(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784773
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】組み込まれたPN接合を有するショットキダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20150907BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/48 F
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-43087(P2014-43087)
(22)【出願日】2014年3月5日
(62)【分割の表示】特願2009-513098(P2009-513098)の分割
【原出願日】2007年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-143428(P2014-143428A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年3月28日
(31)【優先権主張番号】11/444,106
(32)【優先日】2006年5月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020650
【氏名又は名称】クレー・スウェーデン・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】CREE SWEDEN AB
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ハリス
(72)【発明者】
【氏名】セム・バセリ
(72)【発明者】
【氏名】ケント・ベルティルソン
【審査官】
行武 哲太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−314099(JP,A)
【文献】
特開2000−58873(JP,A)
【文献】
特開2005−26408(JP,A)
【文献】
特開平04−102373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/86−29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型にドープされたドリフト層(3)と、
ドリフト層(3)の第1表面上のドレインコンタクト(2)と、
第2導電型にドープされたドレインコンタクト(2)に対向する、ドリフト層(3)の第2表面上の、複数の半導体材料の追加層(7、7’)と、
ソースコンタクト(1)と、を含み、
複数の半導体材料の追加層(7、7’)は、ドリフト層(3)の第2表面上に複数の半導体材料の同心円リングを形成するように配置され、複数の半導体材料の同心円リングの間でこれらを横方向に分離するドリフト層(3)の第2表面の領域は、ショットキコンタクト領域(6)を形成し、
ソースコンタクト(1)は、ショットキコンタクト領域(6)でドリフト層(3)と直接接触する半導体デバイス。
【請求項2】
ドリフト層(3)は、ソースコンタクト(1)に最も近い低ドープのサブレイヤ(4)と、ドレインコンタクト(2)に最も近い高ドープのサブレイヤ(5)とを含む請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
低ドープのサブレイヤ(4)は1015cm−3より低いドーピング濃度を有し、高ドープのサブレイヤ(5)は1016cm−3より高いドーピング濃度を有する請求項2に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
ショットキコンタクト領域(6)は、ドリフト層(3)の中の対応するリセス(11)の底に配置されて、隣り合う複数の半導体材料の追加層(7、7’)の間を分離し、さらにショットキコンタクト領域(6)は、複数の半導体材料の追加層(7、7’)とドリフト層(3)の第2表面との間の界面に対して縦方向に離れて配置される請求項1〜3のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項5】
ドリフト層(3)と複数の半導体材料の追加層(7、7’)とは、SiCから形成される請求項1〜4のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項6】
第1導電型はn型で、第2導電型はp型である請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
ドリフト層(3)の第2表面に沿った横方向に、少なくとも7つ毎の複数の半導体材料の追加層(7、7’)が、隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)より大きな横方向の長さを有する請求項1〜6のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項8】
複数の半導体材料の追加層(7、7’)の少なくとも1つは、隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)の1つの横方向の長さの少なくとも1.5倍の大きさと等しい横方向の長さを有する請求項1〜7のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項9】
複数の半導体材料の追加層(7、7’)の少なくとも1つの横方向の長さは、5〜15マイクロメーターで、隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)の1つの横方向の長さは、2〜4マイクロメーターである請求項8に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)の間の横方向の長さは、ドリフト層(3)の第2表面に沿って一定である請求項1〜9のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項11】
隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)の間の横方向の長さは、ドリフト層(3)の膜厚と同じかそれより小さい請求項1〜10のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項12】
ドリフト層(3)と複数の半導体材料の追加層(7、7’)は、ダイヤモンドで形成される請求項1〜4および6〜11のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項13】
第1導電型はp型で、第2導電型はn型である請求項12に記載の半導体デバイス。
【請求項14】
ドリフト層(3)の第2表面に沿った横方向に、少なくとも6つ毎の複数の半導体材料の追加層(7、7’)が、隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)より大きな横方向の長さを有する請求項1〜13のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項15】
ドリフト層(3)の第2表面に沿った横方向に、少なくとも5つ毎の複数の半導体材料の追加層(7、7’)が、隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)より大きな横方向の長さを有する請求項1〜14のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項16】
ドリフト層(3)の第2表面に沿った横方向に、少なくとも4つ毎の複数の半導体材料の追加層(7、7’)が、隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)より大きな横方向の長さを有する請求項1〜15のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項17】
複数の半導体材料の追加層(7、7’)の少なくとも1つは、隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)の1つの横方向の長さの少なくとも2倍の大きさと等しい横方向の長さを有する請求項1〜16のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項18】
複数の半導体材料の追加層(7、7’)の少なくとも1つは、隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)の1つの横方向の長さの少なくとも2〜4倍の大きさと等しい横方向の長さを有する請求項1〜17のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項19】
複数の半導体材料の追加層(7、7’)の少なくとも1つは、隣接する複数の半導体材料の追加層(7、7’)の1つの横方向の長さの少なくとも3〜4倍の大きさと等しい横方向の長さを有する請求項1〜18のいずれかに記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、nまたはpの第1導電型のドーパントによりドープされたドリフト層により相互接続されたソースコンタクトとドレインコンタクトを有し、デバイスの順バイアス状態で、ソースコンタクトとドレインコンタクトとの間の導電経路を多数電荷キャリアが移動し、このデバイスは、ドリフト層の上に、ソースコンタクトに属し、ドリフト層にショットキコンタクトを形成する複数の金属層領域を含み、金属層領域は、ドリフト層の上に半導体材料からなる追加の層の形状で形成され、ドリフト層との界面においてpn接合を形成するために第1導電型と反対の第2導電型のドーパントでドープされ、デバイスが逆バイアス状態で連続したブロッキングpn接合を形成してショットキコンタクト領域を保護する領域により、横方向に分離され、ソースコンタクトは追加の層の上にも適用される半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの半導体デバイスは、マージドPN/ショットキダイオード(MPS)と呼ばれる。ドリフト層は、ドーピング濃度の異なる1またはそれ以上の副層(sub-layer)を有しても良いことが指摘される。
【0003】
このタイプの半導体デバイスは、順導電状態で低いオン電圧を有するショットキダイオードの特性と、デバイスの逆バイアスブロッキング状態で高い破壊電界強度を有するpnダイオードの特性とを併せ持つ。
【0004】
隣接する追加の層の間には、可能な限り間隔を有し、これによりショットキコンタクト領域は可能な限り大きな総面積を有することが望まれる。なぜならば、これは、順バイアス状態において、デバイスがより低い抵抗であることを意味するからである。しかしながら、デバイスの逆バイアスブロッキング状態で、ショットキコンタクト領域を保護するpn接合が信頼性を持って得られないので、そのような追加の層の間の距離はあまり大きくはできない。
【0005】
本発明は、すべてのタイプの半導体材料からなるデバイスを含む。ここでは、SiCの場合について説明するが、これは本発明を限定するものでは無い。
【0006】
通常動作と場合、SiCの成分は、1.5Vの領域のオン電圧を有し、そこを流れる電流は例えば5Aである。しかしながら、サージが発生した場合には50Aの領域の電流が流れ、デバイスを破壊する温度の上昇を招く。それぞれの追加の層と、それに近いドリフト層の部分との間の電圧は、例えばSiCでは2.8Vより大きな十分なレベルまで上昇し、サージが十分に大きい場合、そのような追加の層からドリフト層の中に少数電荷キャリアの注入が始まる。これが、ドリフト層の抵抗を減らし、これによりその温度を下げ、サージ保護として機能する。しかしながら、ショットキコンタクトから、追加の層に近いドリフト層部分に、多数電荷キャリアの注入された結果、そのようなサージ保護に必要とされる電圧は、所定の状況では、デバイスが破壊されてしまうまで得られない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、公知のデバイスに対してサージにおける挙動を改良した、上述のタイプの半導体デバイスを提供する。
【0008】
本発明の目的は、少なくとも1つの追加の層が実質的により大きな横方向の拡がりを有し、これにより隣接する層より面積の広いドリフト層との界面を有し、その層とドリフト層との間に十分な電圧のビルドアップ(building-up)を容易にし、デバイスが順導電状態の場合、サージにおいてその層からドリフト層中に少数電荷キャリアを注入し、ドリフト層の抵抗を低減して、これによりサージにおけるその温度を下げるようなデバイスの提供により得られる。
【0009】
サージ保護のためのこの新しいアプローチにより、サージ保護のために、少数電荷キャリアをドリフト層に注入するのに十分である、少なくとも1つの追加の層とそこに近いドリフト層部分との間の電圧が従来より速く得られ、これにより、サージ時のデバイスの温度が抑制され、デバイスの破壊が防止される。より広い追加の層は、あたかも隣接する層がより狭いような隣接するショットキコンタクトからの多数電荷キャリアの注入により、電圧のビルドアップは妨害されないことを意味する。広い横方向の拡がりを有する全ての追加の層が必要なわけではないことが見出された。これは、デバイスの通常動作では、順導電状態でデバイスは実質的により高い抵抗となるが、有効なサージ保護を得るためには、そのような広い横方向の拡がりを有する層の幾つかのみを有するだけで十分であることを意味する。
【0010】
本発明の具体例では、ドリフト層の上部に沿った横方向において、少なくとも7番目毎に、特徴的には少なくとも6番目毎に、好適には少なくとも5番目毎に、より好適には4番目または3番目毎に、追加の層は、隣接する追加の層より実質的に広い横方向の拡がりを有する。他の追加の層に対してより広い横方向の拡がりを有する追加の層の数の割合は、デバイスの有効なサージ保護となる。これにより、追加の層の多数は、順導電性の観点から好ましい、より小さな横方向の拡がりを有し、効果的なサージ保護が得られる。
【0011】
本発明の他の具体例では、少なくとも1つの追加の層は、少なくとも1.5、特徴的には少なくとも2、好適には2から4、より好適には3から4の数をかけた追加の層の横方向の拡がりに等しい。少なくとも1つの追加の層がそのように横方向に拡がることにより、隣接する追加の層に関する少数電荷キャリアの注入のために十分な電圧のビルドアップに関する特性が十分に改良される。
【0012】
本発明の他の具体例では、少なくとも1つの追加の層の横方向の拡がりは、5μmから15μmであり、一方、隣接したそのような追加の層の横方向の拡がりは、2μmから4μmである。
【0013】
本発明の他の具体例では、隣接する追加の層の間の横方向の距離は、ドリフト層の上面に沿って実質的に一定であり、すでに述べたように、デバイスの逆バイアスブロッキング状態でショットキコンタクト領域が有効に保護される限り、この横方向の距離は可能な限り大きくすべきである。
【0014】
本発明の他の具体例では、ショットキコンタクト領域と、追加の層は、同心状のリング形状としてドリフト層の上に配置され、それぞれのリングは実質的に一定の幅を有する。横方向の拡がりは、それらのリングの半径方向を意味する。これにより、実質的により広い横方向の拡がりを有する少なくとも1つの追加の層は、隣接する追加の層のリングより実質的に広い幅の広いリングにより形成される。
【0015】
本発明の他の具体例では、隣接する追加の層の間の距離は、ドリフト層の厚みとおおよそ同じか、またはより小さい。これは、デバイスの逆バイアス状態において、連続したブロッキングpn接合により、ショットキコンタクト領域が信頼性高く保護されることを意味する。
【0016】
本発明の他の具体例では、ドリフト層は、ショットキコンタクト領域と隣り合った薄い低ドープされた第1の副層と、追加の層と、ドレインコンタクトと隣り合い、その下にある高ドープされた第2の副層とを有する。
【0017】
本発明の他の具体例では、ショットキコンタクト領域は、ドリフト層中のリセスの底面に設けられ、それぞれは隣接する追加の層を分離し、追加の層とドリフト層との間の界面に垂直な距離をおいてショットキコンタクトを配置する。垂直な距離は、ショットキコンタクトから注入された多数電荷キャリアが、追加の層とそこに近いドリフト層の部分との間の十分な電圧のビルドアップに与える影響を低減し、サージ保護のために追加の層からドリフト層に少数電荷キャリアを注入することを意味する。
【0018】
本発明の他の具体例では、本発明の追加の層は高ドープされ、逆バイアスブロック状態と、サージ保護のための順導電状態との双方のデバイスの特徴を改良する。
【0019】
本発明の他の具体例では、デバイスの半導体層はSiCからなり、第1導電型はnであり、第2導電型はpであり、ドリフト層に正孔を注入することによりサージ保護される。電子移動により電流は、現在得られるドーパントを有するSiC中で最も効果的であり、ダイアモンドに対しては反対になる。本発明の他の具体例では、半導体層はダイアモンドからなり、第1導電型はpで、第2導電型はnであり、ドリフト領域への電子の注入によりサージ保護される。
【0020】
SiCやダイアモンドからなるそのようなデバイスは、特に高出力への応用に興味があり、特に、高周波でスイッチがオンおよびオフされる場合、デバイスを非常に薄くしつつブロッキング状態で高電圧を保持できるとともに、高温におけるそれらの材料の安定性や高い熱伝導性を備え興味がある。
【0021】
本発明の優れた長所とともに更なる長所は、この具体例にかかる以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付した図面は、例として示された本発明の具体例の特定の記載に従うものである。
【0023】
【
図1】順導電状態の、本発明にかかるタイプの公知の半導体デバイスの非常に模式的な断面図である。
【
図2】逆バイアスブロッキング状態の、
図1にかかるデバイスの
図1に類似した図である。
【
図3】本発明の第1の具体例にかかるデバイスの
図1に類似した図である。
【
図4】本発明の第2の具体例にかかるデバイスの
図1に類似した図である。
【0024】
図面は縮尺通りではなく、異なる層の膜厚の比率は全体で異なり、図面は、単に、従来のデバイスと本発明にかかるデバイスの原理を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
従来技術の説明
図1は、第1導電型、ここではn型にドープされたドリフト層3’により分離されたソースコンタクト1’とドレインコンタクト2’とを有する公知の半導体デバイスを示す。ドリフト層は、ここでは1つの副層であり、即ち、高ドープの副層5’である。デバイスは、更に、ドリフト層の上に、ソースコンタクトに属し、ドリフト層に対してショットキコンタクトを形成し、ドリフト層の上で、ここではpである第2導電型のドーパントでドープされた半導体材料の追加の層の形態の領域7’により横方向に分離される複数の金属層6’を含む。追加の層7’は、好適には高ドープである。
【0026】
追加の層7’はドリフト層との界面においてpn接合を形成する。このデバイスの操作は、以下の通りである。デバイスが順導電状態の場合、矢印8’のように、電子は、ショットキコンタクト領域6’からドリフト層に流れて、多数電荷キャリアをドレインコンタクト2’に運ぶ。ショットキコンタクトの低いバリア高さのおかげで、デバイスのオン状態電圧は低くなる。デバイスの逆バイアスブロッキング状態では、追加の層7’は、隣接するそのような追加の層の下部およびの間の部分を空乏化させることにより、ショットキ領域を保護する連続ブロッキングpn接合9’(
図2参照)を得ることができる。
【0027】
追加の層7’は、全て同じ幅または横方向の拡がりを有して可能な限り狭く形成されるとともに、最良の可能なオン状態特性を得るために、逆バイアス状態において連続したブロッキングpn接合を得ることを可能とする。これにより、追加の層7’とそこに近接したドリフト部分の間に、サージの時に十分な電圧を得て、追加の層7’からドリフト層に正孔を注入して、これによりデバイスの温度を下げてサージ時にデバイスを保護するために、上述の問題が発生する。
【0028】
本発明の具体例の説明
本発明は、この問題を解決するものであり、本発明の第1の具体例にかかるデバイスは、
図3に模式的に示される。
図1、2の従来技術のデバイスに対応するこのデバイスの部分は、同じ参照符号により示されている。このデバイスの半導体材料はSiCである。このデバイスは、公知のデバイスと、ドリフト層3が2つの副層を有する点、即ち、ソースコンタクトに近い第1の低ドープの副層4と、ドレインコンタクトに近いより高ドープの第2の副層5を有し、少なくとも1つの追加の層7”は実質的により大きな横方向の拡がりを有し、これによりドリフト層との界面の面積が、隣接するそのような層7よりも大きくなる。
【0029】
追加の層とショットキコンタクト領域6は、この場合、ドリフト層3の上に、それぞれが実質的に一定の幅を有する同心のリングとして形成される。横方向の拡がりは、それらのリングの半径方向を意味する。これは、この場合において、少なくとも1つの追加の層7”が、追加の層7の3倍の幅に等しい幅を有することを意味する。7つ毎、6つ毎、5つ毎、4つ毎、3つ毎の追加の層は、半径方向において、少なくとも1つの追加の層7”の幅に対応する幅を有する。より広い追加の層の数と、他の隣接する追加の層との間の他の関係は、想像できる。
【0030】
少なくとも1つの追加の層7”の幅は、この具体例では10μmであり、一方、隣接する追加の層の幅は約3μmである。追加の層7、7”は、この場合には、ドリフト層の上面の約20%を覆い、この被覆は、
図1、2に示す従来技術のデバイスと、実質的に同じである。
【0031】
図3に示される本発明にかかるデバイスの機能は、通常動作において、順導電状態および逆バイアス状態において
図1にかかるデバイスと実質的に同じである。しかしながら、このデバイスのサージ保護は、
図1のデバイスに比較して驚くほど改良されている。この理由は、例えば電流が5Aから50Aに増加するサージにおいて、
図1に矢印10’で示された、追加の層の近傍のドリフト層に注入された電子は、追加の層7’とその隣のドリフト層部分との間で、SiCの場合は2.8Vである十分な電圧のビルドアップを打ち消すことにある。
【0032】
しかしながら、隣接するそのような追加の層7より実質的に大きな幅を有する少なくとも1つの追加の層7”に近い、矢印10により注入されたそのような電子は、層7”とその下のドリフト層との間の十分な電圧のビルドアップを実質的に妨害せず、正孔の形の少数電荷キャリアがドリフト層に注入され、これにより、高い電流サージにおいて、より簡単にデバイスの抵抗と温度を下げる。
【0033】
図4は、本発明の第2の具体例にかかるデバイスを示す。このデバイスは、ショットキコンタクト領域6が、ドリフト層中のリセスまたはトレンチ11の底部に形成されて隣接する追加の層の間を分離し、ショットキコンタクトを、追加の層7、7”とドリフト層との間の界面から垂直方向の距離だけ隔てて配置される点で、
図3に示すデバイスと異なっている。
【0034】
このショットキコンタクトと界面との間の垂直方向の距離は、サージにおいてショットキコンタクトからドリフト層に注入された電子が、追加の層7、7”とドリフト層の間の十分な電圧のビルドアップを妨げ、ドリフト層に正孔を注入することを意味する。少なくとも1つの追加の層の幅は、この具体例では、隣接する追加の層7の幅の2倍であり、これは、電圧が、サージ時に、他の追加の層7より、追加の層7”に対してより簡単でより速いビルドアップを行うことを意味する。
【0035】
低ドープと高ドープとの間との違いは、この文脈では、少なくとも10倍のドーピング濃度の違いを意味し、SiCの場合、第1の副層は10
15cm
−3より低いドーピング濃度であり、一方、第2の副層は10
16cm
−3より高いドーピング濃度である。ドリフト領域に異なったドーピングレベルの副層を含むことで、第1の副層4の配置を通じて行われたような注入の増大を行うことは、従来技術からは認識できない。
【0036】
本発明は、もちろん上述の具体例に限定されるものではなく、その多くの変形の可能性は、添付の請求項に記載された本発明の基本的発想から離れることなく、当業者にとって明らかである。
【0037】
異なった幅を有する実質的に大きな横方向の拡がりを有する追加の層を有することは、本発明の範囲内であり、それらの一つは、多数の他の追加の層の幅の3倍であり、他は、それらの層の幅の2.5倍である。
【0038】
SiCに関して、本発明は、特定のポリタイプに限定されるものではない。