【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、本発明は次のステップ:
(a)開口面に含まれる開口表面を持つ凹状内側受容表面と、外側環状受容構造を持つ挿入カップを準備し、
(b)前記外側環状受容構造周りに嵌合することで前記外側環状受容構造の前記受容表面と協働するように構成される周縁環状固定構造を持つ装着配置用インサートを準備し、
(c)前記装着配置用インサートを前記寸法を増加させるために加熱し、
(d)前記周縁環状固定構造を、前記外側環状受容構造の前記受容表面周りに嵌合させ、
(e)前記装着配置用インサートを室温に戻してその寸法を減少させて、前記外側環状受容構造上に前記周縁環状固定構造の半径方向締め付け(clamp)を達成する、を含む製造方法を提供する。
【0013】
かかる製造方法は前記挿入カップ上に十分な前記装着配置用インサートの半径方向締め付けを得ることを可能とする。
【0014】
前記外側環状受容構造回りの前記装着配置用インサートの嵌合は、加熱による前記装着配置用インサートの拡張により過度の力を用いることなく可能となる。
【0015】
しかし前記カップと前記装着配置用インサートの分離には、冷却の後は相当な力が必要であり、これにより前記カップの十分な打ち込み及び方向づけを可能とする。
【0016】
半径方向締め付けによる前記挿入カップ上に前記装着配置用インサートを強制的に保持することは、高い信頼性と安全な固定を保証するものであり、これにより前記挿入カップの打ち込みの際に適用される力に耐えることが可能である。前記外側環状受容構造上の前記周縁環状固定構造の半径方向締め付けは、前記外側環状受容構造の形状を過度に複雑にすることなくこの高い信頼性のある固定の達成を可能とする。
【0017】
前記挿入カップ上の前記装着配置用インサートの保持は国際公開第2006/040483A1号に記載の方法よりもより信頼性は高い。これは特に、前記半径方向締め付けが環状受容構造上で起こり、このことは、前記締め付けが外部で起こり従って前記半径方向インサートとより大きい接触表面を持つという事実に基づく。
【0018】
最後に、前記外側環状受容構造上の前記周縁環状固定構造の半径方向締め付けは、前記挿入カップ内にプレストレス状態を起こし、このプレストレスが、患者の大腿骨の寛骨臼内にその打ち込みの際に前記挿入カップの変形を起こす可能性を制限する。というのは、前記挿入カップがその上部環状端部近くで比較的小さい厚さ例えば3mmを持つ場合、前記挿入カップの楕円化する現象が時として起こり(前記挿入カップが例えば金属やプラスチック等の変形可能な材料でできている場合に)、この現象は前記寛骨臼ジョイントの雄部分が前記挿入カップ内に嵌合することを不可能とし、又はこの現象は不均一に分配される内部機械的応力を生じ前記挿入カップの破壊をもたらす(例えばセラミックスなどの弱い材料でできている場合)か、又は不均一に分配される内部機械的応力を生じ、その結果、特にセラミックスからできている場合に関節インサートが容易に損傷を受ける、からである。
【0019】
本発明の製造方法において、外側環状受容構造を持つ挿入カップであって、その上で前記装着配置用インサートが加熱により拡張した後に室温に戻すことで締め付けられる挿入カップを準備することで、前記装着配置用インサートの汚染、特にそれがポリエチレンでできてる場合に汚染の問題を防止することを可能とする。
【0020】
本発明において、前記凹状内部受容表面は、前記挿入カップ(例えば2方向移動可能な寛骨臼のための)に関して移動可能な関節インサートを受容するか、又は前記挿入カップ(例えば単一の移動可能性を持つ寛骨臼のための)に関して静置される関節インサートを受容するように構成され得る。
【0021】
有利には、前記挿入カップ上に前記装着配置用インサートを固定する前に、前記方法は、関節インサートを前記挿入カップの前記凹上内部受容表面内に挿入する補助的ステップ(b1)を含む。
【0022】
前記挿入カップ、前記関節インサート及び前記装着配置用インサートは従って、製造現場で前もって組立てられ得るものであり、外科医がそのように形成された前記ユニットを前記関節インサートについて心配することなく単純に打ち込むことができるものでなければならない。さらに、前記関節インサートは、外科医がなんら関与することなく前記挿入カップ内に正しい位置に配置され得るものである。従ってこのことは、前記挿入カップ内に前記関節インサートの誤配置の危険性を抑制する。この関節インサートの誤配置は前記関節インサートの早期破壊を生じる恐れがある。
【0023】
有利には:
−前記関節インサートがセラミックスできており、
−前記装着配置用インサートが前記挿入カップ内の前記関節インサートを保持する弾性手段を持ち、
−前記装着配置用インサートが前記挿入カップに結合される際に、前記装着配置用インサートが、前記挿入カップ内に前記関節インサートを保持するための前記弾性手段を介してのみ前記関節インサートと接触する、ものである。
【0024】
前記弾性保持手段は、搬送され、保存される間、かつ外科医により取り扱いされる際に本前記関節インサートを前記挿入カップ内に正しい位置を維持する。外科医が前記装着配置用インサートにより前記挿入カップ上に打ち込み力を適用する際には、前記セラミックスインサートには前記弾性保持手段が変形することでなんらのショックも伝達されない。従って、外科医が前記打ち込み中に前記セラミックス関節インサートを破壊する恐れはない。
【0025】
有利には、前記方法はさらに、前記ユニットが形成され微生物保護封袋に封止された後に殺菌されるステップ(f)を含む。
【0026】
好ましくは、前記関節インサートがセラミックスからできており、かつ殺菌ステップ(f)がガンマ線照射、有利には約25kGyと約40kGyの間の照射による、方法である。
【0027】
国際公開第2006/040483A1号には環状受容構造は、前記凹上内部受容表面の表面に続く円筒状又はやや円錐状環状保持表面を含む。
【0028】
しかし、実質的に円筒状の連続性は前記寛骨臼大腿骨シャフトの可能な角度の余裕を制限する。さらに前記円筒状の連続性は、通常は金属でできている前記寛骨臼大腿骨シャフトは前記挿入カップと接触するリスクが増加する。かかる接触の場合には、前記挿入カップが金属でできている場合には金属分解の現象は前記挿入カップ及び/又は前記人工大腿骨シャフトの端部の分解により起る。この分解は金属デブリを生じさせ、回りの組織に取り込まれ及び/又は人工関節を損傷させ得る。さらに、前記カップが金属でできていない場合には、特にセラミックス又は例えばPEEKなどのプラスチックでできている場合には、前記挿入カップの部分的又は全破壊の危険性がある。
【0029】
このことが、前記環状受容構造が好ましくは外部にあり、前記開口面から離れて位置される理由である。
【0030】
前記インパクターの固定のための前記環状受容構造が前記開口面から離れて前記実質的な球状凸状アンカー表面の尖端に向かって位置される場合、この環状受容構造はもはや人工大腿骨シャフトの角度的余裕を制限せず、適合され得るものである。同時に前記人工大腿骨シャフト及び前記挿入カップの間の接触の恐れは制限され、それにより金属分解及び/又は破壊の危険性が低減される。
【0031】
好ましくは前記装着配置用インサートは、インパクターが移動可能に固定される組立て構造を用い得る。
【0032】
従って、製造現場で前記挿入カップ上に前記装着配置用インサートを配置することが可能となり、それにより外科医は単純に前記インパクターを前記挿入カップの打ち込みを実行するために前記装着配置用インサート上に固定するだけでよい。従って、外科医が前記挿入カップの前記凹状内部受容表面を損傷する恐れはなく、前記挿入カップは前記装着配置用インサートにより保護される。
【0033】
有利には:
−前記外側環状受容構造が、前記外側へ向けて受容表面を持つ前記環状端部の連続的又は不連続的周縁半径方向肩部を含み、
−前記装着配置用インサートが前記内側へ向けて接続表面を持つ連続的又は不連続的周縁環状固定構造を持ち、前記外側環状受容構造の前記受容表面と協働するように構成される、方法である。
【0034】
第1の変法によれば、
−前記外側環状受容構造の受容表面が不連続周縁ロック溝を持ち、
−前記装着配置用インサートの前記周縁環状固定構造の前記接続表面は周縁に配置された複数のロックリブを持ち、それが前記不連続的周縁ロック溝内に嵌合されるように構成される、方法である。
【0035】
第2の変法によれば:
−前記外側環状受容構造の受容表面又は前記周縁環状固定構造の接続表面のいずれかが連続的周縁環状ロック溝を持ち、
−前記周縁環状固定構造の接続表面又は前記外側環状受容構造の受容表面の他の1つが連続的又は不連続的周縁環状ロックリブを持ち、前記連続的周縁環状ロック溝内に嵌合するように構成される。
【0036】
前記ロック溝及び前記1以上のロックリブにより、前記装着配置用インサートは前記挿入カップ上に維持される。これはまた外科医が前記インパクターにより伝達させる方向トルクに耐えるように、前記装着配置用インサート及び前記挿入カップの間の結合の強さを大きく増加させる。
【0037】
有利には、本発明は:
−前記環状端部の周縁半径方向肩部が約0.7mmと約1.2mmの間の厚さを持ち、
−前記外側の環状受容構造の前記不連続の周縁ロック溝又は前記連続的周縁環状ロック溝が、約0.2mmと約0.6mmの間の半径方向厚さを持つ。
【0038】
かかる寸法は、その上部環状端部近くの小さい厚さ、例えば3mmの厚さを持つ挿入カップと適合する。
その上部環状端部近くの小さい厚さを持つ挿入カップの使用は、前記結合部(ジョイント)の雄部分の前記球状ヘッドの直径を減少することを可能とし、従って位置変更の危険を制限する。
【0039】
好ましくは、前記環状端部の前記周縁半径方向肩部は約1mmと約4mmの間の高さを持つ。
【0040】
前記周縁半径方向肩部のかかる高さは、前記骨と接触するための前記凸状外側アンカー表面の表面面積を過度に減少させることなく、前記半径方向締め付けのための前記装着配置用インサート及び前記挿入カップの間に十分な接触表面を与える。このことは、赤道面の近くに実質的に位置する前記外側アンカー表面部分が、前記大腿骨の前記寛骨臼キャビティ内の前記挿入カップの保持に実質的に関与する部分である、という事実に照らすとより大きいものである。
【0041】
有利には、前記環状受容構造の前記不連続的周縁ロック溝又は連続的周縁環状ロック溝は、約0.4mmと約3mmの間の高さを持つ。
【0042】
好ましくは、前記装着配置用インサート及び前記外側カップの前記外側環状受容構造は、前記装着配置用インサートが前記挿入カップの前記外側環状受容構造上に固定される場合に、前記装着配置用インサートは、前記挿入カップの前記実質的に半球状凸状アンカー表面により定められる実質的に半球状表面の外側には突出しないように構成される。従ってこれにより、患者の大腿骨の前記準備された寛骨臼キャビティの近くに存在する前記骨物質と前記装着配置用インサートとが不適合となる危険を避けることとなる。
【0043】
有利には、前記装着配置用インサートの周縁環状固定構造は、前記環状端部の半径方向肩部の厚さと実質的に等しいか小さい厚さを持ち得る。
【0044】
好ましくは、前記装着配置用インサートはポリエチレンでできている。ポリエチレンは通常医療分野で使用され安価である加工が容易である。さらに、ポリエチレンは金属、セラミックス又はポリエチレンよりも硬い材料、例えばPEEKなどでできている挿入カップを損傷する恐れがない。
【0045】
好ましくは、前記組立て構造は、前記装着配置用インサート中に形成される内部ネジを持つ固定孔を含み得る。この孔は前記インパクターの対応するネジ付き部分のねじ込みを可能とする。
【0046】
有利には、前記固定孔は貫通孔であり、脱着器具と協働することを可能とする。前記脱着器具はネジ付きロッドを持ち、これは前記孔を通じてねじ込むことができる。前記器具は遠位端部を持ち、この部分は前記ネジ付きロッドが前記貫通孔内にねじ込まれる際に前記挿入カップの前記凹状内部受容表面に対して、直接又は間接的に結合されるように構成される。
【0047】
好ましくは、本方法は:
−前記装着配置用インサートが、前記装着配置用インサートが前記挿入カップの前記外側環状受容構造に固定される際に、前記装着配置用インサートと前記凹状内部受容表面との間又は適切な場合に前記装着配置用インサートと前記関節インサートとの間に自由空間が保持されるように構成され、
−前記装着配置用インサートが前記外側環状受容構造の前記受容表面に対してその接続表面を横切って封止状態とされ、
−前記固定孔が貫通孔であり、前記孔は、前記孔を介して、前記装着配置用インサート及び前記凹状内部受容表面との間又は適切な場合には前記装着配置用インサート及び前記関節インサートとの間の自由空間を前記外側と通じさせ、シリンジの端部の漏れ防止のために寸法化される、方法である。
【0048】
本発明の他の課題、構成及び有利な効果については、添付図面を参照しつつ以下の具体的な実施態様の記載から明らかとなるであろう。