【実施例】
【0034】
以下に、撮影した画像を例示して本発明の加工品の検査方法について説明する。
【0035】
図1に示した被検査体(10)は平板部(11)からなるアルミニウム製金属板加工品であり、平板部(11)の一方の面が検査面(11a)である。検査面(11a)は全体にヘアライン加工が施され、複数個の有底のネジ穴(13)が形成されている。前記ネジ穴(13)はタップ加工によって形成されたものであり、加工部分にはバリが発生している可能性がある。また、検査面(11a)には加工時に発生した切粉や埃等の異物が付着している可能性がある。これらの異物は被検査体(10)とは繋がっておらず、載っているにすぎない。
【0036】
エア無し画像とエアブロー画像は同一領域を同一方向から撮影する。
図1はエアブロー中画像撮影時の装置配置を示すものであり、被検査体(10)の検査面(11a)にエアブロー装置(5)のノズル(5a)から噴出するエアを吹き付け、エアを吹き付けた領域を撮影する。エア無し画像はエアブロー中画像の撮影前または撮影後のどちらか一方、あるいは両方に撮影する。撮影した画像は画像解析装置(3)に送られ、所定の画像解析を行って欠陥を検出する。
【0037】
なお、
図1に示したノズル(5a)の位置およびエアの吹き付け方向は、これらの一例を示しているに過ぎず、以下の検査例におけるノズル(5a)の位置およびエアの吹き付け方向を示すものではない。
【0038】
[撮影画像1]
図2は一つのネジ穴(13)を含む撮影領域を示し、この撮影領域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に画像解析を行う。
図2の画像中の実線で囲まれた部分が分割された一つの解析領域(A)である。
図3Aはエアブロー前画像(30)における解析領域(A)の拡大図、
図3Bはエアブロー中画像(31)における解析領域(A)の拡大図、
図3Cはエアブロー後画像(32)における解析領域(A)の拡大図である。各画像において、背景のヘアライン加工部(12)、ネジ穴(13)およびそのタップ加工部(14)、細長い欠陥候補(20)が各画素の階調値としてその位置および形態が現れている。
【0039】
[撮影画像2]
撮影画像1と同じ解析領域(A)に対しエアの吹き付け条件(エアの吹き付け速度、吹き付け方向)を変えて撮影した。
【0040】
図4Aはエアブロー前画像(33)であり、
図3Aと同一条件で撮影した画像である。
図4Bはエアブロー中画像(34)である。
【0041】
[撮影画像3]
図5は他のネジ穴(13)を含む撮影領域を示し、この撮影領域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に画像解析を行う。
図5の画像中の実線で囲まれた部分が分割された一つの解析領域(B)である。
図6Aはエアブロー前画像(35)における解析領域(B)の拡大図、
図6Bはエアブロー中画像(36)における解析領域(B)の拡大図、
図6Cはエアブロー後画像(37)における解析領域(B)の拡大図である。各画像において、背景のヘアライン加工部(12)、ネジ穴(13)およびそのタップ加工部(14)、細長い第1欠陥候補(21)、塊状の第2欠陥候補(22)が各画素の階調値としてその位置および形態が現れている。
【0042】
[検査例1]
前記撮影画像1のうち、
図3Aのエアブロー前画像(30)および
図3Bのエアブロー中画像(31)に基づいて検査を行った。
【0043】
図7は、エアブロー前画像(30)の各画素の階調値からエアブロー中画像(31)の対応する画素の階調値を差し引いた階調差を所定の閾値で2値化し、各画素における2値を濃淡で図示したものである。図中、濃色で表されている部分は2つの画像(30)(31)で階調値に差があった画素を示し、淡色で表されている部分は2つの画像(30)(31)で階調値に差が無かった画素を示している。換言すると、濃色は2つの画像(30)(31)で階調値が変化した部分を示し、淡色は階調値に変化が無かった部分を示している。
図7によれば、ヘアライン加工部(12)、ネジ穴(13)、タップ加工部(14)は淡色であるからエアを吹き付けても動かないものであることを示している。一方、欠陥候補(20)は濃色であるからエアの吹き付けによって動くものであり、欠陥候補(20)は「バリ」であると判定される。
【0044】
ここで、
図3Aおよび
図3Bの2つの画像(30)(31)を観察すると、欠陥候補(20)は長手方向が右上から左下に斜め延びる細長い形態として現れている。そして、2つの画像における欠陥候補(20)はエアを吹き付けても右上部分は位置の変化がなく、左下部分の位置が上方に移動していることがわかる。従って、前記欠陥候補(20)は右上部分で検査対象(10)と繋がり、エアの吹き付けによって左下部分が上方に吹き上げられたバリであると判断できる。
【0045】
なお、階調差は2値化することなくバリの検出に用いることも可能であるが、2値化することによって処理を単純化することができる。また、比較する2つの画像の階調値を2値化した後に差を求めてもバリを検出することができる。
【0046】
[検査例2]
前記撮影画像1のうち、
図3Bのエアブロー中画像(31)および
図3Cのエアブロー後画像(32)に基づいて検査を行った。
【0047】
図8は、エアブロー中画像(31)の各画素の階調値からエアブロー後画像(32)の対応する画素の階調値を差し引いた階調差を所定の閾値で2値化し、各画素における2値を濃淡で図示したものである。図中、濃色で表されている部分は2つの画像(31)(32)で階調値に差があった画素を示し、淡色で表されている部分は2つの画像(31)(32)で階調値に差が無かった画素を示している。換言すると、濃色は2つの画像(31)(32)で階調値が変化した部分を示し、淡色は階調値に変化が無かった部分を示している。
図8によれば、ヘアライン加工部(12)、ネジ穴(13)、タップ加工部(14)は淡色であるからエアを吹き付けても動かないものであることを示している。一方、欠陥候補(20)は濃色であるからエアの吹き付けによって動くものであり、欠陥候補(20)は「バリ」であると判定される。
【0048】
ここで、
図3Bおよび
図3Cの2つの画像(31)(32)を観察すると、欠陥候補(20)は長手方向が右上から左下に斜め延びる細長い形態として現れている。そして、2つの画像における欠陥候補(20)はエアの吹き付けを止めると、右上部分の位置の変化がなく、左下部分の位置が下方に移動していることがわかる。従って、前記欠陥候補(20)は右上部分で検査対象(10)と繋がり、エアの吹き付けによって左下部分が上方に吹き上げられていたバリであると判断できる。
【0049】
検査例1および検査例2に示したように、エアブロー中画像(31)は、エアブロー前画像(30)またはエアブロー後画像(32)のどちらか一方と比較することによってバリを検出することができる。
【0050】
[検査例3]
前記撮影画像2の
図4Aのエアブロー前画像(33)および
図4Bのエアブロー中画像(34)に基づいて検査を行った。
【0051】
図9はエアブロー前画像(33)の各画素の階調値からエアブロー中画像(34)の対応する画素の階調値を差し引いた階調差を所定の閾値で2値化し、各画素における2値を濃淡で図示したものである。
図9において、濃色は2つの画像(33)(34)で階調値が変化した部分を示し、淡色は階調値に変化が無かった部分を示している。
【0052】
図9によれば、検査例1,2と同じく、ヘアライン加工部(12)、ネジ穴(13)、タップ加工部(14)は淡色であるからエアを吹き付けても動かないものであることを示している。一方、欠陥候補(20)は濃色であるからエアの吹き付けによって動くものであり、欠陥候補は「バリ」であると判定される。
【0053】
ここで、
図4Aおよび
図4Bの2つの画像(33)(34)を観察すると、どちらの画像においても欠陥候補(20)は長手方向が右上から左下方向に斜め延びる細長い形態として現れている。しかしながら、エアブロー中画像(34)において欠陥候補(20)として現れる部分の面積がエアブロー前画像(33)における欠陥候補(20)の面積よりも大きい。これは、エアの吹き付けによってバリが振動し、振動によってバリが実際の面積よりも大きく撮影されたためである。
【0054】
[検査例4]
前記撮影画像3の
図6Aのエアブロー前画像(35)、
図6Bのエアブロー中画像(36)および
図6Cのエアブロー後画像(37)に基づいて検査を行った。
【0055】
まず、
図6Aのエアブロー前画像(35)と
図6Bのエアブロー中画像(36)を比較する。
図10はエアブロー前画像(35)の各画素の階調値からエアブロー中画像(36)の対応する画素の階調値を差し引いた階調差を所定の閾値で2値化し、各画素における2値を濃淡で図示したものである。
図10において、濃色は2つの画像(35)(36)で階調値が変化した部分を示し、淡色は階調値に変化が無かった部分を示している。
【0056】
図10によれば、検査例1〜3と同じく、ヘアライン加工部(12)、ネジ穴(13)、タップ加工部(14)は淡色であるからエアを吹き付けても動かないものであることを示している。一方、第1欠陥候補(21)および第2欠陥候補(22)は濃色であるからエアの吹き付けによって動くものであり、欠陥候補は「バリ」であると仮判定される。
【0057】
次に、
図6Bのエアブロー中画像(36)と
図6Cのエアブロー後画像(37)とを比較する。
図11はエアブロー中画像(36)の各画素の階調値からエアブロー後画像(37)の対応する画素の階調値を差し引いた階調差を所定の閾値で2値化し、各画素における2値を濃淡で図示したものである。
図11において、濃色は2つの画像(36)(37)で階調値が変化した部分を示し、淡色は階調値に変化が無かった部分を示している。
【0058】
図11によれば、
図10に基づいてバリであると仮判定した2つの欠陥候補(21)(22)のうち、第1欠陥候補(21)は濃色で表されていることから、エアの吹き付けを止めると形態を変化させて存在するバリであると判定される。一方、第2欠陥候補(22)は淡色で表されていることから、エアの吹き付けを止めても変化がなくバリではない可能性を示している。そして、
図10で示したエアブロー前画像(35)とエアブロー中画像(36)との差を加味すると、エアを吹き付けることによって変化が生じ、かつエアを止めてもその変化が継続していると判断でき、第2欠陥候補(22)は切粉や埃といった被検査体(10)上に載っているに過ぎない異物であると考えられる。さらに、
図12に示すエアブロー前画像(35)とエアブロー後画像(37)との階調差において第2欠陥候補(22)が濃色で表され、かつその形態が
図10における第2欠陥候補(22)と同一であるから、第2欠陥候補(22)がエアの吹き付けによって除去された異物であると判断できる。また、
図12において第1欠陥候補(21)が淡色で表されているから、第1欠陥候補(21)がバリでありエアの吹き付けを止めることによって元の形態に戻ったことを裏付けている。
【0059】
上述した検査方法において、背景による明暗差からバリを確実に検出し、かつバリと被検査体上に載っているに過ぎない異物とを確実に区別するためには、バリの形態を変化させ、かつ異物を撮影領域外に吹き飛ばせるようにエアの吹き付け速度や吹き付け時間を設定する。また、エアの吹き付け開始直後は異物が吹き飛ばされていない可能性があるので、エアブロー中画像の撮影はエア吹き付けの終了直前に行うことが好ましい。なお、バリの繋がり状態によってはエアの吹き付けによって被検査体から千切れて吹き飛ばされるものもあるが、このようなバリは異物として検出される。
【0060】
本発明の検査方法において、エアブロー中画像とエア無し画像との比較手法は上述した各画素の階調値を比較する手法に限定するものではなく、周知の画像解析手法を適宜用いることができる。他の比較手法として、エッジ抽出法やパターンマッチングを例示できる。エッジ抽出法とは画像において隣接する画素のデータが急激に変化する部分を検出し、その変化の境界(エッジ)を抽出し、2つの画像から抽出した境界を比較することにより欠陥の形態変化を検出する方法である。前記画素のデータとしては明暗を表す階調値や色調を表す色調値を適宜用いることができる。パターンマッチングとは2つの画像を重ね合わせることで両者が一致しているかどうかを調べ、不一致部分を欠陥として検出する方法である。
【0061】
上述した検査例1〜4においては、撮影した画像を複数の領域に分割し、分割した領域の1つの検査例を示したものである。分割した全領域を同様の方法で解析することにより、撮影した画像の全領域においてバリおよび異物を検査することができる。
【0062】
画像解析は、撮影画像(
図2、5の画像)を分割することなく全領域を解析対象とすることもできるが、上記検査例のように画像を分割して小面積の領域毎に画像解析を行うことによって、欠陥を照明のちらつきや被検査体の振動による位置ずれ等のノイズ成分から区別することができ、誤判定を防いで正確で安定した検査を行うことができる。また、小面積で解析することによって特徴抽出も必要ないので、比較的安価な装置で検査できる。分割した解析領域の一辺の大きさは、検出したい欠陥の最小の大きさからその数倍の大きさの範囲が好ましい。解析領域が小さくなりすぎると、ノイズ成分を欠陥と誤判定する可能性が大きくなるからである。また、隣接する画素の階調値との合算値または平均値をそれらの画素の階調値とする等の周知のノイズ成分除去手法を適宜採用することも好ましい。
【0063】
また、欠陥が分割した複数の領域に跨っている場合は、それぞれの解析領域において実際よりも小さい欠陥が存在すると判定される。このような場合は、周知の画像解析手法を用いることによって、より正確な判定を行うことができる。例えば、撮影画像を解析領域よりもさらに小さいエリアに分割し、分割した小エリアをずらしながら所定サイズの解析領域を形成し、それらの解析領域でエアブロー中画像とエア無し画像を比較する方法を例示できる。