特許第5784336号(P5784336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5784336化合物、及びその製造方法、並びにリン酸オセルタミビルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784336
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】化合物、及びその製造方法、並びにリン酸オセルタミビルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/30 20060101AFI20150907BHJP
   C07C 227/10 20060101ALI20150907BHJP
   C07C 227/32 20060101ALI20150907BHJP
   C07C 231/00 20060101ALI20150907BHJP
   C07C 233/52 20060101ALI20150907BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20150907BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150907BHJP
【FI】
   C07C229/30CSP
   C07C227/10
   C07C227/32
   C07C231/00
   C07C233/52
   !C07B53/00 B
   !C07B53/00 G
   !C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2011-50720(P2011-50720)
(22)【出願日】2011年3月8日
(65)【公開番号】特開2012-188356(P2012-188356A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173913
【氏名又は名称】公益財団法人微生物化学研究会
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 正勝
(72)【発明者】
【氏名】山次 健三
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 LOUKAS,V. et al.,Efficient protocols for the synthesis of enantiopure γ-amino acids with proteinogenic side chains,Journal of Peptide Science,2003年,Vol.9, No.5,p.312-319
【文献】 MURRAY,W.V. et al.,Synthesis of densely functionalized pyrrolidinone templates by an intramolecular oxo-Diels-Alder rea,Tetrahedron Letters,2002年,Vol.43, No.41,p.7389-7392
【文献】 DRAGOVICH,P.S. et al.,Structure-Based Design, Synthesis, and Biological Evaluation of Irreversible Human Rhinovirus 3C Pro,Journal of Medicinal Chemistry,1998年,Vol.41, No.15,p.2819-2834
【文献】 WEI,Z-Y. and KNAUS,E.E.,A regioselective tandem reduction ― Wittig-Horner reaction involving the α-ester moiety of diethyl aspartate or glutamate,Tetrahedron Letters,1994年,Vol.35, No.15,p.2305-2308
【文献】 MISITI,D. et al.,Selective catalytic hydrogenation of γ-amino α,β-unsaturated esters in the presence of hydrogenable protecting groups,Synthesis,1999年,No.5,p.873-877
【文献】 KIPASSA,N.T. et al.,Efficient Short Step Synthesis of Corey's Tamiflu Intermediate,Organic Letters,2008年,Vol.10, No.5,p.815-816
【文献】 BROMFIELD,K.M. et al.,An iron carbonyl approach to the influenza neuraminidase inhibitor oseltamivir,Chemical Communications(Cambridge, United Kingdom),2007年,No.30,p.3183-3185
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 229/00
C07C 227/00
C07C 231/00
C07C 233/00
C07B 53/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【請求項2】
下記一般式(5)で表されることを特徴とする化合物。
【化2】
ただし、前記一般式(5)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【請求項3】
下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを反応させる反応工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【化3】
ただし、前記一般式(2)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記一般式(4)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【請求項4】
請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物の三重結合を二重結合に還元する還元工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の一般式(5)で表される化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の一般式(5)で表される化合物を環化する環化工程を含むことを特徴とする下記一般式(6)で表される化合物の製造方法。
【化4】
ただし、前記一般式(6)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【請求項6】
下記一般式(7)で表される化合物のNR基をNHR基(ただし、前記Rは、アミノ基の保護基であって、前記R及びRと異なる保護基を表す)に変換する変換工程を含むことを特徴とする下記一般式(8)で表される化合物の製造方法。
【化5】
ただし、前記一般式(7)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【化6】
ただし、前記一般式(8)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、アミノ基の保護基であって、前記R及びRと異なる保護基を表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【請求項7】
下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを反応させ、請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(1)で表される化合物の三重結合を二重結合に還元し、請求項2に記載の一般式(5)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(5)で表される化合物を環化し、下記一般式(6)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(6)で表される化合物のカルボニル基を水酸基に還元し、下記一般式(7)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(7)で表される化合物のNR基をNHR基(ただし、前記Rは、アミノ基の保護基であって、前記R及びRと異なる保護基を表す)に変換し、下記一般式(8)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(8)で表される化合物を脱水反応により脱水し、下記一般式(9)で表される化合物を得る工程を少なくともこの順で含むことを特徴とする下記一般式(9)で表される化合物の製造方法。
【化7】
ただし、前記一般式(2)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記一般式(4)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【化8】
ただし、前記一般式(6)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【化9】
ただし、前記一般式(7)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【化10】
ただし、前記一般式(8)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、アミノ基の保護基であって、前記R及びRと異なる保護基を表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【化11】
ただし、前記一般式(9)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記カルボキシル基の保護基は、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかである。前記アミノ基の保護基は、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、及び置換基を有していてもよいベンジル基のいずれかである。
【請求項8】
請求項3に記載の一般式(1)で表される化合物の製造方法、請求項4に記載の一般式(5)で表される化合物の製造方法、請求項5に記載の一般式(6)で表される化合物の製造方法、及び請求項6に記載の一般式(8)で表される化合物の製造方法の少なくともいずれかを含むことを特徴とするリン酸オセルタミビルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、及びその製造方法、並びにリン酸オセルタミビルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥インフルエンザウイルスの変異によりH5N1型などの新型インフルエンザが世界的に大流行して多数の死亡者が出ることが危惧されている。新型インフルエンザに対しては、抗ウイルス薬であるリン酸オセルタミビル(商標名「タミフル」)が著効を示すことが知られており、感染予防のためにこの薬剤を国家機関が大量に備蓄するようになっている。このため、リン酸オセルタミビルの需要が国際的に急速に高まっており、安価に大量供給する手段の開発が求められている。
【0003】
リン酸オセルタミビルの合成方法としてはシキミ酸を出発原料として用いる方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、シキミ酸はトウシキミの実(八角)から抽出乃至精製するか、又は大腸菌によるD−グルコースからの発酵を経て調製されるが、これらのプロセスは時間及びコストがかかるという問題を有している。また、トウシキミの実などの植物原料は安定的な供給が困難になる場合もある。したがって、リン酸オセルタミビルを容易に入手可能な原料化合物から効率的に化学合成する手段の開発が求められている。
【0004】
例えば、1,3−ブタジエン及びアクリル酸からリン酸オセルタミビルを合成する方法、及びその合成における中間体が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
また、非特許文献2に記載のリン酸オセルタミビルの合成に至る中間体としてのジエン化合物(図1に記載の化合物A)を合成する他の方法が提案されている(例えば、非特許文献3、及び図1参照)。
しかし、これらの提案の技術は、工業的観点からは十分とはいえない。例えば、合成物がラセミ体であること、及び高い毒性を持つチオール化合物を量論的に用いていることなどの問題があるためである。
【0005】
したがって、リン酸オセルタミビルの工業的製造に有用な中間体、及びその製造方法、並びに前記中間体を用いたリン酸オセルタミビルの製造方法の提供が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 119, 681, 1997
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 128, 6310, 2006
【非特許文献3】Org. Let.,2008,10,815
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、リン酸オセルタミビルの工業的製造に有用な中間体、及びその製造方法、並びに前記中間体を用いたリン酸オセルタミビルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
<2> 下記一般式(5)で表されることを特徴とする化合物である。
【化2】
ただし、前記一般式(5)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
<3> 下記一般式(6)で表されることを特徴とする化合物である。
【化3】
ただし、前記一般式(6)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
<4> 下記一般式(7)で表されることを特徴とする化合物である。
【化4】
ただし、前記一般式(7)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
<5> 下記一般式(8)で表されることを特徴とする化合物である。
【化5】
ただし、前記一般式(8)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
<6> 下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを反応させる反応工程を含むことを特徴とする前記<1>に記載の一般式(1)で表される化合物の製造方法である。
【化6】
ただし、前記一般式(2)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記一般式(4)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
<7> 前記<1>に記載の一般式(1)で表される化合物の三重結合を二重結合に還元する還元工程を含むことを特徴とする前記<2>に記載の一般式(5)で表される化合物の製造方法である。
<8> 前記<2>に記載の一般式(5)で表される化合物を環化する環化工程を含むことを特徴とする<3>に記載の一般式(6)で表される化合物の製造方法である。
<9> 前記<3>に記載の一般式(6)で表される化合物のカルボニル基を水酸基に還元する還元工程を含むことを特徴とする前記<4>に記載の一般式(7)で表される化合物の製造方法である。
<10> 前記<4>に記載の一般式(7)で表される化合物のNR基をNHR基(ただし、前記Rは、アミノ基の保護基であって、前記R及びRと異なる保護基を表す)に変換する変換工程を含むことを特徴とする前記<5>に記載の一般式(8)で表される化合物の製造方法である。
<11> 前記<5>に記載の一般式(8)で表される化合物を脱水反応により脱水する脱水工程を含むことを特徴とする下記一般式(9)で表される化合物の製造方法である。
【化7】
ただし、前記一般式(9)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
<12> 下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを反応させ、前記<1>に記載の一般式(1)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(1)で表される化合物の三重結合を二重結合に還元し、前記<2>に記載の一般式(5)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(5)で表される化合物を環化し、前記<3>に記載の一般式(6)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(6)で表される化合物のカルボニル基を水酸基に還元し、前記<4>に記載の一般式(7)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(7)で表される化合物のNR基をNHR基(ただし、前記Rは、アミノ基の保護基であって、前記R及びRと異なる保護基を表す)に変換し、前記<5>に記載の一般式(8)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(8)で表される化合物を脱水反応により脱水し、下記一般式(9)で表される化合物を得る工程を少なくともこの順で含むことを特徴とする下記一般式(9)で表される化合物の製造方法である。
【化8】
ただし、前記一般式(2)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記一般式(4)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【化9】
ただし、前記一般式(9)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
<13> 前記<6>に記載の一般式(1)で表される化合物の製造方法、前記<7>に記載の一般式(5)で表される化合物の製造方法、前記<8>に記載の一般式(6)で表される化合物の製造方法、前記<9>に記載の一般式(7)で表される化合物の製造方法、前記<10>に記載の一般式(8)で表される化合物の製造方法、及び前記<11>に記載の一般式(9)で表される化合物の製造方法の少なくともいずれかを含むことを特徴とするリン酸オセルタミビルの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、リン酸オセルタミビルの工業的製造に有用な中間体、及びその製造方法、並びに前記中間体を用いたリン酸オセルタミビルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、リン酸オセルタミビルの合成に至る中間体としてのジエン化合物を合成する方法の一例を示す合成スキームである。
図2図2は、実施例6における化合物6−1のH NMRスペクトルである。
図3図3は、実施例7における化合物7−1のH NMRスペクトルである。
図4図4は、実施例8における化合物8−1のH NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書、及び特許請求の範囲に記載された化学式及び一般式の立体配置は、特に言及しない場合には、絶対配置を表す。
【0012】
(一般式(1)で表される化合物、及びその製造方法)
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
本発明の化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを反応させる反応工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0013】
<一般式(1)で表される化合物>
【化10】
ただし、前記一般式(1)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0014】
前記R及びRにおけるカルボキシル基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Greenら、Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition,1999,John Wiley & Sons, Inc.などの成書を参照することができる。
前記カルボキシル基の保護基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、置換基を有していてもよいアリール基などが挙げられる。
前記置換基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。前記炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。前記置換基を有していてもよいアルキル基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、フェニル基などが挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。前記フェニル基は、更に置換基を有していてもよい。前記フェニル基における置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン化された炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。 前記置換基を有していてもよいアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ベンジル基などが挙げられる。
前記トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられる。
前記置換基を有していてもよいアリール基におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフタレン基、アントラセン基などが挙げられる。前記置換基を有していてもよいアリール基における置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン化された炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
これらの中でも、前記Rとしては、エチル基が、保護基の除去、交換を行わずに、リン酸オセルタミビルに誘導できる、即ち、リン酸オセルタミビル中のエチルエステルをエステル交換の必要なく導入できることから、リン酸オセルタミビルの製造工程を短縮できる点で好ましい。
また、これらの中でも、前記Rとしては、置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0015】
前記R及びRにおけるアミノ基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、置換基を有していてもよいベンジル基などが挙げられる。また、前記R及び前記Rは、一緒になって環構造の保護基を形成している場合は、例えば、フタロイル基(Phth基)などが挙げられる。
前記置換基を有していてもよいベンジル基における置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン化された炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。前記置換基を有していてもよいベンジル基としては、例えば、p−メトキシベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、以降の変換で高収率を与え、かつ脱保護が容易な点で、アリル基、p−メトキシベンジル基が好ましく、アリル基がより好ましい。
【0016】
前記一般式(1)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記本発明の化合物の製造方法が好ましい。
【0017】
<一般式(1)で表される化合物の製造方法>
本発明の化合物の製造方法は、前記一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを反応させる反応工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【化11】
ただし、前記一般式(2)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。前記一般式(4)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0018】
前記一般式(2)におけるRは、前記一般式(1)中のRと同じである。好ましい態様も同じである。
前記一般式(3)におけるR及びRは、前記一般式(1)中のR及びRとそれぞれ同じである。好ましい態様も同じである。
前記一般式(4)におけるRは、前記一般式(1)中のRと同じである。好ましい態様も同じである。
【0019】
−反応工程−
前記反応工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、触媒を用いて行うことが好ましい。
また、前記反応工程は、触媒的不斉反応により行うことが好ましい。
前記触媒としては、銅錯体が好ましい。前記銅錯体としては、臭化銅(I)と配位子との銅錯体が好ましい。
前記配位子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピリジンビスオキサゾリン配位子などが挙げられる。前記ピリジンビスオキサゾリン配位子としては、例えば、下記一般式(A)で表される化合物などが挙げられる。
【化12】
ただし、前記一般式(A)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びアラルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子(酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子は、水素原子及び置換基のいずれかを有する。)のいずれかを表す。なお、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基は、置換基を有していてもよい。
前記アルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。前記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基などが挙げられる。
前記アルケニル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。前記炭素数2〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、骨格部分の炭素数が4〜14のアリール基が挙げられる。前記骨格部分としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。これらの中でも、前記骨格部分としてはフェニル基が好ましい。
前記アラルキル基(アリールアルキル基)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記一般式(A)で表される化合物としては、下記構造で表される(S,S)−2,6−ビス(4,5−ジヒドロ−4−フェニル−2−オキサゾリル)ピリジン((S)−ph−pybox)が好ましい。このような光学活性な配位子を用いることにより触媒的不斉合成が可能となる。
【化13】
【0020】
前記触媒としては、臭化銅(I)と(S,S)−2,6−ビス(4,5−ジヒドロ−4−フェニル−2−オキサゾリル)ピリジン((S)−ph−pybox)との組合せが、製造収率及び光学収率の点で好ましい。
前記反応工程における前記触媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(2)で表される化合物に対して、1mol%〜5mol%が好ましい。
【0021】
前記反応工程において使用される溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、THF(テトラヒドロフラン)、酢酸エチルなどが挙げられる。
【0022】
前記反応工程における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃〜25℃が好ましい。
前記反応工程における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3時間〜12時間が好ましい。
前記反応工程における圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、大気圧が好ましい。
【0023】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、立体異性体の混合物として得られる場合もあるが、この場合も本発明の範囲に包含される。好ましくは、光学活性体(S体が過剰)である。
【0024】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、リン酸オセルタミビルを工業的に製造するための中間体として有用である。
【0025】
(一般式(5)で表される化合物、及びその製造方法)
<一般式(5)で表される化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(5)で表される化合物である。
【化14】
ただし、前記一般式(5)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0026】
前記一般式(5)におけるR、R、R及びRの具体例としては、前記一般式(1)中のR、R、R及びRの説明で挙げられた具体例とそれぞれ同じものが挙げられる。好ましい態様も同じである。
【0027】
前記一般式(5)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記本発明の化合物の製造方法が好ましい。
【0028】
<一般式(5)で表される化合物の製造方法>
本発明の化合物の製造方法は、下記一般式(5)で表される化合物の製造方法であって、前記一般式(1)で表される化合物の三重結合を二重結合に還元する還元工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【化15】
【0029】
−還元工程−
前記還元工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、還元剤を用いる工程が挙げられる。
前記還元剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、テトラメチルジシロキサンが好ましい
また、前記還元工程では、触媒を用いることが好ましい。前記触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、パラジウム化合物が好ましい。前記パラジウム化合物としては、例えば、酢酸パラジウム等の2価のパラジウム化合物、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))等の0価のパラジウム化合物などが挙げられる。
【0030】
前記還元工程において使用される溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)などが挙げられる。
【0031】
前記還元工程における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜60℃が好ましい。
前記還元工程における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、12時間24時間が好ましい。
【0032】
本発明の一般式(5)で表される化合物は、立体異性体の混合物として得られる場合もあるが、この場合も本発明の範囲に包含される。好ましくは、光学活性体(S体が過剰)である。
【0033】
本発明の前記一般式(5)で表される化合物は、リン酸オセルタミビルを工業的に製造するための中間体として有用である。
【0034】
(一般式(6)で表される化合物、及びその製造方法)
<一般式(6)で表される化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(6)で表される化合物である。
【化16】
ただし、前記一般式(6)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
なお、前記一般式(6)で表される化合物は、ケト−エノール互変異性体である。
【0035】
前記一般式(6)におけるR、R及びRの具体例としては、前記一般式(1)中のR、R及びRの説明で挙げられた具体例とそれぞれ同じものが挙げられる。好ましい態様も同じである。
【0036】
前記一般式(6)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記本発明の化合物の製造方法が好ましい。
【0037】
<一般式(6)で表される化合物の製造方法>
本発明の化合物の製造方法は、前記一般式(6)で表される化合物の製造方法であって、前記一般式(5)で表される化合物を環化する環化工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【化17】
【0038】
−環化工程−
前記環化工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディークマン環化により行うことができる。
前記ディークマン環化においては、温和な条件で反応を行うことができ、かつ高反応率である点でリチウムヘキサメチルジシラジドを用いることが好ましい。例えば、カリウム tert−ブトキシド(KOt−Bu)を用いると、副生成物が生成することがあり、水素化ナトリウムを用いると、反応が進行しない。
【0039】
前記環化工程において使用される溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)などが挙げられる。
【0040】
前記環化工程における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、−40℃〜−20℃が好ましい。
前記環化工程における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30分間〜2時間が好ましい。
【0041】
本発明の一般式(6)で表される化合物は、立体異性体の混合物として得られる場合もあるが、この場合も本発明の範囲に包含される。好ましくは、光学活性体(S体が過剰)である。
【0042】
本発明の前記一般式(6)で表される化合物は、リン酸オセルタミビルを工業的に製造するための中間体として有用である。
【0043】
(一般式(7)で表される化合物、及びその製造方法)
<一般式(7)で表される化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(7)で表される化合物である。
【化18】
ただし、前記一般式(7)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R及びRは、それぞれ独立にアミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0044】
前記一般式(7)におけるR、R及びRの具体例としては、前記一般式(1)中のR、R及びRの説明で挙げられた具体例とそれぞれ同じものが挙げられる。好ましい態様も同じである。
【0045】
前記一般式(7)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記本発明の化合物の製造方法が好ましい。
【0046】
<一般式(7)で表される化合物の製造方法>
本発明の化合物の製造方法は、前記一般式(7)で表される化合物の製造方法であって、前記一般式(6)で表される化合物のカルボニル基を水酸基に還元する還元工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【化19】
【0047】
−還元工程−
前記還元工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、LiAlH、NaBHなどの還元剤を用いる工程が挙げられる。前記NaBHを用いる場合には、通常、メタノール、エタノールなどのアルコール存在下で還元が行われる。
【0048】
前記還元工程において使用される溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、トルエン、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)などが挙げられる。
【0049】
前記還元工程における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、−40℃〜0℃が好ましい。
前記還元工程における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30分間〜2時間が好ましい。
【0050】
本発明の一般式(7)で表される化合物は、立体異性体の混合物として得られる場合もあるが、この場合も本発明の範囲に包含される。好ましくは、光学活性体(S体が過剰)である。
【0051】
本発明の前記一般式(7)で表される化合物は、リン酸オセルタミビルを工業的に製造するための中間体として有用である。
【0052】
(一般式(8)で表される化合物、及びその製造方法)
<一般式(8)で表される化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(8)で表される化合物である。
【化20】
ただし、前記一般式(8)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0053】
前記一般式(8)におけるRの具体例としては、前記一般式(1)中のRの説明で挙げられた具体例と同じものが挙げられる。好ましい態様も同じである。
前記一般式(8)のRにおけるアミノ基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1)のR及びRの説明において記載したアミノ基の保護基が挙げられる。これらの中でも、tert−ブトキシカルボニル基が、後の脱保護が容易である点で好ましい。
【0054】
前記一般式(8)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記本発明の化合物の製造方法が好ましい。
【0055】
<一般式(8)で表される化合物の製造方法>
本発明の化合物の製造方法は、前記一般式(8)で表される化合物の製造方法であって、前記一般式(7)で表される化合物のNR基をNHR基(ただし、前記Rは、アミノ基の保護基であって、前記R及びRと異なる保護基を表す)に変換する変換工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【化21】
【0056】
−変換工程−
前記変換工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記R、及びRを脱保護した後に、保護基である前記Rを付加する工程が挙げられる。
【0057】
前記変換工程において使用される溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化メチレン、メタノール、エタノール、トルエン、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)などが挙げられる。
【0058】
前記変換工程における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃〜40℃が好ましい。
前記変換工程における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2時間〜8時間が好ましい。
【0059】
前記R、及びRがアリル基であって、前記Rがtert−ブトキシカルボニル基の場合には、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)及びN,N−ジメチルバルビツル酸を用いて前記R、及びRであるアリル基を脱保護した後に、二炭酸ジ−tert−ブチルを用い前記Rであるtert−ブトキシカルボニル基を付加する工程が好ましい。
【0060】
前記一般式(8)で表される化合物は、立体異性体の混合物として得られる場合もあるが、この場合も本発明の範囲に包含される。ただし、ラセミ体ではなく光学活性体(S体が過剰)である。
【0061】
本発明の前記一般式(8)で表される化合物は、リン酸オセルタミビルを工業的に製造するための中間体として有用である。
【0062】
(一般式(9)で表される化合物の製造方法)
<第一の製造方法>
本発明の化合物の製造方法(第一の製造方法)は、下記一般式(9)で表される化合物の製造方法であって、前記一般式(8)で表される化合物を脱水反応により脱水する脱水工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【化22】
ただし、前記一般式(9)中、Rは、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。Rは、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0063】
前記一般式(9)におけるRの具体例としては、前記一般式(1)中のRの説明で挙げられた具体例と同じものが挙げられる。好ましい態様も同じである。
前記一般式(9)におけるRの具体例としては、前記一般式(8)中のRの説明で挙げられた具体例と同じものが挙げられる。好ましい態様も同じである。
【0064】
前記脱水工程における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、−20℃〜40℃が好ましく、−2℃〜30℃がより好ましい。
前記脱水工程における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30分間〜5時間が好ましく、1.5時間〜3時間がより好ましい。
【0065】
前記脱水工程においては、塩基を用いることが好ましい。前記塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ジアザビシクロ化合物が好ましい。
前記ジアザビシクロ化合物としては、例えば、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられる。これらの中でも、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが安価に入手可能である点で好ましい。
また、前記脱水工程においては、前記ジアザビシクロ化合物と第3級アミンを併用することが好ましい。前記ジアザビシクロ化合物と前記第3級アミンを併用することにより、高収率で、前記一般式(9)で表される化合物を得ることができる。
前記第3級アミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアルキルアミン、トリアリルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルフォリン、4,4’−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス−モルフォリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、テトラメチルブタンジアミン、ビス(2,2−モルフォリノエチル)エーテル、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルなどが挙げられる。
前記トリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルアミルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミンなどが挙げられる。
これらの中でも、最も汎用性が高く容易に入手可能である点から、アルキルアミンが好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。
【0066】
前記脱水工程における前記ジアザビシクロ化合物の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(8)で表される化合物1mol対して、0.5mol〜10molが好ましく、2mol〜5molがより好ましい。前記添加量が、0.5mol未満であると、反応率が低下することがあり、10molを超えると、基質の分解が生じることがある。前記添加量が、前記より好ましい範囲内であると、反応率に優れる点で有利である。
前記脱水工程における前記第3級アミンの添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(8)で表される化合物1mol対して、0.5mol〜10molが好ましく、2mol〜5molがより好ましい。前記添加量が、0.5mol未満であると、反応率が低下することがあり、10molを超えると、副生成物を生じることがある。前記添加量が、前記より好ましい範囲内であると、反応率に優れる点で有利である。
【0067】
<第二の製造方法>
本発明の化合物の製造方法(第二の製造方法)は、前記一般式(9)で表される化合物の製造方法であって、
前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(3)で表される化合物と、前記一般式(4)で表される化合物とを反応させ、前記一般式(1)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(1)で表される化合物の三重結合を二重結合に還元し、前記一般式(5)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(5)で表される化合物を環化し、前記一般式(6)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(6)で表される化合物のカルボニル基を水酸基に還元し、前記一般式(7)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(7)で表される化合物のNR基をNHR基(ただし、前記Rは、アミノ基の保護基であって、前記R及びRと異なる保護基を表す)に変換し、前記一般式(8)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(8)で表される化合物を脱水反応により脱水し、前記一般式(9)で表される化合物を得る工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0068】
前記製造方法における各工程は、上述の本発明の製造方法における各工程と同じである。
即ち、前記一般式(1)で表される化合物を得る工程は、本発明の前記一般式(1)で表される化合物の製造方法において記載した工程と同じである。好ましい態様も同じである。
前記一般式(5)で表される化合物を得る工程は、本発明の前記一般式(5)で表される化合物の製造方法における還元工程と同じである。好ましい態様も同じである。
前記一般式(6)で表される化合物を得る工程は、本発明の前記一般式(6)で表される化合物の製造方法における環化工程と同じである。好ましい態様も同じである。
前記一般式(7)で表される化合物を得る工程は、本発明の前記一般式(7)で表される化合物の製造方法における還元工程と同じである。好ましい態様も同じである。
前記一般式(8)で表される化合物を得る工程は、本発明の前記一般式(8)で表される化合物の製造方法における変換工程と同じである。好ましい態様も同じである。
前記一般式(9)で表される化合物を得る工程は、本発明の前記一般式(9)で表される化合物の製造方法(第一の製造方法)における脱水工程と同じである。好ましい態様も同じである。
【0069】
(リン酸オセルタミビルの製造方法)
本発明のリン酸オセルタミビルの製造方法は、前記一般式(1)で表される化合物の製造方法、前記一般式(5)で表される化合物の製造方法、前記一般式(6)で表される化合物の製造方法、前記一般式(7)で表される化合物の製造方法、前記一般式(8)で表される化合物の製造方法、及び前記一般式(9)で表される化合物の製造方法の少なくともいずれかを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0070】
前記リン酸オセルタミビルは、商標名「タミフル」として知られ、下記構造で表される化合物である。
【化23】
【0071】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、前記一般式(9)で表される化合物を用いて、前記リン酸オセルタミビルを合成する工程が挙げられる。該工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、J. Am. Chem. Soc., 128, 6310, 2006に記載の工程が挙げられる。この工程の一例としては、例えば、以下の合成スキームで表される工程が挙げられる。
【化24】
上記合成スキームにおいて、「Et」は「エチル基」を表す。「Boc」及び「t−Boc」は「tert−ブトキシカルボニル基」を表す。「NBA」は「N−ブロモアセトアミド」を表す。「Ac」は「アセチル基」を表す。「KHMDS」は、「カリウムヘキサメチルジシラジド」を表す。「Bu」は「n−ブチル基」を表す。「DME」は「ジメトキシエタン」を表す。「TFA」は「トリフルオロ酢酸」を表す。「NBA」、「KHMDS」及び「BuNBr」の括弧中の数値は、当量を表す。
なお、上記合成スキーム中に示した反応条件及び試薬は、一例であって、前記工程は、その条件及び試薬に限定されるものではない。
【実施例】
【0072】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、実施例中、「Me」は「メチル基」を表す。「Et」は「エチル基」を表す。「Boc」は、「tert−ブトキシカルボニル基」を表す。
【0073】
(実施例1)
<化合物1−1の合成>
よく乾燥した試験管に1価臭化銅(和光ケミカル社製、2.9mg、0.0200mmol、5mol%)と下記配位子A−1(アルドリッチ社製、8.1mg、0.0220mmol、5.5mol%)を入れ、室温下攪拌しながらトルエン(1.6mL)を加えた。室温にて30分攪拌した後、モレキュラーシーブス4A(240mg)、下記化合物4−1(和光ケミカル社製、0.0811mL、0.800mmol、2当量)、下記化合物2−1(0.0500mL、0.400mmol、1当量、Coffin, B.; Robbins, R. F. J. Chem. Soc. C 1996, 334.に従って合成)、及び下記化合物3−1(東京化成工業社製、0.0988mL、0.800mmol、2当量)を順次加え、室温にて14時間攪拌した。続いて、濾過、濃縮を行い、更にシリカゲル精製(ヘキサン/酢酸エチル=8/1→6/1(体積比))により、下記化合物1−1(109.9mg、0.358mmol、収率89%、43%ee)を得た。
【化25】
【化26】
【0074】
上記で得られた化合物1−1のRf(Relative to Front)値、H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル、IRスペクトル、ESI−MSスペクトル、ESI-HRMSスペクトル、比旋光度、及びHPLCデータを示す。
Rf値:0.3(ヘキサン/酢酸エチル=6/1(体積比))
H NMR(CDCl、400 MHz): δ5.73(m,2H), 5.21(d,J=17.0Hz,2H), 5.11(d,J=10.5Hz,2H), 4.21(q,J=7.1Hz,2H), 4.11(q,J=7.0Hz,2H), 3.71 (dd,J=7.8Hz, 7.1Hz,1H), 3.28(m,2H), 2.87(dd,J=14.0Hz, 7.8Hz,2H), 2.42(m,2H), 1.99(m,2H), 1.30(t,J=7.1Hz,3H), 1.24 (t,J=7.0Hz,3H)
13C NMR(CDCl,100MHz) δ172.9, 153.6, 135.9, 117.7, 85.9, 77.6, 62.0, 60.5, 53.7, 51.3, 30.9, 27.9, 14.3, 14.0
IR(neat,cm−1) 3081, 2981, 2819, 2225, 1740, 1712
ESI−MS m/z 330.2 [M+Na]
ESI−HRMS Calcd for C1725NONa [M+Na]: 330.1676, Found: 330.1674
[α]22=−40.1(34%ee,c=0.97,CHCl
HPLC(ヘキサン/イソプロパノール=50/1(体積比),CHIRALPAK IC,0.5mL/min,254nm) t=17.8min(minor), 19.6min(major).
【0075】
(実施例2)
<化合物1−2の合成>
実施例1において、化合物3−1を下記化合物3−2(Anastasi, C.; Hantz, O.; Clercq, E. D.; Pannecouque, C.; Clayette, P.; Dereuddre−Bosquet, N.; Dormont, D.; Gondois−Rey, F.; Hirsch, I.; Kraus, J.−L. J. Med. Chem. 2004, 47, 1183.に従って合成)に代えた以外は、実施例1と同様にして、合成を行い、下記化合物1−2(収率83%、25%ee)を得た。
【化27】
【0076】
上記で得られた化合物1−2のRf(Relative to Front)値、H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル、IRスペクトル、ESI−MSスペクトル、ESI-HRMSスペクトル、比旋光度、及びHPLCデータを示す。
Rf値:0.55(ヘキサン/酢酸エチル=2/1(体積比))
H NMR(CDCl,400 MHz): δ7.16(d,J=8.7Hz, 4H), 6.76(d,J=8.7Hz,4H), 4.20(q,J=7.1Hz,2H), 3.93(q,J=7.2Hz,2H), 3.72−3.68(m,8H), 3.49(dd,J=8.5Hz, 6.9Hz,1H), 3.23 (d,J=13.3Hz,2H), 2.37−2.23(m,2H), 1.97−1.93(m,2H), 1.27(t,J=7.1Hz,3H), 1.10(t,J=7.2Hz,3H)
13C NMR(CDCl,100MHz): δ172.7, 158.9, 153.7, 130.8, 130.0, 113.8, 85.8, 77.8, 62.1, 60.5, 55.3, 54.1, 50.6, 30.8, 27.7, 14.2, 14.2
IR(neat,cm−1) 2981, 2834, 2221, 1731, 1712
ESI−MS m/z 490.2 [M+Na]
ESI−HRMS Calcd for C2733NONa [M+Na]: 490.2200, Found: 490.2197
[α]23=−37.9(25%ee,c=1.05,CHCl
HPLC(ヘキサン/イソプロパノール=50/1(体積比),CHIRALPAK IC,1.0mL/min,254nm) t=39.7min(minor), 50.0min(major).
【0077】
(実施例3)
<化合物1−3の合成>
実施例1において、化合物3−1を下記化合物3−3(Lee, O.−Y.; Law, K.−L.; Yang, D. Org. Lett. 2009, 11, 3302に従って合成)に代えた以外は、実施例1と同様にして、合成を行い、下記化合物1−3(収率82%、35%ee)を得た。
【化28】
【0078】
上記で得られた化合物1−3のRf(Relative to Front)値、H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル、IRスペクトル、ESI−MSスペクトル、ESI-HRMSスペクトル、比旋光度、及びHPLCデータを示す。
Rf値:0.5(ヘキサン/酢酸エチル=4/1(体積比))
H NMR (CDCl,400MHz): δ7.25(d,J=8.7Hz,2H), 6.86(d,J=8.7Hz,2H), 5.79(m,1H), 5.28(d,J=17.2Hz,1H), 5.16(d,J=10.1Hz,1H), 4.28(q,J=7.1Hz,2H), 4.11(q,J=7.1Hz,2H), 3.85(d,J=13.5Hz,1H), 3.81(s,3H), 3.66(dd,J=8.5Hz,7.1Hz,1H), 3.33−3.28(m,2H), 2.94(dd,J=14.4, 8.2Hz,1H), 2.42(m,2H), 2.02(m,2H), 1.36(t,J=7.1Hz,3H), 1.26(t,J=7.1Hz,3H)
13C NMR(CDCl,100MHz): δ172.8, 158.8, 153.6, 136.0, 130.8, 130.0, 117.8, 113.8, 85.9, 77.7, 62.1, 60.5, 55.3, 54.3, 53.5, 51.0, 30.8, 27.8, 14.3, 14.1
IR(neat,cm−1) 2981, 2834, 2221, 1731, 1712
ESI−MS m/z 410.3 [M+Na]
ESI−HRMS Calcd for C2229NONa [M+Na]: 410.1938, Found: 410.1935
[α]22=−58.0(35%ee,c=0.95,CHCl
HPLC(ヘキサン/イソプロパノール=50/1(体積比),CHIRALPAK IC,1.0mL/min,254nm) t=16.9min(minor), 19.3min(major).
【0079】
(実施例4)
<化合物1−4の合成>
実施例1において、化合物4−1を下記化合物4−4(和光ケミカル社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、合成を行い、下記化合物1−4(収率89%、41%ee)を得た。82%収率、及び35%eeであった。
【化29】
【0080】
上記で得られた化合物1−4のRf(Relative to Front)値、H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル、IRスペクトル、ESI−MSスペクトル、ESI-HRMSスペクトル、比旋光度、及びHPLCデータを示す。
Rf値:0.3(ヘキサン/酢酸エチル=6/1(体積比))
H NMR(CDCl,400MHz): δ5.72(m,2H), 5.20(d,J=17.0Hz,2H), 5.11(d,J=10.5Hz,2H), 4.12(q,J=7.0Hz,2H), 3.70(m,4H), 3.27(m,2H), 2.87(dd,J=14.0Hz, 7.8Hz,2H), 2.41(m,2H), 2.00(m,2H), 1.24(t,J=7.0Hz,3H)
13C NMR(CDCl,100MHz): δ172.6, 153.8, 135.9, 117.6, 85.7, 77.6, 60.5, 53.5, 52.5, 51.5, 30.9, 28.0, 14.0
IR(neat,cm−1) 3080, 2980, 2819, 2222, 1742, 1713
ESI−MS m/z 316.2 [M+Na]
ESI−HRMS Calcd for C1623NONa [M+Na]: 316.1519, Found: 316.1518
[α]23=−52.3(41%ee,c=0.98,CHCl
HPLC(ヘキサン/イソプロパノール=50/1(体積比),CHIRALPAK IC,0.5mL/min,254nm) t=18.2min(minor), 20.1min(major).
【0081】
(実施例5)
<化合物5−1の合成>
Pd(dba)・CHCl(アルドリッチ社製、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)のクロロホルムアダクト、105mg、0.102mmol、2.5mol%)、及びトリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(東京化成工業社製、P(o−tol)、124mg、0.406mmol、10mol%)のトルエン溶液(10.3mL)に、室温下で1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(東京化成工業社製、MeHSiOSiHMe、0.718mL、4.06mmol、1当量)、酢酸(AcOH、0.232mL、4.06mmol、1当量)、及び実施例1で合成した化合物1−1のトルエン溶液(0.406M、10mL、4.06mmol、1当量)を順次加え、45℃で19時間攪拌した。室温まで下げたのち、酢酸エチル及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、ついで硫酸ナトリウムで乾燥し、続いて溶媒留去、及びシリカゲル精製(ヘキサン/酢酸エチル=9/1→7/1(体積比))により、下記化合物5−1(450mg、1.45mmol)を36%の収率で得た。
【化30】
【0082】
上記で得られた化合物5−1のRf(Relative to Front)値、H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル、IRスペクトル、ESI−MSスペクトル、ESI-HRMSスペクトル、及び比旋光度を示す。
Rf値:0.3(ヘキサン/酢酸エチル=4/1(体積比))
H NMR(CDCl,400MHz): δ 6.12(dd,J=11.4Hz, 10.3Hz,1H), 5.89(d,J=11.4Hz,1H), 5.80−5.70(m,2H), 5.13−5.04(m,4H), 4.45(m,1H), 4.15−4.07(m,4H), 3.26(m,2H), 2.91(dd,J=14.4Hz, 7.4Hz,2H), 2.46(m,1H), 2.30(m,1H), 1.93(m,1H), 1.73(m,1H), 1.28−1.21(m,6H)
13C NMR(CDCl,100MHz): δ173.7, 165.8, 147.4, 136.6, 122.1, 116.7, 60.2, 60.2, 56.1, 52.6, 31.1, 27.4, 14.3, 14.3
IR(neat,cm−1) 3077, 2981, 2811, 1720
ESI−MS m/z 332.2 [M+Na]
ESI−HRMS Calcd for C1728NO [M+H]: 310.2013, Found: 310.2010
[α]22=44.2(34%ee,c=0.90,CHCl).
【0083】
(実施例6)
<化合物6−1の合成>
実施例5で得た化合物5−1(340mg、1.10mmol)をTHF(テトラヒドロフラン、5.49mL)に溶かし、−40℃にてリチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)のTHF溶液(1.0M、3.30mL、3.30mmol、3当量)をゆっくり加え、30分間攪拌した。酢酸エチルで希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥したのち、溶媒を留去し、下記化合物6−1(314mg)をケト−エノール混合物として得た。得られた粗生成物は次の反応にそのまま用いた。
【化31】
上記で得られた化合物6−1のRf(Relative to Front)値、IRスペクトル、ESI−MSスペクトル、及びESI-HRMSスペクトルを示す。
Rf値:0.2(ヘキサン/酢酸エチル=4/1(体積比))
IR(neat,cm−1) 2981, 2815, 1739, 1685
ESI−MS m/z 286.1 [M+Na]
ESI−HRMS Calcd for C1522NO [M+H]: 264.1594, Found: 264.1592.
H NMRスペクトルを図2に示す。
【0084】
(実施例7)
<化合物7−1の合成>
実施例6で得られた化合物6−1(粗生成物、312mg)をメタノール(MeOH、5.49mL)に溶かし、−20℃にて水素化ホウ素ナトリウム(NaBH、83.2mg、2.20mmol)を加え、30分攪拌した。飽和塩化アンモニア水溶液を加えたのち減圧下でメタノールを留去した。更に酢酸エチルを加え、生じた水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥したのち、溶媒留去、及びシリカゲル精製(ヘキサン/酢酸エチル=2/1(体積比))を行い、下記化合物7−1(180mg、0.680mmol)をジアステレオマー混合物として62%の収率で得た。
【化32】
【0085】
上記で得られた化合物7−1のRf(Relative to Front)値、IRスペクトル、ESI−MSスペクトル、及びESI-HRMSスペクトルを示す。
Rf値:0.1(ヘキサン/酢酸エチル=4/1(体積比))
IR(neat,cm−1) 2978, 2811, 1731
ESI−MS m/z 288.2 [M+Na]
ESI−HRMS Calcd for C1524NO [M+H]: 266.1751, Found: 266.1750.
H NMRスペクトルを図3に示す。
【0086】
(実施例8)
<化合物8−1の合成>
実施例7で合成した化合物7−1(180mg、0.680mmol)を塩化メチレン(3.39mL)に溶かし、室温でPd(PPh(東京化成工業社製、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、78.4mg、0.0678mmol、10mol%)、及びN,N−ジメチルバルビツル酸(636mg、4.07mmol、6当量)を順次加えたのち、1時間攪拌した。溶媒を留去し、BocO(二炭酸ジ−tert−ブチル)のアセトニトリル溶液(0.82M、4.13mL、3.39mmol、5当量)、及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3.39mL)を順次加え、室温で3時間攪拌した。酢酸エチルで希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去、及びシリカゲル精製(ヘキサン/酢酸エチル=1/1(体積比))により下記化合物8−1(175mg、0.613mmol)をジアステレオマー混合物として91%の収率で得た。
【化33】
【0087】
上記で得られた化合物8−1のRf(Relative to Front)値、IRスペクトル、ESI−MSスペクトル、及びESI-HRMSスペクトルを示す。
Rf値:0.15(ヘキサン/酢酸エチル=2/1(体積比))
IR(neat,cm−1) 3367, 2977, 1689
ESI−MS m/z 308.1 [M+Na]
ESI−HRMS Calcd for C1423NONa [M+Na]: 308.1468, Found: 308.1468.
H NMRスペクトルを図4に示す。
なお、得られた化合物8−1がS体過剰の光学活性体であることは、実施例9において得られた化合物9−1がS体過剰の光学活性体であることより確認できる。
【0088】
(実施例9)
<化合物9−1の合成>
実施例8で得られた化合物8−1(172mg、0.603mmol)を塩化メチレン(3.01mL)に溶かし、氷冷下メタンスルホニルクロリド(0.0513mL、0.663mmol、1.1当量)、及びトリエチルアミン(0.167mL、1.21mmol、2当量)を順次加え、10分間攪拌したのち、さらに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、0.279mL、1.87mmol、3.1当量)を加えて25℃で1時間攪拌した。塩化メチレン及び水で希釈したのち、水層を塩化メチレンで抽出した。有機層を1N塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去し、シリカゲル精製(ヘキサン/ジエチルエーテル=3/1→2/1(体積比))を経て、下記化合物9−1(140mg、0.523mmol)を87%の収率で得た。
【化34】
【0089】
上記で得られた化合物9−1のRf(Relative to Front)値、H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル、IRスペクトル、ESI−MSスペクトル、ESI-HRMSスペクトル、及び比旋光度を示す。
Rf値:0.3(ヘキサン/酢酸エチル=4/1(体積比))
H NMR(CDCl,400MHz): δ 7.03(d,J=3.9Hz,1H), 6.18−6.09(m,2H), 4.61(m,1H), 4.42(m,1H), 4.20(q,J=7.1Hz,2H), 2.76−2.61(m,2H), 1.42(s,9H), 1.29(t,J=7.1Hz,3H)
13C NMR(CDCl,100MHz): δ166.8, 154.9, 132.7, 131.7, 127.0, 124.8, 79.5, 60.6, 43.5, 28.8, 28.4, 14.3
IR(neat,cm−1) 3352, 2978, 1705
ESI−MS m/z 290.1 [M+Na]
ESI−HRMS Calcd for C1421NONa [M+Na]: 290.1363, Found: 290.1361,
[α]23 =−80.5(34%ee,c=1.00,CHCl),
lit.[α]20 =−217(>99%ee,c=1.1,CHCl)(Bromfield, K. M.; Graden, H.; Hagberg, D. P.; Olsson, T.; Kann, N. Chem. Commun. 2007, 3183.)
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の化合物は、リン酸オセルタミビルの工業的製造に有用な中間体であることから、リン酸オセルタミビルの製造に好適に用いることができる。
本発明の化合物の製造方法は、リン酸オセルタミビルの工業的製造に有用な中間体を製造することができる。
本発明のリン酸オセルタミビルの製造方法は、工業的製造に適した製造方法であり、リン酸オセルタミビルの工業的製造に好適に用いることができる。
図1
図2
図3
図4