(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材樹脂粒子、複数のナノサイズ導電粒子及び導電層を具える導電性粒子であって、基材樹脂粒子の表面に付着する複数のナノサイズ導電粒子間の点状接合による導電ネットワーク及び前記ナノサイズ導電粒子上にめっきにより形成された導電層を備え、
前記基材樹脂粒子は前記ナノサイズ導電粒子の付着に先立ち表面改質剤によって被覆され、
前記ナノサイズ導電粒子は、30nm以上100nm以下の平均粒子径を持ち、金属、金属酸化物、導電性カーボン及び/又は導電性高分子の少なくとも1種の材質からなり、前記基材樹脂粒子の表面にせん断または衝撃による乾式方式により付着していることを特徴とする導電性粒子。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、めっき膜の割れや剥がれによって引き起こされる導電性の質の低下の問題を解消するという目的を、基材樹脂粒子の表面上での複数のナノサイズ導電粒子間の点状接合による導電ネットワークを形成させ、更にそのナノサイズ導電粒子上にめっきによる導電層を設けることによって、通常のめっき膜によるものとは異なる異質な高信頼性の導電性を、高い導電性を損なわずに実現させた。
【0021】
本発明では、基材樹脂粒子の表面にナノサイズ導電粒子が点状接合で導電ネットワークを形成した複合粒子であって、更にその複合粒子の表層にめっきによる導電層を有する導電性粒子が用いられる。
【0022】
点状接合は、全体として面接合による強度で接合されたものでないことを意味する。また、点状接合は、点で接触した程度の強度の接合を意味する。複数のナノサイズ導電粒子同士は、一部分において面接合があったとしても、主として点接合によってナノサイズ導電粒子同士が接合し、導電ネットワークを形成すればよい。
【0023】
本発明にかかる導電ネットワークは、圧縮荷重をかけても導電性を確保できる信頼性に優れた導電性粒子を提供するものである。導電ネットワークは、導電性粒子として、高い導電性を示し、かつ、圧縮変形した際に変形に追従できる密着性や可撓性のある導電層を有する、信頼性に優れた導電材料用の導電性粒子を提供するものである。
【0024】
本発明に従って、複数のナノサイズ導電粒子は点状接合による連鎖を形成し、この連鎖は、通常のめっき下地膜が示す挙動の一体性によるような膜の剛としての欠点が現れず、所定のナノサイズ導電粒子の独立性、点状接合による可とう性を持つ。
【0025】
基材樹脂粒子の表面に付着させるナノサイズ導電粒子は、平均粒子径が1nm以上500nm以下であってよく、また、金属、金属酸化物、カーボンブラック等の導電性カーボン及び/又は導電性高分子の少なくとも1種を用いることができ、それらを1種以上含むことができるものである。
【0026】
基材樹脂粒子はナノサイズ導電粒子の付着に先立ち表面改質剤によって被覆することができる。
【0027】
また、上記複合粒子の表面の導電層は、無電解めっきによるものでよく、1nm以上500nm以下の厚さで形成することができる。
【0028】
そして好ましくは、基材樹脂粒子は10%以下の粒子径変動係数(Cv値)を有する。
【0029】
導電性粒子は、基材樹脂粒子及び複数のナノサイズ導電粒子を備える複合粒子と、前記複合粒子の表層のめっきによる導電層とを具えることができ、前記複合粒子は、前記基材樹脂粒子の表面上で前記ナノサイズ導電粒子間の点状接合による導電ネットワークを備える。
【0030】
一般のめっき皮膜では、導電性粒子を圧縮変形した際に、膜としての性質が強過ぎ、かつ基材樹脂粒子表面の接着力よりもめっき層の金属同士の繋がりの方が強いため、一旦割れが発生すると、めっき皮膜に引きつられる形で導電層が大きく割れたり剥がれたりした。
【0031】
これに対して、本発明に従う導電ネットワークでは基本的にナノサイズ導電粒子同士は点状接合であり、基材樹脂粒子表面に付着した形態をとるため、樹脂表面との接着力の方がナノサイズ導電粒子同士の接合力よりはるかに強くなる。
【0032】
また、その上に施される無電解めっき等による導電層も従来のめっきによるものよりはるかに薄くすることができ、それにより、めっき層の金属同士の繋がりは従来よりも非常に弱くすることができる。
【0033】
そのため、圧縮変形によって多少導電層が割れた場合でも、ナノサイズ導電粒子同士が導電層の割れに引きつられることはなく、ナノサイズ導電粒子同士の接合が外れる程度なので、微小な割れに留まり、それ以上割れや剥がれは増大せず、結果的に、電気抵抗が増大したり、絶縁性になったりする等の問題が発生しないものである。
【0034】
すなわち、本発明では、導電性粒子が圧縮変形した場合でも、導電性が低下することのない信頼性に優れた高い導電性粒子を得ることができる。
【0035】
したがって、これを使用した導電スペーサやACFも、導電性の低下がなく、非常に信頼性が高く、これを組み込まれた製品も、安定した性能を発揮することができる。
【0037】
本発明の導電性粒子は、基材樹脂粒子と、その表面に付着したナノサイズ導電粒子間の点状接合により形成した導電ネットワークと、その表層にめっき導電層を施した導電性粒子である。
【0038】
上記、基材樹脂粒子の高分子材料としては、特に限定されるものではなく、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂など、一般の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などを使用することができる。これらの樹脂は単独もしくは、複数併用しても良い。
【0039】
これら高分子材料を基材樹脂粒子にする方法としては、一般に知られているように、モノマーを保護コロイドの添加された水溶液に滴下、撹拌して、モノマー自身の表面張力により液滴を作り、加熱して粒子を得るという、所謂、懸濁重合と呼ばれる方法や、スチレンやポリメチルメタクリレート(PMMA)の種を水やアルコール中に析出させて、均一な微小粒子を作り、これにモノマーを吸収、肥大化させた後、加熱して粒子を得るという、所謂、シード重合や、ソープフリー重合や分散重合と呼ばれる方法、均一な孔から均一なモノマー液滴を形成した後、加熱して粒子を得るという、所謂、メンブレン乳化分散や、シラスポーラスガラス(SPG)乳化により、液滴を形成した後、加熱硬化する方法や、ポリマー溶液をシリンジに入れ、高電圧と圧力を加えて均一な液滴を作ると共に、溶剤を蒸発させて粒子を得るという、所謂、静電噴霧法や、インクジェトでポリマー溶液を均一に液滴にすると同時に、溶剤を蒸発させて粒子を得るという、所謂、インクジェット法や、微小な特殊形状の孔からモノマーを出し、均一液滴を形成した後、加熱硬化して粒子を得るという、所謂、マイクロチャンネル法、等が挙げられる。
【0040】
溶剤を蒸発させて粒子を得る場合には必要ないが、熱を加えてモノマーを硬化させる場合には、重合触媒が必要である。
【0041】
重合に用いられるモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体;塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類等;ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート等の多官能性単量体が好ましい。
【0042】
上記重合においては、重合開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、8,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等を用いることができる。
【0043】
上記重合の重合温度は、重合開始剤、使用するモノマーの種類に応じて適宜選ぶことができるが、通常25〜100℃の範囲であり、より好ましくは50〜90℃である。
【0044】
なお、懸濁重合のように、所望のCv値、即ち粒度分布の変動係数が得られない場合や、狙った粒子径が得られない場合には、その後分級操作をして、上記粒度分布を調整することが望ましい。
【0045】
分級方法としては、乾式サイクロンや風力を利用して分級を行なう乾式分級法、水ひ分級や、湿式サイクロン、静電分級等水中で行なう湿式分級が挙げられる。
【0046】
上記基材樹脂粒子の平均粒子径は0.5μm以上500μm以下が好ましい。0.5μm未満であると、導電層を形成する際に凝集が生じ易く、凝集を生じた基材樹脂粒子から製造された導電性粒子は粒子径の大きな巨大粒子になり、隣接電極間の短絡を引き起こす原因になる。
【0047】
また、粒子径精度より電極の精度のバラツキが相対的に大きく、導通信頼性が著しく低下する。さらに、好ましくは1μmから100μmの範囲である。
【0048】
スペーサとして使用される場合には、粒子径は液晶セルのギャップに依存し、異方性導電材料として使用される場合には、隣接電極間距離に依存する。
【0049】
異方性導電材料としては、電極の微小化、隣接電極間距離の低間隔化が進んでおり、粒子径も3μm以下の微小化の傾向にある。
【0050】
ただし、液晶として以外のスペーサ用途では、20μmから50μm程度の大きな粒子を使用する用途も存在する。
【0051】
なお、上記平均粒子径とは、光学顕微鏡、電子顕微鏡、光散乱式粒度分布計、コールターカウンター等を用いて計測し、粒子径を統計的に処理して求めることができる。
【0052】
上記基材樹脂粒子は、粒子径変動係数(Cv値)が10%以下であることが好ましい。10%を超えると、樹脂微粒子から製造された導電性微粒子が相対向する電極間隔を任意に制御することが困難になる。好ましくは5%以下であり、更に好ましくは3%以下である。
【0053】
Cv値は低いほど粒子径の変動は小さくなるので、全ての粒子に均一に圧力が加わることになり、著しく導通信頼性が高まる。なお、Cv値は下記式(I)により求められる。
【0054】
Cv値(%)=(σ/Dn)×100%・・・(I)
(式中、σは粒子径の標準偏差(μm)を表し、Dnは数平均粒子径(μm)を表す。)
【0055】
上記基材樹脂粒子の圧縮回復率は20%以上であることが好ましい。20%未満であると、得られる導電性粒子を圧縮した場合に、変形しても元に戻らないため、温度変化によるICや端子、硬化したバインター等の膨張と収縮に追従できず、接続不良を起こすことがある。より好ましくは、圧縮回復率は40%以上である。
【0056】
なお、上記圧縮回復率は、下記式(III)により求めることができる。
【0057】
圧縮回復率(%)=復元率/圧縮率×100=100×(L1-L2)/L1・・・(III)
(式中、L1:反転までの変位(μm)、L2:原点荷重値までの変位(μm)
【0058】
測定方法としては、例えば、微小圧縮試験機(島津製作所社製MCT-W200J等)を用いて、粒子を反転荷重値9.8mNまで圧縮した後、荷重を減らして行くときの、荷重値と圧縮変位との関係を、荷重を除く際の終点を原点荷重値0.98mNとし、負荷及び負荷除去における圧縮速度を0.284mN/秒として測定したときに、反転の点までの変位(L1)と、反転の点から原点荷重値をとる点までの変位(L2)との差である復元量と反転の点までの変位である圧縮量(L1)の比(L1-L2)/L1を%として表したものを回復率とした。
【0059】
上記導電性粒子は、個々のナノサイズ導電粒子が互いに強固に接合していないため、一般のめっき皮膜と比較して圧縮時に適度な可撓性を有するものとなり、相対的に基材樹脂粒子に対する密着性がより向上する。
【0060】
ナノサイズ導電粒子としては、導電性を有しているものであれば特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム等の金属ナノサイズ導電粒子や、酸化インジウム錫(ITO)、ZnO、SnO等の金属酸化物ナノサイズ導電粒子、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック等のナノサイズ導電性カーボン粒子やポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン等のナノサイズ導電性高分子が挙げられる。
【0061】
ナノサイズ導電粒子の粒子形状は、球状、粒状、糸状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、板状及び不定形等のいずれの形状であってもよい。
【0062】
ナノサイズ導電粒子の平均粒子径は1nm以上500nm以下が好ましい。より好ましくは10nm以上100nm以下である。ナノ粒子は凝集し易いため、1nm未満の場合直ぐに凝集し易く、基材樹脂粒子表面に1nm未満で付着させることは難しくなり、逆に500nmを超える場合は、基材樹脂粒子の粒子径にもよるが、ナノ導電粒子の粒子径が大き過ぎて、均一な付着層にすることが難になる。
【0063】
本発明の導電性粒子は、上記基材樹脂粒子の表面が表面改質剤によって被覆されても良い。
【0064】
表面改質剤としては、基材樹脂粒子の粒子表面へナノサイズ導電粒子を付着できるものであれば、基本的に何を用いてもよく、好ましくは、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン等のシラン系カップリング剤、及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系等のカップリング剤、低分子又は高分子の界面活性剤等の一種又は二種以上である。
【0065】
さらに好ましくは、表面改質剤は、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、シラン系カップリング剤、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤等であり、これらを単独もしくは組み合わせて使用しても差し支えない。
【0066】
これら表面改質剤を用いて基材樹脂粒子を処理する方法としては、水又は有機溶剤中で、基材樹脂粒子と表面処理剤とを混合し、反応させる方法や、基材樹脂微粒子を、表面改質剤が溶解した水又は有機溶剤溶液に浸漬し、反応させる等の湿式方法や、基材樹脂粒子に直接表面改質剤を添加して機械的に反応させる方法や、ナノサイズ導電粒子と表面改質剤を湿式又は乾式で反応させた後、更に基材樹脂粒子と前記反応したナノサイズ導電粒子を機械的せん断(シェア)や衝突によって反応させる乾式方法等がある。
【0067】
また、ナノサイズ導電粒子を基材樹脂粒子に付着させる方法としては、表面改質した基材樹脂粒子とナノサイズ導電粒子を混合してせん断や衝撃を加えて付着させる乾式方法が採用できる。
【0068】
この方法に使用される乾式方法としては、単に乳鉢と乳棒を使用し、力学的せん断を加える方法や風力を利用し、衝撃と衝突を与えて付着させるという、ハイブリタイゼーション、強力なせん断を加えて付着させるメカノフュージョンシステム(系)等を挙げることができるが、その他の方法でも、基材樹脂粒子に均一にナノサイズ導電粒子を付着できれば問題ない。
【0069】
本発明では、基材樹脂粒子表面に付着したナノサイズ導電粒子を備える、所謂複合粒子を用い、更にその上に施される無電解めっきのような導電めっき層によって、ナノサイズ導電粒子同士が完全には接合していない部分においても、導電皮膜が薄い状態で形成され、導電性は飛躍的に向上する。
【0070】
また、本発明では、無電解めっきは、従来の導電性粒子のめっき層と比較し、圧倒的に薄くても導電性確保の効果があるので、圧縮によりナノサイズ導電粒子層が例え割れたとしても、めっき層はナノサイズ導電粒子と一緒に割れるだけで小さなクラックにとどまり、電気抵抗を上げることなく、高い導電性と信頼性が得られる。
【0071】
本発明では、複合粒子表面に形成される導電めっき層は、単一金属構造であっても、複数の金属層からなる積層構造であってもよい。特に限定されるものではないが、計算上の平均めっき皮膜層の厚みは、1nm以上、好ましくは2nm以上100nm以下である。1nm未満ではめっき層が欠如する部分が発生する可能性があるため、導通信頼性を低下させる危険があり、逆に100nmを超えるとめっき層自体の強度が強くなり過ぎて、実質一般の導電性粒子のめっき層と同様の状態になって、大きく割れたり、剥がれ易くなるため、好ましくない。さらに好ましくは、導電層は3nm以上30nm以下の厚さである。
【0072】
最終無電解めっきを施す金属は導電性である一般の金属を使用できる。但し、ニッケルやクロムは皮膜が硬いため、めっき層の厚みの割りに、必要以上にめっき皮膜としての効果が現れ、皮膜強度が高くなり、割れや剥がれが発生し易い傾向にある。
【0073】
また、銀は導電性の非常に高い金属であるが、導通と時間経過により、絶縁部分を汚染する、所謂、マイグレーションの発生が懸念される。
【0074】
好ましくは、最上層のめっき金属は、酸化しないため導電性の低下が無く、めっき皮膜が柔軟であり、マイグレーションの発生を抑える効果も期待できる金であることが良い。
【0075】
無電解めっきの方法は、水溶液に溶解した金属をナノサイズ導電ネットワーク上に析出させる方法を採ることができる。
【0076】
ナノサイズ導電性粒子ネットワーク表面に形成される無電解めっき層の被覆率は、80%以上が好ましい。80%未満であると、無電解めっき層とナノサイズ導電粒子との接合が不十分となり、得られる導電性粒子の導電性が著しく低下する。
【0077】
上述したような導電性粒子は、ディスプレイ装置の表示パネル、特にその導電スペーサ又は異方性導電材料、等の導電材料のために用いることができる。表示パネルでは、一対の基板間において液晶充填空間等の間隔を保つのに導電スペーサとして用いられ、異方性導電材料では、絶縁性樹脂等と共に導電性充填材として用いられる。
【0078】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
<複合粒子粉末の製造>
基材樹脂粒子(種類:アクリル樹脂球(商品名:M-11(早川ゴム株式会社製))、粒子形状:球状、平均粒子径:5.11μm、比重:1.20g/cm
3、表面抵抗値:6.8×10
15Ω・cm)の800gをエッジランナーに投入し、次いで、メチルトリエトキシシラン(商品名:TSL8123(GE東芝シリコーン株式会社製))の8gを、エッジランナーを稼動させながら、基材樹脂粒子に対し添加し、294N/cmの線荷重で20分間混合撹拌を行った。
【0080】
次に、得られた粒子表面が表面改質剤によって被覆されている基材樹脂粒子の170gとナノサイズ導電粒子A(種類:銀、平均粒子径:0.03μm、比重:10.5gcm
3、体積抵抗値:4.3×10
-3Ω・cm)の35gを高速せん断ミル「ノビルタNOB-130」(製品名、ホソカワミクロン株式会社製)に入れ、4100rpmの回転数で20分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、複合粒子粉末を入手した。
【0081】
得られた複合粒子粉末は、平均粒子径が5.15μmの球状粒子粉末であった。1μm圧縮抵抗値は2.7×10
4Ωであった。
【0082】
<導電性粒子の製造>
得られた複合粒子に無電解メッキの形成段階において、導電性粒子1.0gと5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液120gを200mLビーカーに入れ、超音波による分散を10〜30分行った。得られた導電性粒子分散液に撹拌しながら1%塩化金酸水溶液を40g入れ、マントルヒーターで温度80℃、加熱時間30分で反応を行い、導電性粒子表面上に金の無電解メッキを形成させた。その反応液を、吸引ろ過装置を用いて濾過を行い、80℃の温水を2L通過させて残ったPVA水溶液、塩化金酸を取り除いた。さらに、80℃で16時間乾燥して、目的とする導電性樹脂粒子を入手した。このときの金メッキ層の厚みは計算上16nmであった。
【0083】
(実施例2)
<複合粒子粉末の製造>
実施例1と同様にして、得られた粒子表面が表面改質剤によって被覆されている基材樹脂粒子の170gとナノサイズ導電粒子B(種類:ITO、平均粒子径:0.02μm、比重:7.1g/cm
3、体積固有抵抗値:1.6Ω・cm)の32.0gを高速せん断ミルに入れ、4100rpmの回転数で20分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、複合粒子粉末を入手した。
【0084】
得られた複合粒子粉末は、平均粒子径が5.20μmの球状粒子粉末であった。1μm圧縮抵抗値は1.8×10
5Ωであった。
【0085】
<導電性粒子の製造>
得られた複合粒子に、実施例1と同様に無電解メッキを施し、導電性樹脂粒子を入手した。
【0086】
(実施例3)
<複合粒子粉末の製造>
実施例1と同様にして、得られた粒子表面が表面改質剤によって被覆されている基材樹脂粒子の170gとナノサイズ導電粒子C(種類:ケッチェンブラック、平均粒子径:0.03μm、比重:1.4g/cm
3、体積固有抵抗値:3.2×10
-3Ω・cm)の4.7gを高速せん断ミルに入れ、4100rpmの回転数で20分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、複合粒子粉末を入手した。
【0087】
得られた複合粒子粉末は、平均粒子径が5.16μmの球状粒子粉末であった。1μm圧縮抵抗値は2.4×10
5Ωであった。
【0088】
<導電性粒子の製造>
得られた複合粒子に、実施例1と同様に無電解メッキを施し、導電性樹脂粒子を入手した。
【0089】
(実施例4)
<複合粒子粉末の製造>
実施例1と同様にして、得られた粒子表面が表面改質剤によって被覆されている基材樹脂粒子の170gとナノサイズ導電粒子D(種類:カーボンナノチューブ、平均直径:0.01μm、平均長さ:0.5μm、比重:5.6cm
3、体積固有抵抗値:4.1×10
-2Ω・cm)の0.6gを高速せん断ミルに入れ、4100rpmの回転数で20分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、複合粒子粉末を入手した。
【0090】
得られた複合粒子粉末は、平均粒子径が5.12μmの球状粒子粉末であった。1μm圧縮抵抗値は2.4×10
5Ωであった。
【0091】
<導電性粒子の製造>
得られた複合粒子に、実施例1と同様に無電解メッキを施し、導電性樹脂粒子を入手した。
【0092】
(比較例1)
実施例1の無電解メッキを行う前の導電性粒子、即ち複合粒子を用いた。
【0093】
(比較例2)
市販のメッキ導電スペーサ5.6μmを用いた。
【0094】
このスペーサのメッキ層は180nmのニッケル層上に20nmの金をメッキしたものである。
【0095】
実施例1〜4で得られた導電性樹脂粒子、比較例1の複合粒子、比較例2の市販のメッキ導電スペーサ及び基材樹脂粒子について、以下の評価を行った。
【0096】
<評価>
(1)導電性評価
微小圧縮試験機((株)島津製作所製MCT-W200J抵抗キッド付)を用いて、粒子の圧縮試験を行い、1個あたりの抵抗値を測定した。結果を
図1に示す。
図1は粒子の圧縮変形時における電気抵抗値を示すグラフである。
図1に示すように、実施例1では、異方導電性粒子(ACF)で必要とされる低抵抗値(1.0E+2Ω未満)が得られた。
【0097】
この時の圧縮データーを
図2に示す。
図2は粒子の圧縮試験測定の結果を示すグラフである。
図2での試験力と圧縮変位との関係は複合粒子、導電性粒子ともに基材樹脂粒子とほぼ同じ挙動を示すことから、無電解メッキによる基材樹脂粒子への影響はない。
【0098】
実施例1〜4の導電性粒子、比較例1の複合粒子、比較例2の市販のメッキ導電スペーサについて、1μm圧縮変形時の電気抵抗Ωを表1にまとめて示す。比較例2ではメッキ導電スペーサが1μm圧縮変形時に、その変形にメッキ層が追従できず亀裂が入り、導電性が大幅に低下した。
【0099】
【表1】
【0100】
(2)走査型電子顕微鏡観察
評価(1)で用いた各粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、その結果を
図3〜6に示す。
図3は実施例で用いた基材樹脂粒子の図面代用写真である。
図4は実施例1で得られた複合粒子の図面代用写真である。
図5は実施例4で得られた複合粒子の図面代用写真である。
図6は実施例1で得られた導電性粒子の図面代用写真である。
【0101】
図4〜5に見られるように、ナノサイズ導電粒子による点状接合の導電ネットワークの形成が観察された。
図6の導電性粒子では、
図4のナノサイズ導電粒子の間に金メッキの接合が起こり、密な導電ネットワークが形成されている。