(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内容液と噴射剤とが分離して充填される二重構造のエアゾール容器に設けられエアゾールバルブを介して内容液のみが噴射可能とされるとともに、内容液を再充填可能な移充填用エアゾール容器のアクチュエータであって、
前記移充填用エアゾール容器のエアゾールバルブのステムに連結されエアゾールバルブの開閉を操作するアクチュエータ本体に、エアゾールバルブを介して内容液を噴射する噴射口を備えた噴射流路と、エアゾールバルブを介して内容液を再充填する移充填口を備えた移充填流路とを形成する一方、
これら噴射流路と移充填流路との間の流路が自動的に切り替わる自動切換え弁機構を設けてなり、
前記自動切換え弁機構は、前記噴射流路に加わる噴射剤圧力で前記移充填流路を閉じて噴射状態とし、前記移充填流路に加わる移充填圧力で前記噴射流路を閉じて移充填状態とし、且つ静止時には自由状態となる逆流防止弁を設けて構成したことを特徴とする移充填用エアゾール容器のアクチュエータ。
前記移充填口は、前記エアゾールバルブの開閉操作方向に沿うアクチュエータ本体の表面に設け、移充填操作に連動してエアゾールバルブを開閉可能に構成してなることを特徴とする請求項1記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータ。
前記噴射流路の噴射口をアクチュエータ本体の側面に開口配置する一方、前記移充填流路の移充填口をアクチュエータ本体の上面に開口配置して構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータ。
【背景技術】
【0002】
エアゾールバルブを備えた耐圧性のエアゾール容器内に内容液と噴射剤とを充填したエアゾール製品は、エアゾールバルブに取り付けた押しボタンなどのアクチュエータを操作することで、簡単に内容液を噴射させて取り出すことができることなどから種々の内容物が充填されて用いられている。
このようなエアゾール製品を携帯して使用しようとすると、エアゾール容器は内容量の大きなものが多く、必要以上の量のエアゾール容器を持ち歩かねばならなかった。
そこで、内容液と噴射剤とを分離して充填することができる二重構造の小容量のエアゾール容器を用い、内容量の大きなエアゾール容器などから使用の直前や内容物を使いきった時などに再充填して繰り返し使用できるようにしたものが種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1のリフィル容器、用時充填システムでは、開口部にエアゾールバルブを備えたエアゾール容器本体内にシリンダとフリーピストンとを設けて二重構造とし、ピストンの上部のシリンダ内に内容液を充填し、ピストンの下部およびシリンダと容器本体との間に噴射剤を充填しておき、エアゾールバルブのステムに取り付けた押しボタンを操作して通常の噴射を行って内容液のみを取り出すようにする一方、内容液を使い切った場合には使用する直前にエアゾールバルブのステムの押しボタンを取り外し、原液充填装置のアダプタを連結し、噴射剤の圧力より高い圧力で内容液をピストン上部のシリンダ内に充填するようにしている。
また、特許文献2のエアゾール再充填装置では、エアゾール容器内に内袋を設けて噴射剤と内容液とを隔離した二重構造とし、内袋内に内容物を充填し、内袋と容器との間に噴射剤を充填しておき、内袋に連通するエアゾールバルブのステムに取り付けた押しボタンを操作して通常の噴射を行って内容液のみを取り出すようにする一方、内容液を使い切った場合には使用する直前にエアゾールバルブのステムの押しボタンを取り外し、再充填装置のエアゾール注入接続部を連結し、噴射剤の圧力より高い圧縮空気を原動力として内容液を内袋内に再充填するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1,2の二重構造のエアゾール容器を用いた内容液の再充填装置では、再充填の際にエアゾールバルブのステムから押しボタンなどのアクチュエータを取り外した後、再充填装置のアダプタなどを接続しなければならず、アクチュエータの取り外し、アダプタの取り付け、アクチュエータの再取り付けなど再充填操作が煩雑となったり、アクチュエータによっては小さく転がり易く、紛失し易いなどの問題がある。
【0006】
また、再充填装置のアダプタなどをステムに接続する場合に、エアゾール容器のステムは同一仕様のものが多く、複数の再充填装置や再充填用のエアゾール容器がある場合に、特定のアダプタやステムを識別することができず、混合してはいけない内容物を誤充填する恐れがあるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる従来技術における課題を解決するためなされたものであり、ステムからアクチュエータを取り外すことなく移充填することができる移充填用エアゾール容器のアクチュエータを提供しようとするものである。
また、本発明は、特定の内容物だけを識別して移充填することができる移充填用エアゾール容器のアクチュエータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータは、内容液と噴射剤とが分離して充填される二重構造のエアゾール容器に設けられエアゾールバルブを介して内容液のみが噴射可能とされるとともに、内容液を再充填可能な移充填用エアゾール容器のアクチュエータであって、
前記移充填用エアゾール容器のエアゾールバルブのステムに連結されエアゾールバルブの開閉を操作するアクチュエータ本体に、エアゾールバルブを介して内容液を噴射する噴射口を備えた噴射流路と、エアゾールバルブを介して内容液を再充填する移充填口を備えた移充填流路とを形成する一方、
これら噴射流路と移充填流路との間の流路が自動的に切り替わる自動切換え弁機構を設け
てなり、
前記自動切換え弁機構は、前記噴射流路に加わる噴射剤圧力で前記移充填流路を閉じて噴射状態とし、前記移充填流路に加わる移充填圧力で前記噴射流路を閉じて移充填状態とし、且つ静止時には自由状態となる逆流防止弁を設けて構成したことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項
2記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータは、請求項
1記載の構成に加え、前記移充填口は、前記エアゾールバルブの開閉操作方向に沿うアクチュエータ本体の表面に設け、移充填操作に連動してエアゾールバルブを開閉可能に構成してなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項
3記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータは、請求項
1又は2に記載の構成に加え、前記噴射流路の噴射口をアクチュエータ本体の側面に開口配置する一方、前記移充填流路の移充填口をアクチュエータ本体の上面に開口配置して構成したことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項
4記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータは、請求項1〜
3のいずれかに記載の構成に加え、前記移充填口とこの移充填口に連結される移充填用ノズルとの間に連結の可否を識別する識別手段を設けて構成したことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項
5記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータは、請求項1〜
4のいずれかに記載の構成に加え、前記識別手段は、移充填口および/または移充填ノズルを前記移充填口への連結を不能とする形状として構成したことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項
6記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータは、請求項1〜
4のいずれかに記載の構成に加え、前記識別手段は、前記移充填口への連結により移充填口と移充填用ノズルとの間で漏洩が生じる形状として構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータによれば、内容液と噴射剤とが分離して充填される二重構造のエアゾール容器に設けられエアゾールバルブを介して内容液のみが噴射可能とされるとともに、内容液を再充填可能な移充填用エアゾール容器のアクチュエータであって、前記移充填用エアゾール容器のエアゾールバルブのステムに連結されエアゾールバルブの開閉を操作するアクチュエータ本体に、エアゾールバルブを介して内容液を噴射する噴射口を備えた噴射流路と、エアゾールバルブを介して内容液を再充填する移充填口を備えた移充填流路を形成する一方、これら噴射流路と移充填流路との間の流路が自動的に切り替わる自動切換え弁機構を設けたので、二重構造のエアゾール容器のステムにアクチュエータを連結したまま移充填口に再充填用ノズルなどを接続すると自動切換え弁機構が自動的に切り換えられて噴射流路が閉じられて内容液を再充填することができ、通常はアクチュエータを操作するだけで移充填流路が自動的に閉じられて内容液を噴射することができる。
これにより、アクチュエータの取り付け、取り外しなど再充填操作が煩雑となることなく、アクチュエータを紛失する恐れもなく、簡単に移充填することができる。
また、前記自動切換え弁機構を、噴射流路に加わる噴射剤圧力で移充填流路を閉じて噴射状態とし、移充填流路に加わる移充填圧力で噴射流路を閉じて移充填状態とし、且つ静止時には自由状態となる逆流防止弁を設けて構成したので、噴射剤圧力や移充填圧力によって逆流防止弁を作動させることで、噴射流路と移充填流路の切り換えを自動的に行うことができ、構成を簡素化して確実に動作させることができる。且つ逆流防止弁は、静止時には自由状態となり無負荷状態とすることができる。
【0017】
本発明の請求項
2記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータによれば、前記移充填口は、前記エアゾールバルブの開閉操作方向に沿うアクチュエータ本体の表面に設け、移充填操作に連動してエアゾールバルブを開閉可能に構成したので、移充填口に移充填ノズルなどを連結する移充填操作を行うことでエアゾールバルブの開閉も連動させることができ、一層簡単に移充填することができる。
【0018】
本発明の請求項
3記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータによれば、前記噴射流路の噴射口をアクチュエータ本体の側面に開口配置する一方、前記移充填流路の移充填口をアクチュエータ本体の上面に開口配置して構成したので、このような噴射口と移充填口の配置により、側方から噴射させ、上方から移充填させることで、誤操作を招くことなく確実に操作することができる。
【0019】
本発明の請求項
4記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータによれば、前記移充填口とこの移充填口に連結される移充填用ノズルとの間に連結の可否を識別する識別手段を設けて構成したので、識別手段により、誤った内容液を再充填することが防止でき、混合が問題となる内容液に対しても所定の内容液を移充填することができる。
【0020】
本発明の請求項
5記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータによれば、 前記識別手段は、移充填口および/または移充填ノズルを前記移充填口への連結を不能とする形状として構成したので、移充填口と移充填用ノズルの形状の両方、あるいはいずれか一方の形状を変えて連結不能とすることで、確実に所定の内容液を移充填することができる。
【0021】
本発明の請求項
6記載の移充填用エアゾール容器のアクチュエータによれば、前記識別手段は、前記移充填口への連結により移充填口と移充填用ノズルとの間で漏洩が生じる形状として構成したので、移充填口への連結により移充填口と移充填用ノズルとの間で漏洩が生じ、漏洩により移充填できないことがわかり、確実に所定の内容液を移充填することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
本発明の移充填用エアゾール容器のアクチュエータ10は、エアゾール製品を携帯する際などに使用する容量の小さな二重構造のエアゾール容器に取り付けて使用するアクチュエータであり、容量の大きな二重構造のエアゾール容器を親容器とし、内容液を移充填する場合の子容器となるエアゾール容器に取り付けて使用され、例えば押しボタンとして構成される。
【0024】
この移充填用エアゾール容器のアクチュエータ10が取り付けられる移充填用エアゾール容器(子缶)Cは、内容液と噴射剤とを分離して充填することができる二重構造のエアゾール容器とされ、例えば可撓性の内袋を備え、内袋内に内容液が充填される一方、内袋とエアゾール容器との間に噴射剤が充填され、内袋内とエアゾールバルブを介してステムSが連通し、ステムSを介してエアゾールバルブを操作することで、噴射剤の圧力で内袋内の内容液のみを噴射させて取り出すことができるようになっている。そして、この二重構造のエアゾール容器では、噴射剤は内容液を使い切ってもそのままエアゾール容器内に残ったままとなっており、内袋内に内容液を再充填することで、再びエアゾール製品として内容液を噴射させて取り出すことができる。
【0025】
なお、移充填用エアゾール容器としては、可撓性の内袋を備えた二重構造容器に限らず、シリンダとフリーピストンによる二重構造容器など他の構造の二重構造容器であっても良く、噴射剤と内容液とを分離し、内容液のみを噴射できるものであれば良い。
【0026】
このような二重構造のエアゾール容器に取り付けて使用されるアクチュエータ10は、たとえば押しボタンで構成され、押しボタン本体を構成するアクチュエータ本体11を備えており、略円筒体とされ、下部中央にステムSが嵌合される嵌合孔12が形成してある。この嵌合孔12の下端部は円錐状に形成され、ステムSへの嵌合が容易にできるようにしてあり、嵌合孔12の上部に第1の水平流路13が形成されて連通し、この第1の水平流路13の端部から上方に第1の垂直流路14が形成されて連通している。
【0027】
また、アクチュエータ本体11の上面中央から段差を備えた大径穴15と小径穴16とが形成されるとともに、小径穴16の下部に小径穴16と同径の環状穴17が形成され、環状穴17の内周角部と第1の垂直流路14の上端部とが連通するようになっている。
さらに、このアクチュエータ本体11の小径穴16の下部の環状穴17の中心部に中心穴18が形成され、中心穴18の下部に第2の垂直流路19が連通して形成され、この第2の垂直流路19の端部から水平に第2の水平流路20が連通して形成してある。
また、アクチュエータ本体11の側面中央からは段差を備えた側面大径穴21と側面小径穴22とが形成され、小径穴の底部角部と第2の水平流路20の外側端部とが連通するようになっている。
【0028】
このアクチュエータ本体11の上面の大径穴15を塞ぐように移充填口23を備えた移充填部材24が装着され、上部の大径円筒部25と下部の小径円筒部26とで2段円筒状に形成されてアクチュエータ本体11の大径穴15と小径穴16の段差および環状穴17の外周面に嵌合装着されている。
そして、この移充填部材24の大径円筒部25の円筒中心が移充填口23とされる一方、小径円筒部26の上部が円錐面27で構成され、大径円筒部25の底部に連通穴28が形成されて小径円筒部26の円筒内と連通するようにしてある。
これにより、アクチュエータ本体11と移充填部材24とによって連通穴28の下方に、上部が円錐面27とされ、中間部が小径円筒部26の一部の円筒部とされ、下部が小径円筒部26の内周面と環状穴17の外周面とによる環状穴部と中心穴18とから構成される空間が形成され、この空間が自動切換え弁機構30の弁室31とされる。
【0029】
この自動切換え弁機構30の弁室31では、円錐面27が上部弁座32とされるとともに、環状穴17と中心穴18との円筒上面が下部弁座33とされ、この弁室31内に自動切換え弁として逆流防止弁34が装着される。
【0030】
この逆流防止弁34は、合成ゴムなどの弾性体で構成され、上下に円錐体を一体とした弁本体部34aと、この弁本体部34aの中心上部に円柱部34bが形成され、上下中央部に水平に円板部34cが形成され、さらに円板部34cから下方に突き出すスカート状の円筒部34dが形成された形状のもの、あるいは
図3および
図4に示すように、円筒部34dを省略した形状のものが装着して用いられる。
【0031】
このような自動切換え弁機構30の弁室31の上部弁座32と下部弁座33とによって噴射流路Aと移充填流路Bとが自動的に切り換えられるようになっており、ステムSから弁室31までの流路が主として移充填流路Bとなり、弁室31以降の流路が主として噴射流路Aとなっている。
【0032】
すなわち、移充填流路Bは、ステムSから第1の水平流路13、第1の垂直流路14、移充填部材24の連通穴28および移充填口23で構成される。
また、噴射流路Aは、主として弁室31以降の第2の垂直流路19、第2の水平流路20、噴射部材35の環状流路37および噴射口36で構成され、ステムSから弁室31までは、移充填流路Bの第1の水平流路13および第1の垂直流路14の一部が共通の流路となる。
【0033】
このようなアクチュエータ本体11の側面に開口した側面大径穴21と側面小径穴22内には、2段円筒状の噴射部材35が段差部に当てて嵌合装着され、噴射部材35の中心に外側が円錐状に広がる噴射口36を備えるとともに、小径円筒部内周に環状の流路37が形成されて第2の水平流路20と連通している。
【0034】
なお、噴射部材35としては内容液の噴射形状に応じて霧状に拡散させる噴射口(霧状ノズル)36を備えるものに限らず、噴射角度が小さい噴射口(ジェル用ノズル)を備えたものなど他の構造のものであっても良い。
【0035】
さらに、このアクチュエータ10では、エアゾール容器Cの肩部を覆う肩カバー38が装着され、エアゾール容器Cの上面に2重円筒状のガイド部38a,38bが形成してある。これらガイド部38a,38bに対応してアクチュエータ本体10には、ステム嵌合孔12の外側に環状凹部12aが形成され、内側のガイド部38aによってステムSに嵌合されたアクチュエータ本体11の環状凹部12aの内側外周面部をガイドするとともに、内側のガイド部38aと外側のガイド部38bとの間でアクチュエータ本体11の外周面部と環状凹部12aの外側内周面部をガイドすることで、アクチュエータ10である押しボタンの操作(噴射および移充填)を円滑にできるようにしてある。
【0036】
このようなアクチュエータ10では、内容液を移充填するための親缶として、例えばエアゾール容器Cよりも噴射圧力が高い噴射剤を充填した容量の大きなエアゾール容器C1が用いられる。
なお、容量の大きなエアゾール容器に限らず、エアゾール容器Cよりも噴射圧力の高い他の移充填用の装置などを用いるようにすることもできる。
【0037】
この親缶としてのエアゾール容器C1を用いる場合には、アクチュエータ10のアクチュエータ本体11に嵌合装着される移充填部材24の移充填口23には、エアゾール容器C1のステムS1が嵌合連結されるステム用嵌合穴39が形成される。
【0038】
このように構成した移充填用エアゾール容器のアクチュエータ10を備えたエアゾール容器(子缶)Cへのエアゾール容器(親缶)C1からの移充填時、エアゾール容器(子缶)Cの噴射時および静止時の動作について説明する。
このエアゾール容器Cには、これまでと同様に、二重構造の内袋の外側とエアゾール容器Cとの間に噴射剤が充填された状態となっている。
【0039】
静止時では、エアゾール容器Cに装着してあるエアゾールバルブが閉じられた状態であり、ステムSとアクチュエータ10とは遮断された状態となっている。また、この静止時には、アクチュエータ10内の自動切換え弁機構30の逆流防止弁34は自由状態となっている。
【0040】
次に、エアゾール容器C内の内容液がなくなった場合や内容液を使用する直前の移充填時には、エアゾール容器Cのアクチュエータ10の上面の移充填口23のステム用嵌合孔39にエアゾール容器C1のステムS1を嵌合装着して押し込むようにする。
すると、エアゾール容器Cおよびエアゾール容器C1のそれぞれのエアゾールバルブがステムS,S1を介して開いた状態となり、エアゾール容器C1の噴射剤の圧力がエアゾール容器Cの噴射剤の圧力より高いことから自動切換え弁機構30の逆流防止弁34を下方に押し下げる。
これにより、弁室31の上部弁座32が開かれるとともに、下部弁座33が閉じられた状態となり、弁室31以降の第2の垂直流路19および第2の水平流路20を介して噴射部材35への噴射流路Aが閉じられた状態となる。
一方、エアゾール容器C1の噴射剤の圧力で、逆流防止弁34のスカート状の円筒部34dが外側から押えられ、環状穴17の外周側と移充填部材24の小径円筒部26との間に隙間が形成され、第1の垂直流路14および第1の水平流路13を介してステムSに連通する移充填流路Bが形成され、これにより、エアゾール容器Cの内袋内にステムSを介して内容液を移充填することができる。
そして、移充填完了後、エアゾール容器C1による押し込みを止めることで、エアゾール容器C1およびエアゾール容器Cのエアゾールバルブが閉じられ、エアゾール容器C,C1が静止時の状態に戻ることになる。
【0041】
次に、移充填したエアゾール容器Cから内容液を噴射して取り出す場合には、これまでと同様に、アクチュエータ10を押し下げるように操作する。
すると、エアゾール容器CのステムSが押し下げられることでエアゾールバルブが開き、自動切換え弁機構30の逆流防止弁34が噴射剤で加圧された内容液の圧力で押し上げられるようになって弁室31の上部弁座32を閉じることで、移充填口23との連通を遮断する。
これと同時に、逆流防止弁34が押し上げられることで、弁室31の下部弁座33が開き、ステムS、第1の水平流路13、第1の垂直流路14を介して弁室31に送られた内容液が、弁室31内と第2の垂直流路19および第2の水平流路20を介して噴射部材35の環状流路37とが連通して噴射流路Aが形成され、噴射部材35の噴射口36から内容液が噴射される。
【0042】
このようなアクチュエータ10を用いることで、移充填や噴射のいずれの場合も特別な操作を必要せずに、親缶であるエアゾール容器C1を嵌合連結する操作によって自動的に噴射が停止されて移充填できるように切り換えることができるとともに、アクチュエータ10の噴射操作によって自動的に移充填が停止されて噴射状態に切り換えることができ、内容液がなくなった場合には使用する直前に簡単に移充填して携帯し、噴射して使用することができる。
【0043】
また、移充填用のエアゾール容器Cを繰り返し使用することが可能であり、容量の小さいエアゾール容器をその都度購入する必要がなく、経済的であり、廃棄物を削減することができる。
【0044】
なお、自動切換え弁機構30の逆流防止弁34の形状を変えた場合も同様に、静止時、移充填時、噴射時の噴射流路Aと移充填流路Bとの切り換えが行われることから、
図3および
図4の同一部材に同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0045】
また、移充填時のエアゾール容器Cは下方に配置される場合であっても逆に上方に配置される場合など他の方向に配置する場合であっても移充填することが可能である。
【0046】
次に、移充填する場合に、誤った内容液を充填することを防止できるようにした識別手段を備えた移充填用エアゾール容器のアクチュエータについて説明する。
このアクチュエータ10Aでは、移充填部材24の移充填口23となるステム用嵌合穴39に代え、識別手段40として識別用環状穴41を連通穴28と同心円状に形成するとともに、連結穴28の上端面に直交する識別用溝42が形成してある。
一方、親缶となるエアゾール容器C1は、識別用環状穴41に装着嵌合することができるステムS1の先端形状とされ、通常のステムS1に比べ先端部が大径円筒状の移充填用ノズル43としてあり、ここでは、ステムS1の先端部に一体に形成してある。なお、ステムS1と別体に移充填用ノズル43部分を形成し、ステムS1に連結するようにすることも可能である。
【0047】
このような識別手段40を備えたアクチュエータ10Aでは、移充填時、エアゾール容器C1のステムS1の先端の移充填用ノズル43をアクチュエータ10Aの識別用環状穴41に装着嵌合して押し込むようにする。
すると、エアゾール容器Cおよびエアゾール容器C1のそれぞれのエアゾールバルブがステムS,S1を介して開いた状態となり、エアゾール容器C1の噴射剤の圧力がエアゾール容器Cの噴射剤の圧力より高いことから自動切換え弁機構30の逆流防止弁34を下方に押し下げ、すでに説明したように、自動的に噴射流路Aが閉じられて移充填流路Bが開かれてエアゾール容器Cへ移充填が行われる。
【0048】
一方、通常のステムS1だけのエアゾール容器C1から移充填しようとすると、識別用環状穴41にステムS1を嵌合することができず、この状態で押し込んでもエアゾール容器C1の内容液が移充填されずに大気に放出されたり、連通穴28の上端面にステムS1を押し付けても識別用溝42によって内容液が移充填されずに大気に放出される。
これにより、ステムS1に移充填用ノズル43を備えたもの以外のエアゾール容器C1の内容液を移充填することができず、所定の内容液だけを移充填することができる。
【0049】
また、このアクチュエータ10Bでは、移充填部材24の移充填口23となるステム用嵌合穴39に代え、識別手段50として識別用大径穴51を連通穴28の上部に形成するとともに、この識別用大径穴51の底部分に直交する識別用溝52が形成してある。
一方、親缶となるエアゾール容器C1には、識別用大径穴51に装着嵌合することができるステムS1の先端形状とされ、通常のステムS1に比べ先端部が大径円筒状の移充填用ノズルアダプタ53が設けてあり、ここでは、ステムS1と別体に移充填用ノズルアダプタ53を形成し、ステムS1に嵌合装着するようにしてある。なお、ステムS1の先端部にアダプタ53部分を一体に形成することも可能である。
【0050】
このような識別手段50を備えたアクチュエータ10Bでは、移充填時、エアゾール容器C1のステムS1の先端の移充填用ノズルアダプタ53をアクチュエータ10Bの識別用大径穴51に装着嵌合して押し込むようにする。
すると、エアゾール容器Cおよびエアゾール容器C1のそれぞれのエアゾールバルブがステムS,S1を介して開いた状態となり、エアゾール容器C1の噴射剤の圧力がエアゾール容器Cの噴射剤の圧力より高いことから自動切換え弁機構30の逆流防止弁34を下方に押し下げ、すでに説明したように、自動的に噴射流路Aが閉じられて移充填流路Bが開かれてエアゾール容器Cへ移充填が行われる。
【0051】
一方、通常のステムS1だけのエアゾール容器C1から移充填しようとすると、識別用大径穴51にステムS1を装着すると隙間が形成されて嵌合することができず、この状態で押し込んでもエアゾール容器C1の内容液が移充填されずに大気に放出されたり、識別用大径穴51の底部の識別用溝52によって連通穴28の上端面にステムS1を押し付けても内容液が移充填されずに大気に放出される。
これにより、ステムS1に移充填用ノズルアダプタ53を備えたもの以外のエアゾール容器C1の内容液を移充填することができず、所定の内容液だけを移充填することができる。
【0052】
なお、識別手段は、上記実施の形態に限らず、アクチュエータ側の識別用の穴の形状とこの識別用の穴に嵌合装着される親缶(二重構造エアゾール容器)側の移充填用ノズルの形状とが隙間のない嵌合関係(いわゆるオスメスの関係)になっていれば良く、大径穴や環状穴とする場合に限らず、多角形状や十字状、星型など通常のステムが嵌合連結できない形状であれば良い。また、移充填用ノズルはステムと一体とする場合に限らず、別体として取り付けるアダプタ式としたものであっても良い。
【0053】
なお、この移充填用エアゾール容器のアクチュエータでは、エアゾール容器に充填される内容液はなんら限定するものでなく、通常エアゾール製品として使用されている内容液に広く適用でき、特に携帯して使用することが好ましい内容物に好適である。
また、充填される内容液としては、液体状のものだけでなく、ジェル状やフォーム状の内容液にも適用可能である。
【0054】
このような移充填用エアゾール容器のアクチュエータに用いられる親缶としては、子缶への移充填を繰り返しても十分な噴射圧力を確保し、しかも子缶よりも高い圧力を確保する必要がある。
そこで、例えば二重構造の親缶の内袋内に内容液を充填し、内袋とエアゾール容器との間に噴射剤として約0.5MPaに調整したLPGを、液相が存在する程度充填しておく。一方、二重構造の子缶には、内袋とエアゾール容器との間に噴射剤として、例えば窒素を充填し、その圧力を、0.25MPaとしておく。
このような液相が存在する噴射剤を充填した親缶を用いて移充填すると、親缶の内袋が移充填量に応じて縮み内袋外の容積がその分だけ大きくなり、噴射剤として圧縮ガスを用いた場合、親缶の噴射剤の圧力が低下することになるが、この場合にも、液化ガスであるLPGを噴射剤として用いることで、液相からの気化が起こり、圧力低下が防止される。
そして、子缶では、親缶と平衡圧になるまで、あるいは内袋内の許容量に達するまで内容液が移充填される。
【0055】
このような親缶から子缶への移充填を繰り返しても子缶に所定量の内容液の移充填が行われることを実験で確認した。
実験では、充填量が120gのエアゾール容器を用い、噴射剤として約0.5MPaに調整したLPGを、液相が存在する程度充填した。子缶として充填量が20gのエアゾール容器を用い、噴射剤として圧力が0.25MPaの窒素を充填した。
そして、子缶の内袋内を脱気した後、子缶の重量を測定した。ついで、親缶から子缶への移充填を行い、移充填後の子缶の重量を測定するとともに、子缶の圧力を測定した。
このような移充填を1本の親缶を用いて5回繰り返し、各移充填での子缶の測定結果を表1に示した。
子缶の圧力がエアゾール仕様として十分確保されていたことが確認できた。