特許第5784761号(P5784761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784761
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】磁性物除去装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/02 20060101AFI20150907BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20150907BHJP
   B07C 5/344 20060101ALI20150907BHJP
   B07C 5/36 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   B03C1/02 Z
   B03C1/00 B
   B07C5/344
   B07C5/36
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-548(P2014-548)
(22)【出願日】2014年1月6日
(65)【公開番号】特開2015-128741(P2015-128741A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2014年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】307003168
【氏名又は名称】有限会社ダイカテック
(74)【代理人】
【識別番号】100101948
【弁理士】
【氏名又は名称】柳澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】永田 正輔
(72)【発明者】
【氏名】大西 賢治
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−024791(JP,A)
【文献】 特開昭62−074831(JP,A)
【文献】 特開昭62−181873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/02
B03C 1/00
B07C 5/344
B07C 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状材料中の磁性物を磁力により吸着する磁性物吸着手段と、該磁性物吸着手段を収容した収容手段と、前記収容手段の上部に設けられ空送されてきた前記粒状材料が供給される入口管部と、前記収容手段に設けられ前記粒状材料が排出される出口管部と、前記収容手段の下部に設けられた空気孔を有し、空送の際の前記入口管部からの空気の流れと前記空気孔から導入し前記収容手段の底部に滞留する粒状材料に当たって向きが変わった空気の流れにより前記収容手段内に乱流を生じさせて、該乱流により前記収容手段の底部に滞留する前記粒状材料を巻き上げて前記出口管部へ移動させることを特徴とする磁性物除去装置。
【請求項2】
前記収容手段は、前記入口管部へ向けて平面方向及び鉛直方向に絞られた断面形状部分を有していることを特徴とする請求項1に記載の磁性物除去装置。
【請求項3】
前記収容手段は、前記出口管部へ向けて平面方向に絞られた断面形状部分を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性物除去装置。
【請求項4】
前記収容手段は、前記出口管部の断面積よりも広い断面積を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の磁性物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状の材料を空気輸送する際に、磁力により材料中から磁性物を除去する磁性物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体あるいは粒状体などの材料を用いて商品を製造する際に、材料中に金属などの異物が混入している場合があり、この異物が製造装置の不具合の原因となったり、商品に混入して不良品となる場合がある。そのため、材料中から磁力により金属などの磁性物を除去する磁性物除去装置が用いられている。例えば、特許文献1などにも記載されているところである。
【0003】
図5は、従来の磁性物除去装置の一例の説明図である。図5(A)は立面図、図5(B)は平面図である。図中、21は吸着体、22は収容容器、23は入口管部、24は出口管部、25は粒状材料である。図5に示した従来の磁性物除去装置では、収容容器22の下部の対向する位置に入口管部23と出口管部24とが設けられている。また、収容容器22の内部には、磁力により磁性物を吸着する複数の吸着体21が収められている。
【0004】
粒状材料25は空気により、例えば入口管部23側から圧送され、あるいは出口管部24側から吸引されて搬送され、入口管部23から供給される。入口管部23と出口管部24の中心軸は一致しており、水平方向に延在している。これに対して、複数の吸着体21の中心軸は垂直方向であり、入口管部23から供給された粒状材料25が吸着体21の間を通過してゆく際に、粒状材料25に混入している磁性物は吸着体21の磁力により吸着体21の表面に吸着される。これにより粒状材料25から磁性物が除去される。磁性物が除去された粒状材料25は、出口管部24より排出され、次工程へ搬送されることになる。
【0005】
収容容器22の断面積は、入口管部23及び出口管部24の断面積よりも大きくなりようにしており、また、入口管部23及び出口管部24は収容容器22に近づくに従って断面積を大きくしている。これによって、収容容器22内においては粒状材料25の搬送時よりも空気の流速は遅くなり、吸着体21への粒状材料25の衝突による吸着体21のダメージを減らすことができ、また吸着体21の寿命を延ばすことができる。
【0006】
図6は、従来の磁性物除去装置における粒状材料の滞留状体の一例の説明図である。収容容器22における空気の流速が遅くなることは、吸着体21にとって良いことではあるが、その反面、収容容器22へと搬送されてきた粒状材料25は、収容容器22の底部に沈み、滞留してしまうという不具合を引き起こす。収容容器22の底部に粒状材料25が沈むと、搬送のための空気の流れは沈んだ粒状材料25の上側を流れ、沈んだ粒状材料25は搬送されずに滞留してしまう。
【0007】
粒状材料25が滞留した状態の一例を図6に示している。図6にも示しているように、入口管部23及び出口管部24が収容容器22の下部に接続されていても、収容容器22の底部に沈んだ粒状材料25は空気により飛ばされずに滞留し、搬送のための空気は滞留した粒状材料25の上部を流れることになる。粒状材料25を間欠搬送している場合には、搬送を停止した際に粒状材料25は底部に沈むことから、上述のような粒状材料25の滞留が生じやすい。
【0008】
滞留した粒状材料25が増加すると、その滞留した粒状材料25が次第に吸着体21の下部を覆ってしまう。そのため、吸着体21が磁性物を吸着できる部分が減少し、磁性物を除去する性能が低下して本来の性能を発揮できなくなってしまうという問題があった。
【0009】
この問題に対して、例えば粒状材料25を搬送する際の空気の流速を速めて収容容器22内の流速の低下を抑えることが考えられるが、これは吸着体21へのダメージが増加するばかりでなく、粒状材料25を搬送するための管路の曲がり部で粒状材料25が管路の壁に衝突することによる摩耗が激しくなって、異物の発生や破損につながるリスクが増大することになる。
【0010】
例えば特許文献2には、収容容器の底面から圧縮空気を送通し、材料の底部への滞留を防ごうとする構成が記載されている。この構成の場合、空気中に舞い上がるような粉体の材料については、底部に沈んできても空気で吹き上げられ、滞留が防止される。しかし、粉体よりも大きく、重い粒状材料の場合には、底部からの空気で吹き上げることは困難であり、吹き上げるほどの空気圧を供給すると出口管部以降の管路での流速が上昇して不具合を生じかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−138045号公報
【特許文献2】特許第3540839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、収容容器内の粒状材料の残留を低減し、粒状材料に含まれる磁性物を効率よく除去することができる磁性物除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、粒状材料中の磁性物を磁力により吸着する磁性物吸着手段と、該磁性物吸着手段を収容した収容手段と、前記収容手段の上部に設けられ空送されてきた前記粒状材料が供給される入口管部と、前記収容手段に設けられ前記粒状材料が排出される出口管部と、前記収容手段の下部に設けられた空気孔を有し、空送の際の前記入口管部からの空気の流れと前記空気孔から導入し前記収容手段の底部に滞留する粒状材料に当たって向きが変わった空気の流れにより前記収容手段内に乱流を生じさせて、該乱流により前記収容手段の底部に滞留する前記粒状材料を巻き上げて前記出口管部へ移動させることを特徴とする磁性物除去装置である。
【0014】
収容手段は、前記入口管部へ向けて平面方向及び鉛直方向に絞られた断面形状部分を有していてもよい。また、収容手段は、前記出口管部へ向けて平面方向に絞られた断面形状部分を有していてもよい。さらに、収容手段は、前記出口管部の断面積よりも広い断面積を有しているとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粒状材料が入口管部から供給されて出口管部へと空送される間に磁性物吸着手段により磁性物が吸着除去されるが、空送の際の上部からの気流と空気孔から流入した下部からの空気によって内部に乱流(渦流)が発生し、この乱流により収容手段の底部に滞留する粒状材料が巻き上げられ、出口管部へと移動する。これによって、収容容器内の粒状材料の残留を低減することができる。また、磁性物吸着手段が収容手段内に滞留した粒状材料により埋もれることはなく、乱流によって粒状材料が磁性物吸着手段に接触する機会も増加し、粒状材料に含まれる磁性物を効率よく除去することができるという効果がある。
【0016】
また、収容手段が入口管部へ向けて平面方向及び鉛直方向に絞られた断面形状部分を有することにより、供給された粒状材料が収容手段内で広がり、粒状材料が磁性物吸着手段に広く当たって効率よく磁性物を除去することができる。
【0017】
さらに、収容手段が出口管部へ向けて平面方向に絞られた断面形状部分を有することにより、収容手段から出口管部へと向かう空気の流速をアップさせ、収容手段内の粒状材料を効率よく出口管部へ送ることができる。
【0018】
さらにまた、収容手段が出口管部の断面積よりも広い断面積を有することによって、収容手段内での空気の流速を低減して磁性物吸着手段へのダメージを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の一形態を示す構成図である。
図2】本発明の実施の一形態における動作の一例の説明図である。
図3】本発明の実施の一形態の変形例を示す構成図である。
図4】本発明の実施の一形態の別の変形例を示す構成図である。
図5】従来の磁性物除去装置の一例の説明図である。
図6】従来の磁性物除去装置における粒状材料の滞留状体の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の一形態を示す構成図である。図1(A)は立面図、図1(B)は平面図、図1(C)は図1(A)におけるa−a’断面図である。図中、1は吸着体、2は収容容器、3は入口管部、4は出口管部、5は空気孔、6は入口側絞り部、7は出口側絞り部である。
【0021】
収容容器2は、複数の吸着体1を収容している。この吸着体1としては、複数の永久磁石を、同極を対向させて空隙を持たせて筒状体に配置したものを用いるとよい。あるいは、電磁石などであってもよい。吸着体1は、この磁力により、収容容器2に供給される粒状材料の中から磁性物を吸着し、除去することができる。この例では7本の吸着体1を設けており、また図1(C)では断面に設けられている3本の吸着体1について示している。もちろん、吸着体1の形状や本数、配置などはこの例に限られるものではなく、設計時に決められる。なお、吸着体1は収容容器2から取り外して清掃や交換が可能なように構成されているとよい。
【0022】
収容容器2には、粒状材料を収容容器2内に供給する入口管部3と、供給された粒状材料を外部へ排出する出口管部4が接続されている。入口管部3は収容容器2の上部に接続されている。この入口管部3と収容容器2の接続部分には、入口管部3へ向けて平面方向及び鉛直方向に絞られた断面形状を有する入口側絞り部6が設けられているとよい。また出口管部4は、この例では収容容器2の下部に接続されている。この出口管部4と収容容器2の接続部分には、出口管部4へ向けて平面方向に絞られた断面形状を有する出口側絞り部7が設けられているとよい。収容容器2は、出口管部4の断面積よりも広い断面積を有しているとよい。
【0023】
さらに、収容容器2の下部には、平面的に出口管部4と対向する位置に空気孔5が設けられており、粒状材料を空気により搬送する際には、この空気孔5から収容容器2内へ空気が導入される。空気孔5の大きさは、収容容器2に導入する空気の量などを勘案して設計時に決めればよい。粒状材料よりも径が大きい場合には粒状材料が漏れ出さないようにフィルタを設けておくとよい。また、このフィルタとは別に、あるいは兼用して、外部からの埃などの異物の混入を防ぐため、フィルタを設けておくとよい。また、自然吸気のほか、圧縮空気を供給してもよい。その場合には、圧力調整弁または空気調整弁などで導入する空気量を調整すればよい。
【0024】
図2は、本発明の実施の一形態における動作の一例の説明図である。図中、8は粒状材料である。ここでは、粒状材料として樹脂ペレットであるものとし、空送するものとして説明する。樹脂ペレットは、一般的には3〜5mm程度の粒状である。もちろん、本発明はこのような粒状材料に限られないことは言うまでもない。
【0025】
樹脂ペレットのような粒状材料では、その自重によって、粉体の材料などのように空気中に浮遊したり飛散したりせず、空送中は管路や収容容器2の底部を這うように流れる。また、その重量から空気の流速を速める必要がある。そのため、例えば図5に示す従来の磁性物除去装置では、吸着体21の一部しか磁性物の除去に使用されなかった。また、流速が速いことから十分な磁性物の除去効果が得られず、さらには吸着体21の損傷も激しかった。さらに、間欠的に空送する場合には、移動を停止した際に樹脂ペレットなどの粒状材料が底部に滞留するが、その状態から空送を開始する際に大きな負荷がかかる。この空送開始時の負荷に対応するため、空気の流速を速めすぎると、吸着体21だけでなく、配管の屈曲部分においても粒状材料の衝突及び摩擦抵抗が発生し、配管の損傷による異物の発生が生じていた。また、空送を開始しても、空送のための気流は滞留した樹脂ペレットの上部を単調に流れるだけであり、滞留した樹脂ペレットを出口管部4へ移動させるには至らなかった。
【0026】
図1に示した本発明の実施の一形態における構成では、樹脂ペレットなどの粒状材料8が入口管部3から収容容器2へ供給される。ここでは、出口管部4側からの吸引により間欠的に空送するものとする。入口管部3から供給された粒状材料8は、収容容器2内を移動し、出口管部4へと進む。その途中で、粒状材料8は吸着体1に衝突し、その際に磁性物は磁力によって吸着体1の表面に吸着され、除去される。従って、吸着体1により磁性物が除去された粒状材料8が出口管部4へ送られることになる。
【0027】
入口管部3は収容容器2の上部に接続されており、入口管部3から空送されてきた粒状材料8は、その自重及び空気の流れにより収容容器2の上から下へ落下しながら、収容容器2の下部に設けられている出口管部4へ向かうことになる。その途中で粒状材料8は吸着体1に衝突することになるが、粒状材料8の搬送経路としては収容容器2内を斜めに飛翔することになり、粒状材料8が吸着体1に接触する機会を増やしている。また、粒状材料8のバラツキにより収容容器2内の移動経路もばらつき、収容容器2内に設けられている吸着体1の上部から下部まで、全体的に粒状材料8が衝突することになる。これにより、吸着体1の全体を利用して、供給される粒状材料から磁性物を吸着除去することができる。
【0028】
また、収容容器2の入口管部3との接続部分には、入口側絞り部6が設けられている。この入口側絞り部6によって、入口管部3から空送されてきた粒状材料8は、さらにばらけることになる。この入口側絞り部6によっても、粒状材料8を吸着体1の全体に広く衝突させることができ、粒状材料8に含まれる磁性物を効率よく吸着、除去することができる。
【0029】
収容容器2は、入口側絞り部6で入口管部3からの断面積を広げており、これによって、入口管部3における空気の流速を徐々に遅くしている。これによっても、粒状材料8はばらけることになるが、さらに、吸着体1へ粒状材料8が衝突する力を弱めている。上述のように、間欠的に空送する場合、停止状態から空送を開始する際の負荷に対抗するため、ある程度の流速を確保しなければならない。入口側絞り部6により断面積を徐々に広げることによって、収容容器2内で空気の流速が遅くなる。従って、吸着体1に粒状材料8が衝突する力が弱くなり、出口管部4の空気の流速が速くても吸着体1の摩耗を軽減することができ、吸着体1の寿命を延ばすことができる。
【0030】
また収容容器2の出口管部4との接続部分には、出口管部4へ向けて平面方向に絞られた断面形状を有する出口側絞り部7が設けられている。この出口側絞り部7によって、収容容器2内で遅くなった空気の流速を、出口管部4における流速へと、次第に速めている。これにより、収容容器2内の粒状材料8を、効率よく出口管部4へ送ることができる。樹脂ペレットなどの粒状材料8は、空送中は管路や収容容器2の底部を這うように流れる。従って、出口管部4を収容容器2の下部に設けるとよい。また、出口管部4を収容容器2の下部に設ければ、粒状材料8が収容容器2の底部に滞留した粒状材料8を出口管部4へ送りやすくなり、さらに効率よく粒状材料8を出口管部4へ送ることができる。
【0031】
上述したように、収容容器2内は空気の流速が遅くなるようにしている。これにより吸着体1へのダメージは減少するが、粒状材料8は収容容器2の底部に滞留しやすくなっている。さらに、間欠的に空送する場合には、搬送を停止している間は粒状材料8は収容容器2の底部に滞留しており、空送を開始しても滞留したまま動かない粒状材料8も発生する。このような粒状材料8の滞留に対して、図1に示した本発明の実施の一形態では、収容容器2の下部に、平面的に出口管部4と対向する位置に空気孔5を設けて対応している。
【0032】
すなわち、出口管部4側からの吸引に対して、図2(A)において破線で示すように、入口管部3から空気が収容容器2内に流入するとともに、空気孔5からも空気が流入する。空気孔5が収容容器2の下部に設けられていることから、空気孔5から収容容器2内に流入した空気は、収容容器2の底部に滞留する粒状材料8に当たって、粒状材料8を出口管部4へと押すとともに、その流れる方向を上向きに変える。一方、入口管部3から流入した空気は、図1(C)にも示すように吸着体1が壁となり、一部はその間をすり抜けて流れるものの、一部は吸着体1に当たって気流は乱れる。入口管部3から流入した気流だけであれば、乱れた気流は吸着体1をすり抜ける気流によって押し流されて定常的な出口管部4へ向かう気流となる。しかし、吸着体1によって乱れた気流に、空気孔5から流入して粒状材料8に当たって上向きとなった空気の流れが加わると、収容容器2内に渦状の乱流が発生する。通常の空送で用いている空気の流れでは舞い上がらない粒状材料8でも、この乱流によって巻き上げられ、出口管部4へと向かう一部の気流により出口管部4へと移動することになる。従って、収容容器2の底部に滞留していた粒状材料8は巻き上げられて出力管部4へと向かい、出力管部4から排出されることになる。
【0033】
なお、この乱流は粒状材料8が滞留していなくても、入口管部3から流入して吸着体1により流れが変わった空気と空気孔5から流入した空気とにより乱流は発生し、入口管部3から送られてきた粒状材料8は攪拌されて吸着体1に接する機会が増加し、より良好に粒状材料から磁性物を吸着除去することができる。また、吸着体1が滞留した粒状材料8で埋もれることもなくなり、吸着体1の全体を用いて効率よく磁性物を除去することができる。
【0034】
この例では、出力管部4と対向した位置に空気孔5を設けている。これによって、乱流によって舞い上がった粒状材料8も空気孔5及び入口管部3から出口管部4へと向かう方向に効率よく移動させることができる。従って、図2(B)に示すように、空送中は収容容器2の底部に粒状材料8が滞留する部分が生じることはなく、良好に粒状材料8を空送することができる。
【0035】
なお、図1に示した本発明の実施の一形態の磁性物除去装置は、入口管部3側を多少上げて、あるいは出口管部4側を多少下げて、磁性物除去装置を傾斜させて取り付けるとよい。これにより、より高い位置から粒状材料を投入することができ、また、より低い位置で粒状材料を出口管部4へ送ることができる。従って、粒状材料の滞留を低減できるとともに、吸着体1への粒状材料の接触を促進することができる。さらに、粒状材料は低い位置に存在する出口管部4へと移動することから、乱流を起こさせる空気孔5からの空気量を小さくすることが可能になり、出口管部4から吸引する空気量を低減して管路に対するダメージを低減することができる。
【0036】
また、従来の磁性物除去装置では、例えば投入ホッパーやストックタンク、混練タンク内に設けている例もあるが、吸着体への磁性物の吸着を確認したり、吸着体を清掃したりする際にはタンクを開閉する作業が生じ、また高所作業となり、作業性が悪い。本発明の実施の一形態で示した構成では、粒状材料を水平方向に搬送する途中に磁性物除去装置を設置することができる。水平方向の搬送の場合、管路は低い位置、例えば床面付近に設置することができる。従って、吸着体への磁性物の吸着の確認作業や、吸着体の清掃作業を行う際の作業性を向上させることができる。
【0037】
図3は、本発明の実施の一形態の変形例を示す構成図である。この変形例では、図1に示した構成のうち入口側絞り部6及び出口側絞り部7を設けない構成を示している。この構成では、入口側絞り部6によって粒状材料8をばらけさせ、また空気の流速を徐々に低減する機能や、出口側絞り部7によって粒状材料8を効率よく出口管部4へと送る機能は得られないが、空気孔5から導入する空気によって収容容器2の底部に滞留している粒状材料8を移動させる機能はそのまま得ることができる。
【0038】
もちろん、入口側絞り部6を設けるが出口側絞り部7は設けない構成や、入口側絞り部6は設けないが出口側絞り部7を設ける構成であってもよい。
【0039】
図4は、本発明の実施の一形態の別の変形例を示す構成図である。この変形例では、吸着体1を水平方向に設けた例を示している。このような構成でも、収容容器2の上部に接続された入口管部3から粒状材料8が供給され、供給された粒状材料8が吸着体1に接触する際に磁力により磁性物が吸着除去されて、出口管部4へと排出されることになる。
【0040】
この構成では、収容容器2の出口管部4と平面的に対向する位置である、入口管部3の下部に粒状材料8が滞留しやすい。そのため、この位置の下部に空気孔5を設けている。出口管部4側から吸引すると、入口管部3から空気が収容容器2内に流入するとともに、空気孔5からも空気が流入する。この場合にも、入口管部3から流入した空気と、空気孔5から流入した空気とによって渦状の乱流が発生する。空気孔5がない場合には、滞留した粒状材料8の表面を空送のための空気が流れるだけで、滞留した粒状材料8は移動しない。この構成では、空気孔5から流入した空気により収容容器2内に乱流が発生し、この乱流により、収容容器2の底部に滞留する粒状材料8が舞い上がって出口管部5へと移動し、粒状材料8を出力管部4から排出させることができる。これによって、空送中は収容容器2の底部に粒状材料8が滞留しなくなり、吸着体1が滞留した粒状材料8で埋もれることもなくなり、吸着体1の全体を用いて効率よく磁性物を除去することができる。
【0041】
以上、本発明の磁性物除去装置の実施の一形態として最良の形態を示すとともに、その変形例をいくつか示した。しかし、上述の図示した構成は単なる一例であって、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…吸着体、2…収容容器、3…入口管部、4…出口管部、5…空気孔、6…入口側絞り部、7…出口側絞り部、8…粒状材料、21…吸着体、22…収容容器、23…入口管部、24…出口管部、25…粒状材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6