(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、比較的小さい光学素子によるリレー光学系と接眼光学系で構成され、広画角かつ大きな射出瞳を形成し、さらにゴースト、フレアを抑制された高い解像力を有する観察光学系と、画像表示素子を用いることで、小型軽量、低コスト化が可能でかつ、装着した人に違和感の少ない画像表示装置を提供するところにある。
【0006】
特許文献1では、観察像を表示する画像表示素子と、画像表示素子の画像を中間像を形成するリレー光学系と、その実像を射出瞳位置から観察する接眼鏡とを具備した表示光学系であり、射出瞳の周辺部を通る光束の一部を遮断する絞り部材によってゴーストやフレアの少ない光学系とするものであるが、この光学系では、リレー光学系は複数個の球面、または非球面レンズを用い、さらに2面の偏心非球面からなる補正光学系を用いているために、光学系は大型化し、重量が増大する。さらに左側は、リレー光学系と接眼鏡との間に相互に偏心した面で構成された偏心補正光学系を具備しており、コスト、重量ともに不利になる。また、より広画角になると接眼するプリズムが実現できないほど大型化する恐れがある。
【0007】
特許文献2には、画像表示素子9と画像表示素子9に表示された画像を中間実像を結像することなく観察者の眼球7に導く接眼光学系10と、画像表示素子9及び接眼光学系10を観察者の頭部又は顔面に保持する保持手段とを有する画像表示装置において、接眼光学系10と観察者の眼球7との間に開口22を有する遮光板21を設けて、画像表示素子9からの光及び外界からの光に基づくフレア光、ゴースト光を遮断することが開示されている。この構成であれば、観察者と観察光学系の間に遮光板を設けるため、光学系から観察者までの距離、いわゆるアイリリーフを長く取る必要があり、広画角の光学系の場合には装置が巨大化するため、現実的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様に係るズームレンズは、
複数のレンズ群を有し、前記複数のレンズ群は、物体側から順に、正の屈折力を持つ第1レンズ群、負の屈折力を持つ第2レンズ群、正の屈折力を持つ第3レンズ群、正の屈折力を持つ第4レンズ群、負の屈折力を持つ第5レンズ群、正の屈折力を持つ第6レンズ群からなり、前記第1レンズ群は反射光学素子を含み、前記第4レンズ群
は、複数のレンズ成分を有し、前記複数のレンズ成分のうち最も像側のレンズ成分が負の屈折力を持つことを特徴とする。
【0009】
本発明の画像表示装置は、小型の画像表示素子を観察光学系によって観察者に拡大された虚像を呈示するようにした画像表示装置において、画像表示素子の周辺光束の一部を遮蔽することにより、観察者の頭部(顔面)と観察光学系の光束の干渉を抑制し、ゴースト、フレアを低減すること、かつ光学素子を小型化させることを可能にしたものである。
【0010】
特に、リレー光学系によって画像表示素子の画像の中間像を形成し、その中間像を接眼光学系によって観察者眼球に虚像を投影する観察光学系において本発明は有効に作用するものである。
【0011】
図1は、本発明の特徴である遮蔽部を有していない画像表示装置の構成、及び、その光線図を示した図である。この図に示されるように、画像表示素子5から射出した光は、画像表示素子5に面したリレー光学系40(自由曲面プリズム)の第1面41から入射し、第2面42で内部反射し、再び第1面41にて内部反射され、第3面43から射出する。このリレー光学系40の第2面42がもっている強い正のパワーによって、リレー光学系40から射出した後に中間像(中間像面103)を形成する。この中間像を接眼光学系30によって観察者眼球2に投影することで、観察者は拡大された虚像を観察することが可能となる。
【0012】
画像表示素子5から射出する像光の内側光束はリレー光学系40を介して射出した後、観察者顔面の近傍を通過する。投影する画角が大きい場合には、内側光束は、観察者顔面と光束が干渉、すなわち、光束が観察者顔面で阻害される場合がある。ここで、内側とは、観察者が観察するときに、水平方向において鼻側の画像を観察する場合をいう。なお、
図1並びに以後に示す図において、観察者1の顔面輪郭について、観察斜眼球2付近におけるY−Z平面での断面を実線で、鼻頂付近でのY−Z平面での断面を破線で示している。
【0013】
画像表示素子5のある1点から射出した光束の全てが顔面で遮断された場合には、画面の周辺が観察できないことになる。しかし、その光束の遮断が一部であれば、残りの光束が観察者眼球2に導光されることとなり、周辺まで違和感なく観察することが可能である。特に、観察光学系の射出瞳径を大きく設定した場合には、瞳の一部の光束が遮蔽されても、実質的には瞳径が小さくなったことと等価であり、観察像が見えなくなるわけではない。
【0014】
また、観察者顔面で遮蔽された光束は、観察者顔面上で乱反射することにより、フレア、ゴースト等の原因となる可能性がある。ここでは、不要光が観察画面内で観察される場合をフレア、不要光が観察画面外で観察される場合をフレアという。画像表示装置としては、画像表示素子5からの光を観察者顔面等と干渉しないようにする必要がある、
【0015】
一般的に観察光学系の大きさは、おおむね画像表示素子5の大きさと、光学系の明るさ、および画角によって決まる。広画角の観察光学系の場合には、光線の広がりに伴い、構成する光学素子の大きさが加工上問題になる場合がある。特に、接眼光学系30とリレー光学系40によって構成される観察光学系は、それぞれの光学素子をいかに小さくするか
が重要となる。
【0016】
接眼光学系30の大きさは、観察画角に従いほぼ一義的に決まる。画角をωとし、観察者眼球2から接眼光学系40までの距離をDとすると、接眼光学系の大きさは、
2tan(ω/2)×D
と瞳径の大きさの和として表すことができる。
【0017】
一方、リレー光学系40は画像表示素子5の原画像を空中に中間像として結像するため、その形態は設計思想によってさまざまな形状、大きさにすることができる。本発明では、回転非対称面を互いに偏心した複数の面によって形成された空間を屈折率1以上の媒質によって満たされた偏心プリズムによって構成される。その場合には、画像表示素子5から射出した光をこの偏心プリズムによって、接眼光学系30との空間中に1次像を形成するため、偏心プリズムから光線が射出する面が存在する。
【0018】
そのため、
図2に示すように、
図1の構成において画像表示素子5の周辺光束の一部を遮蔽する遮蔽部を設けることで、観察者頭部と観察光学系の光束の干渉を抑制し、ゴースト、フレアを低減すると共に(リレー光学系40)の大きさを制限することに成功したものである。
図2の実施例では、リレー光学系40の第3面43に周辺光束の一部を遮蔽する遮蔽部Bを設けているが、画像表示素子5から接眼光学系3の間の光路上、周辺光束が観察者の顔面にて阻害されないようにするものであれば、適宜構成、配置をとることができる。
【0019】
さらに本発明に係る画像表示装置において、前記遮蔽部によって遮蔽される前記周辺光束は、観察時の水平方向において、内側の光束であることを特徴とする。
【0020】
ここで、内側とは観察者1の鼻側の光束、言い換えると観察者1に近接した方を通過する光束のことをいう。このように内側の光束を遮蔽することで、光束が観察者の顔面で乱反射し、観察する画像にゴースト、フレアを発生させることを抑制する。
【0021】
さらに本発明に係る画像表示装置において、前記遮蔽部によって遮蔽される前記周辺光束は、内側及び外側の光束であることを特徴とする。
【0022】
水平方向において、内側の光束だけ遮断すると、画面の片側だけ光束が小さくなるため、観察者1の眼球位置によっては内側だけ暗くなる可能性がある。外側の光束も内側と同様に光束を一部遮断することで、左右の対象性が保たれ、違和感がない画像を観察することができる。
【0023】
さらに本発明に係る画像表示装置において、前記遮蔽部は、前記観察者の顔面で前記画像表示素子から射出される光束が阻害されないように、前記周辺光束の一部を遮蔽することを特徴とする。
【0024】
さらに本発明に係る画像表示装置において、前記遮蔽部は、前記リレー光学系の射出面に設けられることを特徴とする。
【0025】
さらに本発明に係る画像表示装置において、前記遮蔽部は、前記リレー光学系の入射面に設けられることを特徴とする。
【0026】
リレー光学系の射出面あるいは入射面に遮光部材を配設する、または、コーティングを施すことで、光束を遮蔽するための別の手段を設ける必要が無く、コストアップすることがなく、装置が大型化することもない。
【0027】
さらに本発明に係る画像表示装置において、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
1 < E×(1−Ob) < 18 ・・・(1)
ただし、前記観察光学系の射出瞳位置が前記観察者の瞳位置近傍の場合、
E:射出瞳径、
Ob:射出瞳位置での光束の遮光率、である。
【0028】
射出瞳は、観察光学系の仕様によって決まるが、観察画角が大きくなるにしたがって、射出瞳径も大きくなるほうが観察しやすい。眼球に入射する光束の画角が広くなるため、射出瞳径に対して大きな角度を持った光束が瞳孔に入射しなければならない。しかし、大きな角度で入射する光は、瞳面上では扁平されるため、入射光束はあらかじめ大きくすることが必要である。また同時に、眼球運動を伴って観察することが多くなるため、観察光学系の射出瞳位置を眼球回旋中心近傍に設けることで、眼球の回転があっても画面周辺まで観察することができる仕様となる。
【0029】
条件式(1)の値は、周辺画像の光束が射出瞳、つまり瞳孔にどれだけの光束が入射するのかを表しており、適正な範囲にあることで、観察者に鮮明な表示画面を提供し、かつ画像表示装置の大きさも巨大化することもないための条件である。
【0030】
本実施形態の観察光学系の射出瞳径Eは10mm、遮光率Obは0.5であり、条件式(1)の値は5mmとなる。この場合には、到達する光束は人間の瞳孔径以上であり、周辺まで観察することが可能である。
【0031】
上限18mmを超えて大きくなると、射出瞳が大きくなるのに伴って、装置が巨大化し、コストも高くなり、現実的ではない。下限1mmを下回ると観察者眼球に入射する光束が少なくなり、画像観察することが困難になる。
【0032】
さらに本発明に係る画像表示装置において、前記接眼光学系は、偏心した凹面反射面を含むことを特徴とする。
【0033】
広画角を実現するためには、逆光線追跡で考えると、眼球から広い画角で射出した略平行光束を観察者頭部に干渉しないように全光束を屈曲し、かつ中間像を形成するためには、偏心した凹面鏡を観察者眼球の直前に配置することが望ましい。
【0034】
さらに本発明に係る画像表示装置において、
前記リレー光学系は、少なくとも3面で構成された空間を屈折率1以上の透明媒質によって満たされた偏心プリズムであることを特徴とする。
【0035】
リレー光学系は画像表示素子の減画像を観察光学系内で中間像を形成する必要があり、大きなパワーを有する必要がある。このような光学系は、通常のレンズ系で構成する場合は、複数枚のレンズにより構成しなければならず、さらに、接眼光学系に偏心光学系を用いる場合には、接眼光学系で発生する偏心収差をリレー系で補正する必要があり、通常のレンズ系では補正しきれない。そこで、リレー光学系を偏心プリズムとすることで、光学素子を1個で構成することが可能となる。
【0036】
さらに本発明に係る画像表示装置において、前記観察光学系の少なくとも1面は回転非対称面にて構成されていることを特徴とする。
【0037】
偏心した光学面によって構成された観察光学系は偏心によって偏心収差が生じる。この
偏心収差を補正するためには、通常用いられる回転対称面では補正することが困難となる。構成する光学面の少なくとも1面は回転非対称面で構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の画像表示装置によれば、画像表示素子の原画像を虚像として観察者眼球に投影することが可能な観察光学系において、小型、軽量化を図ると共に、フレアあるいはゴーストが低減された良好な画像を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明の画像表示装置の観察光学系と観察者顔面との関係を示すため、遮蔽部によって光線を遮蔽しないと仮定した場合の画像表示装置の構成を示した図であって、観察者の右眼に対して観察光学系を配備した場合を示している。この実施形態における観察光学系の水平画角は80度である。
【0041】
画像表示装置は、画像表示素子5と、観察光学系を備えて構成されている。観察光学系は、接眼光学系30とリレー光学系40にて構成されている。観察光学系の後側焦点位置近傍に画像表示素子5が設置されているため、観察者には、画像表示素子5に表示された原画像が拡大投影された虚像として認識される。
【0042】
このような観察光学系の場合、内側の光束が観察者顔面と干渉しやすくなる。
図1の光学系のA部の光線は実際にはリレー光学系40からは射出しない光線であるが、今、仮にリレー光学系40が大きく、A部の光線が第3面43から射出すると仮定した場合、
図1において破線丸印で囲まれた領域Aの箇所において、リレー光学系40から射出された光束が、観察者の顔面で遮断される(干渉を起こす)こととなる。このように顔面と干渉した場合には、光束が顔面を照射することになり、その光の乱反射により、フレアあるいはゴーストの要因となる。さらに、光束の全てが遮蔽された場合には、周辺画像が観察できない場合が生じてしまう。
【0043】
図2は、本発明の実施形態に係る画像表示装置の構成、及び、光線図を示した図である。本実施形態は、
図1の画像表示装置において、リレー光学系40の射出面部分(第2面42)に遮蔽部Bを設け、内側周辺光束の約半分を遮蔽するようにしている。
図1では観察者顔面と干渉していた光束が、内側光束の約半分をリレー光学系40であるプリズムの射出面で遮蔽したことで、顔と光線の干渉が解消されていることがみてとれる。このように遮蔽部Bを設けた場合、観察画面の内側画像から射出した光は約半分の光束になるが、観察者は瞳孔内に光束が入射すれば観察することはできるため、画面の周辺まで見えなくなることはない。
【0044】
遮蔽部Bは、画像表示素子5から接眼光学系30に入射する光路上、周辺光束が観察者の顔面にて阻害されないようにするものであれば、適宜構成、配置をとることができる。本実施形態では、リレー光学40の射出面部分(第3面43)から周辺光束の一部が射出されないように、射出面部分に光を吸収する塗料を塗ることとしている。周辺光束を遮蔽する手段としては、画像形成には関係のない方向に反射させることとしてもよい。また、
遮蔽部Bは、リレー光学系40の表面、あるいは、内部に設ける以外に、画像表示素子5とリレー光学系40の間、あるいは、リレー光学系40と接眼光学系30の間に別構成で設けることとしてもよい。
【0045】
設計において、射出瞳21に入射する光束はできるだけ大きくすることで、観察者には観察しやすい光学系になる。特に、広画角な光学系になるほど、眼球運動を伴う観察を行う可能性が高く、広い射出瞳にする必要がある。人間の瞳孔径は観察する物体輝度により変化するが、通常用いられる画像表示素子5の輝度から考えると瞳孔径は2〜4mm程度と考えられる。それに対して観察光学系3の射出瞳を大きく設定しており、その大きな射出瞳の中のどこかに観察者の瞳孔を配置すれば観察者は拡大した虚像を観察できる。
【0046】
本実施形態の観察光学系3の場合、射出瞳径は8〜12mmとしているが、観察する画像の周辺画像においては、必ずしも全ての光束を射出瞳内に導く必要が無く、射出瞳により決まる光束径の半分程度の光が瞳に到達すれば、4mm以上の光束が瞳孔に入射されることになる。したがって、画面周辺の周辺光束については、射出瞳の半分の光線を遮断するようにしても、観察者は全画面を観察することが可能である。
【0047】
図3は、
図2で説明した本実施形態の画像表示装置において、リレー光学系40の小型化のメリットを説明するための比較例を示した図である。
図3の画像表示装置は、
図2の実施形態と同様、リレー光学系40と接眼光学系30からなる観察光学系3を有するものであって、画像表示素子5のスペックならびに観察光学系3の画角は同じ設定である。また、
図2の場合と異なり、遮蔽部を設けることなく、リレー光学系40から出射される光束が、観察者の顔面にて阻害されないように設計している。図では、リレー光学系40の第3面43から出射された光線が、破線で示す観察者1の輪郭と交差しているが、観察者1の顔面は立体的であって、実際にはリレー光学系40からの光束は阻害されていない。
【0048】
図2と
図3のリレー光学系40のみの大きさを比較したものが
図4に示されている。
図4(a)は、
図2の本発明の実施形態に係るリレー光学系40が、
図4(b)には、
図3の比較例におけるリレー光学系についてY−Z断面図が示されている。そして、
図4(c)は、大きさを比較するために
図4(a)、
図4(b)の断面図を重ねた状態を示している。
【0049】
図4(c)から明らかに、
図3のリレー光学系40に比べ、
図2のリレー光学系の断面積は小さいことがみてとれる。なお、本発明の実施形態に係るリレー光学系40のY−Z面内の断面積は、比較例のリレー光学系40の約0.6倍である。このように、本実施形態のように遮蔽部を設けたことで、光学素子の設計自由度の幅を大きくとることが可能となり、同じ仕様であっても光学素子の大きさを小さくすることが可能となっている。
【0050】
以下、本発明の画像表示装置について
図2に示す実施例と、
図3に示す比較例について数値実施例を示す。この数値実施例においては、
図2、
図3に示すように、逆光線追跡で、軸上主光線102を、接眼光学系の射出瞳21の中心を通り、像面(画像表示素子)5の中心に到る光線で定義している。
【0051】
実施例、比較例においては、軸上主光線(観察者視軸)102の進行方向に沿った方向をZ軸正方向とし、このZ軸と像面中心を含む平面をY−Z平面とし、原点を通りY−Z平面に直交し、紙面の手前から裏面側に向かう方向をX軸正方向とし、X軸、Z軸と右手直交座標系を構成する軸をY軸とする。
【0052】
実施例、比較例では、このY−Z平面内で各面の偏心を行っており、また、各回転非対称自由曲面の唯一の対称面をY−Z面としている。偏心面については、対応する座標系の
原点から、その面の面頂位置の偏心量(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向をそれぞれX、Y、Z)と、その面の中心軸のX軸、Y軸、Z軸それぞれを中心とする傾き角(それぞれα、β、γ(°))とが与えられている。なお、その場合、αとβの正はそれぞれの軸の正方向に対して反時計回りを、γの正はZ軸の正方向に対して時計回りを意味する。
【0053】
また、実施例、比較例の光学系を構成する光学作用面の中、特定の面(仮想面を含む)とそれに続く面が共軸光学系を構成する場合に、面間隔が与えられており、その他、媒質の屈折率、アッベ数が慣用法に従って与えられている。
【0054】
また、本実施形態で用いられる自由曲面の面の形状は次式(a)式により定義し、その定義式のZ軸が自由曲面の軸となる。
Z=cr
2 /[1+√{1−(1+k)c
2r
2 }]
65
+Σ Cj X
m Y
n ・・・(a)
j=2
ここで、(a)式の第1項は球面項、第2項は自由曲面項である。
【0055】
球面項中、
R:頂点の曲率半径
k:コーニック定数(円錐定数)
r=√(X
2 +Y
2 )
である。
【0056】
自由曲面項は、
66
Σ Cj X
m Y
n
j=2
=C1
+C2 X+C3 Y
+C4 X
2 +C5 XY+C6 Y
2
+C7 X
3 +C8 X
2 Y+C9 XY
2 +C10Y
3
+C11X
4 +C12X
3 Y+C13X
2 Y
2 +C14XY
3 +C15Y
4
+C16X
5 +C17X
4 Y+C18X
3 Y
2 +C19X
2 Y
3 +C20XY
4
+C21Y
5
+C22X
6 +C23X
5 Y+C24X
4 Y
2 +C25X
3 Y
3 +C26X
2 Y
4
+C27XY
5 +C28Y
6
+C29X
7 +C30X
6 Y+C31X
5 Y
2 +C32X
4 Y
3 +C33X
3 Y
4
+C34X
2 Y
5 +C35XY
6 +C36Y
7
・・・・・・
ただし、Cj (jは2以上の整数)は係数である。
【0057】
上記自由曲面は、一般的には、X−Z面、Y−Z面共に対称面を持つことはないが、本実施形態ではXの奇数次項を全て0にすることによって、Y−Z面と平行な対称面が1つだけ存在する自由曲面となる。例えば、上記定義式(a)においては、C2、C5、C7、
C9、C12、C14、C16、C18、C20、C23、C25、C27、C29、C31、C33、C35・・
・の各項の係数を0にすることによって可能である。
【0058】
また、Yの奇数次項を全て0にすることによって、X−Z面と平行な対称面が1つだけ存在する自由曲面となる。例えば、上記定義式においては、C3、C5、C8、C10、C12
、C14、C17、C19、C21、C23、C25、C27、C30、C32、C34、C36・・・の各項の
係数を0にすることによって可能である。
【0059】
また、上記対称面の方向の何れか一方を対称面とし、それに対応する方向の偏心、例えば、Y−Z面と平行な対称面に対して光学系の偏心方向はY軸方向に、X−Z面と平行な対称面に対しては光学系の偏心方向はX軸方向にすることで、偏心により発生する回転非対称な収差を効果的に補正しながら同時に製作性をも向上させることが可能となる。
【0060】
また、上記定義式(a)は、前述のように1つの例として示したものであり、本発明の自由曲面は、対称面を1面のみ有する回転非対称な面を用いることで偏心により発生する回転非対称な収差を補正し、同時に製作性も向上させるということが特徴であり、他のいかなる定義式に対しても同じ効果が得られることはいうまでもない。
【0061】
また、非球面は、以下の定義式(b)で与えられる回転対称非球面である。
Z=(Y
2/R)/[1+{1−(1+k)Y
2/R
2}
1/2]
+aY
4+bY
6+cY
8+dY
10+・・・
…(b)
ただし、Zを光の進行方向を正とした光軸(軸上主光線)とし、Yを光軸と垂直な方向にとる。ここで、Rは近軸曲率半径、kは円錐定数、a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。この定義式のZ軸が回転対称非球面の軸となる。
【0062】
なお、データの記載されていない自由曲面に関する項は0である。屈折率については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記してある。長さの単位はmmである。
【0063】
(実施例)
図2には、実施例の画像表示装置の片眼(右眼)について、画像表示素子5と、接眼光学系30とリレー光学系40にて構成される観察光学系3が示されている。
【0064】
リレー光学系40は、各面に面対称自由曲面を用いた自由曲面プリズムであって、3つの光学面41〜43からなるとともに、3つの面41〜43の間は屈折率が1より大きい透明媒質で埋められている。
【0065】
接眼光学系30は、凹面透過面31と凹面反射面32とを有する裏面鏡で構成されており、凹面透過面31と凹面反射面32の間は、屈折率が1より大きい透明媒質で埋められている。
【0066】
逆光線追跡で、射出瞳21を通る軸上主光線102は、接眼光学系30の凹面透過面31から入射して、凹面反射面32で反射され、再び凹面透過面31にて透過され、次にリレー光学系40(自由曲面プリズム)の透過面である第3面43に入射してリレー光学系40内に入り、内部反射面として作用する第1面41で反射され、次に反射面の第2面42で反射され、その反射光線は透過作用を有する領域の第1面41を透過してリレー光学系40から射出して、像面の位置に配置された画像表示素子5の表示面に到達して結像する。
【0067】
ここで、第1面41は、第3面43から入射した光線に対しては、第1面41に対する入射角が臨界角以上の場合、その領域では全反射を起こして反射する。第1面41に対する入射角が臨界角より小さい場合には、その領域にはアルミニウムなどの反射膜のコーティングが施される。また、この反射コーティングが施された領域は、画像表示素子5へ射出する領域と重ならないようにすることが肝要となる。
【0068】
さらに本実施形態において第3面43上、観察者1の水平方向における内側、すなわち、観察者1に近い方を通過する光束を遮蔽する部分に遮蔽部Bが設けられている。遮蔽される光束は、画像表示素子5の周辺光束の一部であって、観察者1が画像表示素子5にて表示される虚像を欠損なく観察することが可能とされている。
【0069】
また、この実施例の場合は、リレー光学系40中の第3面43と接眼光学系30の凹面透過面31の間に湾曲した中間像面103が形成されている。
【0070】
以上、逆光線追跡で説明したが実際には、画像表示素子5から射出された表示光は上記の光路を逆に辿り、射出瞳21の位置に瞳孔が位置する観察者の眼球内に拡大投影される。この実施例の接眼光学系30は、2面が回転対称非球面形状で構成された曲面鏡であり、水平画角80度、瞳径はφ10.0mmである。
【0071】
以下に上記実施例、比較例についての数値実施例を示す。これら数値実施例において“FFS”は自由曲面を示す。なお、記号“e”は、それに続く数値が10を底にもつ、べき指数であることを示している。例えば「1.0e−5」は「1.0×10
-5」であることを意味している。
【0072】
(実施例)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -1000.00
1 ∞(ダミー面)
2 ∞(絞り面)
3 非球面[1] 偏心(1) 1.5254 56.2
4 非球面[2] 偏心(2) 1.5254 56.2
5 非球面[1] 偏心(1)
6 FFS[1] 偏心(3) 1.5254 56.2
7 FFS[2] 偏心(4) 1.5254 56.2
8 FFS[3] 偏心(5) 1.5254 56.2
9 FFS[2] 偏心(4)
像 面 ∞ 偏心(6)
非球面[1]
曲率半径 -5085.27
k -2.0000e+001
a -5.8547e-007 b 7.5509e-011 c -1.3404e-014
d 6.3895e-019
非球面[2]
曲率半径 -93.42
k -9.9037e-001
a -6.9085e-008 b -1.2934e-011 c 1.0193e-015
FFS[1]
C4 6.6738e-004 C6 -2.9348e-002 C8 -1.6156e-003
C10 5.2387e-004 C11 5.3526e-005 C13 1.4489e-004
C15 -3.5693e-005 C17 -7.2235e-006 C19 -7.2233e-006
C21 1.3213e-006 C22 5.7673e-008 C24 3.4187e-007
C26 1.8076e-007 C28 -1.9294e-008
FFS[2]
C4 -1.3530e-002 C6 -8.0554e-003 C8 -5.9789e-005
C10 1.3591e-004 C11 -1.4512e-006 C13 1.0054e-005
C15 -5.2629e-006 C17 -7.6055e-007 C19 -6.6668e-007
C21 9.3638e-008 C22 2.3561e-008 C24 2.1529e-008
C26 1.2080e-008 C28 -1.8670e-009
FFS[3]
C4 -1.4268e-002 C6 -1.3842e-002 C8 -7.3176e-005
C10 -1.3128e-004 C11 -3.4272e-006 C13 -5.0372e-006
C15 -5.1144e-006 C17 -7.9111e-008 C19 -7.7326e-008
C21 -8.2669e-008 C22 -2.1506e-010 C24 -3.1947e-009
C26 -2.4947e-009 C28 -1.2333e-009
偏心[1]
X 0.00 Y 17.67 Z 32.61
α 10.83 β 0.00 γ 0.00
偏心[2]
X 0.00 Y -44.02 Z 58.26
α -9.18 β 0.00 γ 0.00
偏心[3]
X 0.00 Y -66.70 Z -8.74
α 36.97 β 0.00 γ 0.00
偏心[4]
X 0.00 Y -74.59 Z -19.29
α 91.77 β 0.00 γ 0.00
偏心[5]
X 0.00 Y -72.89 Z -51.44
α 143.41 β 0.00 γ 0.00
偏心[6]
X 0.00 Y -96.07 Z -33.09
α 101.46 β 0.00 γ 0.00
【0073】
(比較例)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -1000.00
1 ∞(ダミー面)
2 ∞(絞り面)
3 非球面[1] 偏心(1) 1.5254 56.2
4 非球面[2] 偏心(2) 1.5254 56.2
5 非球面[1] 偏心(1)
6 FFS[1] 偏心(3) 1.5254 56.2
7 FFS[2] 偏心(4) 1.5254 56.2
8 FFS[3] 偏心(5) 1.5254 56.2
9 FFS[2] 偏心(4)
像 面 ∞ 偏心(6)
非球面[1]
曲率半径 1001.72
k -8.9463
a -2.8719e-007 b 1.1477e-011 c -2.5182e-015
d 1.3967e-019
非球面[2]
曲率半径 -101.98
k -1.0053
a -7.6692e-008 b -2.6006e-012 c 7.7137e-016
FFS[1]
C4 -8.1912e-004 C6 -2.4574e-002 C8 -1.0985e-003
C10 6.2016e-004 C11 1.8828e-005 C13 3.8065e-005
C15 -4.1559e-005 C17 -4.5723e-006 C19 -1.8374e-006
C21 1.8014e-006 C22 -5.2576e-009 C24 2.5927e-007
C26 6.4070e-008 C28 -3.1023e-008
FFS[2]
C4 -8.0395e-003 C6 -5.0653e-003 C8 -1.6821e-004
C10 1.0889e-004 C11 -5.5993e-006 C13 -9.2824e-007
C15 -5.8464e-006 C17 -3.4199e-007 C19 -1.8962e-007
C21 1.6875e-007 C22 -1.3475e-008 C24 2.8715e-008
C26 3.8422e-009 C28 -3.4084e-009
FFS[3]
C4 -1.1814e-002 C6 -1.1386e-002 C8 -7.9670e-005
C10 -8.3894e-005 C11 -1.2008e-006 C13 -3.2577e-006
C15 -2.8915e-006 C17 -3.9496e-009 C19 -4.7920e-008
C21 -4.2985e-008 C22 -5.0941e-010 C24 -4.3484e-010
C26 -1.1172e-009 C28 -5.9436e-010
偏心[1]
X 0.00 Y 25.65 Z 29.99
α 12.72 β 0.00 γ 0.00
偏心[2]
X 0.00 Y -35.64 Z 61.97
α -0.83 β 0.00 γ 0.00
偏心[3]
X 0.00 Y -69.40 Z -5.09
α 33.35 β 0.00 γ 0.00
偏心[4]
X 0.00 Y -81.36 Z -20.59
α 94.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[5]
X 0.00 Y -74.64 Z -59.13
α 142.96 β 0.00 γ 0.00
偏心[6]
X 0.00 Y -98.88 Z -37.24
α 110.54 β 0.00 γ 0.00
【0074】
以上に説明したような画像表示装置を1組用意し、片眼装着用に構成しても、また、そのような組を左右一対用意し、それらを眼輻距離だけ離して支持することにより、両眼装着用に構成してもよい。そのようにして、片眼あるいは両眼で観察できる据え付け型又はポータブル型の画像表示装置として構成することができる。
【0075】
片眼に装着する構成にした場合の様子を
図6に(この場合は、左眼に装着)、両眼に装着する構成にした場合の様子を
図7に示す。
図6中、61は表示装置本体部を示し、観察者の左眼の前方に保持されるよう支持部材が頭部を介して固定している。その支持部材としては、一端を表示装置本体部61に接合し、観察者の側頭部を渡るように延在する前フレーム62、後フレーム63と、後フレーム63の他端に挟まれるように自らの両端を一方ずつ接合し、観察者の頭頂部を支持する頭頂フレーム64とから構成されている。一方、
図7に示される両眼タイプのものは、両眼前方に保持される表示装置本体部61R、61Lをそれぞれ、前方フレーム62、後フレーム63を介して頭頂フレーム64にて支持することで、観察者に対して固定配置している。
【0076】
また、片目タイプ、両眼タイプどちらの構成においても以下の構成を採用することとしている。前フレーム62における上記の後フレーム63との接合近傍には、弾性体からなり例えば金属板バネ等で構成されたリヤプレート65が接合されている。このリヤプレート65は、上記支持部材の一翼を担うリヤカバー66が観察者の後頭部から首のつけねにかかる部分で耳の後方に位置して支持可能となるように接合されている。リヤプレート65又はリヤカバー66内に観察者の耳に対応する位置にスピーカー69が取り付けられている。
【0077】
映像・音声信号等を外部から送信するためのケーブル71が表示装置本体部61から、頭頂フレーム64、後フレーム63、前フレーム62、リヤプレート65の内部を介してリヤプレート65あるいはリヤカバー66の後端部より外部に突出している。そして、このケーブル41はビデオ再生装置70に接続されている。なお、図中、70aはビデオ再生装置70のスイッチやボリュウム調整部である。
【0078】
なお、ケーブル71は先端をジャックして、既存のビデオデッキ等に取り付け可能としてもよい。さらに、TV電波受信用チューナーに接続してTV鑑賞用としてもよいし、コンピュータに接続してコンピュータグラフィックスの映像や、コンピュータからのメッセージ映像等を受信するようにしてもよい。また、邪魔なコードを排斥するために、アンテナを接続して外部からの信号を電波によって受信するようにしても構わない。また、両眼タイプの場合には、左右の各画像表示装置に対して、それぞれ右眼用、左眼用として作成された映像を表示させることで、観察者に立体映像を提供することが可能となる。
【0079】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。