(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源と、該光源が配置される端面である入光面および該入光面の長手方向の二端辺のうちの一方に連接する面に含まれ、該入光面から入射した光を出射させる出射面を有する導光板と、を備えた面状照明装置において、
前記導光板は、傾斜面を含み前記入光面側から前記出射面側に向かうほど肉厚が薄くなるように設けられた入光楔部を有しており、前記傾斜面は、変曲点を有して前記入光面側が凸状かつ前記出射面側が凹状の側面視S字状に形成され、前記変曲点の前記入光面からの距離が、前記入光面の厚さよりも大きいことを特徴とする面状照明装置。
光源と、該光源が配置される端面である入光面および該入光面の長手方向の二端辺のうちの一方に連接する面に含まれ、該入光面から入射した光を出射させる出射面を有する導光板と、を備えた面状照明装置において、
前記導光板は、傾斜面を含み前記入光面側から前記出射面側に向かうほど肉厚が薄くなるように設けられた入光楔部を有しており、前記傾斜面は、変曲点を有して前記入光面側が凸状かつ前記出射面側が凹状の側面視S字状に形成され、前記変曲点の位置が、前記入光楔部の中間の位置よりも前記出射面寄りにあることを特徴とする面状照明装置。
光源と、該光源が配置される端面である入光面および該入光面の長手方向の二端辺のうちの一方に連接する面に含まれ、該入光面から入射した光を出射させる出射面を有する導光板と、を備えた面状照明装置において、前記導光板は、傾斜面を含み前記入光面側から前記出射面側に向かうほど肉厚が薄くなるように設けられた入光楔部を有しており、
前記傾斜面は、変曲点を有して前記入光面側が凸状かつ前記出射面側が凹状の側面視S字状に形成され、前記変曲点よりも前記入光面側の凸部の側面視での面積が前記変曲点よりも前記出射面側の凹部の側面視での面積よりも大きいことを特徴とする面状照明装置。
前記変曲点の位置が、前記入光面から、前記入光面の厚さの1.1倍以上1.7倍以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の面状照明装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る面状照明装置を図面を参照して説明する。なお、添付の各図面において、各構成要素の形状、寸法等は、本発明の理解を容易にするため適宜誇張して示されている。また、添付の各図面において、二つの構成要素が空間を介して隣接するように図示されている場合、その空間は、本発明の理解を容易にするために挿入されるか、または誇張して示されたものであり、本発明の構成は、隣接する構成要素間の空間の有無、または、存在する場合には、その寸法によるものではない。
【0031】
本発明の第1の実施形態である面状照明装置10は、
図1(a)に示すように、光源としてのLED11と、LED11が発光した光を面状に出射させるための導光板20とを備えている。導光板20は、透明材料(例えば、ポリカーボネート樹脂)を用いて上面視矩形状に形成されており、その外表面に、LED11が配置される端面である入光面21を有している。また、導光板20において、入光面21の長手方向(
図1(a)において、紙面に直交する方向)の二端辺21c、21dのうちの一方の端辺21cに連接する面には、出射面22と、後述する傾斜面25とが含まれている。以下、導光板20の出射面22を含む方の面を表面23、表面23に対向する面を裏面24ともいう。
【0032】
ここで、本発明において、入光面21から、入光面21と対向する端面(図示は省略する)に向かう方向(
図1(a)の紙面右方向)を「前方」(その反対方向を「後方」)という。このように定義された「前方」は、入光面21から導光板20に入光した光が、全体として、導光板20内を導光される方向でもあり、この意味で、上記定義による前後方向を、「導光方向」ともいう。
また、裏面24が表面23を向く方向(
図1(a)の紙面上方向)を「上方」(その反対方向を「下方」)と定義し、この定義による上下方向を、「厚さ方向」ともいう。さらに、前後方向及び上下方向と直交する方向(
図1(a)の紙面に直交する方向)を(必要な場合、前方に向かって「右方」及び「左方」を定義して)左右方向ともいう。左右方向は、言い換えれば、入光面21の長手方向である。また、特に明示して断らない限り、「長さ」、「厚さ(厚み)」、及び「幅」は、それぞれ前後方向、上下方向、及び左右方向の寸法をいう。
【0033】
導光板20は、入光面21側から前方に向かって、傾斜面25を含む入光楔部31と、出射面22を含む出射部32とを備えている。そして、導光板20の裏面24は、入光楔部31と出射部32とを通じて一つの平坦面となるように形成され、一方、入光楔部31の傾斜面25は、入光面21側から前方に向かって下方に傾斜するように形成されており、これによって、入光楔部31は、入光面21側から出射面22側に向かうほど肉厚が薄くなるように設けられている。出射面22は、入光面21に略直交する平坦面として、傾斜面25の前方の端辺26と連接して形成され、裏面24は、出射面22と略平行に対向するものである。
【0034】
次に、
図1(a)とともに
図1(b)を参照し、面状照明装置10の主要な特徴である入光楔部31の傾斜面25の構成について詳述する。ここで、
図1(b)は、
図1(a)に示す面状照明装置10の導光板20の入光楔部31の特徴を、説明のため模式的に示した側面図である。
【0035】
尚、面状照明装置10では、入光楔部31の、入光面21及び出射面22に直交する断面(
図1(a)において紙面に平行な切断面による断面)の断面形状は、入光面21の長手方向の任意の位置で、
図1(a)に示す側面形状と同一である。したがって、以下の説明では、このような任意の断面に共通の特徴を、
図1(a)、(b)に示す側面図に基づいて説明する。
【0036】
また、本発明において、入光楔部31の傾斜面25上の任意の位置(例えば、位置P)における傾斜面25の傾斜角θpは、位置Pを通って入光面21及び出射面22に直交する断面(
図1(a)において紙面に平行な切断面による断面。以下、単に側断面ともいう。)内において、位置Pから入光面21側に出射面22と平行に延びる半直線nと、位置Pから入光面21側に傾斜面25に接して延びる半直線mとがなす角(言い換えれば、傾斜面25の位置Pにおける、位置Pを通る側断面内での上り勾配に相当する角度)である。
【0037】
導光板20では、傾斜面25は、全体として一つの連続曲面として構成されており、この連続曲面は、入光面21側から前方に向かうほど裏面24側に近づきながらも、入光面21側が凸状の曲面に形成され、出射面22側が凹状の曲面に形成されて、全体として側面視S字状に形成されている。傾斜面25を側面視したときのS字状の形状において、入光面21側の凸状の部分25dと、出射面22側の凹状の部分25eとの境界は、変曲点Aとなっている(
図1(b)参照)。
【0038】
そして、面状照明装置10では、
図1(b)に示す変曲点Aの入光面21からの導光方向の距離(以下、単に距離ともいう)Lについて、この距離Lが入光面21の厚さT1よりも大きくなるように設定されている。さらに、面状照明装置10において、変曲点Aの位置(入光面21からの距離)は、入光面21の厚さT1の1.1倍以上かつ1.7倍以下の範囲にあるものである。また、面状照明装置10では、変曲点Aの位置が、入光楔部31の導光方向の中間の位置よりも出射面22寄りにあるように設定されており、言い換えれば、変曲点Aの入光面21からの距離Lは、入光楔部31の長さKの半分(K/2)よりも大きい。
【0039】
さらに、面状照明装置10において、傾斜面25を、後述する漏れ光危険度に応じた適切な側面視S字状の曲面で構成した場合、変曲点Aの位置を入光楔部31の導光方向の中間の位置よりも出射面22寄りに設定することは、傾斜面25の形状を、変曲点Aよりも入光面21側の凸部の側面視での面積が、変曲点Aよりも出射面22側の凹部の側面視での面積よりも大きくなるように構成することに相当する。
【0040】
ここで、凸部の側面視での面積とは、傾斜面25の側断面において、変曲点Aと傾斜面25の入光面21側の終端(この場合、入光面21の端辺21c)を結ぶ線分q1と、傾斜面25の凸状の部分25dとで囲まれる弓形領域Bの面積をいい、凹部の側面視での面積とは、傾斜面25の側断面において、変曲点Aと傾斜面25の出射面22側の終端(この場合、傾斜面25の前方の端辺26)を結ぶ線分q2と、傾斜面25の凹状の部分25cとで囲まれる弓形領域Cの面積をいう。したがって、凸部は、入光楔部31の一部であり、凹部は、傾斜面25の上方の空間の一部である。
以下、凸部の側面視での面積(弓形領域Bの面積)及び凹部の側面視での面積(弓形領域Cの面積)を、それぞれ凸部Bの面積及び凹部Cの面積ともいう。
【0041】
尚、
図1(b)では、2つの線分q1、q2が、一直線上に連なるように図示されているが、本発明に係る傾斜面25の形状は、このような形状に限定されるものではなく、変曲点Aが、傾斜面25の入光面21側の終端と出射面22側の終端とを結ぶ線分上にない(この線分よりも、上方または下方に位置する)形状を含むものである。
【0042】
また、面状照明装置10では、傾斜面25が連続曲面として構成されていることにより、傾斜面25の傾斜角は、任意の側断面内において、前後方向に沿って連続して空間的に変動する。この際、傾斜面25は、変曲点Aを有して入光面21側(後方)が凸状かつ出射面22側(前方)が凹状の側面視S字状に形成されていることにより、傾斜面25の傾斜角について、次のような特徴を備えるものである。
【0043】
すなわち、傾斜面25は、入光面21側から順に、第1の傾斜面部25a(
図1(a)に「I」で示す範囲)と、第2の傾斜面部25b(
図1(a)に「II」で示す範囲)と、第3の傾斜面部25c(
図1(a)に「III」で示す範囲)とに分けられる。具体的には、第2の傾斜面部25bは、傾斜面25のうち、変曲点Aを含んで、その前後方向にわたる範囲に相当し、凸状の部分25dのうちの変曲点Aからその後方に延びる一部と、凹状の部分25eのうちの変曲点Aからその前方に延びる一部とを含む。第1の傾斜面部25aは、傾斜面25の凸状の部分25dのうちの、第2の傾斜面部25bよりも後方の残りの部分に相当し、第3の傾斜面部25bは、傾斜面25の凹状の部分25eのうちの、第2の傾斜面部25bよりも前方の残りの部分に相当する。
【0044】
図2には、このように分けられた第1、第2、第3の傾斜面部25a、25b、25cのぞれぞれの平均傾斜角θ1、θ2、θ3、及び、傾斜面25の入光楔部31の全長にわたる平均傾斜角θの一例が、それぞれの平均傾斜角θ1、θ2、θ3、θを傾斜角とする仮想平面35a、35b、35c、36とともに、模式的に示されている。
図2において、仮想平面36は、従来の面状照明装置における一般的な入光楔部の傾斜面形状に相当する。また、傾斜面25の特定の範囲における平均傾斜角は、その範囲内の各位置における傾斜角を、その範囲全体にわたって平均して得られる角度である。
【0045】
面状照明装置10では、その傾斜面25の曲面形状により、第1の傾斜面部25aと、第2の傾斜面部25bと、第3の傾斜面部25cについて、第2の傾斜面部25bの平均傾斜角θ2は、第1の傾斜面部25aの平均傾斜角θ1よりも大きく、かつ、第3の傾斜面部25cの平均傾斜角θ3よりも大きいという構成となっている。さらに、第1及び第3の傾斜面部25a、25cの平均傾斜角θ1、θ3は、傾斜面25の入光楔部31の全長にわたる平均傾斜角θよりも小さくなるように形成されている。
【0046】
次に、
図3〜
図9を参照して、面状照明装置10の特徴を詳述するとともに、その作用効果について説明する。
まず、入光楔部の傾斜面が、
図2に示す仮想平面36のような単一の傾斜角θを有する傾斜面で構成された従来の面状照明装置において、傾斜面から発生する漏れ光の特性、特に漏れ光が発生する危険性の、傾斜面上の位置依存性について、後述する漏れ光危険度という概念に基づいて説明する。
尚、以下の説明では、便宜上、従来の面状照明装置における傾斜面には符号36を付して参照し、その他の構成要素については、面状照明装置10と同一の符号を付して参照する。
【0047】
傾斜面36に入射した光のうち、入光楔部31および、傾斜面36に起因して出射面22の入光楔部31の近傍から漏れる光の相対的な量(以下では、これを「漏れ光危険度」あるいは単に「危険度」という)は、傾斜面36に入射する光の量(光量)と傾斜面36に入射する際の光軸に対する角度(本発明では、この角度を「入射角度」という)とに、次式のように依存すると考えられる。
「光量」 × 「入射角度」 = 「漏れ光危険度」
ここで、本発明において、「光軸」は、LED11の発光面11aの中心から、発光面11a(したがって、入光面21)に直交して延びる中心軸をいう。
【0048】
漏れ光危険度が入射角度に依存する理由は、傾斜面36において導光板20内部から外部に透過する光の透過率が入射角度に依存するためである。そして、これら光量と入射角度は、LED11の発光面11a(導光板20の入光面21と略一致)からの光軸方向の距離に依存する。
【0049】
また、近年の薄型および狭額縁化が進行した導光板20においては、傾斜面36に入射する光には、主として、次のような1回目入射光と2回目入射光が含まれる。1回目入射光は、入光面21から導光板20内に入射した後に最初に傾斜面36に入射する光であり、2回目入射光は、入光面21から導光板20内に入射した後に裏面24で反射して傾斜面36に最初に入射する光、及び、1回目入射光が傾斜面36、続いて裏面24で反射して再度傾斜面36に入射する光である。また、2回以上裏面24で反射した後に再度傾斜面36に入射する光も存在するが、1回目入射光や2回目入射光に比べて光量が少なく、漏れ光に占める割合は少ない。
【0050】
ここで、
図3(a)、(b)、(c)は、1回目入射光について、それぞれ傾斜面36に入射する光の光量、入射角度、危険度の分布を、LED11からの光軸方向の距離に対して示す図である。尚、
図3(a)、(b)、(c)は、危険度の特徴を分かりやすく説明するための模式図である。
【0051】
まず、光量について検討する。LED11から全体として放射状に出射され導光板20内に入射した光の配向分布は、光軸方向が最大の光量となり、光軸となす角度が大きくなるほど光量が低下する分布となる。但し、LED11の発光面11aの中心を起点とした単位角度に対応する傾斜面36の幅(光軸方向の幅Dに相当)は、
図4に示すように、光線が光軸方向に向くほど長くなり、光軸となす角度が大きくなるほど短くなる(D1<D2<D3)。したがって、傾斜面36に入射する単位距離(単位面積)当たりの光量は、
図3(a)に示すように、入光面21に近い領域おいてはLED11からの距離が大きくなるにしたがって大きくなるが、ピーク(極大領域)に達した後は反転し、LED11からの距離が大きくなるにしたがって減少することになる。
【0052】
次に、入射角度について検討する。
図3(b)に示すように、傾斜面36に入射する光の入射角度は、LED11からの距離に応じた幅(範囲)があるが、この範囲の上限値は、LED11からの距離が大きくなるほど小さくなり、これによって、LED11からの距離が大きくなるほど、傾斜面36での透過率は小さくなる。
【0053】
したがって、
図3(c)に示すように、漏れ光危険度(光量と入射角度の上限値とをかけ合わせた値)は、LED11からの距離がゼロの近傍で最大となり、その点よりも前方ではLEDからの距離が大きくなるほど低下することになる。
【0054】
次に、
図5を参照して、2回目入射光について検討する。
図5(a)、(b)、(c)は、2回目入射光について、それぞれ傾斜面36に入射する光の光量、入射角度、危険度の分布を、LED11からの光軸方向の距離に対して示す図である。尚、
図5(a)、(b)、(c)は、危険度の特徴を分かりやすく説明するための模式図である。
【0055】
まず、光量について検討する。2回目入射光の光量の分布は、
図5(a)に示すように、1回目入射光よりも前方にピーク(極大領域)を有する分布となる。次に、
図5(b)を参照して、2回目入射光の入射角度について検討する。2回目入射光には、1回目の傾斜面36での反射の際に角度が変化する(傾斜面36の傾斜角θの2倍ほど入射角度が大きくなる)光が含まれるため、入射角度の上限値は、1回目入射光の分布を前方に移動させた上に、その角度変化分を重畳させた分布となる。また、入射角度の下限値は、LED11からの距離に対応した正の値となり、この下限値は、上限値と同様に、LEDからの距離が大きくなるほど小さくなる傾向を有する。
【0056】
したがって、2回目入射光の漏れ光危険度は、
図5(c)に示すように、基本的には、1回目入射光の漏れ光危険度の分布を前方に移動させた分布となる。但し、1回目の傾斜面36での反射の際の角度変化量によっては、2回目入射光の漏れ光危険度が、1回目入射光の漏れ光危険度よりも大きくなる可能性がある。
【0057】
以上のようにして得られる1回目入射光の漏れ光危険度と2回目入射光の漏れ光危険度とを足し合わせた危険度が、傾斜面36における全体的な漏れ光危険度(
図6参照)になる。
図6に示すように、LED11からの距離が小さい位置(入光面21寄りの位置)に漏れ光危険度が大きい部分(極大値を示す部分)があり、その位置よりLED11からの距離が大きくなるほど漏れ光危険度が徐々に低下する。さらにLED11からの距離が大きくなると、漏れ光危険度は反転して徐々に大きくなり、再度、極大値を示す。全体としては、中央付近が窪んだ凹状の曲線となる。但し、後述するように、漏れ光危険度の極小値(この場合、最小値)は、必ずしも、入光楔部31の導光方向の正確な中間の位置に現れるわけではない。
【0058】
本願発明は、上述したように、全体的な漏れ光危険度が、極大を含む2つの領域(入光面21側の極大領域と出射面22側の極大領域)と、極小を含む1つの領域(中央付近の極小領域)とに分かれるという知見に基づいて、入光楔部31が備える傾斜面25を、変曲点Aを有して入光面21側が凸状かつ出射面22側が凹状の側面視S字状に形成したことを、その1つの特徴とするものである。
【0059】
これによって、入光楔部31の傾斜面25の、それぞれ入射面21側と出射面22側の極大領域に相当する範囲に、それぞれ第1の傾斜面部25aと第3の傾斜面部25cを設け、中央付近の極小領域に相当する範囲に第2の傾斜面部25bを設けて、第1の傾斜面部25a及び第3の傾斜面部25cの平均傾斜角θ1及びθ3を、第2の傾斜面部25bの平均傾斜角θ2よりも相対的に小さくした構成が達成され、この構成により、傾斜面25で発生する漏れ光を効果的に低減することができる。
面状照明装置10では、これによって、出射面22の発光領域から出射される照明光の輝度を向上させることが可能となる。
【0060】
さらに、面状照明装置10において、傾斜面25の形状を、変曲点Aを有して入光面21側が凸状かつ出射面22側が凹状の側面視S字状とした構成は、全体的な漏れ光危険度の分布に応じて、傾斜面25からの漏れ光を低減するために最適な傾斜面形状を実現する上で、有利なものである。
【0061】
また、
図7に示すように、傾斜角が入光楔部31の全領域にわたって一定の傾斜面36を備えた従来の面状照明装置(
図7(a)参照)では、LED11から、その光軸となす角度が大きい方向に出射され、その結果、比較的大きい入射角度で傾斜面36の入光面21寄りの領域(I)に入射する光L1は、2回目入射光として傾斜面36の出射面22寄りの領域(III)に入射し、そこで漏れ光を発生させる危険性が高いことに加えて、その反射光成分が、条件によっては傾斜面36と裏面24との間で反射を繰り返して、出射面22の入光楔部31近傍から出射され易くなる。従来の面状照明装置では、この種の漏れ光によって、出射面22の発光領域から出射される照明光の均一性が劣化するという問題も生じていた。
【0062】
これに対して、本実施形態における面状照明装置10では、第1の傾斜面部25a及び第3の傾斜面部25cの平均傾斜角θ1及びθ3を相対的に小さくしたことにより、
図7(b)に示すように、上記L1と同様の条件で傾斜面25に入射する光(同様に、符号L1を付す)でも、出射面22の入光楔部31近傍から出射させることなく、出射部32内に導光させることが可能となる。
面状照明装置10では、このように、出射面22の発光領域から出射される照明光の均一性も向上させることが可能となる。
【0063】
また、面状照明装置10のこの特徴は、LED11が所謂擬似白色LEDの場合、次のような効果も奏するものである。一般に、擬似白色LEDは、
図8に示すように、青色発光チップ41を黄色蛍光体が分散された透明樹脂42で封止した構成を備えており、青色発光チップ41が発光する青色光と、その青色光を吸収した黄色蛍光体が発光する黄色光との混色により、白色に見える発光スペクトルを実現するものである。
【0064】
その際、LED11から、その光軸となす角度が大きい方向に出射される光L1は、光軸となす角度が小さい方向に出射される光L2、L3と比較して透明樹脂42内を通過する距離が長いため、黄色味を帯びた白色光となる傾向がある。これによって、
図7(a)を参照して上述したように、比較的大きい入射角度で傾斜面36の入光面21寄りの領域(I)に入射する光L1が、出射面22の入光楔部31近傍から出射し易いことは、その出射光によって、発光領域の入光楔部31近傍から出射される照明光が、黄色味を帯びるという問題の要因ともなる。
【0065】
したがって、面状照明装置10において、光L1のような条件で傾斜面25に入射する光を、出射面22の入光楔部31近傍から出射させることなく、出射部32内に導光させることが可能となることは、発光領域の入光楔部31寄りの部分が他の部分と比較して黄色味を帯びることによって視認される色むらを解消または抑制することで、照明光の色度分布を改善するといった効果も奏するものである。
【0066】
さらに、面状照明装置10では、傾斜面25の出射面22と連接する部分である第3の傾斜面部25cの平均傾斜角θ3が、従来の傾斜面36の一定の傾斜角θよりも小さいことから、傾斜面25と出射面22が、一定の交差角度をもって不連続に連接することから発生する輝度むら(輝度の急激な変化)を抑制することができる。そして、この抑制効果は、面状照明装置10の傾斜面25が、第3の傾斜面部25cにおいて凹状に形成され、出射面22と連接する部分の傾斜角が平均傾斜角θ3よりもさらに小さいことによって、一層顕著なものとなる。
【0067】
また、面状照明装置10では、傾斜面25の入光面21寄りの部分である第1の傾斜面部25aの平均傾斜角θ1が、従来の傾斜面36の一定の傾斜角θよりも小さいことから、LED11が実装されたフレキシブルプリント配線板(FPC)(図示は省略する)を、導光板20の傾斜面25上に直接固定する場合には、LED11の発光面11aが導光板20の入光面21に対して傾く等の、LED11実装上の不具合を軽減することができる。
【0068】
また、3つの傾斜面部のうち最も平均傾斜角が大きい第2の傾斜面部25bを、導光方向の中央付近に配置したことから、仮に、第2の傾斜面部25bから漏れ光が発生したとしても、通常、傾斜面25の上部に配置される遮光部材によって、その漏れ光を確実に吸収させることができる。
【0069】
次に、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化するという観点から、本発明の特徴とその作用効果について説明する。
面状照明装置10において、上述したような漏れ光を最小化するためには、傾斜面25の漏れ光危険度の分布に応じて、第1の傾斜面部25aと第3の傾斜面部25cが、それぞれ入光面21側と出射面22側の漏れ光危険度の極大領域に相当する範囲に適切に配置され、かつ、第2の傾斜面部25bが、傾斜面25の漏れ光危険度の極小領域に相当する範囲に適切に配置されるように、傾斜面25の形状を設計することが重要である。そして、面状照明装置10において、傾斜面25は、変曲点Aを有して入光面21側が凸状かつ出射面22側が凹状の側面視S字状に形成されているため、第1、第2、第3の傾斜面部25a、25b、25cのこのような適切な配置は、変曲点Aの入光面21からの導光方向の距離を最適化することにより実現することができる。
【0070】
ここで、入光面21からの導光方向の距離(この場合、LED11の発光面11aからの光軸方向の距離)を、特に明示してある場合を除き、入光面21からの距離、あるいは、単に距離ともいう。
【0071】
本発明者は、このように、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化するために、傾斜面25が備えるS字形状の変曲点Aの入光面21からの距離が重要な条件である点に着目し、上述したような漏れ光を最小化する上で最適な変曲点Aの入光面21からの距離を、簡易かつ高精度に定める方法を見出することによって、本発明の完成に至ったものである。
【0072】
まず、
図3〜
図6を参照して上述した漏れ光危険度に関する考察に鑑みれば、変曲点A(言い換えれば、傾斜面25の傾斜角θ
Pが最大の点)の最適な距離は、傾斜面25の漏れ光危険度が最小値をとる距離であると考えられる。そこで、本発明者は、次のようにして、導光板20の寸法及び屈折率のデータから、傾斜面25の漏れ光危険度が最小値をとる距離を近似的に求める式を導出した。
【0073】
すなわち、
図6に示す全体的な漏れ光危険度の分布が、
図3(c)に示す1回目入射光の漏れ光危険度と、
図5(c)に示す2回目入射光の漏れ光危険度が足し合わされた結果、形成されることから、漏れ光危険度が最小値をとる距離は、入光面21側から導光方向に沿って見た場合に、2回目入射光が現れる始める距離に略一致するものと考えられる。
【0074】
さらに、この2回目入射光が現れる始める距離は、
図9に示すように、LED11から出射され、入光面21から導光板20内に、臨界角θcに等しい屈折角を有して裏面24に向かう方向に入射した光L11が、裏面24で反射された後に傾斜面25に入射したときの距離に略一致するものと考えられる。
【0075】
これは、臨界角θcは、光が空気中から導光板20内に入射する際の屈折角の上限であり、かつ、臨界角θcよりも小さい屈折角を有して裏面24に向かう方向に入射した光L12は、
図9に示すように、裏面24で反射された後に、光L11よりも、入光面21から遠い位置まで導光されるからである。尚、図示は省略するが、2回目入射光のうち、1度傾斜面25で反射された後、続いて裏面24で反射される光も、通常、光L11よりも入光面21から遠い位置まで導光される。
【0076】
以上のような考察の下に、漏れ光危険度が最小値をとる距離Leは、光L11が傾斜面25に入射する距離を表す次式により、近似的に表すことができる。
【数1】
【0077】
ここで、T1は、入光楔部31の最大厚さ(入光面21の厚さ)、T2は、入光楔部31の最小厚さ(出射部32の厚さ)、αは、入光楔部31の最大厚さT1に対する入光楔部31の長さKの比(K/T1)である。また、nは、導光板20を形成する樹脂材料の屈折率であり、臨界角θc=sin
−1(1/n)である。
また、上式の導出にあたって、LED11は、入光面21の厚さ方向の中間(裏面24からの、厚さ方向の距離がT1/2)の位置に配置された理想的な点光源とし、傾斜面25は、入光楔部31の最大厚さT1、最小厚さT2、及び長さKが傾斜面25と等しい仮想的な平坦面36で近似した。
【0078】
次に、上式で求められる漏れ光危険度が最小値をとる距離Leが、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化するために最適な変曲点Aの距離として有効かどうかを確認するため、距離Leを、より現実に則したシミュレーションにより求められた変曲点Aの距離と比較した。シミュレーションは、LED11について、その発光面11a(具体的には、ランプハウスに形成された開口窓)の形状を現実に則してモデル化した上で、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光が最小となるように傾斜面25のS字形状を設計し、そのS字形状から変曲点Aの距離L2を求めることにより実施された。
【0079】
いずれの場合についても、導光板20は、光学用樹脂材料として最も代表的なポリカーボネート(n=1.58)から成形されるものとし、さらに、α=K/T1の値として、1.78を用いた。ここで、α=1.78としたのは、LED11から発光した光の利用効率及び照明光の均一性を優れた状態に維持しつつ、入光楔部31の導光方向の長さKを小さくできる臨界値として、入光楔部31の最大厚さT1の略1.78倍という条件を、先に本出願人が提案しており(特許文献3)、面状照明装置10においても、この条件を採用したものであある。
【0080】
比較の結果は、次の通りである。入光楔部31の最大厚さT1が0.58mm、最小厚さが0.4mmの場合、上式から求められる距離Leの値は0.89mmであるのに対し、シミュレーションから得られた距離の値L2は、0.9mmであった。また、入光楔部31の最大厚さT1が0.40mm、最小厚さが0.28mmの場合、上式から求められる距離Leの値は0.61mmであるのに対し、シミュレーションから得られた距離の値L2は、0.6mmであった。このように、上式から求められる距離Leと、シミュレーションから得られた距離L2とは良く一致しており、これらの結果から、上式から求められる距離Leを、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25の近傍からの漏れ光を最小化するS字形状における変曲点Aの距離として、有効に使用できることが確認された。
【0081】
次に、以上の結果に基づいて、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25の近傍からの漏れ光を最小化するために変曲点Aが満たすべき条件について説明する。
以下の説明において、楔率は、導光板20の入光楔部31の最大厚さT1に対する入光楔部31の最小厚さT2の比(T2/T1)であり、規格化距離は、上式から求められる距離Leを入光面21の厚さ(この場合、T1)で規格化した距離(L
N=Le/T1)である。
【0082】
ここで、
図10(a)は、楔率と規格化距離との関係を示すグラフであり、
図10(b)は、出射部32の厚さ(T2)と規格化距離との関係を示すグラフである。また、いずれのグラフも、n=1.58、α=1.78の場合を示すものである。
図10(a)に示すように、楔率が原理的にとり得る範囲(0<(T2/T1)<1)の全体にわたって、規格化距離L
Nは1.0よりも大きく、これは、距離Leが入光面21の厚さT1よりも大きいことを意味する。これによって、面状照明装置10において、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25の近傍からの漏れ光を最小化するためには、変曲点Aの入光面21からの導光方向の距離L(
図1(b)参照)を、入光面21の厚さT1よりも大きくなるように設定する必要があることが分かる(L>T1)。
【0083】
また、楔率が現実的にとり得る範囲(0.1<(T2/T1)<0.9)を考慮すると、変曲点Aの入光面21からの導光方向の距離Lは、入光面21の厚さT1の1.1倍以上かつ1.7倍以下の範囲に設定する必要があることが分かる。この範囲のうち、距離Lの最適な値は、導光板20の楔率に応じて決まるものであるが、例えば、導光板20の楔率を0.55近傍の値で代表させて考えた場合、概略的には、距離Lは、入光面21の厚さT1の1.4倍程度が望ましいといえる。
【0084】
さらに、
図10(b)から、典型的な例として、入光面21の厚さT1が0.58mm、出射部32の厚さT2が0.4mmの場合には、距離Lを、入光面21の厚さT1の約1.5倍の値に設定することが望ましいことが分かる。また、入光面21の厚さT1が0.58mm、出射部32の厚さT2が0.4mmの場合には、距離Lを、入光面21の厚さT1の約1.45倍の値に設定することが望ましいことが分かる。ここで、「約」として表された許容範囲は、±0.2倍である。
【0085】
さらに、
図10(a)に示すグラフは、α=1.78の場合を示すものであり、したがって、入光楔部31の長さK(
図1(b)参照)は、入光楔部31の最大厚さ(入光面21の厚さ)T1の1.78倍(K=1.78×T1)であるから、距離Lが入光面21の厚さT1よりも大きい(L>T1)ことは、距離Lが、入光楔部31の長さKの半分(K/2=0.89×T1)よりも大きいことを意味する。この意味で、変曲点Aの位置は、入光楔部31の中間の位置よりも出射面22寄り(前方)にあるものである。したがって、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化するための条件として、変曲点Aの入光面21からの導光方向の距離Lが、入光面21の厚さT1よりも大きいという条件を満たしてれば、変曲点Aの位置は、入光楔部31の中間の位置よりも出射面22寄りにあることになる。
【0086】
但し、例えば、L=0.95×T1と設定した場合のように、変曲点Aの入光面21からの導光方向の距離Lが、入光楔部31の長さKの半分(K/2=0.89×T1)よりも大きいという条件を満たしていても、距離Lが入光面21の厚さT1よりも大きくはならない場合はあり得る。しかしながら、このような場合でも、距離Lは、入光面21の厚さT1に近い値をとるものであるから、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を抑制する上で、顕著な効果を奏するものと考えられる。したがって、変曲点Aの位置を、入光楔部31の中間の位置よりも出射面22寄りとすることは、距離Lが入光面21の厚さT1よりも小さいような例外的な場合を含めて、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化するための条件としての技術的意義を有するものである。
【0087】
さらに、変曲点Aの位置を、入光楔部31の中間の位置よりも出射面22寄りに設定することは、通常、凸部B(
図1(b)参照)の面積を、凹部C(
図1(b)参照)の面積よりも大きくすることに相当する。ここで、傾斜面25の形状が、例えば、凸部Bの高さ(言い換えれば、傾斜面25eの凸状の部分25dと線分q1との最大距離)に対して、凹部Cの深さ(言い換えれば、傾斜面25eの凹状の部分25eと線分q2との最大距離)が著しく大きいような極端な形状であった場合には、変曲点Aの位置を入光楔部31の中間の位置よりも出射面22寄りに設定しても、凸部Bの面積が凹部Cの面積よりも大きくはならない場合も考えられる。しかし、一般に、漏れ光危険度の分布に応じて適切に設計された傾斜面25の形状が、そのような極端な形状となることはないため、凸部Bの面積を、凹部Cの面積よりも大きくするという条件は、変曲点Aの位置を入光楔部31の中間の位置よりも出射面22寄りに設定することと同様に、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化するための条件としての技術的意義を有するものである。
【0088】
ここで、以上の説明では、入光楔部31の最大厚さT1に対する入光楔部31の長さKの比(α=K/T1)の値を1.78としたが、本発明に係る面状照明装置は、このようなαの値によって限定されるものではない。例えば、面状照明装置10のように、傾斜面25を側面視S字状の曲面とした場合には、αの値として、1.78〜2.2程度が好ましい場合があることが分かっている。しかしながら、αがこのような範囲にわたる場合でも、楔率が原理的にとり得る範囲(0<(T2/T1)<1)の全体にわたって、規格化距離L
Nが1.0よりも大きいこと、したがって、面状照明装置10において、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25の近傍からの漏れ光を最小化するために、変曲点Aの入光面21からの導光方向の距離Lを、入光面21の厚さT1よりも大きくなるように設定する必要があること(L>T1)は、α=1.78の場合と同様である。
【0089】
また、α<2.0の場合に、変曲点Aの位置を、入光楔部31の中間の位置よりも出射面22寄りとすることについては、α=1.78について上述した通りである。そして、α>2.0の場合には、入光楔部の長さKは、「2.0×入光楔部の最大厚さT1」よりも大きいため、距離Lが入光楔部31の長さKの半分(この場合、K/2>T1)よりも大きい(すなわち、変曲点Aの位置は、入光楔部31の中間の位置よりも出射面22寄りにある)という条件を満たしてれば、距離Lは、入光面21の厚さT1よりも大きいことになる。言い換えれば、α>2.0場合には、変曲点Aの位置を入光楔部31の中間の位置よりも出射面22寄りとすることは、距離Lを入光面21の厚さT1よりも大きくすることよりも強い条件であり、当然、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化するための条件として、有効なものである。
したがって、凸部Bの面積を、凹部Cの面積よりも大きくするという条件も、α=1.78の場合に関連して上述した通り、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化するための条件として、有効なものである。
【0090】
また、上記の説明では、導光板20はポリカーボネート樹脂(屈折率n=1.58)から成形されるものとしたが、本発明に係る導光板20は、その他の材料、例えば、アクリル樹脂(屈折率n=1.49)から成形されるものであってもよい。この場合でも、面状照明装置10の、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化するための変曲点Aの最適な距離に関する上述した特徴は、同様のものである。
【0091】
以上のように、面状照明装置10では、変曲点Aの入光面21からの導光方向の距離を最適化することによって、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化することが可能となる。
【0092】
また、面状照明装置10において、距離Leを算出する数式を用いて変曲点Aの最適な距離を導出することは、傾斜面25及び出射面22の傾斜面25近傍からの漏れ光を最小化するために最適な傾斜面25の形状を、簡易かつ短時間に設計できる点でも有利なものである。
【0093】
ここで、本発明に係る面状照明装置は、
図11に示す面状照明装置50のように、導光板51の入光面21と入光楔部31との間に、平坦部33(
図11に「IV」で示す範囲)を設けるものであってもよい。平坦部33は、入光面21から延びて第1の傾斜面部25aに連接し、出射面22に平行な上面52を有しており、一定の厚みを有するものである。
【0094】
面状照明装置50は、平坦部33を備える点以外の特徴については、面状装置10と同様のものである。この際、平坦部33の導光方向の長さは、通常、50μm程度のものであるため、面状照明装置50における入光楔部31の長さは、平坦部33の長さを含むものとして考えることができる。
【0095】
さらに、以上の実施形態では、導光板20の入光楔部31の入光面21及び出射面22に直交する断面(側断面)の断面形状は、入光面21の長手方向の任意の位置で側面形状と同一であり、したがって、傾斜面25、65は、入光面21の長手方向に沿った傾斜はないものとした。但し、本発明に係る面状照明装置において、入光楔部の傾斜面の形状は、入光面21の長手方向に沿った傾斜を有するものであってもよい。
【0096】
図12は、このような面状照明装置70の一例を示す図であり、(a)は、面状照明装置70を入光面21側から見た正面図(立面図)、(b)は、(a)のA−A断面図である。面状照明装置70において、導光板71の入光面21は、その厚みが入光面21の長手方向に沿って空間的に変動するように構成されている。具体的には、入光面21の厚さは、各LED11の配置位置における厚さをLED11の厚さと同程度の厚さとし、各LED11の配置位置の両側の厚さが、LED11の配置位置における厚さよりも厚くなるように構成されるとともに、傾斜面75は、入光面21の長手方向に沿った全幅にわたって、入光面21から前方に向かって下方に傾斜し、傾斜面75の前方端において、出射面22に連接するように構成されている。
【0097】
これによって、傾斜面75は、前後方向(導光方向)に沿った傾斜だけでなく、左右方向(入光面21の長手方向)に沿った傾斜も有することになる。この構成により、傾斜面75の入光楔部31の全長にわたる平均傾斜角も、各LEDの配置位置で最も小さく、各LED11の配置位置の両側で最も大きくなるように、入光面21の長手方向に沿って空間的に変動することになる。
【0098】
但し、面状照明装置70において、入光面21の長手方向に沿った任意の位置における側断面内における傾斜面75の形状は、
図1(a)、(b)を参照して上述した面状照明装置10の傾斜面25の形状と同様のものである。
【0099】
以上のような構成により、面状照明装置70は、面状照明装置10と同様の作用効果を奏することに加えて、傾斜面75が入光面21の長手方向に沿った傾斜も有しているため、傾斜面75に厚み方向の入射角度幅を有して入射する光を、出射面22と平行な方向にも広がりを有するように反射し、その結果、その傾斜面75からの反射光が、裏面24で反射して再び傾斜面75(典型的には第3の傾斜面部75c)に入射する際の入射角度を小さくすることができるため、傾斜面75及び出射面22の入光楔部31近傍からの漏れ光を、さらに効果的に低減することができる。
【0100】
尚、面状照明装置70では、入光楔部31の長さは、入光面21の長手方向に沿って一定であるものとしたが、本発明に係る面状照明装置において、入光楔部31の長さを入光面21の長手方向に沿って空間的に変動させることによって、入光楔部31の傾斜面に入光面21の長手方向に沿った傾斜を設けるものであってもよい。この場合には、
図12に示す面状照明装置70と比較して、傾斜面の入光楔部31の全長にわたる平均傾斜角の、入光面21の長手方向に沿った空間的な変動を比較的小さく抑えることができる。
【0101】
ここで、上述した実施形態では、傾斜面25、75は、導光板20の全幅にわたって連続して設けられるものとしたが、傾斜面25、75は、導光板20の幅方向に沿って散在するように設けられるものであってもよい。その場合には、傾斜面25、75は、少なくとも各LED11の前方部分を含む範囲に設けられることが望ましい。
【0102】
また、上述した実施形態では、入光楔部31の傾斜面25、75は、いずれも導光板20、51、71の表面23側に形成されるものとしたが、本発明に係る面状照明装置において、傾斜面25、75は、導光板20、51、71の裏面24側に形成されるものであってもよい。あるいは、本発明に係る面状照明装置は、導光板20、51、71の表面23側と裏面24側の両方に、入光楔部31の傾斜面を有しており、2つの傾斜面のうちのいずれか一方または両方が、本発明に係る傾斜面25、75として構成されるものであってもよい。その際、2つの傾斜面のうちの一方のみを、本発明に係る傾斜面20、75として構成する場合には、他方の傾斜面を、従来と同様の一定の傾斜角を有する傾斜面とするものであってもよい。
【0103】
また、導光板20、51、71の表面23及び裏面24のうち傾斜面(本発明に係る傾斜面25、75または従来の傾斜面)が設けられている面側に、LED11が実装されたFPCを配置する場合には、その面側に設けられた傾斜面と一体にFPCを配置するための台座を設けてもよい。この台座は、例えば、入光面21の各LED11の配置位置の左右側方から前方に延びる所定の範囲(好ましくは、光が殆ど入射しない範囲)に設けられるものである。
【0104】
また、本発明に係る面状照明装置において、例えば、傾斜面25、75における変曲点Aよりも前方の領域に、入射した光を全反射させる周知のプリズム(断面が三角形で前方に延びる複数のプリズム)を形成するものであってもよい。傾斜面25、75のうち、出射面22側に近く漏れ光危険度の大きい領域に上記プリズムを設けることにより、更なる高輝度化と輝度の均一化が可能となる。尚、この場合には、傾斜面25のように、その断面形状が入光面21の長手方向の任意の位置で同一であるのが好ましい。また、上記プリズムに代えて、例えば、輝度の均一性等を考慮して、光を散乱させるドット等を設けてもよい。
【0105】
また、本発明に係る面状照明装置において、傾斜面25、75は、その全体が曲面として構成されている必要はなく、例えば、傾斜角度が一定の一つまたは複数の面を含むものであってもよい。また、傾斜面25、75は、例えば、その側面視形状の全体が折れ線からなるS字状であってもよい。
【0106】
本発明に係る面状照明装置が、上述した個別の実施形態に関連して説明されたそれぞれの特徴を、任意に組み合わせた構成を備えた面状照明装置を含むことは言うまでもない。例えば、面状照明装置70は、面状照明装置50に関連して説明された平坦部33を備えるものであってもよい。