特許第5784331号(P5784331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 春日電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5784331-放電装置 図000002
  • 特許5784331-放電装置 図000003
  • 特許5784331-放電装置 図000004
  • 特許5784331-放電装置 図000005
  • 特許5784331-放電装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784331
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】放電装置
(51)【国際特許分類】
   H01T 23/00 20060101AFI20150907BHJP
   H01T 19/04 20060101ALN20150907BHJP
【FI】
   H01T23/00
   !H01T19/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-44969(P2011-44969)
(22)【出願日】2011年3月2日
(65)【公開番号】特開2012-182054(P2012-182054A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2014年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝喜
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
【審査官】 佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−135377(JP,A)
【文献】 特許第3611037(JP,B2)
【文献】 特開平09−230668(JP,A)
【文献】 特開2010−140746(JP,A)
【文献】 特開2005−294004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 23/00
H01T 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア供給源に接続す密閉されたケーシングと、上記ケーシング内においてイオン放射側に設けられた複数の放電電極、上記イオン放射側に設けた壁面に形成され、上記放電電極の数よりも多いエア放射用小孔とを備え
上記複数のエア放射用小孔を上記壁面の中心を円の中心とする円周上に等間隔に配置するとともに、上記放電電極の各先端に上記エア放射用小孔対向させ放電装置。
【請求項2】
上記放電極の先端から上記壁までの距離を変更可能にする電極位置調整手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載放電装置。
【請求項3】
上記放電極に印加する高電圧を制御する電源制御回路を、上記ケーシング内に収容したことを特徴とする請求項1または2に記載放電装置。
【請求項4】
上記ケーシング内の圧力を検出する圧力センサを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載放電装置。
【請求項5】
上記ケーシング内のイオン放射側に、上記エア放射用小孔に連続し、このエア放射用小孔の開口より大きな流路断面を有する絶縁材料からなるエア導入路を複数形成し上記エア導入路のうち上記放電電極に対向したエア放射用小孔に連続したエア導入路内に1つの上記放電電極の先端を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防爆仕様が要求される環境において利用可能な放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば静電塗装現場で、導電性プライマーを塗布した後、本塗装を行なう前にワークのアースを確認することが行なわれている。
このように、ワークのアースを確認するのは、静電塗装による本塗装時にワークにはアース線を接続しているが、このアース線が外れていたり、接触不良があったりしてワークのアースが取れていないと、本塗装時にワークが高電位に帯電し、アース帯との間で放電が起こって火花が発生すると危険だからである。
また、アースが不十分な状態で静電塗装を行なっても、きちんとした塗膜が形成されず、塗装不良となってしまうこともある。
【0003】
そのため、アースすべきワークがアースされているかどうかを確認しているが、その方法として、次のような方法が知られている。
特許文献1に記載された方法は、導電性塗料を塗布したワークにアース線を接続するとともに、このワークに対してイオンを放射してその表面を帯電させてから、非接触の表面電位計によってワーク表面の電位を測定するというものである。
ワークに対する導電性塗膜にも欠陥がなく、アース線が接続されてきちんとアースされている場合には、上記電位計で計測される表面電位が低くなるはずである。そのため、計測した表面電位から、ワークのアースが取れているかどうかということが分かる。
このような方法を利用して、ワークのおよその電気抵抗値を求めることもできる(特許文献2参照)。
【0004】
上記のようなアース確認の目的でワークを帯電させるために、イオンを放射する放電装置を用いているが、高圧を印加した放電電極の先端からは、放電による火花が発生することがある。例えば、放電電極に金属粉などの異物が接近したときには、その間に火花が発生して危険である。
特に上記塗装現場など、有機溶剤を用いている現場で火花が発生すれば、それが有機溶剤に引火する可能性がある。
そこで、上記のような引火しやすい環境で使用する放電装置は防爆仕様でなければならない。防爆用放電装置としては、放電電極をケーシングで覆うとともに、イオン風が放射される側の面に、外部からの異物の侵入を防止する大きさの小孔を形成したものが知られている。そして、上記放電電極で生成されたイオンは、ケーシングに供給されるエアとともに、イオン風として上記小孔から放射されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3611037号公報
【特許文献2】特許第4388059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、放電電極の先端側を覆った放電装置では、放電電極で生成されたイオン風が上記開口の小さな小孔で絞られ、ケーシングの外部に放射されるイオンの量が少なくなってしまうという問題があった。このようにワークに対して放射するイオン量が少なくなれば、ワークを帯電させられないことになる。放電電極で生成されるイオン量を増やすためには、印加電圧を高くすることも考えられるが、印加電圧を高くするのにも限界があるし、生成されたイオンが放射されないのでは効率が悪い。
この発明は、ケーシング内への異物の進入を防止しながら、放電電極で生成したイオンを効率的に放射できる放電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、エア供給源に接続す密閉されたケーシングと、上記ケーシング内においてイオン放射側に設けられた複数の放電電極、上記イオン放射側に設けた壁面に形成され、上記放電電極の数よりも多いエア放射用小孔とを備えている。
そして、上記複数のエア放射用小孔を上記壁面の中心を円の中心とする円周上に等間隔に配置するとともに、上記放電電極の各先端に上記エア放射用小孔対向させたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、上記放電極の先端から上記壁までの距離を変更可能にする電極位置調整手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、上記放電極に印加する高電圧を制御する電源制御回路を、上記ケーシング内に収容したことを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、上記ケーシング内の圧力を検出する圧力センサを備えたことを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、上記ケーシング内のイオン放射側に、上記エア放射用小孔に連続し、このエア放射用小孔の開口より大きな流路断面を有する絶縁材料からなるエア導入路を複数形成し上記エア導入路のうち上記放電電極に対向したエア放射用小孔に連続したエア導入路内に1つの上記放電電極の先端を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、ケーシング内への異物の混入を防止しながら、放電電極で生成されたイオンを効率的に放射することができる。
特に、イオンが生成される放電電極に対応した位置以外にも、エア放射用小孔を設けているので、個々の小孔の大きさを異物が混入しない大きさにしながら、ケーシング内を流れるエアの流量を確保することができる。そのため、生成したイオンを上記エアにのせて効率的に放射することができる。
【0013】
第2発明では、電極位置を調整することができるので、電極位置によってイオンの放射量を調整し、目的にあわせた帯電や除電が可能になる。
第3の発明では、ケーシング内に高圧制御回路を収容しているので、ケーシング外には高電圧用ケーブルが不要になる。ケーシングから外部電源までを高電圧用ケーブルで接続する場合には、高電圧用ケーブルの長さが長くなり、その間、高電圧が引き回されることになって危険であるし、上記高電圧用ケーブルから漏れる電流が他の電子機器に電気的ノイズとして影響を与えることもある。しかし、第3の発明によれば、ケーシング外には通常の低電圧ケーブル、例えば直流10V以下のものを用いることができるので、上記のような問題を起こすことがない。
【0014】
第4の発明では、圧力センサを設けてケーシング内の圧力を検出できるので、ケーシング内の圧力が外部の圧力より高くなるようにケーシングに接続したエア供給源を制御して、エアパージを確実に行なうことができる。そして、エアパージを行なってから放電電極に高電圧を印加するように制御すれば、ケーシング内の異物を放出することができるとともに、エア放出用小孔から異物が混入することをより確実に防止できる。
【0015】
第5の発明によれば、ケーシングに供給されたエアが、エア導入路を介してエア放射用小孔に導かれ、ケーシング内のエアが無駄なくエア放射用小孔へ向かう流れとなる。そして、上記エア導入路内に設けた放電電極の先端で生成されたイオンは、上記エアの流れに乗ってより効率的に放射される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は実施形態の放電装置の外観図である。
図2図2は実施形態の後端側カバーを取り外した状態の底面図である。
図3図3は実施形態のイオン放出側を示す平面図である。
図4図4は、図2のIV-IV線断面図である。
図5図5は、図3のV-V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図5に示す放電装置は、筒状のケーシング本体1内に、この発明の放電電極である3本の電極針2(図2,4参照)を備えた防爆用の装置である。
上記ケーシング本体1は、アルミニウムなどの導電性材料で構成した両端を開放した円筒部材であり、その先端には、この発明の壁面を構成する金属製の前面円板3及び押さえ板4を設け、後端をカバー部材5で覆っている。
また、上記ケーシング本体1の先端側内周には、上記前面円板3及び押さえ板4などを取り付けるための取り付けブロック6を圧入するとともに、後端側内周には密閉ブロック7を圧入している。
そして、上記ケーシング本体1であって、上記密閉ブロック7と上記全面円板3との間が、この発明の密閉されたケーシングの内部である。
【0018】
また、上記ケーシング本体1の内周には、図4、5に示すように、ケーシング本体1よりも軸方向長さが短い樹脂製の筒部材8を圧入し、上記取り付けブロック6及び密閉ブロック7はその一部を上記筒部材8内に圧入してケーシング本体1に固定するようにしている。
なお、図4は、図2のIV-IV線断面図であり、図5図3のV-V線断面図である。
【0019】
図4に示す上記取り付けブロック6は、絶縁性樹脂製の円盤状のブロックであり、ケーシング本体1内に圧入するとともに、側面からねじ部材14によって止められている。
そして、この取り付けブロック6には、軸方向に貫通するエア導入路6aを複数形成するとともに、前面には上記前面円板3を嵌める円形凹部6bを備えている。
【0020】
上記前面円板3は、図2、4に示すように、複数のエア放射用小孔3aを形成した金属製の部材で、このエア放射用小孔3aと上記取り付けブロック6のエア導入路6aの中心とが一致するように取り付け、前面円板3の中心を六角穴付きのボルト25によって上記取り付けブロック6に固定している。
さらに、この前面円板3及び取り付けブロック6の表面を、リング状の金属製の押さえ板4で覆うとともに、この押さえ板4を、複数のボルト25によって取り付けブロック6に固定している。
【0021】
なお、この実施形態では、上記エア放射用小孔3a及びエア導入路6aを、それぞれ6個形成している。ただし、その数は6個に限らず、上記エア放射用小孔3aとエア導入路6aとが対応していればよい。
また、上記エア放射用小孔3aは、その開口径を異物の進入を防止できる大きさにしたものであり、この実施形態では全てのエア放射用小孔3aの開口径を1〔mm〕未満の同一寸法にしている。そして、6個のエア放射用小孔3aを前面円板3の中心を円の中心とする円周上に等間隔に配置している(図2参照)。
【0022】
また、上記取り付けブロック6の後方には、3本の電極針2を取り付けている。電極針2の本数は3本に限らず、その本数は必要なイオン量や印加電圧などに応じて決めればよい。但し、上記エア放射用小孔3aの個数の方が電極針2の本数よりも多くなるようにしている。
【0023】
そして、図2,4に示すように、上記3本の電極針2を、電極保持部材9の三方に突出した板状の突出部9aの先端に取り付けている。この電極保持部材9は、ステンレスなど導電性部材で、突出部9aに雌ねじを形成したねじ孔9bを備えている。
また、上記電極針2の外周には雄ねじからなるねじ部2aを形成し、このねじ部2aを上記ねじ孔9bにねじ込んで、電極針2を保持部材9に止める。
さらに、電極針2のねじ部2aには止めナット10をねじ込んで、その位置を固定している。
【0024】
言い換えれば、上記止めナット10を緩めれば、電極針2を回して軸方向に移動させることができる。
従って、この実施形態においては、電極針2の外周に形成したねじ部2aと電極保持部材9のねじ孔9bとによって、この発明の電極位置調整手段を構成することになる。
そして、電極針2の位置を変えると、電極針2の先端からエア放射用小孔3aまでの距離が変わるので、イオンの放射量を変えることができる。
但し、イオン放射量は、上記電極針2の位置だけでなく、電極針2の本数、電極針2に印加する電圧、及びエア流量などの影響を受けるので、これらの要素を、目的にあわせて調整する必要がある。
【0025】
上記のようにして電極針2を保持した電極保持部材9の中心に、樹脂製の支持部材11を挿入固定するとともに、この支持部材11を、取り付けブロック6の中心に取り付けるようにしている。このとき、個々の電極針2はその先端を、それぞれ上記エア放射用小孔3aに対向するようにしている。
なお、上記支持部材11の先端外周にはねじ部11aを設け、取り付けブロック6の中央には上記ねじ部11aとねじ結合するねじ孔6cを形成し、これらねじ部11aとねじ孔6cとによって支持部材11を取り付けブロック6に固定している。
また、上記電極針2と上記前面円板3とは、上記樹脂製の支持部材11及び取り付けブロック6を介在させることによって電気的に絶縁されている。
【0026】
そして、上記電極保持部材9に、後で説明する電源制御回路12を接続し、この電極保持部材9を介して電極針2に高電圧を印加するようにしている。
上記電源制御回路12は、図4に示すように、支持部材13を介して上記取り付けブロック6に取り付けられている。そして、この電源制御回路12は、図示しない昇圧トランスなどを実装したプリント基板からなり、外部電源から供給される電圧を高電圧に変換して電極針2に対して出力する回路である。
上記のように、この実施形態では、高電圧を出力する上記電源制御回路12をケーシング本体1内に設けたので、ケーシング本体1の外部に、高電圧用ケーブルを設ける必要がない。そのため、高電圧ケーブルが引き回されることによる漏電や放電による危険や、他の電子機器へノイズの悪影響を排除することができる。
【0027】
一方、ケーシング本体1の後端側に圧入した密封ブロック7は、図5に示すように、リング状の第1部材7aと、これにねじ部材14で固定した第2部材7bとからなる。そして、第1部材7aの一部を上記筒部材8に挿入するとともに、全体をケーシング本体1に圧入している。
また、図3は、ケーシング本体1の後端側のカバー5をはずした状態の底面図で、上記密封ブロック7の外側の面を示している。
【0028】
図3に示すように、樹脂製の密封ブロック7には、取り付け孔17とエア供給孔19とを貫通させている。
上記取り付け孔17は、図示しない外部のコントローラなどに接続する低電圧用ケーブル15とケーシング内の上記電源制御回路12とを接続するためのコネクタ16(図1参照)を取り付けるための孔で、上記エア供給孔19は、図示しないエア供給源に接続するエアチューブ18(図1参照)を取り付けるための孔である。
なお、カバー部材5には、上記コネクタ16やエアチューブ18を引き出す孔が形成されている。
【0029】
また、図3,5に示すように、密閉ブロック7には、一対の取り付け凹部20,20を形成するとともに、この取り付け凹部20,20のそれぞれには、ケーシング内の圧力を検出するための圧力センサ21,21を取り付けている。これら圧力センサ21は、上記取り付け凹部20の底面を貫通する検出部21aの外周のねじ部21bに、一対の止めナット22,23を取り付け、これら止めナット22,23で取り付け凹部20の底面を挟み込むことによって、密封ブロック7に固定されている。
そして、この圧力センサ21の信号線を、上記コネクタ16を介して図示しない表示部に接続し、その検出値を表示するようにしている。
なお、上記のように、ケーシング本体1に一対の圧力センサ21を設けたのは、一方の圧力センサ21が故障した場合に他方の圧力センサ21の検出信号を確認できるようにするためである。
また、図4中、符号24は、Oリングである。
【0030】
上記のように構成したこの実施形態の防爆用放電装置の作用を以下に説明する。
なお、この放電装置を使用する際には、上記ケーシング本体1にアース線を接続する。
まず、エア供給源からエアチューブ18を介してケーシング本体1内にエアを供給し、上記表示部によって、上記圧力センサ21の検出値が所定の圧力になるのを確認してから、電源をオンにする。
上記所定の圧力とは、ケーシング内に供給されたエアが上記前面円板3のエア放射用小孔3aから確実に放出される圧力である。つまり、外部の圧力より高い圧力である。
【0031】
このように、上記圧力センサ21の圧力を確認することで、ケーシング本体1内、すなわち電極針2の周囲をエアパージしてから、高電圧を印加することができる。
このエアパージによって、電極針2に高電圧を印加する前に、ケーシング本体1内の異物を放出することができるとともに、高電圧印加時に、エア放射用小孔3aからケーシング本体1内に上記エア放射用小孔3aよりも小さい異物が混入しないようにできる。
従って、高電圧を印加した状態の上記電極針2に、金属粉などの異物が接近して、放電による火花が発生することを防止できる。
【0032】
上記のように、エア供給源からケーシング本体1内にエアを供給すると、そのエアは上記6個のエア放射用小孔3aから放射される。このとき、エアは取り付けブロック6に形成したエア導入路6aによってエア放射用小孔3aに導かれるので、ケーシング1内のエアは、あまり乱れることなく軸方向流れとなる。
このような軸方向のエア流が形成された状態で、上記電極針2に高電圧を印加すると電極針2の先端側に生成されたイオンが上記エア流に乗ってイオン風として、電極針2に対向するエア放射用小孔3aから放射される。
この実施形態では、電極針2と対向する位置にエア放射小孔3aを設けているので、生成されたイオンは直ちにエア流に乗って放射され、イオン風が外部に放射されるまでに、ケーシング本体1の側面などに衝突するなどして中和されにくくしている。つまり、生成されたイオンを効率的に放射できる。
【0033】
なお、上記イオン風は、主に、電極針2に対応したエア放射用小孔3aから放射され、他のエア放射用小孔3aからはイオン濃度が低いエアが放射されることになる。このように、電極針2の先端と対向しないエア放射用小孔3aは、イオンがほとんど放射されないが、このようなエア放射用小孔3aを設けた理由は次のとおりである。
この防爆用放電装置は、ケーシング本体1内に異物が混入し難いように、エア放射用小孔3aの直径を1〔mm〕未満にしているが、このようにエア放射用小孔3aの直径を小さくすれば、エアがスムーズに流れないことがある。エアがスムーズに流れなければ、生成されたイオンは、ケーシング本体1内で中和してしまい、イオン風が外部に放射されなくなる。そこで、この実施形態では、エアの供給流量を確保してスムーズな流れを作るために、上記エア放射用小孔3aの直径を小さくした分、エア放射用小孔3aの個数を多くしているのである。
【0034】
このようにエア放射用小孔3aの数を多くすれば、個々のエア放射用小孔3aの開口径を小さくしても、全開口によるエアの流路断面積を大きくすることができ、イオン風がスムーズに放射される。
従って、この実施形態の防爆用放電装置は、個々のエア放射用小孔3aの開口径が小さくても、効率的にイオン風を放射でき、これによって十分な帯電ができる。
また、エア放射用小孔3aの数を、電極針2の本数よりも多くしたのは、電極針2の本数に応じてエア放射用小孔3aの総数を設定するためである。なぜなら、電極針2の本数が多くなればそれだけ多くのイオンが生成されるので、そのイオンを外部に放射するためには、より多くのエア流量が必要になるからである。
【0035】
以上のように、この実施形態の防爆用放電装置は、密閉されたケーシング内に設けた電極針2の周囲に、火花発生の原因となるような異物の混入がないようにしながら、上記電極針2で生成されたイオンを無駄なく効率的に、放射できるものである。
なお、上記防爆用放電装置は、エアを供給してケーシング内の圧力が処置の圧力以上になったことを確認してから、電極針2に高電圧を印加するようにしているが、上記圧力の確認や電源の制御は、作業員が手動で行なうようにしてもよいし、コントローラによって自動的に制御するようにしてもよい。
コントローラを用いる場合には、上記コントローラに上記圧力センサ21の信号線を接続し、その検出信号に応じて上記電源制御回路12の出力のオン・オフを制御するようにする。
【0036】
また、上記防爆用放電装置を、アースチェッカーとして利用する場合には、上記コントローラに、エア供給源及び表面電位計を接続し、エア供給の開始、電源のオン、表面電位計の測定開始などのタイミングを自動制御することもできる。
さらに、上記実施形態の防爆用放電装置は、上記電源制御回路12を、その出力電圧の極性をプラス・マイナスに交互に変更可能なものとすることで、帯電装置としてだけでなく、プラス・マイナスのイオンを交互に放射する防爆用の除電装置としても利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明の防爆用放電装置は、防爆仕様が要求される様々な環境において、帯電装置あるいは除電装置として有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 ケーシング本体
2 電極針
3 前面円板
3a エア放射用小孔
6a エア導入路
7 密閉ブロック
12 電源制御回路
18 エアチューブ
21 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5