(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784667
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 79/06 20140101AFI20150907BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20150907BHJP
E05B 85/16 20140101ALI20150907BHJP
【FI】
E05B79/06 C
B60J5/04 H
E05B85/16 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-64493(P2013-64493)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-189976(P2014-189976A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳憲
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−232300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 79/06
E05B 85/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに対し、第一側を支点とし、その逆の第二側が引き起こし方向に開動作及びこの逆方向に閉動作がされるよう組み付けられるハンドル部材と、前記ハンドル部材の内部を通るように配索されるハーネスと、を備える車両用ドアハンドル装置であって、
前記ハンドル部材は、前記ドアの外部に配置されるグリップ部として機能するハンドル本体と、前記ハンドル本体の第一側の端部から前記ドアの内部に延出する形で配置され、前記ドアに対する前記支点を形成する支点部と、を有し、
前記ハーネスは、前記ハンドル本体の内部から、前記支点部の表面に密着する形で該支点部の延出方向に沿って前記ドアの内部へと延出しており、
前記支点部には車両外側の表面に溝が形成されており、前記ハーネスは、前記溝内に嵌め込まれた形で密着配置されていることを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記支点部は、前記ハンドル本体から車両内側へと延出し、
前記溝は、前記支点部の前記ハンドル本体側から延出先端部にかけて続く形で形成されている請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記ハンドル本体は、前記第一側の端部における前記支点部との隣接領域に、内部のハーネスを前記支点部の表面上へと延出させるためのハーネス用開口が設けられている請求項1又は請求項2に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
前記ハーネス用開口は、前記ハンドル本体の前記第一側の端部において前記支点部の前記第一側の隣接領域に設けられる請求項3に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項5】
前記ハンドル本体は、車両内側に凹んだハーネス収容部が形成されるハンドルベースと、前記ハンドルベースに対し車両外側から覆う形で組み付けられるハンドルカバーと、を有し、前記ハーネス収容部は、前記第一側の端部の第一側端面に沿って車両外側から車両内側に向かって形成され、前記支点部への溝へとつながる案内溝を有しており、収容されたハーネスを、前記案内溝を介して前記支点部の溝へと延出させる請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項6】
車両のドアに対し、第一側を支点とし、その逆の第二側が引き起こし方向に開動作及びこの逆方向に閉動作がされるよう組み付けられるハンドル部材と、前記ハンドル部材の内部を通るように配索されるハーネスと、を備える車両用ドアハンドル装置であって、
前記ハンドル部材は、前記ドアの外部に配置されるグリップ部として機能するハンドル本体と、前記ハンドル本体の第一側の端部から前記ドアの内部に延出する形で配置され、前記ドアに対する前記支点を形成する支点部と、を有し、
前記ハーネスは、前記ハンドル本体の内部から、前記支点部の表面に密着する形で該支点部の延出方向に沿って前記ドアの内部へと延出しており、
前記ハンドル本体は、車両内側に凹んだハーネス収容部が形成されるハンドルベースと、前記ハンドルベースに対し車両外側から覆う形で組み付けられるハンドルカバーと、を有し、前記ハーネス収容部は、前記第一側の端部の第一側端面に沿って車両外側から車両内側に向かって形成され、前記支点部への溝へとつながる案内溝を有しており、収容されたハーネスを、前記案内溝を介して前記支点部の溝へと延出させることを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項7】
前記ハンドル部材は、前記車両のドアの金属製のアウターパネルに組み付けられており、前記アウターパネルに貫通形成されたハンドル組み付け用のパネル開口の開口内周面と、前記ハンドル部材の支点部に密着配置される前記ハーネスとの間に、双方の接触を妨げるよう介在するハーネス保護部を備える請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項8】
車両のドアに対し、第一側を支点とし、その逆の第二側が引き起こし方向に開動作及びこの逆方向に閉動作がされるよう組み付けられるハンドル部材と、前記ハンドル部材の内部を通るように配索されるハーネスと、を備える車両用ドアハンドル装置であって、
前記ハンドル部材は、前記車両のドアの金属製のアウターパネルに組み付けられるものであり、前記ドアの外部に配置されるグリップ部として機能するハンドル本体と、前記ハンドル本体の第一側の端部から前記ドアの内部に延出する形で配置され、前記ドアに対する前記支点を形成する支点部と、を有し、
前記ハーネスは、前記ハンドル本体の内部から、前記支点部の表面に密着する形で該支点部の延出方向に沿って前記ドアの内部へと延出しており、
さらに前記ハンドル部材は、前記アウターパネルに貫通形成されたハンドル組み付け用のパネル開口の開口内周面と前記ハンドル部材の支点部に密着配置される前記ハーネスとの間に、双方の接触を妨げるよう介在するハーネス保護部を備えることを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項9】
前記アウターパネルにおける前記パネル開口の開口周辺部と、該開口周辺部の車両外側に配置されるハンドル本体の前記第一側の端部との間にパッドを設け、そのパッドは、前記アウターパネルにおける前記パネル開口の開口内周面と、その開口内周面と対向する前記支点部上の前記ハーネスとの間に延出する延出部を有し、その延出部が前記ハーネス保護部をなす請求項7又は請求項8に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項10】
前記ハンドル本体は、車両内側に凹んだハーネス収容部が形成されるハンドルベースと、前記ハンドル本体を車両外側から覆うハンドルカバーと、を有し、前記ハンドルカバーは、前記支点部上の前記ハーネスと、当該ハーネスに対向する前記アウターパネルにおける前記パネル開口の開口内周面との間に延出する部位を、前記ハーネス保護部として有する請求項7又は請求項8に記載の車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアハンドル装置に関し、例えば車体外側に設けられるハンドル部材(グリップ部)にアンテナやスイッチ等の電装品が内蔵されて、そのハーネスが車体内側へと配索される車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアハンドル装置は、例えば下記特許文献1に記載されているように、車両のドアに固定されるベース部材と、そのベース部材に対し、一端を支点にして、他端側が引き起こし方向に開動作及びこの逆の閉動作されるよう組み付けられるハンドル部材と、を備えている。近年、そうした車両用ドアハンドルにおいては、ハンドル部材に、ドアの施開錠や開閉動作用のスイッチや、キー認証のための無線通信用のアンテナ等の電装品が設けられる一方、それら電装品からの操作信号や送受信信号を伝達するハーネスが、ハンドル部材に設けられた開口を通って車体内部側へと配索されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−101054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたハンドル部材は、ハンドルベースと、該ハンドルベースに車両外側から収容されるアンテナやスイッチといった電装品と、該電装品から引き出されるハーネスと、それら電装品及びハーネスを覆うように車両外側からハンドルベースに組み付けられるハンドルカバーと、を備える。ところが、ハーネスの組み付けについては、その先端のコネクタを、ハンドルベースに設けられた開口を車両外側から車両内側に通過させて、車両ドアの内部に位置させる作業が必要となる。つまり、ハンドル部材を形成する際には、ハンドルベース上に電装品及びハーネスを配置して、それらをハンドルカバーで蓋するだけでなく、ハーネス先端のコネクタをハンドルベースに設けられた開口内に押し込む作業が必須となっており、この押し込み作業が、車両用ドアハンドル装置の組み立て作業の負担を増す要因になっていた。
【0005】
一方で、強度部材であるべきハンドル部材において、上記のようなコネクタが通過できるような比較的大きい開口領域を設けることは、強度低下の要因になるといった課題もある。
【0006】
本発明は、組み立て作業の負担を軽減するとともに、従来よりもハンドル部材の開口面積を減じて強度を増した車両用ドアハンドル装置を提供することにある。
【0007】
上記課題を解決するために本発明
の車両用ドアハンドル装置の第一は、
車両のドアに取り付けられて、ドアを解錠する開操作を行うための車両用ドアハンドル装置であって、そのドアに対し第一側を支点とし、その逆の第二側が引き起こし方向に開動作及びこの逆方向に閉動作がされるよう組み付けられるハンドル部材と、前記ハンドル部材の内部を通るように配索されるハーネスと、を備え、
前記ハンドル部材は、前記ドアの外部に配置されるグリップ部として機能するハンドル本体と、前記ハンドル本体の第一側の端部から前記ドアの内部に延出する形で配置され、前記ドアに対する前記支点を形成する支点部と、を有し、
前記ハーネスは、前記ハンドル本体の内部から、前記支点部の表面に密着する形で該支点部の延出方向に沿って前記ドアの内部へと延出して
おり、
前記支点部には車両外側の表面に溝が形成されており、前記ハーネスは、前記溝内に嵌め込まれた形で密着配置されていることを特徴とする。
本発明の車両用ドアハンドル装置の第二は、
車両のドアに対し、第一側を支点とし、その逆の第二側が引き起こし方向に開動作及びこの逆方向に閉動作がされるよう組み付けられるハンドル部材と、前記ハンドル部材の内部を通るように配索されるハーネスと、を備える車両用ドアハンドル装置であって、
前記ハンドル部材は、前記ドアの外部に配置されるグリップ部として機能するハンドル本体と、前記ハンドル本体の第一側の端部から前記ドアの内部に延出する形で配置され、前記ドアに対する前記支点を形成する支点部と、を有し、
前記ハーネスは、前記ハンドル本体の内部から、前記支点部の表面に密着する形で該支点部の延出方向に沿って前記ドアの内部へと延出しており、
前記ハンドル本体は、車両内側に凹んだハーネス収容部が形成されるハンドルベースと、前記ハンドルベースに対し車両外側から覆う形で組み付けられるハンドルカバーと、を有し、前記ハーネス収容部は、前記第一側の端部の第一側端面に沿って車両外側から車両内側に向かって形成され、前記支点部への溝へとつながる案内溝を有しており、収容されたハーネスを、前記案内溝を介して前記支点部の溝へと延出させることを特徴とする。
本発明の車両用ドアハンドル装置の第三は、
車両のドアに対し、第一側を支点とし、その逆の第二側が引き起こし方向に開動作及びこの逆方向に閉動作がされるよう組み付けられるハンドル部材と、前記ハンドル部材の内部を通るように配索されるハーネスと、を備える車両用ドアハンドル装置であって、
前記ハンドル部材は、前記車両のドアの金属製のアウターパネルに組み付けられるものであり、前記ドアの外部に配置されるグリップ部として機能するハンドル本体と、前記ハンドル本体の第一側の端部から前記ドアの内部に延出する形で配置され、前記ドアに対する前記支点を形成する支点部と、を有し、
前記ハーネスは、前記ハンドル本体の内部から、前記支点部の表面に密着する形で該支点部の延出方向に沿って前記ドアの内部へと延出しており、
さらに前記ハンドル部材は、前記アウターパネルに貫通形成されたハンドル組み付け用のパネル開口の開口内周面と前記ハンドル部材の支点部に密着配置される前記ハーネスとの間に、双方の接触を妨げるよう介在するハーネス保護部を備えることを特徴とする。
【0008】
上記本発明の構成によれば、ハーネスは、ハンドル部材の支点部の延出方向に沿って、該支点部の表面に密着する形で既に配置されているため、ドアハンドル装置がハーネスとハンドル部材を含んだ一体のユニットとなっている。このため、ハーネス先端に設けられるコネクタを、ハンドル部材に開口を設けて、その開口を通過させる形で配置する必要はなくなる。また、ハンドル部材には、ハーネスを引き出すためだけの最小限の開口面積を有する開口があればよく、コネクタを通過させるほど大きな開口面積を有する開口は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の車両用ドアハンドル装置の一実施形態を示す斜視図及びハンドル部材についてその第一側を拡大した拡大図。
【
図2】
図1の車両用ドアハンドル装置の分解斜視図及びハンドルベースについてその第一側を拡大した拡大図。
【
図3】
図1の車両用ドアハンドル装置からハンドルカバーを除いた斜視図。
【
図4】
図3の車両用ドアハンドル装置を車両外側から見た平面図。
【
図5】
図1の車両用ドアハンドル装置を車両下側から見た側面図。
【
図6】
図1の車両用ドアハンドル装置を、車両上下方向中央位置にて長手方向に切断した断面図及びその一部分を拡大した部分拡大断面図。
【
図7】
図1の車両用ドアハンドル装置の車両のドアへの組み付け状態の一例を示す図。
【
図8】
図1の車両用ドアハンドル装置の第一側の分解斜視図。
【
図9】
図1の車両用ドアハンドル装置の第一変形例であって、
図6の部分拡大断面図と同じ断面を示した断面図。
【
図10】
図1の車両用ドアハンドル装置の第二変形例であって、
図6の部分拡大断面図と同じ断面を示した断面図。
【
図11】
図1の車両用ドアハンドル装置の第三変形例であって、
図6の部分拡大断面図と同じ断面を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
本発明の車両用ドアハンドル装置1は、車両のドアの外側表面10aに固定されるアウターハンドルであり、その基本的な構成として、
図1〜
図6に示すように、ハンドル部材2備える。なお、車両内側、車両外側、車両上側、車両下側といった表現は、これらのパーツが車両のドア(アウターパネル10)に組み付けられた状態を想定して使用した表現である。
【0012】
ハンドル部材2は、
図1〜
図6に示すように、車両の運転者、乗員等であるユーザ(使用者)のグリップ部(取手部位)となるハンドル本体21を有し、車両のドアに対し、自らの長手方向の第一側の端部を支点にしてその逆の第二側を引き起こし方向に開動作及びこの逆方向に閉動作がされるよう、車両のドアのアウターパネル10に対し組み付けられる(
図7参照)。ここでのハンドル部材2は樹脂製であり、グリップ部をなすハンドル本体21と、支点アーム部22と、ガイドアーム部23とを備える。
【0013】
支点アーム部22は、ハンドル本体21における第一側(ここでは車両前側)の端部212から突出して形成されている。具体的にいえば、支点アーム部22は、ハンドル本体21における第一側の端部(前端部)212の底面部21aから延出しており、車両のドアに組み付けられたときには、ドアのアウターパネル10の開口15から車両内側に回り込んで配置され、ベース部材3(5)の回動支持部をなす軸部51(回動軸線2R)を中心に、ハンドル部材2を円弧状に回動可能となる。本実施形態の軸部51(回動軸線2R)は、ハンドル本体21よりも第一側に位置している。
【0014】
ベース部材3は、
図8に示すように、車両前後方向における第一側(ここでは車両前方)の位置に固定される前方ベース部材5と、車両前後方向における第二側(ここでは車両後方)の位置に固定される後方ベース部材(図示なし)とからなり、双方とも周知の方法によってアウターパネル10に対し固定される。
【0015】
前方ベース部5には、ハンドル部材2が第一側を支点に回動可能となるよう、支点アーム部22が組み付けられる。ここでの前方ベース部5は、基材50と軸部51とを有しており、基材50は、アウターパネル10のパネル開口15の周辺部に対し車両外側(パネル表面10a)に当接する形で配置されて上記のようにねじ固定される外側本体部50Bと、外側本体部50Bの第一側から延出し、パネル開口15(及び後述のパッド52の開口55)を通過する形でアウターパネル10の車両内側に回り込む内側延出部50Aと、を有する。軸部51は、孔部50hとハンドル部材2の支点アーム部22の孔部22hとの双方を貫通した状態で組み付けられ、ハンドル部材2の回動軸として機能する。パッド52は、基材50と金属製のアウターパネル10との間に緩衝材として配置される。なお、ここでの基材50(即ち前方ベース部材5)は、ねじ孔54aにねじ54をねじ込む形で固定される。
【0016】
後方ベース部材(図示なし)については詳説しないが、アウターパネル10の開口16の周辺部に組み付けられるとともに、ハンドル部材2が第一側を支点に回動する際に第二側の動作がガイドされるようガイドアーム部23が組み付けられる。なお、ベース部材3は、前方ベース部材5と後方ベース部材6が分離せず一体であってもよいし、他の形状としてもよい。また、アウターパネル10への組み付けやハンドル部材2の組み付けついても他の組み付け方法を採用してもよい。
【0017】
ところで、ハンドル部材2には、
図2〜
図4に示すように、アンテナ9Aやスイッチ9Pといった電装品(電子部品)9と、該電装品9から引き出される配線部材をなすハーネス7とが内部に収容されている。ここでの電装品9は、プッシュスイッチ9Pとアンテナ部材9Aであり、それぞれからハーネス7が2本ずつ引き出されている。それらのハーネス7は、支点アーム部22の表面22aに密着する形で、該支点アーム部22の延出方向に沿って車両のドアの内部空間(アウターパネル10とインナーパネル(図示なし)の間の空間)2Sへと延出している。
【0018】
図3及び
図4に示すように、本実施形態の支点アーム部22には、その表面に溝22vが形成されている。ハーネス7は溝22vの内部に嵌め込まれ、溝22vの内壁面に密着した形で収容・配置されており、外部からの接触に対し保護されている。この保護の観点からすれば、溝22vは、ハーネス7を外部に突出させることなく、内部に完全に収容する形状を有することが望ましい。本実施形態の溝22vは、支点アーム部22の車両外側の表面22aに形成されている。
【0019】
具体的にいえば
図2及び
図6に示すように、溝22vは、支点アーム部22のハンドル本体21側から先端にかけて続く形で形成されている。本実施形態の支点アーム部22は、ハンドル本体21の第一側端部(前端部)212の車両内側となる裏面部(裏面)21aから車両内側へと延出する支点基端部22nと、その支点基端部22nから第一側へと屈曲する形で延出する支点先端部(延出先端部)22mと、を有し、ドアの開動作の際の回動支点が支点先端部22mに形成されるが、溝22vは、支点基端部22nの第一側表面22nbから、支点先端部22mの車両外側表面22maと第一側先端面22mbにかけて続くように形成されており、ハーネス7は、その先端面22mcの溝22vに沿って車両内向きへと延出している。つまり、本実施形態のハーネス7は、溝22v内を通りつつ、ドアの開動作の際の回動軸線2Rを、車両外側から第一側へと回り込む形で、ドアの内部空間2Sに延出している。
【0020】
また、本実施形態のハンドル本体21は、
図6に示すように、第一側の端部212において支点アーム部22(支点基端部22n)との隣接領域に、内部のハーネス7を支点アーム部22の表面22a上(溝22v内)へと延出させるためのハーネス用開口21hを有する。これにより、ハンドル本体21内のハーネス7が支点アーム部22の表面22a上(溝22v内)へとスムーズに延出させることができる。本実施形態のハーネス用開口21hは、後述するハンドルベース21Bにおいて、ハーネス収容部20vの第一側端部をなす案内溝21vの、車両内側端位置(溝22v側の端位置)に形成される。
【0021】
なお、ここでのハーネス用開口21hは、ハーネス7の、ドアのアウターパネル10の車両内側へと延出した先に設けられるコネクタ70が、通過不可となる大きさ及び形状を有する。つまり、ハーネス用開口21hは、コネクタ70が通過できないような小面積の開口とすることができる。
【0022】
また、ここでのハーネス用開口21hは、ハンドル本体21の第一側の端部212において支点アーム部22の隣接領域のうち、第一側(
図6の左側)の隣接領域に設けられる。この領域であれば、ハンドル部材2の回動操作に対する強度への貢献が少ないため、開口形成に適する。
【0023】
本実施形態のハンドル部材2は、
図2に示すように、車両内側に凹んだ電装品収容部20及びハーネス収容部20vが形成されるハンドルベース21Bと、ハンドルベース21Bに対し車両外側から覆う形で組み付けられるハンドルカバー21Cと、を有する。電装品収容部20は、ここではプッシュスイッチ9Pを収容する第二側の収容部20Pとアンテナ部材9Aを収容する第一側の収容部20Aである。ハーネス収容部20vは、アンテナ部材9Aの第二側の溝と、アンテナ部材9Aの収容部20Aの底を第二側から第一側に向かう溝と、アンテナ部材9Aの第一側からハンドル本体21の第一側端部に形成される案内溝21vへと向かう溝とが、ハンドル部材2の長手方向に連続的に続く形で形成されている。
【0024】
上記した案内溝21vは、ハンドルベース21Bの第一側の端部21B2の第一側端面(表面)21bに沿って車両外側から車両内側に向かって形成される溝であり、支点アーム部22への溝22vへとつながるよう形成される。ハーネス収容部20vに収容されたハーネス7は、この案内溝21vを介して支点アーム部22の溝22vへと延出している。ここでは、ハンドルベース21Bにハンドルカバー21Cが組み付けられることにより、案内溝21vが第一側及び車両外側から覆われており、ハーネス用開口21hは、ハンドル本体21Bとハンドルカバー21Cとによって環状に取り囲まれた形状をなす。
【0025】
なお、ハンドルベース21Bとハンドルカバー21Cは、ねじ25,26や互いの係合部等によって組み付けられる。
【0026】
なお、前方ベース部5において、基材50の内側延出部50Aは、
図8に示すように、互いに対向する形で延出する対向延出部50A0と、それら対向延出部50A0を第一側先端側で連結する先端連結部50A1を有する。ハンドル部材2の支点アーム部22は、前方ベース部5の対向延出部50A0の間に配置されるとともに、先端連結部50A1は、支点アーム部22の延出先端面22mbの車両内側のみを第一側から覆うように形成され、車両外側が切り欠かれた形状を有する。この切り欠かれた部分(切り欠き部)50A2は、ハーネス7が通過する空間として利用される。
【0027】
このように本実施形態によれば、ハンドル本体21が、支持アーム部22の延出開始位置よりも第一側に突出した第一側端部212を有する。この第一側端部212は、ハンドル部材2の引き起こし方向への開動作に関する強度への貢献が低い部分であるから、この部分に案内溝21v及びハーネス用開口21hが形成されることは、他の部分に形成されるよりも望ましい。また、その案内溝21vから続く形で、支持アーム部22の表面22nb,表面22maにも溝22vが形成される。そして、これらの溝21v、22vにハーネス7が収容されている。また、溝22vは、支持アーム部22の先端面21mbにまで続く形で形成されているため、これを利用し、ハーネス7を、支持アーム部22の車両外側から第一側先端面を回り込む形で車両内側へと導くことができる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記実施形態において一部の構成要件を省略する、さらには他の構成要件を追加する等、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。以下、その変更例について説明する。
【0029】
上記実施形態における溝22vは、支点アーム部22の車両外側の表面ではなく、車両上下側の側面22b、22c(
図4参照)に形成されていてもよい。ただし、溝22vは、支点アーム部22の第二側に設けるよりも、支点アーム部22の第一側あるいは支点アーム部22の車両上下側に設けた方が、ハンドル部材2の強度の観点から望ましい。
【0030】
上記実施形態においては、
図6に示すように、ハーネス7を溝22vの内部に収容することにより、外部からの接触から保護された状態となっているが、ハンドル部材2の回動時において接触の可能性のある金属製のアウターパネル10の開口15の内周端との接触を防ぐ保護部(ハーネス保護部)を設けてもよい。具体的にいえば、この保護部は、アウターパネル10に貫通形成されたハンドル組み付け用のパネル開口15の開口内周面と、ハンドル部材2の支点アーム部22に密着配置されるハーネス7との間に、双方の接触を妨げるよう介在するよう配置することができる。
【0031】
例えば
図9に示すように、ハンドルカバー21Cの第一側端部21C’に、アウターパネル10におけるパネル開口15の開口内周面15aと、その開口内周面15aと対向する支点アーム部22の表面上のハーネス7との間に延出する開口内側延出部21Xを上記ハーネス保護部とすることができる。この場合、ハンドルカバー21Cの第一側端部21C’は、ハンドルカバー21Cにおける第一側端縁部21Zと、第一側端縁部21Zから屈曲して第二側に延出する第二側延出部21Yと、第二側延出部21Yの第二側に延出した先で、パネル開口15(さらにはパッド52の開口55)を通過する形で車両内側へと延出する開口内側延出部21Xと、を有して形成される。
【0032】
また、
図10に示すように、アウターパネル10におけるパネル開口15の開口周辺部と、該開口周辺部に車両外側に配置されるハンドル本体21の第一側の端縁部212’との間にパッド52を設け、そのパッド52に、アウターパネル10におけるパネル開口15内を車両内側に向かって通過する形で、そのパネル開口15の開口内周面15aと、その開口内周面15aと対向する支点アーム部22の表面上のハーネス7との間に延出する開口内側延出部52Xを設けて、その開口内側延出部52Xを上記ハーネス保護部とすることができる。この場合、開口内側延出部52Xは、パッド52をアウターパネル10に組み付けるための係合爪部として機能させることもできる。
【0033】
上記実施形態のベース部材5では、基材50の先端連結部50A1が、車両内側に形成されているが、
図11に示すように、これを車両外側に形成してもよい。この場合、車両外側に形成される先端連結部50A3と、支点アーム部22の延出先端面22mbとの間を通る形で、ハーネス7はアウターパネル内へと導き出される。先端連結部50A3が車両外側にあることにより、ハーネス7が溝部22vから外れることを防ぐことができるとともに、車両内側へと導き出し易くなる。
【符号の説明】
【0034】
1 車両用ドアハンドル装置
2 ハンドル部材
20 電装品収容部
20v ハーネス収容部
21 ハンドル本体
21B ハンドルベース
21C ハンドルカバー
21h ハーネス用開口
22v 溝
22 支点アーム部(支点部)
3 ベース部材(ベース部)
5 前方ベース部材(ベース部)
7 ハーネス
70 コネクタ
9 電装品