特許第5784722号(P5784722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5784722大容量モジュールの周辺回路用の回路基板、及び当該回路基板を用いる周辺回路を含む大容量モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784722
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】大容量モジュールの周辺回路用の回路基板、及び当該回路基板を用いる周辺回路を含む大容量モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20150907BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20150907BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20150907BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20150907BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20150907BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   H01L23/36 C
   H01L25/04 C
   H01L23/12 C
   H01L23/12 J
   H05K3/46 S
【請求項の数】6
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2013-522562(P2013-522562)
(86)(22)【出願日】2012年6月6日
(86)【国際出願番号】JP2012064548
(87)【国際公開番号】WO2013001999
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2014年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-144356(P2011-144356)
(32)【優先日】2011年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-255014(P2011-255014)
(32)【優先日】2011年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆己
(72)【発明者】
【氏名】矢野 信介
(72)【発明者】
【氏名】七瀧 努
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩文
【審査官】 太田 龍一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−217363(JP,A)
【文献】 特開2011−3890(JP,A)
【文献】 特開2007−12928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/12
H01L 23/13
H01L 23/36
H01L 25/07
H01L 25/18
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高発熱素子を含む第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して積層される第2電子回路に用いられる基板であって、
前記基板が、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材と、前記基板の前記第1電子回路側に形成された第1表面電極と、を含んでなること、
前記第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が前記基材の内部に埋設されていること、
前記基板の前記第1電子回路側の表面である第1表面における少なくとも前記高発熱素子の端子に対向する領域において、前記第1表面電極を構成する導体が前記基材から露出していること、
前記第1表面電極を構成する導体の前記第1表面に直交する方向における厚みが100μm以上であること、並びに
前記第1表面と平行であり且つ前記第1表面電極を構成する導体の前記基材の内部に埋された部分と交差する平面のうち前記第1表面から最も遠い平面である第1境界面と前記第1表面とによって挟まれる前記基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、前記第1領域以外の前記基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きいこと、
を特徴とする基板。
【請求項2】
高発熱素子を含む第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して積層される第2電子回路に用いられる基板であって、
前記基板が、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材と、前記基板の前記第1電子回路側に形成された第1表面電極と、前記基板の内層に埋設された少なくとも1層の内層電極と、を含んでなること、
前記第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が前記基材の内部に埋設されていること、
前記基板の前記第1電子回路側の表面である第1表面における少なくとも前記高発熱素子の端子に対向する領域において、前記第1表面電極を構成する導体が前記基材から露出していること、
前記第1表面電極及び前記少なくとも1層の内層電極を構成する導体の前記第1表面に直交する方向における厚みが100μm以上であること、並びに
前記第1表面と平行であり且つ前記第1表面電極を構成する導体の前記基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち前記第1表面から最も遠い平面である第1境界面と前記第1表面とによって挟まれる前記基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、前記第1領域以外の前記基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きいこと、
を特徴とする基板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れかに記載の基板であって、
常温において、前記第1表面側が凹になるように湾曲していること、
を更なる特徴とする、基板。
【請求項4】
高発熱素子を含む第1電子回路、
前記第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して積層される第2電子回路、
を含んでなる大容量モジュールであって、
第2電子回路に用いられる基板が、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材と、前記基板の前記第1電子回路側に形成された第1表面電極と、を含んでなること、
前記第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が前記基材の内部に埋設されていること、
前記基板の前記第1電子回路側の表面である第1表面における少なくとも前記高発熱素子の端子に対向する領域において、前記第1表面電極を構成する導体が前記基材から露出していること、
前記第1表面電極を構成する導体の前記第1表面に直交する方向における厚みが100μm以上であること、並びに
前記第1表面と平行であり且つ前記第1表面電極を構成する導体の前記基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち前記第1表面から最も遠い平面である第1境界面と前記第1表面とによって挟まれる前記基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、前記第1領域以外の前記基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きいこと、
を特徴とする大容量モジュール。
【請求項5】
高発熱素子を含む第1電子回路、
前記第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して積層される第2電子回路、
を含んでなる大容量モジュールであって、
第2電子回路に用いられる基板が、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材と、前記基板の前記第1電子回路側に形成された第1表面電極と、前記基板の内層に埋設された少なくとも1層の内層電極と、を含んでなること、
前記第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が前記基材の内部に埋設されていること、
前記基板の前記第1電子回路側の表面である第1表面における少なくとも前記高発熱素子の端子に対向する領域において、前記第1表面電極を構成する導体が前記基材から露出していること、
前記第1表面電極及び前記少なくとも1層の内層電極を構成する導体の前記第1表面に直交する方向における厚みが100μm以上であること、並びに
前記第1表面と平行であり且つ前記第1表面電極を構成する導体の前記基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち前記第1表面から最も遠い平面である第1境界面と前記第1表面とによって挟まれる前記基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、前記第1領域以外の前記基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きいこと、
を特徴とする大容量モジュール。
【請求項6】
請求項4又は請求項5の何れかに記載の大容量モジュールであって、
前記第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して前記第2電子回路が積層される前の時点における前記基板が、常温において、前記第1表面側が凹になるように湾曲していること、
を更なる特徴とする、大容量モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量モジュールの周辺回路用の回路基板に関する。より詳細には、本発明は、例えば、ハイブリッドカーや電気自動車において使用されるインバータ等のパワーモジュールを始めとする大容量モジュールにおいて、高発熱素子を含む回路と積層される周辺回路用の回路基板に関する。更に、本発明は、当該回路基板を用いる周辺回路を含む大容量モジュールにも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータ等のパワーモジュールを始めとする大容量(大電力)モジュールにおいては、例えば、スイッチング素子(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))等のパワー半導体素子を含む回路(以降、「パワー回路」とも称する)と、例えば、かかるパワー半導体素子を制御する周辺回路(以降、「ドライブ回路」とも称する)とが平面的に配置されることや、これらの回路を接続するための配線(ワイヤ)を配置するための面積が必要であることが、大容量モジュールの小型軽量化を妨げる要因となってきた(例えば、図2を参照)。
【0003】
本明細書において、大容量モジュールとは、200V以上の電圧又は10A以上の大電力を扱うモジュールを指す。かかる大容量モジュールの具体例としては、例えば所謂「パワーモジュール」等を挙げることができる。
【0004】
また、上記のような大容量モジュールを構成する各種回路を接続するワイヤの引き回しにより配線長が長くなり、モジュール全体としての損失が大きく、ワイヤの等価インダクタンスに起因してスイッチング時に発生するサージ電圧が大きくなる等の懸念点が認められていた。過大なサージ電圧は、例えば、ドライブ回路の半導体素子等を損傷させる虞がある。
【0005】
ところで、近年では、例えば、ハイブリッドカーや電気自動車の普及等に伴い、インバータ等のパワーモジュールを始めとする大容量(大電力)モジュールにおいても、例えば、小型軽量化、低サージ化(サージ抑制)、及び高効率化(低損失化)等の更なる性能向上が求められるようになってきている。
【0006】
そこで、上記のような大容量モジュールを構成する各種回路の基板を積層して大容量モジュールの小型軽量化を図ると共に、大容量モジュールを構成する各種回路基板間の接続形態を改良して低サージ化や低損失化を図る試みが提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3を参照)。
【0007】
しかしながら、上記のように大容量モジュールを構成する各種回路基板を積層して当該モジュールを小型軽量化する場合、スイッチング素子等のパワー半導体素子を始めとする高発熱素子から発生する熱により、高発熱素子を含む回路(パワー回路)の構成部材が膨張・変形する虞がある。特に、高発熱素子から発生する熱を放熱するためのヒートシンクが装着されている場合、一般的な金属製ヒートシンクはパワー回路の基板の基材(例えばセラミック等)よりも熱膨張係数が大きいため、上記傾向が益々顕著となり、ヒートシンクの熱膨張によりヒートシンク側が凸になるように、高発熱素子を含む回路の基板が湾曲してしまう。その結果、高発熱素子と、その上に積層された周辺回路との接合・密着が不十分となる虞がある。このような接合不良が発生すると、高発熱素子から発生する熱を、周辺回路を介して放熱することが困難となり、モジュール全体としての放熱効果が不十分となる虞がある。
【0008】
また、パワー回路と積層されるドライブ回路において樹脂基板が使用される場合、パワー回路からの発熱により、樹脂基板の膨張や変形が起こり、信頼性の低下に繋がったり、最悪の場合は回路の断線や破壊に繋がったりする虞がある。
【0009】
本明細書において、高発熱素子とは、動作状態における当該素子の温度が120℃以上に達する素子を指す。かかる高発熱素子の具体例としては、例えばパワー半導体素子等を挙げることができる。また、かかるパワー半導体素子の具体例としては、例えばスイッチング素子等を挙げることができる。更に、かかるスイッチング素子の具体例としては、例えば、前述したIGBTや後述するSiC−MOSFET等を挙げることができる。
【0010】
一方、IGBTやMOSFET等を含むパワー半導体素子の損失改善策として、従来使用されてきたシリコン(Si)ウェーハに代えて、シリコンカーバイド(SiC)ウェーハを使用することが提案されている。このSiCウェーハは、従来のSiウェーハと比較して、高温での動作が可能であるという特徴を有している。これにより、従来のSiウェーハを使用するパワーモジュールにおいては必須であった冷却機構(例えば、ヒートシンクや水冷機構等)を大幅に簡略化することができる。その結果、SiCウェーハを使用することにより、パワーモジュールの小型軽量化を図ることもできる。しかしながら、SiCウェーハの使用に伴うパワーモジュールの動作温度の上昇により、前述のような高発熱素子からの発熱に起因する種々の問題がより一層厳しいものとなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−303006号公報
【特許文献2】特許第3410696号公報
【特許文献3】特開2011−23654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述のように、インバータ等のパワーモジュールを始めとする大容量モジュールにおける小型軽量化の進展及び動作温度の高温化に伴い、パワー半導体素子等の高発熱素子から発生する熱に起因する過度の温度上昇によるモジュールの破損(例えば、モジュールを構成する回路素子の封止樹脂の劣化や周辺回路の樹脂基板の膨張又は変形)等の問題が益々厳しくなる傾向にある。
【0013】
特に、大容量モジュールを構成する各種回路基板を積層して大容量モジュールを小型軽量化する場合は、前述のように、スイッチング素子等のパワー半導体素子を始めとする高発熱素子から発生する熱により、高発熱素子を含む回路の構成部材(特にヒートシンク)等の熱膨張により、高発熱素子を含む回路の基板が湾曲してしまう。その結果、高発熱素子と、その上に積層された周辺回路との接合・密着が不十分となり、高発熱素子から発生する熱を、周辺回路を介して放熱することが困難となる虞がある。かくして、高発熱素子から発生する熱に起因するモジュールの破損等の問題がより一層厳しくなる虞がある。
【0014】
従って、各種構成回路基板の積層により小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を図ろうとする大容量モジュールにおいて、高発熱素子からの発熱に伴うパワー回路の構成部材(特にヒートシンク)等の熱膨張によるパワー回路基板の湾曲に起因してパワー回路上に積層されるドライブ回路等の周辺回路の基板と高発熱素子との接合不良が発生することを抑制することができる技術が求められている。かかる技術により、各種構成回路基板の積層により小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を図ろうとする大容量モジュールにおいても、高発熱素子から発生する熱をより効率良く外部に伝達して、過度の温度上昇によるモジュールの破損(例えば、モジュールを構成する回路素子の封止樹脂の劣化や周辺回路の樹脂基板の膨張又は変形)等の問題を軽減することができる。
【0015】
本発明は、かかる要求に応えるために為されたものである。より具体的には、本発明は、パワー回路上へのドライブ回路等の周辺回路の積層により小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を図ろうとする大容量モジュールにおいて、高発熱素子からの発熱によるパワー回路の構成部材(特にヒートシンク)等の熱膨張に伴うパワー回路基板の湾曲に起因するドライブ回路基板と高発熱素子との接合不良を抑制することにより、高発熱素子から発生する熱をより効率良く外部に伝達して、過度の温度上昇によるモジュールの破損(例えば、モジュールを構成する回路素子の封止樹脂の劣化や周辺回路の樹脂基板の膨張又は変形)等の問題を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、
高発熱素子を含む第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して積層される第2電子回路に用いられる基板であって、
前記基板が、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材と、前記基板の前記第1電子回路側に形成された第1表面電極と、を含んでなること、
前記第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が前記基材の内部に埋設されていること、
前記基板の前記第1電子回路側の表面である第1表面における少なくとも前記高発熱素子の端子に対向する領域において、前記第1表面電極を構成する導体が前記基材から露出していること、
前記第1表面電極を構成する導体の前記第1表面に直交する方向における厚みが100μm以上であること、並びに
前記第1表面と平行であり且つ前記第1表面電極を構成する導体の前記基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち前記第1表面から最も遠い平面である第1境界面と前記第1表面とによって挟まれる前記基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、前記第1領域以外の前記基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きいこと、
を特徴とする基板によって達成される。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、本発明に係る基板は、例えばインバータ等のパワーモジュールを始めとする大容量モジュール等の小型軽量化を目的として、高発熱素子を含む(第1)電子回路(例えば、パワー回路)と積層して使用される(第2)電子回路(例えば、ドライブ回路等の周辺回路)において用いられる。
【0018】
本発明に係る基板は、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材に、第1電子回路側に形成された第1表面電極を配設してなる構成を有する。これにより、当該基板を含む第2電子回路を、高発熱素子を含む第1電子回路の高発熱素子が配設されている側に高発熱素子を介して積層した際に、高発熱素子から発生する熱を第1電子回路の基板を経由して放熱するだけでなく、第2電子回路の基板を経由して放熱することも可能となり、これらの電子回路を含むモジュール全体の放熱を効果的に行うことにより、当該モジュールの過度の温度上昇を抑制することができる。
【0019】
また、セラミックは、従来技術に係る樹脂基板の基材として広く使用されている樹脂と比較して、熱膨張係数が小さいことから、前述のような高発熱素子(例えば、パワー半導体素子等)からの発熱により周辺回路(ドライブ回路)とパワー回路との間の基板の熱膨張係数の差に起因して発生する応力を、より小さくすることができる。
【0020】
上記に加えて、本発明に係る基板においては、第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が基材の内部に埋設されている。これにより、(例えば、第1表面電極を構成する導体と基材との熱膨張係数の差に起因して発生する応力や、本発明に係る基板と高発熱素子及び/又は第1電子回路の基板との熱膨張係数の差に起因して発生する応力等の)導体と基材との界面に作用する応力を低減することができるので、信頼性の高い大容量モジュールを実現することができる。
【0021】
更に、本発明に係る基板においては、第1電子回路側の基板表面である第1表面における少なくとも高発熱素子の端子に対向する領域において、第1表面電極を構成する導体が基材から露出している。これにより、本発明に係る基板を含む第2電子回路と高発熱素子とをより短い距離で接続することができ、例えばスイッチング時のサージ電圧を抑制(低サージ化)することができる。
【0022】
また更に、本発明に係る基板においては、第1表面電極を構成する導体の(第1表面に直交する方向における)厚みが100μm以上である。これにより、本発明に係る基板を使用する電子回路を含むモジュール全体としての損失を小さくすることができる。
【0023】
上記に加えて、本発明に係る基板においては、第1表面と平行であり且つ第1表面電極を構成する導体の基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち第1表面から最も遠い平面である第1境界面と第1表面とによって挟まれる基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、第1領域以外の基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きい。これにより、本発明に係る基板を使用する第2電子回路を含むモジュールの動作に伴う高発熱素子からの発熱に起因して第1電子回路の構成部材(特にヒートシンク)等が熱膨張を生じて第1電子回路の基板が湾曲しても、第2電子回路の基板も第1電子回路の基板と同じ方向に湾曲するため、前述のような第1電子回路の高発熱素子と第2電子回路との間の接合不良が起こり難くなる。
【0024】
以上のように、本発明は、ドライブ回路等の周辺回路をパワー回路上に高発熱素子を介して積層することにより小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を図ろうとする大容量モジュール(例えばインバータを始めとするパワーモジュール等)において、高発熱素子からの発熱によるパワー回路の構成部材(特にヒートシンク)等の熱膨張に伴うパワー回路基板の湾曲に起因するドライブ回路基板と高発熱素子との接合不良を抑制することにより、高発熱素子から発生する熱をより効率良く外部に伝達することができる、信頼性の高い周辺回路用の回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の1つの実施態様に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成を示す模式図である。
図2】従来技術に係るパワーモジュールの構成を示す模式図である。
図3】基板の表面に配設された電極と基板の基材との界面において作用する応力における、本発明の実施態様に係る基板と従来技術に係る基板との差異を説明する模式図である。
図4】本発明の1つの実施態様に係る大容量モジュールにおける第1電子回路及び第2電子回路の各基板の湾曲状況と第1電子回路上の高発熱素子と第2電子回路の基板との接合状況との関係を表す模式図である。
図5】本発明のもう1つの実施態様に係る大容量モジュールにおける温度変化に伴う第1電子回路及び第2電子回路の各基板の湾曲状況及び接合状況の変化を表す模式図である。
図6】本発明の更にもう1つの実施態様に係る大容量モジュールの温度変化に伴う第1電子回路及び第2電子回路の各基板における応力の作用を説明する模式図である。
図7】第2電子回路基板の内部にコンデンサが埋設された、本発明の実施態様の1つの変形例に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成を示す模式図である。
図8】第2電子回路基板内部の一部の領域にコンデンサが埋設された、本発明の実施態様のもう1つの変形例に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成を示す模式図である。
図9】第2電子回路基板内部の第1表面に最も近い層にコンデンサが埋設された、本発明の実施態様の更にもう1つの変形例に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
前述のように、本発明は、ドライブ回路等の周辺回路をパワー回路上に高発熱素子を介して積層することにより小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を図ろうとする大容量モジュール(例えばインバータを始めとするパワーモジュール等)において、高発熱素子からの発熱によるパワー回路の構成部材(特にヒートシンク)等の熱膨張に伴うパワー回路基板の湾曲に起因するドライブ回路基板と高発熱素子との接合不良を抑制することにより、高発熱素子から発生する熱をより効率良く外部に伝達することができる、信頼性の高い周辺回路用の回路基板を提供することを目的とする。
【0027】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、パワー回路上へのドライブ回路等の周辺回路の積層により小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を図ろうとする大容量モジュール(例えばインバータを始めとするパワーモジュール等)において、肉厚の導体によって構成される電極が埋設されたセラミック基板を用いる周辺回路を高発熱素子上に積層することにより、当該モジュールの小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を達成しつつ、当該周辺回路の基板のパワー回路側(第1領域)の平均熱膨張係数を、パワー回路とは反対側(第2領域)の平均熱膨張係数よりも大きくすることによって、当該モジュールの動作に伴う高発熱素子からの発熱に起因して第1電子回路の基板が湾曲しても、第2電子回路の基板もまた第1電子回路の基板と同じ方向に湾曲するため、前述のような第1電子回路の高発熱素子と第2電子回路との間の接合不良が起こり難くなることを見出し、これにより、当該基板を経由する当該モジュールの放熱をより効果的に達成することを想到するに至ったものである。
【0028】
即ち、本発明の第1態様は、
高発熱素子を含む第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して積層される第2電子回路に用いられる基板であって、
前記基板が、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材と、前記基板の前記第1電子回路側に形成された第1表面電極と、を含んでなること、
前記第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が前記基材の内部に埋設されていること、
前記基板の前記第1電子回路側の表面である第1表面における少なくとも前記高発熱素子の端子に対向する領域において、前記第1表面電極を構成する導体が前記基材から露出していること、
前記第1表面電極を構成する導体の前記第1表面に直交する方向における厚みが100μm以上であること、並びに
前記第1表面と平行であり且つ前記第1表面電極を構成する導体の前記基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち前記第1表面から最も遠い平面である第1境界面と前記第1表面とによって挟まれる前記基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、前記第1領域以外の前記基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きいこと、
を特徴とする基板である。
【0029】
上記のように、例えばインバータ等のパワーモジュールを始めとする大容量(大電力)モジュールの小型軽量化を行おうとする際に、例えばドライブ回路等の周辺回路(第2電子回路)を構成する基板として本実施態様に係る基板を用いて、当該第2電子回路を、例えばパワー半導体素子等の高発熱素子を含む電子回路(第1電子回路)の当該高発熱素子が配設されている側に当該高発熱素子を介して積層することにより、当該モジュールの小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を達成するのみならず、当該モジュールの動作に伴って高発熱素子から発生する熱を当該基板を経由してより効率的に放熱し、且つかかる高発熱素子からの発熱に起因する第1電子回路の湾曲によって生ずる高発熱素子と(第2電子回路の)当該基板との接合不良を抑制することもできる。
【0030】
尚、上記大容量モジュールは、上記のように、例えばインバータ等のパワーモジュールであってもよく、あるいは大電力を扱う他の大容量モジュールであってもよい。また、上記のように、上記大容量モジュールがインバータ等のパワーモジュールである場合、上記高発熱素子としては、例えばスイッチング素子等のパワー半導体素子を挙げることができるが、本実施態様における高発熱素子はスイッチング素子に限定されるものではなく、大容量モジュールにおいて大量の熱量を発する何れの素子であってもよい。更に、上記高発熱素子がスイッチング素子である場合、スイッチング素子としては、例えばIGBTやSiC−MOSFET等を挙げることができるが、本実施態様におけるスイッチング素子はIGBTに限定されるものではなく、当該技術分野において知られている何れのスイッチング素子であってもよい。
【0031】
ところで、前述のように、従来技術においては、上記のように大容量モジュールを構成する各種回路基板を積層した場合、モジュールを小型軽量化することができるものの、スイッチング素子等のパワー半導体素子から発生する熱を伝達して外部に逃がすことがより困難となり、これらの高発熱素子からの発熱に起因する過度の温度上昇によるモジュールの破損(例えば、モジュールを構成する回路素子の封止樹脂の劣化)等の問題を生ずる虞があった。
【0032】
そこで、従来技術においては、上記のような問題に対し、例えば、スイッチング素子を含むパワー回路(上記第1電子回路に相当)上に積層されるドライブ回路(上記第2電子回路に相当)の基板の下面にリードフレームを貼り合わせることにより、スイッチングロスやスイッチングサージを低減しつつ、スイッチング素子から発生する熱を、リードフレームを介してモジュールの上面方向(上記第1電子回路から上記第2電子回路に向かう方向)に逃がす試みも提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、かかる構成においては、スイッチング素子から発生する熱の上面方向への伝達経路がリードフレームに限定されるため、放熱効果が不十分となる虞がある。また、従来技術に係る周辺回路の基板は樹脂製のものが多く、熱伝導率が低いため、周辺回路の基板を介する放熱はあまり期待できない。
【0033】
一方、本実施態様に係る基板は、上述のように、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材に、第1電子回路側に形成された第1表面電極を配設してなる構成を有する。これにより、本実施態様に係る基板を第2電子回路の基板として第1電子回路の高発熱素子側に高発熱素子を介して積層してなるモジュールにおいては、高発熱素子から発生する熱を第1電子回路の基板を経由して放熱するだけでなく、従来技術に係る周辺回路の基板と比較して、より高い熱伝導率を有する本実施態様に係る基板を経由して第2電子回路側に放熱することも可能となり、これらの電子回路を含むモジュール全体の放熱を効果的に行うことにより、当該モジュールの過度の温度上昇を抑制することができる。
【0034】
尚、前述のように、第2電子回路の第1電子回路側に形成された第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が第2電子回路の基板の基材の内部に埋設されている。従って、第1表面電極を構成する導体の一部が基材の内部に埋設され、その他の部分が第2電子回路の基板の第1電子回路側の表面である第1表面から突出している状態も想定される。かかる状態においては、第2電子回路の基板の基材は高発熱素子とは接触せず、第1表面電極を構成する導体のみが第1電子回路上の高発熱素子と接触する場合も起こり得る。しかしながら、かかる場合においても、高発熱素子から発生する熱は、突出した第1表面電極を経由して、第2電子回路の基板の基材へと伝達される。しかも、本実施態様に係る基板の基材は、前述のように、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなるので、従来技術に係る周辺回路の基板と比較して、より高い熱伝導率を有する。その結果、かかる場合においても、本実施態様に係る基板は、従来技術に係る周辺回路の基板と比較して、より効果的に放熱を行うことができる。
【0035】
一方、第1表面電極を構成する導体の全てが基材の内部に埋設され、当該導体の表面のみが基板の第1表面と同一平面内に露出している状態も想定される。かかる状態においては、第2電子回路の基板の基材の表面及び第1表面電極を構成する導体の表面の両方を同時に高発熱素子と接触させることができる。この場合、高発熱素子から発生する熱は、第1表面電極の導体と直接接触している部分(例えば、当該高発熱素子の端子部分等)からは当該導体に、第2電子回路の基板の基材と接触している部分からは当該基材に、それぞれ伝達される。
【0036】
その後、このようにして本実施態様に係る基板に伝達された熱が当該基板を経由して放熱される点においては、第1表面電極を構成する導体が第1表面から突出している状態と同様である。しかしながら、第1表面電極を構成する導体の表面のみが第1表面と同一平面内に露出している状態においては、上記のように、高発熱素子と第2電子回路の基板との接触面積が大きくなるので、より一層効果的に放熱を行うことができる。
【0037】
尚、本実施態様の変形例として、大容量モジュールにおける小型軽量化、低サージ化、及び低損失化の実質的な妨げとならない限り、上記第1表面電極に貼り合わせられたリードフレーム等を介して上記高発熱素子との電気的接続を達成してもよい。
【0038】
ところで、前述のように、本実施態様に係る基板は、上述のように、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材に、第1電子回路側に形成された第1表面電極を配設してなる構成を有する。セラミックは、一般的に、従来技術に係る樹脂基板の基材として使用されている樹脂と比較して、熱膨張係数が小さい。これにより、本実施態様に係る基板を使用する場合、例えば、前述のような高発熱素子(例えば、パワー半導体素子等)からの発熱により周辺回路(ドライブ回路)とパワー回路との間の基板の熱膨張係数の差に起因して発生する応力を、従来技術に係る樹脂基板を使用する場合と比較して、より小さくすることができる。
【0039】
上記に加えて、本実施態様に係る基板においては、前述のように、第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が基材の内部に埋設されている。これにより、例えば電極を構成する導体と基材との熱膨張係数の差に起因して発生する応力等の導体と基材との界面に作用する応力を低減することができるので、信頼性の高い大容量モジュールを実現することができる。
【0040】
より詳しくは、従来技術に係る周辺回路の基板のように、例えば、基板の表面にリードフレームや導体パターンを貼り合わせた場合は、例えば、前述のような高発熱素子(例えば、パワー半導体素子等)からの発熱により周辺回路(ドライブ回路)とパワー回路との間の基板の熱膨張係数の差に起因して発生する応力が、例えば、電極と基板(の基材)との界面に集中し、例えば、リードフレームや導体パターンが基板の表面から剥がれたりして、当該回路を含むモジュール全体の信頼性の低下に繋がったり、最悪の場合は回路の断線や破壊に繋がったりする虞がある。
【0041】
これに対し、本実施態様に係る基板においては、第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が基材の内部に埋設されている。これにより、例えば、基板の表面にリードフレームや導体パターンを貼り合わせた場合とは異なり、上記のような応力が集中する箇所の周囲が基板の基材によって覆われており、当該応力が緩和・分散されるので、上記のような問題が発生し難く、当該基板を使用する電子回路を含むモジュール全体としての信頼性をより高めることができる。
【0042】
更に、本実施態様に係る基板においては、第1電子回路側の基板表面である第1表面における少なくとも高発熱素子の端子に対向する領域において、第1表面電極を構成する導体が基材から露出している。これにより、本実施態様に係る基板を含む第2電子回路と高発熱素子とを最短距離で接続することができ、例えばスイッチング時のサージ電圧を抑制(低サージ化)することができる。
【0043】
より詳しくは、本実施態様に係る基板においては、前述のように、第1電子回路側の基板表面である第1表面に突出して又は第1表面と同一平面に、第1表面電極を構成する導体が基材から露出している。この第1表面電極を構成する導体は、本実施態様に係る基板を含む第2電子回路と高発熱素子とを電気的に接続する。従って、当該導体は、本実施態様に係る基板の第1表面のうち、少なくとも高発熱素子の端子に対向する領域において、当該基板の基材から露出している。これにより、本実施態様に係る基板を含む第2電子回路と高発熱素子とを直接的に接続することができる。
【0044】
従って、本実施態様によれば、第2電子回路と高発熱素子とを、従来技術に係る周辺回路を使用する場合と比較して、より短い距離で配線することができる。その結果、高発熱素子(例えばスイッチング素子等のパワー半導体素子)を含む第1電子回路(例えばパワー回路)と本実施態様に係る基板を含む第2回路(例えばドライブ回路等の周辺回路)との間のインダクタンスをより小さくすることができ、これにより、これらの回路を含むモジュール(例えばパワーモジュール等)において、例えばスイッチング時のサージ電圧を抑制(低サージ化)することができる。
【0045】
尚、本実施態様に係る基板の基材から露出している第1電極を構成する導体と高発熱素子の端子との電気的接続は、例えば、はんだ付けによって達成することができるが、これらの接続方法は特定の手法に限定されるものではなく、第1電極を構成する導体と高発熱素子の端子との電気的接続は、当該技術分野において知られている何れの手法を用いて達成されてもよい。
【0046】
また更に、本実施態様に係る基板においては、第1表面電極を構成する導体の(第1表面に直交する方向における)厚みが100μm以上、より好ましくは200μm以上である。これにより、本実施態様に係る基板を使用する電子回路を含むモジュール全体としての損失を小さくすることができる。
【0047】
前述のように、本実施態様に係る基板における第1表面電極は、本実施態様に係る基板を含む第2電子回路(例えばドライブ回路等の周辺回路)と第1電子回路(例えばパワー回路)に含まれる高発熱素子(例えばスイッチング素子等のパワー半導体素子)とを電気的に接続する。従って、当該第1表面電極には大電流が流れることが想定されるため、第1表面電極における損失をより小さくするには、高発熱素子と第1表面電極との接続面積をより大きくすることが望ましい。同様に、第1表面電極を構成する導体の厚みもまた、より大きくすることが望ましい。
【0048】
ところで、前述のように、大容量モジュールを構成する各種回路基板を積層して当該モジュールを小型軽量化する場合、スイッチング素子等のパワー半導体素子を始めとする高発熱素子から発生する熱により、高発熱素子を含む回路(パワー回路)の構成部材が膨張・変形する虞がある。特に、高発熱素子から発生する熱を放熱するためのヒートシンクが装着されている場合、一般的な金属製ヒートシンクはパワー回路の基板の基材(例えばセラミック等)よりも熱膨張係数が大きいため、上記傾向が益々顕著となり、ヒートシンクの熱膨張によりヒートシンク側が凸になるように、高発熱素子を含む回路の基板が湾曲してしまう。その結果、高発熱素子と、その上に積層された周辺回路との接合・密着が不十分となる虞がある。このような接合不良が発生すると、高発熱素子から発生する熱を、周辺回路を介して放熱することが困難となり、モジュール全体としての放熱効果が不十分となる虞がある。
【0049】
一方、本実施態様に係る基板においては、前述のように、第1表面電極が、本実施態様に係る基板を含む第2電子回路(例えばドライブ回路等の周辺回路)と第1電子回路(例えばパワー回路)に含まれる高発熱素子(例えばスイッチング素子等のパワー半導体素子)とを電気的に接続する。従って、当該第1表面電極には大電流が流れることが想定されるため、第1表面電極における損失をより小さくするために、高発熱素子と第1表面電極との接続面積をより大きくすることが望ましい。その結果、本実施態様に係る基板の第1表面において第1表面電極が占める総面積はより大きくなる。
【0050】
逆に、本実施態様に係る基板の第1表面とは反対側の表面(第2表面)には、本実施態様に係る基板を含む第2電子回路を構成する各種回路素子や端子等を実装するための電極(第2表面電極)(例えばランド等)が配設されることが多い。第2電子回路は、前述のように、例えばドライブ回路等の周辺回路を構成する。従って、高発熱素子との(大容量の)電気的接続を達成するための第1表面電極とは異なり、第2表面電極は周辺回路を構成する比較的小容量(小電力)の回路素子との電気的接続を達成することになるので、本実施態様に係る基板の第2表面において第2表面電極が占める総面積は相対的により小さくなり、また第2表面電極を構成する導体の(第1表面に直交する方向における)厚みもまた相対的により薄くなる。
【0051】
従って、本実施態様に係る基板においては、高発熱素子を含む第1電子回路に面する第1表面において第1表面電極が占める総面積は相対的に大きく、且つ第1表面電極の厚みも相対的に厚い。一方、第2電子回路を構成する各種回路素子や端子等が実装される、第1表面とは反対側の第2表面において第2表面電極が占める総面積は相対的に小さく、且つ第2表面電極の厚みも相対的に薄い。これらの電極を構成する材料は、前述のように、主成分として金属を含んでなり、本実施態様に係る基板の基材であるセラミックを主成分とする誘電体材料と比較して、より大きい熱膨張係数を有する。即ち、本実施態様に係る基板の第1表面側では、より大きい熱膨張係数を有する電極が占める総面積及び厚みが相対的に大きく、一方、本実施態様に係る基板の第2表面側では、より大きい熱膨張係数を有する電極が占める総面積及び厚みが相対的に小さい。
【0052】
その結果、例えば、本実施態様に係る基板を含む第2電子回路と高発熱素子を含む第1電子回路とを含んでなるモジュールの動作に伴う高発熱素子からの発熱に起因して本実施態様に係る基板の温度が上昇した場合、当該温度上昇に起因する熱膨張の程度が、本実施態様に係る基板の第1表面近傍の領域とその他の領域とで異なる。より具体的には、第1表面電極が占める総面積及び厚みが相対的に大きい第1表面近傍の領域の熱膨張の程度が、(電極が占める総面積及び厚みが相対的に小さい)その他の領域の熱膨張の程度と比較して、より大きくなる。
【0053】
上記のような第1表面近傍の領域とその他の領域とでの熱膨張の程度の差により、本実施態様に係る基板の温度が著しく変化した場合、本実施態様に係る基板が湾曲する可能性がある。例えば、後述するように本実施態様に係る基板を焼成して製造した後の冷却過程において、当該温度低下に伴う当該基板の第1表面近傍の領域の収縮の程度は相対的に大きく、当該基板のその他の領域の収縮の程度は相対的に小さい。その結果、焼成完了時には当該基板が湾曲していなくても、上記温度低下の結果、第1表面側が凹になるように当該基板が湾曲する可能性がある。
【0054】
また、例えば、上記のような焼成後の冷却に伴う湾曲を相殺するように予め湾曲させた状態で焼成する等の対策を講じて、冷却完了時(即ち、基板の製造完了時)に湾曲を伴わない基板を得た場合にも、例えば、本実施態様に係る基板を含む第2電子回路及び高発熱素子を含む第1電子回路を含んでなるモジュールの動作に伴う高発熱素子からの発熱に起因する温度上昇が著しい場合、当該温度上昇に伴う当該基板の第1表面近傍の領域の膨張の程度は相対的に大きく、当該基板のその他の領域の膨張の程度は相対的に小さい。その結果、製造完了時には当該基板が湾曲していなくても、上記温度上昇の結果、第1表面側が凸になるように当該基板が湾曲する可能性がある。
【0055】
上記のように本実施態様に係る基板が湾曲すると、例えば、本実施態様に係る基板が密着すべき高発熱素子を含む第1電子回路や第1電子回路の基板がモジュールの動作に伴って湾曲せずに平坦な状態を維持する場合は、本実施態様に係る基板と高発熱素子との密着・接合が十分に確保されず、その結果として、高発熱素子から発生する熱の当該基板への伝達が不十分となったり、高発熱素子と第2電子回路との電気的接続が遮断されたり、第2電子回路を構成する回路素子間の電気的接続が遮断されたりする虞がある。
【0056】
しかしながら、現実には、前述のように、高発熱素子から発生する熱により、高発熱素子を含む第1電子回路の構成部材が膨張・変形する場合がある。特に、高発熱素子から発生する熱を放熱するためのヒートシンクが、例えば第1電子回路の基板の高発熱素子が配設されている面とは反対側の面に装着されている場合、一般的な金属製ヒートシンクはパワー回路の基板の基材(例えばセラミック等)よりも熱膨張係数が大きいため、ヒートシンクの熱膨張によりヒートシンク側が凸になるように、高発熱素子を含む第1電子回路(の基板)が湾曲してしまう。
【0057】
従って、上記のようにモジュールの動作に伴う高発熱素子からの発熱に起因して第1電子回路が湾曲しても本実施態様に係る基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保するためには、むしろ本実施態様に係る基板が、前述のようにモジュールの動作に伴う高発熱素子からの発熱に起因して、第1表面側が凸になるように湾曲することが望ましい。
【0058】
本実施態様に係る基板においては、前述のように、第1表面と平行であり且つ第1表面電極を構成する導体の基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち第1表面から最も遠い平面である第1境界面と第1表面とによって挟まれる基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、第1領域以外の基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きい。即ち、本実施態様に係る基板においては、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも、平均熱膨張係数が大きい。
【0059】
上記により、本実施態様に係る基板を使用する第2電子回路を含むモジュールの動作に伴う高発熱素子からの発熱に起因して第1電子回路の構成部材(特にヒートシンク)等が熱膨張を生じて第1電子回路の基板が湾曲しても、第2電子回路の基板もまた第1電子回路の基板と同じ方向に湾曲するため、本実施態様に係る基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。その結果、かかる接合不良により、高発熱素子から発生する熱を周辺回路を介して放熱することが困難となりモジュール全体としての放熱効果が不十分となる不都合を抑制することができる。
【0060】
尚、本実施態様に係る基板において、当該基板の第1領域の平均熱膨張係数を、当該基板の第2領域の平均熱膨張係数よりも大きく構成する具体的な手法の一例としては、例えば、前述のように、当該基板の第1領域において第1表面電極を構成する導体が占める割合を、当該基板の第2領域において第2表面電極や内層電極を構成する導体が占める割合よりも大きくすることが挙げられる。また、第1表面電極を構成する導体の(第1表面に直交する方向における)厚みを、第2表面電極や内層電極を構成する導体の(第1表面に直交する方向における)厚みよりも大きくすることにより、当該基板の第1領域の平均熱膨張係数を、当該基板の第2領域の平均熱膨張係数よりも更に大きく構成することもできる。更に、本実施態様に係る基板において、当該基板の第1領域の基材の熱膨張係数を、当該基板の第2領域の基材の熱膨張係数よりも大きくすることにより、当該基板の第1領域の平均熱膨張係数を、当該基板の第2領域の平均熱膨張係数よりも更に大きく構成することもできる。
【0061】
逆に、本実施態様に係る基板を用いる第2電子回路(周辺回路)を含むモジュールの第1電子回路(パワー回路)における高発熱素子の動作温度や当該動作温度における第1電子回路の(基板の)湾曲の程度等の種々の条件から、当該基板における第1領域と第2領域との平均熱膨張係数の差をより小さくすべき場合も想定される。かかる場合においては、例えば、第1表面電極を構成する導体の(第1表面に直交する方向における)厚みを、第2表面電極や内層電極を構成する導体の(第1表面に直交する方向における)厚みよりも小さく構成したり、第1領域の基材の熱膨張係数を、第2領域の基材の熱膨張係数よりも小さく構成したりすることにより、本実施態様に係る基板における第1領域と第2領域との平均熱膨張係数の差をより小さくすることもできる。
【0062】
上記のように、本実施態様に係る基板における第1領域と第2領域との平均熱膨張係数の差を調整して、高発熱素子の動作温度における第1電子回路の(基板の)湾曲の程度に当該基板の湾曲の程度を合わせることができる。尚、本実施態様に係る基板における第1領域と第2領域との平均熱膨張係数の差を調整するための具体的手法は上記に限定されるものではなく、本発明の目的を達成することが可能である限り、種々の手法を適用することができる。
【0063】
以上のように、本実施態様に係る基板によれは、パワー回路上へのドライブ回路等の周辺回路の積層により小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を図ろうとする大容量モジュール(例えばインバータを始めとするパワーモジュール等)において、高発熱素子からの発熱によるパワー回路の構成部材(特にヒートシンク)等の熱膨張に伴うパワー回路基板の湾曲に起因するドライブ回路基板と高発熱素子との接合不良を抑制することにより、高発熱素子から発生する熱をより効率良く外部に伝達する、信頼性の高い周辺回路用の回路基板を提供することができる。
【0064】
ところで、本実施態様に係る基板を製造する方法は、上記要件を満たす限り、如何なる方法であってもよく、当該技術分野においてセラミック製の基板の製造に使用される種々の方法から適宜選択することができる。本実施態様に係る基板を製造する方法の具体例としては、例えば、所謂「ゲルキャスト法」や「ドクターブレード法」等を挙げることができる。
【0065】
上記ゲルキャスト法を採用する場合は、例えば、フィルム状または薄板状の保護基材の表面に、例えばスクリーン印刷法等の印刷法によって導体パターンを配設し、導体パターンが配設されなかった部分にはセラミック等の誘電体材料のスラリーを注入し、当該スラリーを固化させて得られる導体パターンが埋設された誘電体材料のシートを必要な枚数だけ積層して、導体パターンを表面電極や内層電極として構成し、焼成することによって、本実施態様に係る基板を得ることができる。
【0066】
上記保護基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等の樹脂フィルムを用いることが望ましく、また樹脂フィルム以外にも、ガラス板や紙、金属などのフィルム状または板状の種々の材料を用いることができる。但し、保護基材としては、剥離操作の容易性の観点から、可撓性を備えたものを用いることが好ましい。
【0067】
また、例えば、上記誘電体材料のシートを保護基材から容易に剥離することができるようにすること等を目的として、上記保護基材の表面には、例えば、剥離剤等が塗布されていてもよい。かかる剥離剤には、例えば、当該技術分野において離型剤として知られている各種薬剤が含まれる。より具体的には、かかる剥離剤としては、公知のシリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤等を使用することができる。
【0068】
上記導体パターンは、主成分として、例えば、金、銀、銅等から選ばれる少なくとも1種類以上の金属と熱硬化性樹脂前駆体を含んでなる導体ペーストを、例えば、スクリーン印刷等の方法により上記保護基材の表面上に形成することによって拝察されることが望ましい。かかる熱硬化性樹脂前駆体としては、フェノール樹脂、レゾール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等を使用することができる。これらの中では、フェノール樹脂、レゾール樹脂であることが特に好ましい。かかる導体ペーストを上記保護基材の表面上に印刷した後、この導体ペーストに含まれるバインダーを硬化させることによって、導体パターンを得ることができる。
【0069】
上記誘電体材料のスラリーとしては、例えば、樹脂、セラミック粉末、及び溶剤を含んでなるスラリーを挙げることができる。ここで、樹脂は所謂「バインダー」として機能するものであり、例えば、フェノール樹脂、レゾール樹脂、若しくはポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、又はポリオール及びポリイソシアネートを含んでなるポリウレタン前駆体等を使用することができる。これらの中では、ポリオール及びポリイソシアネートを含んでなる熱硬化性樹脂前駆体が特に好ましい。
【0070】
セラミック粉末として使用されるセラミック材料としては、酸化物系セラミック又は非酸化物系セラミックの何れを使用してもよい。例えば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、窒化珪素(Si)、炭化珪素(SiC)、酸化バリウム(BaO)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ネオジム(Nd)等を使用することができる。また、これらの材料は、1種類単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、スラリーを調製可能な限りにおいて、セラミック材料の粒子径は特に限定されない。
【0071】
また、上記溶剤としては、上記バインダーとしての樹脂(及び、使用する場合には分散剤)を溶解するものであれば特に限定されない。溶剤の具体例としては、例えば、多塩基酸エステル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、多価アルコールの酸エステル(例えば、トリアセチン(グリセリルトリアセテート)等)等の、2以上のエステル結合を有する溶剤を挙げることができる。
【0072】
更に、上記誘電体材料のスラリーは、上述の樹脂、セラミック粉末、及び溶剤以外に、分散剤を含んでいてもよい。分散剤の具体例としては、例えば、ポリカルボン酸系共重合体、ポリカルボン酸塩等を挙げることができる。かかる分散剤を添加することにより、成形前のスラリーを低粘度とし、且つ高い流動性を有するものとすることができる。
【0073】
ところで、本発明に係る基板を含む第2電子回路を構成する各種回路素子や端子等には、例えば、高発熱素子の動作を制御するための信号、高発熱素子への入力電流、又は高発熱素子からの出力電流等、種々の電流が流れ得る。これらの電流は、上記第1表面電極を経由して、第2電子回路を構成する各種回路素子や端子等と高発熱素子との間を流れる。しかしながら、第2電子回路を構成する各種回路素子や端子等は、本発明に係る基板の第1表面電極とは反対側の表面に配設されるのが一般的である。そのため、第1表面電極と当該基板の反対側の表面上に配設される各種回路素子や端子等とを電気的に接続する回路が必要である。
【0074】
かかる電気的接続は、本発明に係る基板の内部に埋設された少なくとも1層の内層電極によって達成することができる。かかる内層電極を介する第1表面電極と当該基板の反対側の表面上に配設される各種回路素子や端子等との電気的接続は、例えばワイヤボンディング等の従来技術に係る接続方法と比較して、より短くすることができ、本発明に係る基板を使用する電子回路を含むモジュール全体としての損失を小さくするので望ましい。
【0075】
従って、本発明の第2態様は、
高発熱素子を含む第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して積層される第2電子回路に用いられる基板であって、
前記基板が、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材と、前記基板の前記第1電子回路側に形成された第1表面電極と、前記基板の内層に埋設された少なくとも1層の内層電極と、を含んでなること、
前記第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が前記基材の内部に埋設されていること、
前記基板の前記第1電子回路側の表面である第1表面における少なくとも前記高発熱素子の端子に対向する領域において、前記第1表面電極を構成する導体が前記基材から露出していること、
前記第1表面電極及び前記少なくとも1層の内層電極を構成する導体の前記第1表面に直交する方向における厚みが100μm以上であること、並びに
前記第1表面と平行であり且つ前記第1表面電極を構成する導体の前記基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち前記第1表面から最も遠い平面である第1境界面と前記第1表面とによって挟まれる前記基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、前記第1領域以外の前記基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きいこと、
を特徴とする基板である。
【0076】
本実施態様に係る基板は、当該基板の内層に埋設された少なくとも1層の内層電極を更に含んでなること、及び当該少なくとも1層の内層電極を構成する導体の第1表面に直交する方向における厚みが100μm以上であること、を除き、本発明の前記第1態様に係る基板と同様の構成を有する。本実施態様においては、上記のように、第1表面電極のみならず、少なくとも1層の内層電極を構成する導体の(第1表面に直交する方向における)厚みもまた、100μm以上、より好ましくは200μm以上である。これにより、本実施態様に係る基板においては、第2電子回路を構成する各種回路素子や端子等と高発熱素子との間での電気的接続における損失をも、より小さくすることができ、結果として、本実施態様に係る基板を使用する電子回路を含むモジュール全体としての損失を小さくすることができる。
【0077】
これまで説明してきたように、本発明の前述の各実施態様に係る基板においては、第1表面と平行であり且つ第1表面電極を構成する導体の基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち第1表面から最も遠い平面である第1境界面と第1表面とによって挟まれる基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、第1領域以外の基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きい。即ち、本実施態様に係る基板においては、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも、平均熱膨張係数が大きい。
【0078】
上記により、本発明の前述の各実施態様に係る基板を使用する第2電子回路を含むモジュールの動作に伴う高発熱素子からの発熱に起因して第1電子回路の構成部材(特にヒートシンク)等が熱膨張を生じて、第2電子回路とは反対側が凸になるように第1電子回路の基板が湾曲しても、第2電子回路の基板もまた第1電子回路の基板と同じ方向に湾曲するため、本発明の前述の各実施態様に係る基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。その結果、かかる接合不良により高発熱素子から発生する熱を周辺回路を介して放熱することが困難となりモジュール全体としての放熱効果が不十分となる不都合を抑制することができる。
【0079】
ところで、上記のように、本発明に係る基板においては、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも、平均熱膨張係数が大きい。従って、前述のように、本発明に係る基板を焼成して製造した後の冷却過程において、当該温度低下に伴う当該基板の第1表面近傍の領域の収縮の程度は相対的に大きく、当該基板のその他の領域の収縮の程度は相対的に小さい。その結果、焼成完了時には当該基板が湾曲していなくても、上記温度低下の結果、第1表面側が凹になるように当該基板が湾曲する可能性がある。
【0080】
上記のように、第1表面側が凹になるように本発明に係る基板が湾曲している場合であっても、当該基板の第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも平均熱膨張係数が大きいことに起因して、当該基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保するというメリットを享受することができる。
【0081】
先ず、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を、かかる形状のまま大容量モジュールを構成する第2回路の基板として使用する場合について説明する。この場合、かかる基板を有する第2電子回路と積層される第1電子回路の第2電子回路側(即ち、高発熱素子が配設されている側)の表面は、かかる湾曲を伴わない基板を有する第2電子回路と積層される場合と比較して、端部(周縁部)よりも中央部の方が高くなるように(即ち、第1電子回路を構成する個々の回路素子の高低はあるものの、全体としては第2電子回路側に凸になるように)構成される。
【0082】
上記のように構成されることにより、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している基板を有する第2電子回路と第1電子回路とを良好に積層することができ、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。このようにして、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を、そのままの形状を維持したままで、高発熱素子と十分に密着・接合させることができる。
【0083】
その後、これらの電子回路を含む大容量モジュールを動作させると、高発熱素子からの発熱により、これらの電子回路の温度が上昇する。その結果、高発熱素子を含む第1電子回路の構成部材(特にヒートシンク)等の熱膨張により、第2電子回路側が凹になるように第1電子回路の基板が湾曲する。即ち、この際、第1電子回路の基板は、端部(周縁部)よりも中央部の方が低くなるように(即ち、第1電子回路の中央部が第2電子回路から遠ざかるように)湾曲する。従って、このままでは、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することが困難となる虞がある。
【0084】
しかしながら、第2電子回路の基板(本実施態様に係る基板)においては、前述のように、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも平均熱膨張係数が大きい。これにより、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも大きく熱膨張を生ずる。その結果、常温においては第1表面側が凹になるように湾曲していた本実施態様に係る基板は、温度上昇に伴って、徐々に湾曲の程度が小さくなる。即ち、この際、当該基板においては、端部(周縁部)と中央部との間での第1電子回路との距離の差が徐々に小さくなり、常温時と比較して、中央部が第1電子回路(高発熱素子)に近付く方向に変形する。
【0085】
上記により、大容量モジュールの動作に伴う温度上昇に起因して、高発熱素子を含む第1電子回路の基板が、第2電子回路側が凹になるように湾曲しても、第2電子回路を構成する本実施態様に係る基板の常温時の湾曲の程度がより小さくなることにより、第1電子回路の基板の湾曲に伴う基板中央部における第2電子回路側との距離の増大が少なくとも部分的には相殺される。その結果、かかる場合においても、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。
【0086】
上記のように、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を、かかる形状のまま大容量モジュールを構成する第2回路の基板として使用する場合においても、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも、平均熱膨張係数が大きいという、本発明に係る基板の1つの特徴により、大容量モジュールの動作に伴う温度上昇に起因して、高発熱素子を含む第1電子回路の基板が、第2電子回路側が凹になるように湾曲しても、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。
【0087】
次に、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を、当該基板の湾曲を考慮せずに、大容量モジュールを構成する第1電子回路上に高発熱素子を介して積層する場合について説明する。この場合は、かかる基板を有する第2電子回路と積層される第1電子回路の第2電子回路側(即ち、高発熱素子が配設されている側)の表面は、かかる湾曲を伴わない基板を有する第2電子回路と積層される場合と同様に、端部(周縁部)と中央部とにおいて高さの差が無いように(即ち、第1電子回路を構成する個々の回路素子の高低はあるものの、全体としては平坦になるように)構成される。
【0088】
即ち、本実施態様においては、上記のように平坦に構成された第1電子回路の第2電子回路側(即ち、高発熱素子が配設されている側)の表面に、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板が(平坦な形状に変形されて)積層される。この際、積層後の第1電子回路及び第2電子回路は、湾曲を伴わない基板を有する第2電子回路と積層される場合と同様に、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合が十分に確保されている。しかしながら、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板が平坦な形状に変形されて積層されていることから、当該基板においては、元の湾曲した状態に戻ろうとする(即ち、当該基板の中央部を第1電子回路から遠ざけようとする)応力が働いている。
【0089】
その後、これらの電子回路を含む大容量モジュールを動作させると、高発熱素子からの発熱により、これらの電子回路の温度が上昇する。その結果、高発熱素子を含む第1電子回路の構成部材(特にヒートシンク)等の熱膨張により、第2電子回路側が凹になるように第1電子回路の基板が湾曲する。即ち、この際、第1電子回路の基板は、端部(周縁部)よりも中央部の方が低くなるように(即ち、第1電子回路の中央部が第2電子回路から遠ざかるように)湾曲する。従って、このままでは、上記のように第2電子回路の基板において元の湾曲した状態に戻ろうとする応力と相まって、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することが益々困難となる虞がある。
【0090】
しかしながら、第2電子回路の基板(本実施態様に係る基板)においては、前述のように、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも平均熱膨張係数が大きい。これにより、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも大きく熱膨張を生ずる。その結果、上述のように第2電子回路の基板において元の湾曲した状態に戻ろうとする応力が弱められる。
【0091】
上記により、大容量モジュールの動作に伴う温度上昇により、高発熱素子を含む第1電子回路の基板が、第2電子回路側が凹になるように湾曲した際に、第2電子回路を構成する本実施態様に係る基板が元の湾曲した状態に戻ろうとする応力が弱められる。その結果、高発熱素子からの発熱に伴って第1電子回路の基板が湾曲した際に、上記のように第2電子回路の基板が元の湾曲した状態に戻ろうとする応力と相まって、第2電子回路の基板と高発熱素子とが互いに遠ざかろうとする力が過大に作用して、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合が不十分となることを回避することができる。
【0092】
上記のように、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を平坦な形状に変形させて、大容量モジュールを構成する第2回路の基板として使用する場合においても、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも、平均熱膨張係数が大きいという、本発明に係る基板の1つの特徴により、大容量モジュールの動作に伴う温度上昇により、高発熱素子を含む第1電子回路の基板が、第2電子回路側が凹になるように湾曲した際に、第2電子回路を構成する本実施態様に係る基板が元の湾曲した状態に戻ろうとする応力が弱められる。これにより、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を平坦な形状に変形させて大容量モジュールを構成する第2電子回路の基板として使用した場合であっても、同モジュールの動作に伴う温度上昇に起因して第2電子回路側が凹になるように第1電子回路の基板が湾曲した際に、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。
【0093】
以上より、本発明の第3態様は、
本発明の前記第1態様又は第2態様の何れかに係る基板であって、
常温において、前記第1表面側が凹になるように湾曲していること、
を更なる特徴とする、基板である。
【0094】
前述のように、本実施態様に係る基板においても、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも、平均熱膨張係数が大きいという、本発明に係る基板の1つの特徴により、大容量モジュールの動作に伴う温度上昇により、高発熱素子を含む第1電子回路の基板が、第2電子回路側が凹になるように湾曲した際に、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。
【0095】
尚、本実施態様に係る基板の湾曲の程度は、例えば、大容量モジュールの動作に伴う温度上昇に起因する第1電子回路の湾曲の程度、第1電子回路の基板の曲げ剛性、第2電子回路の基板(即ち、本実施態様に係る基板)の曲げ剛性等、本実施態様に係る基板を適用しようとする大容量モジュールの構成及び各種特性に応じて、適宜調整することが望ましい。
【0096】
ところで、前述のように、本発明は、大容量モジュールの周辺回路用の回路基板に関する。より詳細には、本発明は、例えば、ハイブリッドカーや電気自動車において使用されるインバータ等のパワーモジュールを始めとする大容量モジュールにおいて、高発熱素子を含む回路と積層される周辺回路用の回路基板に関する。更に、本発明は、当該回路基板を用いる周辺回路を含む大容量モジュールにも関する。
【0097】
ここで、大容量モジュールとは、前述のように、例えば、インバータ等のパワーモジュールを始めとする、大電力を扱うモジュールを指す。かかる大容量モジュールは、前述のように、例えば、ハイブリッドカーや電気自動車等の普及に伴い、従来よりも更なる小型軽量化及び高効率化が益々強く求められている。
【0098】
上述の要求に応えるには、大容量モジュールにに含まれる周辺回路において、本発明に係る基板を用いることが望ましい。これにより、かかる大容量モジュールにおいて、小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を達成しつつ、パワー半導体素子等の高発熱素子から発生する熱をより効率良く外部に伝達して、当該モジュール全体としての信頼性をも向上させることができる。従って、本発明の前記第1態様又は前記第2態様及びその他の多種多様な変形例に係る基板を用いる周辺回路を含む大容量モジュールもまた、本発明の範囲に含まれる。
【0099】
即ち、本発明の第4態様は、
高発熱素子を含む第1電子回路、
前記第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して積層される第2電子回路、
を含んでなる大容量モジュールであって、
第2電子回路に用いられる基板が、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材と、前記基板の前記第1電子回路側に形成された第1表面電極と、を含んでなること、
前記第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が前記基材の内部に埋設されていること、
前記基板の前記第1電子回路側の表面である第1表面における少なくとも前記高発熱素子の端子に対向する領域において、前記第1表面電極を構成する導体が前記基材から露出していること、
前記第1表面電極を構成する導体の前記第1表面に直交する方向における厚みが100μm以上であること、並びに
前記第1表面と平行であり且つ前記第1表面電極を構成する導体の前記基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち前記第1表面から最も遠い平面である第1境界面と前記第1表面とによって挟まれる前記基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、前記第1領域以外の前記基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きいこと、
を特徴とする大容量モジュールである。
【0100】
また、本発明の第5態様は、
高発熱素子を含む第1電子回路、
前記第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して積層される第2電子回路、
を含んでなる大容量モジュールであって、
第2電子回路に用いられる基板が、主としてセラミックを含んでなる誘電体層からなる基材と、前記基板の前記第1電子回路側に形成された第1表面電極と、前記基板の内層に埋設された少なくとも1層の内層電極と、を含んでなること、
前記第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が前記基材の内部に埋設されていること、
前記基板の前記第1電子回路側の表面である第1表面における少なくとも前記高発熱素子の端子に対向する領域において、前記第1表面電極を構成する導体が前記基材から露出していること、
前記第1表面電極及び前記少なくとも1層の内層電極を構成する導体の前記第1表面に直交する方向における厚みが100μm以上であること、並びに
前記第1表面と平行であり且つ前記第1表面電極を構成する導体の前記基材の内部に埋設された部分と交差する平面のうち前記第1表面から最も遠い平面である第1境界面と前記第1表面とによって挟まれる前記基板の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、前記第1領域以外の前記基板の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きいこと、
を特徴とする大容量モジュールである。
【0101】
本発明の前記第4態様又は前記第5態様の何れかに係る大容量モジュールにおいては、それぞれ本発明の前記第1態様又は前記第2態様の何れかに係る基板を用いる第2電子回路が、第1電子回路の高発熱素子側に当該高発熱素子を介して積層されている。これにより、高発熱素子から発生する熱が第1電子回路の基板を経由して放熱されるだけでなく、第2電子回路の基板を経由して放熱されることも可能となることから、本発明の前記第4態様又は前記第5態様の何れかに係る大容量モジュール全体の放熱が効果的に行われ、当該モジュールの過熱を抑制することができる。
【0102】
また、前述のように、本発明の前記第1態様乃至前記第2態様に係る基板においては、第1表面電極を構成する導体の少なくとも一部が基材の内部に埋設されていることから、導体と基材との界面に作用する応力(例えば、電極を構成する導体と基材との熱膨張係数の差に起因して発生する応力等)が緩和・低減され、本発明の前記第4態様又は前記第5態様の何れかに係る大容量モジュールの信頼性が向上する。
【0103】
更に、前述のように、本発明の前記第1態様又は前記第2態様の何れかに係る基板においては、第1電子回路側の基板表面である第1表面における少なくとも高発熱素子の端子に対向する領域において、第1表面電極を構成する導体が基材から露出している。これにより、本発明の前記第4態様又は前記第5態様の何れかに係る大容量モジュールにおいては、第2電子回路と高発熱素子とをより短い距離で接続することができるので、例えばスイッチング時のサージ電圧を抑制(低サージ化)することができる。
【0104】
また更に、本発明の前記第1態様又は前記第2態様の何れかに係る基板においては、第1表面電極及び(本発明の前記第2態様に係る基板が含む)少なくとも1層の内層電極を構成する導体の(第1表面に直交する方向における)厚みが100μm以上、より好ましくは200μm以上である。これにより、本発明の前記第4態様又は前記第5態様の何れかに係る大容量モジュール全体としての損失を小さくすることができる。
【0105】
上記に加えて、本発明の前記第1態様又は前記第2態様の何れかに係る基板においては、前述のように、当該基板の第1表面側の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、当該基板の第2領域側の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きい。これにより、当該基板を使用する第2電子回路を含むモジュールの動作に伴う高発熱素子からの発熱に起因して第1電子回路の構成部材(特にヒートシンク)等が熱膨張を生じて第1電子回路の基板が湾曲しても、第2電子回路の基板もまた第1電子回路の基板と同じ方向に湾曲するため、当該基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。その結果、本発明の前記第4態様又は前記第5態様の何れかに係る大容量モジュールにおいては、かかる接合不良により高発熱素子から発生する熱を周辺回路を介して放熱することが困難となりモジュール全体としての放熱効果が不十分となる不都合を抑制することができる。
【0106】
以上のように、本発明の前記第4態様又は前記第5態様の何れかに係る大容量モジュールにおいては、小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を達成しつつ、当該モジュールの動作に伴う高発熱素子からの発熱に起因して第1電子回路の基板が湾曲しても、第2電子回路の基板もまた第1電子回路の基板と同じ方向に湾曲するため、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。
【0107】
その結果、本発明の前記第4態様又は前記第5態様の何れかに係る大容量モジュールにおいては、上記のような第2電子回路の基板と高発熱素子との接合不良により高発熱素子から発生する熱を周辺回路を介して放熱することが困難となりモジュール全体としての放熱効果が不十分となる不都合を抑制することができる。従って、本発明の前記第4態様又は前記第5態様の何れかに係る大容量モジュールは、パワー半導体素子等の高発熱素子から発生する熱をより効率良く外部に伝達することができ、高い信頼性を発揮することができる。
【0108】
ところで、本発明に係る基板においては、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも、平均熱膨張係数が大きい。従って、本発明に係る基板を焼成して製造した後の冷却過程において、当該温度低下に伴う当該基板の第1表面近傍の領域の収縮の程度は相対的に大きく、当該基板のその他の領域の収縮の程度は相対的に小さい。その結果、焼成完了時には当該基板が湾曲していなくても、上記温度低下の結果、第1表面側が凹になるように当該基板が湾曲する可能性がある。
【0109】
しかしながら、上記のように、第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を大容量モジュールにおける第2電子回路を構成する基板として使用する場合においても、当該基板の第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも平均熱膨張係数が大きいことに起因して、当該基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保するというメリットを享受することができる。
【0110】
即ち、本発明の第6態様は、
本発明の前記第4態様又は前記第5態様の何れかに係る大容量モジュールであって、
前記第1電子回路の前記高発熱素子が配設されている側に前記高発熱素子を介して前記第2電子回路が積層される前の時点における前記基板が、常温において、前記第1表面側が凹になるように湾曲していること、
を更なる特徴とする、大容量モジュールである。
【0111】
本実施態様に係る大容量モジュールにおいては、前述のように、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を、かかる形状のまま大容量モジュールを構成する第2回路の基板として使用する場合においても、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも、平均熱膨張係数が大きいという、本発明に係る基板の1つの特徴により、大容量モジュールの動作に伴う温度上昇により、高発熱素子を含む第1電子回路の基板が、第2電子回路側が凹になるように湾曲しても、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。
【0112】
また、本実施態様に係る大容量モジュールにおいては、前述のように、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を平坦な形状に変形させて、大容量モジュールを構成する第2回路の基板として使用する場合においても、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも、平均熱膨張係数が大きいという、本発明に係る基板の1つの特徴により、大容量モジュールの動作に伴う温度上昇により、高発熱素子を含む第1電子回路の基板が、第2電子回路側が凹になるように湾曲した際に、第2電子回路を構成する本実施態様に係る基板が元の湾曲した状態に戻ろうとする応力が弱められるので、同モジュールの動作に伴う温度上昇に起因して第2電子回路側が凹になるように第1電子回路の基板が湾曲した際にも、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができる。
【0113】
ところで、前述のように、上記大容量モジュールは、例えば、インバータ等のパワーモジュールを始めとする、大電力を扱うモジュールを指す。また、上記大容量モジュールがパワーモジュールである場合、上記高発熱素子は、例えば、パワー半導体素子を指し、より具体的には、上記高発熱素子は、例えば、スイッチング素子を指す。
【0114】
従って、本発明の第7態様は、
本発明の前記第4態様乃至前記第6態様の何れかに係る大容量モジュールであって、記大容量モジュールがパワーモジュールであることを特徴とする大容量モジュールである。
また、本発明の第8態様は、
本発明の前記第7態様に係る大容量モジュールであって、前記高発熱素子がスイッチング素子であることを特徴とする大容量モジュールである。
【0115】
ところで、上記のような大容量モジュールにおいては、例えばスイッチング素子等のパワー半導体素子から発生するノイズの低減が重要な技術的課題となっている。具体的には、例えば、スイッチング素子のスイッチング動作に伴って発生するノイズによりスイッチング素子のスイッチング動作に異常が生じ、スイッチング素子等のパワー半導体素子を含むパワー回路や周辺回路を破壊する虞がある。更に、かかるノイズが大容量モジュールの外部に漏洩し、大容量モジュールの周辺機器の動作に影響を与える虞もある。
【0116】
加えて、当該技術分野においては、例えば、IGBTやMOSFET等を含むパワー半導体素子の損失改善策として、従来使用されてきたシリコン(Si)ウェーハに代えて、前述のシリコンカーバイド(SiC)ウェーハや、更には窒化ガリウム(GaN)ウェーハを使用する技術動向が顕著になってきている(例えば、SiC−IGBTやSiC−MOSFET、GaN−IGBTやGaN−MOSFET等)。これらの新しいタイプのウェーハを使用する半導体素子においては、従来のSiウェーハを使用する半導体素子と比較して、より高いスイッチング周波数における動作が可能となるため、大容量モジュールの小型化が可能となる利点がある。しかしながら、スイッチング周波数の上昇に伴い、これらの半導体素子から発生するノイズの周波数も上昇するため、ノイズに起因する上述のような問題も、より深刻となる。従って、大容量モジュールにおいては、パワー半導体素子から発生するノイズの低減が益々重要な技術的課題となっている。
【0117】
上記のようなノイズを低減するための対策としては、コンデンサ(所謂「スナバコンデンサ」)をパワー半導体に並列に接続することが有効であることが知られている。スナバコンデンサは、パワー半導体素子のスイッチング動作に伴う電圧変化を抑制する効果を有する。かかるスナバコンデンサによってノイズをより有効に低減するには、パワー半導体素子とスナバコンデンサとの間の距離を短くする必要がある。これは、パワー半導体素子とスナバコンデンサとを電気的に接続する配線(ワイヤ)が長くなる程、当該配線が有する等価的なインダクタンスが大きくなり、これによりスイッチング動作に伴って発生するノイズに起因して誘起されるサージ電圧が増大し、結果として、スナバコンデンサによるノイズ低減効果が十分に発揮されないためである。
【0118】
しかしながら、従来の大容量モジュールにおいては、大容量モジュールの外部にスナバコンデンサを外付けする必要があるため、パワー半導体素子とスナバコンデンサとを電気的に接続する配線(ワイヤ)が長くなり、スナバコンデンサによるノイズ低減効果を十分に発揮させることができなかった。加えて、従来の大容量モジュールにおいては、パワー半導体素子を含むパワー回路と、例えば、かかるパワー半導体素子を制御する制御回路素子を含む周辺回路とが平面的に配置されることや、これらの回路を接続するための配線(ワイヤ)を配置するための面積が必要であることが、大容量モジュールの小型軽量化を妨げる要因となってきた。また、上記のような大容量モジュールを構成する各種回路を接続するワイヤの引き回しにより配線長が長くなり、モジュール全体としての損失が大きくなる等の問題も認められていた。
【0119】
そこで、上記のような大容量モジュールを構成する各種回路の基板を積層して大容量モジュールの小型軽量化を図ると共に、大容量モジュールを構成する各種回路基板間の接続形態を改良して、大容量モジュールの低損失化を図る試みが提案されている(例えば、特許文献1乃至3を参照)。当該技術分野においては、かかる積層構造を有する大容量モジュールにおいて、パワー半導体素子を制御する周辺回路(ドライブ回路)の基板の上にスナバコンデンサを実装する構成も提案されている。かかる構成によれば、前述のように大容量モジュールの外部にスナバコンデンサを設置する構成と比較して、パワー半導体素子とスナバコンデンサとを電気的に接続する配線(ワイヤ)をより短くすることができるが、その効果は限定的であり、更なる低サージ化が求められている。
【0120】
以上のような背景から、本発明に係る基板は、上述の実施態様を含む種々の実施態様においても、当該基板の内部にコンデンサが埋設されていてもよい。かかる構成によれば、上述のような従来技術に係る基板と比較して、パワー半導体素子とスナバコンデンサとを電気的に接続する配線を更に短くすることができる。その結果、当該配線が有する等価的なインダクタンスが小さくなるので、パワー半導体素子等から発生するノイズに起因して誘起されるサージ電圧が減少する。その結果、かかるノイズに起因してパワー半導体素子を含むパワー回路や周辺回路が破壊されたり、かかるノイズが大容量モジュールの外部に漏洩して、大容量モジュールの周辺機器の動作に影響を与えたりする問題をより一層軽減することができる。
【0121】
尚、例えば、スナバコンデンサに必要とされる容量を確保すること等を目的として、本発明に係る基板の内部に埋設されるコンデンサの容量を増大させる場合、コンデンサを構成する導体(及び導体の間に挟まれる誘電体)の積層数を増大させることによって、コンデンサの容量を増大させることができる。しかしながら、この場合は、コンデンサを内蔵する基板の厚みが増大することから、当該基板を用いる大容量モジュールの小型軽量化の障害となる虞がある。
【0122】
そこで、本発明に係る基板においては、上述のような積層構造を有する大容量モジュールにおいて、周辺回路の基板の厚みを増大させること無く、スナバコンデンサに必要とされる容量を確保することを目的として、高い誘電率を有する誘電体を含んでなる絶縁層をコンデンサを構成する導体の間に形成し、当該絶縁層を使用してコンデンサを形成することができる。かかる構成によれば、本発明に係る基板の内部に埋設されるコンデンサを構成する導体(及び導体の間に挟まれる誘電体)の積層数を増大させること無く(即ち、当該基板の厚みを増大させること無く)、コンデンサに必要とされる容量を確保することが容易となる。
【0123】
しかしながら、一般に、高い誘電率を有する材料の熱伝導率は低いため、高い誘電率を有する誘電体を含んでなる絶縁層が内部に形成される回路基板の全体としての熱伝導率が低下し、結果として、パワー半導体素子等の高発熱素子から発生する熱を外部に効率的に伝達する放熱経路として当該基板を活用することが困難となる場合がある。かかる場合においては、高い誘電率を有する誘電体を含んでなる絶縁層を、基板の主面に平行な面の全体に及ぶように形成するのではなく、基板の主面に平行な面内において部分的に配置して、当該面内に当該絶縁層が配置されていない領域を残すことにより、当該基板を介して高発熱素子から発生する熱を外部に放出するための熱伝導経路を確保することができる。
【0124】
また、前述のように、スナバコンデンサによるノイズ低減効果を十分に発揮させるためには、パワー半導体素子とスナバコンデンサとを電気的に接続する配線を短くすることが望ましい。従って、上述のように基板の内部にコンデンサが埋設される構成を有する実施態様に係る基板においても、第1回路基板(第1電子回路に用いられる基板)との積層時にパワー半導体素子等の高発熱素子に近くなる位置にコンデンサを配置することが望ましい。例えば、本発明に係る基板が用いられる第2回路基板(第2電子回路に用いられる基板)においては、第1回路基板との積層時に高発熱素子に対向する側の主面である第1表面に最も近い層にコンデンサを埋設することができる。
【0125】
尚、本発明に係る基板が用いられる第2回路基板において第1表面に最も近い層には、高発熱素子を含む第1電子回路との電気的接続を達成するための電極(第1表面電極)が配設される。従って、この場合は、コンデンサが第1表面電極と同じ層に埋設されることになる。これにより、かかる実施態様においては、第2回路基板の内部に埋設されるコンデンサと高発熱素子とを電気的に接続する配線を短くすることができるので、コンデンサによるノイズ低減効果を十分に発揮させることができる。加えて、コンデンサが埋設される層には第1表面電極を構成する導体もまた埋設されるので、前述のように高い誘電率を有する誘電体を含んでなる絶縁層をコンデンサを構成する導体の間に形成した場合であっても、パワー半導体素子等の高発熱素子から発生する熱を外部に効率的に伝達する放熱経路として、第1表面電極を構成する導体を利用することができるので、当該基板を第2回路基板として用いる大容量モジュールにおける放熱効率の低下を抑制することができる。
【0126】
これらの実施態様によれば、例えば、スイッチング素子を始めとするパワー半導体素子等の高発熱素子を備える、インバータ等のパワーモジュールを始めとする大容量モジュールにおいて、小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を達成しつつ、高発熱素子から発生する熱によって第1電子回路(の基板)が湾曲しても、高発熱素子から発生する熱をより効率良く外部に伝達し得る状態を維持して、当該大容量モジュールの信頼性を、より一層高めることができる。
【0127】
以下、本発明の幾つかの実施態様に係る基板の構成等につき、添付図面等を参照しつつ説明する。但し、以下に述べる説明はあくまでも例示を目的とするものであり、本発明の範囲が以下の説明に限定されるものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0128】
1.本発明の実施態様に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成
前述のように、図1は、本発明の1つの実施態様に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の1つの実施態様に係る基板を含むモジュール100は、パワー半導体素子113(例えばIGBT等)を含むパワー回路(第1電子回路110)、及び本発明の1つの実施態様に係る基板121を含むドライブ回路(第2電子回路120)を含んでなる。
【0129】
第1電子回路110は、第1電子回路の基板111の上に、接着用パッド112を介して配設されたパワー半導体素子113を含んでなり、第1電子回路110の側面及び底面を囲むように設けられたケース114内に配設され、当該ケース114の底部を介してヒートシンク115と接合されている。従って、パワー半導体素子113から発生する熱は、接着用パッド112、セラミック基板111、及びケース114を介してヒートシンク115に伝達され、放熱される。
【0130】
一方、第2電子回路120は、本実施態様に係る基板121の上に、制御回路素子125(例えばゲート駆動IC等)、スナバコンデンサ126等の各種回路素子が配設されてなる。これらの回路素子が配設される側の表面(第2表面)には第2表面電極124がランドとして設けられており、これらの回路素子が当該ランドを介して接続されている。一方、本実施態様に係る基板121の第2表面とは反対側の表面(第1表面)には、上記第1電子回路上のパワー半導体素子113との電気的接続を達成する為の第1表面電極122が設けられている。更に、本実施態様に係る基板121の内層部には、少なくとも1層の内層電極123が埋設されている。
【0131】
前述のように、第1表面電極122は、当該電極を構成する導体の少なくとも一部が基板121の基材の内部に埋設されており、且つ少なくともパワー半導体素子123の端子に対向する第1表面上の領域において、第1表面電極122を構成する導体が基材から露出している。また、第1表面電極122及び少なくとも1層の内層電極123を構成する導体の厚みは100μm以上である。
【0132】
かかる第2電子回路120は、第1電子回路110のパワー半導体素子113が配設されている側にパワー半導体素子113を介して積層され、第1表面電極122とパワー半導体素子113の端子とが、例えばはんだ付け等の手段によって、電気的に接続される。これにより、パワー半導体素子113から発生する熱は、上述のように第1電子回路110の基板111を介してヒートシンク115に伝達されるばかりでなく、少なくとも第1表面電極122を介して第2電子回路120のセラミック基板121にも伝達されるので、より効果的に放熱される。
【0133】
尚、本実施態様においては、第1表面電極122を構成する導体の全てが基材の内部に埋設され、当該導体の表面のみが第2電子回路120のセラミック基板111の第1表面と同一平面内に露出している。従って、第2電子回路120のセラミック基板121の基材の表面及び第1表面電極122を構成する導体の表面の両方が同時にパワー半導体素子113と接触する。
【0134】
これにより、パワー半導体素子113から発生する熱は、第1表面電極122の導体と直接接触している部分(例えば、当該パワー半導体素子113の端子部分等)からは当該導体に、第2電子回路120の基板121の基材と接触している部分からは当該基材に、それぞれ伝達されるので、本実施態様に係る基板121を用いるパワーモジュール100においては、パワー半導体素子113から発生する熱が更に効果的に放熱され、当該モジュールの過熱が更に効果的に抑制される。
【0135】
従って、本実施態様に係る基板121を用いるパワーモジュール100においては、パワー半導体素子113から発生する熱に起因する過度の温度上昇によるモジュールの破損(例えば、モジュールを構成する回路素子の封止樹脂の劣化や周辺回路の樹脂基板の膨張又は変形)等の問題が低減される。
【0136】
また、本実施態様に係る基板121を用いるパワーモジュールにおいては、第1表面電極122を構成する導体の少なくとも一部が当該基板121の基材の内部に埋設されている。これにより、(例えば、第1表面電極122を構成する導体と基材との熱膨張係数の差に起因して発生する応力や、本実施態様に係る基板121とパワー半導体素子113及び/又は第1電子回路110の基板111との熱膨張係数の差に起因して発生する応力等の)導体と基材との界面に作用する応力を低減することができるので、信頼性の高い大容量モジュールを実現することができる。
【0137】
更に、本実施態様に係る基板121においては、第1電子回路110側の基板表面である第1表面における少なくともパワー半導体素子113の端子に対向する領域において、第1表面電極122を構成する導体が基材から露出している。これにより、本実施態様に係る基板121を含む第2電子回路120とパワー半導体素子113とをより短い距離で接続することができ、例えばスイッチング時のサージ電圧を抑制(低サージ化)することができる。
【0138】
また更に、上述のように、本実施態様に係る基板121においては、第1表面電極122及び少なくとも1層の内層電極123を構成する導体の(第1表面に直交する方向における)厚みが100μm以上である。これにより、本実施態様に係る基板121を使用する第2電子回路120を含むモジュール100の全体としての損失を小さくすることができる。
【0139】
以上のように、本実施態様によれば、インバータ等のパワーモジュールを始めとする大容量モジュールにおいて、小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を達成しつつ、パワー半導体素子等の高発熱素子から発生する熱をより効率良く外部に伝達することができる、信頼性の高い周辺回路用の回路基板を提供することができる。
【0140】
2.従来技術に係る大容量モジュールの構成
一方、従来技術に係るパワーモジュールの構成について、図2を参照しながら、簡潔に説明する。前述のように、図2は、従来技術に係るパワーモジュールの構成を示す模式図である。
【0141】
図2に示すように、従来技術に係るパワーモジュール200は、金属ベース204の上に、スイッチング素子(IGBT201)を含むパワー回路221と、IGBT201を制御する制御回路素子を含むドライブ回路222とが平面的に配置され、これらの回路がアルミワイヤ207によって接続されている。そのため、従来技術に係るパワーモジュール200においては、これらの回路を平面的に配置するための面積に加えて、これらの回路を接続する配線のための面積もが必要であり、モジュール200の小型軽量化は困難である。
【0142】
また、従来技術に係るパワーモジュール200においては、上記のようにパワー回路221とドライブ回路222とを接続するためのアルミワイヤ207の引き回しにより配線長が長くなることから、モジュール200全体としての損失が大きく、アルミワイヤ207の等価インダクタンスに起因してスイッチング時に発生するサージ電圧が大きくなる等の問題を生ずる懸念がある。
【0143】
一方、本発明に係る基板及び当該基板を用いる大容量モジュールにおいては、上述のように、従来技術に係るパワーモジュールにおいて懸念される上記問題に加えて、大容量モジュールを構成する各種回路の積層によるモジュールの小型化に伴う放熱の問題をも解決することができる。
【0144】
3.本発明の実施態様に係る基板の信頼性
次に、本発明の実施態様に係る基板の信頼性について、図3を参照しながら、以下に説明する。前述のように、図3は、基板の表面に配設された電極と基板の基材との界面において作用する応力における、本発明の実施態様に係る基板と比較例に係る基板との差異を説明する模式図である。図3において、(a)及び(b)は本発明の実施態様に係る基板を表し、(c)は比較例に係る基板を表す。
【0145】
先ず、(a)に示す本発明の1つの実施態様に係る基板においては、第1電子回路(図示せず)に配設される高発熱素子(図示せず)との電気的接続を達成するための第1表面電極122が当該基板の基材中に完全に埋設され、その表面のみが当該基板の第1表面(図3における下側の面)において露出している。また、当該基板の内層には内層電極123が埋設されている。更に、当該基板の第2表面側(図3における上側)には、第2電子回路を構成する各種回路素子や端子との電気的接続を達成するための第2表面電極124が埋設され、その表面が第2表面から露出して、ランド等を構成している。
【0146】
本実施態様に係る基板においては、第1表面電極122の露出面と当該基板の第1表面とは同一平面内にある。従って、当該基板の第1表面電極122をを第1電子回路の高発熱素子に接合すると、結果として、高発熱素子は当該基板の基材部分とも接触することになるので、高発熱素子から発生する熱は、第1電子回路(図示せず)の基板を介して放熱されるのみならず、当該基板の第1表面電極及び基材にも伝達され、当該基板の第2表面(図3における上側の面)から放熱される。従って、本実施態様においては、より効率的な放熱が可能となる。
【0147】
ところで、前述のように、本実施態様に係る基板のように電極が設けられている基板においては、例えば、第1表面電極を構成する導体と基材との熱膨張係数の差に起因して発生する応力や、当該基板と高発熱素子及び/又は第1電子回路の基板との熱膨張係数の差に起因して発生する応力等が導体と基材との界面に作用することが想定される。この場合、当該応力は、図3中の丸印によって示すように、例えば、導体と基材との界面の端部(電極を構成する導体の角の部分)等に集中する場合がある。この際、当該応力の大きさによっては、例えば、第1表面電極を構成する導体が基板から剥がれたりして、当該回路を含むモジュール全体の信頼性の低下に繋がったり、最悪の場合は回路の断線や破壊に繋がったりする虞がある。
【0148】
しかしながら、本実施態様に係る基板においては、第1表面電極を構成する導体が基材の内部に埋設されていることから、例えば、基板の表面にリードフレームや導体パターンを貼り合わせた場合とは異なり、上記のような応力が集中する箇所の周囲が基板の基材によって覆われている。これにより、当該応力が緩和・分散されるので、上記のような問題が発生し難く、当該基板を使用する電子回路を含むモジュール全体としての信頼性をより高めることができる。
【0149】
次に、(b)に示す本発明のもう1つの実施態様に係る基板においては、第1表面電極122が当該基板の基材中に部分的に埋設され、その他の部分が当該基板の第1表面に露出している。即ち、本実施態様に係る基板においては、第1表面電極の一部が第1表面から部分的に突出している。尚、本実施態様に係る基板において、当該基板の内層には内層電極123が埋設され、当該基板の第2表面側には第2表面電極124が埋設されている点については、上記(a)に示す本発明の実施態様と同様である。
【0150】
本実施態様に係る基板においては、第1表面電極122の露出面(第1電子回路の高発熱素子に対向する面)と当該基板の第1表面とは同一平面内にない。従って、当該基板の第1表面電極122をを第1電子回路の高発熱素子に接合する際には、高発熱素子は当該基板の基材部分とは接触しないが、高発熱素子から発生する熱は、第1電子回路(図示せず)の基板を介して放熱されるのみならず、第1表面電極を介して当該基板に伝達され、当該基板の第2表面(図3における上側の面)から放熱される。
【0151】
また、本実施態様に係る基板においても、第1表面電極を構成する導体が基材の内部に部分的ながら埋設されていることから、上記(a)に示す本発明の実施態様と同様に、例えば、第1表面電極を構成する導体と基材との熱膨張係数の差に起因して発生する応力や、当該基板と高発熱素子及び/又は第1電子回路の基板との熱膨張係数の差に起因して発生する応力等が集中する箇所(図3中の丸印によって示す)の周囲が当該基板の基材によって覆われている。これにより、本実施態様に係る基板においても、当該応力が緩和・分散されるので、前述のように、第1表面電極を構成する導体が基板から剥がれたり、当該回路を含むモジュール全体の信頼性が低下したり、当該回路の断線や破壊に繋がったりする問題が抑制され、当該基板を使用する電子回路を含むモジュール全体としての信頼性が向上する。
【0152】
一方、(c)に示す比較例に係る基板においては、第1表面電極122が当該基板の基材中には埋設されておらず、第1表面電極122は当該基板の第1表面に貼り付けられている。尚、本実施態様に係る基板において、当該基板の内層には内層電極123が埋設され、当該基板の第2表面側には第2表面電極124が埋設されている点については、上記(a)及び(b)に示す本発明の実施態様と同様である。
【0153】
本実施態様に係る基板においては、上述のように、第1表面電極122は当該基板の第1表面に貼り付けられている。従って、上記(a)及び(b)に示す本発明の実施態様とは異なり、例えば、第1表面電極を構成する導体と基材との熱膨張係数の差に起因して発生する応力や、当該基板と高発熱素子及び/又は第1電子回路の基板との熱膨張係数の差に起因して発生する応力等が集中する箇所(図3中の丸印によって示す)の周囲は当該基板の基材に覆われていない。その結果、本実施態様に係る基板においては、当該応力が緩和・分散されず、前述のように、第1表面電極を構成する導体が基板から剥がれたり、当該回路を含むモジュール全体の信頼性が低下したり、当該回路の断線や破壊に繋がったりする危険性が本発明に係る基板よりも高く、当該基板を使用する電子回路を含むモジュール全体としての信頼性が懸念される。
【0154】
4.本発明の実施態様に係る基板の湾曲(1)
次に、本発明の1つの実施態様に係る基板の湾曲について、図4を参照しながら、以下に説明する。前述のように、図4は、本発明の1つの実施態様に係る大容量モジュールにおける第1電子回路及び第2電子回路の各基板の湾曲状況と第1電子回路上の高発熱素子と第2電子回路の基板との接合状況との関係を表す模式図である。図4において、(a)は、第1電子回路及び第2電子回路の何れも湾曲していない状態、(b)は第1電子回路のみ湾曲し、第2電子回路は湾曲していない状態、及び(c)は第1電子回路及び第2電子回路が両方とも湾曲している状態をそれぞれ表す。
【0155】
先ず、図4の(a)について説明する。この図では、上記のように、第1電子回路110及び第2電子回路120の何れも湾曲していないので、第1電子回路110上に配設されたパワー半導体素子113(高発熱素子)と第2電子回路120の基板121とが緊密に接合されている。従って、パワー半導体素子113(高発熱素子)と第2電子回路120とを短い距離で電気的に接続することができる。更に、パワー半導体素子113(高発熱素子)から発生する熱を、第1電子回路110の基板111を介してのみならず、第2電子回路120の基板121をも介して、より効率的に放熱することができる。
【0156】
しかしながら、前述のように大容量モジュール100の動作時には、パワー半導体素子113(高発熱素子)から発生する熱により、パワー半導体素子113(高発熱素子)を含む第1電子回路110の構成部材である基板111やヒートシンク115が熱膨張し、(b)に示すように第1電子回路110が湾曲してしまう。その結果、パワー半導体素子113(高発熱素子)と、その上に積層された第2電子回路120の基板121との接合・密着が不十分となる。かかる状況においては、パワー半導体素子113(高発熱素子)から発生する熱を、第2電子回路120の基板121をも介して、より効率的に放熱することが困難となる。この場合、パワー半導体素子113(高発熱素子)から発生する熱に起因して、大容量モジュール100の破損(例えば、モジュールを構成する回路素子の封止樹脂の劣化や周辺回路の樹脂基板の膨張又は変形等)の問題が生ずる虞がある。
【0157】
一方、(c)に示す本発明の1つの実施態様に係る大容量モジュール100においては、前述のように第2電子回路120の基板121のパワー半導体素子113(高発熱素子)側の部分領域である第1領域の平均熱膨張係数が、当該基板121の第1領域以外の部分領域である第2領域の平均熱膨張係数よりも大きい。これにより、(c)に示す本実施態様に係る大容量モジュール100においては、大容量モジュール100の動作に伴うパワー半導体素子113(高発熱素子)からの発熱に起因して第1電子回路110の構成部材(特にヒートシンク115)等が熱膨張を生じて第1電子回路110が湾曲しても、第2電子回路120の基板121も第1電子回路110の基板111と同じ方向に湾曲するため、上記(b)のように、第1電子回路110上に配設されたパワー半導体素子113(高発熱素子)と第2電子回路120の基板121との間の接合不良が抑制される。
【0158】
上記により、(c)に示す本発明の1つの実施態様に係る大容量モジュール100においては、第1電子回路上に配設されたパワー半導体素子113(高発熱素子)を介して第2電子回路120を第1電子回路110に積層することにより、大容量モジュール100の小型軽量化、低サージ化、及び低損失化を図りつつ、大容量モジュール100からの発熱による第1電子回路110の構成部材(特にヒートシンク115)等の熱膨張に伴う第1電子回路110の基板111の湾曲に起因するパワー半導体素子113(高発熱素子)と第2電子回路120の基板121との接合不良を抑制し、パワー半導体素子113(高発熱素子)から発生する熱をより効率良く外部に伝達して、大容量モジュール100の信頼性をより向上させることができる。
【0159】
5.本発明の実施態様に係る基板の湾曲(2)
次に、本発明のもう1つの実施態様に係る大容量モジュールにおける第2電子回路の基板の湾曲について、図5を参照しながら、以下に説明する。前述のように、図5は、本発明のもう1つの実施態様に係る大容量モジュールにおける温度変化に伴う第1電子回路及び第2電子回路の各基板の湾曲状況及び接合状況の変化を表す模式図である。図5において、(a)は、前述のように、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を、かかる形状のまま、大容量モジュールを構成する第2電子回路の基板として使用し、かかる第2電子回路を、第1電子回路上に配設された高発熱素子を介して、第1電子回路に積層した場合における、常温での第1電子回路及び第2電子回路の湾曲状態を表す。一方、(b)は、上記大容量モジュールの動作に伴う温度上昇に伴う、同モジュールにおける第1電子回路及び第2電子回路の湾曲状態の変化を表す。
【0160】
先ず、図5の(a)について説明する。この図は、上記のように、常温において第1表面側(図5における下側)が凹になるように湾曲している本実施態様に係る基板(第2電子回路の基板121)が、かかる形状のまま、大容量モジュール100を構成する第1電子回路110上に配設された高発熱素子(パワー半導体素子113)を介して、第1電子回路110上に積層されている状況を表している。
【0161】
尚、本実施態様においては、各回路基板の長手方向(図5における左右方向)における長さ(具体的には、図5における第2電子回路の基板121とケース114とが接続する左右の周縁部間の距離)は5cm、湾曲(反り)の量は同長手方向の中央部(具体的には、図5における第2電子回路の基板121とケース114とが接続する左右の周縁部間の中央部)において基板の法線方向(図5における上下方向)で100μmとした。但し、当該構成はあくまでも一例として示すものであり、前述のように、本実施態様に係る基板の湾曲の程度は、例えば、大容量モジュールの動作に伴う温度上昇に起因する第1電子回路の湾曲の程度、第1電子回路の基板の曲げ剛性、第2電子回路の基板(即ち、本実施態様に係る基板)の曲げ剛性等、本実施態様に係る基板を適用しようとする大容量モジュールの構成及び各種特性に応じて、適宜調整することができる。具体的には、本実施態様に係る基板の湾曲の程度は、例えば、各回路基板の長手方向における長さが5cmとした場合に、50μm乃至150μm程度とすることができるが、本実施態様に係る基板を適用しようとする大容量モジュールの構成及び各種特性によっては、本実施態様に係る基板の湾曲の程度は、この範囲に限定されるものではない。
【0162】
図5(a)に示すように、第1電子回路110の第2電子回路側(即ち、高発熱素子が配設されている側。図5における上側)の表面は、ケース114の周縁部によって構成される端部と比較して、パワー半導体素子113が配設されている中央部の方が高くなるように(即ち、第2電子回路側(図5における上側)に凸になるように)構成されている。その結果、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している基板121と第1電子回路110上に配設されたパワー半導体素子113とが良好に積層され、十分な密着・接合が確保されている。
【0163】
その後、これらの電子回路を含む大容量モジュール100を動作させると、図5(b)に示すように、パワー半導体素子113からの発熱により、これらの電子回路の温度が上昇する。その結果、パワー半導体素子113を含む第1電子回路110の構成部材(特にヒートシンク115)等の熱膨張により、第2電子回路側(図5における上側)が凹になるように第1電子回路110の基板111が湾曲する。即ち、この際、第1電子回路110の基板111は、端部(周縁部)よりも中央部の方が低くなるように(即ち、図5(b)に示す黒い矢印によって表されるように、第1電子回路110の中央部が第2電子回路から遠ざかる方向に)湾曲する。従って、このままでは、第2電子回路の基板121とパワー半導体素子113との密着・接合を十分に確保することが困難となる虞がある。
【0164】
しかしながら、本実施態様に係る第2電子回路の基板121においては、前述のように、第1電子回路110のパワー半導体素子113に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも平均熱膨張係数が大きい。これにより、第1電子回路110のパワー半導体素子113に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも大きく熱膨張を生ずる。その結果、図5(a)に示すように常温においては第1表面側が凹になるように湾曲していた本実施態様に係る基板121は、温度上昇に伴って、徐々に湾曲の程度が小さくなり、図5(b)に示すように、本実施態様においては平坦な状態になっている。即ち、この際、当該基板121においては、端部(周縁部)と中央部との間での第1電子回路との距離の差が徐々に小さくなり、常温時と比較して、中央部が第1電子回路110(パワー半導体素子113)に近付く方向に変形している。
【0165】
上記のように、本実施態様に係る大容量モジュールにおいては、大容量モジュール100の動作に伴う温度上昇に起因して、パワー半導体素子113を含む第1電子回路110の基板111が、第2電子回路側(図5における上側)が凹になるように湾曲しても、第2電子回路を構成する本実施態様に係る基板121が常温時に呈していた湾曲の程度(図5(a)参照)がより小さくなることにより、大容量モジュール100の温度上昇による第1電子回路110の基板111の湾曲に伴う基板中央部における第2電子回路の基板121との距離の増大が少なくとも部分的には相殺される。その結果、かかる場合においても、第2電子回路の基板と高発熱素子(パワー半導体素子113)との密着・接合を十分に確保することができる(図5(b)参照)。
【0166】
以上のように、本実施態様によれば、常温において第1表面側が凹になるように湾曲している本発明に係る基板を、かかる形状のまま大容量モジュールを構成する第2回路の基板として使用する場合においても、第1電子回路の高発熱素子に対向する第1表面側の方が、その反対側の面である第2表面側よりも、平均熱膨張係数が大きいという、本発明に係る基板の1つの特徴により、大容量モジュールの動作に伴う温度上昇に起因して、高発熱素子を含む第1電子回路の基板が、第2電子回路側が凹になるように湾曲しても、第2電子回路の基板と高発熱素子との密着・接合を十分に確保することができることが確認された。
【0167】
6.本発明の実施態様に係る基板の湾曲(3)
次に、本発明の更にもう1つの実施態様に係る大容量モジュールにおける第2電子回路の基板の湾曲について、図6を参照しながら、以下に説明する。前述のように、図6は、本発明の更にもう1つの実施態様に係る大容量モジュールの温度変化に伴う第1電子回路及び第2電子回路の各基板における応力の作用を説明する模式図である。
【0168】
先ず、(a)は、常温において第1表面側(図6における下側)が凹になるように湾曲している本実施態様に係る基板121と、第1電子回路110(湾曲無し)とを、積層する前の状態を表す。
【0169】
次に、(b)は、常温において第1表面側(図6における下側)が凹になるように湾曲している本実施態様に係る基板121を平坦な形状に変形させ、第1電子回路110上に配設された高発熱素子(パワー半導体素子113)を介して、第1電子回路110上に積層した状態を表す。この状態における本実施態様に係る基板121は、そもそも第1表面側(図6における下側)が凹になるように湾曲していたにもかかわらず、第1電子回路110の基板111と平行な平坦な形状に変形させられている。その結果、当該基板121においては、図6(b)に示す白抜きの矢印によって表されるように、元の湾曲した状態(図6(a)に示す状態)に戻ろうとする応力が作用している。
【0170】
更に、(c)は、上記(b)において説明したように積層された本発明に係る基板121を含む第2電子回路(図示せず)及び第1電子回路110を含む大容量モジュール100が動作して、パワー半導体素子113からの発熱に起因して、当該モジュール100の温度が上昇した状態を表す。この状態においては、上記発熱により、パワー半導体素子113を含む第1電子回路110の基板111は、例えばヒートシンク115の熱膨張により、第2電子回路側(図6における上側)が凹になるように湾曲しようとする。その結果、第1電子回路110の基板111においては、図6(c)に示す黒い矢印によって表されるように、パワー半導体素子113が配設されている第1電子回路110の中央部が第2電子回路から遠ざかるように湾曲しようとする。従って、このままの状態では、上記のように第2電子回路の基板121が元の湾曲した状態に戻ろうとする応力(白抜きの矢印によって表される)と相まって、第2電子回路の基板121とパワー半導体素子113との密着・接合を十分に確保することが困難となる虞がある。
【0171】
しかしながら、第2電子回路の基板121においては、前述のように、第1電子回路110のパワー半導体素子113に対向する第1表面側(図6における下側)の方が、その反対側の面である第2表面側(図6における上側)よりも平均熱膨張係数が大きい。これにより、第1電子回路110のパワー半導体素子113に対向する第1表面側(図6における下側)の方が、その反対側の面である第2表面側(図6における上側)よりも大きく熱膨張を生ずる。その結果、図6(c)に示す短い白抜きの矢印によって表すように、第2電子回路の基板121において元の湾曲した状態に戻ろうとする応力が弱められる。
【0172】
7.本発明の変形例に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成
前述のように、図7は、第2電子回路基板の内部にコンデンサが埋設された、本発明の実施態様の1つの変形例に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成を示す模式図である。図7に示すように、本変形例に係る大容量モジュール100においては、第2回路基板121の内部にスナバコンデンサ126が埋設されている。かかる構成により、前述のような従来技術に係る基板と比較して、パワー半導体素子113とスナバコンデンサ126とを電気的に接続する配線を更に短くすることができる。その結果、当該配線が有する等価的なインダクタンスが小さくなるので、パワー半導体素子113から発生するノイズに起因して誘起されるサージ電圧が減少する。その結果、かかるノイズに起因してパワー半導体素子113を含むパワー回路(第1電子回路110)や周辺回路(第2電子回路)が破壊されたり、かかるノイズが大容量モジュール100の外部に漏洩して、大容量モジュール100の周辺機器の動作に影響を与えたりする問題を、より一層軽減することができる。
【0173】
尚、例えば、スナバコンデンサ126に必要とされる容量を確保すること等を目的として、本変形例に係る基板(第2回路基板121)の内部に埋設されるコンデンサ126の容量を増大させる場合、前述のように、コンデンサ126を構成する導体(及び導体の間に挟まれる誘電体)の積層数を増大させることによって、コンデンサ126の容量を増大させることができる。しかしながら、この場合は、コンデンサ126を内蔵する第2回路基板121の厚みが増大することから、大容量モジュール100の小型軽量化の障害となる。
【0174】
そこで、本変形例に係る基板(第2回路基板121)においては、大容量モジュール100において、第2回路基板121の厚みを増大させること無く、スナバコンデンサ126に必要とされる容量を確保することを目的として、高い誘電率を有する誘電体を含んでなる絶縁層をコンデンサ126を構成する導体の間に形成し、当該絶縁層を使用してコンデンサ126を形成することができる。かかる構成によれば、第2回路基板121の内部に埋設されるコンデンサ126を構成する導体(及び導体の間に挟まれる誘電体)の積層数を増大させること無く(即ち、第2回路基板121の厚みを増大させること無く)、コンデンサ126に必要とされる容量を確保することが容易となる。
【0175】
8.本発明の変形例に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成
前述のように、図8は、第2電子回路基板内部の一部の領域にコンデンサが埋設された、本発明の実施態様のもう1つの変形例に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成を示す模式図である。図8に示すように、本変形例に係る大容量モジュール100においては、コンデンサ126を第2回路基板121の主面に平行な面の全体に及ぶように形成するのではなく、第2回路基板121の主面に平行な面内において部分的に配置している。かかる構成により、本変形例に係る大容量モジュール100においては、上述のように高い誘電率を有する誘電体を含んでなる絶縁層(即ち、低い熱伝導率を有する材料)をコンデンサ126を構成する導体の間に形成して、コンデンサ126の容量を増大させようとする場合であっても、第2回路基板121の主面に平行な面内において、当該絶縁層が配置されていない領域が残される。その結果、第2回路基板121を介して高発熱素子113から発生する熱を外部に放出するための熱伝導経路を確保することができる。
【0176】
9.本発明の変形例に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成
前述のように、図9は、第2電子回路基板内部の第1表面に最も近い層にコンデンサが埋設された、本発明の実施態様の更にもう1つの変形例に係る基板及び当該基板を含むモジュールの構成を示す模式図である。図9に示すように、本変形例に係る大容量モジュール100においては、第2回路基板121を構成する誘電体層のうち、第1回路基板111との積層時に高発熱素子113に対向する側の主面である第1表面に最も近い層に、コンデンサ126が埋設されている。かかる構成により、本変形例に係る大容量モジュール100においては、第2回路基板121の内部に埋設されるコンデンサ126と高発熱素子113とを電気的に接続する配線を短くすることができるので、コンデンサ126によるノイズ低減効果を十分に発揮させることができる。
【0177】
また、本変形例に係る第2回路基板121においては、本発明の他の実施態様に係る基板と同様に、高発熱素子113を含む第1電子回路110との電気的接続を達成するための第1表面電極122が第1表面に配設されている。即ち、本変形例に係る第2回路基板121においては、コンデンサ126が第1表面電極122と同じ層に埋設されている。このように、コンデンサ126が埋設される層には第1表面電極122を構成する導体もまた埋設されるので、前述のように高い誘電率を有する誘電体を含んでなる絶縁層をコンデンサ126を構成する導体の間に形成した場合であっても、パワー半導体素子等の高発熱素子113から発生する熱を外部に効率的に伝達する放熱経路として、第1表面電極122を構成する導体を利用することができる。その結果、本変形例に係る大容量モジュール100においても、放熱効率の低下を抑制することができる。
【0178】
以上のように、本実施態様によれば、大容量モジュール100の動作に伴う温度上昇により、パワー半導体素子113を含む第1電子回路110の基板111が、第2電子回路側(図6における上側)が凹になるように湾曲した際に、第2電子回路を構成する本実施態様に係る基板121が元の湾曲した状態に戻ろうとする応力が弱められる。その結果、パワー半導体素子113からの発熱に伴って第1電子回路110の基板111が湾曲した場合において、上記のように第2電子回路の基板121が元の湾曲した状態に戻ろうとする応力と相まって、第2電子回路の基板121とパワー半導体素子113とが互いに遠ざかろうとする力が過大に作用して、第2電子回路の基板121とパワー半導体素子113との密着・接合が不十分となることを回避することができる。
【0179】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成有する幾つかの実施態様について説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることができることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0180】
100…パワーモジュール、110…第1電子回路、111…第1電子回路の基板、112…接着用パッド、113…パワー半導体素子、114…ケース、115…ヒートシンク、120…第2電子回路、121…第2電子回路の基板、122…第1表面電極、123…内層電極、124…第2表面電極、125…制御回路素子、126…スナバコンデンサ、200…パワーモジュール、201…IGBT、202…ダイオード、203…セラミック基板、204…金属ベース、205…ゲート駆動IC、206…制御基板、207…アルミワイヤ、209…制御信号端子、210…パワー入出力端子、221…パワー回路、及び222…ドライブ回路。
図1
図2
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図7
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図9