特許第5784345号(P5784345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784345
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】ホースの巻取装置およびタンクローリ車
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/38 20060101AFI20150907BHJP
   B67D 7/40 20100101ALI20150907BHJP
【FI】
   B65H75/38 R
   B67D7/40 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-81430(P2011-81430)
(22)【出願日】2011年4月1日
(65)【公開番号】特開2012-214281(P2012-214281A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】定本 匡市
(72)【発明者】
【氏名】下宇宿 研一
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−083487(JP,U)
【文献】 実開平04−109969(JP,U)
【文献】 特表2000−504200(JP,A)
【文献】 特開昭57−141367(JP,A)
【文献】 実開平01−121063(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/34−75/50
B67D 5/00− 5/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースが巻きつけられるドラムと、
ドラムの回転軸に直接連結される駆動モータと、
ドラムに巻きつけられたホースを引き出す引出動作と、駆動モータの駆動によりホースを巻き取る巻取動作とを行う巻取装置駆動機構とを有するホースの巻取装置において、
前記巻取装置駆動機構の油圧回路は、
油圧ポンプと、
タンクと、
油圧ポンプから駆動モータへ作動油を供給する供給側油路と、
駆動モータからタンクへ作動油を戻す戻り側油路と、
供給側油路と戻り側油路とを連通するバイパス油路と、
戻り側油路上の、バイパス油路とタンクとの間に配置される第一電磁弁と、
供給側油路と、戻り側油路と、バイパス油路とにより形成される引出油路上に配置され、ホースを引き出す方向に駆動モータが回転するような作動油の流れを妨げる第二電磁弁とを有する、ホースの巻取装置。
【請求項2】
前記第二電磁弁は、両チェック弁を有する、請求項1に記載のホースの巻取装置。
【請求項3】
ホース内を液体が流れるのを検知するとホースを引き出す方向に駆動モータが回転するような作動油の流れを妨げるように前記第二電磁弁を制御する制御装置を有する請求項1又は2に記載のホースの巻取装置。
【請求項4】
車両のシャシフレームと、
前記シャシフレームの後部上面に搭載されるタンクと、
前記シャシフレーム上に設けられる請求項1〜3に記載されたホースの巻取装置と、
を有する、タンクローリ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースの巻取装置およびこれを備えたタンクローリ車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体フレーム上に搭載したタンク内の灯油等を、ホースにより車外の家庭用タンク等に供給するタンクローリ車等においては、車両走行時にホースをドラムに巻き取る巻取装置が設けられている。このような巻取装置としては、ドラムの回転軸に駆動モータの駆動軸を直接連結させたダイレクトドライブ式の巻取装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)。このダイレクトドライブ式の巻取装置は、駆動モータの駆動により、自動的にホースをドラムに巻き取ることができるので、作業員がホースを巻き取る労力を低減させることができる。また、駆動モータを停止させた状態で作業員がホースを引っ張ることにより、駆動モータの駆動軸が逆回転し、ホースをドラムから引き出すことができるので、ホース先端のノズルが供給先のタンク等に届くまで、ホースを簡単に引き出すことができる。ホースを引き出した後、作業員がホース先端のノズル操作により吐出口を開くことで、タンク内の液体を車外の家庭用タンク等に供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−109969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記巻取装置では、ホースを介してタンク内の液体を供給する際に、ドラムに巻きついたホースがたるむ問題がある。詳細に説明すると、供給作業終了直前において、作業員が液体の供給量を微調整するためにノズルの吐出口を開閉すると、ホース内の液体の流動、流動停止が急激に行われ、ホース内でウォーターハンマ現象が発生し、ホースが脈動する。このとき、従来技術のようなダイレクトドライブ式の巻取装置では、液体供給作業中、ドラムは回転軸回りに回転可能となっているため、ホースが脈動によりドラムから余分に引き出される。この余分に引き出されたホースにより、ドラムに巻きつけられたホースがたるみ、巻取装置によるホースの巻取作業が困難となる。
【0005】
上記課題を解決するために、ドラムの回転を規制するロック装置がノズルの開閉時にドラムの回転を規制し、ホースがドラムから余分に引き出されることを防止する構造も考えられるが、ドラムの回転を規制する専用の機械的なロック装置が必要となり、巻取装置全体が高価となる。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、駆動モータの駆動軸とドラムの回転軸を直接連結したダイレクトドライブ式の巻取装置に関して、ウォーターハンマ現象が発生したとしても、ドラムに巻きつけられたホースがたるむことを防止できるホースの巻取装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明のホースの巻取装置は、ホースが巻きつけられるドラムと、ドラムの回転軸に直接連結される駆動モータと、ドラムに巻きつけられたホースを引き出す引出動作と、駆動モータの駆動によりホースを巻き取る巻取動作とを行う巻取装置駆動機構とを有するホースの巻取装置において、前記巻取装置駆動機構の油圧回路は、油圧ポンプと、タンクと、油圧ポンプから駆動モータへ作動油を供給する供給側油路と、駆動モータからタンクへ作動油を戻す戻り側油路と、供給側油路と戻り側油路とを連通するバイパス油路と、戻り側油路上の、バイパス油路とタンクとの間に配置される第一電磁弁と、供給側油路と、戻り側油路と、バイパス油路とにより形成される引出油路上に配置され、ホースを引き出す方向に駆動モータが回転するような作動油の流れを妨げる第二電磁弁とを有するものである。これにより、第一電磁弁の操作により引出油路内で作動油が流動可能な状態にあるとき、第二電磁弁により、ホースを引き出す方向に駆動モータが回転するような作動油の流れを規制できるので、この状態でウォータハンマ現象が生じたとしても、巻取装置のドラムはホースを巻取る方向への回転を規制されるので、繰り出されてたるんだホースが、作業者の意図しないうちに巻き取られることを防止でき、巻取装置によるホースの巻取りが確実にできる。さらに、本発明はノズルの操作によって作動する機械的なロック装置を有することなく、電磁弁によって巻取装置のドラムの回転を規制することが出来るので、安価に行うことが出来る。
【0008】
また、前記第二電磁弁は、両チェック弁を有するようにしてもよい。これにより、第一電磁弁を閉じ(消磁)、第二電磁弁を閉じた(消磁)際に、両チェック弁により駆動モータへの作動油の流れを止めることができるので、ノズル操作によるドラムの回転が規制され、ホースがたるむことを防止できる。
【0009】
の発明は、ホース内を液体が流れるのを検知するとホースを引き出す方向に駆動モータが回転するような作動油の流れを妨げるように前記第二電磁弁を制御する制御装置を有するホースの巻取装置に関するものである。また、車両のシャシフレームと、前記シャシフレームの後部上面に搭載されるタンクと、前記シャシフレーム上に設けられる請求項1〜3に記載されたホースの巻取装置とを有するタンクローリ車に関するものである。これにより、巻取装置のホースを使用してタンク内の灯油等の液体を各家庭の家庭用タンクなどに供給する際に、ノズルの開閉によるウォータハンマ現象が発生したとしても、巻取装置のドラムはホースを巻取る方向への回転を規制されるので、繰り出されてたるんだホースが、作業者の意図しないうちに巻き取られることを防止でき、次の供給場所へタンクローリ車を移動させる際の巻取り装置によるホースの巻き取りを確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明は、ウォーターハンマ現象が発生したとしても、ドラムに巻きつけられたホースがたるむことを防止できるホースの巻取装置を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のホースの巻取装置を搭載したタンクローリの左側面図。
図2】タンクからホース先端のノズルまでの液体の流路を示す模式図。
図3】巻取装置を車両後方から見た背面図。
図4】巻取装置の左側面図。
図5】巻取装置を駆動させる駆動モータ、パワーユニットの油圧回路図。
図6】制御装置の構成を示すブロック図。
図7】制御装置の制御に関するフローチャート。
図8】本発明の他の実施例における巻取装置を駆動させる駆動モータ、パワーユニットの油圧回路図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明のホースの巻取装置を搭載したタンクローリVの左側面図である。図1に示すように、タンクローリVのシャシフレームF前部には運転席Cが設けられるとともに、シャシフレームF後部上面には、サブフレームSを介してタンクTが搭載されている。そして、運転席CとタンクTとの間に、後述する巻取装置3が設けられている。
【0014】
次に、タンクT内の液体をホース21先端のノズル22まで供給する液体の流路について説明する。図2は、タンクTからホース21先端のノズル22までの液体の流路を示す模式図である。
図2に示すように、タンクT内の液体をタンクTから巻取装置3まで供給する液体供給配管1は、タンクTの底面に配置された底弁11、四方弁12、車両のPTO(図示せず)により駆動する油圧ポンプ13、流量調整弁14、ストレーナ15、流量計16、三方弁17、車両側方から車外にタンクT内の液体を放出するための吐出口18、ストップバルブ19、液体供給配管1内の液体の流れの有無を検知し、液体の流れがある場合に制御指令を出力するフローセンサ20を備えている。液体供給配管1の端部は、後述するように、中空としたドラム38の回転軸38aに接続されており、ドラム38の回転軸38aに形成されたホース取付部38cに、ホース21の一端が接続されている。ホース21はドラム38に巻きつけられており、ドラム38からのホースを引き出す引出動作と、ドラムへのホースを巻き取る巻取動作を後述する巻取装置駆動機構Dにより行う。ホース21の他端にはノズル22が設けられており、ノズル22を操作することにより、ノズル22の吐出口が開閉され、タンクT内の液体を放出できる。
【0015】
次に、巻取装置3について説明する。図3は、巻取装置3を車両後方から見た背面図である。図4は、巻取装置3の左側面図である。
図3、4に示すように、サブフレームSの上面には、車幅方向に延びるベースフレーム31が固定されている。ベースフレーム31の上面には、車両高さ方向に延びる一対の支柱32が車両前後方向に並んで固定されている。
一対の支柱32の上端には、ベースフレーム31とほぼ平行の載置面32aが形成されている。車両前方側の支柱の載置面32a上には、車両側方から見てL字状のブラケット33がスペーサ34を介してボルトにより固定されている。前記ブラケット33の車両高さ方向に延びる面には丸孔33aが形成されており、そのブラケット33aの車両高さ方向に延びる面の車両前方側には、駆動モータ35が固定されている。その駆動モータ35の駆動軸35aは、ブラケットの丸孔33aを通り、ブラケット33の反対側まで延びている。
車両後方側の支柱32の載置面32a上には、軸受36がスペーサ37を介してボルトにより固定されている。前記軸受36には、一端が駆動モータ35の駆動軸35aと連結した後述するドラム38の回転軸38aの他端側が回動可能に支持されている。
【0016】
次に、ドラム38について説明する。ドラム38は、回転軸38a、一対のドラム側壁38b、ホース取付部38cにより構成される。ドラム38の中心には車両前後方向に延びる回転軸38aが固定されている。この回転軸38aの一端は駆動軸35aに連結されることで駆動モータ35に直接接続されている。また、回転軸38aの他端側は軸受36に支持されている。回転軸38aは中空であり、回転軸38aの車両前方側(駆動軸35a側)端部は閉じており、車両後方側(軸受36側)端部は開放されている。従って、ドラム38の回転軸38aに駆動モータは直接連結されている。そして、回転軸38aの車両後方側端部は、前記液体供給配管1の端部とロータリージョイントを介して接続されている。回転軸38aには、円形のドラム側壁38bが一対、車両前後方向に並んで固定されている。このドラム側壁38bは、一端が回転軸より半径方向に延びる複数本の補強部材38b1と、この補強部材38b1の先端をつなぐ円形枠38b2とにより構成されている。一対のドラム側壁38bの間には、前記回転軸38aの中空部と内部が連通するホース取付部38cが設けられ、このホース取付部38cにはホース21の一端が取付けられる。
【0017】
車両前方側の支柱32には、ドラム38の外側(ドラム38の車両前方側)からドラム38内部へ突出可能なピン40aを有する手動ロック装置40が取付けられている。手動ロック装置40は、作業者が手動でピン40aがドラム38内部へ突出させると、ドラム側壁3の補強部材38b1とピン40aとが接触し、ドラム38の回転を規制する。これにより、車両走行時の車両の揺れによるドラム38の回転を規制できる。
【0018】
前記ベースフレーム31の車両右側には、前記駆動モータ35に作動油を供給するパワーユニット50が取付けられている。また、ベースフレーム31の車両左側には、巻取装置3の巻取速度を調整する速度調整レバー51が取付けられている。
【0019】
次に、ドラム38からのホースを引き出す引出動作と、ドラムへのホースを巻取る巻取動作とを行う巻取装置駆動機構Dについて説明する。巻取装置駆動機構Dは、巻取装置3を駆動させる駆動モータ35の油圧回路と、制御装置60とにより構成される。
まず、巻取装置3を駆動させる駆動モータ35の油圧回路について説明する。図5は、巻取装置3を駆動させる駆動モータ35、パワーユニット50の油圧回路図である。
図5に示すように、パワーユニット50は、作動油を貯留するタンク50a、作動油を駆動モータ35に供給する油圧ポンプ50b、油圧ポンプ50bを駆動するモータ50c、圧力制御弁50d、チェック弁50eを有しており、図5に示すように接続して構成されている。
【0020】
駆動モータ35とパワーユニット50とは、油圧ポンプ50bから駆動モータ35へ作動油を供給する供給側油路iと、駆動モータ35からタンク50aへ作動油を戻す戻り側油路oとにより接続されている。供給側油路iには、スロットルチェックバルブ52が設けられ、戻り側油路oには、励磁時には作動油の流れを許容し、消磁時には内蔵されたチェック弁により作動油の流れを規制する第一電磁弁53が設けられている。なお、第一電磁弁53は、後述するバイパス油路54と戻り側油路oとの接続部と、タンク50aとの間に配置される。供給側油路iと戻り側油路oとはバイパス油路54によりつながっている。これにより、前記供給側油路iと、戻り側油路oと、バイパス油路54とにより、駆動モータ35から出た作動油がバイパス油路54を通り駆動モータ35へ戻る引出油路hが形成される。前記このバイパス油路54には、励磁時には作動油の流れを許容し、消磁時には内蔵されたチェック弁によりホースを引き出す方向に駆動モータが回転するような作動油の流れ(図5に示すA方向)を規制する第二電磁弁55と、前記速度調整レバー51により手動調節が可能な絞り弁56が設けられている。
【0021】
次に、巻取装置3を制御する制御装置60について説明する。図6は、制御装置60の構成を示すブロック図である。この制御装置60はPLC(プログラマブルロジックコントローラ)の一部であって、CPUやメモリ等を有している。制御装置60には、巻取装置3の電源である巻取装置電源スイッチ61、タンクTの車両左側側面に配置されたリモコンR(図4参照)に配置されたリモコンRの電源であるリモコン電源スイッチ62、リモコンRに配置された巻取スイッチ63及び引出スイッチ64、フローセンサ20からの操作指令が入力される。そして、制御装置60より第一電磁弁53、第二電磁弁55の各ソレノイド53a、55aに操作指令が出力される。また、制御装置60は、フローセンサ20が検知状態(液体供給配管1内を液体が流れている状態)から非検知状態(液体供給配管1内を液体が流れていない状態)となってから一定時間(本実施例では3秒)を計測するタイマ66を内蔵している。なお、本実施例では、リモコンRは車両左側側面に配置したが、車両右側側面に配置しても良い。
【0022】
次に、巻取装置3によるホースの巻き取り、繰り出しを行う際に処理される制御装置60の制御を、各家庭のタンクにタンクローリVから灯油等を給油する作業に沿って説明する。図7は、制御装置60の制御に関するフローチャートである。なお、図7に示す初期状態においては、第一制御弁53、第二制御弁55共に消磁となっている。
【0023】
灯油等をタンクT内に収納したタンクローリVは、灯油等を荷降ろしする各家庭まで移動した後、作業員が、手動ロック装置40のロックを解除する。その後、制御装置は巻取装置電源スイッチ61がONされるのを待つ(ステップS1)。作業者が巻取装置電源スイッチ61の電源をONにする(ステップS1がYes)と、制御装置はリモコン電源スイッチ62がONされるのを待つ(ステップS2)。
【0024】
作業者がリモコン電源スイッチ62をON(ステップS2がYes)にした後、作業者はホース21先端のノズル22を車両から離れた、各家庭の灯油タンク等の近くまで移動させるために、ホース21をドラム38から引き出す作業を行う。このとき、作業者はノズル22を操作していないため、図2に示す液体供給配管1内を灯油等がノズル22に向けて流れておらず、フローセンサ20からの操作指令がない(ステップS3)。この状態で、作業者は、ドラム38がホース21を引き出す方向に回転可能とするために、リモコンRの引出スイッチ64を押す(ステップS4)。制御装置60は、引出スイッチ64からの操作指令を受けて、第二制御弁55のソレノイド55aに制御信号を出力し、第二制御弁55を励磁する(ステップS5)。
【0025】
第二制御弁55が励磁されることで、図5に示す油圧回路内の作動油は、油圧回路中の引出油路hを通ることにより、駆動モータ35側の作動油がタンク50aに戻ることなく駆動モータ35へ戻ることが可能な状態となる。この状態で作業員がホース21を引っ張ると、駆動モータ35はドラム38からホース21が引き出される方向に回転し、作動油が図5の矢印Aに示すように作動油が流れる。このため、ドラム38からホース21は引き出され、ホース21先端のノズル22を各家庭の灯油タンク等の近くまで移動させることができる。
【0026】
次に、作業者はノズル22の先端を各家庭の灯油タンク等の給油口に差込んだ後、ノズル22を操作し灯油タンク等にタンクTの灯油等を供給する。このとき、液体供給配管1内を灯油等がノズル22に向けて流れるので、フローセンサ20がONとなり、制御装置60に操作指令が出力される(ステップS6がYes)。すると制御装置60は、フローセンサ20からの操作指令を受けて、第二制御弁55のソレノイド55aに制御信号を出力し、第二制御弁55が消磁される(ステップS7)。
第二制御弁55が消磁されることで、図5に示す矢印A方向の流れが第二制御弁55により妨げられるので、駆動モータ35はドラム38からホース21が引き出される方向に回転できない。そのため、駆動モータがノズル開閉時にウォータハンマ現象が発生し、ホース21が脈動したとしても、ホース21を引き出す方向のドラム38の回転が規制され、余分なホースが引き出されない。これにより、余分なホース21の引き出しによるホース21の弛みにより、巻取装置3の巻取動作が困難になることを防止できる。
【0027】
その後、供給先への供給が終了間際となると、作業者はノズル22の吐出口の開閉を繰り返し、液体の供給量を微調節する。このとき、作業者による最初のノズル22の吐出口を閉鎖することで、液体供給配管1内の灯油等の流れが止まり、フローセンサ20が非検知(ステップS8のYes)となり、制御装置60に向けて出力されていた操作指令が停止される(ステップS8がYes)。それと同時に、操作指令の停止を受けて、制御装置60内のタイマ66がリセット(ステップS9)された後、計測を開始する(ステップS10)。その後、作業者が液体の供給量を微調節のため、すぐにノズルを開放した場合は、タイマ66が3秒経過しない(ステップS11がNo)状態で、フローセンサ20がONとなり(ステップS12)、第二制御弁55が消磁されたままとなる。このため、ノズルの吐出口を開閉することでホース21内の液体が停止と流動が繰り返され、ウォータハンマ現象が連続して発生し、ホース21が大きく脈動したとしても、ホース21を引き出す方向のドラム38の回転が規制され、余分なホースが引き出されずホース21のたるみが発生しない。また、ノズル22の吐出口を閉鎖してからタイマ66が3秒計測する(ステップS11がYes)と、液体の供給量を微調節する作業が終了したものと判断し、第二制御弁55を励磁する(ステップS13)。これにより、次に灯油等を供給する隣の灯油タンク等の近くまでホース21を引き出す際に、別の操作をすることなくホース21の引き出しを行うことが出来る。
【0028】
各家庭の灯油タンク等への給油が終了すると、タイマ66が所定時間(本実施例では3秒)計測(ステップS11のYes)した後、第二制御弁55を励磁し(ステップS13)、作業者が巻取りスイッチをONにするのを待つ。その後、作業者は巻取スイッチ63をONにする(ステップS14)。すると、制御装置60は、第一制御弁53のソレノイド53aに操作指令を出力することによる第一制御弁53の励磁と、第二制御弁55のソレノイド55aへの操作指令を停止することによる第二制御弁55の消磁と、モータ50cに操作指令の出力することによるモータ50cの駆動とを行う(ステップS15)。
【0029】
これにより、モータ50cの駆動により油圧ポンプ50bから吐出された作動油は、供給側油路iを通って駆動モータ35に入り、戻り側油路oを通ってタンク50aに戻る。すると、作動油により駆動モータ35がドラム38にホース21を巻き取る方向に回転し、巻取装置3にホース21が巻き取られる。ホース21の巻取りが完了すると、作業者は巻取スイッチ63をOFFにする(ステップS16のYes)。これにより、第一制御弁53が消磁すると共にモータ50cの駆動が停止(ステップS17)し、巻取装置3を停止させる。その後、リモコン電源スイッチ62をOFF(ステップS18のYes)、巻取電源スイッチ61をOFF(ステップS19のYes)とした後、ロック装置40のピン40aをドラム38内部へ突出させ、ドラム38の回転を規制する。その後、次の配送先へタンクローリVを移動させる。
【0030】
次に、他実施例について説明する。この他実施例は、前述の実施例と基本構成は同じであるが、油圧回路において異なる点がある。なお、前述の実施例と同じ構成については、同一の符号を付ける。
【0031】
図8は他の実施例の油圧回路図である。図8の油圧回路も図5の油圧回路図とほぼ同様であるが、第二制御弁55のポートのひとつが、両チェック弁となっている点で構成が異なっている。
これにより、図5の油圧回路図の場合は、ノズル21から灯油等を供給する際や車両走行時に、油圧回路内の作動油が矢印Aの反対回り(ドラム38がホース21を巻取る方向)に流れることが出来るため、ホース21の脈動によりドラム38がホース21を巻取る方向に回転し、ホース21が無理に引っ張られる恐れがあるが、図8の油圧回路では、両チェック弁により油圧回路内の作動油が矢印Aの反対回りに流れることも規制するため、ホース21に無理な力が作用せず、ホース21の損傷を防止できる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、引出スイッチ64や巻取スイッチ63をリモコンに設けたが、巻取装置3の近くなどの車両側に設けても良い。この場合、ホース21を巻き取る際に、作業員が必ず巻取装置3の近くにいるため、ホース巻取時に、巻き取られたホースが歩行者や近くの建築物等に接触しないことを目視しながら巻き取ることが出来、安全である。
【0033】
また、本実施例においては、液体供給配管1内の液体の流れの有無を検知するフローセンサ20からの制御信号により第二制御弁55の励磁、消磁を行う構成としたが、引出停止スイッチを無線により遠隔操作可能なリモコンに配置するようにしてもよい。これにより、引出停止スイッチの操作により、第二制御弁55が励磁され、ホース21を引き出す方向へのドラム38の回転が規制され、余分なホースが引き出されない。
【符号の説明】
【0034】
V タンクローリ
T タンク
1 液体供給配管
3 巻取装置
35 駆動モータ
53 第一電磁弁
54 バイパス油路
55 第二電磁弁
60 制御装置
i 供給側油路
o 戻り側油路
h 引出油路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8