特許第5784736号(P5784736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5784736加工性が改善されたアセチレンブラック半導体シールド材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784736
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】加工性が改善されたアセチレンブラック半導体シールド材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20150907BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150907BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08K3/04
   C08L23/08
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-530203(P2013-530203)
(86)(22)【出願日】2011年9月16日
(65)【公表番号】特表2013-540172(P2013-540172A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】US2011051987
(87)【国際公開番号】WO2012040058
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年8月7日
(31)【優先権主張番号】61/385,289
(32)【優先日】2010年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591123001
【氏名又は名称】ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ブリガンディ,ポール,ジェイ.
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0157028(US,A1)
【文献】 特開2002−020549(JP,A)
【文献】 特開平11−224533(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/087863(WO,A1)
【文献】 特表2007−509195(JP,A)
【文献】 特開平11−297121(JP,A)
【文献】 特開平05−345860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリオレフィンと、(ii)アセチレンブラックとを含む組成物であって、前記アセチレンブラックが、下記特性のうちの少なくとも1つを有し、
(a)ASTM D2414−09aに従って測定される、150ml/100g〜200ml/100gであるDBPオイル吸収、
(b)ASTM D1510−09bに従って測定される、85mg/g〜105mg/gであるヨウ素吸収、
(c)ASTM D1513−05elに従って測定される、0.2g/ml〜0.4g/mlである見掛け密度、
(d)X線回折から得られる、30Å未満である(002)に沿った結晶子径、および
(e)X線回折から得られる、2.42Å未満である(100)に沿った炭素−炭素結合の長さ、
前記アセチレンブラックが特性(d)および(e)を有する、組成物。
【請求項2】
前記アセチレンブラックが前記特性(a)、(b)、(d)および(e)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンポリマーが、組成物の30重量%〜99.6重量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンが、エチレン−ブテン、エチレン−オクテン、エチレンエチルアクリレート、または組合せの少なくとも1種から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物を含む半導体シールドを備えた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2010年9月22日出願の米国仮特許出願第61/385,289の優先権を主張する。
本発明は、公知の半導体シールドまたは絶縁体と比較して改善された物理的性質および加工性を示す、導電体、例えば、電力ケーブル用半導体シールドに関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルは通常、コア導電体と、上を覆う半導体シールドと、半導体シールドを覆う絶縁層と、最外絶縁シールドとを備える。導電体を覆うために使用する半導体シールドは従来、エチレンコポリマー樹脂ベースに様々なファーネスタイプ(furnace-type)のカーボンブラック分散させることによって形成される。市販の高性能半導体シールド組成物は通常、十分な導電率を実現するために必要となるカーボンブラック充填量が多いことから高い粘度を有する。しかしながら、高い粘度を有するカーボンブラックの充填量が多いと、結果として加工に乏しくなる。
【0003】
押出成形品の表面平滑度は、粒径がより大きいまたは表面積がより小さいカーボンブラックを使用することによって向上させることができる。しかしながら、カーボンブラック系材料の抵抗率は粒径と関係がある。カーボンブラック粒子がより大きくなると、結果として抵抗率がより高く、またはより悪くなる。したがって、表面平滑度を向上させるために粒径を増大させると、材料の抵抗率が望ましくないレベルにまで増大する。
【0004】
アセチレンブラックは、黒鉛と非晶質炭素との間の中間体類に属し、比表面積が大きく、一次粒子が互いに鎖状となった立体構造を有する。アセチレンブラックは、高純度の、例えば、組成物の重量に基づき無機不純物が典型的には1%未満、より典型的には0.1%未満であるカーボンブラックである。
【0005】
アセチレンブラックは半導体シールド用途で使用されているが、例えば、37重量パーセントを上回るほど充填量が多いと、押出ダイ工具を腐食および摩耗させる可能性のある酸が押出機内で形成されてしまい、結果として器具が劣化し、また経時的にケーブル寸法が変動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、半導体シールド材料の低減されたカーボンブラック濃度における加工性および導電性を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)アセチレンブラックとを含む組成物であって、前記アセチレンブラックが、下記特性、
(a)150ml/100g〜200ml/100gであるDBPオイル吸収、
(b)85mg/g〜105mg/gであるヨウ素吸収、
(c)0.2g/ml〜0.4g/mlである見掛け密度、
(d)30Å未満である(002)に沿った結晶子径、および
(e)2.42Å未満である(100)に沿った炭素−炭素結合の長さのうちの少なくとも1つを有する組成物である。
【0008】
一実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)特性(a)〜(e)のうちの少なくとも2つを有するアセチレンブラックとを含む組成物である。
【0009】
一実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)特性(a)〜(e)のうちの少なくとも3つを有するアセチレンブラックとを含む組成物である。
【0010】
一実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)特性(a)〜(e)のうちの少なくとも4つを有するアセチレンブラックとを含む組成物である。
【0011】
一実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)特性(a)〜(e)の5つすべてを有するアセチレンブラックとを含む組成物である。
【0012】
一実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)特性(d)を有するアセチレンブラックとを含む組成物である。
【0013】
一実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)特性(d)および(a)を有するアセチレンブラックとを含む組成物である。
【0014】
一実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)特性(d)、(a)および(b)を有するアセチレンブラックとを含む組成物である。
【0015】
一実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)特性(d)、(a)、(b)および(e)を有するアセチレンブラックとを含む組成物である。
【0016】
一実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)組成物の重量に基づき30〜40重量パーセントのアセチレンブラックとを含む組成物である。
【0017】
一実施形態において、本発明は、上記組成物を含むワイヤーまたはケーブルの半導体層である。
【0018】
一実施形態において、本発明は、上記半導体層を含むワイヤーまたはケーブルである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面を参照して本発明全体を説明するが、一部の実施形態を説明する目的のために過ぎず、本発明の範囲を限定する目的のためではない。図中、同じ部分は同じ番号を使用して示される。
【0020】
図1】アセチレンブラック1およびアセチレンブラック2についてのX線回折パターンである。
【0021】
図2】グラファイトの三次元単位格子である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
反対のことが述べられるか、文脈から暗示されるか、または当分野において慣例であるのでないかぎり、すべての部分およびパーセントは重量に基づき、すべての試験法は本開示の出願日現在のものである。米国特許の実務のために、参照したいずれの特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に示されるいずれの定義にも矛盾しない範囲で)、並びに当分野における一般知識に関して、それらの全体を参照により組み入れる(または、その対応する米国版を参照によりそのように組み入れる)。
【0023】
本開示において数値範囲は近似値であり、したがって別段の指示のないかぎり、範囲外の値を含むことがある。数値範囲は、任意の下方値と任意の上方値との間に少なくとも2単位の間隔があるならば、1単位の増分で、下方値および上方値を含むすべての値を含む。例として、組成特性、物理的特性、または他の特性、例えば分子量などが100から1000である場合、すべての個々の値、例えば100、101、102など、および部分範囲、例えば100から144、155から170、197から200などが明確に列挙されているものであることが意図される。1未満の値を含有するか、または1を超える分数(例えば、1.1、1.5など)を含有する範囲の場合、1単位は適宜、0.0001、0.001、0.01、または0.1とみなされる。10未満の1桁の数(例えば、1から5)を含有する範囲の場合、1単位は典型的には0.1とみなされる。これらは具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙される最小値と最大値との間の数値の可能なすべての組合せが本開示に明確に述べられているとみなされる。数値範囲は、中でも、組成物の様々な成分の量、プロセスのパラメータ等について、本開示内で提供される。
【0024】
用語「組成物」、「調合物」等は、2種またはそれ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。ケーブルシースまたはその他の製造品が製作される材料の混合またはブレンドに関連して、組成物には、該混合の成分すべて、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンコポリマー、金属水和物および他の任意の添加剤、例えば、硬化触媒、酸化防止剤、難燃剤等が含まれる。
【0025】
「ポリマー」は、同じであるかまたは異なる型であるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製される高分子化合物を意味する。したがって、総称ポリマーには、通常モノマー1種のみから調整されるポリマーを指す用語ホモポリマー、および以下で定義する用語「インターポリマー」が包含される。
【0026】
用語「ポリオレフィン」、「PO」等は、単純オレフィン(simple olefin)から誘導されるポリマーを意味する。ポリオレフィンの多くが熱可塑性であるが、本発明の目的のため、ゴム相を含むことができる。代表的なポリオレフィンとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレンおよびそれらの様々な共重合体が挙げられる。
【0027】
用語「エチレン系ポリマー」等は、重量パーセントで大半が重合エチレンモノマー(重合性単量体の総重量に基づく)であるポリマーであって、少なくとも1種の重合コモノマーを任意選択で含むことができるポリマーを意味する。
【0028】
「熱可塑性」材料とは、加熱した場合には繰り返し軟化させ流動性とすることができ、室温まで冷却した場合には硬化状態に戻すことができる直鎖状または分岐状ポリマーである。熱可塑性材料の弾性係数は通常、ASTM D638−72の方法を用いると10,000psi(68.95MPa)よりも大きい。加えて、熱可塑性物質は、軟化状態まで加熱した場合、任意の所定形状の成形品または押出成形品とすることができる。熱可塑性材料の一例が熱可塑性ポリウレタンである。
【0029】
用語「ケーブル」等は、保護絶縁体、ジャケットまたはシース内の少なくとも一本のワイヤーまたは光ファイバーを意味する。典型的には、ケーブルとは、通常共通の保護絶縁体、ジャケットまたはシース内で互いにまとまった2本またはそれ以上のワイヤーまたは光ファイバーである。ジャケット内の個々のワイヤーまたはファイバーはむき出しであっても、覆われていても、または絶縁されていてもよい。結合ケーブルは、電線も光ファイバーも共に含むことができる。ケーブル等は、低電圧、中電圧および高圧用途向けに設計することができる。典型的なケーブル設計が、米国特許第5,246,783号、第6,496,629号および第6,714,707号に記載されている。
【0030】
半導体シールド組成物
本発明は、半導体シールドまたは層を作製する際に使用する組成物を提供するが、この組成物は(i)ポリオレフィンと、(ii)特定の特性を有するアセチレンブラックとを含む。
【0031】
成分(i)は、ポリオレフィン、例えばエチレンと不飽和エステルとのコポリマーであるが、エステル含有量は、コポリマーの重量に基づき少なくとも約5重量パーセントである。エステル含有量は多くの場合、80重量パーセントと高い。エステル含有量の好ましい範囲は、約10〜40重量パーセントである。不飽和エステルの例がビニルエステル、並びにアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルである。これらエチレン/不飽和コポリマーは通常、従来の高圧プロセスによって製造される。
【0032】
ポリオレフィンの例が、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレンプロピレンコポリマー、プロピレンおよびジエンと共重合させたエチレン、炭素数3〜20のエチレンとα−オレフィンとのコポリマー、例えば、エチレン/オクタンコポリマー、エチレンとα−オレフィンとジエンとのターポリマー、エチレン−ブテン、エチレン−オクテン、エチレン酢酸ビニル、エチレンエチルアクリレートまたは熱可塑性ポリウレタンである。このポリオレフィンは、組成物の重量に基づき30〜99.6重量パーセントの量で存在することができる。
【0033】
カーボンブラックの導電率は一般に、それらカーボンブラックの形態構造と相関があり、形態構造は異なる実験パラメータによって、特に、フタル酸ジブチル(DBP)オイル吸収を用いて測定される空隙率によって特徴付けることができる。通常、DBP吸収値が高いカーボンブラックは高い導電率を有し、「高度に構造化されている」と言われる。
【0034】
本発明で使用するアセチレンブラックのDBP吸収値は150〜200ml/100g、典型的には160〜190ml/100g、より典型的には165〜185ml/100gである。このアセチレンブラックの見掛け密度の範囲は0.2〜0.4g/ml、典型的には0.25〜0.4g/ml、より典型的には0.28〜0.36g/mlである。このアセチレンブラックのヨウ素吸収の範囲は85〜105mg/g、典型的には90〜100mg/g、より典型的には92〜96mg/gである。
【0035】
図1は、DBP吸収値が150〜200ml/100gであるアセチレンブラックについてのX線回折パターンを示す。図2は、(100)および(002)方向を画定する黒鉛の代表的な単位格子図である。(002)は、黒鉛シートまたは層の積層方向を指す。(002)に沿った結晶子径は、X線回折パターンの第1ピークから得られる。(100)は、黒鉛単位格子における2つの炭素間の距離を指し、C−C結合の長さは第2のピークから得られる。本発明のアセチレンブラックの(002)に沿った結晶子径は30Å未満で、(100)に沿ったC−C結合の長さは2.42Å未満である。アセチレンブラックは、組成物の重量に基づき20〜50重量パーセントの量で存在することができる。
【0036】
組成物に導入することができる従来の添加剤が、酸化防止剤、結合剤、紫外線吸収剤、安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、核形成剤、補強充填剤またはポリマー添加剤、スリップ剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エキステンダー油、金属不活性化剤、電圧安定剤、難燃充填剤、架橋剤、増進剤、触媒および煙抑制剤に例示される。組成物の重量に基づき約0.1重量パーセント未満から約50重量パーセントを超える範囲の量で、添加剤および充填剤を添加することができる。
【0037】
酸化防止剤の例が、ヒンダードフェノール、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタン、ビス[(β−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)スルフィド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)およびチオジエチレンビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナマート、亜リン酸塩およびホスホニット、例えばトリス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)亜リン酸塩およびジtert−ブチルフェニル−ホスホニット、チオ化合物、例えばジラウリルチオジプロピオナート、ジミリスチルチオジプロピオナートおよびジステアリルチオジプロピオナート、種々のシロキサン、並びに様々のアミン、例えば重合−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンおよびアルキル化ジフェニルアミンである。組成物の重量に基づき約0.1〜約5重量パーセントの量で、酸化防止剤を添加することができる。
【0038】
加工助剤を、それらの公知の目的のために調合物に含めることができる。したがって、加工助剤は、均一なブレンドおよび粘度の低減を実現するためには必要ではないが、これらの特性をさらに高めるために本発明の組成物中に添加することができる。例えば、加工助剤として、ポリエチレングリコール、ステアリン酸金属塩、例えば、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸アルミニウムなど、ステアリン酸塩、ステアリン酸、ポリシロキサン、ステアラミド、エチレン−ビスオレインアミド、エチレン−ビスステアラアミド、これらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。加工助剤は、本発明の組成物に組み込んだ場合、一般に、ポリマー組成物の総重量に基づき、約0.1〜5重量パーセントの量で使用する。
【0039】
組成物はさらに、好ましくは組成物の重量に基づき0.5〜5重量パーセントの量で、架橋剤を含むことができる。好ましくは、フリーラジカル発生剤および架橋剤として有機過酸化物を使用する。有用な有機過酸化物架橋剤として、ジ(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−ヘキサンが挙げられるが、これらに限定されない。他の様々な公知の共架橋剤(coagent)および架橋剤を使用することもできる。例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,296,189号に、有機過酸化物架橋剤が開示されている。
【0040】
製造品
当業者にとって公知である標準的な手段によって、配合を行うことができる。配合機器の例が、インターナルバッチミキサ、例えば、BanburyまたはBollingインターナルミキサなどである。或いは、連続式1軸または2軸スクリュミキサを用いることができ、例えばFarrel連続式ミキサ、Werner and Pfleiderer2軸スクリュミキサ、またはBuss混練連続式押出機である。使用するミキサの型およびミキサの作動条件は、組成物の特性、例えば粘度、体積抵抗率、および押出表面の平滑性などに影響を及ぼすことになる。
【0041】
本発明の半導体シールド組成物を含有するケーブルは、様々な型の押出機、例えば1軸または2軸スクリュ型で作製することができる。典型的な押出機は、その上流端にホッパーを有し、下流端にダイを有する。ホッパーはバレルに材料を供給し、バレルはスクリュを含有する。下流端において、スクリュの末端とダイとの間に、スクリーンパックおよびブレーカプレートが存在することがある。押出機のスクリュ部分は、3つの部分、供給部、圧縮部、および計量部、並びに2つのゾーン、後部加熱ゾーンおよび前部加熱ゾーンに分割されていると考えられ、これらの部分およびゾーンは上流から下流に延びる。
【0042】
一実施形態においては、公知の量で、また公知の方法によって(例えば、米国特許第5246783号および第4144202号に記載されている機器および方法を用いて)、シースまたは絶縁体層として本発明の組成物をケーブルに塗布することができる。典型的には、ケーブル−コーティングダイが装備されている反応器−押出機で組成物を調製するが、組成物の成分を調合した後、ダイを通ってケーブルが引き出されるとケーブルを覆って組成物が押し出される。
【0043】
特定の実施形態
実施例組成物
図2は、(001)および(002)方向を画定する黒鉛の代表的な単位格子図である。表1は、アセチレンブラック1およびアセチレンブラック2についてのX線回折から得られる結晶子径およびC−C結合の長さを示す。
【0044】
【表1】
【0045】
アセチレンブラック2のDBP吸収値は165ml/100g、ヨウ素吸収(I2NO)は94mg/g、見掛け密度は0.316g/mlである。
【0046】
DBP吸収は、ASTM D2414−09a、Standard Test Method for Carbon Black−Oil Absorption Number(OAN)に準じて測定する。密度は、ASTM D1513−05e1、Standard Test Method for Carbon Black,Pelleted−Pour Densityに準じて測定する。ヨウ素吸着量は、ASTM D1510−09b、Standard Test Method for Carbon Black−Iodine Adsorption Numberに準じて測定する。
【0047】
表2は、比較例、実施例1および実施例2についての試料調合物を示す。これら実施例ではすべて、酸化防止剤、加工助剤および架橋剤を含む添加剤パッケージを使用する。
【0048】
【表2】
【0049】
比較例ではアセチレンブラック1を、実施例1および2ではアセチレンブラック2を使用する。図1は、アセチレンブラック1およびアセチレンブラック2についてのX線回折パターンを示す。コバルトシールド管線源、一次ビームモノクロメータおよびVantec−1線形位置敏感型検出器が装備されているBruker D−8 Advance θ−θX線回折計を、X線回折パターンを収集するために使用する。管は30kVおよび50mAで作動させ、試料にはコバルトK−α1線(波長=1.78897Å)が当てられる。X線回折データは、走査速度1.02°/分および検出器窓8°で、5°から100°(2θ)まで収集した。データ収集時は試料を回転させる。結果として得られるX線回折パターンの分析を、JADE X線パターン分析ソフトウエアV8.5を用いて行う。内部標準としてMoを用いてX線回折パターンを較正する。
【0050】
製造方法
Farrel Model 1D Banburyバッチミキサを用いて原料を混ぜ合わせる。重量38.1ポンドの各バッチを、165℃の内部温度に到達するまで合計5.0〜6.5分混合する。直径4’’の11L/D計量部を有するFarrel8’’×4’’溶融体供給1軸スクリュ押出機へ、ミキサから溶融バッチを送り出す。18×0.110’’のキャピラリーダイプレートが装備されている水ペレット化システムの下、押出機をGala Model MUP−6と結合させて、ペレット化合物を生成する。
【0051】
その後、以下の手順によって、得られた中間体、300グラムのバッチ中の熱可塑性化合物に過酸化物を添加する。配合(300g)からの中間体をガラス瓶に加え、65℃のオーブン内に少なくとも4時間設置する。ガラス瓶内のペレットに過酸化物を添加し、5分間圧延する。その後瓶をオーブン内に戻し一晩置く(約16時間)。
【0052】
次いで、ペレットをオーブンから取り出し、プレス加工して試験用に8’’×8’’×0.075’’のプラークにする。これらプラークをGrenerd油圧プレスで複動プレス加工する。120℃で3分間の300psiの低圧における第1の通過のために、120℃までプレスを予熱する。3分後、高圧設定で3分間モールドを急冷する。モールドアセンブリをプレスから取り外し、はさみを用いて4つに切断し、積み重ねた4つを再構築モールドアセンブリとする。120℃で3分間の300psiの低圧における第2の通過のために、120℃までプレスを予熱する。次いで圧力を、190℃で15分間2500psiの高圧まで上昇させる。その後、高圧設定で5分間モールドを急冷する。モールドアセンブリをプレスから取り外す。
【0053】
体積抵抗率、細管レオロジーおよび押出成形データ
ASTM D991に準じて架橋プラークについて体積抵抗試験を行う。実施例のデータが表3である。
【0054】
【表3】
【0055】
実施例1の体積抵抗率は、21日後比較例と同様の導電率を示す。実施例2は、比較例よりもはるかに高い導電率(低い抵抗率)を有する。したがって、アセチレンブラック2を38%有する試料は、同じ充填量で比較例よりも高い導電率を、また実施例1についての値と実施例2についての値との間の体積抵抗率を有するはずである。
【0056】
アセチレンブラック2のX線回折パターンにおけるよりブロードな第1ピークにより、アセチレンブラック1よりも剥離していることが示唆される。理論に束縛されるものではないが、より少ないカーボンブラック充填量におけるより高い導電率は、アセチレンブラック2のより剥離した黒鉛構造の結果であると考えられる。アセチレンブラック2のより短い結合の長さもまた、より高い導電率に寄与することができる。
【0057】
細管レオロジーにより、高せん断領域における押出成形条件下の溶融ポリマーの流動挙動がシミュレーションされる。Rosandキャピラリー押出レオメータで試験を行う。Rosandレオメータは、様々な高せん断速度で溶融粘度を測定するデュアルバレルデバイスである。レオメータの長さ対直径比は16:1である。一定温度でバレル内にある溶融試料への圧力を発生させるために、ピストンを使用する。所望のせん断速度を発生させるために、定速モードで試験を行う。典型的な最高溶融押出温度をシミュレートするために、135℃で試験を行う。試験結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
DBPが165ml/100gで(002)に沿った結晶子径が24Åであるアセチレンブラック2を組み込んだ実施例では、アセチレンブラック1を使用する比較例よりもせん断粘度が低い。
【0060】
圧力および出力を含めた押出特性は、L/Dが20:1で直径3/4インチの標準ポリエチレン計量スクリュを有するBrabender押出機で、ペレット化化合物を用いて行う。この試験では、60分間4つを寄せたダイを通して400メッシュのスクリーンパックを利用する。圧力は、各試料の開始時および終了時に記録する。スクリーンパックは、ΔP試験中試料毎に取り換える。温度プロファイルは、供給ゾーン1からゾーン3までそれぞれ、120℃、120℃および125℃である。
【0061】
実施例1および2のより低い粘度により、結果として実験試料について押出ヘッド圧力がはるかに低くなった。表5は、試料毎の時間に対する押出圧力を示す。実施例1および実施例2では、押出圧力が比較例よりもそれぞれ40%および30%低かった。改質アセチレンブラック2の下部構造が、押出圧力を低下させると予想される。しかしながら、特に40%を超えるアセチレンブラックを含有する実施例2おける、押出圧力の40%の低下は予想外である。
【0062】
【表5】
【0063】
表6に示す通り、アセチレンブラック2を含む実施例1および2の、様々なRPMにおける出力速度は、アセチレンブラック1を含む比較例よりも高い。したがって、アセチレンブラック2を組み込んだ組成物の出力速度は、アセチレンブラック1を用いる組成物よりも高い。
【0064】
【表6】
【0065】
DBP吸収値が165ml/100gで(002)に沿った結晶子径が24Å未満であるアセチレンブラックにより、半導体シールド材料の導電率および加工が大幅に改善される。DBP吸収値が165ml/100gであるアセチレンブラックの量がより少ないと、従来のシールド材料よりも少ないカーボンブラック充填量で同様の導電率が得られた。DBP吸収値が165ml/100gで結晶子径が24Åであるアセチレンブラックにより、DBP吸収値が174ml/100gで結晶子径が34Åであるアセチレンブラックの試料よりも少ないカーボンブラック充填量で予想外に適切な導電率が得られ、押出加工が改善される。
【0066】
好ましい実施形態についての先の説明を通して特定の詳細について本発明を説明したが、この詳細は主に説明のためである。以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの変形および変更を加えることができる。
[1]
(i)ポリオレフィンと、(ii)アセチレンブラックとを含む組成物であって、前記アセチレンブラックが、下記特性、
(a)150ml/100g〜200ml/100gであるDBPオイル吸収、
(b)85mg/g〜105mg/gであるヨウ素吸収、
(c)0.2g/ml〜0.4g/mlである見掛け密度、
(d)30Å未満である(002)に沿った結晶子径、および
(e)2.42Å未満である(100)に沿った炭素−炭素結合の長さ、
のうちの少なくとも1つを有する組成物。
[2]
前記アセチレンブラックが前記特性(a)〜(e)のうちの少なくとも2つを有する、上記[1]に記載の組成物。
[3]
前記アセチレンブラックが前記特性(a)〜(e)のうちの少なくとも3つを有する、上記[1]に記載の組成物。
[4]
前記アセチレンブラックが前記特性(a)〜(e)のうちの少なくとも4つを有する、上記[1]に記載の組成物。
[5]
前記アセチレンブラックが前記特性(a)〜(e)の5つすべてを有する、上記[1]に記載の組成物。
[6]
前記ポリオレフィンポリマーが、組成物の30wt%〜99.6wt%を構成する、上記[1]に記載の組成物。
[7]
前記アセチレンブラックが、組成物の30wt%〜45wt%を構成する、上記[1]に記載の組成物。
[8]
前記ポリオレフィンが熱可塑性ポリマーである、上記[1]に記載の組成物。
[9]
前記ポリオレフィンがエチレン系ポリマーである、上記[1]に記載の組成物。
[10]
前記ポリオレフィンが、エチレン−ブテン、エチレン−オクテン、エチレンエチルアクリレート、または組合せの少なくとも1種から選択される、上記[10]に記載の組成物。
[11]
前記ポリオレフィンがエチレンエチルアクリレートコポリマーである、上記[1]に記載の組成物。
[12]
加工助剤、酸化防止剤または架橋剤の少なくとも1種をさらに含む、上記[1]に記載の組成物。
[13]
組成物の重量に基づき、前記アセチレンブラックを30〜40重量パーセント含む、上記[1]に記載の組成物。
[14]
上記[1]に記載の前記半導体シールド組成物を含む絶縁層。
[15]
上記[1]に記載の前記半導体シールド組成物を含む半導体装置。

図1
図2