(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784489
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】カバー付き骨固定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/72 20060101AFI20150907BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
A61B17/58 315
A61B17/56
【請求項の数】33
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-515042(P2011-515042)
(86)(22)【出願日】2009年3月17日
(65)【公表番号】特表2011-525391(P2011-525391A)
(43)【公表日】2011年9月22日
(86)【国際出願番号】CH2009000095
(87)【国際公開番号】WO2009155715
(87)【国際公開日】20091230
【審査請求日】2012年2月6日
(31)【優先権主張番号】PCT/CH2008/000290
(32)【優先日】2008年6月26日
(33)【優先権主張国】CH
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591073555
【氏名又は名称】アーオー テクノロジー アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ,ロベルト,ゲオフリー
(72)【発明者】
【氏名】ノエツリ,クリストフ,マルティン
【審査官】
村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06235034(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0083202(US,A1)
【文献】
国際公開第2006/063036(WO,A1)
【文献】
米国特許第04794918(US,A)
【文献】
米国特許第06406478(US,B1)
【文献】
国際公開第2007/082004(WO,A2)
【文献】
国際公開第02/080789(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/72
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)骨プレート(10)を第一の骨インプラント(2)とする場合は、領域Aを有する上方開口部(3)と下方開口部(4);
または、
長手方向腔(41)を有する中空髄内釘(40)を第一の骨インプラント(2)とする場合は、周囲表面(49)において領域Aを有する2つの外側開口部(47)と前記腔(41)に向いた2つの内側開口部(48)、
を有する少なくとも一つの貫通孔(11)を有する、第一の骨インプラント(2);
B)1つ以上の前記貫通孔(11)に挿入するための先端部(6)とシャフトを有する、少なくとも1つの第二の骨インプラント(5);および、
C)前記貫通孔(11)への骨や軟組織の内殖および/または細菌の侵入を防止するために前記貫通孔(11)の前記上方開口部(3)または外側開口部(47)を閉じるための、少なくとも1つの閉カバー(7)、
を含んでなる骨固定装置(1)であって、
D)前記第一の骨インプラント(2)の開口部(3、4、47、48)の壁に着脱可能に取り付けることができるように寸法と形状がとられていて、
E)細菌侵入を防ぐために前記貫通孔(11)に挿入される場合は、前記第一の骨インプラント(2)への取り付け後に、前記第二の骨インプラント(5)の前記上方開口部(3)または前記外側開口部(47)の領域Aの少なくとも全体を被覆し;かつ
F)少なくとも一つの前記閉カバー(7)は弾性材料で形成されている
骨固定装置(1)。
【請求項2】
A)骨プレート(10)を骨インプラント(2)とする場合は、領域Aを有する上方開口部(3)と下方開口部(4);
または、
長手方向腔(41)を有する中空髄内釘(40)を骨インプラント(2)とする場合は、周囲表面(49)において領域Aを有する2つの外側開口部(47)と前記腔(41)に向いた2つの内側開口部(48)、
を有する少なくとも一つの貫通孔(11)を有する、骨インプラント(2);および、
B)前記貫通孔(11)への骨や軟組織の内殖および/または細菌の侵入を防止するために前記貫通孔(11)の前記上方開口部(3)または外側開口部(47)を閉じるための、少なくとも1つの閉カバー(7)、
を含んでなる骨固定装置(1)であって、
ここで前記閉カバー(7)は、
C)前記骨インプラント(2)の開口部(3、4、47、48)の壁に着脱可能に固定することができるように寸法と形状がとられていて;且つ、
D)前記骨インプラント(2)への取り付け後に、前記上方開口部(3)または外側開口部(47)の前記領域Aより大きい領域を被覆するように寸法と形状がとられており、
E)少なくとも一つの前記閉カバー(7)は弾性材料で形成されている
骨固定装置(1)。
【請求項3】
第二の骨インプラント(5)を含んでなる、請求項2に記載の骨固定装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの閉カバー(7)が、前記第二の骨インプラント(5)への骨や軟組織の内殖および/または細菌の侵入を防止するために前記貫通孔(11)の前記上方開口部(3)または前記外側開口部(47)を閉じるのに好適である、請求項1または3に記載の骨固定装置(1)。
【請求項5】
前記第一の骨インプラント(2)が少なくとも1つの細長い貫通孔(11)を有する骨プレート(10)である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)。
【請求項6】
前記骨プレート(10)の前記細長い貫通孔(11)が複数の固定可能箇所を有し、前記貫通孔(11)が好ましくは、骨ネジ(33)の半球状先端部(6)を受けるのに好適な凹面をなしている凹部(12)を有する第一部分と、前記第一部分の横に、骨ネジ(33)の相補的な円錐状止めネジ先端部(61)と係合させるための円錐状雌ネジ(60)を有する第二部分とを含んでなる、請求項5に記載の骨固定装置(1)。
【請求項7】
前記第一の骨インプラント(2)が長手方向軸(46)とそれに対して平行に延在する腔(41)とを有する髄内釘(40)であり、ここで、前記少なくとも1つの貫通孔(11)が前記長手方向軸に対して横方向に髄内釘(40)を貫通し、前記腔(41)の範囲において、前記少なくとも1つの貫通孔(11)が前記髄内釘(40)の周囲表面(49)における2つの外側開口部(47)と前記腔(41)に向いた2つの内側開口部(48)を形成している、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)。
【請求項8】
前記第二の骨インプラント(5)が骨ネジ(33)である、請求項1または3ないし7のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)。
【請求項9】
前記髄内釘(40)が後端部(42)および前端部(43)を含んでなり、ここで前記腔(41)が、前部開口部(44)と後部開口部(45)を形成するように、前記髄内釘(40)を通じて前記後端部(42)から前記前端部(43)へと延在している、請求項7または8に記載の骨固定装置(1)。
【請求項10】
骨プレート(10)を前記第一の骨インプラント(2)とする場合に、少なくとも1つの貫通孔(11)の前記下方開口部(4)を閉じるための少なくとも1つの前カバー(50)を更に含んでなる、請求項1ないし6または8のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)。
【請求項11】
髄内釘(40)を前記第一の骨インプラント(2)とする場合に、前記腔(41)の前記前部開口部(44)を閉じるための前カバー(50)を更に含んでなる、請求項9に記載の骨固定装置(1)。
【請求項12】
髄内釘(40)を前記第一の骨インプラント(2)とする場合に、前記腔(41)の前記後部開口部(45)を閉じるための端カバー(51)を更に含んでなる、請求項9または11に記載の骨固定装置(1)。
【請求項13】
前記前カバー(50)および/または端カバー(51)が、挿入具を受けるためのポケット穴(52)が設けられた従端(53、54)を有している、請求項10ないし12のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)。
【請求項14】
前記閉カバー(7)および/または前カバー(50)および/または端カバー(51)が弾性材料から形成されている、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)。
【請求項15】
前記閉カバー(7)および/または前カバー(50)および/または端カバー(51)が、60°未満、好ましくは30°未満の接触角を有する材料を含んでなる、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)。
【請求項16】
前記材料が親水性材料である、請求項15に記載の骨固定装置(1)。
【請求項17】
前記閉カバー(7)および/または前カバー(50)および/または端カバー(51)が、80°より大きい、好ましくは100°より大きい接触角を有する材料を含んでなる、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)。
【請求項18】
前記材料が疎水性材料である、請求項17に記載の骨固定装置(1)。
【請求項19】
前記材料が分解性ポリマー、好ましくはポリ(ε−カプロラクトン)またはポリ(L−乳酸−共グリコール酸)等のPLGAポリマーである、請求項18に記載の骨固定装置(1)。
【請求項20】
前記材料が非分解性ポリマー、好ましくは、以下に限定されるものではないが、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルケトンケトン)、ポリ(エーテルケトン)等のポリ(アリールエーテルケトン)である、請求項18に記載の骨固定装置(1)。
【請求項21】
前記材料が前記材料と別の材料、好ましくはβ−リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトまたは炭素との複合材料である、請求項19に記載の骨固定装置(1)。
【請求項22】
前記材料が前記材料と別の材料、好ましくはβ−リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトまたは炭素との複合材料である、請求項20に記載の骨固定装置(1)。
【請求項23】
前記閉カバー(7)が、前記骨インプラントへの取り付け後に前記領域Aより大きい領域、好ましくはAより25%大きい領域を被覆して前記上方開口部(3)または外側開口部(47)の組織および細菌の内殖を防止するように寸法と形状がとられている、請求項1ないし22のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項24】
少なくとも前記閉カバー(7)の中央部分(17)および/または前カバー(50)および/または端カバー(51)のジオメトリーが前記貫通孔(11)の形状に適合している、請求項1ないし23のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項25】
前記閉カバー(7)の下側のジオメトリーが前記第二の骨インプラント(5)の前記先端部の形状に適合している、請求項1ないし24のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項26】
前記閉カバー(7)が、前記第一の骨インプラント(2)への取り付け後に1つより多い前記貫通孔(11)を被覆するように寸法と形状がとられている、請求項1ないし25のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項27】
前記閉カバー(7)は、前記開口部(3、4、47、48)の壁に、圧入、嵌合(form−fit)または接着剤により着脱可能に取り付けることができる、請求項1ないし26のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)。
【請求項28】
請求項1ないし27のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)と、前記の第一のおよび/または第二の骨インプラント(2、5)中の残余腔を充填するための環境体液によって分解されず、骨の内殖を防止し、および/または前記残余腔を細菌が満たすのを防止する疎水性または親水性表面を提供するのに好適なゲルと、を含む骨固定用キット。
【請求項29】
前記ゲルが30重量%を超える含水量を有する高水和高分子材料である、請求項28に記載の骨固定用キット。
【請求項30】
前記ゲルが合成由来の親水性鎖を有するポリマーをベースとするものである、請求項28または29に記載の骨固定用キット。
【請求項31】
前記ゲルが天然由来の親水性鎖を有するポリマーをベースとするものである、請求項28または29に記載の骨固定用キット。
【請求項32】
前記ゲルがその場でゲル化しやすい注射液である、請求項29ないし31のいずれか1項に記載の骨固定用キット。
【請求項33】
請求項10ないし27のいずれか1項に記載の骨固定装置(1)と、前記前カバー(50)および/または端カバー(51)に可逆的に取り付け可能な挿入具と、を含む骨固定用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載のカバー付き骨固定装置、請求項27の前段に記載の骨固定用キットおよび請求項32の前段に記載の骨固定用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,935,127号明細書(Border)には、吸収性のインサートを内設する長貫通孔を有する骨プレートが開示されている。これらのインサートは、手術前に長手方向貫通孔に挿入されてそこに着設される。骨折部を架橋(span)するために該プレートを配置した後、外科医が所望する位置において該インサートを通じる穴を開け、その後締め具(fastener)を前記穴に通して締め具のネジシャフト(threaded shaft)を骨に螺入する。
【0003】
米国特許出願公開第2002/0173792号明細書(Severns等)には、末端貫通孔を有する髄内釘と、好ましくは生体吸収性材料から形成されたスペーサが示されている。このスペーサは該貫通孔内に配置される。髄内釘を支持するために、骨ネジ等の骨締め具を貫通孔内の該スペーサおよび骨に通す。骨ネジを挿入する前に、外科医が所望する位置において、該スペーサを通じてドリルで個別の穴(bore)を開ける。
【0004】
これら公知装置では、インサートが骨インプラント内の貫通孔の上方開口部または外側開口部の全領域を被覆しないため、これらインサートが組織の内殖(ingrowth)を回避するのには適さないであろうという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,935,127号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0173792号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、骨固定装置の2つの個別の部品間の開口部や隙間内へ、および骨固定装置の少なくとも1つの部品において設けられている貫通孔内への軟組織や硬組織、そして細菌の増殖を防止する手段を含む、骨固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1に記載の特徴を含む骨固定装置、請求項27に記載の特徴を含む骨固定用キットおよび請求項32に記載の特徴を含む骨固定用キットをもって、前記課題を解決するものである。
【0008】
本発明の装置は、以下の利点を可能にする:
− インプラント内の貫通孔に挿入したカバーが、これら空間内への骨組織または軟結合組織の増殖を防止する;
− インプラント固定要素界面または空の貫通孔内の空所への骨または軟組織の内殖を防止し、それと同時に細菌群がその空所を満たすのを防止できる;
− 骨または軟組織の内殖は、追加的で非常に時間のかかる処置につながるだけでなく、それ自体が固定要素の破損を引き起こして更に追加的な処置の要因となり得る再骨折またはインプラント固定要素界面損傷の高い危険性をももたらすことから、骨固定装置の除去を容易にする;
− インプラントを使用する前にカバーを全ての貫通孔に内設し、固定に使用する貫通孔から外すことができ、その後要素(例えばネジ)を挿入した後で、該固定要素(例えばネジ)により変化した貫通孔の内部形状に対応するように代わりのカバーを適合させることができる;そして、
− 包装工程中にインプラント(例えば、髄内釘または骨プレート)にカバーを内設することができ、それによりカバーを有するインプラントが即時使用向けに無菌包装される。
【0009】
別の実施形態において、骨固定装置は第二の骨インプラントを含まない。そのような骨固定装置は、例えばカニューレ挿入された髄内釘またはカニューレ挿入された骨ネジの、カニューレ挿入部の前部および/または後部開口部を被覆するために使用可能な閉カバーを1つまたは2つ含んでなることができる。かかるカニューレ挿入は通常、該装置を貫通し、ガイドワイヤを用いて骨内の正しい位置に装置を設置するのに使用でき、このガイドワイヤは、該骨固定装置の設置後に除去される。ガイドワイヤの除去後に、該装置の前端部および/または後端部における開口部を前記閉カバーで被覆することができる。
【0010】
更なる実施形態において、前記少なくとも1つの閉カバーは、前記第二の骨インプラントへの骨や軟組織の内殖および/または細菌の侵入を防止するために前記貫通孔の前記上方開口部または外側開口部を閉じるのに好適である。
【0011】
また更なる実施形態において、前記第一の骨インプラントは、少なくとも1つの細長い貫通孔を有する骨プレートである。
【0012】
別の実施形態において、前記骨プレートの前記細長い貫通孔は複数の固定可能箇所を有し、前記貫通孔は、好ましくは、骨ネジの半球状先端部を受けるのに好適な凹面をなしている凹部を有する第一部分と、前記第一部分の横に、骨ネジの相補的な円錐状止めネジ先端部と係合させるための円錐状雌ネジを有する第二部分とを含んでなる。
【0013】
更に別の実施形態において、前記第一の骨インプラントは長手方向軸とそれに対して平行に延在する腔(cavity)とを有する髄内釘であり、ここで、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記長手方向軸に対して横方向に髄内釘を貫通し、前記腔の範囲において、前記少なくとも1つの貫通孔が髄内釘の周囲表面における2つの外側開口部と前記腔に向いた2つの内側開口部とを形成している。
【0014】
更なる実施形態において、前記第二の骨インプラントは骨ネジである。
【0015】
また更なる実施形態において、前記髄内釘は後端部と前端部を含んでなり、ここで前記腔は、前部開口部と後部開口部を形成するように、前記髄内釘を通じて前記後端部から前記前端部へと延在している。該第二のインプラントは、髄内釘の後端部における横方向の開口部に挿入される止めネジまたは、例えば止めブレードであり得る。
【0016】
別の実施形態において、骨プレートを第一の骨インプラントとする場合に、前記骨固定装置は、少なくとも1つの貫通孔の前記下方開口部を閉じるための少なくとも1つの前カバーを更に含んでなる。この第二の(下方)カバーは、骨プレートの場合、例えば接着剤、圧入または嵌合(form−fit)(リップ/溝)によって貫通孔の壁面に固定することができる。
【0017】
また更なる実施形態において、髄内釘を第一の骨インプラントとする場合に、前記骨固定装置は、前記腔の前記前部開口部を閉じるための前カバーを更に含んでなる。この第二の(下方)カバーは、髄内釘の場合、例えば第一の部分が圧入と弾性膨張によって腔内に固定され、その結果第二の部分が髄内釘の前端部から突出するように、挿入中に前カバーを弾性的に押し込むことで髄内釘に固定することができる。
【0018】
別の実施形態において、髄内釘を第一の骨インプラントとする場合に、前記骨固定装置は、前記腔の前記後部開口部を閉じるための端カバーを更に含んでなる。
【0019】
更なる実施形態において、前記前カバーおよび/または端カバーは、挿入具を受けるためのポケット穴が設けられた従端を有している。このポケット穴は器具受入用開口部(instrument receiving opening)として使用され、雌ネジまたは差込式止め手段(bayonet−type locking means)を設けることができ、その結果、カバーに前記挿入具を可逆的に取り付けることができる。
【0020】
別の実施形態において、前記閉カバーおよび/または前カバーおよび/または端カバーは弾性材料から形成されている。この構成により、前端部からカバーの一部が突出し、その結果後部が膨張する(レトロフィット)まで、例えば髄内釘の後端部から該釘のカニューレを通して前カバーを押し入れることができるという利点がもたらされる。ガイドワイヤを除去する際にカバーがカニューレの前部開口部で捕捉されてガイドワイヤから外れ、髄内釘のカニューレ挿入部の前部開口部を密閉するように、カバーをガイドワイヤの先端に着脱可能に取り付けることができる。
【0021】
更に別の実施形態において、前記閉カバーおよび/または前カバーおよび/または端カバーは、接触角が60°未満、好ましくは30°未満の材料を含んでなる。
【0022】
また更なる実施形態において、前記材料は親水性材料であり、これにより前記超親水性材料(extreme hydrophilic material)がインプラントカバーへの細菌の付着を防止し、且つ軟組織および硬組織の付着を最小限にするという利点がもたらされる。そのような相互作用にとって表面は湿り過ぎている。
【0023】
別の実施形態において、前記閉カバーおよび/または前カバーおよび/または端カバーは、80°より大きい、好ましくは100°より大きい接触角を有する材料を含んでなる。
【0024】
更なる実施形態において、前記材料は疎水性材料である。これにより、前記疎水性材料がインプラントカバーへの細菌の付着を防止し、且つ軟組織および硬組織の付着を最小限にするという利点がもたらされる。そのような表面の接触界面は、タンパク質の吸着や組織および/または細菌の付着を可能にするには小さすぎる。
【0025】
また更なる実施形態において、前記材料は分解性であり、例えば、以下に限定されるものではないが、ポリ(ε−カプロラクトン)またはポリ(L−乳酸−共グリコール酸)等のPLGAポリマーである。
【0026】
また更なる実施形態において、前記材料は非分解性であり、例えば、限定されるものではないがポリ(アリールエーテルケトン)類であり、その例としては、以下に限定されるものではないが、PEEK(ポリ(エーテルエーテルケトン))、PEKK(ポリ(エーテルケトンケトン))、PEK(ポリ(エーテルケトン))が挙げられる。
【0027】
別の実施形態において、前記材料は、前記分解性材料と別の材料、例えば、以下に限定されるものではないが、β−リン酸三カルシウム(β−TCP)またはヒドロキシアパタイト(HA)または炭素との複合材料である。
【0028】
更なる実施形態において、前記材料は、前記非分解性材料と別の材料、例えば、以下に限定されるものではないが、β−リン酸三カルシウム(β−TCP)またはヒドロキシアパタイト(HA)または炭素との複合材料である。
【0029】
別の実施形態において、前記閉カバーは、前記骨インプラントへの取り付け後に前記領域Aより大きい領域、好ましくはAより25%大きい領域を被覆して前記上方開口部または外側開口部の組織および細菌の内殖を防止するように、その寸法と形状がとられている。
【0030】
また更なる実施形態において、少なくとも前記閉カバーの中央部分、および/または前カバーおよび/または端カバーのジオメトリーが、貫通孔の形状に適合している。
【0031】
また更なる実施形態において、前記閉カバーの下側のジオメトリーは、前記第二の骨インプラントの前記先端部の形状に適合している。
【0032】
別の実施形態において、前記閉カバーは、前記第一の骨インプラントへの取り付け後に1つより多い前記貫通孔を被覆するように、その寸法と形状がとられている。
【0033】
前カバーおよび/または端カバーは更に、除去用器具を挿入するための除去用穴を含んでなる。この除去用穴は、前記除去用器具の軸を保持する手段を、例えば差込式受け口(bayonet catch)または雌ネジの形態で含んでなる。
【0034】
更なる実施形態において、前記除去用穴は細長い凹部として形成され、その長軸は第一の骨インプラントの長手方向軸と平行である。
【0035】
別の実施形態において、前記細長い凹部は、前記第一の骨インプラントにおいて前記貫通孔からカバーを引き抜く際に例えば、除去用器具の半球状の先端のための保持部(hold)を形成するように、肩状部(shoulder)を有するアンダーカットを形成する制限部(restriction)を含んでなる。該細長い凹部の第二部分においては、除去用器具のシャフトを挿通できるように、細長い凹部の開口部は制限されない。こうして除去用器具は、カバーを除去するために、細長い穴の第二部分における除去用穴に挿入して第一部分へとずらすことができる。
【0036】
骨固定装置とゲルを含む骨固定用キットは、機械的に耐性なカバーと半流動性材料(ゲル)との組み合わせによって、微小空間および機械的に耐性なカバーを有する開口部を介して到達するのが困難な他の領域を、該ゲルが非常に効率的に充填するのが可能になるという具体的な利点を有するものである。
【0037】
そのようなキットの更なる実施形態において、前記ゲルは、30重量%を超える含水量を有する高水和高分子材料である。そのような前記ゲルは、前記ゲルを用いて前記釘の腔を充填するためのゲルの使用に特に好適である。かかるゲルに好適な材料は、Park JB, Lakes RS. Biomaterials: an introduction, 2nd ed. New York: Plenum Press; 1992に開示されている。
【0038】
また更なる実施形態において、前記ゲルは合成由来の親水性鎖を有するポリマーをベースとするものである。
【0039】
別の実施形態において、前記ゲルは天然由来の親水性鎖を有するポリマーをベースとするものである。
【0040】
更に別の実施形態において、前記ゲルはその場でゲル化しやすい注射液である。
【0041】
上記のハイドロゲルは一般的に、合成由来または天然由来のいずれかである親水性ポリマー鎖をベースとするものである。ハイドロゲルの構造上の完全性は、種々の化学結合を介して形成されるポリマー鎖間の架橋および物理的相互作用に依存する。好適なハイドロゲルは、ポリマー鎖と架橋の化学および分子量に応じて、分解性または非分解性であり得る。それらは、反応性化学基(すなわち、イソシアネート、カルボジイミド)、UV照射、加熱、他のポリマー(すなわち、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−共グリコール酸)、キトサン)との混合によってその場でゲル化する注射液であり得る。
【0042】
合成ハイドロゲル材料としては、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(プロピレンフマレート−共エチレングリコール)(P(PF−共EG))、ポリ(ウレタン)類およびポリペプチド類が挙げられる。PEOとポリ(l−乳酸)(PLLA)およびポリ(エチレングリコール)とポリ(カプロラクトン)のブロック共重合体も使用できる。
【0043】
天然由来のハイドロゲルポリマーとしては、アガロース、アルギナート、キトサン、コラーゲン、フィブリン、ゼラチンおよびヒアルロン酸が挙げられる。
【0044】
骨固定用キットは、前記前カバーおよび/または端カバーに可逆的に取り付け可能な挿入具を含むことができる。また、前記挿入具は、後端部から前端部へと前記髄内釘の腔を通して前カバーを挿入するための、前記ポケット穴に可逆的に固定可能な固定手段を含むことができる。
【0045】
以下、添付の図を参照しつつ実施例を挙げて本発明の一実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の骨固定装置の一実施形態の縦断面図を示す。
【
図3】本発明の骨固定装置の別の実施形態の縦断面図を示す。
【
図4】本発明の骨固定装置の更に別の実施形態の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1および
図2は、骨プレート10として形成される第一の骨インプラント2と骨ネジとして形成される第二の骨インプラント5とを含んでなる、骨固定装置1の一実施形態を示す。
図1においては、縦断面における骨プレート10の一部分のみを示している。前記骨プレート10および前記骨ネジは、市販のインプラントである(例えば、SYNTHES(登録商標)標準インプラント)。細長い貫通孔11には、矢印Zの方向から見たときに領域Aを有する上方開口部3と下方開口部4が設けられており、上方開口部3と下方開口部4との移行部分が丸みを帯びていることで、前記細長い貫通孔11の末端円形部分の軸13と軸14に対して前記骨ネジを旋回させるように前記骨ネジの半球状先端部6を着座させることができる。前記細長い貫通孔11は更に、前記骨プレート10の長手方向において複数の固定可能箇所を提供することができる。また、前記骨ネジは雄ネジを有するシャフト16を含んでなり、骨中に固定される。細長い貫通孔11にはそれぞれ、前記貫通孔11の前記上方開口部3を閉じて、前記貫通孔11と前記骨ネジ内への骨や軟組織の内殖および/または細菌の侵入を防止するのに好適な閉カバーが設けられている。前記閉カバー7の中央部分17のジオメトリーは、前記貫通孔11の形状、具体的には前記上方開口部3に適合している。前記閉カバー7は、前記閉カバー7の中央部分17の周辺壁と前記上方開口部3の壁との間へ圧入することにより、前記骨プレート10へ着脱可能に取り付けることができる。また、前記閉カバー7は、前記骨プレート10への取り付け後に、前記閉カバー7の膨張した後方部分15によって前記上方開口部3の領域A全体よりも約25%大きい領域を被覆するように、その寸法と形状がとられている。前記閉カバー7により、また前記閉カバー7の弾性的に変形可能な前方部分18により、前記貫通孔11に挿入された前記骨ネジの前記先端部6に配設されたネジ回し手段用の凹部が被覆される。
【0048】
閉カバー7は更に、除去用器具28を挿入するための除去用穴20を含んでなる。前記除去用穴20は細長い凹部23として形成され、その長軸は第一の骨インプラント2の長手方向軸19と平行である。該細長い凹部23の底部24は、第一の骨インプラント2の長手方向軸19と直行する断面において半円状に屈曲し、第一の骨インプラント2の長手方向軸19と平行な方向における細長い凹部19の長さを制限する第一と第二の端部26および27において、同一半径で屈曲している。細長い凹部23の第一部分25中、底部24からの距離Xにおいて、細長い凹部23の開口部の領域を、第一の骨インプラント2の長手方向軸19と直行する幅Yおよび細長い凹部23の第二端部27に制限する制限部22が設けられている。この制限部22は、前記第一の骨インプラント2において前記貫通孔11から閉カバー7を引き抜く際に、例えば除去用器具28の半球状の先端30のための保持部を形成するように、肩状部21を有するアンダーカット31を形成する。細長い凹部23の第二部分32においては、除去用器具28のシャフト29を挿通できるように、細長い凹部23の開口部は制限されない。こうして除去用器具28は、閉カバー7を除去するために、細長い穴23の第二部分32における除去用穴20に挿入して第一部分25へとずらすことができる。
【0049】
図3に示す骨固定装置1の実施形態は、
図1および
図2の実施形態と以下の点のみで異なるものである:
A)細長い貫通孔11に、骨ネジ33の半球状先端部6(
図1)を受けるのに好適な凹面をなしている凹部12を有する第一部分と、この第一部分の横に、第二の骨インプラント5として使用する骨ネジ33の相補的な円錐状止めネジ先端部61を係合させるように円錐状雌ネジ60を有する第二部分とが設けられている点;
B)前カバー50が、貫通孔11内に設けられている点;そして、
C)止めネジ先端部61におけるネジ回し具を受けるためのソケット62、例えば六辺形ソケットが、閉カバー7を貫通孔11に取り付ける前にゲルで充填される点。
【0050】
前記前カバー50は、接着剤によって貫通孔11の壁面に固定されるが、他の実施形態においては、圧入または嵌合(リップ/溝)によって固定することができる。前記前カバー50における穴63は、第二の骨インプラント、すなわち骨ネジを、例えば骨ネジ自体の穴開け特性によって挿入する間に作成することができる。
【0051】
図4は、第一の骨インプラント2として、髄内釘40を有する骨固定装置1の一実施形態を示す。髄内釘40は、長手方向軸46とこの長手方向軸46に対して平行に延在する腔41とを含んでなる。髄内釘40の前方部分では、止め骨ネジ33を受けるのに好適な2つの貫通孔11がそれぞれ、前記長手方向軸46に対して横方向に髄内釘40を貫通する。本実施形態においては、前記止め骨ネジ33のそれぞれが第二の骨インプラント5を表すものである。また、前記髄内釘40は後端部42と前端部43を含んでなり、前記腔41は、前部開口部44と後部開口部45を形成するように、前記後端部42から前記前端部43へ前記髄内釘40と通じて延在している。各前記貫通孔11は、髄内釘40の周囲表面49において領域Aを有する2つの外側開口部47および、前記腔41に向かって2つの内側開口部48を形成している。前記貫通孔11の前記外側開口部47を閉じるために、閉カバー7がそれぞれ使用される。
【0052】
また、髄内釘40は、前記腔41の前記前部開口部44を閉じるための前カバー50を含んでなる。この前カバー50は、挿入中に前記前カバー50の前方部分が髄内釘40の前端部43から突出するまで前記前カバー50を弾性的に押し込むことで、髄内釘40に固定することができる。腔41へ前カバー50を挿入する際、一旦前記前カバー50の前方部分が髄内釘40の前部開口部44を通過すると、前記前方部分は、髄内釘40の前端部43と接する前カバー50の後方部分に向かって肩状部を形成するように、弾性的に膨張する。前記前カバー50の後方部分はその後、圧入により腔41内に固定される。
【0053】
本実施形態において、髄内釘40は更に、前記腔41の前記後部開口部45を閉じるための端カバー51を含んでなる。前記前カバー50と前記端カバー51はそれぞれ、挿入具をネジ式に受ける雌ネジを有するポケット穴52が設けられた従端53と54を有している。
【0054】
髄内釘40の腔41は、骨髄腔(medullary channel)内の正しい位置にガイドワイヤ(図示せず)を用いて髄内釘40を設置するのに使用できる。ガイドワイヤは髄内釘40の設置後に除去され、腔41は髄内釘40の前端部43と後端部42において、空で開放された状態となる。前カバー50は、前記腔41の前記前部開口部44を閉じて、髄内釘40の前端部43から前記腔41への骨や軟組織の内殖および/または細菌の侵入を防止するのに好適である。前記前カバー50は、特別な器材を用いて挿入することができ、または前記ガイドワイヤに取り付けることができる。その後、前記ガイドワイヤから前カバー50を取り外すことができるが、これは前記ガイドワイヤが前記腔41の前記前部開口部44を干渉するからである。前記ガイドワイヤを除去して前記腔41の前記前部開口部44を閉じた後、腔41の残部をゲルで充填することができる。最後に、前記腔41の後部開口部45を閉じるために前記髄内釘40の後端部42に前記端カバー51を取り付けることができる。
【0055】
以上では本発明の一記述を説明したが、種々の特徴を単独またはそれらの組み合わせで使用できることが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の請求項に記載する通りに定義されるものである。