virol.61:570−578頁を参照)、これら任意の単離体に由来する抗原は、本法に用いられる。
【0236】
さらに、本発明は、任意の種々のエンベロープのプロレオウィルス科;ビルナウィルス科;ラボドウィルス科(例えば、狂犬病ウィルスなど);フィロウィルス科;パラミキソウィルス科(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウィルス、呼吸器合胞体ウイルスなど);ブニアウィルス科;アレナウィルス科;レトロウィルス科(例えば、限定はしないが、単離体HIV,,HIV、HIVv、HIV、HIV−からの抗原を含む、HTLV−I;HTLV−11;HIV−1(HTLV−III、LAV、ARV、hTLRなどとしても知られている));その他の中でもHIV−1,,HIV−1、HIV−2など、任意の種々のHIV単離体に由来する他の免疫原性部分に等しく適用できる。これらおよび他のウィルスの記載に関しては、例えば、Virology、第3版(W.K.Joklik編集1988年);Fundamental Virology、第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編集1991年)を参照されたい。
【0237】
好適な細菌抗原および寄生虫抗原をコードする配列は、ジフテリア、百日咳、破傷風、結核、細菌性または真菌性肺炎、コレラ、腸チフス、ペスト、細菌性赤痢またはサルモネラ症、レジオネラ病、ライム病、ハンセン病、マラリア、鉤虫、回旋糸状虫症、住血吸虫症、トリパマソーマ症、レスマニア症(Lesmaniasis)、ジアルジア虫症、アメーバ症、糸状虫症、ボレリア(Borelia)、および旋毛虫症などの疾患を招く公知の原因物質から得られるか、または誘導される。なおさらなる抗原は、クールー、クロイツフェルト−ヤコプ病(CJD)、スクラピー、伝染性ミンク脳症、および慢性消耗症の原因物質などの非通常性ウィルスまたはウィルス様物質、または狂牛病に関連するプリオンなどのタンパク質様感染性粒子から得られるか、または誘導できる。
【0238】
最小のプロモーターの配列および対象となるコード配列の双方が、公知の方法を用いて得られるか、および/または調製することができる。例えば、実質的に純粋な抗原調製物を、標準的な分子生物学的手段を用いて得ることができる。すなわち、上記抗原をコードするポリヌクレオチド配列を、その遺伝子を発現する細胞からのcDNAおよびゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、またはその遺伝子を含むことが知られているベクターからの誘導によるなど、組換え法を用いて得ることができる。さらに、所望の遺伝子またはプロモーター配列は、フェノール抽出およびcDNAまたはゲノムDNAのPCRなどの標準技法を用いて、前記のものを含有する細胞および組織から直接単離できる。例えば、DNAを単離して得るために使用される技法の記載に関しては上記のSambrookらを参照されたい。ポリヌクレオチド配列はまた、クローン化ではなくて合成的にも生成できる。
【0239】
特定の核酸分子を単離するためのさらなる他の従来法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるものである。Mullisら(1987)Methods Enzymol.155:335−350頁。この技法は、DNAの所望の領域を複製するために、DNAポリメラーゼ、通常耐熱性のDNAポリメラーゼを用いる。複製されるDNAの領域は、複製反応をプライムするための所望のDNAの反対端および反対鎖に相補的な特定の配列のオリゴヌクレオチド類により同定される。第1ラウンドの複製生成物は、それ自体引き続く複製のテンプレートであり、したがって複製の反復連続サイクルにより、使用されるプライマー対により区切られるDNA断片の幾何増幅がもたらされる。
【0240】
組成物中の抗原は、各々少なくとも1μg/mlの濃度で典型的に存在する。一般に、任意の所与の濃度は、前記抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分な濃度である。本発明の組成物中のタンパク質抗原を用いる代替法として、抗原をコードする核酸を使用できる:Robinson & Torres(1997)Seminars in Immunology9:271−283頁;Donnellyら(1997)Annu Rev Immunol 15:617−648頁;Scott−Taylor & Dalgleish(2000)Expert Opin Investig Drugs 9:471−480頁;Apostolopoulos & Plebanski(2000)Curr Opin Mol Ther 2:441−447頁;Ilan(1999)Curr Opin Mol Ther 1:116−120頁;Dubenskyら(2000)Mol Med 6:723−732頁;Robinson & Pertmer(2000)Adv Virus Res 55:1−74頁;Donnellyら(2000)Am J Respir Crit Care Med162(4Pt2):S190−193頁およびDavis(1999)Mt.Sinai J.Med.66:84−90頁。したがって、本発明の組成物のタンパク質成分は、タンパク質をコードする核酸(例えば、プラスミドの形態で好ましくはDNA)により置換できる。
【0241】
本発明の組成物は、対象となるポリペプチドの組み込み前に、安定化剤と緩衝剤ならびに任意の他の賦形剤を予め混合することにより調製することが好ましい。本発明の組成物をさらに安定化するために加え得る追加賦形剤はいずれも、第1の安定化剤、すなわち本明細書に開示されている新規な組成物を得るために使用される緩衝剤、すなわち実質的にその塩形体を含まない酸、酸の塩形体、または酸とその塩形体の混合物と組合せて、アミノ酸塩基の安定化効果に悪影響を与えてはならない。対象となるポリペプチドの凝集体形成の減少を達成するための好ましい量のアミノ酸塩基の添加後、液体組成物のpHは、緩衝剤を用いて、好ましくは本明細書に開示された範囲、より好ましくは対象となるポリペプチドに最適なpHに調整される。対象となるポリペプチドの添加後、pHは、組成物中で調製できるが、このポリペプチドの添加前に調整されることが好ましく、これによりポリペプチド変性の危険性を減じることができる。
【0242】
したがって、構成成分に適した混合を達成するために、適切な機械装置が用いられる。
【0243】
本発明のbARE組成物は、液体組成物とその乾燥形態を包含する。本発明の目的で、製薬組成物または製剤に関する用語の「液体」とは、用語の「水系」を含むことが意図され、凍結している液体製剤を含む。「乾燥形態」とは、液体、製薬組成物または製剤が、冷凍乾燥(すなわち、凍結乾燥;例えば、WilliamsおよびPolli(1984)J.Parenteral Sci.Technol.38:48−59頁を参照)、Spray−Drying Handbook(第5版;Longman Scientific and Technical、英国Essez)、491−676頁;Broadheadら(1992)Drug Devel.Ind.Pharm.18:1169−1206頁);およびMumenthalerら(1994)Pharm.Res.11:12−20頁を参照)におけるスプレー乾燥(Masters(1991)、または風乾(CarpenterおよびCrowe(1988)Cryobiology 25:459−470頁;およびRoser(1991)Biopharm.4:47−53頁)により乾燥されていることを意図している。
【0244】
「水性」とは、水を含有するか、水中に溶解させて調製された組成物を意図しており、水が混合物中の主要物質である混合物を含む。主要物質は、混合物の他の成分よりも大量に存在する。「非水」とは、水以外の物質または水が混合物中の主要物質ではない混合物を含有するか、溶解させて調製された組成物を意図している。「溶液」とは、固体、液体、気体またはそれらの間の組合せであり得る2種以上の物質の均一な調製物を意図している。
【0245】
bAREタンパク質製剤に関して用語の「凍結乾燥する」とは、各々がその中に本発明の1単位用量のbAREタンパク質製剤を含有する複数のバイアルの、減圧下での迅速な冷凍乾燥を言うことが意図されている。上記の凍結乾燥を実施する凍結乾燥機は、商品として入手でき、当業者により容易に操作できる。本発明の一実施形態において、液体組成物は、凍結乾燥組成物として調製される。
【0246】
本発明のbAREタンパク質組成物は、「安定化された」組成物である。「安定化された」とは、組成物が貯蔵中、実質的にその多量体状態にbAREポリペプチドを保持していることを意図されており、それ故、このbAREポリペプチドの治療的有効性は、凝集物形成またはサブユニット形態への解離により損なわれない。「貯蔵中」とは、調製された組成物または製剤が、直ちに対象に投与されないことを意図している。むしろ、調製後、それは、液体形態で、凍結状態で、または後で液体形態への再構成のために乾燥形態で、あるいは対象への投与に好適な他の形態での貯蔵のために包装される。本発明の組成物は、製剤が静菌剤と適合するならば、液体形態での貯蔵安定性を有する利便性、再構成せずに投与する容易性、予め充填されたシリンジの即時使用または複数投与用製剤としての製剤を供給できる能力を十分に利用するために、液体形態で直接貯蔵することが好ましい。本発明の安定化されたbARE組成物は、2〜8℃で貯蔵された場合、好ましくは少なくとも約6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、より好ましくは少なくとも約20ヵ月、さらにより好ましくは少なくとも約22ヵ月、最も好ましくは少なくとも約24ヵ月の貯蔵期限を有する。
【0247】
bAREタンパク質を含む安定化組成物は、1単位用量で製剤化されていてもよく、また溶液のような注射剤形態または輸液形態であってもよい。さらに、それは、凍結貯蔵できるか、または経口もしくは非経口の投与経路を含む任意の種々の方法により投与前に、液体溶液に再構成できる凍結乾燥粉剤などの乾燥形態で調製できる。
【0248】
それは、下記に概説された本発明の方法によって達成された貯蔵安定性の増加を利用するために液体製剤で貯蔵されるのが好ましい。安定化された組成物は、膜ろ過により滅菌されることが好ましく、密封バイアルまたはアンプルなどの単位用量または複数用量の容器内で貯蔵される。一般に当業界に公知の組成物を製剤化するさらなる方法は、本発明の方法に開示された好ましい安定化剤および緩衝剤の有益な効果に悪影響を与えないという条件で、本明細書に開示された液体組成物の貯蔵安定性をさらに高めるために使用できる。製薬的に許容できる担体、安定化剤などの製剤化と選択についての十分な検討は、本明細書に参照として組み込まれているRemington‘s Pharmaceutical Sciences(1990)(第18版、ペンシルバニア州イートン所在のMack Pub.社、)に見ることができる。
【0249】
本発明の組成物は、典型的に上述の組成物に加えて、例えば、それ自体が組成物を投与される個体に有害な抗体産生を誘導しない任意の担体など、1種以上の「製薬的または免疫学的に許容できる担体」を含む。好適な担体は、典型的にはタンパク質類、多糖類、ポリ乳酸類、ポリグリコール酸類、ポリマーのアミノ酸類、アミノ酸コポリマー類、および脂質凝集体(油滴またはリポソーム類など)などの大型で徐々に代謝される高分子である。このような担体は、通常の当業者に周知である。該組成物には、水、生理食塩水、グリセロールなどの希釈剤を含有することもできる。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質などの補助物質が存在し得る。製薬的に許容できる賦形剤についての十分な検討は、Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy第20版、ISBN:0683306472を利用できる。
【0250】
本発明のbAREタンパク質は、製薬組成物または免疫治療組成物またはワクチン組成物に製剤化できる。このような製剤は、滅菌水または滅菌等張生理食塩水などの製薬的に許容できる担体と組み合わせたbAREタンパク質などの生体分子を含む。このような製剤は、ボーラス投与または連続投与に好適な形態で調製、包装または販売できる。注射液製剤は、保存剤を含有するアンプル内または複数用量容器内など、単位用量形態で調製、包装または販売できる。製剤としては、限定はしないが、懸濁液剤、液剤、油または水媒体中の乳液剤、ペースト剤、および移植可能な徐放性製剤または生分解性製剤が挙げられる。このような製剤はさらに、限定はしないが、懸濁剤、安定化剤、または分散剤などの1種以上の追加成分を含み得る。非経口投与用製剤の一実施形態において、有効成分は、再構成組成物の非経口投与前に好適な媒体(例えば、無菌発熱物質のない水)との再構成のために乾燥(例えば、粉剤または顆粒剤)形態で提供される。製薬組成物は、滅菌水性注射液または油性懸濁液または溶液の形態で調製、包装または販売できる。この懸濁液または溶液は、公知の技術に従って製剤化でき、有効成分に加えて、本明細書に記載された分散剤、湿潤剤、または懸濁剤などの追加成分を含み得る。このような滅菌注射液製剤は、例えば、水または1,3−ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒を用いて調製できる。他の許容できる希釈剤または溶媒としては、限定はしないが、リンゲル液、等張塩化ナトリウム液、合成モノ−またはジ−グリセリド類などの不揮発性油が挙げられる。有用な他の非経口的投与可能な製剤としては、微結晶形態で、リポソーム製剤中、または生分解性ポリマー系の成分として有効成分を含むものが挙げられる。徐放性または移植用組成物は、乳液、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性塩などの製薬的に許容できるポリマーまたは疎水性材料を含み得る。
【0251】
(投与)
本発明の組成物は、一般に患者に直接投与される。直接送達は、非経口的注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内または組織の間質空間に)により、あるいは直腸、経口(例えば、錠剤、スプレー)、膣、局所、経皮(例えば、国際公開第99/27961号を参照)または経皮的(例えば、国際公開第02/074244号および国際公開第02/064162号)鼻腔内(例えば、国際公開第03/028760号を参照)眼球、耳、肺または他の粘膜投与により達成できる。本発明は、全身および/または粘膜免疫性を誘発するために使用できる。
【0252】
本発明の組成物は、種々の異なる経路を経て単独または組成物の一部として投与できる。ある一定の組成物にとって、ある一定の経路は、より有効な免疫応答、好ましくは細胞媒介免疫(CMI)応答の発生をもたらすか、または副作用を誘導しにくくするか、または投与がより容易であるために好ましいと考えられる。
【0253】
例として、本発明の組成物は、全身経路または粘膜経路または経皮経路を経て投与できるか、あるいは特定の組織に直接投与できる。本明細書に用いられる用語の「全身投与」としては、限定はしないが、任意の非経口投与経路が挙げられる。特に非経口投与としては、限定はしないが、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、または胸骨内注射、静脈内輸液法、動脈内輸液法、または腎透析輸液法が挙げられる。好ましくは、全身、非経口投与は、筋肉内注射である。
【0254】
好ましい一実施形態の方法において、本発明の組成物は、経皮経路を経て投与される。この点に関して、理論に拘束されることはないが、組成物の経皮投与は、免疫系の細胞媒介免疫(CMI)群をより効率的に活性化するので好ましいと考えられる。
【0255】
用語の「経皮」送達とは、皮内(例えば、真皮または表皮)投与、経皮(例えば、「経皮的」)投与および経粘膜投与、すなわち皮膚または粘膜組織中またはそれらを通した薬剤の通過による送達を意図している。例えば、Transdermal Drug Delivery:Development Issues and Research Initiatives、HadgraftおよびGuy(編集者)、Marcel Dekker社(1989);Controlled Drug Delivery:Fundamentals and Applications、RobinsonおよびLee(編集者)、Marcel Dekker社(1987);およびTransdermal Delivery of Drugs、1〜3巻、KydonieusおよびBerner(編集者)、CRC Press、(1987)を参照されたい。このように、この用語は、米国特許第5,630,796号に記載されているものなどの粒子送達装置(例えば、針なしシリンジ)を用いる薬剤の送達ならびに米国特許第5,865,796号に記載されているものなどの粒子媒介送達装置を用いる送達を包含している。
【0256】
本明細書に用いられる用語の「粘膜投与」としては、限定はしないが、経口投与、鼻腔内投与、膣内投与、直腸内投与、気管内投与、腸管内投与および眼投与が挙げられる。
【0257】
粘膜経路、特に鼻腔内、気管内、および眼の経路は、RSV、インフルエンザウィルスおよびカゼウィルスなどの環境病原体、または草およびブタ草花粉ならびにハウスダストダニなどのアレルゲンへの自然曝露に対する保護に好ましい。
【0258】
免疫応答、好ましくはCMI応答の増強により、アレルゲンまたは微生物などの引き続き遭遇する標的抗原に対する保護効果を高める。
【0259】
本発明の他の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、宿主対象から分離された細胞に投与できる。この好ましい実施形態において、該組成物を、樹状細胞などの専門的抗原提供細胞(APC)類に投与することが好ましい。APC類は、宿主対象から由来し、関心のある抗原を発現するためにエキソビボで修飾してから、増強されたCMI応答を誘導するために宿主対象に戻して移入させることができる。関心のある抗原の発現エピトープ類が、増強CMI応答を誘導するために専門的APC類からT細胞(Th1およびTh2の双方ならびにCD8+T細胞)により獲得、処理および提供されなければならないので、樹状細胞は、増強CMI応答を刺激するために最も強力なAPC類であると考えられている。
【0260】
(粒子投与)
本発明の組成物を送達する粒子媒介法は、当業界に公知である。したがって、調製および好適に精製されたら、上記抗原またはそれをコードするNOIは、当業界に公知の種々の技法を用いてコア担体粒子上にコーティングできる。担体粒子は、遺伝子銃装置からの細胞内送達に典型的に用いられる粒径範囲内で好適な密度を有する材料から選択される。最適の担体粒径は、もちろん、標的細胞の直径に依存する。
【0261】
「コア担体」とは、規定された粒径を付与し、ならびに十分に高い密度が細胞膜透過に必要な運動量を達成するために、ゲスト抗原またはゲスト核酸(例えば、DNA、RNA)がコーティングされる担体を意味し、その結果、該ゲスト分子は、粒子媒介技法を用いて送達できる(例えば、米国特許第5,100,792号を参照)。コア担体としては、典型的にはタングステン、金、白金、フェライト、ポリスチレンおよびラテックスなどの材料が挙げられる。例えば、Particle Bombardment Technology for Gene Transfer、(1994)Yang,N.編集、ニューヨーク州ニューヨーク所在のオックスフォード大学プレス、10−11頁を参照されたい。タングステンおよび金粒子が好ましい。タングステン粒子は、直径が0.5ミクロンから2.0ミクロンの平均サイズで容易に入手できる。金粒子または微結晶性金(例えば、ニュージャージー州ニューアーク所在のEngelhard社から入手できる金粉末A1570)もまた、本発明に使用される。金粒子は、均一なサイズで提供される(1〜3ミクロンの粒径でAlpha Chemicalsから入手できるか、または0.95ミクロンなどの粒径範囲でニュージャージー州サウスプレインフィールド所在のDegussaから入手できる)。微結晶性金は、典型的には0.5〜5ミクロンの範囲内で種々の粒径分布を提供する。しかしながら、微結晶性金の不規則表面積は、核酸による高効率的なコーティングを提供する。多くの方法が公知であり、金粒子またはタングステン粒子上にNOI類をコーティングまたは沈着させるために記載されている。このような方法の大部分は、予め決められた量の金またはタングステンとプラスミドDNA、CaCl
2およびスペルミジンとを一般に組み合わせる。生じた溶液は、反応混合物の均一性を確保するためにコーティング手法時に連続して撹拌する。NOIの沈着後、コーティング粒子は、好適な膜に移すことができ、使用前に乾燥させるか、サンプルモジュールまたはカセットの表面上にコーティングさせるか、または特に遺伝子銃装置の使用のために送達カセットに装填させる。
【0262】
粒子組成物またはコーティング粒子は、剤形と適合した様式で、また本発明の目的に有効な量で個体に投与される。送達される組成物量(例えば、約0.1mgから1mg、より好ましくは1ugから50ugの抗原またはアレルゲン)は、試験を受ける個体に依存する。必要とされる正確な量は、試験を受ける個体の年齢および一般状態に依って変わり、適切な有効量は、本明細書を読んだ当業者により容易に決定できる。
宿主哺乳動物対象
本明細書に用いられる用語の「宿主哺乳動物対象」とは、限定することなく、ヒトおよびチンパンジーおよび他の類人猿などの非ヒト霊長類ならびにサル種などの他の霊長類;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマなどの家畜;イヌおよびネコなどのペット;マウス、ラットおよびモルモットなどのげっ歯類を含む実験室動物;ニワトリ、七面鳥および他のキジ鳥類、アヒル、雌ガチョウなどの家畜鳥、野生鳥および猟鳥を含む鳥類などの亜門コルデータ(cordata)を意味する。この用語は、特定の年齢を意味しない。したがって、成人および新生児双方の個体を包含するように意図されている。全てこれらの脊椎動物の免疫系が同様に操作されることから、本明細書に記載された方法は、上記のいずれの脊椎動物種の使用が意図されている。哺乳動物の場合、対象は、ヒトであることが好ましいが、家畜類、実験室対象またはペット動物もまたあり得る。
【0263】
哺乳動物は、ヒトであることが好ましい。免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、予防使用のためであるが、ヒトは、小児(例えば、よちよち歩きの子供または乳児)または10代の若者であることが好ましく;ワクチンは、治療使用のためであるが、ヒトは、10代の若者または成人であることが好ましい。小児用に意図されている免疫原性組成物(例えば、ワクチン)はまた、例えば、安全性、用量、免疫性などを評価するために成人に投与され得る。
【0264】
(予防および/または治療)
本発明はまた、薬剤(例えば、ワクチン類などの免疫原性組成物)または診断試薬としての使用のために本発明の組成物を提供する。本発明はまた:(i)免疫原性疾患を治療または予防するための薬剤、の製造に該組成物の使用を提供する。本発明はまた、本発明による治療的有効量の組成物を患者に投与することを含む、患者を治療する方法を提供する。
【0265】
本発明はまた、哺乳動物における免疫応答を惹起するか、調整するか、または増強させる薬剤の製造において本発明の組成物の使用を提供する。薬剤は、ワクチンなどの免疫原性組成物であることが好ましく、また免疫原性疾患を予防および/または治療するような組成物の調製であることが好ましい。治療に対する本明細書中の全ての引用文献は、治癒的治療、緩和治療および予防的治療を含むことを認識すべきである。
【0266】
本明細書に用いられる用語の「免疫応答」とは、宿主哺乳動物対象において抗原に対する体液性免疫応答および/または細胞免疫応答の発生を称す。本明細書に用いられる用語の「体液性免疫応答」とは、抗体分子により媒介される免疫応答を称す。体液性免疫により発生する抗体は、細胞外感染性物質に対して主として有効である。
【0267】
本明細書に用いられる用語の「細胞媒介免疫(CMI)応答」は、Tリンパ球および/または他の白血球により媒介されるものである。抗原が後日出現する場合、記憶T細胞は、活性化されて細胞表面上に対応する抗原またはその一部を有する標的細胞を破壊し、それによって感染性病原体を破壊するCMI応答を生じる様式で、CMI機構はT細胞をプライムするため、CMI免疫機構は、細胞内感染および疾患に対して一般により有効である。CMI応答は、直接的細胞−細胞間の接触により、および/または抗ウィルス活性を有するサイトカイン類などの分子の放出により宿主の感染細胞を破壊するエフェクター細胞によって媒介される感染源の破壊に焦点が合わせられる。このように、特異的Tリンパ球細胞応答を特徴とするCMI応答は、癌、ウィルス、病原性微生物および他の細胞内微生物によって引き起こされる疾患に対する抵抗性を生じるために重要である。
【0268】
本発明のbARE組成物の投与は、「予防」または「治療」目的のためであり得る。本明細書に用いられる用語の「治療的」または「治療」とは、以下のいずれかを含む:感染または再感染の予防;症状の軽減または緩和または排除;および病原体の減少または完全排除。治療は、予防的(感染前)または治療的(感染後)に有効であり得る。
【0269】
予防または治療としては、限定はしないが、有効な免疫応答、好ましくはCMI免疫応答を誘発すること、および/またはT細胞媒介免疫疾患から生じる症状および/または合併症を緩和、軽減、治癒または少なくとも部分的に阻止することが挙げられる。予防的に提供される場合、本発明のbARE組成物は、典型的にある症状の進行中に提供される。本発明のbARE組成物の予防的投与は、引き続く感染症または疾患の予防または寛解することである。治療的に提供される場合、本発明の組成物は、典型的に例えば、実際の症状を減衰させるために感染症または疾患症状の発症時に(またはその直後に)提供される。したがって、本発明の組成物は、疾患原因物質への予想曝露前または疾患状態または感染症もしくは疾患開始後のいずれかに提供できる。
【0270】
予防または治療投与(単独または組成物の一部として)のいずれかがより適切であるかどうかは、通常疾患の性質に依存する。例として、本発明の組成物は、ワクチン接種により免疫を積極的に誘導する免疫療法プロトコルにおいて使用できるであろう。この後者の使用形態は、免疫性が持続されるので有益である。一方、必ずしも必要ではないが、組成物は、予防的に使用されることが好ましく、引き続き遭遇する抗原または標的抗原に関連するその一部分(エピトープ類など)に対して有効なCMI応答を誘導する。
【0271】
本発明の文脈において宿主対象に投与されるbARE組成物の用量は、通常、対象において経時的に有利な予防的または治療的免疫応答、好ましくはCMI応答を達成する上で十分な量である。
【0272】
本発明はまた、本発明の組成物の有効量を投与するステップを含む哺乳動物において免疫応答を惹起する方法を提供する。免疫応答は防護的であることが好ましく、抗体免疫および/または細胞媒介免疫を伴うことが好ましい。この方法は、ブースター応答を惹起することができる。
【0273】
本発明に用いられる用語の「予防的または治療的有効用量」とは、例えば、bARE組成物の一部として、および/またはT細胞媒介免疫疾患から生じる症状および/または合併症を緩和、軽減、治癒または少なくとも部分的に阻止するために投与される場合、1種以上の抗原またはエピトープに対して増強された免疫応答、好ましくはCMI応答を誘発させるのに十分な量の用量を意味する。
【0274】
本明細書に記載される免疫原性組成物は、抗原(1種または複数種)ならびに必要とされる任意の他の成分の免疫学的に有効量を含む。「免疫学的に有効量」とは、単回用量または一連のものの一部として個体に対するその量の投与が、治療または予防に有効であることを意味する。この量は、治療を受ける個体の健康および身体的状態、年齢、治療を受ける個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系の抗体を合成する能力、所望の防護度、ワクチンの形成、医療状態の治療医師の評価、および他の関連する因子に依って変化する。その量は、ルーチンの試験を通して決定できる比較的広範囲内に入ると予想される。本発明の組成物は、宿主、例えばヒトへの投与前にインビトロおよびインビボ動物モデルにおいて評価できる。
【0275】
(投与量)
予防または治療は、単回時点または複数回時点における単独の直接投与により達成できる。点眼を経る粘膜投与などの幾つかの投与経路は、より高い用量を必要とし得る。当業者は、特定の送達経路に適合させるために投与量と濃度を調整できる。
【0276】
一実施形態において、投薬治療は、単回投与計画または複数回投与計画であり得る。複数回用量は、一次免疫化計画および/またはブースター免疫化計画に使用できる。複数回投与計画において、種々の用量は、限定はしないが、非経口プライムおよび粘膜プライムおよび非経口ブーストなどの同一または異なる経路により与えることができる。
【0277】
(変異体AB
5分子)
本発明による安定化bAREタンパク質および安定化AB
5タンパク質は、ヒトにおける感染症および/または疾患の予防または治療に用いることができる。LTK63などの変異体AB
5分子はまた、ヒトにおける感染症および/または疾患の予防または治療に用いることができる。特に、安定化LTK63は、第2の抗原との混合物における非毒性粘膜アジュバントとして有用である。LTK63変異体の調製および粘膜アジュバントとしてこれらの変異体のワクチン類への製剤化は、Tierneyら、J Infect Dis 188(2003)753−8頁;およびBaudnerら、Vaccine 21(2003)3837−3844頁;およびビオシンSpA(現在キロンSpA)の国際特許出願国際公開第93/13202号および国際公開第97/02348号などの出願者の先の刊行物および特許出願に詳細に記載されており、これらの開示は、それらの全体および全ての目的のために、参照としてその全体が本明細書に組み込まれている。
【0278】
本出願および先の参照出願に提供された開示に記載されているように、本発明による適切な安定化AB
5タンパク質、特に遺伝子的にLTK63などの解毒化されたAB
5細菌毒が組み込まれているワクチン製剤の調製法は、当業者にとって容易に明らかとなるであろう。
【0279】
このように、ある一定の態様において、本発明は、特にAB
5クラスタンパク質が、LTK63などの遺伝子的に解毒化された免疫原性細菌毒素である、安定化AB
5クラスタンパク質を含む免疫原性組成物を提供する。ある一定の態様において、免疫原性組成物はヒトワクチンである。安定化AB
5クラスタンパク質は、組成物の抗原性剤、または組成物の他の抗原性剤に関するアジュバントであり得る。特定の一実施形態において、安定化AB
5クラスタンパク質は、粘膜アジュバントである。
【0280】
(疾患状態)
本発明の組成物は、限定はしないが、肺炎、心臓血管病、アテローム性動脈硬化症、気管支炎、咽頭炎、喉頭炎、静脈洞炎、閉塞性肺疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、反応性関節炎、中耳炎、腹大動脈瘤、結節性紅斑、ライター症候群、類肉腫症、アルツハイマー病、多発性硬化症、性病性リンパ肉芽種、眼トラコーマ、骨盤腹膜炎、封入体結膜炎、性器トラコーマ、乳児肺炎、初発性トラコーマ、角膜炎、乳頭肥大、角膜浸潤、外陰部膣炎、粘液膿性鼻炎、耳管炎、子宮頚炎、子宮頚部濾胞、前立腺炎、直腸炎、尿道炎、鼠径リンパ肉芽腫、気候性横痃、熱帯性横痃、および/またはエスチオメーヌなどの疾患を予防および/または治療するために使用できる。
【0281】
(キット類)
本発明のbARE組成物を含むキットもまた、本発明に含まれる。キットはまた、bARE組成物とともにまたはbARE組成物の一部として投与されるアジュバント、好ましくは遺伝子アジュバントおよび、生体分子を投与するための使用説明書を含むことができる。キットの他の好ましい成分は、bARE組成物を投与するためのアプリケーターを含む。本明細書に用いられる用語の「アプリケーター」とは、限定はしないが、皮下注射器、遺伝子銃、粒子加速装置、ネブライザー、ドロッパー、気管支鏡、座薬、タンポンなどの含浸またはコーティングされた膣挿入可能な材料、圧注剤、膣洗浄液、滞留浣腸製剤、座薬、または全身的または粘膜的または経皮的にbARE組成物を宿主対象に適用するための直腸または結腸洗浄液などの任意の医療用具を称す。
【0282】
キットとしては、さらに1つ以上の以下のものを含む第2の成分が挙げられる:使用説明書、シリンジまたは他の送達装置、アジュバントまたは製薬的に許容できる製剤化溶液。本発明はまた、本発明のbARE組成物により予め充填された送達装置を提供する。
【実施例】
【0283】
本発明の材料および関連技法および装置を、幾つかの実施形態を参照にしてここに記載する。記載された実施形態の重要な性質および特性は、本文中の構成に説明されている。本発明は、これらの実施形態と関連して記載されているが、本発明を、これらの実施形態に限定するつもりはないことを解すべきである。逆に、添付の請求項により定義されている本発明の精神と範囲内に含まれ得る変法、修飾および等価物を包含することが意図されている。以下の説明において、本発明の十分な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。本発明は、これらの具体的な詳細の幾つかまたは全部を用いなくても実施できる。他の場合、周知の処理操作は、本発明を不必要に曖昧にしないために詳細には記載されなかった。
【0284】
(実施例1 GF−HPLCにおけるLTK63のAB
5体およびB
5体の分離)
LTK63、約82KDaのオリゴマータンパク質は、天然分子の構造的構成を保持するサブユニットA上の部位特異的変異誘発により得られる、LT(熱感受性腸毒素)の非毒性変異体である。LTK63のサブユニットAは、27KDaのMWを有する240のアミノ酸のポリペプチド単鎖により構成される。サブユニットBは、55KDaのMWを有する各々103のアミノ酸の5つの同一モノマーにより形成されるペンタマーである。両サブユニットは、正荷電アミノ酸を高いパーセントで含有する(サブユニットA IP=6.3;サブユニットB
5、IP=9.1;完全AB
5IP=8.5)。
【0285】
LTK63タンパク質を特性化するために従来から用いられる分析法(電気泳動法、免疫ブロット法、質量分析法およびアミノ酸分析法)は、解離AまたはB
5サブユニット体から分子の完全体であるAB
5体を区別することができない。従来のGF−HPLCシステムでは、保持時間が極めて近接しているため、AB
5ピークとB
5ピークとを良好に分離することができない。新規なGF−HPLCシステムは、有効な分離を可能にする。
【0286】
比較例は以下の通りである:
TSK G3000SWxlでの従来のGF−HPLC分析
装置:Alliance 2695 Waters
緩衝液:KPi 100nM+Na
2SO
4 100mM pH7.2
流量:0.5ml/分
検出:PDA996(登録商標)214nmおよび280nm
カラム:TSK G3000SWxl Tosoh
材料:シリカゲル
表面修飾:残りの−OH基
粒径:5μm
多孔度:250A。
【0287】
3種の公知の従来の緩衝液(PBS、0.25% CHAPSおよびクエン酸塩)中、LTK63(AB
5タンパク質)のサンプルをこのクロマトグラフィシステムに流した。このシステムを用いたときのAB
5体およびB
5体の保持時間(RT)差は極めて小さく、ピークの分離は良好ではなく、LTK63サンプル中のB
5サブユニット体含量の測定は困難となる。
【0288】
図1Aを参照すると、ゼロ時間(サンプル調製直後)において、完全AB
5を表すと思われる単一ピークがクロマトグラム中にあるのがわかる。RTとピークプロフィルを示した3つのサンプルの各クロマトグラムを重ね合わせるとほぼ同じになる。5日後の
図1Bを参照すると、恐らくB
5体に相当し、AB5タンパク質がある程度解離している証拠となる第2のピークが、右にシフトして現れる。しかしながら、分離は極めて低く、AB
5分子の解離度を定量的に測定することはできない。
【0289】
Ultrahydrogel 250での新規GF−HPLC分析
装置:Alliance 2695 Waters
緩衝液:KPi 100nM+Na
2SO
4 100mM pH7.2
流量:0.5ml/分
検出:PDA996(登録商標)214nmおよび280nm
カラム:Ultrahydrogel 250 Waters
材料:ヒドロキシル化ポリメタクリレート
表面修飾:残りの−COOH基
粒径:6μm
多孔度:250A。
【0290】
図1Cは、同じ5日後のサンプルを本発明に従って新規なクロマトグラフィシステム上で繰り返されたクロマトグラムを示しており、それぞれB
5(左ピーク)およびAB
5(右ピーク)を表す2本のピークが良好に分離されて示されている。サンプルの実質的な分解は、3種全ての従来の緩衝液、特にクエン酸緩衝液に見られる。
【0291】
図1Dは、TSK G3000SWxlおよびUltrahydrogel 250ならびにSDS−PAGE上のLTK63サンプルの比較を示す。Ultrahydrogel 250カラムを用いたときの短い方の保持時間(RT)を有するピークは、B5サブユニットピークであると思われる。この分離は、分離機構が、純粋にゲルろ過機構ではないこと、または分子の相対寸法がそれらの分子量(MW)に比例していないことを示唆している。
図1Dはまた、同一の分析条件下で異なるカラムを用いて、同じLTK63サンプルに関して得られた面積値および面積%の比較を示す。Ultrahydrogel 250カラム上で分離されたLTK63サンプルに関する面積%は、16%B5:83%AB5であり、これはB5:AB5に対する完全性比が約1:5である。
【0292】
(実施例2 最適溶出条件)
表1は、部分的に解離されたAB
5サンプル(AB
5体およびB
5体の双方を含有する)を、実施例1に記載されたUltrahydrogelカラム分離システムから溶出するために使用される4種の緩衝液の組成を示している。
【0293】
【表1】
【0294】
図2A〜Dは、該システムにおけるAB
5体およびB
5体の選択性についてイオン強度の効果を例証するクロマトグラムを示す。食塩水濃度が200mMに達する場合、AB
5の部分的分解まで、より高いイオン強度は、2本のピークについてより大きな最終分離を生じる。AB
5ピークは、イオン強度の変化量によりさらに影響を受けるが、B
5ピークのRTは、イオン強度を変えても実質的に変化しないままである。
【0295】
図3は、以下の溶出緩衝液:KPi 200mM+Na
2SO
4 100mM;pH 7.2中のLTK63サンプルのクロマトグラフィプロフィルを例証している。この緩衝液は、このクロマトグラフィシステムにおいて理想的なAB
5/B
5分離を提供する。
【0296】
(実施例3 AB
5ピークおよびB
5ピークの帰属)
(分画およびSDS−PAGE)
本発明によるGF−HPLC分離で得られたピークのタンパク質のAB
5体およびB
5体への帰属を立証するために、部分的解離のLTK63サンプルを、
図4のクロマトグラムに示されたとおり分離した。さらなる調査のためにサンプルを分画した。分画のために、サンプルを、実施例1に記載された新規クロマトグラフィシステムに3回注入し、500μl容量の6つのフラクションを、13.8分から19.8分の各操作において採取した。次いで各操作の同じフラクションを集めて1.5ml/フラクションの最終容量を得た。次にフラクション0〜5を、HPLCシステムに再注入し、SDS−PAGEにより分析した。この結果は、
図5Aと
図5Bに示され、LTK63サンプルの分離が
図4に示されるLTK63サンプルのフラクションについて、それぞれのクロマトグラムおよびSDS−PAGEプロフィルを示している。フラクション1および2に存在するより短い保持時間(RT)を有するピークは、B
5のみを含有するが、フラクション3および4に存在するより長いRTを有するピークは、SDS−PAGEにおいてAB
5を表すAおよびB
mの2本の明瞭なバンドとして移動する。
【0297】
(寸法特性決定:見かけの分子量)
Ultrahydrogelカラムの検量線を、公知のMWの標準タンパク質により作成した。対応するR2は0.95であった(
図5C)。
【0298】
曲線上のCRM197参照タンパク質のピークの保持時間は、57KDa(理論的には56.9)の見かけのMWを得;同一曲線上のB
5の見かけのMWは、65KDa(理論的には55)に帰着した。AB
5のMWは、9.6KDa(理論的には82kDa)を生じ、この場合ゲルろ過以外の分離機構が作用することを確かめた(
図5Dを参照)。
【0299】
(寸法特性決定:光散乱分析)
GF−HPLCピークのさらなる特性決定は、GF−HPLC:18角Dawn EOS Wyatt(
図5Eを参照)に連結されたオンライン光散乱(MALLS)検出器の使用により得られた。このインタセプトは、MWを得る。初発スロープは、各スライスに関する半径値を得る。
【0300】
下表2は、3種のLTK63サンプルおよび対照として用いられたBSAに関するMALLSデータを分類している。以下のパラメータは:ドルトンでの絶対MW;ピーク多分散(単分散分子=タンパク質について1の値);nmでの回転半径(分子寸法の測定;感度下限値=10nm);各値に最も近いパーセントは、装置のばらつきを示す。
【0301】
全てのサンプルにおいて、より高いRT(AB
5)を有するピークは、B
5と比較してより小さな値の回転半径を示す。AB
5分子のこの異常なクロマトグラフィ的挙動の可能な説明は、そのより重いMWにもかかわらず、そのコンホメーションは、B
5単独よりもコンパクトであることである。この結果は、全てのLTK63サンプルに関して全く同様である:2本の単分散ピークは、B
5およびAB
5に関する予想値と一致して、それぞれ約57KDaおよび85KDaのMWを有して存在する。
【0302】
【表2】
【0303】
(寸法特性決定:LC−ESI−MS)
天然のLTK63およびGF−HPLC分画により得られた3種のサンプルを、ピーク帰属を確認するためにLC−ESI−MS上で分析した。使用される装置の詳細は以下のとおりである:
装置:Alliance 2695 Waters
検出: PDA 996 Waters
MS ZQ 4000 Micromass
RPカラム:Jupiter Phenomenex C4
300Å。
【0304】
図5F(b)は、Bモノマーに対応する約11.793DaのMWを有するピーク1が、天然LTK63および全てのフラクションに存在したことを示している。
図5F(b)はまた、サブユニットAに対応する27.855/66DaのMWを有するピーク2が、天然LTK63フラクションおよびフラクション5に存在したことを示している。
【0305】
(実施例1〜3の結果のまとめ)
(新旧HPLC技法間の比較実施例)
AB
5タンパク質など、bAREタンパク質の機能的完全性は、その完全多量体構造を損失することなく評価できるため、当該技術への重要な貢献である新規GF−HPLC法が開発された。
【0306】
AB
5タンパク質など、bAREタンパク質の機能的安定性は、AB5タンパク質の非解離形態および解離形態について判断でき;bAREタンパク質の機能的安定性に対する候補安定化剤の効果を判断できる。特にAB5タンパク質など、bAREタンパク質の機能的安定性に対する物理的安定化剤の効果およびその安定性の可能性を判断できる。
【0307】
実施例で説明されるように、GF−HPLC法を用いる溶出条件が最適化され、溶出緩衝液に対するイオン強度の効果が調査され、イオン強度は、カラム上のAB5タンパク質の保持時間に影響を及ぼすように思われた。
【0308】
GF−HPLCカラムから溶出されたピークは、多くの方法で特性決定された;先ず第1に、ピーク帰属は、溶出されたB5およびAB5ピークを同定するために分画およびSDS−PAGE分析の双方により確かめられた。
【0309】
第2に、寸法特性決定は、ゲルろ過以外の分離機構がAB5タンパク質の溶出に関して最小に作用していることを示した見かけの分子量(MW)測定を用いて実施された。
【0310】
第3に、オンライン光散乱(MALLS)を用いる寸法特性決定は、絶対的MWの結果が、AB5およびB5サブユニットに関する理論値と一致していたかどうかをチェックするために実施された。
【0311】
これらの結果は、ピークが同種の物質から構成されていることを示した。しかしながら、寸法値は、AB5が、B5サブユニット単独よりもコンパクトなコンホメーションであることを示唆した。LC−ESI−MSを用いて得られた寸法特性決定はまた、ピーク帰属のさらなる証拠を提供した。
【0312】
(実施例4 安定化剤に関するスクリーンにおいて本発明の新規分析法(GF−HPLC)の適用)
本発明の分析法の開発および安定化剤ならびにbAREタンパク質の物理的および/または機能的安定性に対するそれらの効果の同定前に、安定性の問題は、種々の緩衝液中、種々の貯蔵温度で変異体LT K63など、bAREタンパク質の精製濃縮バルクの長期保存中に見られた。
【0313】
例として、2.8mg/mlのタンパク質濃度でPBS中4℃での貯蔵1ヵ月後のLT K63バルクは、ボトル壁に数個の「結晶」形成を示した。
【0314】
また、1〜1.5mg/mlのタンパク質濃度で、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、2〜8℃の貯蔵温度で貯蔵5ヵ月後、LT K63沈殿が明白であった。沈殿したサンプルのSDS−PAGE分析は、AB5タンパク質全体の沈殿を示す。
【0315】
PBS中−20℃で貯蔵されたLT K63バルクは、沈殿を示さないが、HPLC分析において、AB5タンパク質が、AおよびB5サブユニット形態に解離されていることを示唆する、B5複合体の外観が観察された。さらに、本発明の新規なGF−HPLC分析法の適用は、1.2mg/mlのタンパク質濃度でPBS+5%ショ糖中−20℃で貯蔵10ヵ月後、HPLCにより検出されたLT K63の完全性の損失が明白であることを示した。
【0316】
5%ショ糖のPBSへの添加は、凍結/解凍サイクル中の解離によりLT K63を保護するように思えた。しかしながら、PBS+5%ショ糖中LT K63の−20℃で長期貯蔵において再度タンパク質解離を生じた。
【0317】
したがって、本発明の目的の1つは、1mg/mlと4mg/mlとの間のタンパク質濃度に対して2〜8℃でLT K63の精製濃縮バルクを安定化させるための、bARE組成物貯蔵の改善、特にAB5組成物貯蔵の改善を提供することであった。
【0318】
(方法論)
沈殿/結晶化を避けてLT K63を安定化させる第1の試みは、タンパク質安定性に影響を及ぼす幾つかのパラメータの変動と共に4℃で実施された。酢酸、クエン酸、リン酸およびトリス緩衝液などの種々の緩衝液が選択された。NaCl濃度は、0〜0.5Mの範囲で変化させ;pHは、5.5〜7.5の範囲で変化させ;糖類、界面活性剤、キレート化剤およびアミノ酸などの種々の添加物が使用された。タンパク質濃度は、用いられる貯蔵用緩衝液の全てにおいて0.8〜1.2mg/mlの範囲で維持された。この実験は、静止条件下および4℃でロータ撹拌機でサンプルを振とうすることにより実施された。振とう実験は、貯蔵条件に応力をかけ、LT K63の沈殿を促進するように設定された。
【0319】
(スクリーニング結果4(a))
【0320】
【表3】
【0321】
表3の分析結果は、振とうサンプルの沈殿が2、3日以内で生じるが、一方、静止条件下では、沈殿は数ヵ月かかる。静止および振とう条件下の双方でLT K63の沈殿を防いだ2種の添加物、CHAPSおよびL−アルギニンが選択された。
【0322】
(スクリーニング結果4(b))
振とう1日間および6日間におけるペレット(示されていない)および上清(
図6を参照)のSDS−PAGEによる分析が実施された。静止サンプルとは異なり、振とう条件において、貯蔵緩衝液に依ってAB5の部分解離が生じ、この上清は、Bモノマー(B
m)またはBサブユニット(B
X)のオリゴマー体に富んでいる。
【0323】
(実施例5)
実施例4(b)のSDS−PAGE結果により、振とう条件下のLT K63タンパク質は不安定であり、AとBのサブユニットは、解離することを示した。LTK63タンパク質の安定性に対する2種の貯蔵用緩衝液、CHAPSおよびL−アルギニンの効果を調べた。2種の貯蔵用緩衝液は:pH7.4の20mMリン酸塩とCHAPSおよびpH7.4の20mMリン酸塩とL−アルギニンが選択された。
【0324】
(結果5(a))
図7は、静止条件下および振とう条件の双方において、1.5〜2.0mg/mlまでタンパク質濃度を増加させることは、LT K63の沈殿に影響を及ぼし;一方、0.05%〜0.5%範囲のCHAPS濃度は、LT K63挙動に著しく影響を及ぼすことはなく;CHAPS沈殿サンプルのSDS−PAGEは、静止条件および振とう条件の双方においてLT K63解離を示さなかったことを示している。
【0325】
(結果5(a)の概要)
1.5mg/mlより高いタンパク質濃度に関して、CHAPSの包含は、LT K63の沈殿に対して保護効果を有するとは思われない。しかしながら、CHAPSの包含は、AB5タンパク質をそのサブユニット体への解離から保護するように思われる。
【0326】
(結果5(b))
図8は、静止条件下で、17mg/mlまでタンパク質濃度を増加させても、タンパク質沈殿に影響を及ぼさなかったが、一方、振とう条件下では、LT K63の沈殿が、2.0mg/mlの濃度でさえも生じ;50mM〜400mMの範囲のL−アルギニン濃度は、著しくLT K63沈殿に影響を及ぼすことはなく;一方、振とう条件下でL−アルギニン沈殿サンプルのSDS−PAGEは、LT K63解離を示しているように思えることが示されている。
【0327】
(結果5(b)のまとめ)
L−アルギニンは、極めて高いタンパク質濃度までタンパク質沈殿を防止できたが、L−アルギニンは、LT K63解離に対する効果を有するように思われる。
【0328】
(実施例6 新旧HPLC法を用いた振とう30日後のL−アルギニン振とうサンプルの比較分析)
(結果6)
旧HPLC法(
図9(a)では、天然の多量体AB5タンパク質とその解離B5サブユニット形態とを識別できないが、一方、新規HPLC法では、種々の濃度のアルギニン(0.2M、0.3Mおよび0.4M)を使用し、本発明の分析方法を用いて得られたピーク下の面積パーセントを算出することによって、AB5形態とB5形態との分離だけでなく、解離形態と非解離形態との相対量の定量化が可能になることが、
図9(a)および9(b)の解析により示される。
【0329】
(結果6のまとめ)
LT K63の解離の程度により、非沈殿サンプルでも生じるB5サブユニット体の出現が判断され、これはL−アルギニン濃度に依存していると考えられる。
【0330】
(実施例7)
L−アルギニン濃度に対するLT K63解離の依存性を、種々のLT K63濃度(1.3mg/mlと4.0mg/ml)における静止サンプル下で本発明の新規なHPLC分析法を用いて検討された。
【0331】
(結果7)
B
5の増加は、静止サンプルにおいてさえも生じ、L−アルギニン濃度に依存することが、
図10(a)および
図10(b)の分析により示される。直線回帰分析のスロープは、AB5タンパク質の解離の程度が、AB5タンパク質濃度に依存しないことを示した。
【0332】
(実施例8)
(方法論)
静止条件下でのLT K63解離に対するCHAPS効果を、本発明の新規なHPLC法を用いて評価した。CHAPSの包含により、LT K63(
図11(a))に対する解離作用が示されないこと;L−アルギニン処理サンプルにおけるB
5の増加が、0.05%CHAPSの添加により部分的に阻止される(
図11(b))ことが、
図11(a)と11(b)の解析により示された。
【0333】
(結果4〜8の総合的まとめ)
LT K63の不安定性は、2つの異なる現象に依る:結晶化/沈殿および解離。2種の添加物、CHAPSおよびL−アルギニンが、LT K63タンパク質を相乗的に安定化させるために選択された。CHAPSは、高いLT K63濃度(約2mg/ml)でLT K63沈殿を防止することができないが、解離作用は見られなかった。L−アルギニンは、極めて高いLT K63濃度(約17mg/ml)でタンパク質沈殿を防止するが、L−アルギニンは、AB5解離作用を有し得る。
【0334】
安定化添加物としてのCHAPS+L−アルギニンの組合せに関しては、CHAPSの包含は、L−アルギニンサンプルにおけるB
5サブユニット形成を部分的に阻止し、L−アルギニンと組み合わせて含まれる場合、12ヵ月間に亘るB5濃度の予想増加は、1.5%付近であった。これらの観察に基づいて、CHAPSとL−アルギニンとの組合せの使用は、経時的にLTK63の沈殿および解離の双方を防止することによって相乗的効果を提供するように思われる。特に、組合せて用いられる場合の最適L−アルギニン(100〜200mM)およびCHAPS(0.05〜0.25%)濃度を決定する安定性実験により、安定性に関する肯定的結果は、添加濃度に係りなく3ヵ月後にも得られることが示された。
【0335】
(実施例9 ある期間に亘る1.3mg/mlのタンパク質濃度でのLTK 63の安定性に対するL−アルギニンおよびCHAPSの効果)
1.3mg/mlのタンパク質濃度のLTK 63を、L−アルギニンおよびCHAPSの種々の濃度を含有する貯蔵用緩衝液中2〜8℃に維持してタンパク質解離および沈殿に対するこれら2種の安定化剤の効果をチェックした。サンプル中のB5パーセンテージを、貯蔵8ヵ月までHPLC分析により測定した。
【0336】
(結果9)
表4(a)および
図12は、ある期間に亘る1.3mg/mlのタンパク質濃度でのLTK 63の安定性に対するL−アルギニン(50mM〜400mM)およびCHAPS(0.25%)の効果を示す。タンパク質沈殿(ppt)は、約4ヵ月に相当する118日後の対照サンプルおよび振とうサンプルに見られた。118日後の静止サンプルのいずれにも沈殿は見られなかった。しかしながら、約8〜9ヵ月に相当する246日後の5つの静止サンプルのうち2つに沈殿が見られた。
【0337】
【表4a】
【0338】
B5パーセンテージの時間経過の線形フィッティングをプロットした。
【0339】
【表4b】
【0340】
(実施例10)
(方法論)
タンパク質解離と沈殿に対するCHAPS(0.05%)およびL−アルギニン(50mM〜400mM)の効果を、経時的(0日、2日、5日、12日、27日、55日、118日および256日)に調べた。
【0341】
4.0mg/mlのタンパク質濃度でのLTK 63を、L−アルギニンおよびL−アルギニン+CHAPSの組合せの種々の濃度を含有する貯蔵用緩衝液中に2〜8℃に維持した。246日後、1つのサンプルだけにタンパク質沈殿(ppt)が見られた。サンプル中のB5パーセンテージは、貯蔵8ヵ月間までHPLC分析により測定された。B5パーセンテージの時間経過を実施し、線形フィッティングをプロットした(表5(a)、5(b)および
図13)。
【0342】
【表5】
【0343】
(結果9および結果10の考察)
LTK 63の安定性に対するL−アルギニンの効果が、L−アルギニンが、タンパク質沈殿に対して保護する意味で確かめられた。50mMより高いL−アルギニン濃度が含まれた場合、LTK63沈殿に対する保護は、LTK63貯蔵の8ヵ月間まで得られた(表4と表5)。一方、L−アルギニンは、LTK 63に対して僅かな解離作用を有する(
図12と
図13を参照)。時間経過のB5パーセンテージにより得られた線形フィッティングのスロープ比較により、その解離はL−アルギニン濃度に依存していることを示している。すなわち、L−アルギニン濃度が高くなるほど、その解離が速くなる(表4および表5を参照)。しかしながら、B5パーセンテージの増加は、1ヵ月当たり約0.1%から約0.27%の間のみの範囲であるので、その解離作用は許容できるものである。LTK 63の解離に対するCHAPSの効果もまた確認されたが(表4(b)および表5(b))、CHAPSは、タンパク質沈殿に対して完全には保護しない(表4(a)を参照)。LTK 63の濃度は、タンパク質解離および/または沈殿に対して影響が少ないと考えられる。
【0344】
(実施例11 L−アルギニン+CHAPSを含有する緩衝液中のLTK63安定性に対する貯蔵条件の効果)
2.0mg/mlのタンパク質濃度でのLTK 63を、種々の濃度のCHAPSと組み合わせた200mML−アルギニンを含有する貯蔵用緩衝液中、2〜8℃で静止条件および振とう条件で維持した。サンプル中のB5パーセンテージを、貯蔵8ヵ月間までHPLC分析により測定した。B5パーセンテージの時間経過を実施し、線形フィッティングをプロットした。幾つかのサンプルにおいて、LTK 63の沈殿(ppt)が見られた。
【0345】
【表6】
【0346】
(結果11の考察)
L−アルギニンおよびCHAPSの存在下でもLTK 63は、長期振とう貯蔵、すなわち8ヵ月後に沈殿する(表6(a)を参照)。しかしながら、振とうによるタンパク質解離作用はなく(
図14)、CHAPS濃度(0.05%〜0.25%の範囲で)の包含は、線形フィッティングのスロープにより測定されたとおり(表6(b))、解離に対するLTK 63の主要な保護効果を有さない。
【0347】
(実施例12 L−アルギニンおよびL−アルギニン+CHAPS貯蔵用緩衝液におけるLTK63安定性の比較)
2.0mg/mlのタンパク質濃度でLTK 63を、200mML−アルギニン単独を含有する貯蔵用緩衝液中、または0.05%CHAPSと組み合わせて含有する貯蔵用緩衝液中、2〜8℃で静止条件および振とう条件で維持した。サンプル中のB5パーセンテージを、貯蔵7ヵ月間までHPLC分析により測定した。B5パーセンテージの時間経過をプロットし、線形フィッティングを実施した。
【0348】
【表7】
【0349】
(結果12の考察)
タンパク質解離に対するCHAPSの保護効果は、スロープの比較により示される(表6(b))。しかしながら、ダイアフィルトレーションステップの間のCHAPSの存在は、LTK 63の解離に対して負の効果を示しているように思われる(表6(b))。
【0350】
(実施例4〜12の結果の概要)
我々の安定性試験により、LTK 63の精製濃縮バルクは、2〜8℃での沈殿および−20℃での解離が貯蔵数ヵ月後に生じたという意味で長期不安定性(1年以上の期間に亘る)を示すことが立証された。50mMより高い濃度での貯蔵用緩衝液中のL−アルギニンの包含により、8ヵ月間に亘り2〜8℃の範囲の貯蔵温度でLTK 63の沈殿が防止された。L−アルギニン自体から生じる解離作用は、極めて僅かであると思われ、L−アルギニン濃度(1ヵ月当たり約0.1%から0.27%の間の範囲でB5パーセンテージの増加)に依存する。CHAPSの包含により、長期貯蔵に亘るLTK 63の沈殿は防止されない。しかしながら、少なくとも0.05%のCHAPSの包含により、回帰分析スロープの比較により測定された約60〜80%のL−アルギニンによって生じた解離作用を減じることができる(表5(b)および7(b))。LTK 63の解離に対するCHAPSの保護作用は、0.05%と0.25%との間の範囲のCHAPS濃度に依存するようには思われない。2種の安定化剤の組合せにより、タンパク質沈殿の防止(物理的安定化)およびタンパク質解離の防止(機能的安定化)に関して相乗効果が提供されると考えられる。
【0351】
(総合的概要)
新規分析法は、完全bAREクラスタンパク質と解離bAREクラスタンパク質との間を識別する非解離条件下でbAREタンパク質サンプルを分析するために開発された。この分析法は:
(i)AB5タンパク質などのbAREタンパク質の機能的完全性は、完全多量体構造の損失なしで評価でき;
(ii)AB5タンパク質などのbAREタンパク質の機能的安定性は、AB5タンパク質の非解離形態および解離形態について測定でき;
(iii)AB5タンパク質などのbAREタンパク質の機能的安定性に対する候補安定化剤の影響を測定できることから、当該技術分野への重要な貢献をなす。特にAB5タンパク質などのbAREタンパク質の機能的安定性に対する物理的安定化剤の影響を測定できる。
【0352】
このような分析法の開発は、以下の理由で有利となる。
【0353】
第1に、現在までbAREタンパク質の完全性を、その完全構造の損失なしで評価するために利用できる分析法はなかった。したがって、これは、実質的に完全bAREタンパク質存在を測定できる初めての方法である。
【0354】
第2に、これは、bAREタンパク質に対する機能的安定化剤が同定された初めての方法である。完全bAREクラスタンパク質と解離bAREクラスタンパク質との間を識別する非解離条件下でbARE分子の機能的安定性を測定するために利用できる方法が、以前にはなかったので、bAREタンパク質の機能的安定性または完全性を維持できる安定化剤を同定できなかった。
【0355】
第3に、これは、選択的bARE安定化剤が同定された初めての方法である。特に、bAREタンパク質の機能的安定化に影響を及ぼすことなくbAREタンパク質を物理的に安定化できる安定化剤は、本明細書に開示されている。同様に、該タンパク質の物理的安定化に影響を及ぼすことなくbAREタンパク質を機能的に安定化できる安定化剤も、開示されている。
【0356】
治療的有効成分として安定化bAREポリペプチドを含む組成物およびそれらの調製に有用な方法が提供される。該組成物は、治療的有効成分としてその有効性が、bAREポリペプチドの凝集結果として貯蔵の間に損なわれ得るbAREタンパク質を含む安定化されたbARE組成物である。したがって、本発明の安定化bARE組成物は、液体製剤での貯蔵の間に凝集体形成を示し得るbAREタンパク質に加えて、貯蔵の間にbAREタンパク質の凝集体形成を減少させるのに十分なアミノ酸塩基量を含み、該アミノ酸塩基は、任意の所与のアミノ酸が、その遊離塩基形態またはその塩形態のいずれかで存在するアミノ酸またはアミノ酸類の組合せである。該組成物は、さらにbAREタンパク質に対して機能的安定性を付与するために有効な濃度での両性イオン性物質をさらに含み得る。
【0357】
アミノ酸塩基は、組成物貯蔵の間の凝集体形成に対してbAREポリペプチドを安定化させるのに寄与するが、両性イオン性物質の包含は、bAREタンパク質の完全性を保存することによって機能的安定性を付与する。bARE組成物は、bAREポリペプチドの安定性をさらに増大させるために、他の安定化剤をさらに組み込むことができる。両性イオン性物質と組み合わせたアミノ酸塩基の添加が、これら2種の成分の組合せが無い状態で製剤化された組成物と比較して貯蔵安定性が増大したbARE組成物を生じるので、このようなbARE組成物は安定化されると言われる。
【0358】
組成物におけるbAREポリペプチドの安定性増大法およびこのような組成物の貯蔵安定性増大法もまた提供される。この方法は、組成物の貯蔵の間にbAREポリペプチドの凝集体形成を減少させるのに十分なアミノ酸塩基量および両性イオン性物質を組成物に組み込むことを含む。この方法は、本発明の組成物調製に使用される。
【0359】
本明細書に引用された全ての文献は、全ての目的のために参照としてその全体が本明細書に組み込まれている。前述の発明は、理解を明瞭にする目的で幾らか詳細に記載されているが、ある一定の変更および修飾が、添付の請求項の範囲内で実行され得ることは明白である。本発明のプロセスおよび組成物双方を実施する多くの別法が存在することに注意すべきである。したがって、本実施形態は、例証として考えるべきで、限定と考えるべきではなく、また本発明は、本明細書に記載された詳細に限定すべきではなく、添付の請求項の範囲内および等価物内で修飾できる。