(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、微細化に限界があることが見え始めたため、微細化による半導体装置における素子数のさらなる高密度化は困難となっている。そこで、微細化以外の、高密度化のための新しいアプローチとして、半導体チップの三次元実装技術が脚光を浴びるようになった。この三次元実装を簡単に説明すると、「二次元的に横に広がっていた半導体装置を、機能ごとに階層に分けて縦に積層すること」に対応する。つまり、三次元化することにより、単位面積当たりの素子数を増加させるという発想である。
【0003】
三次元実装として、例えば、半導体チップを積層して、半導体チップ間をワイヤボンディングで接続するワイヤボンディング方式が出現した。これは、従来の二次元的半導体装置に比べてそれなりの高密度化をもたらした。しかしながら、各半導体チップの厚さを50μm以下にすることは難しく、さらに、半導体チップの間には20μm程度の厚さを持つ接着機構層(アンダーフィル層)が介在することとなるため、ワイヤボンディングの段差に対する立体配置の観点からも、積層できる半導体チップの数は16程度が限界である。また、半導体チップ間を接続するワイヤの配線長が極端に長くなるため、半導体装置の高速化に対しては不利となる。
【0004】
このような状況から、最近はTSV方式の三次元実装が注目されている。TSVとは、Through Silicon Viaの略であり、シリコン貫通電極のことである。TSV方式では、このTSVが半導体チップ間の接続配線となる。従って、半導体チップ間の接続の配線長は、先に説明したワイヤボンディング方式でのワイヤの配線長に比べて桁違いに短くなる。よって、半導体チップ間を接続する配線の持つ、抵抗成分、キャパシタンス成分、リアクタンス成分を小さくすることができるため、TSV方式では、信号が高周波信号であっても減衰しにくく、半導体装置の高速化に対して有利となる。
【0005】
TSV方式では、積層する半導体チップ間は、電気的接続も兼ねるかたちで貼り合わされている。TSV方式による三次元実装による積層モジュールの形成は、大別すると、以下のようになる。
【0006】
(1)ウェハ(例えばシリコンウェハ)をあらかじめ個片化(分割)して複数のダイ(半導体チップ)を形成し、ダイとダイとを貼り合わせて三次元実装を行い、積層モジュールを形成する。
【0007】
(2)複数のウェハを積層する最終的な段数にまで貼り合わせてウェハ積層体を形成し、最後に個片化することにより積層モジュールを形成する。
【0008】
現在は(1)が一般的であり、将来はコスト的に有利な(2)が一般的になると言われている。(2)を行うためには、ウェハ積層体の外周部でウェハが剥離しない、安定で丈夫なウェハ積層体が求められる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。ただし、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。なお、全図面にわたり共通する部分には、共通する符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、図面は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置とは異なる個所もあるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0014】
ただし、以下の説明において、面の形状、位置及び角の角度に対して使用される「平坦」、「ほぼ平坦」、「直角」、「ほぼ直角」、「水平」及び「ほぼ水平」等の表現や形状の表現は、数学的(幾何学的)に平坦、直角、水平である場合や数学的に定義される形状だけを意味するものではなく、半導体装置の製造工程において工業的に許容される程度の違いや粗さ等がある場合やその形状に類する形状を含む場合をも意味する。
【0015】
本実施形態においては、例えばシリコンウェハ等のウェハを取り扱うが、本実施形態の説明を始める前に、
図1を用いて一般的なウェハの各部位について説明する。
図1(a)はウェハ100を表面100aの上方から見た平面図である。
図1(b)は、ウェハ100の外周部101とその近傍におけるウェハ100の断面図である。
図1(a)に示されるように、ウェハ100の表面100aは、ウェハ100の中心にひろがる中心部103と、そのまわりに位置する外周部101とを有する。さらに、ウェハ100は、ウェハ100の結晶方向の判別及びウェハ100の整列を容易に行うために、ウェハ100の外周の一部にノッチ102と呼ばれる切り欠きが設けられている。そして、
図1(b)に示されるように、ウェハ100の表面100aは、中心部103においてはほぼ平坦になっている。外周部101においては、表面100aは傾斜しつつウェハ100の外周の端面105へとつながっている。ウェハ100の外周部101の断面をこのような形状とするベベル加工を行うことにより、ウェハ100の外周部101の強度を確保する。外周部101において傾斜している面をベベル104と呼ぶ。なお、表面100aの反対側にあるウェハ100の裏面100bについても、表面100aと同様の構成を有する。
【0016】
(第1の実施形態)
図2から
図4を用いて、本実施形態にかかるウェハ積層体23の製造方法を説明する。
図2から
図4は、本実施形態の製造方法の各工程での、ウェハ積層体23の外周部及びその近傍におけるウェハ積層体23の断面図である。
【0017】
まず、半導体素子等が形成されている第1のウェハ1と研削サポート用の第2のウェハ2とを準備する。なお、第1のウェハ1には、第1のウェハ1を貫く貫通電極(不図示)をあらかじめ形成しておいても良く、第2のウェハ2についても必要に応じて同様に形成しておくことができる。
図2(a)に示すように、電極等が形成されたデバイス面である第1のウェハ1の表面1bと第2のウェハ2の表面2aとが向かい合い、且つ、第1のウェハ1及び第2のウェハ2の中心及びノッチの位置が互いに重なり合うように、第1のウェハ1及び第2のウェハ2の位置合わせを行う。位置合わせした状態を維持するように、接着剤法あるいはfusion(溶融)接合法等で第1のウェハ1及び第2のウェハ2を貼り合わせ、ウェハ積層体23を形成する。なお、研削サポート用の第2のウェハ2は、第1のウェハ1の研削・研磨の際に第1のウェハ1を支持する機能を担うのみならず、貼り合わせの前に第2のウェハ2の表面2aに電極等を形成することにより、ウェハ積層体23中でのデバイス機能を担うこともできる。この場合には、第2のウェハ2は、第1のウェハ1から剥がされることなく、最終的に形成されるウェハ積層体23の中に残される。一方、第2のウェハ2が研削サポートの機能のみを担う場合には、最終的に第2のウェハ2を第1のウェハ1から剥がしても良い。
【0018】
次に、
図2(b)に示すように、第1のウェハ1のベベル4と第2のウェハ2のべベル4との間に位置する間隙に、ウェハ積層体23の外周に沿って、フィル材3を一回り埋込む。以下にフィル材3の埋込みについて詳細に説明する。
【0019】
まず、フィル材3を厚さ300μm程度の薄膜状にして、テープ状のフィルム22に付着させて、フィル材付着テープ(フィルム)24を形成する。フィル材3の詳細については、後で説明する。
【0020】
次に、フィル材3を埋込む際に用いられる半導体製造装置200の側面図を
図5に示す。この半導体製造装置200は、ウェハ積層体23を保持する保持部(回転装置)210と、フィル材付着テープ24をウェハ積層体23の外周部の間隙に擦り付けるための擦り付けヘッド220とを有する。さらに、フィル材付着テープ24に所定の張力を与えつつ、フィル材付着テープ24を送り出し、且つ、巻き取るために、巻き取りリール231と送り出しリール232とを有する。
【0021】
保持部210は、ウェハ積層体23を真空吸着してウェハ積層体23を保持する保持テーブル211と、保持テーブル211を支持する支持軸212と、支持軸212を回転させるためのモータ213とを有している。この支持軸212の下端はモータ213に連結しており、このモータ213により支持軸212と保持テーブル211とが一体となって回転する。例えば、ウェハ積層体23が保持される保持テーブル211の面が地面とほぼ水平となるような状態を維持したまま、保持テーブル211は、支持軸212を回転軸として回転する。
【0022】
図6は、擦り付けヘッド220の側面図である。擦り付けヘッド220は、2つの突出部221aと221bとを有する支持部221と、この突出部221aと221bとの間に張設された弾性ゴム等からなる弾性部材222と、支持部221とつながっているエアシリンダ223とを有する。このエアシリンダ223を用いて、擦り付けヘッド220を最適な位置に移動させる。
【0023】
なお、従来の半導体装置の製造工程におけるウェハの端面を研磨する際に使用されるベベル研磨装置の機構において、研磨テープをフィル材付着テープ24に置き換えることにより、ベベル研磨装置を本実施形態にかかる半導体製造装置200として用いることができる。
【0024】
上記のような半導体製造装置200において、保持テーブル211の上にウェハ積層体23を保持する。この際、ウェハ積層体23の第1のウェハ1及び第2のウェハ2の中心が支持軸212の中心と重なるように、ウェハ積層体23を保持テーブル211の上に配置する。フィル材付着テープ24は、そのフィルム22側の面が弾性部材222に接するように取り付けられる。そして、エアシリンダ223を駆動させ、2つの突出部221a、221bの間にウェハ積層体23の外周部が挟まれ、且つ、ウェハ積層体23の外周がフィル材付着テープ24を介して弾性部材222に接するように、擦り付けヘッド220を移動させる。次に、保持部210を用いて、ウェハ積層体23を一定速度で回転させる。さらに、巻き取りリール231と送り出しリール232とを一定の速度で回転させて、フィル材付着テープ24に一定の張力を与えつつ、フィル材付着テープ24を送り出し、且つ、巻き取る(
図5参照)。
【0025】
さらに詳細には、
図5中の擦り付けヘッド220の近傍を拡大した側面図である
図7に示すように、フィル材付着テープ24は、突出部221aと221bとの間に張設された弾性部材222により、ウェハ積層体23の外周に押し当てられる。この際、フィル材付着テープ24を介してウェハ積層体23の外周に押し当てられた弾性部材222は、引き伸ばされ、弾性部材222に張力が発生する。この弾性部材222の張力により、フィル材付着テープ24を介してウェハ積層体23の外周に一定の力が印加され、フィル材付着テープ24のフィル材3が、第1のウェハ1のベベル4と第2のウェハ2のべベル4との間に位置する間隙に擦り付けられることとなる。また、巻き取りリール231と送り出しリール232とが一定の速度で回転することから、フィル材付着テープ24の新しい面が常に間隙に押し当てられることとなり、加えて、ウェハ積層体23が一定速度で回転していることから、ウェハ積層体23の外周に沿ってフィル材3を擦り付けることができる。
【0026】
間隙にフィル材3を埋込んだ後、必要に応じて、乾燥処理、加熱処理、又は、光照射処理を行い、フィル材3を硬化させる。このフィル材3を硬化させる手段は、フィル材3の材料に応じて最適なものを選択する。
【0027】
また、フィル材3の形状を成形し、余分なフィル材3によりウェハ積層体23が汚染されることを防止するために、フィル材3が硬化した後に、ウェハ積層体23の外周部の間隙からはみ出した余剰のフィル材3を研磨フィルムにより研磨除去することが好ましい。この場合には、上記の半導体製造装置200に、研磨フィルムを押し当てるための研磨ヘッド(不図示)を設け、半導体製造装置200において研磨除去を行っても良い。もしくは、研磨テープを利用した市販のベベル研磨装置(例えば、(株)荏原製作所のEAC200bi−T、EAC300bi−T)を用いても良い。
【0028】
このようにして、
図2(b)に示すような構造を得ることができる。さらに、第2のシリコンウェハ2を研削サポートとして用いて、第2のウェハ2と接していない第1のウェハ1の裏面1aを研削・研磨する。このようにして、数百μmの厚さを有していた第1のウェハ1を例えば50μm程度の膜厚を持つように薄層化する。
図3(a)からわかるように、間隙にフィル材3が埋込まれているために、第1のウェハ1の裏面1aとフィル材3の外周側の端面7とがなす角6の角度は、直角に近くなり、ナイフエッジ(鋭角)にならない。
【0029】
次に、
図3(b)に示すように、研磨した第1のウェハ1の裏面1aの上に、第3のウェハ13を積層させる。なお、第3のウェハ13についても、第1のウェハ1と同様に貫通電極(不図示)をあらかじめ形成しておくことができる。詳細には、第3のウェハ13の電極等が形成されたデバイス面である表面13bと第1のウェハ1の裏面1aとが向かい合い、第3のウェハ13と第1のウェハ1との中心及びノッチの位置が互いに重なり合うようにして、第1のウェハ1と第3のウェハ13とを貼り合わせる。
【0030】
そして、
図4(a)に示すように、これまでの説明と同様に、第3のウェハ13のベベル4とフィル材3との間に位置する間隙に、フィル材3をさらに埋込む。そして、
図4(b)に示すように、第3のウェハ13の裏面13aを研削・研磨する。この場合であっても、第3のウェハ13のベベル4とフィル材3との間に位置する間隙にフィル材3をさらに埋込んだために、第3のウェハ13の裏面13aとフィル材3の端面7とがなす角6の角度は、直角に近くなり、ナイフエッジにならない。
【0031】
さらに、所望の数だけ、ウェハを積層し、形成されたウェハ積層体23の外周部の間隙にフィル材3をさらに埋込み、新たに積層させたウェハの裏面を研削・研磨することを繰り返す。それによって、所望の数のウェハを含むウェハ積層体23を得ることができる。さらに、このウェハ積層体23を個片化することにより、積層モジュールを得ることができる。
【0032】
次に、フィル材3の材料について説明する。フィル材3は、以下のような特性等を備えることが好ましい。
(1)各ウェハの最表面に位置する膜(例えば酸化シリコン膜)との密着性が高い。
(2)研削・研磨に対する機械的耐性がある。
(3)ウェハ用の研磨液、洗浄液に対する耐薬品性がある。
(4)ウェハの貼り合わせ後に行われる熱プロセスで印加される高温に対して耐熱性がある。(例えば200℃程度の熱に対して耐熱性があることが好ましい。)
(5)硬化収縮が小さいこと。
(6)半導体装置製造で用いられるクリーンルーム内での使用実績がある。
(7)熱膨張係数がウェハの材料(例えばシリコン)のものに近い。
(8)脆くないこと(できれば弾性があって、応力を分散・緩和できること)。
【0033】
よって、上記のような特性を備えるフィル材3としては、ガラス材料、無機ポリマー、又は、有機ポリマーを主成分とする材料を挙げることができる。詳細には、ガラス材料は熱に強いことで優れている。ガラス材料を主成分とする材料としては、水ガラス、Spin On Glass、シラン、シラザン等が挙げられる。また、ポリマーを主成分とする材料としては、耐熱性のある合成樹脂、すなわち、フッ素樹脂、ケイ素樹脂(シリコーン)、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等が挙げられる。さらに、歯の詰め物として用いられるプラスチック製のコンポジットレジン(光硬化性樹脂と球状フィラとの混合物)を用いても良い。
【0034】
また、フィル材3の粘性は、扱いが容易になるように最適な粘性を選択する。例えば、ウェハ積層体23の第1のウェハ1のベベル4と第2のウェハ2のべベル4との間に位置する間隙に対するフィル材3の埋込み量は、各ウェハが300mm径のウェハの場合には、約0.024cm
3となる。この埋込み量は非常に少ないものといえる。このような状況で、間隙から流れ出すことなく、且つ、間隙に容易に擦り付けることができるように、フィル材3の粘性は比較的高いことが好ましい。さらに、先に説明したように、フィル材3の硬化収縮が小さいことが好ましいため、フィル材3における溶媒成分の占める割合が少ないことが好ましい。
【0035】
本実施形態によれば、ウェハ積層体23の外周部の間隙にフィル材3を埋込むことにより、研磨した後の第1のウェハ1の裏面1aとフィル材3の端面7とがなす角6の角度が直角に近くなることから、チッピングの原因になるナイフエッジを回避することができる。また、ウェハ積層体23の外周部に存在するフィル材3により、ウェハが互いに剥離することを避けることができ、安定で丈夫なウェハ積層体23を得ることができる。加えて、チッピングを防止できるゆえ、各ウェハの外周部もしくは外周部近傍に形成された半導体チップを無駄にすることなく利用することができることから、本発明者らがこれまで検討してきた製造方法に比べて、1つのウェハから利用することができる半導体チップの数を増やすことができる。詳細には、以下のとおりである。
【0036】
先に説明したように、ウェハの外周部はベベル加工がされている。このようなウェハに対して更なる加工を行わずに、ウェハを支持基板に貼り付けて、研削・研磨を行うと、ウェハの外周部に尖ったナイフエッジが出現することが従来から知られている。このナイフエッジ部分では、ウェハの厚みが薄く、ウェハと支持基板とが接していないため、ウェハ強度が弱い。従って、このようなナイフエッジ部分でチッピング(欠け・劈開)が生じやすい。
【0037】
そこで、本発明者らはこれまでエッジトリミング法を検討してきた。本実施形態の比較例としてのエッジトリミング法を
図8を用いて説明する。
図8は、エッジトリミング法の各工程での、ウェハ300及びウェハ積層体23の外周部301及びその近傍における断面図である。
図8(a)に示すように、ウェハ300の表面300bにおける幅数mmの外周部301を例えば約50μm垂直に掘り下げる。掘り下げることによって形成される壁面8は、円錐台側面ではなく、円柱側面になる。次に、
図8(b)に示すように、ウェハ300の表面300bが支持基板311と接するように、ウェハ300と支持基板311とを貼り合わせる。さらに、
図8(c)に示すように、ウェハ300の裏面300aを研削・研磨して薄層化する。
図8(c)からも明らかなように、ウェハ300の薄層化後において、壁面8と裏面300aとのなす角6がほぼ直角になることから、ナイフエッジが出現することを回避することができる。しかし、この方法においては、外周部301を掘り下げることからウェハ300の直径がその外周側から短くなり、ウェハ300の外周部301等に形成された半導体チップは製品として利用することができなくなり、1つのウェハから取得できる半導体チップの数が減少してしまうという問題が生じていた。さらに、貼り合わせたウェハが、外周部301で剥がれるという問題があった。
【0038】
しかしながら、本実施形態によれば、ウェハ積層体23の外周部の間隙にフィル材3を埋込むことにより、ウェハが互いに剥離することを避けることができ、安定で丈夫なウェハ積層体23を得ることができる。加えて、外周部301を掘り下げ加工することがないため、各ウェハの外周部もしくは外周部近傍に形成された半導体チップを無駄にすることなく利用することができる。
【0039】
さらに、本実施形態によれば、フィル材3をテープ状にして用いていることから、フィル材3の取り扱いが非常に容易である。また、フィル材3の粘性等を最適値とすることにより、フィル材3の硬化時間を短くし、フィル材3によるウェハ積層体23の汚染を抑えることができる。さらに、フィル材付着テープ24を擦り付けることによりフィル材3を埋込んでいることから、フィル材3の埋込みにかかる時間は短く、製造効率を悪化させることを避けることができる。そして、あらかじめウェハを積層させた後に間隙に埋込んでいることから、使用するフィル材3の量を少なくすることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
本実施形態は、フィル材3を間隙に移送又は滴下することによりフィル材3の埋込みを行う点で、第1の実施形態と異なる。ここでは、第1の実施形態と同じ構成及び機能を有する部分は、第1の実施形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0041】
まず、フィル材3を埋込む際に用いられる半導体製造装置400を
図9に示す。
図9(a)は、ウェハ積層体23を取り付けた半導体製造装置400を、ウェハ積層体23の第1のウェハ1の裏面1a側から見た側面図である。
図9(b)は、
図9(a)中で示される矢印A側から半導体製造装置400の保持部(回転装置)410周辺を見た図である。半導体製造装置400は、保持部410と、ディスペンスノズル(フィル材供給装置)31と、光照射装置32とを有する。保持部410は、ウェハ積層体23のウェハの面を真空吸着してウェハ積層体23を保持する保持テーブル411と、保持テーブル411を支持する支持軸412と、支持軸412を回転させるためのモータ(不図示)とを有している。例えば、ウェハ積層体23が保持される保持テーブル411の面が、地面とほぼ直角となるような状態を維持したまま、支持軸412を回転中心として保持テーブル411は回転する。ディスペンスノズル31は、ウェハ積層体23の第1のウェハ1のベベル4と第2のウェハ2のべベル4との間に位置する間隙にフィル材3を移送又は滴下する。また、光照射手段32は、間隙に移送又は滴下されたフィル材3に対して光を照射して、フィル材3を硬化する。
【0042】
次に、
図10を用いて、本実施形態の製造方法を説明する。
図10は、本実施形態の製造方法のフィル材3の埋込み工程を説明するための図であり、詳細には、
図10(a)は
図9(a)に対応し、
図10(b)は
図9(b)に対応する。
【0043】
まず、第1の実施形態と同様に、第1のウェハ1と第2のウェハ2とを積層させてウェハ積層体23を形成する。さらに、
図10に示すように、上記のような半導体製造装置400を用いて、保持テーブル411の上にウェハ積層体23を保持する。この際、ウェハ積層体23の各ウェハの中心が支持軸412の中心と重なり、且つ、ウェハ積層体23の各ウェハの面(表面、裏面)が地面に対してほぼ直角になるように、ウェハ積層体23を保持テーブル411の上に保持する。この状態を維持したまま、例えば1rpm程度でウェハ積層体23を回転させる。そして、ディスペンスノズル31を用いて、ウェハ積層体23の外周部の間隙にフィル材3を移送又は滴下する。さらに、間隙に移送又は滴下された直後のフィル材3に光照射手段32から光を照射することにより、フィル材3を硬化させる。フィル材3が熱硬化性樹脂である場合には光として赤外線を選択し、フィル材3が紫外線硬化性樹脂である場合には光として紫外線を選択することが好ましい。このように、移送又は滴下した直後にフィル材3を硬化させることにより、フィル材3が垂れることなく、フィル材3を間隙に埋込むことができる。なお、本実施形態におけるフィル材3は、第1の実施形態で用いられる材料から選択することができるが、フィル材3が、間隙から流れることがなく、且つ、間隙を充填することができるような粘性を選択することが好ましい。
【0044】
この後、第1の実施形態と同様に、フィル材3が硬化した後に、ウェハ積層体23の外周部の間隙からはみ出した余剰のフィル材3を研磨除去しても良い。なお、研磨除去の具体的な方法は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0045】
そして、第1の実施形態と同様に、第1のウェハ1の裏面1aを研削・研磨する。さらに、所望の数だけ、ウェハの積層と、フィル材3の埋込みと、ウェハの研削・研磨とを繰り返し、最終的に、所望の数のウェハを含むウェハ積層体23を得ることができる。
【0046】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、積層した第1のウェハ1のベベル4と第2のウェハ2のべベル4との間に位置する間隙にフィル材3を埋込むことにより、ナイフエッジを回避することができる。また、ウェハ積層体23の外周部の間隙に存在するフィル材3により、ウェハが互いに剥離することを避けることができ、安定で丈夫なウェハ積層体23を得ることができる。加えて、チッピングを防止できるゆえ、各ウェハの外周部もしくは外周部近傍に形成された半導体チップを無駄にすることなく利用することができる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、間隙に移送又は滴下した直後にフィル材3を硬化させることから、フィル材3が垂れることなく、間隙に埋込むことができる。従って、フィル材3の埋込みにかかる時間は短く、製造効率を悪化させることを避けることができる。また、あらかじめウェハを積層させた後に間隙に埋込んでいることから、使用するフィル材3の量を少なくすることができる。
【0048】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。