【実施例】
【0063】
実施例1:起源を変えることができる使用生材料
細胞系の確立はしばしば細胞材料の遺伝的特性に大いに連関する。従って、マウスの実例では、胚性幹ES細胞の生成に対して許容性である遺伝的基盤は比例して少なく、そしてしばしば近交系動物の概念が関与する。鳥類動物の場合、歴史的な理由から、および選択した市販されている株の起源のために、近交系動物を得るのは困難であり;正確には同系交配を避けることが目的である。卵は本発明で培養された細胞の最初の供給源である。インキュベートしていない卵を用いるのが好ましいが、胚の発達の第1段階を得るためには数時間のインキュベーションが必要であろう。得られた細胞は異なるニワトリの株から誘導される。用いた株の中で、品質保証ラベルの付いたニワトリの生産を意図する市販の株であるS86N株、品質保証ラベルの付いたニワトリの生産を意図する株であるCNR、遺伝的および表現型的に十分に特徴付けられている在来株であるMarens、消費用および研究室用の参照株用の卵の生成がさらに意図されている株である白色レグホン等について記載することができる。後者の株では、非常に特別に健常で安全な条件下で維持されている「SPF」(特定病原体不含)卵であると考えられるLohmann(ドイツ)の白色レグホン株から得られた特定の卵(Valoと称する)などの種々の起源が試験されている。多くの細胞単離体が種々の株から得られたが、これは方法の一般的な特徴を示唆している。
【0064】
実施例2:付着性細胞の生成および確立
卵を開き、開きながら卵黄を卵白から分離する。直接かもしくはパスツールピペットを用いて、または予め穴開け器を用いて穴の開いた輪の形に切り抜いた小型の吸収性の濾紙(Whatmann 3M紙)を用いて、卵黄から胚を除去する。穴の直径は約5mmである。これらの小型の輪を、乾式加熱を用いてオーブン中約30分間滅菌する。この小型の紙の輪を卵黄の表面に置き、そして胚を中央にし、胚をこのように紙の輪により取り囲む。次いで後者を小型のはさみを用いて切除し、そして除去した全体を、PBSまたは生理食塩水で満たしたペトリ皿に置く。このように輪により取り除いた胚を溶媒中で過剰な卵黄を除くよう清浄し、そしてこのように過剰のビテリンを含まない胚盤を、パスツールピペットを用いて収集する。
【0065】
双方の場合、胚を生理的溶媒(1X PBS、トリス・グルコース、溶媒等)を含有するチューブの中に置く。次いで胚を機械的に解離し、そして「フィーダー」上で規定の培養培地に接種する。培養に用いられる好ましい条件の中で、優先されるものは、初期濃度12から8%のウシ胎児血清、1%の非必須アミノ酸、1%の市販品の混合ビタミン、最終濃度1mMのピルビン酸ナトリウム、最終濃度0.2mMのベータ・メルカプトエタノール、最終濃度2.9mMのグルタミンと、抗生物質の最初の混合物、最終濃度10ng/mlのゲンタマイシン、最終濃度100単位/mlのペニシリンおよび最終濃度100μg/mlのストレプトマイシンを含有する混合物とを補充した基本培地、MacCoy培地から成る培養培地である。細胞の第1継代の後、速やかに抗生物質の混合物の培地への添加を止める。「速やかに」なる表現は一般に最初の3から5継代の後を意味すると理解される。ヌクレオシドの混合物は添加してもよく、この混合物は前記のように調製される(Painら(1996))。これらの同一条件下で試験した基本培地の中で、類似の結果が得られたものは、HamF12、Glasgow MEMおよびDMEM培地であり、後者は最終濃度8mg/lでビオチンを補充する。比較のために、ビオチン濃度は、MacCoy培地中0.2mg/l、HamF12中0.0073mg/lおよび市販のDMEMおよびGMEM培地培地中0である。
【0066】
培養培地に添加した成長因子およびサイトカインは、最終濃度1ng/mlのマウスSCF、最終濃度1から5ng/mlのIGF-1、最終濃度1ng/mlのCNTF、最終濃度1ng/mlのIL-6、および最終濃度0.5ng/mlから1ng/mlの可溶性IL-6レセプターなどの組換え体である因子およびサイトカインであるのが好ましい。いくつかの実験では、第1継代の間にいくつかの別の因子を添加することができる。例えば3または10継代までに、bFGFを最終濃度1ng/mlで、そしてIL-11を最終濃度1ng/mlで培地に添加することができる。
【0067】
この培地に系として確立されたマウス線維芽細胞、STO細胞から成る不活性化された「フィーダー」上で接種を行う。これらの細胞は、STO細胞で成長因子、例えば鳥類SCFの構成的な発現を可能にする単純な発現ベクターをトランスフェクトした場合もある。このように、この「フィーダー」は可溶性であり、そして/または細胞の原形質膜に付着する形態の因子を生成する。
【0068】
細胞のこの培地への直接的な最初の接種の後、翌日培地を部分的に交換し、そして次に、さらに翌日初代細胞に関して観察された付着細胞の比率に依存して部分的または完全に交換する。場合に応じて約4から7日後、最初の培養を解離し、そして新たな皿の同一の初期培地中不活性化されたフィーダー上に移す。3から5継代の後、抗生物質に対する抵抗性をコードする発現ベクター、例えばネオマイシン、ヒグロマイシン、ピューロマイシン等に対する抵抗性に関する遺伝子でトランスフェクトされていないか、またはトランスフェクトされたSTO細胞の不活性化されたフィーダー上で細胞を培養する。約20継代の後、細胞から成長因子およびサイトカインを漸進的に剥奪する。「漸次的な離脱」なる表現は培養培地からの因子毎の除去を意味すると理解される。従って、1継代でまず最初にSCFを除去し、そして次に、2または3継代後にIGF-1を除去する。細胞が形態学的な変化または増殖の平均速度の変動を呈さない場合、その他の因子、例えばCNTFおよびIL-6を次に除去する。この離脱もまた激変的であろう。この場合、全ての因子を一度に全て除去する。次いで細胞を観察し、そして数日過ぎただけで、増殖速度が変更される。後者の溶液が一般的に実行されるものである。
【0069】
種々の単離体がこのように得られ、そして非常に長い期間維持される。「非常に長い期間」なる表現は最低50日間、好ましくは200から400日間以上、時間の制限なしに数週間のオーダーの期間を意味すると理解される。600日間以上観察する。
【0070】
用いた支持体に関わらず、付着する全ての細胞をタンパク質溶解性解離酵素、例えばプロナーゼ、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン等で解離する。好ましくは、動物起源のいずれかの潜在する夾雑物を避けるために細菌起源のタンパク質溶解性酵素を用いる。これらの細胞は
図4の写真により実例で説明される特定の形態、すなわち小型のサイズで、核原形質比率が大きく、明確に見える少なくとも1つの核小体を有する核および非常に小型の原形質を有する胚性幹細胞の特徴を有する。これらの細胞は多かれ少なかれ緻密な固体の塊の形態で成長する特徴がある。付着性および非付着性細胞は、Painら(1996)および米国特許第6,114,168号および欧州特許第787180号にて前記したように、多くの抗体と交差反応を呈する。内因性テロメラーゼ活性成分もまた存在し、そしてこれらの細胞の「幹」特性において重要な因子である。
【0071】
異なる単離体の細胞が得られ、そして長期間維持される。
【0072】
表1にこれらの単離体のいくつかの特徴を説明する。
【0073】
(表1)
【0074】
「停止」なる用語は細胞の増殖の終末に相当するのではなく、実験者による意図的な細胞培養の停止に相当することに留意されたい。世代数nは式:X=2
nにより得られるか、またはXは細胞の理論的累積数である。細胞を各継代でおよび各接種の間計数するので、この数字を利用することができる。このように培養の完全な履歴を利用することができる。
【0075】
実施例3:細胞の継代
幹細胞、特に体性幹細胞および胚性幹細胞の1つの特徴は、かなりの期間インビトロで増殖できる能力である。細胞を増殖し、そして継代するために、培養培地を交換し、そしてその継代の数時間前に新鮮培地で置き換える。
図1に示した曲線は細胞成長および確立のプロファイルを説明している。
【0076】
実施例4:倍化時間および平均分裂時間
培養において確立された細胞および前記の実施例で提示した細胞で開始して、平均分裂時間を算出することができる。得られた独立した全ての単離体に関して、増殖の速度が連続継代の間わずかに増加し、従って、細胞の確立の間の平均分裂時間の変動を引き起こす。付着相では、細胞をまず、不活性化されたフィーダー層に接種し、そして一定の初期接種密度、100mm皿あたり1から2×10
6細胞で規則的に継代する。表2は3つの確立された細胞型に関し、倍化時間(d)および平均分裂時間(MDT時間)を培養時間の関数として説明する。確立の間に平均倍化時間の低下が観察される。
【0077】
(表2)
以下の式を用いて、示された日数で平均倍化時間(d)が確立される。
d=(1/Log2×(LogX2/X1))×1/(T2-T1)
(式中、X2およびX1は時間T2およびT1での細胞の全数である。)この式は実施例1で提示した式X=2
nによる、世代数Nの直接的な算出結果である。次いで平均分裂時間(MDT)が24時間をdで割ることにより時間で得られる。
*この確立の間、フィーダーの存在しないプラスチック支持体上でValo細胞を継代する。倍化時間は低下し、そして次に細胞がこの新しい環境に再度慣れたときに再度上昇する。
【0078】
実施例5:系の増殖に関する血清のレベルの調節
これらの系を得る間に用いた培養培地は種々の添加剤、例えば非必須アミノ酸、ビタミンおよびピルビン酸ナトリウムを補充した基本培地(DMEM、GMEM、HamF12、McCoy等)を含む常用培養培地である。この複合培地は、依然培養の中心成分であるウシ胎児血清を含むが、植物成分などの異なる起源の成分であっても漸次的に用いることができる。調節し、そして細胞を比較的低い比率のウシ胎児血清に慣れさせる方法が提示されている。このように低いパーセンテージの血清で、細胞を高増殖(分裂時間>1)で維持することが可能である(例えばS86N16細胞の場合で2%)。
【0079】
図2に示す曲線は規定の細胞型:S86N16細胞に関する血清の相対的な低下を説明する。倍化時間および平均分裂時間をも算出し、そして表3に示した。平均分裂時間は血清の相対的な低下の関数として増加することに留意されたい。それにも関わらず、記載した条件下での暫時培養の後に回復相が観察される。それにも関わらず、この時間は24時間未満のままであり(d>1)、これは既に相対的に低い2%の血清濃度であっても、産業用の観点で非常に有利な増殖を既に示している。この時間を増加させ、そしてなおさらに培養条件を最適化するために、代謝に関する他の改善を用いることが想定できる。
【0080】
(表3)
【0081】
継代p204とp179の間で10%、p198とp176の間で7.5%、p224とp201の間で3.75%、並びにp216とp199の間で2%の条件に関して実例を挙げる。
【0082】
実施例6:フィーダー層の細胞の剥奪
最初の培養条件の下では不活性化された細胞の菌叢の存在は前記したような胚性幹細胞を得るために必要であると思われる。多くの継代の後、このフィーダー層はもはや必要ではないように思われる。「培養処理された」プラスチックのみが重要であるように思われる。実際に、いくつかの真核細胞の特徴の1つは付着形態で増殖することである。細胞の付着性を促進するために、用いられる種々のプラスチック材料を「培養」処理する。その製造過程でプラスチックの表面に電荷を付加する処置が行われ、この電荷が細胞の細胞外マトリックスの付着性を促進する。対照的に、しばしば細菌学的品質のプラスチックと称される細胞培養未処理プラスチックは、特定のフィーダーの添加による表面処理をされていない。そこへの細胞の付着は一般に非常に困難で、不可能でさえあるか、または次に形態学的、および挙動においてしばしば激変的な変化を誘起する。この2つのプラスチックの品質の間の相違により、そこで実施される接種に依存して、異なる挙動の細胞を得ることが可能になる。不活性化された「フィーダー」の培養の漸次的な剥奪により、数継代の後に、「培養処理された」プラスチック上に直接接種された幹細胞の均一な培養を得ることが可能になる。
【0083】
S86N16細胞の場合における、不活性化された「フィーダー」の存在下および不在下で維持された細胞に関する比較成長曲線を
図3に示す。この細胞の適合は、最初に「フィーダー」上で維持された細胞の幹細胞特性を喪失しないように漸進的である。このように漸進的な剥奪が行われる。プラスチック上で増殖する細胞を得ることは離脱方法が達成したことである。表4では、分裂時間は細胞のその環境に対する感受性を示している。血清の漸進的な離脱の場合のように、定義された条件下での数継代の後、細胞に及ぼす回復効果を伴って適合が得られる。
【0084】
(表4)
【0085】
3つの条件1.2×10
6、0.5×10
6および0.3×10
6のフィーダー細胞に関して継代p154とp131の間、並びにプラスチック単独の条件に関してp161とp139の間で実例を挙げる。
【0086】
実施例7:成長因子における細胞の剥奪
初期培養条件下では成長因子の存在は必須である。因子の2つのファミリー:サイトカインおよび栄養性因子を概要的に区別することができる。
【0087】
サイトカインはその作用がgp130タンパク質に関連のレセプターを介する主要なサイトカインである。従って、LIF、インターロイキン11、インターロイキン6、CNTF、オンコスタチン、およびカルジオトロフィンは特異鎖のレセプターのレベルでの補充および後者と単量体またはしばしばヘテロ二量体形態のgp130タンパク質との組み合わせを伴う類似の作用様式を有している。数例では、レセプターの可溶性形態の組み合わせ、とりわけインターロイキン6およびCNTFのレセプターに関して記載された形態により、観察される増殖効果を上昇させることが可能である。少なくとも1つのこれらのサイトカインの添加が胚性幹細胞を得るのに必要であるように思われることは以前に示されている。
【0088】
栄養性因子は主にSCF、IGF-1およびbFGFであり、これらを前記したように培養の開始時にも用いる。その存在はまた細胞を得るためおよび増幅するためにも必要である。
【0089】
これらの成長因子を漸進的に低下させることにより、数継代後に外因性成長因子を添加しないで胚性または体性幹細胞の増殖を可能にする培養条件を得ることができる。これらの細胞を特徴付けるために用いた異なるマーカーは因子なしで維持された細胞に関していつも陽性である。
【0090】
実施例8:用いる培地の比較
異なる培地に接種すると、細胞は同一頻度で得られない。培地の成分の比較により、特定の成分の1つを同定することは困難である。全体比較により細胞の生理学における改善が可能になる可能性が高いようである。好ましい培地の中で、Ham F12培地、MacCoy培地、DMEM培地、およびビオチン富化DEME培地が注目される。このような単離体で開始する場合、これらの異なる培地で適合試験を実施する。
【0091】
実施例9:非付着細胞の確立
幹細胞は、連続継代の間、細菌学用の皿へ直接高密度で接種することにより、数継代後にその基質から剥離するようになり、そして懸濁液中、小型の規則的な凝集体の形態で増殖する胚性細胞を得ることが可能になる。この増殖は単なる希釈、機械的解離により、そしてタンパク質溶解酵素を用いることなく、数継代にわたって促される。培養の攪拌は、一般に行われるが、非付着性細胞を得るための特徴的な要因ではない。付着性細胞と同様に、これらの細胞は幹細胞の特徴的な形態、すなわち小型のサイズ、核原形質比率が大きく、明確に見える少なくとも1つの核小体を有する核および非常に小型の原形質を有する。これらの細胞は多かれ少なかれ緻密な小型の凝集体の形態で成長する特徴がある。これらの非付着性細胞は、Painら(1996)にて前記したように、多くの抗体と交差反応を呈する。これらの細胞はまた内因性テロメラーゼ活性に関して陽性である(EB1、EB4およびEB5細胞に関して実施例10に示すように。)非付着相では、細胞は異なる培地中で高増殖性を呈する。初期接種密度および非常に規則的な新鮮培地の供給はmlあたり1×10
6細胞を越える範囲の高密度を提供する。表5は数個の単離体の主要な特徴をまとめている(親細胞、懸濁液に作製する初期継代、懸濁液中の培養を維持する日数、維持の自発的な停止の前に得られた継代および世代の数)。従って、懸濁液にするための継代は単離体毎(単離体EB1およびEB14参照)および増殖速度(単離体EB3およびEB14参照)によって変動し得る。
【0092】
(表5)
【0093】
「開始」なる用語は、細胞が非付着下に置かれたことに相当すると留意されたい。
【0094】
実施例10:確立された細胞の特徴付け
長時間培養を維持した幹細胞を前記したのと同一の規準で特徴付けした(Painら(1996))。このように、
図5の写真で説明した内因性アルカリ性ホスファターゼ活性、内因性テロメラーゼ活性、ならびに特異的抗体、例えば抗体SSEA-1(TEC-01)およびEMA-1との反応性の定期的な検出が可能である。
【0095】
細胞の確立の間の重要な規準の1つはテロメラーゼの存在である。TRAP検出キット(テロメラーゼPCR ERISA、Roche)を用いて培養物中に細胞を維持している間に種々の試験を実施した。培養中の種々の継代の後、細胞は陽性に検出される。従って、S86N16細胞、S86N45細胞に関して、並びに非付着形態でそこから誘導されたEB1、EB4およびEB5細胞に関してテロメラーゼ活性が検出される(表6参照)。1次培養で維持したCEF(ニワトリ胚線維芽細胞)を陰性と考える。OD<0.2の閾値は陰性閾値としてキットにより推奨されている閾値である。全ての分析を2000細胞の等価物で実施した。
【0096】
(表6)種々の継代での種々の系におけるテロメラーゼ活性のアッセイ法
【0097】
実施例11:細胞のトランスフェクションおよび誘導
長期間の成長を維持した幹細胞を種々の発現プラスミドでトランスフェクトする。鳥類幹細胞をトランスフェクトできることが示されている(Painら(1996))。特に非付着細胞をトランスフェクトし、そして種々の分類系により安定してトランスフェクトされた細胞を同定することが可能になる(細胞分類、限界希釈等)。幹細胞の未分化段階でこれらの遺伝的修飾を行うことができる。一度この修飾が得られると、次いで細胞は自発的にまたは分化インデューサーの添加により分化を誘起される。この場合、レチノイン酸を10
-8Mから10
-6Mの濃度で、またはジメチルスルホキシドを最終1から2%で、または酪酸ナトリウムを10
-4から10
-8Mの濃度で、またはフォルボールエステル(TPA、PMA等)もしくはリポ多糖類(LPS)を最終1から5μg/mlで用いることができる。別の実例では、細胞は懸濁液中で胚様体を形成でき、それらを構成する細胞の解離または非解離の後、胚様体はプラスチックへの付着を引き起こすことができる。これらの分化した細胞は次いで増殖するが、長期間にわたる増殖に関しては能力がさらに限定されている。細胞の増殖に影響する遺伝子における遺伝的修飾を標的化することにより、これらの分化した細胞を長期間増殖させることができるようになる。
【0098】
実施例12:細胞の感染
付着性および非付着性細胞を鳥類ウイルスおよびレトロウイルスなどの異なるウイルスおよびレトロウイルスで感染させることができる。従って、これらの細胞を、生の弱毒化されたまたは不活性化された、場合に応じてヒトおよび獣医学用のワクチンの生成を意図したウイルスストックの生成のために複製補助として提供することができる。目的のウイルスの中で、言及するものはアデノウイルスのファミリー(例えばヒトアデノウイルスC、トリアデノウイルスA、ヒツジアデノウイルスD、シチメンチョウアデノウイルスB)、サーコウイルス科(例えばニワトリ貧血ウイルス、CAV)、特定のコロナウイルス、例えばトリ感染性気管支炎ウイルス(IBV)、フラビウイルス(例えば黄熱病ウイルスおよびC型肝炎ウイルス)、ヘパドナウイルス(例えばB型肝炎ウイルスおよびアビヘパドナウイルス、例えばアヒルB型肝炎ウイルス);ヘルペスウイルス(例えばガリッドヘルペスウイルス、HSV(単純ヘルペスウイルス)およびヒトヘルペスウイルス1、3および5)、オルソミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス:インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスBおよびインフルエンザウイルスC)、パポバウイルス(例えばポリオーマウイルスおよびさらに特にシミアンウイルス40)、パラミクソウイルス(例えば麻疹、おたふく風邪、および風疹ウイルス、ならびに例えばレスピロウイルスおよびニューモウイルス、例えばヒト呼吸器合胞体ウイルスおよびメタニューモウイルス、例えばトリニューモウイルス)ピコルナウイルス(例えばポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、および例えば脳心筋炎ウイルスおよび手足口病ウイルス)、ポックスウイルス(例えば鶏痘ウイルス、およびカナリア痘ウイルス、ジュンコ痘ウイルス、九官鳥痘ウイルス、ハト痘ウイルス、オウム痘ウイルス、ウズラ痘ウイルス、スズメ痘ウイルス、ムクドリ痘ウイルス、シチメンチョウ痘ウイルスなどのアビポックスウイルス)、レオウイルス(例えばロタウイルス)、レトロウイルス(例えばALV、トリ白血症ウイルス、γレトロウイルス、例えばマウス白血病ウイルス、レンチウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス1および2)並びにトガウイルス、例えばルビウイルス、特に風疹ウイルスである。
【0099】
実施例13:非付着性鳥類細胞系(EB1)をウイルスで感染させるためのプロトコール
細胞の増幅
5% 血清を含有する培地、好ましくはMacCoyの5A、HAMF12、またはDMEM培地またはいずれかその他の目的の培地に、一般に初期容量50mlで0.2×10
6細胞/mlの濃度でEB1またはEB14細胞を接種する。これを攪拌しながら7.5% CO
2、39℃で培養中で維持する。3から4日間、毎日新鮮培地を加え、その間最終培養容量100から250mlで1から3×10
6細胞/mlの細胞濃度に到達させるために増幅を持続させる。
【0100】
懸濁液中の細胞を収集し、そしておよそ1000rpmで10分間遠心する。ペレットを1X PBS(リン酸塩バッファー) 20から50mlに再懸濁する。次いで細胞を計数し、遠心し、そしてペレット化した細胞を最終濃度3から5×10
6細胞/mlで血清不含培地に取る。次いでこれらの条件下でチューブあたり3から5×10
6細胞入った数個のチューブを用意する。
【0101】
ウイルスおよび感染の準備
既知の力価を有するウイルスストックを37℃で急速に解凍し、そして血清不含培地で最終感染に必要な濃度の10倍から1000倍の力価で希釈する。ウイルスの型に従って0.01から0.5のm.o.i.(感染の多重度)で目的のウイルスで細胞を感染させ、これは細胞ペレットにウイルス懸濁液0.1から10(容量/容量)%を添加することを含む。ウイルスに最適な温度、一般に33から37℃で1時間インキュベートした後、細胞を再度遠心し、そして培地を注意深く除去する。次の工程で初期ウイルスの効果を制限するためにこの工程はしばしば必要であることが解っている。可能性の1つは細胞を再度遠心せずに血清含有培地(5% 血清)で、最終濃度0.2から1×10
6細胞/mlで直接希釈することであり、そして再度インキュベートする。
【0102】
上清および細胞の収集
インキュベーションの2から4日後、ウイルスの動態および特定のウイルスの細胞変性効果の可能性に依存して、細胞または細胞性細片を含有する培地を収集する。ウイルスに依存して、ペレットまたは上清のみが目的であり、そしてウイルス粒子を含有する。細胞を収集し、そして遠心する。収集した上清を再度2500rpmで5から10分間遠心し、そして-80℃で保存した後、粒子を精製する。力価測定するためにアリコートを収集する。細胞ペレットを血清不含培地5mlに取り、ソニケートし、そして2500rpmで5から10分間遠心する。得られた上清を精製およびアリコートの力価測定まで-80℃で保存する。
【0103】
ウイルス感染および生成効率を実施した種々の条件間で比較する。細胞変性効果を有するウイルスに関しては、一般に溶解プラーク技術により力価測定を実施する。
【0104】
実施例14:付着性鳥類細胞系(S86N45)をウイルスで感染させるためのプロトコール
細胞の調製
感染の48時間前に細胞を培地、好ましくは5% 血清を含有するMacCoyの5A、HAMF12、またはDMEM培地またはいずれかその他の目的の培地に0.03から0.06×10
6細胞/cm
2の濃度でT150フラスコに接種する。これを39℃および7.5% CO
2で維持する。
【0105】
感染
既知の力価のウイルスストックを37℃で急速に解凍し、そして血清不含培地で最終感染に必要な濃度の10倍から1000倍の力価で希釈する。ウイルスの型に従って0.01から0.5のm.o.i.(感染の多重度)で目的のウイルスで細胞を感染させ、これは細胞ペレットにウイルス懸濁液0.1から10(容量/容量)%を添加することを含む。感染は一般に0%血清含有培地で最小の培地(75cm
2フラスコで5から10ml)で実施する。
【0106】
ウイルスに最適な温度、一般に33から37℃で1時間インキュベートした後、5% 培地を20mlフラスコに加える。特別な場合に、細胞の付着する可能性のある粒子を除去するために細胞をPBSで洗浄することができる。細胞変性ウイルスの場合、感染の良好な進行を示す細胞溶解プラークの出現をモニター観察するために感染後毎日細胞を観察する。
【0107】
上清および細胞の収集
インキュベーションの2から4日後、ウイルスの動態および特定のウイルスの細胞変性効果の可能性に依存して、上清、細胞および細胞性細片を含有する培地を収集する。ウイルスに依存して、ペレットまたは上清のみが目的であり、そしてウイルス粒子を含有する。細胞を収集し、そして遠心する。収集した上清を再度2500rpmで5から10分間遠心し、そして-80℃で保存した後、粒子を精製する。力価測定するためにアリコートを収集する。細胞ペレットを血清不含培地5mlに取り、ソニケートし、そして2500rpmで5から10分間遠心する。得られた上清を精製およびアリコートの力価測定まで-80℃で保存する。
【0108】
ウイルス感染および生成効率を実施した種々の条件間で比較する。細胞変性効果を有するウイルスに関しては、一般に溶解プラーク技術により力価測定を実施する。
【0109】
実施例15:EB1系の非付着性鳥類幹細胞における組換えアビポックスの複製
138継代の非付着性幹細胞EB1を増幅し、そして次に目的のタンパク質を生成する組換えアビポックスでm.o.i.0.1で感染させる。感染の後4日間、細胞を攪拌器内に維持し、その間感染は持続する。細胞内容物の溶解の後、上清および細胞内含量の双方のウイルス力価の変動をモニター観察するために、第2日目および次の2日間アリコートを移し取る。溶解プラーク技術により力価測定を実施する。
【0110】
表7は得られた結果を説明する。これらの結果はEB1幹細胞での組換えアビポックスの非常に満足できる複製を実証している。従って、感染性力価は培養の間中、そして一連の感染の間進行し、4日間のインキュベーションの後、最大7.2PFU/細胞(PFU:プラーク形成単位)に到達する。この力価は1次ニワトリ胚性細胞においてこの同一の組換えアビポックスに関して得られたものと少なくとも等価である。
【0111】
この力価を特定の培養条件および最適化された手順により改善することができる。少なくとも等価な感染力価は3リットルのバイオリアクターで大規模であっても得られた。
【0112】
(表7)非付着性EB1幹細胞における組換えアビポックスの力価の動態
【0113】
参考文献