特許第5784385号(P5784385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5784385パネル材、建物、及びパネル材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784385
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】パネル材、建物、及びパネル材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/04 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   E04C2/04 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-140547(P2011-140547)
(22)【出願日】2011年6月24日
(65)【公開番号】特開2013-7207(P2013-7207A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】大石 哲央
(72)【発明者】
【氏名】金行 興樹
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−063881(JP,A)
【文献】 特開2005−009173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/04
E04B 2/56
E04F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を建築する際に複数が連接されて使用されるパネル材であって、
前記パネル材表面に、連接方向に一致するように形成された複数の化粧溝と、
前記化粧溝と直交するように、少なくとも、連接される他の前記パネル材との連接部に形成された複数の直交溝と、
対向する一対の前記化粧溝と対向する一対の前記直交溝とによって画成された矩形表面部と、を備え、
前記矩形表面部の縦幅が、連接方向に不均一な揺らぎを有し、
前記化粧溝は断面V字形状であり、且つ前記連接方向で深さが異なることを特徴とするパネル材。
【請求項2】
前記化粧溝は、回転によって円錐形状の孔部を形成可能であり、且つ回転軸方向に往復動可能である切削刃を前記回転軸方向に往復動させながら前記連接方向に移動させることで形成されたことを特徴とする請求項1記載のパネル材。
【請求項3】
軽量気泡コンクリートからなることを特徴とする請求項1または2記載のパネル材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載のパネル材が連接されて外壁が構成されたことを特徴とする建物。
【請求項5】
建物を建築する際に複数が連接されて使用されるパネル材を、板状のパネル素材を用いて製造する方法であって、
前記パネル素材を載置する載置面の法線方向に回転軸を有し、回転によって前記パネル素材に円錐形状の孔部を形成可能であり、且つ回転軸方向に往復動可能である切削刃を前記連接方向に移動させて前記パネル素材の表面を切削して断面V字形状の化粧溝を複数形成する化粧溝形成工程と、
少なくとも、連接される他の前記パネル材との連接部に設けられた直交溝を含む複数の直交溝を形成する直交溝形成工程と、を備え、
前記化粧溝形成工程と前記直交溝形成工程との実行によって複数の矩形表面部を形成し、
前記化粧溝形成工程において、前記切削刃を前記回転軸方向に往復動させて切削深さを変動させながら前記連接方向に移動させることにより、前記矩形表面部の縦幅に連接方向に不均一な揺らぎを持たせることを特徴とするパネル材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧溝が切削されたパネル材、及び当該パネル材によって外壁が構成された建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁等に用いられるパネル材には、製造工程の最終段階でパネル材の元となるパネル素材の表面を切削することによって横方向の化粧溝と縦方向の化粧溝とが形成され、縦、横の化粧溝によって矩形升目状の模様が規則的に並ぶタイル柄が形成される場合がある。例えば、パネル材が軽量気泡コンクリート(ALC)からなる場合、このパネル材は、例えば、オートクレーブ養生した板状の部材に化粧溝を切削するという工程を経て製品化される。化粧溝が切削形成されたパネル材としては、特許文献1、及び2に記載のパネル材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−210148号公報
【特許文献2】特開2000−129810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パネル材の元となるパネル素材に直線状の化粧溝を形成する場合、一般には、見栄えなどを考慮して出来るだけ真っ直ぐな直線に近づけようと試みる。しかしながら、化粧溝が視覚的に直線に近づいたとしても、タイル柄の各矩形(ブロック)模様の幅が不均一では、特に、複数のパネル材を横方向に連接した際の目地部においてズレ(タイル柄の大きさの違い)が際立ってしまい、視覚的な見栄えが悪くなる。また、パネル素材によっては強度や納まり等に問題がない程度(許容範囲内)の反りを有するものもあり、その反りにも個体差がある。従って、直線状の化粧溝で均一な縦幅を確保しようとすると、反りを解消すべく、パネル素材の表面を平坦に加工した後に化粧溝を切削する必要があり、製造工程数も増えて効率的ではない。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、複数のパネル材を横方向に連接した際の目地部における化粧溝のズレを意図的に目立たなくすることで外観意匠性を向上できるパネル材、及び、そのパネル材を用いた外壁を有する建物、及びパネル材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物を建築する際に複数が連接されて使用されるパネル材であって、パネル材表面に、連接方向に一致するように形成された複数の化粧溝と、化粧溝と直交するように、少なくとも、連接される他のパネル材との連接部に形成された複数の直交溝と、対向する一対の化粧溝と対向する一対の直交溝とによって画成された矩形表面部と、を備え、矩形表面部の縦幅が、連接方向に不均一な揺らぎを有し、化粧溝は断面V字形状であり、且つ連接方向で深さが異なることを特徴とする。
【0007】
本発明では、矩形表面部の縦幅が、連接方向に不均一な揺らぎを有し、さらに、化粧溝に直交する直交溝が連接部に配置されているので、複数のパネル材を連接する場合において、直交溝を挟むようにして隣り合う矩形表面部同士のズレは目立たない。従って、複数のパネル材を連接した際の外観意匠性を向上できる。
【0008】
さらに、化粧溝は、回転によって円錐形状の孔部を形成可能であり、且つ回転軸方向に往復動可能である切削刃を回転軸方向に往復動させながら連接方向に移動させることで形成される。この構成では、矩形表面部の縦幅の揺らぎを、切削刃の連接方向に移動させながら往復動させることで簡単に実現できる。
【0009】
さらに、パネル材は、軽量気泡コンクリートからなると好適である。軽量気泡コンクリートは加工性に優れるため、矩形表面部の揺らぎの形成に有利である。
【0010】
また、本発明に係る建物は、上記のパネル材が連接されて外壁が構成されたことを特徴とする。本発明によれば、複数のパネル材を横方向に連接した際の目地部における化粧溝のズレを意図的に目立たなくすることができ、建物の外観意匠性を向上できる。
【0011】
また、本発明は、建物を建築する際に複数が連接されて使用されるパネル材を、板状のパネル素材を用いて製造する方法であって、パネル素材を載置する載置面の法線方向に回転軸を有し、回転によってパネル素材に円錐形状の孔部を形成可能であり、且つ回転軸方向に往復動可能である切削刃を連接方向に移動させてパネル素材の表面を切削して断面V字形状の化粧溝を複数形成する化粧溝形成工程と、少なくとも、連接される他のパネル材との連接部に設けられた直交溝を含む複数の直交溝を形成する直交溝形成工程と、を備え、化粧溝形成工程と直交溝形成工程との実行によって複数の矩形表面部を形成し、化粧溝形成工程において、切削刃を回転軸方向に往復動させて切削深さを変動させながら連接方向に移動させることにより、矩形表面部の縦幅に連接方向に不均一な揺らぎを持たせることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、複数を横方向に連接した際の外観意匠性を向上できるパネル材を製造できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のパネル材を横方向に連接した際の外観意匠性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るパネル材を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図であり、化粧溝の断面を示す図である。
図3図1のIII−III線に沿った断面図であり、直交溝の断面を示す図である。
図4】パネル材を横方向に連接した状態を示す拡大図であり、(a)は、本実施形態に係るパネル材の連接状態を示す平面図であり、(b)は、参考例に係るパネル材の連接状態を示す平面図であり、(c)は、(b)のC−C線に沿った断面図である。
図5】化粧溝の切削工程を模式的に示す図であり、(a)は、切削刃でパネル素材を切削している状態を示す図であり、(b)は、化粧溝の切削工程の完了により得られたパネル材の表面を示す平面図である。
図6】複数のパネル材が連接されて外壁が構成された建物の一部分を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図6に示されるように、本実施形態に係るパネル材(図1参照)1は、各階において横方向Hに連接され、工業化住宅などの建物50の外壁51を構成する。外壁51を構成した際の屋外側の面であるパネル材1の表面1aには、横方向H、つまりパネル材1の連接方向に切削された線状の横溝(以下、「化粧溝」という)3、及び横方向Hに直交する縦方向Vに切削された線状の縦溝(以下、「直交溝」という)5A,5Bの交差によって升目状の柄(タイル柄)が形成されている。従って、複数のパネル材1を連接して外壁51を形成した際には、タイル柄が連続して連なり、全体としてまとまりのある外観意匠が形成される。
【0017】
図1図2、及び図3に示されるように、本実施形態に係るパネル材1は、軽量気泡コンクリート(ALC)からなる。ALC製のパネル材1によれば、加工性に優れるので化粧溝3や直交溝5A、5Bの形成に有利であるが、他の材料からなるパネル材1であってもよい。
【0018】
工業化住宅の外壁51に使用される場合、パネル材1は、建物50のモジュールに基づいて幾つかの幅寸法のバリエーションが標準化されて準備されている。本実施形態に係るパネル材1の場合、パネル材1は矩形状をなし、一対の対向する長辺部1bと、一対の対向する短辺部1cと、を有する。パネル材1を連接する際には、長辺部1bが縦、短辺部1cが横になり、長辺部(連接部)1bが横方向Hに連接される他のパネル材1の長辺部(連接部)1bと付き合わされて目地部52(図4、及び図6参照)が構成される。
【0019】
パネル材1の表面1aには、横方向Hに線状に切削された化粧溝3が複数形成されている。化粧溝3は、縦方向Vで略等間隔に並んで配置されている。
【0020】
図2に示されるように化粧溝3は断面V字形状であり、化粧溝3の深さDaは、所定範囲で横方向Hに不均一となるように形成されている。また、化粧溝3の幅Waも、所定範囲で横方向(図1参照)に不均一となるように形成されている。なお、横方向に不均一とは、化粧溝3の深さDaや化粧溝3の幅Waを横方向Hにおいて異なる数箇所で測定した場合にばらつきを生じることを意味する。
【0021】
パネル材1の表面1aには、複数の直交溝5A、5Bが、縦方向Vに線状に切削されており、横方向Hには略等間隔に形成されている。
【0022】
パネル材1の中間部(端ではない内側寄りの部分)に形成された3本の直交溝5Aは、断面略台形状、具体的には、直交溝5Aの底面5aと勾配が急な傾斜面5bとの間に、勾配が緩な傾斜面5cを介在させた形状になっている。また、長辺部1bに形成された直交溝5Bは、横方向Hに連接される他のパネル材1の長辺部1bの直交溝5Bと組み合わされることによって中間部の直交溝5Aと略同一断面形状となるように構成されている。
【0023】
直交溝5A、5Bの深さ、及び直交溝5A、5Bの幅は、化粧溝3とは異なり、縦方向Vに意図的に不均一となるようには形成されていない。つまり、直交溝5A、5Bの深さDbは、9mm程度であり、このうち、緩な勾配の傾斜面部分の深さDcは3mm程度である。また、直交溝5Aの幅Wb、及び直交溝5B同士を付き合せた際の幅Wbは、25mm程度であり、このうち、片方の傾斜面部分の幅Wcは3mm程度である。
【0024】
パネル材1の表面1aの全面には、複数の化粧溝3、及び複数の直交溝5A、5Bの形成により、矩形ブロック状の非切削部(以下、「矩形表面部」という)7が縦方向V、及び横方向Hに規則的に並び、タイル調の意匠が形成される。
【0025】
矩形表面部7は、互いに交差する化粧溝3と直交溝5A、5Bとを形成した後の、パネル材1の表面1aの矩形状の残余部分である。従って、矩形表面部7は、対向する一対の化粧溝3と、対向する一対の直交溝5A、または直交溝5A、5Bとによって画成されており、対向する一対の化粧溝3同士の間隔、すなわち縦幅Lwが不均一な揺らぎを有している。
【0026】
次に、本実施形態に係るパネル材1の製造方法について説明する。パネル材1はALCからなり、最初に、発泡膨張したブロック体を半硬化状態でピアノ線等を用いて所定の寸法にカットして板状のパネル素材2を形成し、その後オートクレーブ養生する(パネル素材形成工程)。
【0027】
次に、パネル素材形成工程で得られた養生後のパネル素材2に対して切削溝形成工程を実行して化粧溝3、及び直交溝5A、5Bを形成する。切削溝形成工程では、化粧溝3を切削形成する化粧溝形成工程と、直交溝5A、5Bを切削形成する直交溝形成工程とを実行する。この化粧溝形成工程や直交溝形成工程での切削加工は、工場の製造ラインの中で自動制御された切削装置を用いて行われる。
【0028】
なお、パネル素材形成工程において、パネル素材2には、温度変化(表面1a側と裏面側の収縮率の違い)などによって性能には影響のない若干の反りが生じていることがある。ここで、性能には影響のない若干の反りとは、例えば、幅600mmのパネル素材2を平坦な面に載置した際、パネル素材2の浮き上がりが1mm以内となるような反りである。
【0029】
ここで、例えば、従来の方法(特許文献参照)のごとく切削刃を単に横方向に移動させて化粧溝を形成する場合、反りに起因してパネル素材が載置面から浮き上がっていると、切削刃による切削深さがパネル素材の浮き上がりの度合いに応じて増大し化粧溝の幅が広がることになる。一方で、反りが無い場合には、化粧溝の幅は一定である。つまり、個体差である反りの有無によってパネル材の化粧溝の幅が広がったり、一定であったりすると、複数のパネル材を連接した際に目地部において化粧溝の幅のずれが目立ってしまい、外観意匠性が低下する可能性がある。
【0030】
一方、本実施形態に係る切削溝形成工程によれば、外観意匠性の低下を防止できる化粧溝3の形成が可能である。この理由について、化粧溝形成工程を中心に詳細を説明する。
【0031】
化粧溝形成工程において化粧溝3の断面形状をV字状にする場合には、パネル素材2を載置する載置面Bの法線方向Nに回転軸Sを有し、回転によってパネル素材2に円錐形状の孔部を形成可能な切削刃Cを用いる。図5に示されるように、化粧溝形成工程では、切削刃Cを回転軸方向に往復動させながら切削刃Cを横方向Hに移動させることにより、パネル素材2の表面1aを切削して断面V字形状の化粧溝3を複数形成する。この場合、切削刃Cによる切削深さが増すにつれ化粧溝3の幅が大きくなる。
【0032】
この化粧溝形成工程では、載置面Bに対する切削刃Cの離間距離が一定の周期で変化する軌跡Haを描くように切削刃Cを移動させ、その結果として化粧溝3の幅に横方向Hで変化を持たせる。例えば、切削刃Cが側面視で所定の振幅のサインカーブを描くよう移動させたり、または、所定の振幅内で切削深さがランダムに変化するように移動させたりする。
【0033】
上記のように、切削刃Cを回転軸方向に往復動させながら横方向Hに移動させて化粧溝3を形成することで、パネル素材2の反りの有無に関係なく化粧溝3の幅がばらつき、その結果、矩形表面部7の縦幅Lwが不均一になり揺らぎが形成される(図5(b)参照)。
【0034】
例えば、パネル素材2の表面が完全に平坦な場合、化粧溝3の深さDaが、6mm〜6.5mmの範囲で、化粧溝3の幅Waは、22mm〜24mmの範囲で、波状に変動するように設定する。ここで、前述した反りを考慮した場合、化粧溝3の深さDaは、6mm〜7.5mmの範囲で、化粧溝3の幅Waは、22mm〜28mmの範囲で変動することになり、揺らぎの変動幅は2mm〜6mmとなる。
【0035】
なお、化粧溝3の幅に揺らぎが生じても、化粧溝3の線状の最深部はパネル材1の表面1aを目視した際に一直線状態が保たれ、連接される他のパネル材1とのズレも生じない。つまり、中心線がブレないので化粧溝3は幅が若干変動しても蛇行しているようには見えず、その結果整然と配列された矩形表面部7のタイル調の意匠が保たれる。
【0036】
また、直交溝形成工程では、意図的に直交溝5A,5Bの深さや幅を縦方向Vに意図的に不均一となるようには形成する必要はなく、例えば、化粧溝形成工程で用いた切削刃Cを縦方向に直線的に移動させることで直効溝5A,5Bを形成するようにしてもよい。
【0037】
以上、本実施形態に係るパネル材1では、矩形表面部7の縦幅Lwが、横方向Hに不均一な揺らぎを有しており、さらに、化粧溝3に直交する直交溝5Bが目地部52に配置されている。従って、複数のパネル材1を連接する場合において、直交溝5B(または目地部52)を挟むようにして隣り合う矩形表面部7同士のズレは目立たない(図4(a)参照)。従って、複数のパネル材1を横方向Hに連接した際の外観意匠性を向上でき、その結果、パネル材1が複数連接された外壁51を有する建物50の外観意匠性を向上できる。
【0038】
ここで、図4(a)は、本実施形態に係るパネル材1を横方向Hに連接した態様を示し、図4(b)、(c)では、矩形表面部に揺らぎが形成されていない参考例に係るパネル材100A,100Bを横方向に連接した態様を示している。なお、図4(b)は平面図であり、(c)は、図4(b)のc−c線に沿った断面図である。
【0039】
図4(b)、(c)に示されるように、参考例に係るパネル材100A,100Bでは、化粧溝の幅は、反りによる載置面からのパネル材100A,100Bの浮き上がりによってのみ変動するが、端部が反り上がったパネル材100Aと反りのないパネル100Bが連接されると、目地部において、化粧溝の幅(矩形表面部101の大きさ)の違いが目立ってしまう。一方で、本実施形態に係るパネル材1によれば、化粧溝3の幅(矩形表面部7の縦幅Lw)のズレが目立ち難くなり、外観意匠性の向上に有利である。
【0040】
また、本実施形態において化粧溝3は、回転によって円錐形状の孔部を形成可能であり、且つ回転軸S方向に往復動可能である切削刃Cを回転軸S方向に往復動させながら横方向(連接方向)Hに移動させることで形成され、化粧溝3は断面V字形状であり、且つ横方向Hで深さが異なるものである。この構成の採用の結果、矩形表面部7の縦幅Lwの揺らぎを、切削刃Cを横方向Hに移動させながら往復動させることで簡単に実現できる。
【0041】
また、パネル材1は、ALCからなり、ALCは加工性に優れるため、矩形表面部7の揺らぎの形成に有利である。
【0042】
また、上記のパネル材1の製造方法によれば、矩形表面部7の縦幅Lwが横方向(連接方向)Hに不均一な揺らぎを有するパネル材1を容易に製造できる。
【符号の説明】
【0043】
1…パネル材、1a…パネル材の表面、3…化粧溝、5A,5B…直交溝、7…矩形表面部、50…建物、51…外壁、52…目地部(連接部)、Da…化粧溝の深さ、Lw…縦幅、H…横方向(連接方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6