(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、必要な角度からのみ閉鎖力を得られる構成で、扉の上下動も必要ない閉鎖機構付き丁番を提案することを目的とする。そしてさらに、施工後に全体の閉鎖力が調整できると共に開放角度範囲ごとにも閉鎖力を調整できる機構を併せ持つことを次の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では上記問題点を解決するために次の技術手段を設けた。まず軸心挿入孔を備えた二個の水平面とそれをつなぐ垂直面を有するコの字形状の二枚の羽根を設ける。このとき垂直面は上下方向に長く設定しておく。そして片方の羽根の垂直面に、先端に当接部分を有したスライド部材を横方向にのみ直線移動可能に配置し、さらに複数個の圧縮バネを並列させた状態でスライド部材に付勢させておく。またバネ力調整部材を設けて圧縮バネの付勢力を調整できるようにしておくとよい。
【0010】
次に横断面がほぼ同一の縦長形状であり、その垂直方向中央位置に軸心挿入孔を備え、縦方向外周面は湾曲面と円周面にて連続して形成されているセンターカムを設ける。このセンターカムの湾曲面は軸心の中心位置からの距離が徐々に変化する形状にて設定されており、円周面は軸心の中心位置に対する円周上に設定しておく。そして他方の羽根の垂直面にセンターカムを配置する。
【0011】
そして二枚の羽根の水平面の軸心挿入孔を合わせた状態で、軸心をセンターカムの軸心挿入孔を通して貫通させて組み付ける。するとスライド部材の当接部分はセンターカムの縦方向外周面に接しており、羽根の回転動作により当接部分はセンターカムの湾曲面と円周面に接した状態で移動することになる。そして圧縮バネによりスライド部材の当接部分がセンターカムの湾曲面に押し付けられた状態になっている。
【0012】
このときのセンターカムの湾曲面の形状を、軸心の中心位置からの湾曲面表面までの距離が徐々に変化するような曲面にて形成しておき、閉鎖する方向つまり両羽根の垂直面が平行になる位置に近づくにつれて軸心と湾曲面との距離が小さくなるように設定しておく。すると両羽根の垂直面が平行な閉鎖状態から扉を開放したときに、センターカムの湾曲面により圧縮バネを撓ませながらスライド部材が押し込まれる動作を得、開放操作が終了した段階においては常に扉が閉鎖位置へと戻る方向の付勢力が得られることになる。
【0013】
そしてある程度以上扉を開放した段階でスライド部材の当接部分はセンターカムの湾曲面から円周面へと移動するように設定しておく。するとスライド部材の当接部分が円周面上に移動した段階で閉鎖方向への力は発生しなくなり、開放操作を停止させるとその位置で扉も停止保持する動作が得られる。この扉を開け放ってそのまま保持できる位置は任意であるが、一般的には直角位置より少し小さい開き角度付近にて設定するとよく、通常の扉の開閉操作においては普通に開放した後にはそのまま閉鎖し、意図的に90度近くにまで開放した状態ではその位置を保持させることが可能になる。
【0014】
またセンターカムの湾曲面の形状は開放動作と共にスライド部材を押し込んで圧縮バネの付勢力を得ることが必要条件であるため、他の直線状の傾斜面等の面形状であってもよい。またスライド部材の外周面としては湾曲面と円周面が複数交互に配置されているような形状でもよい。さらにはスライド部材の当接部分の形状も任意であり、湾曲面に当接して滑りやすい傾斜面形状か半円形状等が適している。そしてこの両者の接触面の摩擦が小さいほど圧縮バネがスライド部材を押し込む力を扉が閉鎖する力に変換する効率がよくなるため、片方を滑りのよい合成樹脂の成型品で他方を金属に硬質のメッキ等を施した材質等の組み合わせが優れている。またスライド部材先端の当接部分にローラーを装着し、ローラーが自転しながら湾曲面を移動する構成でも良い。
【0015】
ここで、圧縮バネの付勢力はバネの特性上大きく撓んだ状態が最も強く、その強さは撓んだ量に略比例することになる。すると扉を少しのみ開放した状態からも確実に閉鎖させるにはその段階でもある程度の閉鎖力を有していなければならないことになり、その結果大きく開放した段階では必然的に非常に強い力が掛かってしまうことになる。そこで閉鎖初期には閉鎖力は小さく、さらに閉鎖するにしたがって徐々に閉鎖力が大きくなるように、センターカムの湾曲面の形状を設定しておくと効果的である。そしてさらにバネ力調整部材を設けて圧縮バネの強さを調整し、扉のサイズや重量に応じて閉鎖力を適宜設定するとよい。
【0016】
しかし上記の構成では全体の閉鎖角度範囲においての付勢力の強弱を一律に調整するだけでありまだ不十分と想定される。そこで片方の羽根に異なった形状の湾曲面と円周面からなる外周面を有するセンターカムを複数個垂直方向に並べて同一の軸心にて装着し、他方の羽根にその個々のセンターカムに対して分割した状態でスライド部材を圧縮バネと共に配置し、さらに各々のスライド部材にバネ力調整部材を設ける構成がより有効的と考えられる。
【0017】
その一例として前述の形状の湾曲面を有するセンターカムと、開放初期段階にのみ極端に圧縮バネを撓ませるような湾曲面を有し、早い開放角度位置で円周面に移行するようなセンターカムを羽根の上下に配置して、それぞれに圧縮バネによりスライド部材を付勢させる構成が考えられる。その結果どうしても弱くなりがちな閉鎖最終段階での付勢力を後者のセンターカムで得ることが可能になり、前者のセンターカムはかろうじて扉を閉じてくる程度の付勢力のみでよいことになり、より最適な閉鎖条件が実現可能になる。
【0018】
つまり、センターカムの湾曲面と円周面とが連続する境目位置を任意に設定し、湾曲面形状や境目位置の異なったセンターカムを複数個垂直方向に並べて一個の丁番に適宜配置するとよく、扉の開閉動作における角度範囲全域を分割した状態で閉鎖力を任意に設定でき、かつバネ力調整部材により個々の角度範囲での閉鎖力を別々に調整可能にすることでより理想とする閉鎖条件を得ることができる。また通常扉は上下二個の丁番で開閉可能に保持するため、上記のように一個の丁番内で異なった湾曲面のセンターカムを複数配置するだけでなく、上下の丁番に異なった形状の湾曲面と円周面を有するセンターカムを配置する構成であっても良い。
【0019】
また上記の構成により閉鎖時の個々の角度範囲での付勢力の調整は実施可能であるが、丁番自体による閉鎖力に追加して、手で閉じ放つ操作や風によるあおり等が実施されると、ますます閉鎖速度が速くなる現象が発生しやすいことが問題点として残る。そこで、この点に関しては片方の羽根に直管シリンダータイプで内部にオイルが封入されており、圧縮ピンの先端が押される際に高速な没入動作時には大きな負荷が発生し、低速な没入動作時には小さな負荷しか発生しない構成のダンパーを装着し、扉の閉鎖最終段階で他方の羽根に圧縮ピンの先端が当接するように配置しておくとよい。その結果若干閉鎖速度が速くなってもダンパーで減速後にゆっくりと最終段階まで閉鎖する動作が実現できることになる。
【発明の効果】
【0020】
センターカムの湾曲面の形状を、軸心の中心位置からの湾曲面表面までの距離が徐々に変化するような曲面にて形成しておき、閉鎖する方向つまり両羽根の垂直面が平行になる位置に近づくにつれ軸心と湾曲面との距離が小さくなるように設定しておくと、扉の開放操作でセンターカムの湾曲面により圧縮バネを撓ませながらスライド部材が押し込まれる動作になり、開放操作が終了した段階においては常に戻る方向の付勢力が得られ、確実に扉を閉鎖することが可能となる。
【0021】
縦長のセンターカムに複数個の圧縮バネを並列させた状態で配置したスライド部材を付勢させる構成にしたことで、狭い丁番の内部で圧縮バネによる強い付勢力が得られることになり、大きな閉鎖力を確保することが可能になる。
【0022】
またバネ力調整部材を設けたため、圧縮バネの付勢力を扉の重量に合わせて調整でき、さらには長期間使用中に何らかの原因で閉鎖力が不足したような状態においても、閉鎖力を調整できるため非常に有効である。
【0023】
縦方向外周面が湾曲面と円周面にて連続して形成されているセンターカムを設けたことにより、スライド部材の当接部分が円周面上に接触する角度以上に扉を開放した段階でその位置にて停止させることができ、開け放った状態などでそのまま保持させることが可能になる。
【0024】
片方の羽根に異なった形状の湾曲面と円周面からなる外周面を有するセンターカムを複数個垂直方向に並べて同一の軸心にて装着し、他方の羽根にその個々のセンターカムに対して分割した状態でスライド部材を圧縮バネと共に配置し、さらに各々のスライド部材にバネ力調整部材を設けると、扉の開閉角度範囲全域を任意に分割して個々に閉鎖力を調整できることになり、より細やかな閉鎖条件を設定することが可能になる。
【0025】
スライド部材を滑りのよい合成樹脂の成型品でセンターカムを金属に硬質のメッキ等を施した材質で構成する等の両者の接触面の摩擦を小さくすることで、圧縮バネがスライド部材を押し込む力を扉が閉鎖する力に変換する効率がよくなり、閉鎖条件や耐久性等を向上させることができる。またスライド部材先端の当接部分にローラーを装着し、ローラーが自転しながら湾曲面を移動する構成は摩擦を小さくできさらに有効である。
【0026】
片方の羽根に直管シリンダータイプで内部にオイルが封入されており、圧縮ピンの先端が押される際に高速な没入動作時には大きな負荷が発生し、低速な没入動作時には小さな負荷しか発生しない構成のダンパーを装着し、扉の閉鎖最終段階で他方の羽根に圧縮ピンの先端が当接するように配置しておくと、若干閉鎖速くなった状態においてもダンパーで減速後にゆっくりと最終段階まで閉鎖する動作が実現できる。
【0027】
全体としては比較的簡単な構成であり、部品点数も少なく安価に提供可能である。さらにはスライド部材とセンターカムは縦方向には数量を増減できるため、サイズを一定の閉鎖力を確保した状態でさらにコンパクトにすることもでき、その結果丁番全体の幅を薄くすることが可能になり、デザイン性に優れた形態にて提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下図面に基づいて本発明に関する閉鎖機構付き丁番の実施の形態を説明する。
図1は本発明の閉鎖機構付き丁番を扉27と枠体28に取り付けた閉鎖状態の上面図であり、扉側羽根1と枠側羽根2とスライド部材3と圧縮バネ4とバネ力調整部材5とセンターカム6と軸心7を主部材として構成されている。
図2は扉側羽根1の正面図、
図3は扉側羽根1の上面図であり、軸心挿入孔8を備えた二個の水平面9とそれをつなぐ垂直面10を有するコの字形状で、垂直面10は上下方向に長く設定しておき、両側端部付近に取り付け孔11を設けておく。そして垂直面10に複数個所のガイド部材12を装着し、さらに垂直面10の端部を直角に曲げこんだ形状にして、その面に複数の雌ねじ部13を設けておく。
【0030】
図4は枠側羽根2の正面図、
図5は枠側羽根2の上面図であり、同様に軸心挿入孔8を備えた二個の水平面9とそれをつなぐ垂直面10を有するコの字形状で、垂直面10は上下方向に長く設定しておき、両側端部付近に取り付け孔11を設けておく。そして扉側羽根1の上下水平面9の内側に枠側羽根2の上下水平面9が所定の隙間を有して入り込み、両羽根の軸心挿入孔8が一直線になった状態で重ね合わせられるように形成しておく。
【0031】
図6はスライド部材3の斜視図であり、先端の当接部分14と上下のガイド溝15と複数のバネ挿入孔16を有している。
図7は扉側羽根1にスライド部材3を取り付けた状態の側面図であり、突起を有した扉側羽根1のガイド部材12にスライド部材3のガイド溝15を嵌め込んだ状態を示している。したがってスライド部材3はガイド部材12に沿って扉側羽根1の垂直面10を横方向にのみ直線運動することが可能になる。
【0032】
図8はバネ力調整部材5の斜視図であり、バネホルダー17とバネ力調整ねじ18にて構成されている。
図9は扉側羽根1にスライド部材3と圧縮バネ4とバネ力調整部材5を取り付けた状態の正面図であり、バネ力調整ねじ18を扉側羽根1の雌ねじ部13に螺合させた状態でバネホルダー17を配置し、スライド部材3のバネ挿入孔16に圧縮バネ4を挿入してバネホルダー17を被せた構成になっている。したがってバネ力調整ねじ18を回すことで圧縮バネ4と共にスライド部材3を押し込むことができる。ここで
図9では一個の扉側羽根1に二個のスライド部材3を配置し、その個々のスライド部材3に三個ずつの圧縮バネ4を設けている。圧縮バネ4を複数個並列に配置しているのは狭い扉側羽根1の幅方向内で大きな力を得るためのものである。またスライド部材3を二個に分割して上下に配置している点においては扉27の閉鎖条件において有効なためであり、後で詳しく説明する。
【0033】
図10はセンターカム6の斜視図である。センターカム6は横断面がほぼ同一の縦長形状で、その垂直方向中央位置に軸心挿入孔8を備え、縦方向外周面は湾曲面19と円周面20にて連続して形成されている。
図11はセンターカム6を枠側羽根2に装着した状態の上面図であり、枠側羽根2の垂直面10側に向いて湾曲面19が配置されており、外側に向いて円周面20が配置されている。また軸心7を枠側羽根2とセンターカム6の軸心挿入孔8に同時に挿入した段階でセンターカム6が枠側羽根2に対してぐらつき無く完全に固定されるように両者の形状を設定しておくとよい。
【0034】
そして扉側羽根1と枠側羽根2の上下水平面9の軸心挿入孔8を合わせた状態で、軸心7をセンターカム6の軸心挿入孔8を貫通させて両羽根を組み付ける。するとスライド部材3の当接部分14はセンターカム6の縦方向外周面に接しており、羽根の回転動作により当接部分14はセンターカム6の湾曲面19と円周面20に接した状態で移動することになる。
図12は
図1と同じ閉鎖状態での断面図であり、センターカム6とスライド部材3と圧縮バネ4の関係を判りやすく表記したものである。扉27の閉鎖状態ではスライド部材3の当接部分14はセンターカム6の湾曲面19の端部付近に接触しており、スライド部材3は圧縮バネ4の力である程度の付勢力を有しつつ湾曲面19に押し付けられている状態にしておくとよい。すると湾曲面19の表面傾斜とスライド部材3の当接部分14の傾斜により、扉側羽根1にはさらに枠側羽根2方向に回転しようとする力が掛かっていることになる。
【0035】
図13はセンターカム6の一形状例を示した上面図であり、中央部分に上下に長い軸心挿入孔8を有しており、外周面は湾曲面19と円周面20にて構成されている。そしてその湾曲面19と円周面20の境目に若干の段差21を設けておく。ここで湾曲面19は軸心挿入孔8の中心位置からの距離が徐々に変化する形状になっている。その形状としては、円周面20から湾曲面19に移行する境目の位置から
図12に示すスライド部材3の当接部分14が湾曲面19に接している位置付近までの範囲を同一角度ごとに分割し、その各々の湾曲面19の表面位置から軸心挿入孔8の中心までの距離をAからEとすると、A>B>C>D>Eとなるように設定しておく。そして円周面20は軸心7の中心位置に対する円周上に設定しておく。
【0036】
図14は
図13に示す形状のセンターカム6を用いた状態での扉27の開閉動作を示す軌跡図である。
図14(a)は
図12と同じ閉鎖状態であり、扉27を開放するに従って
図14(b)から
図14(c)に示すようにスライド部材3の当接部分14がセンターカム6の湾曲面19に沿って移動し、前述の湾曲面19の表面から軸心7の中心までの距離の変化により、徐々にスライド部材3が押されて圧縮バネ4が撓んだ状態になる。そして
図14(d)に示す湾曲面19と円周面20との境目付近を越えると
図14(e)に示すように当接部分14は円周面20に移動し、ここからの開放動作においてはこれ以上圧縮バネ4が圧縮されることは無い。
【0037】
したがって両羽根の垂直面10が平行な
図14(a)に示す閉鎖状態から扉27を開放し、その後任意の位置で開放操作を終了した場合、その位置が
図14(d)付近までの開放角度範囲では、大きく撓んだ圧縮バネ4の付勢力でスライド部材3の当接部分14が湾曲面19を押し、互いの傾斜面により扉側羽根1が閉鎖位置へと戻る動作により扉27は自然に閉鎖することになる。ここで人が通行する際に開放する扉27の開放角度は一般的に70度程度が多く、したがって開放操作後に手を離した状態で自然に閉鎖する角度をそれ以上の
図14(d)に示す80度付近に設定しておくと、通常の通行後にはそのままで扉27の閉鎖動作が得られることになる。
【0038】
また通常では扉27を90度手前で開けたまま保持する機構も必要とされている。その点においては、スライド部材3の当接部分14が円周面20上に移動した段階で扉27に閉鎖方向への力は発生しなくなり、
図14(e)を超えて完全に180°開放した
図14(f)までの開放角度範囲では扉27の開放位置にてそのまま停止する動作が得られる。そしてこの開放範囲においては閉鎖力が増加することは無い。また開け放った状態で停止保持させる際にはクリック感があるほうが判り易いとされており、その手段としては
図13に示すように湾曲面19と円周面20との境目に小さな段差21を設けておくとよい。すると扉27を開放してスライド部材3の当接部分14と湾曲面19との接触が終わったときに、この段差21で開く方向に僅かに引き寄せられるような感覚が得られ、逆に閉鎖する段階では段差21の前で一旦小さな負荷が発生し、それを乗り越えるような感覚の後で閉鎖動作に連動するような感覚が得られる。
【0039】
ここで、圧縮バネ4の付勢力はバネの特性上大きく撓んだ状態が最も強く、その強さは撓んだ量に略比例することになる。したがって扉27が閉鎖する条件の中では
図14(d)付近が一番強く、
図14(b)より小さい開き角度においてはどうしても付勢力が弱くなってしまう。しかし扉27を少しのみ開放した状態からも確実に閉鎖させる必要があるため、その少しのみ開放した段階でもある程度以上の閉鎖力を有していなければならないことになり、その結果大きく開放した段階では必然的に非常に強い力が掛かってしまうことになる。つまり扉27をとりあえず閉鎖するだけが目的で、最終閉鎖時に戸当りにバタンと当ってしまうような状態を可とするならこの構成のみでよいが、やはり一般的な室内ドアに用いるとすれば、さらに適正な閉鎖条件が求められると想定される。
【0040】
そこで閉鎖するにしたがって徐々に閉鎖力が大きくなるように、センターカム6の湾曲面19の形状を設定しておくとよい。つまり
図13でのA>B>C>D>Eの条件を満たした上でAとBの距離差よりDとEの距離差を大きくする等の手段が考えられる。すると最終閉鎖段階での付勢力は幾分増強されることになる。そしてバネ力調整部材5のバネ力調整ねじ18を回して圧縮バネ4の強さを調整し、扉27のサイズや重量に応じて閉鎖力を適宜設定するとよい。
【0041】
しかし上記の構成では全体の閉鎖角度範囲においての付勢力の強弱を一律に調整するだけである。またデザイン面からも丁番自体の太さを極端に大きくしたくないため、センターカム6は比較的小さく形成したいと考えられる。その結果、それほど大きな湾曲面19の角度ごとの距離差は得にくく、したがってこのままではまだ不十分と想定される。
【0042】
そこで扉側羽根1に異なった形状の湾曲面19と円周面20からなる外周面を有するセンターカム6を複数個垂直方向に並べて同一の軸心7にて装着し、枠側羽根2にその個々のセンターカム6に面対して分割した状態で同数のスライド部材3を圧縮バネ4と共に配置し、さらに各々のスライド部材3にバネ力調整部材5を設ける構成がより有効的と考えられる。その一例として
図15に示す開放初期段階にのみ極端に圧縮バネ4を撓ませるような湾曲面19を有し、早い開放角度位置で円周面20に移行するようなセンターカム6を設ける。この
図15に示すセンターカム6は
図13に示すセンターカム6に比較して湾曲面19の占める軸心挿入孔8の中心からの角度範囲が小さく、その分軸心挿入孔8の中心位置からの距離が比較的大きく変化するように形成されている。つまり
図13でのDとEの距離差より
図15でのDとEの距離差が大きくなるように設定してある。また円周面20の軸心挿入孔8の中心からの位置は
図13と
図15とも同じである。
【0043】
図16は
図15に示すセンターカム6を用いたときの開閉動作を示した軌跡図であり、閉鎖状態である
図16(a)から扉27を開くと
図16(c)付近までに急激に圧縮バネ4を撓ませ、
図16(d)に示す45度付近では既にスライド部材3の当接部分14は円周面20に移行して、閉鎖力が発生しない状態になる。したがって
図15のセンターカム6は開放初期範囲を中心に強い閉鎖力を有する構成である。また
図15のセンターカム6での湾曲面19と円周面20との境目は扉27を開け放って保持する位置ではないため段差21は必要ない。
【0044】
ここで扉27の開閉動作における全域の閉鎖条件を考えると、
図13に示す湾曲面19を有するセンターカム6と、
図15に示す湾曲面19を有するセンターカム6を扉側羽根1の上下に配置し、
図9に示すように、枠側羽根2に上下二個のスライド部材3とバネ力調整部材5を配置し、それぞれに圧縮バネ4を付勢させておく構成が効果的である。すると
図13のセンターカム6による閉鎖力は途中までかろうじて扉27を閉じてくる程度でよくなり、その後の前述でのどうしても弱くなりがちな閉鎖最終段階での付勢力を
図15のセンターカム6で得ることが可能になり、より幅広い閉鎖条件が実現可能になる。さらには
図13と
図15のセンターカム6に別々にバネ力調整部材5を配置することにより個々の角度範囲での付勢力の調整ができることになり、更なる効果が得られる。
【0045】
つまり本発明の特徴としては、開閉角度全域を分割して個々の範囲で設定を変えて閉鎖動作させようとする点であり、湾曲面19や境目位置の異なった様々な形状のセンターカム6を設定し、それらを任意に複数個垂直方向に並べて扉側羽根1に適宜配置するとよく、さらにバネ力調整部材5により個々の角度範囲での閉鎖力を調整可能にすることでより理想とする閉鎖条件を得ることができる。また通常扉27は上下二個の丁番で開閉可能に保持するため、上記のように一個の丁番内で異なった湾曲面19のセンターカム6を複数個配置するだけでなく、上下の丁番に異なった形状の湾曲面19と円周面20を有するセンターカム6を配置する、例えば
図13のセンターカム6を上丁番に、
図15のセンターカム6を下丁番に配置するような構成であっても良い。
【0046】
またスライド部材3の当接部分14の傾斜形状も任意であり、湾曲面19に当接して滑りやすい傾斜面形状か半円形状等が適している。そして湾曲面19とスライド部材3の当接部分14の接触面の摩擦が小さいほど圧縮バネ4がスライド部材3を押し込む力を扉27が閉鎖する力に変換する効率がよくなるため、片方を滑りのよい合成樹脂の成型品で他方を金属に硬質のメッキ等を施した材質等の組み合わせが優れている。また
図17に示すようにスライド部材3先端の当接部分14にローラー22を装着し、ローラー22が自転しながら湾曲面19を移動する構成も優れている。
【0047】
しかし、開放操作終了後に手で突き放して閉操作したような状況や、風によるあおりが発生することも考えられる。このような場合は丁番自体の閉鎖力にそれらの力が足されることになり、閉鎖速度が速くなる点がまだ問題点として残ると想定される。そこで
図18に示すように扉側羽根1に直管シリンダータイプで内部にオイルが封入されており、圧縮ピン24の先端が押される際に高速な没入動作時には大きな負荷が発生し、低速な没入動作時には小さな負荷しか発生しない構成のダンパー23を装着し、扉27の閉鎖最終段階で枠側羽根2もしくは枠体28の内面に圧縮ピン24の先端が当接するように配置しておくとよい。すると若干閉鎖速度が速くなってもダンパー23の減速効果によりゆっくりと最終段階まで閉鎖する動作が実現できる。
【0048】
また室内ドアにおいては通常丁番自体に前後左右上下の三次元建付け調整機能が装備されており、本発明の閉鎖機構付き丁番においても建付け調整機構を具備させる構成が必要と考えられる。そして最も一般的な建付け調整機構は丁番の羽根を支点に対してシーソー動作させて左右の位置調整を実施するものが多い。しかし本発明の閉鎖機構は閉鎖状態での羽根の角度が変化すると閉鎖力に影響が出てしまうと想定される。そこで
図19に示すように枠体28に掘り込んだ状態で外ケース25と内ケース26を重ねて設け、内ケース26に枠側羽根2を装着し、外ケース25に対して内ケース26が真っ直ぐに前後移動し、さらには内ケース26に対して枠側羽根2が左右方向に枠体28の内面と平行なまま移動して建付け調整を実施するような構成がよい。