(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態は、航空機に設置された機器を駆動するために当該航空機に搭載されたモータを駆動し当該モータの運転状態を制御する、航空機搭載用モータ駆動制御装置及び航空機搭載用モータ駆動制御システムとして広く適用することができるものである。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態に係る航空機搭載用モータ駆動制御装置及び航空機搭載用モータ駆動制御システムが適用される機器の一例であるバックアップ用油圧ポンプ12が設置された航空機100の一部を示す模式図である。尚、
図1は、航空機100の機体101の後部の部分と一対の水平尾翼(102、102)とを図示したものであり、機体101の後部の垂直尾翼についての図示を省略している。また、
図2は、本発明の一実施の形態に係る航空機搭載用モータ駆動制御システム1及び航空機搭載用モータ駆動制御装置2について、これらが適用されるバックアップ用油圧ポンプ12を含む油圧回路とともに模式的に示す模式図である。
【0022】
以下の説明においては、まず、航空機搭載用モータ駆動制御システム1(以下、単に「モータ駆動制御システム1」ともいう)及び航空機搭載用モータ駆動制御装置2(以下、単に「モータ駆動制御装置2」ともいう)が適用されるバックアップ用油圧ポンプ12を含む油圧回路について説明し、次いで、モータ駆動制御システム1及びモータ駆動制御装置2について説明する。
【0023】
航空機100の一対の水平尾翼(102、102)には、航空機100の舵面を構成する動翼(操縦翼面)として、エレベータ(昇降舵)103がそれぞれ設けられている。そして、各水平尾翼102におけるエレベータ103は、
図1に例示するように、複数(例えば、2つ)のアクチュエータ(13a、13b)によって駆動されるように構成されている。各水平尾翼102の内部には、各エレベータ103を駆動するアクチュエータ(13a、13b)と、そのうちの一方のアクチュエータ13aに対して圧油を供給するように構成されたバックアップ用油圧ポンプ12とが設置されている。
【0024】
本実施形態においては、一対の水平尾翼(102、102)のそれぞれに設置されるアクチュエータ(13a、13b)及びバックアップ用油圧ポンプ12は同様に構成されている。そこで、一方の水平尾翼102に設置されるアクチュエータ(13a、13b)及びバックアップ用油圧ポンプ12について説明し、他方の水平尾翼102に設置されるアクチュエータ(13a、13b)及びバックアップ用油圧ポンプ12の説明を省略する。
【0025】
図2は、一方の水平尾翼102に設けられたエレベータ103を駆動するアクチュエータ(13a、13b)と、そのうちの一方のアクチュエータ13aに対して圧油を供給するように構成されたバックアップ用油圧ポンプ12とを含む油圧回路を示す油圧回路図として図示されている。この
図2に示すように、アクチュエータ(13a、13b)のそれぞれは、シリンダ15、ピストン16aが設けられたロッド16、等を備え、シリンダ15内がピストン16aによって2つの油室に区画されて構成されている。そして、アクチュエータ13aのシリンダ15における各油室(13a、13b)は、制御弁17aを介して第1機体側油圧源104及びリザーバ回路106と連通可能に構成されている。一方、アクチュエータ13bのシリンダ15における各油室は、制御弁17bを介して第2機体側油圧源105及びリザーバ回路107と連通可能に構成されている。
【0026】
第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105のそれぞれは、圧油を供給する油圧ポンプを有し、互いに独立した系統として機体101側に(機体101の内部に)設置された油圧源として設けられている。そして、第1及び第2機体側油圧源(104、105)のそれぞれからの圧油が供給されることで、エレベータ103を駆動するアクチュエータ1(13a、13b)とエレベータ103以外の各舵面を駆動するアクチュエータ(図示せず)とが作動するように構成されている。また、第1機体側油圧源104は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ13aと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ13bとに圧油を供給可能に接続されている。一方、第2機体側油圧源105は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ13bと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ13aとに対して圧油を供給可能に接続されている。
【0027】
リザーバ回路106は、圧油として供給された後にアクチュエータ13aから排出される油(作動油)が流入して戻るタンク(図示せず)を有するとともに、第1機体側油圧源104に連通するように構成されている。また、リザーバ回路106から独立した系統として構成されるリザーバ回路107は、圧油として供給された後にアクチュエータ13bから排出される油(作動油)が流入して戻るタンク(図示せず)を有するとともに、第1機体側油圧源104から独立した系統として構成される第2機体側油圧源105に連通するように構成されている。尚、リザーバ回路106は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ13aと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ13bとに接続されるとともに、第1機体側油圧源104に接続されている。これにより、リザーバ回路106に戻った油が第1機体側油圧源104で昇圧され、所定のアクチュエータ(13a、13b)に供給される。一方、リザーバ回路107は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ13bと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ13aとに接続されるとともに、第2機体側油圧源105に接続されている。これにより、リザーバ回路107に戻った油が第2機体側油圧源105で昇圧され、所定のアクチュエータ(13a、13b)に供給される。
【0028】
制御弁17aは、第1機体側油圧源104に連通する供給通路104a及びリザーバ回路106に連通する排出通路106aと、アクチュエータ13aの油室との接続状態を切り替えるバルブ機構として設けられている。また、制御弁17bは、第2機体側油圧源105に連通する供給通路105a及びリザーバ回路107に連通する排出通路107aと、アクチュエータ13bの油室との接続状態を切り替えるバルブ機構として設けられている。制御弁17aは、例えば、電磁切換弁として構成され、アクチュエータ13aの動作を制御するアクチュエータコントローラ11aからの指令信号に基づいて駆動される。また、制御弁17bは、例えば、電磁切換弁として構成され、アクチュエータ13bの動作を制御するアクチュエータコントローラ11bからの指令信号に基づいて駆動される。
【0029】
上記のアクチュエータコントローラ11aは、エレベータ103の動作を指令する上位のコンピュータであって本実施形態のモータ駆動制御システム1におけるフライトコントローラ3からの指令信号に基づいてアクチュエータ13aを制御する。また、アクチュエータコントローラ11bは、フライトコントローラ3からの指令信号に基づいてアクチュエータ13bを制御する。
【0030】
また、前述した制御弁17aがアクチュエータコントローラ11aからの指令に基づいて切り替えられることで、供給通路104aからシリンダ15の油室の一方に圧油が供給され、油室の他方から排出通路106aに油が排出される。これにより、シリンダ15に対してロッド16が変位し、エレベータ103が駆動される。尚、制御弁17bについては、上述した制御弁17aと同様に構成されるため、説明を省略する。
【0031】
バックアップ用油圧ポンプ12は、水平尾翼102の内部に配置され、エレベータ103を駆動する油圧作動式のアクチュエータ13aに対して圧油を供給するように構成されている。尚、本実施形態では、バックアップ用油圧ポンプ12が、エレベータ103として構成された舵面を駆動するアクチュエータ13aに対して圧油を供給する形態を例にとって説明しているが、この通りでなくてもよい。即ち、バックアップ用油圧ポンプ12がエルロン(補助翼)等のエレベータ以外の舵面を駆動するアクチュエータに対して圧油を供給するように構成されていてもよい。
【0032】
バックアップ用油圧ポンプ12は、その吸込み側が排出通路106aに連通するように接続され、その吐出側が逆止弁19を介して供給通路104aに圧油を供給可能に連通するように接続されている。そして、バックアップ用油圧ポンプ12は、第1機体側油圧源104における油圧ポンプの故障や油漏れ等によって第1機体側油圧源104の機能(圧油供給機能)の喪失又は低下が発生したときにアクチュエータ13aに対して圧油を供給可能な油圧ポンプとして設けられている。
【0033】
また、供給通路104aにおけるバックアップ用油圧ポンプ12の吐出側が接続する箇所の上流側(第1機体側油圧源104側)には、アクチュエータ13aへの圧油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する逆止弁20が設けられている。そして、排出通路106aにおけるバックアップ用油圧ポンプ12の吸込み側が接続する箇所の下流側(リザーバ回路106側)には、アクチュエータ13aから排出された油の圧力が上昇した際にリザーバ回路106へ圧油を排出するリリーフ弁21が設けられている。また、このリリーフ弁21には、供給通路104aに連通するとともにバネが配置されたパイロット圧室が設けられている。供給通路104aから供給される圧油の圧力が所定の圧力値よりも低下すると、パイロット圧油として供給通路104aから上記のパイロット圧室に供給されている圧油の圧力(パイロット圧)も所定の圧力値より低下し、排出通路106aがリリーフ弁21によって遮断されることになる。第1機体側油圧源104の機能の喪失時又は低下時には、上述した逆止弁(19、20)及びリリーフ弁21が設けられていることにより、アクチュエータ13aから排出された油がリザーバ回路106に戻ることなくバックアップ用油圧ポンプ12で昇圧され、その昇圧された圧油がアクチュエータ13aに供給されることになる。
【0034】
図2に示すモータ14は、電動モータとして設けられ、バックアップ用油圧ポンプ12に対して、カップリングを介して連結され、このバックアップ用油圧ポンプ12を駆動するように構成されている。即ち、モータ14は、航空機100に設置された本実施形態の機器であるバックアップ用油圧ポンプ12を駆動するために航空機100に搭載された本実施形態のモータを構成している。
【0035】
また、本実施形態では、モータ14は、同期モータとして構成されている。尚、モータ14は、同期モータ以外の電動モータとして構成されていてもよいが、同期モータとして構成されていることで、ステータの回転磁界に対するロータの回転速度の遅れであるすべりがある誘導モータとして構成されている場合に比して、効率の向上を図ることができる。また、モータ14には、その回転速度(回転数)を検出する回転角センサ14aが設けられている。この回転角センサ14aは、例えば、ロータリーエンコーダ、レゾルバ、タコジェネレータ等によって構成されている。
【0036】
次に、モータ14を駆動しこのモータ14の運転状態を制御する、本実施形態のモータ駆動制御システム1及びモータ駆動制御装置2について説明する。
図3は、モータ駆動制御システム1及びモータ駆動制御装置2を示すブロック図である。
図2及び
図3に示すように、モータ駆動制御システム1は、フライトコントローラ3とモータ駆動制御装置2とを備えて構成されている。
【0037】
フライトコントローラ3は、舵面であるエレベータ103の作動を制御するコンピュータとして設けられるとともに、モータ駆動制御装置2に対して種々の信号を送信する本実施形態のコントローラとして設けられている。このフライトコントローラ3からの信号に基づいて、モータ14の運転状態が、モータ駆動制御装置2によって制御される。尚、フライトコントローラ3は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)やメモリ、インターフェース等を備えて構成されている。
【0038】
また、フライトコントローラ3は、第1機体側油圧源104の吐出圧力又は供給通路104aを通過する圧油の圧力を検知する圧力センサ(図示せず)に対して、その圧力センサで検知された圧力検知信号が入力されるように接続されている。そして、フライトコントローラ12は、上記の圧力検知信号に基づいて、第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下を検知するように構成されている。
【0039】
そして、フライトコントローラ3にて第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が検知されると、このフライトコントローラ3からの指令に基づいて、モータ駆動制御装置2の制御により、モータ14の運転が開始され、バックアップ用油圧ポンプ12が作動し、アクチュエータ13aに対する圧油の供給が行われることになる。尚、このようにバックアップ用油圧ポンプ12が起動した後は、航空機100の飛行状態に応じたアクチュエータ13aの作動状況に対応するように、フライトコントローラ3からの信号に基づくモータ駆動制御装置2の制御によって、モータ14の回転速度及び出力トルクが制御される。
【0040】
また、フライトコントローラ3は、第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下のような突発的なトラブルが発生した状況だけでなく、天候や気流の状態に応じて航空機100の飛行状態が急激に変化する虞がある状況、或いは、航空機100が離陸動作又は着陸動作を行う状況、等においても、モータ14を起動させる。これにより、上記のような状況において、バックアップ用油圧ポンプ12からのアクチュエータ13aへの圧油の供給も行われ、アクチュエータ13aへの圧油供給機能の増強が図られることになる。更に、上記のような状況において急激に第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が生じても、既にモータ14が作動しているため、安全な飛行を迅速に確保することができる。尚、上記において、バックアップ用油圧ポンプ12が起動した後は、航空機100の飛行状態に応じたアクチュエータ13aの作動状況に対応するように、フライトコントローラ3からの信号に基づくモータ駆動制御装置2の制御によって、モータ14の回転速度及び出力トルクが制御される。
【0041】
図3に示すように、モータ駆動制御装置2は、DC電源22、インバータ23、制御器24、等を備えて構成されている。DC電源(直流電源)22は、例えば、航空機100の機体側に設置された交流電源から供給される交流を直流に整流して変換する整流器(コンバータ)として設けられている。
【0042】
インバータ23は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子を有し、制御器24からの指令に基づいて、DC電源22からの電力によってモータ14を駆動するように構成されている。また、インバータ23とモータ14とを接続する駆動線に流れる電流の電流値については、電流センサ30にて検出され、制御器24に入力されるように構成されている。
【0043】
制御器24は、インバータ23のパルス幅変調制御(PWM制御)を行う制御回路として設けられている。この制御器24は、フライトコントローラ3にて生成されてバックアップ用油圧ポンプ12の作動を制御するためのモータ14の回転速度を指令する速度指令信号と、回転角センサ14aでの回転角検出値とに基づいて、モータ14の回転速度を制御する。そして、制御器24は、指令信号処理部25、速度制御部26、電流電圧制御部27、PWM信号生成部28、PWM周波数制御部29、等を備えて構成されている。
【0044】
図4は、指令信号処理部25における処理を説明するための機能ブロック図である。
図3及び
図4に示す指令信号処理部25は、前述の速度指令信号と、インバータ23のスイッチング素子におけるスイッチング周波数(キャリア周波数)であるPWM周波数を指令するためのPWM周波数指令信号とを生成するフライトコントローラ3からの信号に基づいて、PWM周波数を制御させるためのPWM周波数制御信号を出力する。
【0045】
そして、指令信号処理部25は、上記のPWM周波数指令信号として、第1PWM周波数指令信号と、第2PWM周波数指令信号と、第3PWM周波数指令信号と、のうちのいずれかの信号を受信する。尚、フライトコントローラ3からは、航空機100の状況に応じて、第1PWM周波数指令信号と、第2PWM周波数指令信号と、第3PWM周波数指令信号と、のうちのいずれかの信号が、モータ駆動制御装置2の指令信号処理部25に送信される。
【0046】
第1PWM周波数指令信号は、指令信号処理部25において高PWM周波数指令信号S1を出力させるモードである高PWM周波数選択モードM1に所定のフラグを設定するようにスイッチSW1を切り替えさせるための信号として構成されている。スイッチSW1が高PWM周波数選択モードM1に設定されると、高PWM周波数指令信号S1が出力されるようにスイッチSW2が設定される。尚、
図3においては、高PWM周波数指令信号S1、高PWM周波数選択モードM1、スイッチ(SW1、SW2)について、ブロック図として符号を付して模式的に図示している。また、本実施形態では、スイッチ(SW1、SW2)がソフトウェアによって構成されているが、この通りでなくてもよく、スイッチ(SW1、SW2)がハードウェアによって構成されてもよい。
【0047】
上記により、指令信号処理部25が第1PWM周波数指令信号を受信したときには、PWM周波数制御信号として、高PWM周波数指令信号S1が出力される。尚、高PWM周波数指令信号S1は、所定の一定周波数のPWM周波数にて非同期PWM制御が行われるように後述のPWM周波数制御部29にPWM周波数を制御させるための信号として構成されている。
【0048】
第2PWM周波数指令信号は、指令信号処理部25において低PWM周波数指令信号S2を出力させるモードである低PWM周波数選択モードM2に所定のフラグを設定するようにスイッチSW1を切り替えさせるための信号として構成されている。スイッチSW1が低PWM周波数選択モードM2に設定されると、低PWM周波数指令信号S2が出力されるようにスイッチSW2が設定される。尚、
図3においては、低PWM周波数指令信号S2、低PWM周波数選択モードM2についても、ブロック図として符号を付して模式的に図示している。
【0049】
上記により、指令信号処理部25が第2PWM周波数指令信号を受信したときには、PWM周波数制御信号として、低PWM周波数指令信号S2が出力される。尚、低PWM周波数指令信号S2は、高PWM周波数指令信号S1の場合における所定の一定周波数よりも低い周波数の範囲のPWM周波数にて非同期PWM制御又は同期PWM制御が行われるように後述のPWM周波数制御部29にPWM周波数を制御させるための信号として構成されている。
【0050】
第3PWM周波数指令信号は、指令信号処理部25にてPWM周波数制御信号を決定することを指令する信号として構成されている。一方、指令信号処理部25では、その内部に組み込まれた速度変化率値演算ロジック部L1において、フライトコントローラ3から受信するモータ14の速度指令信号に基づいて、この速度指令信号の変化の度合いを指標する値である速度変化率値が演算される。更に、指令処理部25では、比較判定ロジック部L2において、上記の速度変化率値の演算結果が所定の判定値V1と比較され、速度変化率値が判定値V1以上であるか判定値V1未満であるかが判定される。尚、
図3においては、判定値V1についても、ブロック図として符号を付して模式的に図示している。
【0051】
そして、指令処理部25は、PWM周波数指令信号として第3PWM周波数指令信号を受信したときには、比較判定ロジック部L2での判定結果に基づいてPWM周波数制御信号を出力させるモードに所定のフラグを設定するようにスイッチSW1を切り替える。即ち、この場合は、
図4に示す状態にスイッチSW1が切り替えられる。そして、指令処理部25では、スイッチSW1が上記の
図4に示すモードに設定されると、速度変化率値が判定値V1以上のときは高PWM周波数指令信号S1が出力され、速度変化率値が判定値V1未満のときは低PWM周波数指令信号S2が出力されるように、スイッチSW2が設定される。
【0052】
上記により、指令信号処理部25が第3PWM周波数指令信号を受信したときには、PWM周波数制御信号として、速度変化率値が判定値V1以上のときは高PWM周波数指令信号S1が出力され、速度変化率値が判定値V1未満のときは低PWM周波数指令信号S2が出力される。
【0053】
図5は、上述した指令信号処理部25における処理を説明するためのフロー図である。指令信号処理部25では、まず、フライトコントローラ3から受信したPWM周波数指令信号が第1PWM周波数指令信号であるか否かが判断される(ステップS101)。そして、第1PWM周波数指令信号の受信がある場合(ステップS101、Yes)は、高PWM周波数指令信号S1がPWM周波数制御信号として出力される(ステップS105)。
【0054】
一方、第1PWM周波数指令信号の受信が無いと判断された場合(ステップS101、No)は、次いで、フライトコントローラ3からの信号が第2PWM周波数指令信号であるか否かが判断される(ステップS102)。そして、第2PWM周波数指令信号の受信がある場合(ステップS102、Yes)は、低PWM周波数指令信号S2がPWM周波数制御信号として出力される(ステップS106)。
【0055】
また、ステップS102において、第2PWM周波数指令信号の受信が無いと判断された場合(ステップS102、No)は、次いで、速度変化率値が演算される(ステップS103)。そして、速度変化率値が判定値V1以上であるか否かが判定される(ステップS104)。速度変化率値が判定値V1以上であると判定された場合(ステップS104、Yes)は、高PWM周波数指令信号S1がPWM周波数制御信号として出力される(ステップS105)。一方、速度変化率値が判定値V1未満であると判定された場合(ステップS104、No)は、低PWM周波数指令信号S2がPWM周波数制御信号として出力される(ステップS106)。
【0056】
指令信号処理部25では、ステップS105又はステップS106が実行されると、再び、ステップS101以降の処理が実行される。即ち、指令信号処理部25では、ステップS101からステップS106までの処理が繰り返し実行されることになる。
【0057】
図3に示す速度制御部26は、フライトコントローラ3から送信されて指令信号処理部25を介して入力されるモータ14の速度指令信号と、回転角センサ14aでの回転角検出値とに基づいて、モータ14の回転速度のフィードバック制御を行うように構成されている。
【0058】
また、
図3に示す電流電圧制御部27では、フライトコントローラ3から送信された出力トルクの指令信号と、電流センサ30で検出された電流検出値とに基づいて、電流指令値が演算される。更に、この電流電圧制御部27では、演算された電流指令値に基づく電圧指令値が演算される。これらの電流指令値及び電圧指令値に基づいて、モータ14の電流及び電圧が制御される。
【0059】
また、
図3に示すPWM信号生成部28は、電流電圧制御部27にて生成された電圧指令値としての正弦波と、後述のPWM周波数制御部29にて生成されたキャリア波としての三角波との比較を行い、PWM波形信号を生成するように構成されている。
【0060】
また、
図3に示すPWM周波数制御部29は、指令信号処理部25から出力されたPWM周波数制御信号に基づいてPWM周波数を制御するように構成されている。ここで、
図6は、PWM周波数制御部29における処理を説明するための図であって、PWM周波数とモータ14の回転速度との関係を模式的に示す図である。
【0061】
PWM周波数制御部29は、PWM周波数制御信号として高PWM周波数指令信号S1が入力されたときには、
図6(a)に示すように、高い一定周波数にて非同期PWM制御が行われるようにPWM周波数を制御する。即ち、この場合、PWM周波数制御部29は、モータ14の回転速度を指令するインバータ23の出力周波数に同期せず、モータ14の回転速度に同期しない高い一定周波数のPWM周波数の三角波を生成する。
【0062】
そして、PWM周波数制御部29は、PWM周波数制御信号として低PWM周波数指令信号S2が入力されたときには、
図6(B)に示すように、モータ14が所定の回転速度未満のときに非同期PWM制御が行われ、モータ14が所定の回転速度以上のときに同期PWM制御が行われるようにPWM周波数を制御する。即ち、この場合、PWM周波数制御部29は、モータ14が所定の回転速度未満のときには、インバータ23の出力周波数に同期せず、モータ14の回転速度に同期しない低い一定周波数のPWM周波数の三角波を生成する。一方、モータ14が所定の回転速度以上になると、インバータ23の出力周波数に同期し、モータ14の回転速度に同期する低
い周波数のPWM周波数の三角波を生成する。
【0063】
また、PWM周波数制御部29は、PWM周波数を変更するように制御するときには、速度制御部26及び電流電圧制御部27に対して、制御ループの制御ゲインを調整するように構成されている。また、PWM周波数制御部29は、高PWM周波数指令信号S1に基づくPWM周波数制御と、低PWM周波数指令信号S2に基づくPWM周波数制御との切替の際に、PWM周波数を漸増もしくは漸減させながら、新たに切り替えられるPWM周波数に移行させるように構成されている。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によると、フライトコントローラ3からモータ駆動制御装置2に対してモータ14の速度指令信号及びPWM周波数指令信号が送信される。そして、フライトコントローラ3は、PWM周波数指令信号として、航空機100の状況に応じて、第1PWM周波数指令信号、第2PWM周波数指令信号、及び第3PWM周波数指令信号のいずれかを送信することができる。例えば、フライトコントローラ3は、モータ14を起動させた後において、航空機100の飛行状態が安定している状況等のようにモータ14の高応答、高速回転の要求が少ない状況では、第2PWM周波数指令信号を送信することができる。更に、フライトコントローラ3は、例えば、天候や気流の状態に応じて航空機100の飛行状態が急激に変化する虞がある状況、或いは、航空機100が離陸動作又は着陸動作を行う状況、等において、起動の際或いは起動後の高出力駆動が必要な際でモータ14の高応答、高速回転、高出力の要求が高い状況が発生すると、第1PWM周波数指令信号を送信することができる。
【0065】
そして、モータ駆動制御装置2では、第1PWM周波数指令信号が受信されたときには、所定の一定周波数のPWM周波数にて非同期PWM制御が行われるように、PWM周波数が制御されることになる。このため、所定の一定周波数が高い周波数に設定されていることで、十分な制御性能を確保でき、航空機100の状況に応じて適切にモータ14の高応答化が図られることになる。
【0066】
一方、モータ駆動制御装置2では、第2PWM周波数指令信号が受信されたときには、上記の所定の一定周波数よりも低い周波数範囲のPWM周波数にてPWM周波数が制御されることになる。このため、モータ14の高応答化の要求が少ない状況の場合にPWM周波数が低い周波数に設定されることになるため、航空機100の状況に応じ、制御性能を確保できる範囲で適切にインバータ23におけるスイッチング素子損失を低減して発熱の抑制を図ることができる。更に、モータ駆動制御装置2では、第2PWM周波数指令信号が受信されたときには、モータ14が所定の回転速度未満のときに非同期PWM制御が行われ、モータ14が所定の回転速度以上のときに同期PWM制御が行われるようにPWM周波数が制御される。このため、モータ14の高応答化の要求が少ない状況の場合においても、モータ14の回転速度に応じて、発熱の抑制とのバランスを図りつつ適切にモータ14の制御性能を確保することができる。
【0067】
従って、本実施形態によると、航空機100の状況に応じて要求される作動状態が変化する機器であるバックアップ用油圧ポンプ12を駆動するモータ14の駆動制御に用いられ、制御性能の確保と発熱の抑制とを更に高い次元でバランスよく達成することができる、モータ駆動制御システム1及びモータ駆動制御装置2を提供することができる。
【0068】
また、本実施形態によると、フライトコントローラ3は、PWM周波数指令信号として、航空機100の状況に応じて、第1PWM周波数指令信号及び第2PWM周波数指令信号に加え、第3PWM周波数指令信号も送信することができる。そして、モータ駆動制御装置2は、第3PWM周波数指令信号を受信したときには、速度変化率値が所定の判定値V1以上のときに高PWM周波数指令信号S1を出力し、速度変化率値が所定の判定値V1未満のときに低PWM周波数指令信号S2を出力する。このため、モータ14の回転速度変化の度合いが大きいときには、適切にモータ14の高応答化が図られ、モータ14の回転速度変化の度合いが小さいときには、航空機100の状況に応じて制御性能を確保できる範囲で適切にインバータ23のスイッチング素子損失を低減して発熱の抑制を図ることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施することができる。
【0070】
(1)上述の実施形態では、本発明のモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御システムによって駆動制御が行われるモータが駆動する機器として、バックアップ用油圧ポンプを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、バックアップ用油圧ポンプ以外の機器を駆動するモータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御システムとして、本発明が適用されてもよい。
【0071】
例えば、機体側油圧源の油圧ポンプがモータによって駆動される電動式の油圧ポンプとして構成されている場合に、航空機に設置される機器としての上記油圧ポンプを駆動するモータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置として、本発明が適用されてもよい。また、舵面を駆動するアクチュエータが電動アクチュエータとして構成されている場合に、航空機に設置される機器としての電動アクチュエータを駆動するモータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御システムとして、本発明が適用されてもよい。また、航空機に設置される機器としてのランディングギア(降着装置)等の脚(航空機の機体を地上で支持する機構)を駆動するモータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置として、本発明が適用されてもよい。
【0072】
(2)上述の実施形態では、コントローラが、PWM周波数指令信号として、第1PWM周波数指令信号及び第2PWM周波数指令信号に加え、第3PWM周波数指令信号も送信する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。コントローラが、PWM周波数指令信号として、第1PWM周波数指令信号及び第2PWM周波数指令信号のみを送信する形態であってもよい。